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新規材料乏しく高安まちまち
  • MRA商品市場レポート for PRO

2019年7月23日 第1577号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「新規材料乏しく高安まちまち」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は中東不安の高まりを受けてエネルギーセクターが上昇、気温上昇観測で米天然ガスなどが上昇した。しかし昨日は経済統計の発表もなく、新規材料に乏しく、基本はレンジワークである。

【本日の価格見通し総括】

本日の最大注目材料はIMF世界経済見通しだろう。直近のIMFのGDP見通しは3.3%と、前年の3.6%から下方修正されている。さらにこれが引き下げられるかどうかに焦点が集まる。

仮に引き下げられた場合、景気循環銘柄の需要減速観測が強まるため、価格の押し下げ要因となる。

しかし同時に世界的な金融緩和期待が高まることから、金融面で多くの商品の価格が下支えされるとみる。

また本日は英保守党の党首選の結果が発表される。恐らくジョンソン氏で確定だろうが、この場合ハードブレグジットへの懸念や、スコットランドなどへの波及懸念が強まるため、リスク資産価格の下押し要因になると予想される。

【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】

週末に行われた日本の参議院選挙は下馬評通り、自民党の勝利となった。

安倍首相は4期目を否定、自民党の総裁期限である2021年9月までで退任する見通しであり、今回の参議院選挙で改憲に必要な3分の2を確保できなかったが、任期の残りは自身の悲願である憲法改正にまい進すると予想される。

実際、選挙を受けた会見では、「改選議席の過半数を得ることができた。結果として(憲法改正の)議論をすべきではないかという国民の審判だったのだろう」と発言している。

しかし、安心して改憲に取り組もうとするならば、時間経過とともに景気が悪化する可能性が高い状況にあることを考えると、何らかの理由をつけて早いタイミングで選挙が行われる可能性は高い。

また、米国の要請によりホルムズ海峡の護衛や米軍の支援などを考えると、それが良いか悪いかは別にしても、改憲への意識が高まる可能性がある。

それが終われば、特段不祥事がなければ2021年まで安倍首相は現在のポジションを確保できるため、より改憲にまい進し、積極的に経済対策を行うインセンティブが低下することは十分に考えられる。これは景気にとってはマイナスだろう。

また、評価はいろいろあるだろうが9年の長きにわたり、首相のポジションにいた人物が交代することは、特に外交面でマイナスと考えられ日本は大きなリスクにさらされることになる。

基本、8年間大統領をするのが普通である米国と異なり、これほどの長期政権を日本は長らく経験しておらず、安倍首相退任時は日本の経済も大きく混乱することになるだろう。

改憲議論もよいのだが、次期首相候補をしかるべきポジションに就け育てる時期に入っていることは忘れてはならない。やはりオリンピック後の日本のリスクは小さくないと考えるべきだ。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

(マクロ要因)

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標再びの減速(価格下落要因)。

・世界景気の減速観測。IMFは2019年の経済見通しを引き下げ(+3.5%→+3.3%)ており、米中対立の激化があった場合には▲0.5%程度の引き下げリスクも視野に入れている。リスク資産価格に対して下向きのリスク。

・FRBの利下げの可能性が再び高まる。米中協議の不透明感を背景にFRBは利下げ方向に舵を切っている。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q219の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.4%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。

※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。

・景気減速下での原油価格高止まりは、消費国から生産国への所得移転を通じて景気の下押し要因に。また、リスク回避のドル高進行も価格上昇を抑制。

・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。

(特殊要因)

・米中通商協議が再開で決定したが、通商協議そのものが合意をしたわけではなく、制裁は継続しており世界経済がさらに減速する場合(下落要因)。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・中東情勢の悪化を受けた域内景気の混乱と、それを受けた欧州景気への悪影響拡大(下落要因)

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。とりあえず10月末を期限として問題先送りしたが、メイ首相の後任が強硬派のジョンソン前外相である可能性が高く、ハードブレグジットの可能性が高まっている(下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

・日韓対立によるハイテク分野の市場混乱や、極東地区の地政学的リスクの高まり(下落要因)。

(投機・投資要因)

