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米統計悪化を受けて高安まちまち
  • MRA商品市場レポート for PRO

2019年7月18日 第1574号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「米統計悪化を受けて高安まちまち」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場はソフトコモディティやに畜産セクター、貴金属などの景気非循環系商品が物色され、非鉄金属もドル安の進行で引けにかけて水準を切り上げた。

米中交渉の楽観が後退したことや、米住宅関連統計の減速が景気循環銘柄の下押し要因となる一方、金融政策などの景気対策期待が高まったことが価格の押し上げ要因となった。

なお、上昇率上位にニッケルがランクインしているが、インドネシアが先週発表した2022年からの輸出規制再開が材料視され、ショートの買戻しが続いているとみられることによる。

【本日の価格見通し総括】

本日は日本の貿易収支などが発表されるが、商品市場への影響は限定されるだろう。市場に影響がある材料とすれば米フィラデルフィア連銀景況指数に注目している。

市場予想は5.0(前月0.3)と改善が見込まれており、需要回復期待を高め景気循環銘柄価格の上昇要因となるだろう。

ただ、目立った材料が出てきてるわけではないため、総じて商品価格は現状のレンジワークを継続するものと考えている。

【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】

トランプ大統領は中国との交渉は長期化するとの見通しを示した。予想通りではあるが、米国は議会も含めて中国との通商戦争が完全勝利となるまで継続する意向のようだ。

25%の関税引き上げは、賃金上昇で中国から周辺諸国への工場シフトをさらに加速させている。意図的に米国が、「中所得国の罠入りを加速させる戦略」を取っているとも解釈できる。

結果、この20年間で構築された国際的な商流が大きく変化する可能性が出てくる。特に人口ボーナス期入りし、次の世界経済のけん引役として期待されるインドへのシフトが進む可能性は高いとみている。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

(マクロ要因)

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標再びの減速(価格下落要因)。

・世界景気の減速観測。IMFは2019年の経済見通しを引き下げ(+3.5%→+3.3%)ており、米中対立の激化があった場合には▲0.5%程度の引き下げリスクも視野に入れている。リスク資産価格に対して下向きのリスク。

・FRBの利下げの可能性が再び高まる。米中協議の不透明感を背景にFRBは利下げ方向に舵を切っている。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q219の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.4%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。

※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。

・景気減速下での原油価格高止まりは、消費国から生産国への所得移転を通じて景気の下押し要因に。また、リスク回避のドル高進行も価格上昇を抑制。

・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。

(特殊要因)

・米中通商協議が再開で決定したが、通商協議そのものが合意をしたわけではなく、制裁は継続しており世界経済がさらに減速する場合(下落要因)。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・中東情勢の悪化を受けた域内景気の混乱と、それを受けた欧州景気への悪影響拡大(下落要因)

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。とりあえず10月末を期限として問題先送りしたが、メイ首相の後任が強硬派のジョンソン前外相である可能性が高く、ハードブレグジットの可能性が高まっている(下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

・日韓対立によるハイテク分野の市場混乱や、極東地区の地政学的リスクの高まり(下落要因)。

(投機・投資要因)

・米利下げ観測の高まりで長短金利逆転状況が解消し、金融株を中心に株が上昇、リスクテイク再開で景気循環系商品価格にプラスの影響を与える場合。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油相場は続落した。米石油統計で原油・石油製品在庫が市場予想よりも弱気な内容だったことや、米・イランの交渉進展期待、米中交渉への楽観が後退したことが材料となった。

【原油価格見通し】

原油価格はもみ合うものと考える。イランを巡る情勢は米国とイランで発言が異なるためどちらともいえないが、緊張が高まっている状況に大きな変化がないと考えられることが価格を押し上げる一方、経済統計の減速で実需の伸びが鈍化することが上値を抑制するため。

原油取引でも一目均衡表が世界的に使われているが、WTIは一目均衡表の雲に突入しており、Brentは雲を下抜けしかかっている。テクニカルに原油価格が下値余地を探る動きになる可能性は意識しておきたいところ。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は反発した。欧州の気温上昇などでLNG価格の下落や東アジアの気温低下で、冷房向けの発電需要が減速により水準を切下げていたため、夏場を控えた安値広いの買いが入ったと考えられる。

