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ドル安円高のリスクシナリオと実現度合い
  • MRA外国為替レポート

2019年7月22日号

◆先週の市場総括


先週のドル円相場は108円近辺で始まり、週前半は強めの米経済指標を受けて108円割れは底固く推移した。しかしトランプ発言で米中通商交渉への懸念がやや強まると株価が軟調となるなか107円台に下落。加えてNY連銀総裁が早期かつ大幅な利下げを示唆するような発言をしたことで金曜日未明には107円台前半に下落した。

ただその後NY連銀が発言の趣旨を修正する異例のコメントを出したことで持ち直し。107円台後半で取引を終えた。

ユーロドル相場は1.12台でユーロ安ドル高傾向。週末にNY連銀発言で一時ユーロ高ドル安に振れたが1.12台前半で引け。ユーロ円相場は121円台でじり安。ユーロ安円高傾向で引けは121円ちょうど近辺。

米国株は上昇一服。米中通商交渉への懸念が意識され、利下げ期待をエンジンとする上昇は一服。決算発表を見極める展開。

日経平均は21,500円近辺で始まり上値の重く一時21,000円を割り込んだ。ドル安円高が嫌気され、また日韓対立や半導体市場への懸念も重しに。ただ週末には戻して21,400円台後半で引け。

月曜日の東京市場は祝日で休場。アジア時間のドル円相場は107円90銭で始まり一時108円台に乗せたが海外市場は107円90銭中心にもみ合い小動き。

ユーロドル相場は1.1270で始まり海外市場では1.1260近辺でもみ合い。ユーロ円相場は121円50銭で始まり一時80銭に上昇したが、海外市場では反落して121円40銭~50銭で引けた。

アジア時間に発表された中国の6月の主要経済指標は総じて強め。小売売上高は前年同月比+9.8%(予想+8.3%、前月+8.6%)、工業生産は同+6.3%(同+5.3%、+5.0%)、都市部固定資産投資は同+5.8%(同+5.5%、+5.6%)。

一方、GDP(4-6月期)は前年同期比+6.2%と前期+6.4%から減速して1992年以降で最低となったが予想通り。

米国で発表されたNY連銀製造業景気指数(7月)は4.3と予想2.0、先月▲8.6を上回り強い数字となった。米国株は小幅高ながらダウは史上最高値を更新。米長期金利は小幅低下して10年債利回りは2.09%。2年債利回りは1.83%。

火曜日の東京市場のドル円相場は107円90銭で始まり底固く夕刻には108円10銭に上昇。

午後から欧州時間にかけてはユーロが下落。ユーロドル相場は1.1260近辺で始まり海外市場に入ると1.1210~20で上下。ユーロ円相場は121円50銭で始まり60銭近辺に上昇してもみ合いとなったが、海外市場にかけて121円10銭に下落した。

ドル円相場もつれて107円90銭に下落。ドイツZEW景況感指数(7月)が期待指数▲24.5(予想▲23.5、前月▲21.1)と弱い数字だった。

3連休明けの日経平均は21,600円台前半で安寄りし21,500円台後半に下落。後場は21,500円~550円でもみ合い引けた。

米国株は小幅安。トランプ大統領が、中国との交渉はなお遠い道のり、追加関税をかけることも可能、と発言したことが株価を圧迫した。

一方、米国の経済指標は良好。小売売上高(6月)は前月比+0.4%(予想+0.2%、前月+0.5%)、製造業生産(6月)は同+0.4%(予想+0.2%、前月+0.2%)。

個人消費が堅調な数字となったことで米長期金利は上昇。10年債利回りは2.11%、2年債利回りは1.85%。ドル円相場は反発して108円30銭中心に推移。ユーロドル相場は1.1210、ユーロ円相場は121円30銭台。

水曜日の東京市場のドル円相場は108円20銭台で底固い値動きとなり30銭近辺に小じっかり。ユーロ円相場は121円30銭中心で上下した後、海外市場にかけて40銭~50銭で上下した。

