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米中通商交渉と市場心理、当面のポイントと相場展開
  • MRA外国為替レポート

2019年7月1日号

◆先週の市場総括


先週のドル円相場は107円30銭近辺で始まり週初に106円台に円高が進んだ。

FOMCによるドル金利先安感、米10年債利回りの低下、米中通商交渉への警戒感が残るなか、イラン情勢の緊迫、トランプ大統領が日米安保条約の破棄に言及したとの報道が円高をもたらした。

しかしパウエル議長が市場の過度な利下げ織り込みや政治的な利下げ圧力、7月の利下げ期待をけん制。その後ドル円相場は持ち直し、米中通商交渉への進展期待も手伝って一時108円を回復した。

週末にかけては米中交渉を見極めるべく小動きとなり107円台後半、108円手前で週末の取引を終えた。

ユーロ円相場も122円台後半に小幅高。米長期金利は一時2%を割ったが低下基調には歯止め。米国株は利下げを織り込んだ上昇は一服し、米中交渉を前に模様眺め、小幅安。日経平均は週初から下落したが、その後は持ち直して21,200円台後半で週初と同水準で引けた。

月曜日の東京市場の為替相場は小動き。ドル円相場は107円30銭で始まりやや上昇して40銭~50銭で推移したが欧州時間に入るころには30銭近辺に押し戻された。

ユーロ円相場も122円ちょうど近辺から20銭~30銭に上昇してもみ合い。ユーロドル相場は底固い値動きで1.1380中心にもみ合い。

日経平均は21,200円近辺で寄り付き21,300円台に小じっかりとなったのち21,250円~300円でもみ合い引けた。米国株が堅調に推移していることが下支えとなる一方、ドル安円高が重し。

海外市場では米国株はまちまちの値動き概ね横ばい。利下げは織り込み済みでさらなる上昇力とはならず、米中首脳会談の結果にらみ。また米国とイランの対立が懸念材料。

米長期金利は小幅低下。発表されたダラス連銀製造業活動指数(6月)は▲12.1と予想▲1.0を大幅に下回り前月▲5.3から悪化した。

これより先にドイツで発表されたIFO景況感指数(6月)は97.4と前月97.9からの悪化幅は小幅。米10年債利回りは2.02%に低下。

為替市場ではドル安が進み、ユーロドル相場は1.14ちょうどまでユーロ高ドル安が進んだ。ドルインデックスの下落は鮮明に。ドル円相場は107円50銭に上昇する場面もあったが30銭~40銭でもみ合い引けは107円30銭で東京と同水準。ユーロ円相場は122円20銭~40銭で上下し122円30銭で引け小幅高。

火曜日の東京市場のドル円相場は107円30銭近辺で始まったが、午後に106円80銭近辺まで下落した。イラン情勢の緊迫や輸出企業のドル売り円買いに押され、さらにトランプ大統領が日米安保条約破棄に言及したとの報道もあり急速にリスク回避が高まり円高が進んだ。

米10年債利回りは東京時間に2.02%から1.99%に低下。ユーロ円相場も122円30銭近辺から121円80銭~90銭に下落。

日経平均は21,250円近辺で寄り付いたがじり安となり、21,100円~150円でもみ合い引け。その後夕刻から欧州市場にかけてドル円相場は107円ちょうど近辺を回復した。ただ海外市場でもドル円相場の上値は重く再び106円90銭に下落した。

発表された米国の経済指標は弱め。リッチモンド連銀製造業指数(6月)は3と前月5から低下。新築住宅販売(5月)は季節調整済み年率換算626千戸と予想680千戸、前月673千戸を下回った。

また消費者信頼感指数(6月)は121.5と予想131.0、前月134.1を大きく下回り2017年9月以来の低水準となった。これを受けて米10年債利回りは低迷し1.99%で引け。

この日パウエル議長は、金融緩和の必然性は高まっているが個別のデータや短期的な心理の振幅に過剰反応しないようにも注意している、として市場の過度な利下げ期待をけん制した。

またセントルイス連銀ブラード総裁は、0.5%の利下げを求めていたが、7月は0.25%で十分と発言した。リッチモンド連銀総裁は、今年利下げが必要かどうかはわからない、とした。