【石炭価格見通し】

石炭価格は欧州の気温上昇と、北半球の夏場を控えて上昇するとみているものの、アジア太平洋地区は気温が低下していることや、中国の電力会社の石炭在庫が記録的な高水準となっていること、欧州市場でのよりクリーンなエネルギーへのシフト、景気減速による電力需要の後退、中国の景況感の悪化を受け、上昇余地も限定されると考える。

中国の6大電力会社の石炭在庫は、同じ時期の過去5年レンジを大きく上抜けしており、国内需給は緩和している可能性が高い。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・原油価格の上昇に伴う北米の増産継続は、需給緩和で価格の下落要因。

・景気が減速する中での減産継続は、その効果が限定されはするものの、足元の価格下落を受けてOPECプラスの協調減産は2020年3月まで継続される見込みであり、一定の下支え効果をもたらす見込み。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・中国の石炭港湾在庫が減少傾向を強めていることは国内需要が季節的に増加していることを示唆(石炭)。

(特殊要因)

・米国とイランの関係はこの20年で最悪の状態。両国の国力を減ずる戦争のリスクは依然低いとみるが、現状では開戦の可能性も完全に否定できない状態。

・米朝首脳会談が電撃的に開催されたが、制裁は継続する見込みであり北朝鮮炭の供給制限も継続されることは、価格の上昇要因(石炭)。

・米中情報戦争をめぐる華為技術排除の決定を受けて中国政府は豪州からの石炭輸入を規制、インドネシア炭にシフトしていることはNEWC価格の下落要因に(石炭CIF価格に対する影響は中立)。

(投機・投資要因)

・WTI・Brentともロングの減少が顕著だが、WTIのショートには買戻し、Brentはショートが増加する傾向が続いている。中東情勢を巡り市場参加者のスタンスはまちまちだが、とにかく積み上がったロングから解消する動きが強まっている状況。

・直近の投機筋のポジションは、WTIはロングが505,696枚(前週比 ▲7,484枚)、ショートが115,547枚(▲4,823枚)、ネットロングは390,149枚(▲2,661枚)、Brentが319,018枚(前週比▲1,798枚)、ショートが74,875枚(+2,065枚)、ネットロングは244,143枚(▲3,863枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME非鉄金属価格は高安まちまち。米中貿易交渉への楽観が後退したことが価格を下押ししたが、ニッケル価格の上昇は継続した。

ニッケル価格が非鉄金属セクターの中で突出して上昇しているが、これは(まだ先なのだが)2022年からインドネシアがニッケル未処理鉱石輸出に規制をかける方針を示したことが、将来の需給タイト化観測を強め、ショートの買戻しが加速しているためと考えられる。

2014年から2017年の輸出規制時に、8,000ドルから2倍の17,000ドルまで価格が上昇したことを考えると、景気が減速していることを考慮してもニッケル価格はさらに上昇する可能性がある。

ただし現時点ではまだ思惑であるため7月3日にリリースした見通しを変更はしないが、今後の情勢次第で10月見直し予定の価格見通しを、ニッケルに関して前倒しで変更する可能性がある。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は上昇余地を探る動きになると考える。中国の経済対策の効果が顕在化し始めてているとみられること、FRBパウエル議長が利下げの可能性を比較的強く市場に印象付けたことから、投機の買戻しが入ると考えられるため。

ただし、この上昇はテクニカルな買戻しであり、景気は減速局面にあること、米中通商協議は長期化するとの見方が大勢を占めていることから上値も限られ、秋口に下値余地を探るとの見方に変更はない。

再び持続的な上昇に転じるのは、中国の公共投資が顕在化する年後半か、インド需要が顕在化すると期待される2020年の春以降と見る。

なお、ニッケルに関してはインドネシアの未処理鉱石輸出制限再開の可能性が高まっており、その政策動向次第だが実行されるのであれば16,000ドルを目指す動きになるだろう。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・最大消費国である中国の製造業PMIは低調で、新規受注/完成品在庫レシオ、新規受注/原材料在庫レシオとも低下、需給環境が緩和していることを示唆。

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は再開しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCも高止まり。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

(特殊要因)

・中国政府がシャドーバンキングを含む、違法な資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは、需要面で価格の上昇要因に。

・銅の生産減少観測(環境問題によるインド、露天掘りから地下生産に変更するインドネシア)、ヴァーレの尾鉱ダム事故の影響による供給減少(アルミやニッケルなどに波及する可能性)。