・米利下げ観測の高まりで長短金利逆転状況が解消し、金融株を中心に株が上昇、リスクテイク再開で景気循環系商品価格にプラスの影響を与える場合。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油相場は上昇した。イランの英国船拿捕問題を受けて英国が緊急会合を招集したことや、イランが米CIAのスパイ数名を処刑すると報じられたこと、リビアの原油生産が過去5ヵ月で最低となったことなどが材料となった。

【原油価格見通し】

原油価格はもみ合うものと考える。イランを巡る情勢は報道だけを見るに非常に悪化しており、ここまで加熱すると「どう落としてよいかもうよく分からない」状態にある一方、米中交渉が難航していることや中東情勢不安を背景とする景気への懸念の影響が大きく、価格を下押しするため。

テクニカルには一目均衡表の雲を下抜けしかかっていると指摘したが、昨日の下落でWTI・Brentとも雲を下抜けした。チャート的には来月の中頃まで頭の重い推移になりやすい。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は小幅に上昇した。季節的な価格上昇と考えられるが、LNG余剰やエルニーニョ現象の影響でアジア地域の気温が低下していることが背景で軟調な推移が続いている。

【石炭価格見通し】

石炭価格は欧州の気温上昇と、北半球の夏場を控えて上昇するとみているものの、アジア太平洋地区は気温が低下していることや、中国の電力会社の石炭在庫が記録的な高水準となっていること、欧州市場でのよりクリーンなエネルギーへのシフト、景気減速による電力需要の後退、中国の景況感の悪化を受け、上昇余地も限定されると考える。

中国の6大電力会社の石炭在庫は、同じ時期の過去5年レンジを大きく上抜けしており、国内需給は緩和している可能性が高い。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・原油価格の上昇に伴う北米の増産継続は、需給緩和で価格の下落要因。

・景気が減速する中での減産継続は、その効果が限定されはするものの、足元の価格下落を受けてOPECプラスの協調減産は2020年3月まで継続される見込みであり、一定の下支え効果をもたらす見込み。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・中国の石炭港湾在庫が減少傾向を強めていることは国内需要が季節的に増加していることを示唆(石炭)。

(特殊要因)

・米国とイランの関係はこの20年で最悪の状態。両国の国力を減ずる戦争のリスクは依然低いとみるが、現状では開戦の可能性も完全に否定できない状態。

・米朝首脳会談が電撃的に開催されたが、制裁は継続する見込みであり北朝鮮炭の供給制限も継続されることは、価格の上昇要因(石炭)。

・米中情報戦争をめぐる華為技術排除の決定を受けて中国政府は豪州からの石炭輸入を規制、インドネシア炭にシフトしていることはNEWC価格の下落要因に(石炭CIF価格に対する影響は中立)。

(投機・投資要因)

・WTI・Brentともロングが増加。欧米中央銀行の金融緩和姿勢の強化で景気への楽観的な見方が広がっていることが背景。WTIはショートが増加、Brentはイラン情勢の悪化で減少している。

・直近の投機筋のポジションは、WTIはロングが545,484枚(前週比 +39,788枚)、ショートが121,722枚(+6,175枚)、ネットロングは423,762枚(+33,613枚)、Brentが341,220枚(前週比+22,202枚)、ショートが60,800枚(▲14,075枚)、ネットロングは280,420枚(+36,277枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME非鉄金属価格は下落した。米国の大規模緩和観測が後退する中ドル高が進行、投機の買戻しが一巡したためテクニカルな売りと考えられる。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は現状水準でもみ合うものと考える。中国の経済対策の効果が顕在化し始めているとみられること、FRBの利下げが▲25bpに留まるとみられることといった強弱材料が混在するため。

再び持続的な上昇に転じるのは、中国の公共投資が顕在化する年後半か、インド需要が顕在化すると期待される2020年の春以降と見る。

なお、ニッケルに関してはインドネシアの未処理鉱石輸出制限再開の可能性が高まっており、その政策動向次第だが実行されるのであれば16,000ドルを目指す動きになるだろう。今のところ見通しは据え置いている。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・最大消費国である中国の製造業PMIは低調で、新規受注/完成品在庫レシオ、新規受注/原材料在庫レシオとも低下、需給環境が緩和していることを示唆。

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は再開しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCも高止まり。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

(特殊要因)

・中国政府がシャドーバンキングを含む、違法な資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは、需要面で価格の上昇要因に。

