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景気循環銘柄売られ非循環銘柄物色される
  • MRA商品市場レポート for PRO

2019年6月25日 第1558号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「景気循環銘柄売られ非循環銘柄物色される」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は貴金属などの安全資産が物色され、コーヒーなどのソフトコモディティも上昇したが、景気循環系商品は広く売られた。

イランのハメネイ師に対して米国が制裁を科すと決定したことで中東懸念が強まったが、むしろ欧米統計の悪化や中東情勢が景気に悪影響を与える、との見方が強まっている事のほうが価格に対する影響が大きいようだ。

昨日大きく上昇したのは気温上昇により米天然ガス。欧州も気温は上昇しているが、景況感の悪化による需要減少がより影響した。石炭価格の下落を受けて排出権価格も上昇している。

【本日の価格見通し総括】

本日も米国の外交動向が最重要項目。米中のG20を控えた事務方の事前協議の進捗や、制裁を強化しているイランの対応などに注目が集まる。

今のところ中国問題は景況感にプラス、イラン問題はマイナス、という整理。ただしいずれも景気を「押し上げる」ような材料ではないため、解決したとしても従来の景気減速路線に回帰するだけであることは忘れてはならない。

その場合、米国が景気にアクセルを踏み込むために利下げをどのようなペースで行っているかがポイントになるだろう。

予定されている統計では、米コンファレンスボード消費者信頼感指数(市場予想131.0、前月134.1)、米新築住宅販売(前月比+1.6%の68.4万戸、前月▲6.9%の67.3万戸)に注目しているが、強弱まちまちであり市場への影響は中立か。

【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】

週末にペンス副大統領は中国に関する演説の再延期を決定した。これは今週のG20での米中協議の地ならしと考えられる。

ここから読み取れることは2つ。1つは米国側は景気の減速を受けて、一時的に「撃ち方止め」にしたいと考えていること、もう1つはペンス副大統領の中国に関する発言は、相当厳しい内容だった可能性があること、である。

まず1つ目の合意への期待だが、恐らく「話し合いを継続すること」で合意し、追加制裁は習近平のメンツを立てつつ(北朝鮮問題への対応を迫る意味合いもある)、数ヵ月(長くても3ヵ月程度だろうか)延期するというのがメインシナリオではないだろうか。

ただし、これは足元の景気の減速に伴う支持率低下を意識したものであり、一時的な制裁見送りになる点は忘れてはならない。制裁によって過剰に減速している景気が、通常の景気減速局面に戻るだけの話である。

2つ目については、恐らく中国に対して相当厳しいコメントになるのだろう。そうでなければこのタイミングで演説を先送りする意味はない。しかしこのこととは、共和党側は中国に対する姿勢を緩めるつもりがないことを意味している。

つまり、いずれかのタイミングでペンス副大統領が講演すると、それがリスク資産価格の強い売り材料になる可能性があることである。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

(マクロ要因)

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標再びの減速(価格下落要因)。

・世界景気の減速観測。IMFは2019年の経済見通しを引き下げ(+3.5%→+3.3%)ており、米中対立の激化があった場合には▲0.5%程度の引き下げリスクも視野に入れている。リスク資産価格に対して下向きのリスク。

・FRBの利下げの可能性が再び高まる(トランプ大統領があからさまに要求を始めており、米中通商戦争の行方次第ではあり得る状況に)。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q119の中国GDPは前年比+6.4%、前期+6.4%と市場予想の+6.3%を上回りやや減速懸念が後退)。

※中国は地方政府の資金調達規制を実質緩和。

・景気減速下での原油価格高止まりは、消費国から生産国への所得移転を通じて景気の下押し要因に。また、リスク回避のドル高進行も価格上昇を抑制。

・2020年からインドが人口ボーナス期入りすることによる、構造的な需要の増加は中長期的な価格の上昇要因。

(特殊要因)

・米中通商協議が難航しており、世界経済が減速する場合(下落要因)。

足元、米中首脳会談が開催される見通しが示されたが、話し合いを継続することは決められても合意に至るかどうかは極めて不透明。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・中東情勢の悪化を受けた域内景気の混乱と、それを受けた欧州景気への悪影響拡大(下落要因)