日経平均は21,400円台後半で安寄りし400円割れ。ただ後場には持ち直して21,400円台後半で引けた。欧米株も軟調。米国株は午後から引けにかけて下げが加速するかたちで前日比下落した。

前日のトランプ発言で米中交渉への警戒感が強まったほか、貨物輸送大手が決算で弱気な見通しを示したことも一因。

発表された米国の住宅着工件数(6月)は季節調整済み年率換算1,253千戸と予想、前月からやや減少した。米長期金利は低下。10年債利回りは2.05%に。ドル円相場は108円割れ、107円90銭近辺で引け。

ユーロ円相場は121円10銭~20銭に下落。ユーロは対ドルではやや上昇して1.1220~30でもみ合い。

発表されたベージュブック(米地区連銀経済報告)では、景気は緩やかに拡大している、として景況感を維持。貿易摩擦にもかかわらず消費支出は堅調。労働市場は逼迫。米経済の全般的な見通しは概ね明るい、とした。

一方詳細部分で、企業はサプライチェーンや関税、その他への対応を急いでおり、輸送企業が弱含み、製造業に重しとなっている、と、利下げの可能性も示した。

木曜日の東京市場ではやや円高ドル安の動き。ドル円相場は107円90銭で始まり弱含み、107円70銭を中心としたもみ合い。ただその後は米長期金利がじりじりと上昇したことから海外市場にかけて108円近辺に上昇した。ユーロ円相場は121円ちょうど近辺で上下した。

日経平均は米株安とドル安円高を嫌気して21,300円近辺で安寄りすると、その後も後場にかけて軟調な展開となり一時21,000円割れ。韓国中銀がさらなる景気悪化懸念から早期利下げに動くと不安心理が広がったことも一因。

引けは21,000円をかろうじて保った。海外市場では米10年債利回りが2.07%に、2年債利回りが1.84%に小幅ながらも上昇したことで米国株は下落。

発表されたフィラデルフィア連銀製造業景気指数(7月)は21.8と予想5.0を大きく上回り、前月0.3から大幅な改善を示した。ただその後、NY連銀総裁が、現在の中立金利は0.5%程度、景気悪化に直面した場合はすみやかに予防的な行動をすべき、と発言したことで、市場は7月会合での0.5%利下げを7割がた織り込んだ。

米10年債利回りは2.03%に、2年債利回りは1.76%に低下。米国株は持ち直し前日比同水準に戻して引け。ドルは下落し、ドル円相場は107円30銭に。ユーロドル相場も1.1270台にユーロ高ドル安が進んだ。

金曜日の東京市場のドル円相場は107円30銭で始まり夕刻には60銭~70銭に持ち直し、海外市場にかけては70銭中心の値動き。ユーロドル相場もユーロ高ドル安が一服し1.1220~30にユーロ安ドル高となった。

アジア時間にNY連銀から、総裁の発言はFOMCに関するものではなく、調査に基づく学術的な内容、と異例のコメントが発表されたことで大幅な利下げ期待が後退し米10年債利回りが2.02%から2.05%に上昇。ドルが反発した。

日経平均は21,100円台半ばで始まり終始堅調で21,400円台後半に上昇して引けた。米国株は小幅高で始まりもみ合い。ただ引けにかけて下落した。

米長期金利は上昇。2年債利回りは1.82%、10年債利回りは2.06%。ドル円相場は108円に接近したが反落して107円70銭台で引け。ユーロドル相場は1.12ちょうどに接近し、引けは1.1220近辺。

ミシガン大学消費者信頼感指数(7月)は98.4と前月98.2から小幅改善して予想通り。

セントルイス連銀総裁は、現時点で利下げは必要かもしれないが大幅な利下げに乗り出すわけではない、現時点で利下げを排除することは難しく0.25%の利下げ実施が適切、と述べた。

