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米長期金利が大幅低下~変化したメインシナリオ
  • MRA外国為替レポート

2019年6月3日号

◆先週の市場総括


先週の市場は米中通商協議がさらに難航し長期化するとの見方を織り込みつつ、加えてトランプ政権が対メキシコ関税引き上げを打ち出したことで、景気悪化懸念からリスク回避的な状況が一段と深まった。

3連休明けの米国株は週初こそ堅調に始まったが、中国がレアアースの対米禁輸を検討するとの報道を嫌気して下落。日経平均も週央から大きく下落。

さらに日本時間金曜日の朝方に、トランプ政権が対メキシコ関税引き上げを表明したことで日経平均が20,600円に下落し安値引けとなった。米国株も週末にかけて大幅安。米10年債利回りは2.13%に大きく低下した。

為替市場では当初ドルは安全通貨として底固く、円高にもかかわらずドル円相場は概ね109円台半ばを中心に方向感のない展開。一方ドル以外の通貨の対円相場(クロス円相場)では円高が進んだ。

ユーロは、イタリアの財政不安が高まったこともあり、対ドル、対円、ともに下落。ただドルは週末には底固さを失い円が全面高。ドル円相場は108円30銭、ユーロ円相場は121円ちょうど近辺で取引を終えた。

月曜日の東京市場のドル円相場は110円30銭で始まり底固い値動き。40銭~50銭でもみ合いとなった。ユーロ円相場も122円50銭台から70銭に上昇。日経平均は21,150円~21,200円で上下動してそのまま引けた。

トランプ大統領の訪日により開催された日米首脳会談ではとくに明確な材料はなし。日米通商協議は7月の日本の参議院選挙以降に本格協議を行う、とトランプ政権が安倍政権に配慮を示した。

この日はロンドン、NY、ともに休場。ドル円相場は109円50銭台で小動き、動意なし。ユーロドル相場は1.12ちょうど近辺。ユーロ円相場は122円60銭~70銭。

週末に欧州で行われた欧州議会選挙では親EU勢力が3分の2を堅持したものの、連立与党は合計で過半に届かず。他の親EU勢力が議席を伸ばし、一方で極右勢力も議席を伸ばした。

イタリア・サルビーニ副首相率いる反EU政党「同盟」も欧州議会で議席を増やした。

火曜日の東京市場のドル円相場は109円50銭を中心に上下した後、夕刻にかけて109円20銭に小幅安。ユーロ円相場も122 円60銭から下落して30銭中心の上下となった。

日経平均は21,200円で寄り付き堅調。21,250円~300円でもみ合い引けた。

海外市場に入るとドル円相場は109円50銭~60銭に持ち直し。ユーロ円相場も122円60銭に反発。ただその後は円高に振れた。

中国の共産党系メディアが、対米レアアース輸出制限を検討と報じたことで、市場の不安感が高まった。米国株は小高くスタートしていたが後場から引けにかけて大きく下落した。

米10年債利回りは2.26%と1年8ヶ月ぶりの低水準に低下。為替市場ではクロス円相場が下落。ユーロ円相場は122円10銭近辺に下げて引けた。ユーロは対ドルでも小幅下落して1.1160~70。ドル円相場は109円30銭台。

この日発表された米国の消費者信頼感指数(5月)は134.1と予想129.8、前月129.2を上回ったが反応は鈍かった。ダラス連銀製造業景気指数(5月)は▲5.3と予想5.8、前月2.0から悪化。

水曜日の東京市場のドル円相場は109円30銭を中心に上下。ユーロ円相場は122円10銭を中心に上下。夕刻にかけてはユーロ安円高が進み121円80銭~90銭に。ユーロドル相場も1.1150に下落した。ドル円相場は109円20銭に弱含み。

日経平均は米株安を嫌気して大幅安寄りとなり21,000円割れ。さらに20,900円も一時割ったが、その後は21,000円近辺でもみ合いとなった。海外市場に入ると米国株が大幅続落。