・銅の生産減少観測(環境問題によるインド、露天掘りから地下生産に変更するインドネシア)、ヴァーレの尾鉱ダム事故の影響による供給減少(アルミやニッケルなどに波及する可能性)。

ハイドロのアルノルテ アルミナ精錬所の問題に象徴されるように、広く非鉄金属を含む鉱物セクターは、環境問題への高まりから供給が政府命令で急に停止してしまう可能性は低くない。

インドネシアのニッケル未処理鉱石輸出再開の可能性(実際に行われれば上昇要因に)。

・LME指定倉庫在庫の減少が、LMEの倉庫運営ルール変更に伴う保管場所変更の取引の影響である場合、ルールが見直された際に再度、LME指定倉庫在庫が急増する可能性(下落要因)。

(投機・投資要因)

・7月12日付のLMEポジションは、利下げ観測でロングが増加、ショートの買戻しも進んだ。

投機筋のLME+CME銅ネット売り越し金額は▲67.1億ドル(前週▲67.4億ドル)と売り越し幅を小幅縮小。売り越し額の減少率は+0.5%に。

買い越し枚数はトン数換算ベースで▲1,561千トン(前週▲1,702千トン)と売り越し幅を縮小。亜鉛と錫以外はトン数ベースでネット売り越しのまま。ネット売り越しの減少率は▲8.3%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップ市場は小幅下落、原料炭スワップ先物は変わらず、中国鉄鋼製品市場は小動きでまちまち。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は、中国政府の経済対策の効果が顕在化しつつあることや、ヴァーレの生産が完全に回復していないこと、リオの減産見通しといった供給面が意識されて高止まりすると考える。

ただし、米中通商協議は引き続き難航しており、価格面の下振れリスク要因との整理。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・直近の中国鉄鋼業PMIは48.2(前月50.0)と減速。新規受注が国内外とも低迷しており(新規受注 47.9(46.7)、輸出新規受注 40.7(45.9))、生産も49.1(56.0)閾値の50を下回った。

ただし、在庫は完成品が39.3(38.3)、原材料在庫が43.5(45.1)と低水準であることは事実であり、需要顕在化時(中国の公共投資など)に鉄鋼製品価格が急騰する可能性も。

・中国の鉄鋼製品在庫水準の高さは価格の下落要因。鉄鋼製品在庫は前週比+31.5万トンの1,258.9万トン(過去5年平均1,039.9万トン)と例年を大きく上回っている。

中国の鉄鉱石在庫水準の高さは徐々に低下し、価格の下支え要因となる可能性。鉄鉱石在庫は前週比+300万トンの1億1,835万トン(過去5年平均1億1,948.6万トン)、在庫日数は+0.6日の24.5日(過去5年平均 30.2日)と例年の水準を下回った状態が続いている。

・季節的に鉄鋼製品在庫の取り崩し時期であり、価格には下押し圧力がかかりやすい。

・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、すでにインフラ整備のための投資拡大方針を示しており、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

・ヴァーレ、リオ・ティントの生産目標引き下げによる供給減速。

(特殊要因)

・中国政府がシャドーバンキングを含む、違法な資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは価格の上昇要因。

・ヴァーレの尾鉱ダム決壊の影響が拡大し、さらに供給減少が起きた場合(自社・他社ともにあり得る)、価格の上昇要因に。

ヴァーレの尾鉱ダム事故の影響で、今後、低品位鉱石価格にも上昇圧力がかかる公算。

(投機・投資要因)

・供給懸念などを通じて大連取引所は建玉を積み増しながら、価格を切り上げており、先々の下落リスクは高まっている状況。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金銀価格はもみ合った結果、前日比マイナスで引けた。特段目立った材料がない中、ECB会合を控えて様子見気分が強まった。

銀は金銀在庫レシオの低下に伴い金銀レシオに低下圧力がかかったことで上昇した。

PGMは金銀価格は株価が米国時間に戻したことで、引けにかけて水準を切り上げている。

【貴金属価格見通し】

金価格は高値圏でもみ合うものと考える。米国の過剰な利下げ観測が後退したがこれは週末で織り込み済みであるが、緩和姿勢は維持されていること、米中交渉への楽観が後退したことや、緩和するとの期待があったイランと米国の関係が再び悪化していることが材料。

