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FOMCのリスク
  • MRA外国為替レポート

2019年6月17日号

◆先週の市場総括


先週は米国によるメキシコへの関税賦課が回避されたことで週初にリスク回避が緩和。米国株は落ち着きを取り戻したが、利下げ期待で上値を追うにも限界があり、概ねもみ合い横ばいとなった。

週末にかけてはイラン情勢で地政学的リスクがやや意識されたが株価はさほど下落せず。米国10年債利回りは週初やや反発上昇したが週末にかけては地政学的リスクに押されて2.1%割れ、結果的に2.1%前後での推移となった。

ドル円相場は108円台半ばで始まり、リスク回避による円高は一服して前週に比べて底固さは増したものの108円台後半の上値も重く、概ね108円台前半でのもみ合いに終始した。

週末には強めの米経済指標を受けて反発し108円50銭~60銭でNYの取引を終えた。

ドルが底固さを取り戻すなかユーロは総じて軟調。ユーロドル相場は1.13台から1.12ちょうど近辺へ、ユーロ円相場は123円ちょうどから121円70銭近辺へ、それぞれ下落した。

月曜日の東京市場のドル円相場は早朝に前週末NYの引け108円20銭から108円60銭近辺へ飛んで高く始まり、60銭~70銭で推移。

週末にトランプ大統領がメキシコへの関税賦課を見送る旨発表。リスク回避が緩和した。日経平均は21,100円台に高寄り。その後はもみ合い小動き。

この日、中国で発表された5月の貿易収支は、黒字が417億ドルと予想を大きく上回った。輸出が前年同月比+1.1%とマイナス予想に反してプラスとなったこと、輸入が▲8.5%と減少幅が大きかったことが背景。

輸出が堅調だったことで中国株は上昇した。海外市場では米国株も堅調、小幅続伸。NYダウは6日続伸となり26,000ドルを回復した。

米10年債利回りは2.15%、2年債利回りは1.90%に上昇。ただ利下げ期待は根強くドル円相場の上値は抑制された。引けは108円50銭~40銭。

ユーロドル相場は1.13近辺で推移。ユーロ円相場は122円80銭中心に上下動していたが引けは122円60銭~70銭。トランプ大統領は、G20中に米中首脳会談が実現しなければ3,250億ドルの追加関税を実施すると述べた。

火曜日の東京市場は引き続きリスク回避が緩和する流れ。ドル円相場は108円40銭で始まり60銭近辺に上昇してもみ合い。ユーロ円相場も122円60銭から堅調に。

日経平均は21,100円近辺で小幅高寄りの後もしっかり。後場は21,200円近辺でもみ合い引けた。アジア株が全般に堅調だったことも支えに。

この日、中国政府は地方政府のインフラ投資を促進支援する旨発表した。海外市場に入るとユーロ円相場が123円台に、ユーロドル相場も1.1330近辺に上昇してもみ合い。米国株はアジア株の堅調を受けて高寄りしたが反落して前日比概ね横ばい。

この日発表された米国の生産者物価指数(5月)は前年同月比+1.8%と予想+2.0%、前月+2.2%を下回り、2017年1月以来の低い伸び。

一方、中小企業景況指数(5月)は105.0と予想102.3、前月103.5を上回る強めの数字だった。米10年債利回りは小幅低下して2.14%。ドル円相場は108円50銭近辺でもみ合い引けた。

トランプ大統領は、ユーロやその他の通貨は対ドルで過小評価されている、と述べ、また、米国の金利は高い、としてFRBに利下げを催促した。

また、中国との通商交渉の合意は自分が個人的判断で滞らせている、今年合意済みの条件に立ち戻らない限り最終合意するつもりはない、と述べた。

水曜日の東京市場のドル円相場は108円50銭近辺でもみ合い、ユーロ円相場は122円90銭~123円ちょうどで上下。ただ午後から欧州時間にかけて円高となり、ドル円相場は108円30銭割れ、ユーロ円相場は122円60銭近辺に下落した。ユーロドル相場は1.1330近辺で推移。