ハイドロのアルノルテ アルミナ精錬所の問題に象徴されるように、広く非鉄金属を含む鉱物セクターは、環境問題への高まりから供給が政府命令で急に停止してしまう可能性は低くない。

インドネシアのニッケル未処理鉱石輸出再開の可能性(実際に行われれば上昇要因に)。

・LME指定倉庫在庫の減少が、LMEの倉庫運営ルール変更に伴う保管場所変更の取引の影響である場合、ルールが見直された際に再度、LME指定倉庫在庫が急増する可能性(下落要因)。

(投機・投資要因)

・7月5日付のLMEポジションは鉛以外、総じて弱気なポジション取りに。

鉛を除くすべての金属で景気の先行きへの懸念からロングの減少が鮮明になっている。ショートはニッケルで解消の買戻しが顕著だが、それ以外の金属は全て増加している。供給懸念が解消していると判断されている模様(実際プレミアムは上昇していない)。

投機筋のLME+CME銅ネット売り越し金額は▲67.4億ドル(前週▲52.7億ドル)と売り越し幅を縮小。売り越し額の増加幅は+27.8%に。

買い越し枚数はトン数換算ベースで▲1,702千トン(前週▲1,282千トン)と売り越し幅を拡大。亜鉛と錫以外はトン数ベースでネット売り越しのまま。ネット売り越しの増加率は+32.7%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップ市場は小幅安、原料炭スワップ先物は横ばい、中国鉄鋼製品市場は小幅安。

米中貿易交渉への楽観が後退したことで、若干の調整売りに押される形となった。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は、中国政府の経済対策の効果が顕在化しつつあることや、ヴァーレの生産が完全に回復していないこと、リオの減産見通しといった供給面が意識されて高止まりすると考える。

ただし、米中通商協議は引き続き難航しており、価格面の下振れリスク要因との整理。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・直近の中国鉄鋼業PMIは48.2(前月50.0)と減速。新規受注が国内外とも低迷しており(新規受注 47.9(46.7)、輸出新規受注 40.7(45.9))、生産も49.1(56.0)閾値の50を下回った。

ただし、在庫は完成品が39.3(38.3)、原材料在庫が43.5(45.1)と低水準であることは事実であり、需要顕在化時(中国の公共投資など)に鉄鋼製品価格が急騰する可能性も。

・中国の鉄鋼製品在庫水準の高さは価格の下落要因。鉄鋼製品在庫は前週比+20.5万トンの1,227.4万トン(過去5年平均1,052.5万トン)と例年を上回っている。

中国の鉄鉱石在庫水準の高さは徐々に低下し、価格の下支え要因となる可能性。鉄鉱石在庫は前週比▲25万トンの1億1,535万トン(過去5年平均1億1,922.6万トン)、在庫日数は▲0.1日の23.9日(過去5年平均 30.1日)と例年の水準を下回った状態が続いている。

・季節的に鉄鋼製品在庫の取り崩し時期であり、価格には下押し圧力がかかりやすい。

・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、すでにインフラ整備のための投資拡大方針を示しており、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

・ヴァーレ、リオ・ティントの生産目標引き下げによる供給減速。

(特殊要因)

・中国政府がシャドーバンキングを含む、違法な資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは価格の上昇要因。

・ヴァーレの尾鉱ダム決壊の影響が拡大し、さらに供給減少が起きた場合(自社・他社ともにあり得る)、価格の上昇要因に。

ヴァーレの尾鉱ダム事故の影響で、今後、低品位鉱石価格にも上昇圧力がかかる公算。

(投機・投資要因)

・供給懸念などを通じて大連取引所は建玉を積み増しながら、価格を切り上げており、先々の下落リスクは高まっている状況。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金価格は上昇した。米住宅関連統計の減速を受けて長期金利が低下、実質金利が低下したことや、米中貿易交渉への楽観が後退したことが材料となった。

銀価格は金よりも上昇。金価格の上昇が材料となったが、COMEX銀在庫が小幅ながら減少し、金在庫が増加したことで金銀在庫レシオが低下したことが買い材料視された。

今後、COMEX銀在庫の減少が続くようであれば、金銀レシオの修正を通じて銀価格が大きく上昇する可能性は排除できない。

PGMは金銀価格の上昇もあって上昇したが、株価が調整したことで上げ幅は限定された。

【貴金属価格見通し】

金価格は高値圏でもみ合うものと考える。米中交渉への楽観が後退したことや、米景気減速観測の強まりで実質金利低下が予想される一方、イランと米国の緊張が緩和するのではとの期待が高まっていることが、安全資産需要を減少させるため。