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。とりあえず10月末を期限として問題先送りしたが、メイ首相退陣、ハードブレグジット推進派の台頭によってよりそのリスクは高まる(下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

(投機・投資要因)

・米利下げ観測の高まりで長短金利逆転状況が解消し、金融株を中心に株が上昇、リスクテイク再開で景気循環系商品価格にプラスの影響を与える場合。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油相場は上昇後下落した。米国がイランの最高指導者であるハメネイ師に対して制裁を実施したことで、米イランの緊張が高まったことが買い材料となったが、欧州統計の悪化など、景気への懸念が再度意識されたことが影響した。

また、トランプ大統領はホルムズ海峡を航行する船舶は、自国の軍隊が防衛すべきだと日本を名指しで批判、さらに「米国は最大の産油国になったため、ホルムズ海峡にいる必要はない」と発言しており、イランとの関係が悪化しても構わない、ともとれる発言をしていることも、危機感を高めている。

【原油価格見通し】

原油価格は高値圏での推移になると考える。基本、両国の国力を削る開戦はない、というのがメインシナリオではあるものの、米国がハメネイ師に対する制裁実施を決定、この状態で素直にイラン側が交渉に乗ってくるとは思えず、「窮鼠猫を噛む」可能性があり、戦争の選択肢が排除できなくなってきた。

トランプ大統領はイランに対して攻撃したくない、というのが本音と見られるが、ボルトンを筆頭とする共和党保守強硬派の意向が強く反映されているとみられる。引き続き両国動向は、ニュースに一喜一憂とならざるを得ない。

これ以上、中東を材料に価格が上昇するとすれば、さらに具体的に米国とイランが軍事的に衝突することであるが、現時点では希望的観測も含めて「ない」と信じたい。

この中東有事の高まりで、OPECプラス会合での方針は急速に従来の見通し、すなわち▲120万バレルの減産水準を順守、という方向に舵が切られるとみられる。

中東情勢が緊迫しているためBrentベースで60ドル程度まで、価格を押し下げると期待されるが、中東の緊張が緩和されれば、ISM製造業指数の低下もあってBrentベースで55ドル程度までの下落が見込まれる。

なお、この状況においてもOPEC諸国に対する影響を残すことができるため、イランがOPECを脱退する、というのは選択肢になっていないと考える。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は下落した。欧州経済統計の減速を受けて欧州炭が下落したことが影響した。

【石炭価格見通し】

石炭価格は夏場に向けて上昇するとみているものの、欧州市場の需給緩和(よりクリーンなエネルギーへのシフト、景気減速による電力需要の後退)、中国の景況感の悪化を受け、当面は下値余地を探る動きになると考える。

中国の石炭の輸入量は回復しており、過去5年のレンジを上抜けした。生産に関しては減少傾向となっているが、港湾在庫は増加するなど、需要面の弱さから総じて中国の石炭需給は緩和傾向にある可能性が高く、ファンダメンタルズは強くない。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・原油価格の上昇に伴う北米の増産継続は、需給緩和で価格の下落要因。

・景気が減速する中での減産継続は、その効果が限定されはするものの、足元の価格下落を受けてOPECプラスの協調減産は7月以降も継続(場合によると減産枠拡大)の見込みであり、一定の下支え効果をもたらす見込み。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・中国の石炭生産鈍化(4月2億9,429万トン)、輸入減少(1,564万7,172トン)にもかかわらず、港湾在庫が増加していることは国内需要の弱さを示唆(石炭)。

(特殊要因)

・米国がイランを攻撃する準備を整えていたことが発覚、両国の緊張はこれまでにないほど高まっていることは、開戦を通じた供給懸念を通じて価格の上昇要因に。

・北朝鮮のミサイル発射により、制裁が継続される可能性が高まっていることは、北朝鮮からの石炭輸出(密輸)を制限し、価格の上昇要因(石炭)。

・米中情報戦争をめぐる華為技術排除の決定を受けて中国政府は豪州からの石炭輸入を規制、インドネシア炭にシフトしていることはNEWC価格の下落要因に(石炭CIF価格に対する影響は中立)。

(投機・投資要因)

・WTI・Brentともロングの減少が顕著だが、WTIのショートには買戻し、Brentはショートが増加した。中東情勢を巡り市場参加者のスタンスはまちまちだが、とにかく積み上がったロングから解消する動きが強まっているようだ。

