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利下げ実施に傾くパウエル議長
  • MRA外国為替レポート

2019年7月15日号

◆先週の市場総括


先週のドル円相場は前週末の強い雇用統計を受けて過度な利下げ期待が後退し週前半は底固い値動き。108円台半ばから後半で推移し109円ちょうどに迫る場面もあった。

しかし週央のFRBパウエル議長の議会証言で利下げに前向きな姿勢が示されると、再び7月の会合で0.5%の利下げが実施されるのではないかとの思惑が台頭。米2年債利回りの低下とともにドルを押し下げた。

ドル円相場は木曜日の東京市場で108円割れ。その後は米国株高や長期金利の反発に108円台半ばに戻したが、週末にかけて円が全般的に強含んだこともあり、ドル円相場は108円割れで週末NYの取引を終えた。

ユーロは、週前半はややユーロ安ドル高に振れて1.12ちょうどをつけたが、後半はユーロ高ドル安に転じて引けは1.1270。ユーロ円相場は121円台後半で始まり122円台に乗せたが、週末には121円台後半に押し戻された。

米長期金利は、週前半は過剰な利下げ期待の後退から10年債利回りが反発。インフレ指標が強めだったことや30年債の入札が不調だったことから一時2.15%に上昇した。一方2年債利回りは週末にかけて1.84%に低下した。

米国株は金融緩和期待から上昇。主要指数は週末にかけて連日史上最高値を更新した。そうしたなか日経平均は、米国株高とドル安円高に挟まれ底固いながらも21,600円台から上放れることはできず。

月曜日の東京市場のドル円相場は前週末の強い雇用統計をうけたドル堅調のまま108円40銭台で始まり50銭に上昇。株安を受けて30銭に下落したものの底固い値動きとなり、夕刻から海外市場にかけてジリ高となり60銭~70銭でもみ合い。

ユーロ円相場は121円70銭で始まり朝方一時90銭に上昇したが50銭に押し戻された。その後は堅調さを取り戻し海外市場では121円90銭台に上昇した。

日経平均は利下げ期待後退を受けた前週末の米国株下落を受けて21,650円~600円に安寄りしてスタート。その後もじり安となり後場は21,500円~550円でもみ合い引けた。

米長期金利は小幅上昇し10年債利回りは2.05%。米国株は過剰な利下げ期待が後退したことで、この日も軟調となった。

火曜日の東京市場のドル円相場は108円70銭台で始まり80銭~90銭でもみ合い。ユーロ円相場は121円90銭で始まり122円台を回復して122円中心に上下。ユーロドル相場は1.1210~20でもみ合い横ばいの後、ドルが堅調となるなか一時1.12を割った。

日経平均は21,600円台で高寄りしたがジリ安。前日同様21,500円~550銭でもみ合い引けは21,550円近辺。

海外市場では米長期金利が小幅ながらさらに上昇。10年債利回りは2.07%に、2年債利回りは1.92%に。米国株は安寄りした後持ち直し、個別に上下するまちまちな展開。ただNYダウは利下げ期待の後退で3日続落となった。

フィラデルフィア連銀総裁は、現時点で利下げの必要はない、と発言。アトランタ連銀総裁は、利下げについて話し合っていることを認めた。

水曜日の東京市場のドル円相場は108円80銭台で始まり109円ちょうどに迫った。アジア時間に米10年債利回りが上昇。夕刻に一時2.11%となったことがドルを押し上げた。

ユーロ円相場も122円ちょうど近辺から122円30銭に上昇。しかしその後は軟調な展開となった。

日経平均は21,500円割れで安寄りしたのち、ドル円相場の上昇で上値を試したが重く、21,550円中心に小動き、横ばいで引けた。

海外市場ではパウエル議長の議会証言待ちとなるなか、事前にテキストが公表されると、ハト派な内容との見方から米長期金利が低下しドルが下落した。

米10年債利回りは2.06%に、2年債利回りは1.83%に大きく低下。ドル円相場は108円50銭~70銭で上下。ユーロドル相場は1.1210から1.1240~50に上昇。

