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G20を控えポジション調整で高安まちまち
  • MRA商品市場レポート for PRO

2019年6月26日 第1559号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「G20を控えポジション調整で高安まちまち」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は、引き続き景気に連動しないコーヒーなどのソフトコモディティが物色されたが、昨日はG20を控えたポジション調整で非鉄金属も買い戻された。基本、G20を控えたポジション調整で高安まちまちとなった。

昨日発表された米経済統計は正直悪い内容だったが、それが逆に米国の金融緩和期待を高めたため影響として限定されるはずなのだが、FRBパウエル議長が過剰な利下げ期待をけん制する発言をしたため、結果、景気循環銘柄には下押し圧力がかかることとなった。

【本日の価格見通し総括】

本日は予定されている材料としては、米国の設備投資の先行指標である、米コア資本財受注(市場予想 前月比+0.1%、前月▲0.1%)に注目している。経営環境が変化する中での企業の投資判断を占う上での判断材料となる。

そのほかはやはり週末のG20に向けて、多数来日が予定されている首脳同士の会談とその内容だろう。

商品相場には直接関係ないが、仏マクロン大統領が安倍首相と対談予定。日産・ルノーの問題について協議見込みでありその内容には注目したい。

本日もG20を控えて基本、ポジション調整取引が中心となり、方向感に欠ける展開(前日上昇した商品が売られ、買われた商品が売られる)になると予想する。

【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】

昨日、目立った政治的な動きや経済統計の発表がなかったが、トランプ大統領が日米安保について破棄したい、と近しい人間に漏らしていたことが伝えられた、

日本が攻撃されたときに米軍は日本を守ることを約束しているが、逆が成り立たないことが不満、ということである。また、日本は親イランの国であるが、仮に米国がイランと事を構えた時に、協力するのかしないのか判断を迫ろうとした、とも取れる。

この問題は何が正しく、何が正しくないのかは軽々に議論できないが、仮に本当に米国が条約を破棄した場合、日本は中国や韓国による、国土の実効支配リスクに備える必要があるほか、根本的に防衛体制を見直さなければならなくなる。

金銭的な負担も小さくない。NATOは目標基準としてGDPの2%を軍事費に充てるよう目標を定めているが、今の日本はGDP対比で0.9%程度に軍事費を抑制している。金額的には5兆円程度だ。

これが倍増することになるわけで、金額的には10兆円を超える。ちなみに消費税上げ2%による税収増は6兆円弱であるので、軍事費の倍増は今回の消費税上げとインパクトが近い。

もちろん、国内の軍事関連品を作っている企業にはプラスになるだろうが、米国から戦闘機やイージスシステム、イージス艦などを購入しなければならず、全てが国内に還元されるわけではない。

もし安保が破棄されれば、地政学的なリスクが高まる以外にも、経済的な負担が大きいことが分かる。財政状況が厳しい日本が対応しきれるかどうかは極めて不透明だ。

しかし、米軍にとっても西太平洋の対中防衛ラインであり、最大規模の在外米軍を抱える日本から撤退することはあり得ない。結局、安保破棄をちらつかせて、在日米軍費用のほとんど+新たな武器購入、というところに留まると見ている。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

(マクロ要因)

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標再びの減速(価格下落要因)。

・世界景気の減速観測。IMFは2019年の経済見通しを引き下げ(+3.5%→+3.3%)ており、米中対立の激化があった場合には▲0.5%程度の引き下げリスクも視野に入れている。リスク資産価格に対して下向きのリスク。

・FRBの利下げの可能性が再び高まる(トランプ大統領があからさまに要求を始めており、米中通商戦争の行方次第ではあり得る状況に)。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q119の中国GDPは前年比+6.4%、前期+6.4%と市場予想の+6.3%を上回りやや減速懸念が後退)。

※中国は地方政府の資金調達規制を実質緩和。

・景気減速下での原油価格高止まりは、消費国から生産国への所得移転を通じて景気の下押し要因に。また、リスク回避のドル高進行も価格上昇を抑制。

・2020年からインドが人口ボーナス期入りすることによる、構造的な需要の増加は中長期的な価格の上昇要因。

(特殊要因)

・米中通商協議が難航しており、世界経済が減速する場合(下落要因)。

足元、米中首脳会談が開催される見通しが示されたが、話し合いを継続することは決められても合意に至るかどうかは極めて不透明。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・中東情勢の悪化を受けた域内景気の混乱と、それを受けた欧州景気への悪影響拡大(下落要因)

