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火事になってから保険には入れない
  • ビジネスへのヒント
  • MRA商品市場レポート for MANAGEMENT(週末版)

【ビジネスへのヒント】第373号

「火事になってから保険には入れない」というフレーズは、長く弊社のレポートや講演会で使ってきました。足元、景気の減速懸念が強まっているため、多くの商品価格が水準を切り下げる展開になっています。この時、多くの人は「火事にはなりそうにないので、今慌てて値決めをしなくてもよいのではないか」と判断して、値決めやヘッジ行為を先延ばしあるいは取りやめる、という行動に出てしまいがちです。しかし、十分注意していたとしても、隣の家から火事が出て延焼してしまうこともあり得ます。

例えば8月1日のトランプ大統領の発言。景気の先行きというよりも株価の下落による支持率の低下を懸念して、FRBに対して強く金融緩和=利下げを要求していました。中央銀行としての中立性を維持し、かつ、確かにその可能性はあり得る景気後退を事前に回避するため、パウエル議長はぎりぎりの選択を余儀なくされました。しかし、市場はこれでは十分とみなさず、特に株式市場はネガティブに反応することになります。それでも「FRBは追加緩和するだろう」ということで再びリスク資産価格は上昇余地を試してもおかしくないところでしたが、トランプ大統領が突如、対中制裁第4弾の発動を決定、FRBの緩和もむなしく、株価は大きく下落することになります。これを受けて原油価格や非鉄金属の価格も下落しました。

もし生産者だった場合、この下落はまさに「火事」です。その起こる可能性が高い火事に、事前に備えておくべきだったでしょうが、一旦下落して火事になってしまうと、もうあとは粛々と消火していくしかありません。逆にこの下落で消費者側は一息つけるわけですが、この時「まだ火事になっていないから大丈夫」と考えて決断を先送りすると、今回の生産者が経験するような「火事」に将来見舞われるリスクが高まります。

ですので、「今は何もやる必要がない」と思っている安全な時期こそ、リスクマネジメントについて考える最適なタイミングなのです。