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行き過ぎた金融緩和期待の調整リスク
  • MRA外国為替レポート

2019年7月8日号

◆先週の市場総括


先週のドル円相場は週末の米中首脳会談で通商交渉再開、追加関税発動の延期が決定し、一時停戦となったことを好感して108円台に高寄りして始まった。

しかしECB次期総裁にハト派のラガルド現IMF専務理事の就任が決定。またトランプ政権が空席のFRB理事2名にハト派を指名する方針との報道。欧米の長期金利が大きく低下してドル安円高、ユーロ安円高が進んだ。

米10年債利回りは1.95%に。ドル円相場は107円50銭近辺に下落。

米国市場が独立記念日で休場となったのを挟んで週末に発表となった注目の米国雇用統計(6月)は強めの数字。米長期金利は一転して大きく反発し10年債利回りは2.04%に。ドルは全面高となりドル円相場は108円50銭近辺で取引を終えた。

ユーロドル相場は週初に1.1360で始まり、その後は下落基調。週末に一段安となって1.1220台で引け。ユーロ円相場もユーロ安となり121円80銭。

米国株は金融緩和観測、長期金利低下を好感して主要指数が史上最高値を更新したが、週末には長期金利が反発して小反落した。日経平均は米中通商交渉開始を好感して底固く、概ね21,700円近辺で推移した。

月曜日の東京市場の為替相場は寄付きから前週末に比べて円安水準でスタート。ドル円相場は108円10銭~20銭で始まり20銭~50銭を上下。ユーロ円相場は122円90銭で始まり一時123円に乗せた。その後は122円70銭~90銭で上下。

ひとまず米中首脳会談で通商交渉再開、追加関税見送りが決まったことを好感した。ユーロドル相場は1.1360台で始まりユーロ安ドル高基調。

日経平均は21,600円台で高寄りし、利食い売りに押される場面もあったが底固くジリ高。引けは21,700円台前半。

日曜日に発表された中国のPMI景況感指数(6月)は製造業が49.4と前月と変わらず、非製造業は54.2と前月54.3からわずかに悪化。

この日発表された民間調査の財新製造業PMIは49.4と前月50.2から悪化して景況感の分かれ目である50を割った。

日銀短観(6月調査)は業況判断が製造業を中心に悪化した。

海外市場では米国株が高寄り後ジリ安も、引けにかけて持ち直し、NYダウは前日比+110ドル。米長期金利は小幅上昇して2年債は1.79%、10年債は2.03%。

発表されたISM製造業景気指数(6月)は51.7と前月52.1から悪化したが予想51.2より強めだった。雇用指数が前月から上昇、ただ新規受注指数が50.0に悪化して弱め。

ドル円相場は108円40銭~50銭でもみ合い。ユーロドル相場は1.1280~90に下落してもみ合い。ユーロ円相場は122円40銭に下落した。

この日オーストラリア中銀が2会合連続の利下げを決定し政策金利は1.0%に。中国経済悪化の影響。原油価格WTIはOPECが減産合意の9か月延長を決めたことで一時60ドルに上昇した。

火曜日の東京市場のドル円相場は108円40銭台で始まり30銭~50銭を上下。ユーロ円相場は122円40銭で始まり20銭~40銭でもみ合い。ユーロは1.1280台から1.1310に上昇。米国がEU製品に追加関税を賦課するとの報道がユーロ高を招いた。

日経平均は米中停戦を好感したまま21,700円~750円で底固く、21,750円近辺でもみ合い引けた。

欧州時間に入ると、次期ECB総裁にラガルド現IMF専務理事が就任することが決定。従来からの景気重視、ハト派スタンスから、ECBのハト派スタンスが強まるとの見方が台頭。欧州の長期金利が低下。連れて米国の長期金利も低下した。

米2年債利回りは1.77%に、10年債利回りは1.98%に。消去法的に円が対ユーロ、対ドルで上昇。ドル円相場は107円80銭~90銭に下落して引けは90銭近辺。ユーロ円相場は121円70銭台に下落した。

