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引き続きG20にらみで動意薄い
  • MRA商品市場レポート for PRO

2019年7月1日 第1562号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「引き続きG20にらみで動意薄い」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は、引き続きG20での米中首脳会談の結果を見極めようと、ポジション調整の取引が主体であり、非景気循環系商品が積極的に物色された。上昇率トップはビットコイン(詳しくは2019年6月27日付MRA's Eyeをご参照ください)。

米国時間に発表された米ISM製造業指数、GDPの先行指標であるシカゴ購買部協会指数は49.7(市場予想53.5、前月54.2)と市場予想を下回り、さらに好不況の閾値である50を下回った。

ただ、同時に発表された米個人所得・支出が穏やかな伸びに留まったこともあり利下げ観測が強まったことが価格を支えた。

【本日の価格見通し総括】

週末開催のG20では米中が話し合い再開で合意したため、一時的にリスク資産に買戻しが入る展開が予想される。しかし、米中交渉そのものが妥結したわけではないことから大幅な上昇にはならないと考える。

予定されている材料としては明日発表の中国製造業PMI(市場予想49.5、前月49.4)、非製造業PMI(54.2、54.3)に注目している。仮に2ヵ月連続で40台だと、非鉄金属をはじめとする鉱物資源価格の下押し圧力を強めよう。

また、月曜日は多数のマクロ経済統計が発表される。まずは日銀短観。市場予想は大企業製造業が9(3ヵ月先予測6、前回調査12)、大企業非製造業が20(19、21)、大企業全産業の設備投資は8.1%(1.2%)が予想されている。

海外情勢の不安定化が景気を明らかに下押ししているが、国内の省力化投資は続いている模様であり、急減速は回避できるとみる。

また夜間には米ISM製造業指数が発表される。市場予想は51.0(前月52.1)と前月からは減速するものの、閾値である50は維持するとみられている。

しかし、その他の地域のPMIは軒並み50を下回っており、先行指標であるシカゴ製造業PMIは49.7と減速していることを考えると、50割れの可能性も否定できない。

【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】

注目の米中首脳会談がG20サミット中に開始され、ほぼ事前の予想通り交渉再開と、それに伴い米国が追加関税を先送りすることで合意した。

両国を巡る経済環境が悪化しており、経済統計も弱めのものが目立つ中、「とりあえず貿易面だけは何らかの合意を得よう」というバイアスがかかり始めていると考えられる。

しかし、よくよく考えると状況は今と対して変わっておらず、制裁は継続した状態であるため、やはり米中問題が景気の下押し要因になり続けることに大きな変化はないだろう。

上述の通りだが、米ISM製造業指数、GDPの先行指標であるシカゴ購買部協会指数は49.7(市場予想53.5、前月54.2)と市場予想を下回り、さらに好不況の閾値である50を下回っている。

しかし、より追い詰められているのが中国側であるが、自身の支持基盤である紅二代(中国共産党の元高級幹部の子弟で構成されるグループ「太子党」のうち、1949年の新中国成立の前に共産革命に参加し、日中戦争や中国国民党との内戦で貢献した幹部たちの子女の呼称:コトバンクより)や長老から弱腰外交を批判されているようであり、夏の北載河会議や10月の建国70周年軍事パレードに向け、「強い指導者」を演じる必要がある。

そのため、交渉が再開したといっても大きな進捗が短期間のうちにあるのか、と問われればその可能性は高くないと考える。しかし、交渉再開で、さらに状況が悪化するリスクは依然よりも低下したといえるだろう。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

(マクロ要因)

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標再びの減速(価格下落要因)。

・世界景気の減速観測。IMFは2019年の経済見通しを引き下げ(+3.5%→+3.3%)ており、米中対立の激化があった場合には▲0.5%程度の引き下げリスクも視野に入れている。リスク資産価格に対して下向きのリスク。

・FRBの利下げの可能性が再び高まる(トランプ大統領があからさまに要求を始めており、米中通商戦争の行方次第ではあり得る状況に)。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q119の中国GDPは前年比+6.4%、前期+6.4%と市場予想の+6.3%を上回りやや減速懸念が後退)。

※中国は地方政府の資金調達規制を実質緩和。

・景気減速下での原油価格高止まりは、消費国から生産国への所得移転を通じて景気の下押し要因に。また、リスク回避のドル高進行も価格上昇を抑制。

・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。

(特殊要因)