パウエル議長は下院金融委員会で日本時間23:00から証言。貿易問題での緊張を巡る不確実性と世界経済の強さに対する懸念が引き続き重しとなっている、とし、6月の雇用統計の強い数字は金融当局の見方を変えていない、とした。

弱いインフレ指標が予想している以上に長引くリスクを注視、企業投資の伸び鈍化や世界的な景気減速、住宅投資と工業生産が鈍っている、と述べた。

こうした内容を市場はハト派と受け止め、再び7月0.5%の利下げとの思惑が台頭した。

米国株は上昇。主要3指数が軒並み史上最高値を更新した。この日はまた6月18日・19日に開催されたFOMC議事録が公表された。米経済見通しを巡る不確実性や下振れリスクが堅調に高まり利下げの論拠が強まったとした。

幾人かはリスク管理の観点から近い将来の利下げが正当化される、とした。一方、幾人かはリスクが高まったとしつつも見通しの一段の悪化が必要、とした。

ドル円相場は108円40銭台でもみ合い引け。ユーロドル相場は1.1250台にユーロ高ドル安。ユーロ円相場は122円ちょうど近辺で取引を終えた。

木曜日の東京市場のドル円相場は108円40銭台で始まり一時107円90銭に下落。ユーロドル相場は1.1250台から1.1280にユーロ高ドル安となった。引き続きドルが軟調。

アジア時間に2年債利回りが一時1.80近辺に低下したことがドルを押し下げた。イラン情勢を巡り緊張が高まったことで円高となったことも重し。ユーロ円相場は122円ちょうどから121円60銭~80銭に下落した。

日経平均は21,550円で始まり600円近辺に上昇してもみ合い。後場は一段高となり21,650円近辺で引けた。米国株が史上最高値を更新したことを好感。海外市場に入るとドルが反発。

発表された米国の消費者物価指数(6月)はコア指数が前年同月比+2.1%と前月および予想の+2.0%を上回る強めの数字。

米長期金利は海外時間で一本調子で上昇し、2年債利回りは1.87%、10年債利回りは2.14%に。2年債と10年債の利回り格差は拡大。この日行われた30年国債の入札が不調だったことも長い期間の債券の金利上昇圧力となった。

ドル円相場は108円50銭台に反発。ユーロドル相場は1.1250~1.1260中心に上下。ユーロ円相場は122円10銭に反発して引けた。

米国株は寄付きから上昇し大幅高。パウエル議長はこの日は上院銀行委員会で証言。米国経済は非常に良好としつつも、貿易摩擦に伴う世界的な製造業低迷、景況感の悪化からくる脆弱性を相殺すべく金融政策を活用する、と述べた。

また中立金利は従来の推定より低くなっており、金融政策はこれまで考えられていたほど緩和的ではない、とした。連銀総裁らの発言も相次ぎ、利下げの準備をすべきとの意見の一方、利下げの必要なしとする意見も。

金曜日の東京市場のドル円相場は108円50銭で始まり軟調。30銭~50銭で上下。ユーロドル相場は1.1250~60から70近辺に。ドルがやや軟調。

日経平均は21,600円台半ばで始まり600円~650円でもみ合い、後場はジリ高となって21,685円で取引を終えた。海外市場では円が独歩高の後、終盤にはドルが下落。利下げ期待を背景にドル先安感が勝った。

ドル円相場は一貫して下落基調となり107円80銭をつけ、引けは107円90銭。ユーロドル相場は1.1270にユーロ高ドル安。ユーロ円相場は121円50銭~60銭でもみ合い引けた。

米長期金利は小幅低下して10年債利回りは2.12%、2年債利回りは1.84%。米国株は史上最高値を更新して大きく上昇した。

S&P500指数は終値で初めて3,000ポイントに乗せた。シカゴ連銀総裁は、インフレ率が2%をやや上回る水準を目指すことは有益で、2回の利下げで2.2%を達成することが可能、と述べた。

◆今週の3つの注目ポイント


1.ベージュブック(米地区連銀経済報告)