・テクニカルには、世界の市場参加者は原油取引において「一目均衡表」を活用するようになっており、「雲のねじれ」がある7月初に、例えば中東情勢不安が顕在化したり、金融緩和が意識されるようになったり、OPECが減産幅を拡大したり、ということがあれば、7月意向、ポジションの巻き戻しで急騰リスクはあり得る。

・直近の投機筋のポジションは、WTIはロングが502,749枚(前週比 ▲12,708枚)、ショートが139,662枚(▲24,140枚)、ネットロングは363,087枚(+11,432枚)、Brentが333,483枚(前週比▲12,583枚)、ショートが61,977枚(+7,937枚)、ネットロングは271,506枚(▲20,520枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME非鉄金属価格は下落後上昇した。独企業景況感指数・期待指数が悪化したことで景気への懸念が広がったほか、ダラス連銀製造業が悪化したことなどが売り材料となった。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は、米中首脳会談実施の可能性が高まったこと、FOMCが利下げに舵を切ったことを今のところ織り込んだ可能性があり、再び景況感の悪化が意識され、イランと米国の関係悪化による景気減速への懸念などから再び下値余地を探る動きになると考える。

しかし、米中会談がどのような形になるか全く予断を許さない状況であるため、方向感が出にくいことも事実。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は再開しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCも高止まり。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

(特殊要因)

・中国政府がシャドーバンキングを含む、違法な資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは、需要面で価格の上昇要因に。

・銅の生産減少観測(環境問題によるインド、露天掘りから地下生産に変更するインドネシア、コデルコのストライキ)、ヴァーレの尾鉱ダム事故の影響による供給減少(アルミやニッケルなどに波及する可能性)。

オランダ ニルスター社の豪鉛精錬所(ポート・ピリー)停止による、供給不安(鉛)。

ハイドロのAlunorteアルミナ精錬所の問題に象徴されるように、広く非鉄金属を含む鉱物セクターは、環境問題への高まりから供給が政府命令で急に停止してしまう可能性は低くない。

・LME指定倉庫在庫の減少が、LMEの倉庫運営ルール変更に伴う保管場所変更の取引の影響である場合、ルールが見直された際に再度、LME指定倉庫在庫が急増する可能性(下落要因)。

(投機・投資要因)

・6月14日付のLMEポジションは動きがまちまちだったが、銅や鉛、アルミ、錫のショートポジションに買戻しの動きが強まった。米中首脳会談が開催され、米中協議が進捗するとの期待が買戻しにつながっている。

14日以降も価格上昇が続いているが、恐らく四半期末を控えた投機の買戻しは継続しているとみられる。

投機筋のLME+CME銅ネット売り越し金額は▲67.1億ドル(前週▲60.8億ドル)と売り越し幅を拡大。売り越し額の増加は+10.8%に。

買い越し枚数はトン数換算ベースで▲1,631千トン(前週▲1,532千トン)と減少。亜鉛と錫以外はトン数ベースでネット売り越しのまま。ネット売り越しの増加率は+6.5%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップ市場はまちまち、原料炭スワップ先物は変わらず、中国鉄鋼製品市場は上昇した。

景気の見通しはネガティブながら、米中通商協議が進展するのではとの期待が高まっていることがこの影響を緩和するとみられていること、ヴァーレやリオの生産見通しが弱気であることが価格を高止まりさせている。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は、中国政府の公共投資促進策と豪州からの供給不安、ヴァーレの生産が完全に回復していないこと、リオの減産見通しといった供給面、米中首脳会談実施期待を受けた鉄鋼製品の投機的な買戻しを背景に、高値圏での推移になると予想。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・直近の鉄鋼業PMIは50.0(前月52.1)と減速。生産の回復(54.5→56.0)はあったが、新規受注の落ち込みが顕著(51.7→46.7)であり、輸出向け新規受注も大きく落ち込み(48.9→45.9)。

・中国の鉄鋼製品在庫水準の高さは価格の下落要因。鉄鋼製品在庫は前週比+22.2万トンの1,178.1万トン(過去5年平均1,084.8万トン)と例年を上回っている。