人民日報も、対米対抗手段としてレアアースを利用する用意がある、と報じ、米中通商懸念、世界経済悪化懸念が強まった。

米国株は引けにかけて持ち直したが、ダウは前日比▲220ドル。リスク回避のなか米10年債利回りは一時2.21%に低下し、引けは2.26%。

為替市場ではドルが堅調。ユーロドル相場は1.1130へユーロ安ドル高が進んだ。ユーロは軟調。ユーロ円相場は121円60銭に下落した。ドル円相場は109円60銭~70銭に小幅上昇して引け。ユーロ円相場も122円ちょうど近辺に戻した。

木曜日の東京市場のドル円相場は109円60銭で始まり底固く、夕刻には80銭近辺に小幅上昇した。ユーロ円相場も同様に122円ちょうどから122円20銭へ。ユーロドル相場は1.1130~40でもみ合い。

日経平均は米株安を嫌気して続落。20,900円割れから800円へ。ただその後は持ち直して20,950円近辺で引けた。アジア時間に米10年債利回りがやや上昇して推移し、市場心理を支えた。

海外市場ではドルは底固いながら小動き。発表された米GDP(1-3月期、改定値)は前期比年率+3.1%と速報+3.2%から若干下方修正となったが予想通り。個人消費と輸出は上方修正され、景気の足腰はなおしっかりしているとの評価。

一方、イタリア・サルビーニ副首相は、税制改革など優先政策が果たされなければ連立解消の覚悟、と述べ不安感を煽った。

米国株は3日ぶりに反発。一方米10年債利回りはなお低下基調で2.22%。ドル円相場は一時109円90銭に接近したが結局109円60銭近辺で引け。

ユーロドル相場は1.1130近辺で変わらず。ユーロ円相場は122円ちょうど近辺で引け。

この日、FRBクラリダ副議長は、米国景気は非常に良好な状態、としつつも、予防的に行動する必要性を感じれば、失望すべき経済指標だけでなくリスクの高まりが利下げを促す引き金となる可能性も考えられる、と述べた。

通商リスクが視野に入っているとみられるが、現時点ではそこまで達していないとの判断か。

金曜日の東京市場ではクロス円相場を中心に円が全面高となった。日本時間朝方、トランプ大統領がメキシコからの輸入品すべてに関税を賦課する方針を発表。メキシコが米国への不法移民を阻止しなければ、6月10日に5%、その後、状況に改善がみられなければ段階的に25%まで引き上げる、とした。

これにより再び通商懸念が高まり、景気悪化を織り込んでリスク回避の動きが広がった。日経平均は20,800円割れで始まり後場に一段安。20,600円近辺で安値引けとなった。

ドル円相場は109円60銭近辺で始まり、午後には109円を割り夕刻には108円70銭~80銭でのもみ合いとなった。ユーロ円相場は122円ちょうどで始まり、121円20銭~40銭でもみ合い。

この日、発表された中国のPMI製造業景況感指数(5月)は49.4と予想50.5、前月50.1から大きく悪化して景況感の分かれ目である50を割り込んだ。

海外市場に入ると米国株が大幅安。NYダウは前日比▲350ドル。米10年債利回りは2.13%まで低下した。ドルは軟調。ドル円相場はじりじりと下落してNYの引けは108円30銭。

円は全面高となり、ユーロ円相場は121円ちょうど近辺で引けた。ユーロドル相場は1.1170近辺にややユーロ高ドル安となった。

原油価格は世界景気悪化懸念・需要減退予想から下落し、WTI先物は53.50ドル。発表されたミシガン大学消費者マインド指数(5月・確報)は100.0と速報102.4から下方修正された。一方、個人所得・消費支出(4月)はなお堅調な数字を示した。

◆今週の3つの注目ポイント


1.米国の経済指標

今週は重要な指標の発表が続く。市場に不安感が広がるなか、その背中をさらに押す弱い数字となるリスクはないか。

月曜日 ISM製造業景気指数(5月、予想53.0、前月52.8)

火曜日 製造業新規受注(4月)

水曜日 ADP雇用報告(5月、雇用者数前月比、予想+190千人、前月+275千人)、ISM非製造業PMI(5月、予想56.0、前月55.5)