日経平均は21,100円台前半で小幅安寄りもすぐに上昇して21,200円台を回復。ただその後はじり安となって21,100円台半ばに押し戻されて引けた。

米中通商摩擦への懸念は根強く、またドル円相場の上値の重さも再確認したかたち。米国株は小幅続落。米10年債利回りは2.12%に小幅低下した。2年債利回りは1.88%。

発表された米国の消費者物価指数(5月)は前年同月比+1.8%(予想+1.9%、前月+2.0%)と弱め。コア指数も+2.0%と前月の+2.1%から低下し、長期金利を押し下げた。

ドル円相場は108円40銭~50銭でもみ合い引け。ユーロ円相場は122円40銭~50銭に下落。ユーロドル相場は1.1290近辺へユーロ安ドル高となった。

木曜日の東京市場のドル円相場は108円50銭で始まり20銭~30銭に下落。ユーロ円相場は122円40銭~50銭で始まり20銭近辺に下落。ユーロドル相場は1.1290~1.13ちょうど近辺でもみ合い。

日経平均は21,000円台前半に安寄りし21,000円割れに下落。米株軟調を嫌気。ただその後持ち直し21,000円ちょうど近辺でもみ合い引けた。

この日発表されたBSI大企業製造業景況指数(4-6月期)は▲3.7となり2四半期連続でマイナスとなった。

ドル円相場は、その後は底固く海外市場にかけて108円50銭を回復。ユーロ円相場も122円50銭近辺に戻した。ユーロドル相場はやや下落して1.1270~80で上下。

イギリスでは保守党党首選挙の第1回投票が行われ、ジョンソン氏がトップとなり、合意なき離脱リスクが高まったと意識された。またユーロ圏の鉱工業生産(4月)は前年同月比▲0.4%と前月の▲0.7%に続き低調な数字だった。

米国株は3日ぶりに反発、NYダウは100ドルの上昇。ただホルムズ海峡でタンカー2隻が攻撃を受けたことでイラン情勢を巡る地政学的リスクの高まりが意識された。

安部首相がイラン・ハメネイ師と会談し米国との仲介を試みたが、師はトランプ大統領を批判。トランプ大統領もイランとの交渉を考えるのは時期尚早として不調に終わった。

米10年債利回りは2.09%に、2年債利回りは1.83%に低下。ドル円相場はじり安となり108円30銭~40銭で引け。ユーロ円相場も122円20銭に下落した。

金曜日の東京市場のドル円相場は108円30銭近辺でもみ合い。ユーロ円相場は122円20銭から122円ちょうど~10銭に下落。中東情勢からリスク回避気味。

ただ日経平均は前日に米国株がしっかりだったことから3日ぶりに反発。21,000円近辺で寄り付き21,100円近辺に上昇して小動き、そのまま引けた。

この日発表された中国の5月の主要統計はまちまち。工業生産は前年同月比+5.0%と予想+5.5%、前月+5.4%を下回り2002年以来の低水準の伸びとなった。

都市部固定資産投資も前月の+6.1%から+5.6%に減速。一方、小売売上高は同+8.6%と前月+7.2%から伸びが加速し予想+8.2%を上回る強めの数字だった。

夕刻から海外市場にかけてはさらにユーロ安円高が進み、ユーロ円相場は121円60銭に、ユーロドル相場は1.1210に下落して引け。ドル円相場も108円20銭近辺に下落してもみ合いとなった。ただドルは全般に堅調。

発表された米国の小売売上高(5月)は前月比+0.5%、前月も+0.2%から+0.3%に上方修正され消費の堅調を示した。また鉱工業生産(5月)は前月比+0.4%、設備稼働率は78.1%と前月の77.9%から上昇。全般にしっかりした数字だった。

これを受けてドルは対円、対ユーロで堅調に。ドル円相場は108円50銭~60銭に戻して週末NYの取引を終えた。

米国株は小幅安寄りし持ち直したたが小幅安。米長期金利2年債利回りは1.84%、10年債利回りは2.08%に小幅低下して引けた。発表されたミシガン大学消費者信頼感指数(6月)は97.9と前月100.0から悪化。貿易摩擦が尻的に悪影響を及ぼしたとされている。