トランプ大統領は、イランが米国を攻撃することがあれば強力な報復を行う、と述べ、イランのロウハニ大統領は、ホワイトハウスは精神疾患に見舞われている、と批判した。

米国株は弱い経済指標と利下げ期待がやや後退したことで下落。NYダウは180ドル程度のまとまった下げとなった。

ドル円相場はFRB当局者の発言に107円40銭近辺に反発し、引けは107円10銭~20銭。ユーロドル相場は東京市場では1.14台で推移していたが夕刻から海外市場にかけて下落してNYの引けは1.1370。ユーロ円相場は121円80銭台。

水曜日の東京市場のドル円相場は107円20銭で始まり上昇して40銭~50銭でもみ合い。ユーロ円相場も121円80銭台から122円10銭近辺に。ユーロドル相場は1.1370から1.1350~60に軟化。

前日からのドル反発の流れに加え、円が全体的に軟調。本邦投資家による外貨資産投資の円売りが散見された。

日経平均は21,050円近辺に安寄り、21,100円手前でもみ合い引けた。海外市場に入ってもドルが堅調、円が軟調。ドル円相場はさらに上昇して107円70銭近辺で上下した。

ユーロ円相場も一段高となり122円台前半で上下動。ユーロドル相場は横ばい1.13台後半で方向感なく上下した。

米長期金利は前日のパウエル議長の発言を受けて利下げ期待が調整されるかたちで上昇。10年債利回りは2.05%、2年債利回りは1.77%に反発してドルを支えた。

米国株は利下げ期待の調整もありまちまちの動き。NYダウは小幅続落。

この日発表された米国の耐久財受注(5月)は予想よりも強めだった。この日もイラン情勢は不透明。トランプ大統領は、イランとの軍事衝突は回避したいとして対話を求めているが、戦争になっても短期間で終わる、とけん制。イラン側は米国の対話路線はまやかしと批判。

原油相場はイラン情勢が不穏ななか週次統計で原油在庫が大きく減少したことから上昇。WTIは59.4ドルと60ドル目前。

木曜日の東京市場のドル円相場は107円70銭~80銭、ユーロ円相場は122円50銭近辺で始まりやや円高に振れたものの、その後は大きく円安に振れた。

香港のサウスチャイナモーニング紙が、米中首脳会談を前に一時休戦を合意、と報じたことで、米中通商交渉進展期待が高まり、リスク選好が回復し円を押し下げた。

ドル円相場は108円台に上昇、ユーロ円相場も122円70銭~80銭に上昇した。ユーロドル相場は小幅ユーロ安ドル高に。米10年債利回りはアジア時間に2.07%に小幅上昇した。

日経平均は21,150円近辺で寄り付き21,350円近辺に上昇。後場もそのまま底固く取引を終えた。中国株ほかアジア通貨全般の上昇もプラス要因。

しかし海外市場に入ると円は反発。米国側から米中首脳会談開催に特定の条件はないと先の報道を否定する発言があり、通商交渉進展期待が後退した。

結局米中首脳会談の内容を決め打ちして動くことはできず。ドル円相場は107円70銭~80銭に下落してもみ合い引け。

ユーロ円相場も122円90銭から40銭~50銭に下落してもみ合い。ユーロドル相場は1.1370中心に小動きとなった。

米国株はまちまち。半導体関連株が上昇してナスダック指数を押し上げたが、ボーイング株の下落に押されてNYダウは小幅安。米10年債利回りは2.02%に、2年債利回りは1.75%に反落した。

金曜日の東京市場のドル円相場は107円80銭で始まり円高気味に振れて60銭近辺へ。ユーロ円相場も122円50銭台から122円30銭に下落した。

日経平均は21,200円台後半に安寄り。21,200円へじり安となったが、後場に持ち直して21,200円台後半に戻して引けた。

米中通商交渉が進むとの過度な期待に米国側からの報道で警戒感が台頭。株価は前日の上昇の反動もあって下落。日米首脳会談は材料視されず。海外市場でも米中首脳会談を見極めようと小動き。

円はやや軟化。ドル円相場は107円80銭~90銭に上昇してそのまま週末NYの取引を終えた。ユーロ円相場も反発して122円60銭中心に上下し引けは122円70銭。

米国株は小幅上昇。米長期金利は概ね前日比横ばい。10年債利回りは2%ちょうど近辺。

この日発表された米国の個人消費・消費支出(5月)は堅調な数字。所得は前月比+0.5%と予想+0.3%を上回り、消費支出は+0.4%、前月が+0.3%から+0.6%に上方修正された。ミシガン大学消費者マインド指数(6月)確報も98.2と速報97.9から上方修正。