木曜日 貿易収支(4月)

金曜日 雇用統計(5月、非農業部門雇用者数・前月比、予想+193千人、前月+263千人、平均時給、前年同月比、予想+3.2%、前月+3.2%)

2.ベージュブック(米地区連銀経済報告)

水曜日(日本時間木曜日の未明3時)にベージュブックが公表される。実体経済について、各連銀が聴取した状況はどうか。経済指標で散発的示される数字を総合して、どのような経済状況にあるのか。

通商問題について米企業部門がどのようにとらえており、企業活動や業績に支障が生じ始めているか、被害が拡大しているか。こちらもまた市場の不安を煽る内容とならないか気がかりだ。

3.ECB理事会、ドラギ総裁会見

木曜日にECB理事会が開催され、終了後にドラギ総裁が定例の記者会見を行う。欧州経済は先行きが不透明となり、年後半の持ち直しシナリオが怪しくなった、との意見が増えている。

米中対立が激化、イタリアの財政問題を巡りEUとの対立が強まり、イギリスの合意なき離脱リスクが増している。こうした状況の悪化に対してどのような見方を示すか。

◆今週のMRA's Eye


米長期金利が大幅低下~変化したメインシナリオ

市場のメインシナリオが変化してきた。米中通商交渉は長期化するとの見方がもはや大勢となっている。米国側が関税賦課とファーウェイの取引規制を実施し、さらに制裁対象の企業をリストアップ。中国側は報復関税を賦課。さらにレアアースの対米輸出制限を検討するという。

関税賦課とレアアースの輸出規制・禁輸は大きく事態が異なる。古くは戦略物資である原油の輸出規制がのど元を押さえられた国の景気悪化を招き戦争につながった。レアアースという戦略物資の対米禁輸となれば物騒な話だ。

戦争に至らないまでも、対立が激化し、米中双方の景気悪化を招く可能性が高まる。まず企業がより慎重なスタンスとなり、設備投資や、やがて雇用にも影響するとの流れが想定されよう。

関税賦課の影響はこれから顕在化するが、企業心理はすでに悪化しており、それを示す弱いPMI景況感指数や米国のISM景気指数に対する反応は過敏になる。今週のISM指数には留意を要する。

先週、米国の10年債利回りは2.1%近辺まで大きく低下した。数字の上からは、政策金利を大きく下回り、年内2回の利下げまでも織り込む状況となっている。

市場の不安感やリスク回避の強まりによる米国債需要を考慮に入れれば、必ずしも利下げやその背景となる景気悪化が現実になると言い切れないが、市場が最悪の事態を織り込み、そこまで不安にかられているのが現状だ。

メインシナリオは、明らかに今後の景気悪化や利下げが前提となっている。

ここからのリスクシナリオは、市場の懸念を超える事態の悪化か、逆に米中通商交渉の進展や、対メキシコ関税引き上げの打ち止め、ないし解消による事態の想定外の好転ということになる。

ダウンサイドのリスクシナリオをたどるケースは、足元でなお堅調とみえる米国経済の悪化であり、当局が利下げに傾くケース。市場はある程度織り込んでいるものの、利上げ打ち止めから利下げ局面に転じたとの見通しが広がることで、一段と弱気、リスク回避が広がる可能性がある。

株価が調整しており、業績不安から企業の信用格付けが悪化すれば、相乗的に企業業績の悪化と株式・クレジット市場の調整が進むリスクがある。

現状はなお確信には至らない不透明感、懸念にとどまっており、やや大げさな表現にはなるが、市場が大崩れする崖っぷちにあるようにみえる。

その不安が現実の数字で裏打ちされた場合の市場の動きが気がかりだ。今後もISMやPMI指数、企業決算、株価、クレジット市場における信用スプレッドの動向、に留意を要する。