イタリアの財政問題や英国のEU離脱がハードになる可能性が高いこと、それを受けて再びスコットランドの独立話が持ち上がっていることなど、欧州不安が払しょくされていないことから一定の安全資産需要は継続するため、総じて堅調な推移になるだろう。

銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)の上昇が金銀レシオを押し上げているため対金で割安に推移。

銀が通貨としての側面を持っていた頃の金銀レシオに戻る可能性は低下している。ただし、足元金銀在庫レシオが低下しているため、銀は修正的に上昇する可能性が出てきた。

PGM価格は金銀価格が高値圏でもみ合うことから同様にもみ合うと考える。ただし、供給面の影響で需給がタイトなパラジウムは引き続き堅調な推移になると予想する。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・FRB・ECBの金融緩和期待が高まっており、7月のFOMCでの▲25bpの利下げは織り込んだ(金ベースで25ドル程度の上昇要因)。

しかし、逆に利下げ期待が高まりすぎているため、期待と金融当局の判断の乖離から、7月FOMCで下落に転じる可能性も。

・景気の先行きを懸念した株価下落とそれに伴う長期金利・実質金利の低下(金銀価格の上昇要因)。ただし、欧州の政情安定化や米中貿易戦争の合意、各国の金融緩和などを背景とする景況感の改善で株価が上昇した場合には金銀価格の下落要因。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト期待(パラジウムの上昇要因・プラチナの下落要因)。ただし実際にシフトが起きるには相当の時間がかかる見込み。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

(特殊要因)

・米中通商交渉は一旦追加関税引き上げなどが先送りになったが、基本的に難航している。知的財産権や技術の強制移転などの重要なポイントで妥結できておらず、長期化の見込み(価格の下支え要因)。

・米国とイランの緊張は一時的に低下している。しかし、開戦の可能性がなくなったわけではなく、対立が継続する以上は安全資産需要を高める。

・米国の債務上限問題の顕在化(8月~9月にデフォルトするリスク)。

・欧州議会選でのポピュリズム政党の躍進。それに伴うEU懐疑論の高まりによる域内の政情不安定化。

・英国のEU離脱がハードになる可能性があること、それに伴いスコットランドの独立話が再燃していること、それがスペインのカタルーニャ地方に波及する懸念があることは安全資産需要を高める。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

(投機・投資要因)

・銀価格は金銀在庫レシオが銀在庫の減少、ないしは金在庫の増加、あるいは両要因によって低下した場合、金銀レシオが上昇するリスク(銀価格の上昇要因)。

・金銀はロングが減少、ショートが増加している。利下げ期待を受けた株価上昇で、安全資産需要が減速したためと見られる。

・プラチナのポジションはロングが大幅に減少、金銀に連れた形。パラジウムは景気への懸念後退からロングが大幅に増加している。

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが306,105枚(前週比 ▲6,597枚)、ショートが61,342枚(+7,586枚)、ネットロングは244,763枚(▲14,183枚)、銀が96,080枚(▲3,659枚)、ショートが70,929枚(+1,645枚)、ネットロングは25,151枚(▲5,304枚)

・直近の投機筋のポジションは、プラチナはロングが45,166枚(前週比 ▲2,675枚)、ショートが38,473枚(▲71枚)、ネットロングは6,693枚(▲2,604枚)、パラジウムが18,048枚(+1,193枚)、ショートが5,152枚(+314枚)、ネットロングは12,896枚(+879枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物市場は続落した。米中協議が進展しないとの見方が再び強まる中で、北米の生産地の生産状況改善を受けて、不作への懸念が後退したことが引き続き材料となっている。

【穀物価格見通し】

穀物価格は当面、天候状況が価格を左右する展開となり、神経質な推移が続くと予想する。

しかし、基本的には北米の作付け状況が不良であること(トウモロコシ、大豆とも、生育状況に遅れ、作況も過去5年の最低水準をはるかに下回る)や、欧州の気温上昇による不作への懸念、FRBの利下げ期待の高まりがドル安を進行させることから、総じて下値は堅かろう。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・米国のトウモロコシ・大豆の生産減少観測による需給タイト化観測。