中国の鉄鉱石在庫水準の高さは徐々に低下し、価格の下支え要因となる可能性。鉄鉱石在庫は前週比▲195万トンの1億1,675万トン(過去5年平均1億1,839.6万トン)、在庫日数は▲0.4日の24.5日(過去5年平均 28.6日)と例年の水準を下回った状態が続いている。

粗鋼生産の回復で原材料在庫が減少した形。これは鉄鋼業PMIとほぼ平仄が取れている。

・季節的に鉄鋼製品在庫の取り崩し時期であり、価格には下押し圧力がかかりやすい。

・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、すでにインフラ整備のための投資拡大方針を示しており、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

・ヴァーレ、リオ・ティントの生産目標引き下げによる、供給減速。

(特殊要因)

・中国政府がシャドーバンキングを含む、違法な資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは価格の上昇要因。

・ヴァーレの尾鉱ダム決壊の影響が拡大し、さらに供給減少が起きた場合(自社・他社ともにあり得る)、価格の上昇要因に。

ヴァーレの尾鉱ダム事故の影響で、今後、低品位鉱石価格にも上昇圧力がかかる公算。

(投機・投資要因)

・供給懸念などを通じて大連取引所は建玉を積み増しながら、価格を切り上げており、先々の下落リスクは高まっている状況。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金・銀価格は再び上昇した。トランプ大統領がイラン ハメネイ師に対して制裁を発動したことで、両国の関係がさらに悪化するとの懸念が強まったことが、安全資産需要を高めたため。

また、米長期金利低下に伴う実質金利の低下も価格を押し上げた。

PGMは金銀価格の上昇と株価の高値維持を受けて堅調な推移。特に供給面が意識されているパラジウムは大きな上昇となっている。

【貴金属価格見通し】

金価格は、FRBが緩和方向に舵を切ったこと、中東情勢の悪化やイタリアなどの情勢不安を材料に堅調な推移になると考える。

また、中東情勢、英国のEU離脱、欧州問題などの悪化を受けて安全資産需要が継続していることも価格を下支えするとみる。

銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)の上昇が金銀レシオを押し上げているため対金で割安に推移。

PGM価格は金銀価格が底堅い推移になるため堅調で、目先、米中協議が実施される見通しとなったことや米利下げ観測が株を押し上げるため、金銀以上に上昇すると考える。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・FRB・ECBの金融緩和期待が市場で再び高まっていること、原油価格の高止まりは実質金利の低下を通じて金銀価格の上昇要因に(逆に利下げ期待が高まりすぎているため、期待と金融当局の判断の乖離から、7月FOMCで下落に転じる可能性も)。

・景気の先行きを懸念した株価下落とそれに伴う長期金利・実質金利の低下(金銀価格の上昇要因)。ただし、欧州の政情安定化や米中貿易戦争の合意、景況感の改善で株価が上昇した場合には金銀価格の下落要因。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト期待(パラジウムの上昇要因・プラチナの下落要因)。ただし実際にシフトが起きるには相当の時間がかかる見込み。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

(特殊要因)

・米中通商交渉は難航しており、相互報復まで発展(価格の上昇要因)。知的財産権や技術の強制移転などの重要なポイントで妥結できておらず、米中の覇権争いであり長期化の見込み(価格の下支え要因)。

・米国とイランの開戦リスクが高まっている。共和党議会側はイランに対する戦闘の準備を終えており、それをトランプ大統領が止めた、という状況。

・米国の債務上限問題の顕在化(8月~9月にデフォルトするリスク)。

・欧州議会選でのポピュリズム政党の躍進。それに伴うEU懐疑論の高まりによる域内の政情不安定化。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

(投機・投資要因)

・銀価格は金銀在庫レシオが銀在庫の減少、ないしは金在庫の増加、あるいは両要因によって低下した場合、金銀レシオが上昇するリスク(銀価格の上昇要因)。

・金銀はロング・ショートとも増加しているがロングの増加が極めて多い。銀も同様にロングが増加、ショートは減少している。

・プラチナはロングが減少、ショートが増加。需要の減少とパラジウムの供給不足による生産維持観測が市場参加者を弱気にさせている。パラジウムはロングが大幅に増加。ショートも増加しているが、ロングの増加が顕著。