足元でなおドル円相場は底固い。ドルも円も同じ安全通貨としての性質を有しているために、リスク回避局面においては底固い性質がある。

ドルは基軸通貨であり、様々な投資の原点であるため、リスク回避局面ではドル、米国債に資金が還流するためだ。

円は経常黒字や対外債権がその安全性の根拠とされている。ドル円相場はグローバルなリスク回避においては、これまでのように、底固く推移することが多い。

ただし、リスク回避の源泉が米国経済の悪化、FRBによる利下げの開始、となればそうはいかない。現在、米10年債利回りの低下のなかでドル円相場は軟調ながらも底固い。

ただ、FRBがダウンサイドリスクを明確に意識して利下げに一歩踏み出す気配をみせれば、織り込み済みとはいえ、ドル円相場は105円近辺に下落する可能性がある。

さらに、米国経済に対する信認が崩れ、同時にドルに対する信認も崩れるケースともなれば、105円を割る極端なリスクシナリオも可能性はゼロではない。

逆に市場がすでに今後の世界経済悪化をメインシナリオにしつつあることから、事態が好転する可能性がみえれば、そのインパクトは大きくなりそうだ。

現在のところ、このケースの方が市場には想定しにくくなっており、リスクシナリオとしてのインパクトは大きくなっている。

米10年債利回りが2.1%に接近するまで低下していることは、FRBが利上げも利下げも、いずれの論拠もないといしてるなかにあっては異常事態だ。

利下げ予想を反映した数字というよりも、投資家の予防的な行動によって、米国債が過度に買われた結果であり、それ自体はなお米国経済への信認が崩れていないことを示している。

そうしたなかでポジティブな材料があれば、容易にリスク選好が回復し、あるいは少なくとも米10年債利回りの行き過ぎた低下が解消し、ドルが堅調に回帰する展開が想定される。

この場合、ドル円相場は110円台を回復し、111円を伺う動きとなるだろう。

メインシナリオではドル円相場は107円台~109円台。リスクシナリオのうち、相応に高い確率があるダウンサイドケースでは105円試し。

不幸にも米国経済が崩れ世界経済の見通しが悪化する確率の低いシナリオでは105円割れ。逆にポジティブサイドのリスクシナリオでは110円台回復となる。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :108.29(▲1.33)
ユーロ :120.96(▲1.04)
英ポンド :136.793(▲1.42)
豪ドル :75.124(▲0.64)
カナダドル :80.124(▲1.08)
スイスフラン :108.22(▲0.55)
ブラジルレアル :27.61(+0.08)
中国人民元 :15.74(▲0.16)
韓国ウォン(日本円=100) :9.109(▲0.11)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1169(+0.004)
英ポンド :1.2629(+0.002)
豪ドル :0.6938(+0.003)
カナダドル :1.3516(+0.002)
スイスフラン :1.0006(▲0.007)
ブラジルレアル :3.9229(▲0.059)
中国人民元 :6.905(+0.003)
韓国ウォン :1190.91(+1.84)

【主要国政策金利】
米国 :2.50
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :2.12(▲0.09)
米2年債 :1.92(▲0.14)
日本10年債利回り :▲0.09(▲0.02)
日本2年債利回り :▲0.09(+0.01)
独10年債利回り :▲0.20(▲0.03)
独2年債利回り :▲0.66(▲0.02)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :24,815.04(▲354.84)
NASDAQ  :7,453.15(▲114.57)
S&P500 :2,752.06(▲36.80)
日経平均株価 :20,601.19(▲341.34)
ドイツ DAX :11,726.84(▲175.24)
インド センセックス :39,714.20(▲117.77)
中国上海総合 :2,898.70(▲7.11)
ブラジル ボベスパ :97,030.32(▲427.04)
英国FT250 :18,970.25(▲141.26)
ビットコイン :8503.38(+39.90)

【主要商品価格】
WTI :53.50(▲3.09)
Brent :64.49(▲2.38)
米ガソリン :180.20(▲7.66)
米灯油 :184.18(▲7.32)

金 :1305.58(+16.93)
銀 :14.59(+0.07)
プラチナ :793.72(▲2.53)
パラジウム :1328.30(▲40.97)
銅 :5819.00(▲35:38.5C)
アルミニウム :1788.50(+2:27.5C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :877.75(▲11.25)
シカゴ とうもろこし :427.00(▲9.25)
シカゴ小麦 :503.00(▲11.50)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。