ユーロドル相場はユーロ安に振れて1.1280台。米国株は金利低下を好感して小幅上昇。英中央銀行のカーニー総裁は、貿易を巡る緊張の高まりで英国を含む世界の成長に対する下振れリスクが強まっている、と述べた。

水曜日の東京市場のドル円相場は107円90銭で始まり一時50銭台に下落。ユーロ円相場は121円80銭から下落して121円40銭~50銭でもみ合い。

トランプ政権が、空席のFRB理事二人について、クリストファー・ウィラー氏、ジュディ・シェルトン氏、ともに明確なハト派の二人を指名する意向と伝えられたことが材料。

ただその後、ドル円相場はじりじりと海外市場にかけて持ち直し。ユーロドル相場は1.1290中心に小動き。

日経平均は21,700円近辺で小幅安寄りし軟調。21,550円~600円でもみ合い、引けは21,600円台前半。

海外市場では米国株が堅調、主要株価指数が史上最高値を更新した。欧米中央銀行のハト派人事報道を好感した。

米長期金利は小幅ながらさらに低下。2年債利回りは1.76%、10年債利回りは1.95%。

発表されたADP雇用報告(6月)の雇用者数前月比が+102千人と予想+140千人より弱かった。またISM非製造業景気指数(同)も55.1と予想56.0を下回り前月56.9から悪化。雇用指数や新規受注指数も弱めだった。

この日は米国市場が独立記念日を前に半日取引で終了。ドル円相場は107円80銭~90銭で引け。ユーロ円相場は121円60銭、ユーロドル相場は1.1280。

木曜日の東京市場のドル円相場は107円80銭中心に小動きもみ合い。海外市場は米国市場が休場となり閑散。107円80銭で引け。ユーロ円相場は121円60銭台中心に推移。ユーロドル相場は東京市場から1.1280~90でもみ合い、そのまま海外市場の取引を終えた。

日経平均は21,700円台で高寄りも上値重く650円~700円でもみ合い横ばい引けた。米国市場の休場、金曜日の雇用統計発表を前に、各市場とも動けず。

金曜日の東京市場のドル円相場は107円80銭で始まり午後から海外にかけてじりじりとドル高が進み米国市場が始まる頃には108円10銭に。

ユーロドル相場も1.1285で始まり1.1260へ。ユーロ円相場は121円60銭~70銭で横ばいもみ合い、一時90銭に上昇したが海外は70銭~80銭の値動き。

日経平均は21,700円近辺で寄り付きもみ合い。一時650円を割る場面もあったが引け際にかけて上昇し21,750円近辺で引けた。

注目の米国の雇用統計(6月)は、非農業部門雇用者数が前月比+224千人と予想+160千人を大幅に上回る強い数字となった。

失業率は3.7%に前月の3.6%から上昇したが、労働参加率が62.8%から62.9%に上昇したことも影響。

一方、平均時給の伸びは、前月比が+0.2%と予想+0.3%に届かず前月と同水準。前年同月比も+3.1%と予想+3.2%に対し前月と同水準だった。

強めの数字を受けて米長期金利は大きく上昇。2年債利回りは1.87%、10年債利回りは2.04%に。市場はなお7月の利下げ0.25%を織り込んだ状態だが、0.5%の織り込みは後退した。

雇用統計を受けてドルは全面高。ドル円相場は一時108円60銭台に上昇して引けは108円50銭。

ユーロドル相場は1.1210近辺にユーロ安ドル高が進み、引けは1.1220~30。ユーロ円相場はさほど影響なく121円80銭近辺で引け。米国株はドル金利先安感の後退でダウは一時200ドル程度下落したが、その後は持ち直して小幅安。