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。とりあえず10月末を期限として問題先送りしたが、メイ首相退陣、ハードブレグジット推進派の台頭によってよりそのリスクは高まる(下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

(投機・投資要因)

・米利下げ観測の高まりで長短金利逆転状況が解消し、金融株を中心に株が上昇、リスクテイク再開で景気循環系商品価格にプラスの影響を与える場合。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油相場は下落後上昇した。パウエル議長が過剰な利下げ期待をけん制する発言をしたことや、米景気先行指数の急減速を受けて景気への懸念が強まったことが売り材料となったが、米国とイランの関係悪化が引き続き懸念され、引けにかけて急速に買戻しが入った。

また、あまり材料視されていないが、大統領の娘婿であるクシュナー大統領上級顧問がパレスチナ不在の中で、両国に対する中東和平案を披露したが、結局、「カネを渡すのでパレスチナは今回の米国のイスラエルに対する対応を認めるよう」といった趣旨のものであり、パレスチナ側は当然受けられる内容ではなかった。

このことも、中東情勢不安を高めることになるため先々の潜在的なリスクである。

【原油価格見通し】

原油価格は高値圏での推移になると考える。基本、両国の国力を削る開戦はない、というのがメインシナリオではあるものの、米国がハメネイ師に対する制裁実施を決定、この状態で素直にイラン側が交渉に乗ってくるとは思えず、「窮鼠猫を噛む」可能性があり、戦争の選択肢が排除できなくなってきたため。

ただし、マクロ経済統計の減速や、米中通商交渉の先行き不透明感から上昇余地も今のところ限定されている。

トランプ大統領はイランに対して攻撃したくない、というのが本音と見られるが、ボルトンを筆頭とする共和党保守強硬派はあまりそう考えていないようだ。引き続き両国動向は、ニュースに一喜一憂とならざるを得ない。

これ以上、中東を材料に価格が上昇するとすれば、さらに具体的に米国とイランが軍事的に衝突すること、ないしはクシュナーの提案をきっかけにイスラエルとパレスチナの対立が深まり、軍事衝突が起きることであるが、現時点では希望的観測も含めて「ない」と信じたい。

この中東有事の高まりで、OPECプラス会合での方針は急速に従来の見通し、すなわち▲120万バレルの減産水準を順守、という方向に舵が切られるとみられる。

中東情勢が緊迫しているため、OPECの決定はBrentベースで60ドル程度まで価格を押し下げると予想されるが、中東の緊張が緩和されれば、ISM製造業指数の低下もあってBrentベースで55ドル程度までの下落が見込まれる。

なお、この状況においてもOPEC諸国に対する影響を残すことができるため、イランがOPECを脱退する、というのは選択肢になっていないと考えられる。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は小幅に上昇した。季節性もあり、割安感からの買いが入ったとみられる。

【石炭価格見通し】

石炭価格は夏場に向けて上昇するとみているものの、欧州市場の需給緩和(よりクリーンなエネルギーへのシフト、景気減速による電力需要の後退)、中国の景況感の悪化を受け、当面は下値余地を探る動きになると考える。

中国の石炭の輸入量は回復しており、過去5年のレンジを上抜けした。生産に関しては減少傾向となっているが、港湾在庫は増加するなど、需要面の弱さから総じて中国の石炭需給は緩和傾向にある可能性が高く、ファンダメンタルズは強くない。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・原油価格の上昇に伴う北米の増産継続は、需給緩和で価格の下落要因。

・景気が減速する中での減産継続は、その効果が限定されはするものの、足元の価格下落を受けてOPECプラスの協調減産は7月以降も継続(場合によると減産枠拡大)の見込みであり、一定の下支え効果をもたらす見込み。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・中国の石炭生産鈍化(4月2億9,429万トン)、輸入減少(1,564万7,172トン)にもかかわらず、港湾在庫が増加していることは国内需要の弱さを示唆(石炭)。

(特殊要因)