◆今週の3つの注目ポイント


1.FOMC(米連邦公開市場委員会)

今週は18日火曜日・19日水曜日の2日間にわたり注目のFOMCが開催される。結果は日本時間20日木曜日未明3時に公表。今回、政策変更は想定されていないが、次回7月の利下げをどの程度示唆するか。

またメンバーの予測で景気物価見通しの下方修正や政策金利見通しで利下げが示唆されるか。パウエル議長は定例会見でどのようなスタンスを示すか。

市場は年内2回~3回の利下げを織り込んでいるが、そこに同調するような結果となるか。あるいは利上げのみならず利下げにも慎重な姿勢を示し、市場の期待に届かない結果となるか。

2.米国の経済指標

先週は小売売上高や鉱工業生産になお堅調な数字がみられた。今週の指標が利下げ期待に水をさす強い数字を示すか。

月曜日 NY連銀製造業景気指数(6月、予想17.8、前月12.0)

火曜日 住宅着工件数(5月、季節調整済み年率換算、予想1,240千戸、前月1,235千戸)

木曜日 フィラデルフィア連銀製造業景気指数(6月、予想10.5、前月16.6)

金曜日 PMI企業景況感指数(6月、製造業、予想50.5、前月50.5)、中古住宅販売(5月、季節調整済み年率換算、予想525万戸、前月519万戸)

3.日銀金融政策決定会合

FOMCの2日目、19日水曜日、およびFOMCの結果が未明に判明する20日木曜日、2日間にわたって日銀が金融政策決定会合を開催する。

米国で利下げ期待が高まるなか、またFOMCの結果を踏まえつつ、いかなる議論がされスタンスが示されるか。企業景況感の悪化がみられ、また緩和限界説や副作用も取り沙汰されるなか、いちだんと緩和サイドに傾いた姿勢を示すことができるか。

◆今週のMRA's Eye


FOMCのリスク

今週、FOMCが開催される。市場がすでに年内2回~3回の利下げを織り込むなか、FRBはどの程度、その期待に沿った姿勢を示すか。

市場のメインシナリオは、米中貿易摩擦の長期化、景気悪化、FRBの利下げによる下支え、緩やかなリスク選好の継続、とみられる。

ドル金利は低迷、リスク資産価格は支えられ株価は堅調を維持。ドルは金利低迷に押され上値重く、円はリスク回避持ち直しで円高一服、ないし小幅なドル安円高を見込む。

そうしたシナリオが、今回の会合でどのように変化するか。修正されるか、後押しされるか。

FRBが利下げに動くとすれば、予防的な利下げ、だろう。足元の経済指標をみると、なお生産や消費は堅調に推移している。雇用統計にも影響が出始めたとの見方もあるが、なお雇用情勢が引き締まっていることには変わらない。

そうしたなか、今回の会合で次回7月の利下げを確定的に示唆することは難しいのではないか。インフレ率が低位安定していることは利上げをしない理由にはなるが、積極的に利下げを行う理由にはならない。

政策金利の水準についての判断は、現時点が中立であり、引き締め的ではなく緩和的でもない、との判断だ。そこから利下げに動くには相応の理由、要因が必要だろう。

現時点のダウンサイドリスクの増加に対して予防的に利下げを実施するには、まだ条件が整っていない。

市場は2回~3回の利下げを織り込むが、そこまで数次の利下げに動くのであれば、もはや予防的な利下げの範囲を超えている。本格的な景気悪化と利下げ局面への転換ということになる。

確かにいつでも機動的に利下げに動ける準備は必要であり、一段とその準備を整える必要は生じている。ただ現時点では、市場に対してその準備ができていると表明し安心感を醸成することで足りそうだ。米国経済に対する信認を維持し過度な不安を払拭することも肝要だろう。