足元、中東関連のニュース、米FOMCの動向をにらみ非常に神経質な推移となっている。

イタリアの財政問題や英国のEU離脱がハードになる可能性が高いこと、それを受けて再びスコットランドの独立話が持ち上がっていることなど、欧州不安が払しょくされていないことから一定の安全資産需要は継続するため、総じて堅調な推移になるだろう。

銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)の上昇が金銀レシオを押し上げているため対金で割安に推移。

銀が通貨としての側面を持っていた頃の金銀レシオに戻る可能性は低下している。ただし、足元金銀在庫レシオが低下しているため、銀は修正的に上昇する可能性が出てきた。

PGM価格は金銀価格が高値圏でもみ合うことから同様にもみ合うと考える。ただし、供給面の影響で需給がタイトなパラジウムは引き続き堅調な推移になると予想する。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・FRB・ECBの金融緩和期待が高まっており、7月のFOMCでの▲25bpの利下げは織り込んだ(金ベースで25ドル程度の上昇要因)。

しかし、逆に利下げ期待が高まりすぎているため、期待と金融当局の判断の乖離から、7月FOMCで下落に転じる可能性も。

・景気の先行きを懸念した株価下落とそれに伴う長期金利・実質金利の低下(金銀価格の上昇要因)。ただし、欧州の政情安定化や米中貿易戦争の合意、各国の金融緩和などを背景とする景況感の改善で株価が上昇した場合には金銀価格の下落要因。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト期待(パラジウムの上昇要因・プラチナの下落要因)。ただし実際にシフトが起きるには相当の時間がかかる見込み。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

(特殊要因)

・米中通商交渉は一旦追加関税引き上げなどが先送りになったが、基本的に難航している。知的財産権や技術の強制移転などの重要なポイントで妥結できておらず、長期化の見込み(価格の下支え要因)。

・米国とイランの緊張は一時的に低下している。しかし、開戦の可能性がなくなったわけではなく、対立が継続する以上は安全資産需要を高める。

・米国の債務上限問題の顕在化(8月~9月にデフォルトするリスク)。

・欧州議会選でのポピュリズム政党の躍進。それに伴うEU懐疑論の高まりによる域内の政情不安定化。

・英国のEU離脱がハードになる可能性があること、それに伴いスコットランドの独立話が再燃していること、それがスペインのカタルーニャ地方に波及する懸念があることは安全資産需要を高める。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

(投機・投資要因)

・銀価格は金銀在庫レシオが銀在庫の減少、ないしは金在庫の増加、あるいは両要因によって低下した場合、金銀レシオが上昇するリスク(銀価格の上昇要因)。

・金銀はロングが増加、ショートが減少した。利下げ観測の強まりが背景。ただし過剰な利下げ期待が後退したことからこれらのポジションの巻き戻しが予想される。

・プラチナのポジションはロングが増加、ショートが減少。パラジウムはロングが減少、ショートが増加。

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが309,535枚(前週比 +3,430枚)、ショートが64,034枚(+2,692枚)、ネットロングは245,501枚(+738枚)、銀が100,449枚(+4,369枚)、ショートが63,024枚(▲7,905枚)、ネットロングは37,425枚(+12,274枚)

・直近の投機筋のポジションは、プラチナはロングが45,373枚(前週比 +207枚)、ショートが29,781枚(▲8,692枚)、ネットロングは15,592枚(+8,899枚)、パラジウムが17,662枚(▲386枚)、ショートが5,227枚(+75枚)、ネットロングは12,435枚(▲461枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物市場は下落した。米中の貿易交渉が進捗していないことが材料となった。

【穀物価格見通し】

穀物価格は当面、天候状況が価格を左右する展開となり、神経質な推移が続くと予想するが、生産地の状況改善で下落しやすい地合い。

しかし、基本的には北米の作付け状況が不良であること(トウモロコシ、大豆とも、生育状況に遅れ、作況も過去5年の最低水準をはるかに下回る)や、欧州の気温上昇による不作への懸念、FRBの利下げ期待の高まりがドル安を進行させることから、総じて下値は堅かろう。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・米国のトウモロコシ・大豆の生産減少観測による需給タイト化観測。

・豪州東部の大干ばつによる小麦生産の減少懸念。

・欧州・ロシアの気温上昇に伴う小麦生産の減少懸念。

・最終確定作付け面積動向(トウモロコシは増加、大豆は減少、小麦は横ばい)トウモロコシ 9,170万エーカー(市場予想8,703万エーカー、前年8,913万エーカー)大豆 8,004万エーカー(8,468万エーカー、8,920万エーカー)小麦 4,561万エーカー(4,561万エーカー、4,780万エーカー)