・米国がイランを攻撃する準備を整えていたことが発覚、両国の緊張はこれまでにないほど高まっていることは、開戦を通じた供給懸念を通じて価格の上昇要因に。

・北朝鮮のミサイル発射により、制裁が継続される可能性が高まっていることは、北朝鮮からの石炭輸出(密輸)を制限し、価格の上昇要因(石炭)。

・米中情報戦争をめぐる華為技術排除の決定を受けて中国政府は豪州からの石炭輸入を規制、インドネシア炭にシフトしていることはNEWC価格の下落要因に(石炭CIF価格に対する影響は中立)。

(投機・投資要因)

・WTI・Brentともロングの減少が顕著だが、WTIのショートには買戻し、Brentはショートが増加した。中東情勢を巡り市場参加者のスタンスはまちまちだが、とにかく積み上がったロングから解消する動きが強まっているようだ。

・テクニカルには、世界の市場参加者は原油取引において「一目均衡表」を活用するようになっており、「雲のねじれ」がある7月初に、例えば中東情勢不安が顕在化したり、金融緩和が意識されるようになったり、OPECが減産幅を拡大したり、ということがあれば、7月意向、ポジションの巻き戻しで急騰リスクはあり得る。

・直近の投機筋のポジションは、WTIはロングが502,749枚(前週比 ▲12,708枚)、ショートが139,662枚(▲24,140枚)、ネットロングは363,087枚(+11,432枚)、Brentが333,483枚(前週比▲12,583枚)、ショートが61,977枚(+7,937枚)、ネットロングは271,506枚(▲20,520枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME非鉄金属価格は軒並み水準を切り上げた。明日から始まるG20での米中通商交渉の行方が不透明な中、ポジション調整の投機筋の買戻しが入ったことが要因。

米経済統計は、新築住宅販売、景気先行指数の悪化で基本的には非鉄金属の売り材料であるが、むしろ緩和期待を高めたため非鉄金属にとって結果的に影響は中立だった。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は、米中首脳会談実施の可能性が高まったこと、FOMCが利下げに舵を切ったことを織り込みながら買戻しが入り、上昇余地を探る動きになると考える(織り込み終わったとみていたが、朔日の値動きを見るにまだ完全に織り込めていない可能性がある)。

しかし上昇後は、景況感の悪化が意識され、イランと米国の関係悪化による景気減速への懸念などから再び下値余地を探る動きになると考える。

しかし、米中会談がどのような形になるか全く予断を許さない状況であるため、方向感が出にくいことも事実。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は再開しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCも高止まり。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

(特殊要因)

・中国政府がシャドーバンキングを含む、違法な資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは、需要面で価格の上昇要因に。

・銅の生産減少観測(環境問題によるインド、露天掘りから地下生産に変更するインドネシア、コデルコのストライキ)、ヴァーレの尾鉱ダム事故の影響による供給減少(アルミやニッケルなどに波及する可能性)。

オランダ ニルスター社の豪鉛精錬所(ポート・ピリー)停止による、供給不安(鉛)。

ハイドロのAlunorteアルミナ精錬所の問題に象徴されるように、広く非鉄金属を含む鉱物セクターは、環境問題への高まりから供給が政府命令で急に停止してしまう可能性は低くない。

・LME指定倉庫在庫の減少が、LMEの倉庫運営ルール変更に伴う保管場所変更の取引の影響である場合、ルールが見直された際に再度、LME指定倉庫在庫が急増する可能性(下落要因)。

(投機・投資要因)

・6月14日付のLMEポジションは動きがまちまちだったが、銅や鉛、アルミ、錫のショートポジションに買戻しの動きが強まった。米中首脳会談が開催され、米中協議が進捗するとの期待が買戻しにつながっている。

14日以降も価格上昇が続いているが、恐らく四半期末を控えた投機の買戻しは継続しているとみられる。

投機筋のLME+CME銅ネット売り越し金額は▲67.1億ドル(前週▲60.8億ドル)と売り越し幅を拡大。売り越し額の増加は+10.8%に。

買い越し枚数はトン数換算ベースで▲1,631千トン(前週▲1,532千トン)と減少。亜鉛と錫以外はトン数ベースでネット売り越しのまま。ネット売り越しの増加率は+6.5%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップ市場は下落、原料炭スワップ先物は上昇、中国鉄鋼製品市場は上昇した。