一方、シカゴ購買部協会景気指数(6月)は49.7と前月54.2から悪化し予想を下回る弱い数字だった。

土曜日に行われた米中首脳会談では、通商交渉の再開が合意された。トランプ大統領は会見で、交渉は中断したところから再開する、第4弾3,250億ドルの追加関税の発動は当面見送り、中国ファーウェイ社への禁輸措置を緩和する、中国は米国産農産物の輸入を拡大する、とした。

◆今週の3つの注目ポイント


米国独立記念日のため米国市場は3日水曜日は午前中のみ短縮取引、4日木曜日は休場。

1.米国の経済指標FRBが利下げを実施するか否かの判断材料は当面、米中通商交渉の動向と経済指標。今週は重要な指標が相次ぐが、市場の利下げ期待を補強する結果となるか。あるいは100%織り込まれた7月の利下げ期待が後退するか。

月曜日 ISM製造業景気指数(6月、予想51.2、前月52.1)

水曜日 ADP雇用報告(6月、雇用者数前月比、予想+150千人、前月+27千人)、ISM非製造業景気指数(同、予想56.0、前月56.9)

金曜日 雇用統計(6月、非農業部門雇用者数・前月比、予想+160千人、前月+75千人、平均時給、前年同月比、予想+3.2%、前月+3.1%)

2.中国の経済指標、中国株の動向

米中通商交渉が引き続き不透明ななか中国が景気悪化を犠牲に強硬な姿勢を続けられるか。悪い数字は市場の懸念を強めリスク回避を促す可能性があるが、中国政府に妥協を促し通商交渉進展へのドライバーともなりうる。

日曜日に発表された6月の製造業PMIは49.4と前月と変わらず。非製造業PMIは54.2と前月の54.3から悪化はわずかにとどまった。

月曜日には民間調査の財新・PMI製造業景況感指数(6月)が発表となる。水曜日には同・サービス業景況感指数が発表される。これら数字がさほど悪くなければ中国政府の焦りは強まらないか。

3.日銀短観

米中通商摩擦、世界景気悪化懸念が、米国のみならず日本企業の景況感を悪化させている。業況判断DIは、大企業、中小企業、製造業から非製造業に至るまで、概ね前回から小幅の悪化が見込まれているが、予想より悪い数字となる可能性はないか。

大企業製造業の計画前提為替レートは、前回3月の調査では108円87銭だが、実勢相場が円高に振れていることで収益計画が下方修正される可能性がある。

米国に比べて出遅れている日本株への影響はどうか。一方で、政府・日銀が何らかの対策に前向きになる可能性はどうか。

◆今週のMRA's Eye


米中通商交渉と市場心理、当面のポイントと相場展開

週末の米中首脳会談の評価は、事前の予想通りだが若干ながらポジティブといった評価か。交渉再開と米国による3,250億ドルの追加関税発動見送りが決まったが、これは予想通り。

想定よりもややポジティブな材料は、米国側がファーウェイ社に対する禁輸措置を一部緩和し、安全保障上の問題のない部品についてサプライヤーから購入することを認めることとした点。

習主席は中国企業を公平に扱うよう要請していたが、米国側が一部歩み寄ったかたちだ。

トランプ大統領によれば、中国は米国の農産物の輸入を拡大するという。事実ならば半歩前進。なおも交渉決裂リスクを孕みながらも、ひとまずは安心感が漂うこととなろう。ただ懐疑的な見方も残ることから手放しのリスク選好とはなりにくい。

交渉の今後については、早急な展開は想定しにくい。中国サイドは、経済面では、景気悪化をできるだけ早めに抑止する必要があることから、早期に合意にたどりつきたいニーズはある。しかし政治的には難しい。

そもそも5月初旬に決裂したのは、劉鶴副首相とライトハイザーUSTR代表、ムニューシン財務長官との閣僚級ミーティングで下ごしらえしていた内容が、中国共産党指導部に屈辱的な内容だとして却下され修正されたことが原因。

中国側が、国としての尊厳を持ち出していることからもうかがえる。

また同じ時期、習主席が米中通商交渉を戦争になぞらえ、長征、という共産党の歴史上重要な戦い、忍耐と犠牲を伴った長期戦を持ち出したことも容易ならざる決意がうかがえる。

例年8月に開催される、中国指導部と長老との会議、いわゆる「北戴河会議(ほくたいが)」までは対外強硬姿勢を貫く必要もあるだろう。

米国側には中国以上に急ぐ理由がない。景気へのダメージ、企業マインドへのダメージ、そして株価へのダメージを抑制しておけば、現時点での景気は良好であり、焦る必要はない。とくに足元で始まった来年秋の大統領選挙を踏まえれば、景気にポジティブなイメージが広がるタイミングは来年の春先以降で十分だ。