・7月の米需給報告の生産見通し

トウモロコシ138億7,500万Bu(前月136億8,000万Bu)大豆 38億4,500万Bu(41億5,000万Bu)小麦 19億2,100万Bu(19億300万Bu)

・7月の米需給報告の在庫見通しトウモロコシ20億100万Bu(前月16億7,500万Bu)大豆 7億9,500万Bu(10億4,500万Bu)小麦 10億Bu(10億7,200万Bu)

・米緩和観測に伴う実質金利の低下に伴うドル安の進行は、シカゴ穀物の輸出競争力を改善し、需給面で価格の上昇要因に。

(特殊要因)

・米中通商交渉は交渉再開で合意したが、覇権争いであり長期化の可能性は高い(価格の下落要因)。

・米政府はブッシェル当たり大豆2ドル、トウモロコシ0.04ドル、小麦0.63ドルの補助金を供給することを検討。生産減少を食い止めるため価格の下落要因に。

・エルニーニョ現象発生による北米の増産は基本的には価格の下落要因だが、今年は洪水が発生しており、夏場の気温上昇や乾燥といった育成環境の悪化の可能性はあり、価格の上昇要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

(投機・投資要因)

・トウモロコシはロングが減少、ショートも減少でネット買い越し幅を拡大。大豆はロング増加、ショートはトウモロコシと同様減少している。小麦はロングが減少し、買い越し幅を縮小した。

・直近の投機筋のポジションは、トウモロコシはロングが469,025枚(前週比 ▲532枚)、ショートが150,804枚(▲15,547枚)、ネットロングは318,221枚(+15,015枚)、大豆はロングが140,908枚(+2,230枚)、ショートが135,724枚(▲4,192枚)、ネットロングは5,184枚(+6,422枚)、小麦はロングが120,683枚(▲6,013枚)、ショートが92,714枚(+98枚)、ネットロングは27,969枚(▲6,111枚)

◆本日のMRA's Eye


「貴金属価格見通し」

2019年の金価格は、昨年12月頃から高まった米国の金融緩和期待を材料に水準を切り上げ、米中通商戦争やイタリアの財政問題、イランと米国の対立激化などの地政学・信用リスクを顕在化させる形でさらに水準を切り上げる展開となった。ただし銀は在庫水準の高さから、対金で割安に推移。

米国は利下げ方向に舵を切ったこと、足元は中東有事の高まりで原油価格が上昇していることから、2019年の金価格は1,334ドル/オンス(前回見通し比+30ドル)と見通しを引き上げた。しかし、イランと米国の対立は沈静化すると期待されること、原油価格は景気の減速で下落が予想されることから、2020年の金価格は1,319ドル(+8ドル)と2019年対比で水準を切り下げると予想。

銀価格については、高水準な取引所在庫が対金で銀価格を割安に推移させると考える。2019年の銀価格は15.64ドル(▲0.37ドル)と引き下げた。これは銀在庫の積み上がりによる。

2020年についても15.81ドル(▲0.95ドル)と水準を切り下げた。ただし、歴史的に見ても金銀レシオは高すぎであり、取引所在庫の減少がみられた場合には銀価格が急騰するリスクは否定できず。

2019年のPGM価格は、自動車の排ガス規制強化に伴う需要構造の崩れと、それに供給構造が対応しきれないことに伴い、プラチナ・パラジウムで値動きに乖離が出ている。

基本的に世界的な景気減速懸念で自動車販売が失速、需要面では強気になれないものの、(特に)欧州の環境規制強化(Euro 6d-TEMPの段階的導入により、Noxの制御に関してPGMを用いないSCR技術への移行が進捗)によりプラチナの需要が減少、一方環境規制やフォルクス・ワーゲンのディーゼル車不正以降ガソリン車へのシフトが進んでいる。

パラジウムの需要は堅調でプラチナが代替するにはまだ時間を要する見込み。供給面ではプラチナが価格低迷で大手生産者が減産を行っているが、新規鉱山の増産がこれを相殺している形。パラジウムは鉱山生産が伸び悩んでおり供給は制限された状態が続く。