ヴァーレがBructu鉱山の生産の3分の1を回復したと報じられたことで、鉄鉱石の需給緩和観測が広がったことが価格を押し下げた。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は、中国政府の公共投資促進策と豪州からの供給不安、ヴァーレの生産が完全に回復していないこと、リオの減産見通しといった供給面、米中首脳会談実施期待を受けた鉄鋼製品の投機的な買戻しを背景に、高値圏での推移になると予想。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・直近の鉄鋼業PMIは50.0(前月52.1)と減速。生産の回復(54.5→56.0)はあったが、新規受注の落ち込みが顕著(51.7→46.7)であり、輸出向け新規受注も大きく落ち込み(48.9→45.9)。

・中国の鉄鋼製品在庫水準の高さは価格の下落要因。鉄鋼製品在庫は前週比+22.2万トンの1,178.1万トン(過去5年平均1,084.8万トン)と例年を上回っている。

中国の鉄鉱石在庫水準の高さは徐々に低下し、価格の下支え要因となる可能性。鉄鉱石在庫は前週比▲195万トンの1億1,675万トン(過去5年平均1億1,839.6万トン)、在庫日数は▲0.4日の24.5日(過去5年平均 28.6日)と例年の水準を下回った状態が続いている。

粗鋼生産の回復で原材料在庫が減少した形。これは鉄鋼業PMIとほぼ平仄が取れている。

・季節的に鉄鋼製品在庫の取り崩し時期であり、価格には下押し圧力がかかりやすい。

・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、すでにインフラ整備のための投資拡大方針を示しており、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

・ヴァーレ、リオ・ティントの生産目標引き下げによる、供給減速。

(特殊要因)

・中国政府がシャドーバンキングを含む、違法な資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは価格の上昇要因。

・ヴァーレの尾鉱ダム決壊の影響が拡大し、さらに供給減少が起きた場合(自社・他社ともにあり得る)、価格の上昇要因に。

ヴァーレの尾鉱ダム事故の影響で、今後、低品位鉱石価格にも上昇圧力がかかる公算。

(投機・投資要因)

・供給懸念などを通じて大連取引所は建玉を積み増しながら、価格を切り上げており、先々の下落リスクは高まっている状況。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金・銀価格は上昇後下落した。景気の先行きを懸念した期待インフレ率の低下が、実質金利を押し上げたため。また、ドル指数が上昇したことも価格を押し下げた。

PGMは下落した。金銀価格が上昇後下落したが、株価が大きく水準を切下げたため下げ幅を拡大した。

【貴金属価格見通し】

金価格は、FRBが緩和方向に舵を切ったこと、中東情勢の悪化やイタリアなどの情勢不安を材料に堅調な推移になると考える。

また、中東情勢、英国のEU離脱、欧州問題などの悪化を受けて安全資産需要が継続していることも価格を下支えするとみる。

銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)の上昇が金銀レシオを押し上げているため対金で割安に推移。

PGM価格は金銀価格が底堅い推移になるため堅調だが、株価動向に左右され神経質な推移になると考える。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・FRB・ECBの金融緩和期待が市場で再び高まっていること、原油価格の高止まりは実質金利の低下を通じて金銀価格の上昇要因に(逆に利下げ期待が高まりすぎているため、期待と金融当局の判断の乖離から、7月FOMCで下落に転じる可能性も)。

・景気の先行きを懸念した株価下落とそれに伴う長期金利・実質金利の低下(金銀価格の上昇要因)。ただし、欧州の政情安定化や米中貿易戦争の合意、景況感の改善で株価が上昇した場合には金銀価格の下落要因。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト期待(パラジウムの上昇要因・プラチナの下落要因)。ただし実際にシフトが起きるには相当の時間がかかる見込み。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

(特殊要因)

・米中通商交渉は難航しており、相互報復まで発展(価格の上昇要因)。知的財産権や技術の強制移転などの重要なポイントで妥結できておらず、米中の覇権争いであり長期化の見込み(価格の下支え要因)。

・米国とイランの開戦リスクが高まっている。共和党議会側はイランに対する戦闘の準備を終えており、それをトランプ大統領が止めた、という状況。

・米国の債務上限問題の顕在化(8月~9月にデフォルトするリスク)。

・欧州議会選でのポピュリズム政党の躍進。それに伴うEU懐疑論の高まりによる域内の政情不安定化。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

(投機・投資要因)