◆今週の3つの注目ポイント


1.パウエル議長議会証言、当局者発言

今週は半期に一度のFRB議長議会証言が行われる。10日水曜日(日本時間23:00)に下院金融委員会で、11日木曜日(同)に上院銀行委員会で証言する。

利下げについて具体的な示唆はあるか。市場はなお7月に0.25%の利下げを織り込んでいるが、決定的な内容となるか。一方、より中期的な見方、スタンスはどうか。

また今週はFRB連銀総裁らの発言も続く。利下げ実施へのバイアスはどうか。

2.FOMC議事録(6月18日・19日開催分)

10日水曜日(日本時間11日木曜日未明3:00)に、6月18日・19日に開催されたFOMCの議事録が公表される。この会合ではパウエル議長の会見ともども市場の想定よりもハト派なスタンスが示され、ドル円相場が108円を割り込んで下落するきっかけとなった。

公表されたメンバーによる政策金利の予測では、据え置きと2回利下げがほぼ同数となるなど、大きな意見の対立もみられた。具体的な議論の内容が明らかになるか。7月の利下げ実施に示唆する内容が示されるか。

3.米国の経済指標ISMや雇用統計など重要な経済指標の発表は一巡したが、今週は物価指標が発表され注目される。企業の景況感が貿易摩擦で悪化するなか、足元の景気がとくに雇用情勢・所得消費を中心になお堅調に推移。

利下げを予防的に実施する根拠のひとつがインフレ率の低迷。これが弱い数字となるか、それほど悪化していないか。

木曜日に消費者物価指数(6月、前年同月比、予想+1.6%、前月+1.8%、コア指数、同、予想+2.0%、前月+2.0%)、金曜日には生産者物価指数(6月、コア指数、前年同月比、予想+2.2%、前月+2.3%)が発表される。

◆今週のMRA's Eye


行き過ぎた金融緩和期待の調整リスク

先週は市場の金融緩和期待がさらに強まる場面があった。ECBの次期総裁がラガルド現IMF専務理事となったこと、BOE(英国中銀)のカーニー総裁が景気懸念を示したこと、トランプ政権がハト派2人をFRBの空席となっている理事に指名するとの報道、などが市場の利下げ期待の背中をさらに後押しした。

米欧の金利先安感、長期金利の低下に対し、日本の金利は限界まで低下している、あるいは日銀のスタンスは相対的にみれば米欧に比べてここからの緩和に対して積極度合いが足りない、との見方もある。それが消去法的な円買いにより一時的にドル安円高、ユーロ安円高を招いた。

高まるばかりの米金融緩和期待だったが、政策金利を判断する前提である景気動向や物価動向が先週悪化した証左が明らかになったわけではない。

むしろ週末の雇用統計が強めだったことで過剰な利下げ期待は冷や水を浴びたかたちとなった。

結果を受けてもなお、市場の米政策金利に対するコンセンサスは、7月に0.25%の利下げ、年内2回の利下げ、のようだ。さすがに7月会合で0.5%利下げとの見方は後退したが、なおも景気悪化、積極的な利下げを織り込んでいる。そこにはなお当局の見方、スタンスとのギャップがある。

7月にFRBが利下げを実施するのか、実施するとしてどの程度となるか、は、米中通商交渉の行方や景気動向・経済指標とくに雇用統計次第、ということだった。

米中交渉は一時停戦、雇用統計は強め、となったことで、そもそも利下げを実施する必要があるのか、という議論になるのではないか。

6月のFOMCで示されたメンバーの政策金利予測では、年内据え置きがなお半数に及んだ。0.5%利下げも7人に及び0.25%利下げと併せて半数に迫って意見が大きく割れた。

一連の材料で、据え置き派、の意見が優勢になるのではないか。利下げを実施する明確な理由が、現時点では、予防的な利下げ、インフレ率の低迷、しかないが、利下げ実施の論拠として据え置き派を説得できるかどうか、極めて不透明だ。

今週、パウエル議長は半期に一度の議会証言を行う。これに先立って5日金曜日に議会に提出されたFRBの金融政策報告書の内容からは、いつでも利下げを実施する心構えはありながらも、今ただちに実施するとの判断は難しいようにみえる。