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが274,633枚(前週比 +24,519枚)、ショートが70,310枚(+4,434枚)、ネットロングは204,323枚(+20,085枚)、銀が93,275枚(+8,050枚)、ショートが78,759枚(▲3,806枚)、ネットロングは14,516枚(+11,856枚)

・直近の投機筋のポジションは、プラチナはロングが46,797枚(前週比 ▲539枚)、ショートが44,827枚(+4,443枚)、ネットロングは1,970枚(▲4,982枚)、パラジウムが13,543枚(+1,182枚)、ショートが3,338枚(+512枚)、ネットロングは10,205枚(+670枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物価格は上昇した。北米での降雨や欧州全体を高温が襲っていることなどから収穫への懸念が強まったこと、ドル安が進行したことが背景。

【穀物価格見通し】

穀物価格は再び買戻しが入り上昇すると考える。米中首脳会談が実施される見通しが示されたこと、米農務省の需給報告で、トウモロコシの生産見通しが引き下げられたこと、欧州の気温も上昇しており、収穫への懸念が強まっていることから。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・米国のトウモロコシ・大豆の生産減少観測による需給タイト化観測。

・豪州東部の大干ばつによる小麦生産の減少懸念。

・欧州・ロシアの気温上昇に伴う小麦生産の減少懸念。

・作付面積動向(トウモロコシは下落、大豆は上昇、小麦は上昇)トウモロコシ作付意向面積 9,279万エーカー(市場予想 9,127万エーカー、前年8,803万エーカー)大豆 8,462万エーカー(8,620万エーカー、8,898万エーカー)小麦 4,575万エーカー(4,688万エーカー、4,734万エーカー)

・6月の米需給報告の生産見通し

トウモロコシ136億8,000万ブッシェル(前月150億3,000万Bu)大豆 41億5,000万Bu(41億5,000万Bu)小麦 19億300万Bu(18億9,700万Bu)

・6月の米需給報告の在庫見通しトウモロコシ16億7,500万ブッシェル(前月24億8,500万Bu)大豆 10億4,500万Bu(9億7,000万Bu)小麦 10億7,200万Bu(11億4,100万Bu)

・米緩和観測に伴う実質金利の低下に伴うドル安の進行は、シカゴ穀物の輸出競争力を改善し、需給面で価格の上昇要因に。

(特殊要因)

・米中通商交渉はほぼ戦争にまで発展(価格の下落要因)。知的財産権や技術の強制移転などの重要なポイントで妥結できておらず、米中の覇権争いであり長期化の見込み。

・米政府はブッシェル当たり大豆2ドル、トウモロコシ0.04ドル、小麦0.63ドルの補助金を供給することを検討。生産減少を食い止めるため価格の下落要因に。

・エルニーニョ現象発生による北米の増産は基本的には価格の下落要因だが、今年は洪水が発生しており、夏場の気温上昇や乾燥といった育成環境の悪化の可能性はあり、価格の上昇要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

(投機・投資要因)

・トウモロコシはロングが増加、ショートが減少。ロング増加は米中貿易交渉の進捗期待、ショートの減少継続は米生産地の生育環境悪化で。

大豆はロングが増加、ショートが減少、小麦も同様。

・直近の投機筋のポジションは、トウモロコシはロングが473,643枚(前週比 +26,087枚)、ショートが203,297枚(▲4,884枚)、ネットロングは270,346枚(+30,971枚)、大豆はロングが157,233枚(+16,801枚)、ショートが159,967枚(▲28,134枚)、ネットロングは▲2,734枚(+44,935枚)、小麦はロングが139,346枚(+13,534枚)、ショートが110,043枚(▲6,059枚)、ネットロングは29,303枚(+19,593枚)

◆本日のMRA's Eye


「原油市場と株式市場の関係の変化」

商品市場から見た場合の株式市場への影響の仕方にも変化がみられている。その市場規模の主従関係から言えば株式市場が主、商品市場が従の関係であり、商品市場動向が株価を変動させるという考え方は因果関係的には成立しなかった。

しかし、特に原油において、1.期待インフレ率の変化を通じて為替・インフレ系資産価格に影響する、2.原油価格が下落する局面では、主に米国を中心とする中小規模のエネルギー企業の業況が悪化、ハイイールド債市場動向の変化を通じて信用市場、ひいては株式市場に影響を及ぼす、3.同様に原油価格下落局面では産油国政府系ファンドが保有している株の売り圧力が強まる、といった形で影響を及ぼすようになった。