・豪州東部の大干ばつによる小麦生産の減少懸念。

・欧州・ロシアの気温上昇に伴う小麦生産の減少懸念。

・最終確定作付け面積動向(トウモロコシは増加、大豆は減少、小麦は横ばい)トウモロコシ 9,170万エーカー(市場予想8,703万エーカー、前年8,913万エーカー)大豆 8,004万エーカー(8,468万エーカー、8,920万エーカー)小麦 4,561万エーカー(4,561万エーカー、4,780万エーカー)

・7月の米需給報告の生産見通し

トウモロコシ138億7,500万Bu(前月136億8,000万Bu)大豆 38億4,500万Bu(41億5,000万Bu)小麦 19億2,100万Bu(19億300万Bu)

・7月の米需給報告の在庫見通しトウモロコシ20億100万Bu(前月16億7,500万Bu)大豆 7億9,500万Bu(10億4,500万Bu)小麦 10億Bu(10億7,200万Bu)

・米緩和観測に伴う実質金利の低下に伴うドル安の進行は、シカゴ穀物の輸出競争力を改善し、需給面で価格の上昇要因に。

(特殊要因)

・米中通商交渉は交渉再開で合意したが、覇権争いであり長期化の可能性は高い(価格の下落要因)。

・米政府はブッシェル当たり大豆2ドル、トウモロコシ0.04ドル、小麦0.63ドルの補助金を供給することを検討。生産減少を食い止めるため価格の下落要因に。

・エルニーニョ現象発生による北米の増産は基本的には価格の下落要因だが、今年は洪水が発生しており、夏場の気温上昇や乾燥といった育成環境の悪化の可能性はあり、価格の上昇要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

(投機・投資要因)

・すべての穀物で、ロング・ショートとも減少。ただしショートの買戻し圧力が強く、総じてネットロングが増加している。

・直近の投機筋のポジションは、トウモロコシはロングが469,557枚(前週比 +3,848枚)、ショートが166,351枚(+1,441枚)、ネットロングは303,206枚(+2,407枚)、大豆はロングが138,678枚(+6,069枚)、ショートが139,916枚(+10,459枚)、ネットロングは▲1,238枚(▲4,390枚)、小麦はロングが126,696枚(▲5,448枚)、ショートが92,616枚(+2,531枚)、ネットロングは34,080枚(▲7,979枚)

◆本日のMRA's Eye


「小麦の生産懸念がトウモロコシに影響か」

当コラムではエルニーニョ現象の影響で米国のトウモロコシの作付けは記録的な遅れとなっており、今年の不作の可能性について指摘してきた。

しかし、7月に発表された米需給報告では需給見通しが下方修正(緩和方向に修正)された。米中貿易戦争の影響で、米国の2018-2019穀物年度の輸出向け需要が、▲254万トン下方修正されたほか、作付け面積(8,980万ヘクタール→9,170万ヘクタール)と収穫面積(8,240万ヘクタール→8,360万ヘクタール)が引き上げられたことで、2019-2020穀物年度の生産見通しも6月見通しから+495万トン上方修正された。

結果、需給率は87.6%(前月見通し比▲1.8%)に引き下げられ、当初見通しよりも米国のトウモロコシ需給はタイト化しない、との見通しが示された。

しかし、実際には今回の需給見通しよりも厳しい生産になるのではないかと予想される。

というのも、今回の需給見通しでは、単収の見通しがエーカー当たり166ブッシェルと前月から据え置かれたため、現実の生産状況よりもやや楽観的な数値になっている可能性が高いためだ。

実際問題、開花時期が終了、シルキングステージ(トウモロコシの種実部から雌しべにあたる細長い絹のような毛が伸びる時期)に入っているが、7月14日時点で17%と、過去5年平均である42%から大きく出遅れており、今後、最も需要な受粉期に満足行く結果が得られない可能性があることを示唆している。

もちろん、今後の作況が改善するシナリオもなくはないが、現在手元にある材料だけだと生産減の可能性は高いとみるべきだろう。8月に行われるクロップ・ツアーの動向が非常に重要になってくる。

過去のエルニーニョ現象・ラニーニャ現象発生時の生産動向を見るに、直近では2012年の様子に似ており、今後、ラニーニャ現象が発生した場合、トウモロコシ生産が複数年にわたって低迷する可能性も否定できない。

これに加えて懸念されるのが、年初あまり懸念していなかったエルニーニョ現象の影響に伴うと考えられる異常気象で、黒海周辺諸国の気温が上昇、トウモロコシの競合飼料である小麦の生産見通しが下方修正されていることだ。