報告書では、今年前半の米国経済は引き続き底固いペースで推移した、とした。

一方で、関税の引き上げが世界貿易や企業投資を圧迫し、最近数か月間で経済が弱まった模様だ、ともしている。

そして、景気拡大の維持に向けて利下げを含め適切に行動する、とした。この内容からは、7月利下げを実施してもおかしくない、ととれる。

ただ、労働市場は年初以降引き続き強まった、とし、企業投資や貿易リスクにもかかわらず家計消費はしっかりしている、とした。物価動向については、最近のインフレ率の低迷は一時的な影響による、としている。

こうした報告書の内容からは、市場の利下げ期待がなおかなり行き過ぎているようにみえる。7月の利下げ0.25%織り込みはなお過剰で、現時点では利下げ実施の可能性は五分五分、ないし、据え置きの可能性すら高いようにみえる。

結果として、リスクはなおドル金利先安感が調整し、金利が上昇する方向。ドル金利先安感を背景としたドル安は調整し堅調に推移するリスクがありそうだ。

最新のシカゴ通貨先物の円ポジションは、先週は独立記念日の休日を挟んだ関係で、まだ発表されていない。しかし前週時点で円売りは10千枚程度に減少しており、円買い戻しによる円高のリスクは後退している。

欧米の金融緩和を理由に消去法的に円を買うシナリオは維持しにくい。

ドル安円高は、もっぱらドル安により、もたらされる可能性を考える必要があるが、実際の経済指標と、市場の景況感および利下げ期待・織り込み度合いからすれば、さらなるドル安も難しそうだ。

ECBの金融緩和観測によりユーロドル相場が1.12近辺までユーロ安ドル高となり、ユーロ高へと反発するきっかけが見出しにくいなかではなおさらだろう。

ドル円相場は、雇用統計を経て、107円台が底固く、リスク選好が抑制されて108円台中心ながら、引き続きリスクはややドル高サイド、と想定される。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :108.47(+0.65)
ユーロ :121.75(+0.08)
英ポンド :135.858(+0.24)
豪ドル :75.712(+0.00)
カナダドル :82.921(+0.31)
スイスフラン :109.38(▲0.08)
ブラジルレアル :28.3873(+0.01)
中国人民元 :15.758(+0.07)
韓国ウォン(日本円=100) :9.228(±0.0)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1225(▲0.006)
英ポンド :1.2521(▲0.006)
豪ドル :0.698(▲0.004)
カナダドル :1.3081(+0.003)
スイスフラン :0.9916(+0.007)
ブラジルレアル :3.8214(+0.021)
中国人民元 :6.8936(+0.022)
韓国ウォン :1170.4(+1.75)

【主要国政策金利】
米国 :2.50
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :2.03(+0.08)
米2年債 :1.86(+0.10)
日本10年債利回り :▲0.16(±0.0)
日本2年債利回り :▲0.16(+0.01)
独10年債利回り :▲0.36(+0.04)
独2年債利回り :▲0.75(+0.01)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :26,922.12(▲43.88)
NASDAQ  :8,161.79(▲8.44)
S&P500 :2,990.41(▲5.41)
日経平均株価 :21,746.38(+43.93)
ドイツ DAX :12,568.53(▲61.37)
インド センセックス :39,513.39(▲394.67)
中国上海総合 :3,011.06(+5.81)
ブラジル ボベスパ :104,089.50(+453.30)
英国FT250 :19,655.27(▲142.34)
ビットコイン :11034(▲687.74)

【主要商品価格】
WTI :57.51(+0.17)
Brent :64.23(+0.93)
米ガソリン :192.95(+1.28)
米灯油 :190.50(+0.63)

金 :1399.45(▲16.63)
銀 :15.00(▲0.29)
プラチナ :810.32(▲24.53)
パラジウム :1571.15(+6.15)
銅 :5870.00(▲45:13C)
アルミニウム :1802.00(+8:22.5C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :872.25(▲13.00)
シカゴ とうもろこし :434.00(+1.00)
シカゴ小麦 :519.25(+1.25)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。