ただしこれらが顕在化するのは相場が極端に動いた時であり、普段はあまり意識されない要因である。

しかし、リーマンショック以降、投資銀行が商品市場での取引規模を縮小していることに伴う流動性の低下でボラティリティが上昇、以前よりも値動きが激しくなったため、株式市場はこれを無視できなくなっている。

このことが強く意識されたのが2014年11月のOPEC総会で、ムハンマド皇太子の意向を受けて減産が見送りされたことによる、原油価格の急落である。

急落の結果、歳入が減少する産油国の政府系ファンドが保有している株を売却するのでは?との見方が急速に広がった。原油価格の変化は、「価格が上昇するときは消費国から産油国への、下落するときには産油国から消費国への所得移転が起きる」という経済効果をもたらすと考えられる。

価格急落による消費国への所得移転の結果、その「穴埋め」をするために保有株を売却しなければならなくなるわけだ。穴埋めの手段としては債券の起債も考えられ、サウジアラビアはこの間起債を行っている。

しかし、株価の下落は特に米国や欧州などの株価に対する感応度の比較的高い国の消費者の、消費マインドに悪影響を及ぼす。つまり、原油価格が下落すると本源的には需要が増加するものの、株価の急落による「マインドの悪化」が需要を減じる、という今までにはあまり考えられなかった状況が顕在化するようになった。

これらの事象を別の言葉で表現すると、原油(や工業金属)の需要が増加する中で、昔以上に商品市場の認知度が上がり、今まで以上に深く、既存の伝統的な市場メカニズムの中に組み込まれてしまったため、株式市場も無視できなくなったともいえる。

金融当局がどのように規制を加えようとも、商品市場と株式市場・債券市場・為替市場が強く結びついた状態が解消されることは恐らくない。

あるとすれば原油を使わない世の中になった場合だが、それには時間がかかる上、仮になったとしても原油なしで経済活動をするために、別の資源が必要になるため、結局商品市場がその他の市場に与える影響はなくならないと考えられる(例えば今進められている家電や自動車の電化は、多くの銅を必要とする)

◆主要ニュース


・4月日本景気動向指数海底 先行指数 95.9(速報比+0.4、前月改定 95.9)、景気一致指数 102.1(+0.2、99.4)

・5月日本全国スーパー売上高 前年比 ▲0.7%の1兆228億円(前月▲1.0%の1兆643億円)

・6月独IFO企業景況感指数 97.4(前月97.9)、期待指数 94.2(95.2)、現状指数 100.8(100.7)

・5月シカゴ連銀製造業活動 ▲0.05(前月 ▲0.48)

・6月ダラス連銀製造業活動 ▲12.1(前月▲5.3)
 生産 8.9(6.3)
 新規受注 3.7(2.4)
 受注残 3.4(▲1.6)
 完成品在庫 ▲6.1(▲6.2)
 雇用 8.8(11.6)

・ダラス連銀カプラン総裁(投票権なし・ハト派)、「今、利下げを擦れば不均衡を助長すると懸念。」

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・イラン アシェナ大統領顧問、「米国はイランに譲歩を望むなら、核合意を上回る提案を。」