・銀価格は金銀在庫レシオが銀在庫の減少、ないしは金在庫の増加、あるいは両要因によって低下した場合、金銀レシオが上昇するリスク(銀価格の上昇要因)。

・金銀はロング・ショートとも増加しているがロングの増加が極めて多い。銀も同様にロングが増加、ショートは減少している。

・プラチナはロングが減少、ショートが増加。需要の減少とパラジウムの供給不足による生産維持観測が市場参加者を弱気にさせている。パラジウムはロングが大幅に増加。ショートも増加しているが、ロングの増加が顕著。

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが274,633枚(前週比 +24,519枚)、ショートが70,310枚(+4,434枚)、ネットロングは204,323枚(+20,085枚)、銀が93,275枚(+8,050枚)、ショートが78,759枚(▲3,806枚)、ネットロングは14,516枚(+11,856枚)

・直近の投機筋のポジションは、プラチナはロングが46,797枚(前週比 ▲539枚)、ショートが44,827枚(+4,443枚)、ネットロングは1,970枚(▲4,982枚)、パラジウムが13,543枚(+1,182枚)、ショートが3,338枚(+512枚)、ネットロングは10,205枚(+670枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物価格は高安まちまち。トウモロコシは生産地の降雨で小幅上昇、大豆や小麦はドル高の進行で水準を切下げた。

しかし、大豆の作柄は2012年以来の最悪の水準で、春小麦の作柄も悪化していることから供給懸念は解消していない。

【穀物価格見通し】

穀物価格は再び買戻しが入り上昇すると考える。米中首脳会談が実施される見通しが示されたこと、米農務省の需給報告で、トウモロコシの生産見通しが引き下げられたこと、欧州の気温も上昇しており、収穫への懸念が強まっていることから。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・米国のトウモロコシ・大豆の生産減少観測による需給タイト化観測。

・豪州東部の大干ばつによる小麦生産の減少懸念。

・欧州・ロシアの気温上昇に伴う小麦生産の減少懸念。

・作付面積動向(トウモロコシは下落、大豆は上昇、小麦は上昇)トウモロコシ作付意向面積 9,279万エーカー(市場予想 9,127万エーカー、前年8,803万エーカー)大豆 8,462万エーカー(8,620万エーカー、8,898万エーカー)小麦 4,575万エーカー(4,688万エーカー、4,734万エーカー)

・6月の米需給報告の生産見通し

トウモロコシ136億8,000万ブッシェル(前月150億3,000万Bu)大豆 41億5,000万Bu(41億5,000万Bu)小麦 19億300万Bu(18億9,700万Bu)

・6月の米需給報告の在庫見通しトウモロコシ16億7,500万ブッシェル(前月24億8,500万Bu)大豆 10億4,500万Bu(9億7,000万Bu)小麦 10億7,200万Bu(11億4,100万Bu)

・米緩和観測に伴う実質金利の低下に伴うドル安の進行は、シカゴ穀物の輸出競争力を改善し、需給面で価格の上昇要因に。

(特殊要因)

・米中通商交渉はほぼ戦争にまで発展(価格の下落要因)。知的財産権や技術の強制移転などの重要なポイントで妥結できておらず、米中の覇権争いであり長期化の見込み。

・米政府はブッシェル当たり大豆2ドル、トウモロコシ0.04ドル、小麦0.63ドルの補助金を供給することを検討。生産減少を食い止めるため価格の下落要因に。

・エルニーニョ現象発生による北米の増産は基本的には価格の下落要因だが、今年は洪水が発生しており、夏場の気温上昇や乾燥といった育成環境の悪化の可能性はあり、価格の上昇要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

(投機・投資要因)

・トウモロコシはロングが増加、ショートが減少。ロング増加は米中貿易交渉の進捗期待、ショートの減少継続は米生産地の生育環境悪化で。

大豆はロングが増加、ショートが減少、小麦も同様。

・直近の投機筋のポジションは、トウモロコシはロングが473,643枚(前週比 +26,087枚)、ショートが203,297枚(▲4,884枚)、ネットロングは270,346枚(+30,971枚)、大豆はロングが157,233枚(+16,801枚)、ショートが159,967枚(▲28,134枚)、ネットロングは▲2,734枚(+44,935枚)、小麦はロングが139,346枚(+13,534枚)、ショートが110,043枚(▲6,059枚)、ネットロングは29,303枚(+19,593枚)

◆主要ニュース


・5月日本企業向けサービス価格指数 前年比+0.8%(前月+1.0%)