7月の米需給報告では、世界生産がロシア・EUの減産の影響で前月見通し比▲937万トン減少の7億7,146万トンに引き下げられている。

例年通りならばWheat is weedと言われるように、最終的には帳尻が合ってくるはずだが、トウモロコシの生産見通しが不透明である以上、今年は小麦の生産動向が競合資料であるトウモロコシ価格に大きく影響を及ぼす可能性が高いとみている(ただし、小麦はトウモロコシと異なり、生産地域が偏在していないため、気象状況の変化に対する「価格上昇への耐性」がトウモロコシよりも高い)。

同時に小麦価格が懸念通り上昇すれば、逆もまた真なりでトウモロコシ価格への影響も無視できない。

◆主要ニュース


・5月ユーロ圏建設業生産高 前月比▲0.3%(前月▲1.7%)、前年比+2.0%(+3.1%)

・6月ユーロ圏消費者物価指数 前月比+0.2%(前月+0.1%)、前年比+1.3%(+1.2%)、コア指数 +1.1%(+0.8%)

・米MBA住宅ローン申請指数 前週比 ▲1.1%(前週▲2.4%)
 購入指数▲3.8%(+2.3%)
 借換指数+1.5%(▲6.5%)
 固定金利30年 4.12%(4.04%)、15年 3.48%(3.42%)

・6月米住宅着工件数 前月比▲0.9%の125.3万戸(前月改定▲0.4%の126.5万戸)

・6月米住宅建設許可件数 前月比▲6.1%の122.0万戸(前月改定+0.7%の129.9万戸)

・米地区連銀経済報告、「米景気は緩慢なペースで拡大。雇用の伸びは幾分減速。インフレは引き続き安定若しくはわずかに鈍化。」

・フィッチ、日本の国債格付けAを確認、見通しは安定。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・DOE米石油統計 原油▲3.1MB(クッシング▲1.4MB)
 ガソリン+3.6MB
 ディスティレート+5.7MB
 稼働率▲0.3%

 原油・石油製品輸出 8,174KBD(前週比▲444KBD)
 原油輸出 3,086KBD(▲222KBD)
 ガソリン輸出 705KBD(▲3KBD)
 ディスティレート輸出 1,424KBD(▲109KBD)
 レジデュアル輸出 92KBD(▲16KBD)
 プロパン・プロピレン輸出 1,130KBD(▲60KBD)
 その他石油製品輸出 1,559KBD(▲27KBD)

・イラクのクルド人自治区で銃撃、トルコ外交官が死亡。

・イラン ザリフ外相、「イランはホルムズ海峡の封鎖を望んでいない。米国は核合意を尊重するべきだ。」

・JPモルガン、2019年のBrent価格見通しを59ドルに引き下げ(従来見通し65ドル)。2020年は55.7ドル(▲5.8ドル)

【メタル】
・Q219Alcoa
 ボーキサイト生産 11.3百万トン(前期11.9百万トン、前年
 11.3百万トン)
 出荷 10.3百万トン(10.2百万トン、10.0百万トン)

 アルミナ生産 3,309千トン(3,240千トン、3,227千トン)
 出荷 3,369千トン(3,301千トン、3,316千トン)

 アルミニウム生産 533千トン(537千トン、565千トン)
 出荷 724千トン(709千トン、853千トン)

 CAPEX 95百万ドル(69百万ドル、前年89百万ドル)

・6月中国粗鋼生産 前年比+7.3百万トンの87.5百万トン(前月 89.1百万トン)

・6月中国鉄鉱石生産 前年比+763千トンの7,313.4千トン(前月 7,078.7千トン)

・6月中国精錬銅生産 前年比+28千トンの804千トン(前月 711千トン、※当月が3月の場合前月は前年の12月)

・6月中国精錬亜鉛生産 前年比+38千トンの513千トン(前月 480千トン)

・6月中国精錬鉛生産 前年比+73千トンの475千トン(前月 452千トン)

・6月中国プライマリアルミ生産 前年比+140千トンの2,973千トン(前月 2,975千トン)

・6月中国銅製品生産 前年比+179千トンの1,751千トン(前月 1,568千トン)

・6月中国アルミ製品生産 前年比▲0.14百万トンの4.33百万トン(前月 4.91百万トン)