今週水曜日(日本時間木曜日未明3:00)にベージュブックが公表される。月末のFOMCにおける金融政策判断の基礎となる。どの程度の景気下振れリスクが示されるか。

利下げ実施の根拠となるか。利下げは時期尚早との意見もあるなか、利下げ実施を説得できる内容となるか。

2.米国の経済指標

利下げ実施は指標次第。パウエル議長は、強めの雇用統計を受けても金融緩和に向けた考え方は変わっていない、と述べたが、今週の経済指標で利下げの論拠は強まるか。

月曜日 NY連銀製造業景気指数(7月、予想2.0、前月▲8.6)

火曜日 小売売上高(6月、前月比、予想+0.2%、前月+0.5%)、鉱工業生産(同、予想+0.1%、前月+0.4%)

水曜日 住宅着工件数(6月、季節調整済み年率換算、予想1,260千戸、前月1,269千戸)

木曜日 フィラデルフィア連銀製造業景気指数(7月、予想5.0、前月0.3)、景気先行指数(6月、前月比、予想+0.1%、前月±0.0%)

金曜日 ミシガン大学消費者信頼感指数(7月、予想98.4、前月98.2)

3.中国の経済指標

中国の景気動向が当局のリスク認識を高めるか。

月曜日に6月の主要経済指標が発表される。小売売上高(前年同月比、予想+8.3%、前月+8.6%)、工業生産(同、予想+5.3%、前月+5.0%)、都市部固定資産投資(同、予想+5.5%、予想+5.6%)。GDP(4-6月期、前年同期比、予想+6.2%、前期+6.4%)が発表される。

◆今週のMRA's Eye


利下げ実施に傾くパウエル議長

先週行われたパウエルFRB議長の議会証言では、あらためて利下げに前向きな姿勢が確認された。米中通商交渉の再開や強めの雇用統計でも、利下げを検討していた6月のFOMCでの議論での見方に変化はない、と明言した。

地区連銀総裁の意見は割れている。FOMCで示された政策金利予測が据え置きと2回利下げに大きく二分していた通りだ。

NY連銀総裁は予防的利下げに前向き。シカゴ連銀総裁は2回の利下げがインフレ目標の達成に有効と述べた。

一方、利下げは時期尚早で実施する必要なし、との意見もみられる。総じてみると主流派は利下げに前向き、実施するとしても予防的、一度の利下げ幅は0.25%、というところか。

このタイミングで利下げを実施する論拠は、リスクに備えるため、であり、反対派を説得する論理的根拠、決定的な経済指標に欠けるところが難しい。

企業景況感の大幅な悪化を利下げの根拠とすることができるか。パウエル議長は、中立金利が現在の推計よりも低い可能性があり、現在の金利水準が緩和的とはいえない、と述べたが、それを予防的利下げの根拠としうるか。

こうした状況で0.5%の利下げは見込みにくい。7月に0.25%の利下げを実施したとして、次の2回目の利下げは、現時点でさえさらなるデータの悪化が必要、との意見があることから微妙な情勢だろう。

米国の債券市場や株式市場の動きをみると、すでに次の展開を織り込みつつあるようにみえる。株価は単純に利下げを好感しているとはいうものの、長期金利上昇とともに株価が上昇している点は、利下げだけが株価を押し上げているとは言い難い。

債券利回りにおいては、2年債利回りが利下げを織り込んで低下している反面、10年債利回りは先週上昇してそのまま2.1%台で推移している。

2年債利回りと10年債利回りの金利差は拡大。イールドカーブが立つ状況になっている。

確かに、6月のFOMCの政策金利予測では、利下げ実施の後、若干の利上げで金利を元に戻すシナリオとなっている。予防的利下げの実施で景気悪化が回避され、ダウンサイドリスクが解消することが前提となっている。

確かにそのシナリオ通り景気後退が回避されソフトランディングに成功し、あるいは足元の景気悪化が軽微に済むなら、株価は堅調に推移する理由もあり、10年債利回りが低下する理由もない。

景気堅調が前提となれば、急接近した2年債利回りと10年債利回りは乖離することになる。こうした状況ではドルが大幅に下落する理由もなくなる。

ドルのライバルであるユーロの状況は、ECBの金融緩和スタンスがさらに明確となってきた。こちらは予防的緩和、利下げにとどまらず、実際に景気悪化に備える意味合いが強まっている。