2019年のプラチナ価格は829ドルと従来予想から▲17ドル引き下げた、2020年は850ドル(▲38ドル)と低迷を予想。パラジウムは構造的な需要増加と供給制限から対プラチナで割高に推移し、2019年は1,393ドル(+131ドル)、2020年は1,309ドル/オンス(+136ドル)とした。

◆主要ニュース


・6月日本コンビニエンスストア売上高 前年比+1.4%(前月+2.8%)

・6月シカゴ連銀製造業活動 ▲0.02(前月 ▲0.03)

・華為技術、北朝鮮の通信網整備を支援か。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・メイ首相、22日に緊急閣議を招集、イランによるタンカー拿捕に対応。

・IAEA天野事務局長死去。

・リビア原油生産、シャララ油田の生産減少で過去5ヵ月で最低となる100万バレルに。

・イラン、米CIAに協力したとされる数名を処刑へ。

【メタル】
・Q219BHP Billiton
 鉄鉱石生産 前年比▲2%の63百万トン(前期▲5%の64百万トン)、2019年間生産目標 242~253百万トン(前回目標235~239百万トン)
 原料炭▲1%の12百万トン(▲5%の10百万トン)、41~45百万トン(43~46百万トン)
 燃料炭▲18%の7百万トン(+11%の7百万トン)、24~26百万トン(28~29百万トン)
 銅 ▲4%の444千トン(▲8%の420千トン)、1,705~1,820千トン(1,645~1,740千トン)
 Escondida銅山 ▲9%の288千トン(▲15%の268千トン)、1,160~1,230千トン(1,120~1,180千トン)
 ニッケル+12%の29千トン(▲9%の19.2千トン)
 亜鉛▲18%の20,848トン(▲17%の24,237トン)
 原油 ▲1%の13MMBoe(▲5%の13MMBoe)
 天然ガス +8%の98BCF(+12%の93BCF)

・ICSG
 1-4月鉱山キャパシティ 8,170千トン(前年8,140千トン)
 鉱山生産6,544千トン(6,604千トン)
 鉱山稼働率 80.1%(81.1%)
 プライマリ精錬銅生産 6,477千トン(6,491千トン)
 セカンダリ精錬銅生産 1,362千トン(1,354千トン)
 精錬所キャパシティ 9,327千トン(9,078千トン)
 精錬所稼働率 84.0%(86.4%)
 供給合計 7,839千トン(7,845千トン)
 需要 7,993千トン(7,909千トン)
 ▲154千トンの供給不足(▲64千トンの供給不足)

・鉱山生産は▲1%。精鉱生産は▲0.5%(チリの生産が鉱石の品位低下で▲3.2%となり、インドネシアの生産が2大鉱山の生産減少で前年比▲50%となったことを、ペルー、ザンビア、中国、モンゴルなどの増産が相殺)、SX-EWは▲2.5%

・精錬銅生産はほぼ変わらず。プライマリ生産は▲0.2%、スクラップは+0.5%。チリの精錬所の一時的な稼働停止、インドのTuticorin精錬所の停止、電力供給制限でザンビアの生産が減少したこと、ドイツ・日本・ペルー・米国の定修による減産の影響。これらの減産を中国の生産増加が相殺。

・精錬銅需要は+1.0%の増加。中国の顕在需要が+4%となったことが影響。中国外では▲2%の減少。

・6月IAI世界アルミ生産 2,140千トン(前月2,201千トン)

・Q219Vale
 ニッケル生産 前年比▲32.0%の45.0千トン(前期▲6.5%の54.8千トン、前年66.2千トン)
 コバルト ▲20.7%の1,032トン(▲9.9%の1,195トン、1,302トン)
 銅 +0.4%の98.3千トン(+0.5%の93.8千トン、97.9千トン)
 鉄鉱石 ▲33.8%の64,057千トン(▲11.1%の72,870千トン、96,755千トン)
 金生産 +4.4%の119千オンス(▲4.4%の108千オンス、114千オンス)
 原料炭生産 ▲27.1%の1,136千トン(▲25.0%の1,051千トン、1,051千トン)
 燃料炭 ▲6.0%の1,234千トン(+12.7%の1,162千トン、1,313千トン)