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.LIFFEココア ( その他農産品 )/ +6.62%/ +3.96%
2.CME豚赤身肉 ( 畜産品 )/ +3.73%/ +34.48%
3.LMEニッケル 3M ( ベースメタル )/ +3.12%/ +35.04%
4.SHFニッケル ( ベースメタル )/ +2.73%/ +25.17%
5.銀 ( 貴金属 )/ +2.63%/ +3.05%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ ▲4.27%/ ▲50.81%
69.ICEガスオイル ( エネルギー )/ ▲2.83%/ +14.15%
68.CBTエタノール ( エネルギー )/ ▲2.83%/ +16.93%
67.TCMガソリン ( エネルギー )/ ▲1.82%/ +20.29%
66.ICE粗糖 ( その他農産品 )/ ▲1.67%/ ▲2.00%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :27,219.85(▲115.78)
S&P500 :2,984.42(▲19.62)
日経平均株価 :21,469.18(▲66.07)
ドル円 :107.95(▲0.29)
ユーロ円 :121.16(▲0.18)
米10年債利回り :2.05(▲0.06)
独10年債利回り :▲0.29(▲0.05)
日10年債利回り :▲0.12(▲0.00)
中国10年債利回り :3.18(+0.00)
ビットコイン :9,686.98(+91.93)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :27.17(+0.34)
エネルギー :33.61(+0.76)
ベースメタル :20.06(+0.02)
貴金属 :18.49(+0.45)
穀物 :23.06(▲0.05)
その他農畜産品 :31.69(+0.42)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :37.00(▲1.06)
Brent :33.75(+0.33)
米天然ガス :43.95(+1.53)
米ガソリン :35.38(▲0.02)
ICEガスオイル :26.67(+3.96)
LME銅 :14.26(▲0.03)
LMEアルミニウム :15.84(▲0.12)
金 :17.22(+0.05)
プラチナ :18.43(▲0.18)
トウモロコシ :32.19(▲0.15)
大豆 :17.22(+0.05)

【エネルギー】
WTI :56.78(▲0.84)
Brent :63.66(▲0.69)
Oman :62.53(▲0.61)
米ガソリン :187.87(▲1.31)
米灯油 :189.26(▲1.23)
ICEガスオイル :583.00(▲17.00)
米天然ガス :2.30(▲0.00)
英天然ガス :30.04(▲1.34)

【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :63.66(▲0.69)
SPO380cst :391.64(+4.25)
SPOケロシン :77.08(▲0.04)
SPOガスオイル :77.01(▲0.09)
ICE ガスオイル :78.26(▲2.28)
NYMEX灯油 :190.09(▲0.51)

【貴金属】
金 :1426.57(+20.34)
銀 :15.97(+0.41)
プラチナ :844.76(+4.75)
パラジウム :1537.16(+7.47)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :5,938(▲43:16C)
亜鉛 :2,469(+9:0.5B)
鉛 :1,987(±0.0:9.5C)
アルミニウム :1,839(+2:20C)
ニッケル :14,250(+270:20C)
錫 :17,840(▲195:35C)
コバルト :27,729(+145)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :5982.50(+22.50)
亜鉛 :2472.00(+6.00)
鉛 :2005.50(+25.00)
アルミニウム :1847.00(+3.00)
ニッケル :14375.00(+435.00)
錫 :17945.00(+30.00)
バルチック海運指数 :2,011.00(+83.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :121.24(▲0.04)
NYMEX鉄鉱石 :121.14(▲0.05)
NYMEX原料炭スワップ先物 :186(±0.0)
上海鉄筋直近限月 :4,104(▲18)
上海鉄筋中心限月 :4,035(▲4)
米鉄スクラップ :288(±0.0)

【農産物】
大豆 :882.50(▲5.25)
シカゴ大豆ミール :307.50(▲0.90)
シカゴ大豆油 :27.68(▲0.31)
マレーシア パーム油 :1922.00(+4.00)
シカゴ とうもろこし :436.00(+0.75)
シカゴ小麦 :505.50(▲2.00)
シンガポールゴム :173.10(▲1.00)
上海ゴム :10430.00(+25.00)
砂糖 :11.79(▲0.20)
アラビカ :105.95(+1.85)
ロブスタ :1391.00(+22.00)
綿花 :61.89(▲0.44)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :82.00(+2.95)
シカゴ生牛 :108.13(▲0.10)
シカゴ飼育牛 :140.58(▲0.48)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。