◆今週の3つの注目ポイント


1.企業決算

先週から米国で4-6月期の企業決算発表が始まり本格化する。今週は日本でも決算発表が相次ぐ。市場のリスクセンチメントが維持されるかどうか、株価が底固く推移するかどうか、が、円高が抑制されるかどうかのひとつの鍵となる。

また個別企業の決算・業績予測に米中貿易摩擦の影響がみられるかどうか。

2.米国の経済指標

来週火曜日・水曜日に開催予定のFOMCを前に経済指標を見極める最後の週となる。

当局者の発言は制限されるが、最後に0.25%の利下げがメインシナリオと匂わせて終わった。

火曜日 リッチモンド連銀製造業指数(7月、予想5、前月3)、中古住宅販売件数(6月、季節調整済み年率換算、予想536万件、前月534万件)

水曜日 新築住宅販売(6月、同、予想650千件、前月626千件)、PMI景況感指数(7月、製造業、予想50.4、前月50.6)

木曜日 耐久財受注(6月、前月比、予想+0.9%、前月▲1.3%

金曜日 GDP(4-6月期、前期比年率、予想+1.7%、前期+3.1%)

3.欧州の経済指標、ECB理事会、ドラギ総裁会見

欧米の景況感格差、金融政策格差、ユーロドル相場の動向が、ドルの強弱を左右する一因となる。ECBは金融緩和に傾いているが、経済指標が背中を押すか

火曜日 ユーロ圏消費者信頼感指数(7月)

水曜日 PMI景況感指数(同)

木曜日 ドイツのIFO景況感指数(7月)、ECB理事会・ドラギ総裁会見

◆今週のMRA's Eye


ドル安円高のリスクシナリオと実現度合い

来週火曜日・水曜日のFOMC開催を前に、ブラックアウト(関係者による発言制限)期間に入った。あとは会合での議論が明らかになるのを待つしかない。先週、ブラックアウト入り直前の発言を踏まえれば、0.25%の利下げ、が有力だ。

NY連銀総裁の発言で市場が再び過剰な利下げ期待を抱き、0.50%の利下げを織り込んだところで、NY連銀はすかさず政策決定に関する発言ではない、と述べた。

セントルイス連銀総裁は0.25%が妥当としている。6月会合では、年内据え置きと年内0.5%利下げとで意見が二分。パウエル議長が利下げ実施に傾いている点からすれば、0.25%は双方納得するところではないか。

市場は0.25%の利下げを織り込み、さらに0.50%の可能性も多少織り込んでいる。7月が0.25%にとどまっても、次は9月に0.25%の利下げを実施との期待は根強いようだ。

利下げ期待が維持される限り、米長期金利は大きく上昇しないだろう。10年債利回りの動向に、今回の利下げ幅が0.25%か0.50%かはさほど影響しない。むしろ利下げが打ち止めかどうかは大きな影響をもつだろう。

仮に0.50%の利下げを行った場合、追加利下げの可能性がかなり低くなる。あるいはそのように市場の大勢が考えるだろう。FOMCでの政策金利予測で0.50%を上回る利下げを予測した委員はいなかった。あくまでも予防的利下げであれば当然だ。

この間、米国株は金融緩和スタンスを好感して上昇してきた。リスク選好を支えているのはFRBの慎重なスタンス、利下げに前向きなスタンスだ。

となると、利下げ打ち止めとなれば、政策金利の水準が実際に低下したとはいえ、米国株が調整するリスクが高くなる。

10年債利回りが上昇するリスクもある。利下げ打ち止め感が漂って市場心理がリスク回避に傾いてしまうデメリットを踏まえれば、追加緩和の余地を残して0.25%にとどめた方が得策ではあろう。

景気先行き懸念が継続する限り、追加緩和期待が維持された状況を維持する方がよい。米中交渉が進展して懸念が解消すれば、利下げ打ち止め感が漂っても景気好転期待が高まるためリスク選好が後退し株価が下落するリスクは少なくなる。