ここまで市場の利下げ期待が高まっていると、市場の利下げ期待が損なわれるサイドのリスクが大きいだろう。今回利下げ実施はなく、せいぜいあっても次回の利下げが示唆される程度。委員の予測に利下げがメインシナリオとして示される可能性も低い。市場の期待があらためて行き過ぎだと認識される可能性がある。

その場合、米長期金利はやや上昇し、利下げ期待で堅調に推移してきた株価は調整する可能性がある。

ドルは金利面では支えられるが、株安にともないクロス円相場の下落が生じた場合に円も堅調となる可能性がある。

利下げ期待が維持され米長期金利の上昇が限定的であれば、ドル円相場は引き続き108円台を中心とした推移となるだろう。一方、株価が安定していれば、ドル円相場は109円近辺に上昇する可能性もある。

リスクシナリオは会合で利下げ期待を大きく後退させる強気の見方が示された場合。この場合は荒れ相場となる可能性がある。

おそらく経済指標がいくつか強い数字が続かない限り、市場は容易には景気悪化シナリオを放棄しないだろう。そのなかで頑なに利下げ期待に抗した場合には、市場がさらなる「催促」をする可能性がある。株価は大きく調整しドル円相場は乱高下するか。

シカゴ通貨先物のポジションをみると、円売りは相応に縮小しているため、円高リスクは軽減されている。

逆のリスクシナリオで利下げに前のめりの判断が示された場合、ポイントは利下げ期待がさらに強まるかどうか。利下げ織り込み度合いがすでに年内2回~3回だとすると、さらなる追加的な利下げを織り込むのは難しいのではないか。

一瞬はドル安に反応するとしても、足元景気の堅調のなかでの予防的な利下げの範囲を出なければ、リスク選好はむしろ強まり、円高には傾きにくい。

引き続き108円割れは底固い状況に変化はないだろう。これに対して、本格的な景気悪化を背景とした利下げ局面入りとなれば、107円割れ~105円が視野に入る。しかしそれを判断するには時期尚早。またその確率も現時点では低いリスクシナリオだ。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :108.56(+0.18)
ユーロ :121.69(▲0.53)
英ポンド :136.663(▲0.69)
豪ドル :74.609(▲0.34)
カナダドル :80.93(▲0.39)
スイスフラン :108.669(▲0.36)
ブラジルレアル :27.858(▲0.30)
中国人民元 :15.649(▲0.02)
韓国ウォン(日本円=100) :9.147(▲0.01)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1208(▲0.007)
英ポンド :1.2589(▲0.009)
豪ドル :0.6872(▲0.004)
カナダドル :1.3414(+0.009)
スイスフラン :0.999(+0.005)
ブラジルレアル :3.8964(+0.047)
中国人民元 :6.9255(+0.004)
韓国ウォン :1185.18(+2.17)

【主要国政策金利】
米国 :2.50
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :2.08(▲0.01)
米2年債 :1.84(+0.00)
日本10年債利回り :▲0.13(▲0.02)
日本2年債利回り :▲0.13(+0.01)
独10年債利回り :▲0.26(▲0.01)
独2年債利回り :▲0.69(▲0.02)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :26,089.61(▲17.16)
NASDAQ  :7,796.66(▲40.47)
S&P500 :2,886.98(▲4.66)
日経平均株価 :21,116.89(+84.89)
ドイツ DAX :12,096.40(▲72.65)
インド センセックス :39,452.07(▲289.29)
中国上海総合 :2,881.97(▲28.77)
ブラジル ボベスパ :98,040.06(▲733.64)
英国FT250 :19,118.34(▲54.03)
ビットコイン :8452.83(+191.78)

【主要商品価格】
WTI :52.51(+0.23)
Brent :62.01(+0.70)
米ガソリン :173.25(+1.26)
米灯油 :182.94(+2.28)

金 :1341.70(▲0.61)
銀 :14.88(▲0.03)
プラチナ :804.91(▲7.76)
パラジウム :1468.58(+19.28)
銅 :5827.50(▲3:22C)
アルミニウム :1771.00(▲17:33.5C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :896.75(+8.75)
シカゴ とうもろこし :453.00(+11.00)
シカゴ小麦 :538.50(+3.00)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。