当局者の一部はなおも景気動向に自信を示しているが、緩和実施に関してECB内の意見は一致しているようだ。この点がFRBとは異なる。

そうしたなかでは、ユーロドル相場はユーロ高に振れる理由に乏しく、結果的にドルインデックスの下落は抑制されるだろう。ドル円相場がドル要因で下落する可能性も限定的となる。

米長期金利の動向、イールドカーブが立ってきた状況、株価が堅調に推移して史上最高値を更新している状況は、リスク選好が強まっていることを意味する。

その面で円がリスク回避で買われる可能性も限定的だ。最新のシカゴ通貨先物の円ポジションは中立で、円買い戻しによる円高リスクがほぼ解消したことを示している。積極的に円を買う理由は乏しく、円高リスクは限定的とみられる。

こうした状況に対するリスクは、第一に、イラン情勢の緊張激化によるリスク回避の高まり。原油価格が高騰するかたちでリスクが認識されれば、株価を抑制し円高をもたらす可能性がある。

ただ原油市況は需給面から上値が抑制されており、局所的なリスクにとどまる可能性が高い。グローバル経済や金融市場のリスクとならなければ、円高は一時的となろう。

第二のリスクは米中交渉のとん挫だが、再開されたばかりの交渉が現時点で急遽頓挫委する可能性は低く、そのリスクはまだ先だろう。

ドル円相場は引き続き108円台中止の値動きがメインシナリオ。本来的なリスクはダウンサイドだがタイミングはまだ先。本格的な景気悪化とならなければ106円~105円割れのとならず、そのリスクシナリオの確率も今の時点では小さい。

逆に景気堅調持続、FRBの利下げ見送りは市場参加者に織り込まれておらず、こちらもいきなり現実のものとなる可能性は低いが、生じた場合のインパクトはダウンサイドリスクに比べて大きいとみられる。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :107.91(▲0.59)
ユーロ :121.62(▲0.49)
英ポンド :135.667(▲0.16)
豪ドル :75.765(+0.10)
カナダドル :82.831(▲0.17)
スイスフラン :109.651(+0.06)
ブラジルレアル :28.861(▲0.04)
中国人民元 :15.697(▲0.07)
韓国ウォン(日本円=100) :9.165(▲0.07)

【対ドルレート】
ユーロ :1.127(+0.002)
英ポンド :1.2572(+0.005)
豪ドル :0.702(+0.005)
カナダドル :1.3028(▲0.004)
スイスフラン :0.9842(▲0.006)
ブラジルレアル :3.7375(▲0.017)
中国人民元 :6.8808(+0.011)
韓国ウォン :1178.94(+5.51)

【主要国政策金利】
米国 :2.50
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :2.12(▲0.02)
米2年債 :1.85(▲0.02)
日本10年債利回り :▲0.11(+0.02)
日本2年債利回り :▲0.11(+0.01)
独10年債利回り :▲0.21(+0.02)
独2年債利回り :▲0.72(+0.01)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :27,332.03(+243.95)
NASDAQ  :8,244.15(+48.10)
S&P500 :3,013.77(+13.86)
日経平均株価 :21,685.90(+42.37)
ドイツ DAX :12,323.32(▲8.80)
インド センセックス :38,736.23(▲86.88)
中国上海総合 :2,930.55(+12.79)
ブラジル ボベスパ :103,906.00(▲1,240.40)
英国FT250 :19,551.83(+108.67)
ビットコイン :11907.36(+761.29)

【主要商品価格】
WTI :60.21(+0.01)
Brent :66.72(+0.20)
米ガソリン :197.70(▲1.25)
米灯油 :198.01(+0.15)

金 :1415.75(+11.94)
銀 :15.22(+0.10)
プラチナ :831.02(+7.12)
パラジウム :1547.28(▲15.42)
銅 :5965.00(+30:15C)
アルミニウム :1819.50(▲9:20C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :906.75(+10.50)
シカゴ とうもろこし :449.50(+1.75)
シカゴ小麦 :536.25(±0.0)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更
新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。