・4月米FHFA住宅価格指数 前月比+0. 4%(前月+0.1%)

・4月米S&Pコアロジック住宅主要20都市価格指数 前月比±0.0%(前月改定+0.32%)。前年比+2.54%(+2.61%)

・6月リッチモンド連銀製造業指数 3(前月5)
 出荷 7(2) 新規受注 1(0) 受注残 0(▲4) 雇用者数 2(17) 賃金 21(38)

・5月米新築住宅販売件数 前月比▲7.8%の62.6万戸(前月改定▲3.7%の67.9万戸)

・6月米コンファレンスボード消費者信頼感指数 121.5(前月改定 131.3)
 現況指数 162.6(170.7)
 期待指数 94.1(105.0)
 6ヵ月以内自動車購入 11.3(15.1)、住宅 6.8(6.5)

・パウエルFRB議長(投票権あり・中間派)、「金融緩和の必然性は高まっているが、個別のデータや短期的な心理の振幅に過剰反応しないようにも注意している。」過剰な利下げ期待をけん制。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・DOE米在庫統計市場予想 原油▲2,837KB(前週▲3,106KB)
 ガソリン▲331KB(▲1,692KB)
 ディスティレート+171KB(▲551KB)
 稼働率+0.34%(+0.70%)

・API石油統計 原油在庫▲7.55MB
 クッシング▲1.26MB
 ガソリン▲3.17MB
 ディスティレート+0.16MB・イラン外務省ムサビ報道官、「新たなイランに対する制裁は、外交の道筋が永遠に立たれたことを意味する。」

・ペルシャ湾の石油製品輸出にかかわる船舶の保険料、通常の10倍となる50万ドルに。

・ロシア パトルシェフ安全保障会議書記、「ロシアが把握している情報によれば、米無人機が撃墜されたのはイランの領空内。

・米ポンペオ国務長官、サウジアラビア サルマン国王と面談。

【メタル】
・Chuquicamata鉱山労働者、鉱山への道路封鎖。ストライキ12日目。

・MS、非鉄金属の需要見通しを下方修正。
 銅は世界需要見通しは+0.7%(中国+1.0%、その他+0.4%)、2019年の価格見通しは▲7%の6,228ドル。
 アルミは需要の伸びが+1.5%(前回見通し+3.8%)とし、価格見通しは▲7%の1,813ドル。
 ニッケルは需要の伸びが+1.9%、NPIの生産増加とステンレス需要の鈍化で2019年-2020年は供給過剰に。価格見通しは▲1.0%の12,268ドル。

・Yuguang Gold Lead Co.、生産ラインの1つをメンテナンス目的で停止。▲1万トンの減産に。

・5月日本伸銅品生産 前年比▲8.4%の6万2,286トン(前月▲7.0%の6万4,960トン)

・ICSG、1-3月
 鉱山キャパシティ 6,033千トン(前年6,063千トン)
 鉱山生産4,896千トン(4,961千トン)
 鉱山稼働率 81.1%(81.8%)
 プライマリ精錬銅生産 4,798千トン(4,871千トン)
 セカンダリ精錬銅生産 1,020千トン(1,013千トン)
 精錬所キャパシティ 6,992千トン(6,791千トン)
 精錬所稼働率 83.2%(86.8%)

 供給合計 5,818千トン(5,884千トン)
 需要 5,850千トン(5,802千トン)
 ▲32千トンの供給不足(+82千トンの供給過剰)

・鉱山生産は▲1.3%。精鉱生産は▲1.0%(チリの生産が鉱石の品位低下で▲5%となり、インドネシアの生産が2大鉱山の生産減少で前年比▲52%となったことをペルー、中国、モンゴルなどの増産が相殺)、SX-EWは▲3.5%

・精錬銅生産は前年比▲1.1%。プライマリ生産は▲1.5%、スクラップは+0.7%。チリの精錬所の一時的な稼働停止、インドのTuticorin精錬所の停止、電力供給制限でザンビアの生産が減少したこと、ドイツ・日本・ペルー・米国の定修による減産の影響。これらの減産を中国の生産増加に加え、豪州・ブラジルの増産が相殺。