・米トランプ大統領、イラン最高指導者ハメネイ師を含む軍高官8人に制裁を科す。

・米トランプ大統領、「ホルムズ海峡を通過するタンカーは自国で自衛するべきだ。米国が91%、日本が62%の原油をホルムズ海峡経由で輸入している。」

・イラン外務省、「圧力や制裁でイランに交渉や降伏を強いることはできない。それが答えになるなら早く成果が出ていると米国は十分に分かっている。」

【メタル】
・中国政府、24万トンの第6分類の銅スクラップ輸入を承認。

・米商務省、テスラのバッテリーセル向け日本製アルミの関税を免除。

・住友金属鉱山、2019年のニッケル需給見通し、前回予想比▲1万6,000トンの▲5万1,000トンの供給不足。中国のステンレス需要予想を上方修正。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.TCMガソリン ( エネルギー )/ +5.94%/ +29.02%
2.NYM米天然ガス ( エネルギー )/ +5.26%/ ▲21.73%
3.欧州排出権 ( 排出権 )/ +4.24%/ +6.39%
4.TGE小豆 ( 穀物 )/ +3.18%/ +59.97%
5.パラジウム ( 貴金属 )/ +2.40%/ +22.09%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
68.CME豚赤身肉 ( 畜産品 )/ ▲4.46%/ +19.48%
67.TCM天然ゴム ( その他農産品 )/ ▲2.79%/ +35.70%
66.CME木材 ( その他農産品 )/ ▲1.75%/ +19.76%
65.DME Oman ( エネルギー )/ ▲1.55%/ +18.48%
64.MDEパーム油 ( その他農産品 )/ ▲1.55%/ ▲1.85%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :26,727.54(+8.41)
S&P500 :2,945.35(▲5.11)
日経平均株価 :21,285.99(+27.35)
ドル円 :107.32(±0.0)
ユーロ円 :122.32(+0.31)
米10年債利回り :2.02(▲0.04)
独10年債利回り :▲0.31(▲0.02)
日10年債利回り :▲0.15(+0.00)
中国10年債利回り :3.25(+0.02)
ビットコイン :10,815.24(+875.43)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :25.86(▲0.41)
エネルギー :35.60(▲0.68)
ベースメタル :20.88(▲0.55)
貴金属 :16.49(+0.33)
穀物 :24.95(▲0.56)
その他農畜産品 :26.90(▲0.37)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :42.75(▲0.19)
Brent :39.27(▲0.93)
米天然ガス :27.79(▲0.71)
米ガソリン :37.63(▲0.29)
ICEガスオイル :28.26(▲1.92)
LME銅 :14.73(▲0.33)
LMEアルミニウム :15.78(▲0.61)
金 :21.26(▲0.07)
プラチナ :18.54(+0.07)
トウモロコシ :31.92(▲1.88)
大豆 :21.26(▲0.07)

【エネルギー】
WTI :57.75(+0.32)
Brent :64.84(▲0.36)
Oman :63.40(▲1.00)
米ガソリン :185.30(▲0.31)
米灯油 :190.73(▲0.85)
ICEガスオイル :583.75(▲3.25)
米天然ガス :2.30(+0.12)
英天然ガス :26.93(▲0.22)

【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :64.84(▲0.36)
SPO380cst :384.10(+2.74)
SPOケロシン :77.02(▲0.80)
SPOガスオイル :76.77(▲0.85)
ICE ガスオイル :78.36(▲0.44)
NYMEX灯油 :191.44(▲0.58)

【貴金属】
金 :1418.46(+18.83)
銀 :15.44(+0.09)
プラチナ :815.16(+5.28)
パラジウム :1540.51(+36.05)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :5,933(▲20:15.5C)
亜鉛 :2,462(+29:116.5B)
鉛 :1,897(▲1:9.5C)
アルミニウム :1,773(+6:25.5C)
ニッケル :12,130(▲50:65C)
錫 :18,955(▲170:120B)
コバルト :28,000(±0.0)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :5965.00(+5.50)
亜鉛 :2490.00(+57.00)
鉛 :1914.50(+6.00)
アルミニウム :1800.00(+32.00)
ニッケル :12190.00(+75.00)
錫 :19075.00(+120.00)
バルチック海運指数 :1,239.00(+45.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :109.24(▲0.26)
NYMEX鉄鉱石 :108.99(+1.45)
NYMEX原料炭スワップ先物 :195.5(±0.0)
上海鉄筋直近限月 :3,791(+40)
上海鉄筋中心限月 :3,908(+92)
米鉄スクラップ :262(▲2.00)

【農産物】
大豆 :909.00(+6.25)
シカゴ大豆ミール :317.60(+2.00)
シカゴ大豆油 :28.35(▲0.09)
マレーシア パーム油 :1967.00(▲31.00)
シカゴ とうもろこし :446.75(+4.50)
シカゴ小麦 :538.00(+12.00)
シンガポールゴム :202.30(▲1.20)
上海ゴム :11480.00(▲155.00)
砂糖 :12.27(+0.05)
アラビカ :102.00(+2.20)
ロブスタ :1389.00(+8.00)
綿花 :62.30(+1.11)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :72.85(▲3.40)
シカゴ生牛 :106.93(+0.38)
シカゴ飼育牛 :131.78(▲1.90)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。