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.NYM米天然ガス ( エネルギー )/ +2.71%/ ▲21.36%
2.ICEココア ( その他農産品 )/ +2.63%/ +4.80%
3.TCM灯油 ( エネルギー )/ +2.09%/ +7.75%
4.TCMガソリン ( エネルギー )/ +1.64%/ +17.29%
5.LIFFEココア ( その他農産品 )/ +1.63%/ +5.66%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ ▲5.53%/ ▲55.00%
69.CBT小麦 ( 穀物 )/ ▲3.03%/ ▲3.18%
68.LMEニッケル 3M ( ベースメタル )/ ▲2.80%/ +33.77%
67.CME木材 ( その他農産品 )/ ▲2.74%/ +3.46%
66.SHFニッケル ( ベースメタル )/ ▲2.01%/ +30.82%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :27,171.90(+17.70)
S&P500 :2,985.03(+8.42)
日経平均株価 :21,416.79(▲50.20)
ドル円 :107.87(+0.16)
ユーロ円 :120.91(+0.05)
米10年債利回り :2.05(▲0.01)
独10年債利回り :▲0.35(▲0.02)
日10年債利回り :▲0.14(▲0.00)
中国10年債利回り :3.15(▲0.01)
ビットコイン :10,322.33(▲207.19)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :26.66(▲0.14)
エネルギー :31.46(▲0.51)
ベースメタル :20.81(+0.99)
貴金属 :18.46(▲0.4)
穀物 :23.05(+0.07)
その他農畜産品 :31.00(▲0.47)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :32.94(▲0.16)
Brent :31.90(+0.48)
米天然ガス :42.18(▲0.7)
米ガソリン :32.63(▲2.77)
ICEガスオイル :24.18(+0.24)
LME銅 :15.72(+0.37)
LMEアルミニウム :13.75(+1.27)
金 :18.26(+0.08)
プラチナ :18.74(▲0.05)
トウモロコシ :32.54(+0.17)
大豆 :18.26(+0.08)

【エネルギー】
WTI :56.22(+0.59)
Brent :63.26(+0.79)
Oman :62.98(+0.94)
米ガソリン :182.79(▲1.26)
米灯油 :189.95(+0.99)
ICEガスオイル :584.75(+8.75)
米天然ガス :2.31(+0.06)
英天然ガス :27.48(▲1.61)

【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :63.26(+0.79)
SPO380cst :390.85(+3.16)
SPOケロシン :77.71(+0.37)
SPOガスオイル :77.50(+0.48)
ICE ガスオイル :78.49(+1.17)
NYMEX灯油 :190.73(+0.18)

【貴金属】
金 :1424.88(▲0.49)
銀 :16.36(+0.16)
プラチナ :848.69(+3.21)
パラジウム :1529.89(+21.33)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :6,030(▲48:22.5C)
亜鉛 :2,406(▲32:7.5C)
鉛 :2,007(▲70:6C)
アルミニウム :1,836(▲20:28C)
ニッケル :14,375(▲65:65C)
錫 :17,735(▲75:85B)
コバルト :27,703(▲18)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :6019.50(▲57.50)
亜鉛 :2427.50(+3.50)
鉛 :2008.00(▲39.00)
アルミニウム :1813.50(▲33.50)
ニッケル :14240.00(▲410.00)
錫 :17880.00(+110.00)
バルチック海運指数 :2,170.00(+40.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :120.32(▲0.55)
NYMEX鉄鉱石 :120.01(▲0.98)
NYMEX原料炭スワップ先物 :183(±0.0)
上海鉄筋直近限月 :4,060(±0.0)
上海鉄筋中心限月 :3,963(▲7)
米鉄スクラップ :292(+4.00)

【農産物】
大豆 :888.25(▲13.25)
シカゴ大豆ミール :308.40(▲2.80)
シカゴ大豆油 :27.73(▲0.37)
マレーシア パーム油 :1920.00(+15.00)
シカゴ とうもろこし :422.25(▲8.50)
シカゴ小麦 :487.25(▲15.25)
シンガポールゴム :172.30(▲1.50)
上海ゴム :10530.00(▲95.00)
砂糖 :11.56(▲0.03)
アラビカ :105.10(▲0.75)
ロブスタ :1354.00(▲26.00)
綿花 :62.79(+0.54)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :83.23(▲0.65)
シカゴ生牛 :108.45(+0.85)
シカゴ飼育牛 :142.18(+2.20)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。