交渉にはなお半年ほどの時間がある。年末から中国の旧正月あたりを目途にすれば足りる。合意に至らなくても、交渉継続を理由に、既存分の関税を一旦解除すれば良いだろう。

決裂せず、年末まで合意に至らず、がメインシナリオではないか。リスクシナリオは中国が早々に譲歩するケース。

通商交渉を巡る悲観論が抑制された後は再び景気動向に市場の関心が移る。

FRBが7月末の会合で利下げに踏み切るかどうかのポイントが、通商交渉の動向と経済指標。前者は持ち直したところで経済指標は堅調な景気動向を示すか。

市場はなお2回~3回、7月の利下げに関しては100%織り込んでいるが、経済指標、とくにISM景況感指数や雇用統計が強めの数字だった場合、ひとまずシナリオを変更する必要に迫られそうだ。

先週発表された設備投資動向を示す耐久財受注や、個人所得・消費支出はまずまずの数字だった。足元の景気はなおしっかりしており、特段弱い数字を想定する理由はない。

雇用統計が現在予想されている数字、非農業部門雇用者数前月比で160千人増加なら早期利下げ、7月の実施は遠のくのではないか。

こうした点からみれば、市場のコンセンサスとの間にはギャップがあり、来週はその修正が生じるリスクがありそうだ。米10年債利回りは2%ちょうど近辺にまで下落しているが、これ以上の金利低下は難しいだろう。

利下げは年内実施されようが、1回にとどまる可能性も相応に高い。米国景気悪化やドル金利先安感を背景にして為替市場で強まっていたドル安にかけたポジションはひとまず調整されるリスクがある。

シカゴ通貨先物の円ポジションのネット売り越しは10千枚まで縮小してほぼ中立となった。手仕舞いによる円高リスクは大きく後退した。ここから積極的に円買いを積み上げる理由は乏しい。

あらたなリスクイベント、イラン情勢のさらなる悪化、軍事衝突、長期化などがなければ円高にはなりにくい。

メインシナリオでは108円を中心としたもみ合いが想定されるが、リスクバイアスはややドル高円安サイド。一時的、短期的に109円台を試す可能性もあろう。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :107.85(+0.06)
ユーロ :122.66(+0.11)
英ポンド :136.924(+0.27)
豪ドル :75.705(+0.16)
カナダドル :82.32(+0.00)
スイスフラン :110.466(+0.09)
ブラジルレアル :28.0321(▲0.18)
中国人民元 :15.697(+0.03)
韓国ウォン(日本円=100) :9.332(+0.02)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1373(+0.000)
英ポンド :1.2696(+0.002)
豪ドル :0.702(+0.001)
カナダドル :1.3095(±0.0)
スイスフラン :0.9763(▲0.000)
ブラジルレアル :3.8497(+0.030)
中国人民元 :6.8668(▲0.010)
韓国ウォン :1154.8(▲3.25)

【主要国政策金利】
米国 :2.50
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :2.01(▲0.01)
米2年債 :1.75(+0.01)
日本10年債利回り :▲0.16(▲0.02)
日本2年債利回り :▲0.16(+0.01)
独10年債利回り :▲0.33(▲0.01)
独2年債利回り :▲0.75(▲0.02)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :26,599.96(+73.38)
NASDAQ  :8,006.24(+38.49)
S&P500 :2,941.76(+16.84)
日経平均株価 :21,275.92(▲62.25)
ドイツ DAX :12,398.80(+127.77)
インド センセックス :39,394.64(▲191.77)
中国上海総合 :2,978.88(▲17.91)
ブラジル ボベスパ :100,967.20(+243.23)
英国FT250 :19,462.10(+147.64)
ビットコイン :12212.7(+1526.56)

【主要商品価格】
WTI :58.47(▲0.96)
Brent :66.55(±0.0)
米ガソリン :194.25(▲0.41)
米灯油 :194.46(▲0.79)

金 :1409.55(▲0.23)
銀 :15.32(+0.06)
プラチナ :834.75(+20.81)
パラジウム :1537.66(▲14.47)
銅 :5981.50(+14:9.5C)
アルミニウム :1793.50(▲11:20C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :899.75(+12.00)
シカゴ とうもろこし :420.25(▲19.75)
シカゴ小麦 :528.00(▲19.50)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。