現状のドル円相場は、ドル金利先安感・米国の利下げ期待によってドルの上値が抑制され、緩和期待による株価堅調・リスク選好によって円高が回避されている状況。その結果上下に動きにくくなっている。

大きくドル安円高に傾くリスクは、米金利先安感が維持されたまま株価が下落するケースだろう。

本格的にそれが生じるのは景気ないし企業業績が大きく悪化した場合。これは可能性としてはあるが、顕在化・現実化するとしても足元の米国景気の動向を踏まえれば時間がかかるだろう。

一方、短期的・一時的に生じるとすれば、7月の利下げ幅が0.25%にとどまったことによる失望(過剰な期待の剥落ではあるが)で、追加緩和期待が維持されながらも株価が調整するケースだ。

逆に景気見通しが好転して利下げ期待が剥落するケースでは、長期金利の上昇と株価上昇が併存するかたちでドル円相場は堅調さを取り戻すことになる。

ただ現時点でそうしたポジティブシナリオが生じる可能性は残念ながら小さい。こちらも時間をかけて現在の下振れリスクの解消や減速基調の反転を見極める必要がある。

株価や金利動向、市場のリスクセンチメントを踏まえた、ドル円相場の下落リスクが高まるケースを想定すれば、利下げが0.50%実施され追加利下げの可能性が小さくなった状態で、米中交渉の行方がなお不透明、景気下振れリスクが残存する状況か。

それは秋から年末にかけて生じる可能性がある。トランプ政権としては、大統領選挙を踏まえれば、その頃から交渉決着のうえ来年春先からの好況感・株価上昇につなげたいところだろうが、相手のあることゆえどう展開するか。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :107.71(+0.41)
ユーロ :120.86(▲0.13)
英ポンド :134.65(+0.01)
豪ドル :75.843(▲0.07)
カナダドル :82.466(+0.10)
スイスフラン :109.697(+0.37)
ブラジルレアル :28.7413(▲0.10)
中国人民元 :15.653(▲0.01)
韓国ウォン(日本円=100) :9.162(+0.01)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1221(▲0.006)
英ポンド :1.2502(▲0.005)
豪ドル :0.7042(▲0.003)
カナダドル :1.3059(+0.003)
スイスフラン :0.9819(+0.001)
ブラジルレアル :3.7486(+0.028)
中国人民元 :6.8821(+0.002)
韓国ウォン :1174.39(▲4.23)

【主要国政策金利】
米国 :2.50
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :2.06(+0.03)
米2年債 :1.82(+0.06)
日本10年債利回り :▲0.13(▲0.00)
日本2年債利回り :▲0.13(+0.01)
独10年債利回り :▲0.32(▲0.01)
独2年債利回り :▲0.77(▲0.02)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :27,154.20(▲68.77)
NASDAQ  :8,146.49(▲60.75)
S&P500 :2,976.61(▲18.50)
日経平均株価 :21,466.99(+420.75)
ドイツ DAX :12,260.07(+32.22)
インド センセックス :38,337.01(▲560.45)
中国上海総合 :2,924.20(+23.02)
ブラジル ボベスパ :103,451.90(▲1,264.70)
英国FT250 :19,621.66(+86.53)
ビットコイン :10529.52(▲87.36)

【主要商品価格】
WTI :55.63(+0.33)
Brent :62.47(+0.54)
米ガソリン :184.05(+0.63)
米灯油 :188.96(+2.71)

金 :1425.37(▲20.73)
銀 :16.20(▲0.15)
プラチナ :845.48(▲7.18)
パラジウム :1508.56(▲20.31)
銅 :6078.00(+122:12C)
アルミニウム :1856.00(+10:23C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :901.50(+20.25)
シカゴ とうもろこし :430.75(+6.25)
シカゴ小麦 :502.50(+9.00)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。