・精錬銅需要は+0.8%の増加。中国の顕在需要が+4%となったことが影響。中国外では▲2%の減少。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.ICEアラビカ ( その他農産品 )/ +4.36%/ +4.52%
2.TGE小豆 ( 穀物 )/ +3.08%/ +64.90%
3.SHF 金 ( 貴金属 )/ +2.84%/ +11.51%
4.CME豚赤身肉 ( 畜産品 )/ +2.13%/ +22.02%
5.LIFFEロブスタ ( その他農産品 )/ +1.94%/ ▲5.98%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
68.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ ▲6.80%/ ▲58.90%
67.TCMガソリン ( エネルギー )/ ▲2.23%/ +26.14%
66.ブラジル・ボベスパ ( 株式 )/ ▲1.93%/ +13.89%
65.CBT大豆油 ( 穀物 )/ ▲1.23%/ +1.63%
64.CBTもみ米 ( 穀物 )/ ▲1.12%/ +9.51%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :26,548.22(▲179.32)
S&P500 :2,917.38(▲27.97)
日経平均株価 :21,193.81(▲92.18)
ドル円 :107.20(▲0.10)
ユーロ円 :121.85(▲0.46)
米10年債利回り :1.99(▲0.03)
独10年債利回り :▲0.33(▲0.02)
日10年債利回り :▲0.16(▲0.00)
中国10年債利回り :3.24(▲0.01)
ビットコイン :11,366.24(+509.55)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :25.65(▲0.22)
エネルギー :36.76(+1.13)
ベースメタル :21.43(+0.55)
貴金属 :15.93(▲0.54)
穀物 :23.34(▲1.61)
その他農畜産品 :26.46(▲0.44)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :42.65(▲0.14)
Brent :39.32(+0.05)
米天然ガス :33.69(+5.9)
米ガソリン :37.66(+0.03)
ICEガスオイル :29.26(+0.81)
LME銅 :15.13(+0.41)
LMEアルミニウム :16.72(+0.94)
金 :19.08(▲2.18)
プラチナ :18.06(▲0.48)
トウモロコシ :29.31(▲2.6)
大豆 :19.08(▲2.18)

【エネルギー】
WTI :57.83(▲0.07)
Brent :65.05(+0.19)
Oman :62.95(▲0.45)
米ガソリン :187.72(+2.23)
米灯油 :192.34(+1.45)
ICEガスオイル :589.00(+9.25)
米天然ガス :2.31(+0.01)
英天然ガス :25.10(▲1.83)

【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :65.05(+0.19)
SPO380cst :389.24(+5.14)
SPOケロシン :78.46(+1.44)
SPOガスオイル :78.20(+1.43)
ICE ガスオイル :79.06(+1.24)
NYMEX灯油 :193.09(+0.62)

【貴金属】
金 :1423.44(+3.72)
銀 :15.37(▲0.07)
プラチナ :810.40(▲4.64)
パラジウム :1530.39(▲8.00)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :6,005(+73:19.5C)
亜鉛 :2,524(+63:120B)
鉛 :1,910(+13:8C)
アルミニウム :1,801(+28:24.5C)
ニッケル :12,290(+160:80C)
錫 :19,010(+55:20B)
コバルト :28,000(±0.0)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :6015.50(+50.50)
亜鉛 :2534.00(+44.00)
鉛 :1935.00(+20.50)
アルミニウム :1813.00(+13.00)
ニッケル :12310.00(+120.00)
錫 :19020.00(▲55.00)
バルチック海運指数 :1,258.00(+19.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :108.73(▲0.51)
NYMEX鉄鉱石 :107.93(▲1.06)
NYMEX原料炭スワップ先物 :196(+0.50)
上海鉄筋直近限月 :3,829(+38)
上海鉄筋中心限月 :3,964(+56)
米鉄スクラップ :262(±0.0)

【農産物】
大豆 :903.50(▲5.50)
シカゴ大豆ミール :315.70(▲1.90)
シカゴ大豆油 :28.00(▲0.35)
マレーシア パーム油 :1948.00(▲19.00)
シカゴ とうもろこし :447.50(+0.75)
シカゴ小麦 :535.75(▲2.25)
シンガポールゴム :201.20(▲1.10)
上海ゴム :11490.00(+10.00)
砂糖 :12.33(+0.06)
アラビカ :106.45(+4.45)
ロブスタ :1416.00(+27.00)
綿花 :62.20(▲0.10)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :74.40(+1.55)
シカゴ生牛 :107.75(+0.83)
シカゴ飼育牛 :131.33(▲0.45)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。