・米中通商協議が再開で決定したが、通商協議そのものが合意をしたわけではなく、制裁は継続しており世界経済がさらに減速する場合(下落要因)。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・中東情勢の悪化を受けた域内景気の混乱と、それを受けた欧州景気への悪影響拡大(下落要因)

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。とりあえず10月末を期限として問題先送りしたが、メイ首相の後任が強硬派のジョンソン前外相である可能性が高く、ハードブレグジットの可能性が高まっている(下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

(投機・投資要因)

・米利下げ観測の高まりで長短金利逆転状況が解消し、金融株を中心に株が上昇、リスクテイク再開で景気循環系商品価格にプラスの影響を与える場合。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油相場はもみ合ったのち、引けにかけて下落した。米国時間に発表された米シカゴ購買部指数が悪化、50の閾値を下回ったことで米国景気の減速懸念が強まったことが背景。

ただし、基本、G20を控えて様子見気分が強かった。

【原油価格見通し】

原油価格は高値圏での推移になると考える。G20での米中首脳会談の結果、通商問題に関して一時的に休戦で合意したことや、中東情勢不安が材料。

イランと米国に関して、両国の国力を削る開戦はない、というのがメインシナリオではあるものの、イランも米国の制裁に反発して低濃縮ウランの生産を再開しており、この状態で米イラン首脳会談が開催されるとは考え難く、その選択肢を排除できない状況。

トランプ大統領はイランに対して攻撃したくない、というのが本音と見られるが、ボルトンを筆頭とする共和党保守強硬派はあまりそう考えていないようだ。引き続き両国動向は、ニュースに一喜一憂とならざるを得ない。

これ以上、中東を材料に価格が上昇するとすれば、さらに具体的に米国とイランが軍事的に衝突すること、ないしはクシュナーの提案などをきっかけにイスラエルとパレスチナの対立が深まり、軍事衝突が起きることであるが、現時点では希望的観測も含めて「ない」と信じたい。

この中東有事の高まりで、OPECプラス会合での方針は急速に従来の見通し、すなわち▲120万バレルの減産水準を順守、という方向に舵が切られるとみられる。

中東情勢が緊迫しているため、OPECの決定はBrentベースで60ドル程度まで価格を押し下げると予想されるが、中東の緊張が緩和されれば、ISM製造業指数の低下もあってBrentベースで55ドル程度までの下落が見込まれる。

なお、この状況においてもOPEC諸国に対する影響を残すことができるため、イランがOPECを脱退する、というのは選択肢になっていないと考えられる。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は小幅高。季節的に需要の端境期にあることや、欧州ガス価格低下に伴う欧州石炭価格の低迷で低水準での推移を続けている。

【石炭価格見通し】

石炭価格は夏場に向けて上昇するとみているものの、欧州市場の需給緩和(よりクリーンなエネルギーへのシフト、景気減速による電力需要の後退)、中国の景況感の悪化を受け、当面は下値余地を探る動きになると考える。

中国の石炭の輸入量は回復しており、過去5年のレンジを上抜けした。生産に関しては減少傾向となっているが、港湾在庫は増加するなど、需要面の弱さから総じて中国の石炭需給は緩和傾向にある可能性が高く、ファンダメンタルズは強くない。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・原油価格の上昇に伴う北米の増産継続は、需給緩和で価格の下落要因。

・景気が減速する中での減産継続は、その効果が限定されはするものの、足元の価格下落を受けてOPECプラスの協調減産は7月以降も継続(場合によると減産枠拡大)の見込みであり、一定の下支え効果をもたらす見込み。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・中国の石炭生産鈍化(4月2億9,429万トン)、輸入減少(1,564万7,172トン)にもかかわらず、港湾在庫が増加していることは国内需要の弱さを示唆(石炭)。

(特殊要因)

・米国がイランを攻撃する準備を整えていたことが発覚、両国の緊張はこれまでにないほど高まっていることは、開戦を通じた供給懸念を通じて価格の上昇要因に。

・北朝鮮のミサイル発射により、制裁が継続される可能性が高まっていることは、北朝鮮からの石炭輸出(密輸)を制限し、価格の上昇要因(石炭)。

・米中情報戦争をめぐる華為技術排除の決定を受けて中国政府は豪州からの石炭輸入を規制、インドネシア炭にシフトしていることはNEWC価格の下落要因に(石炭CIF価格に対する影響は中立)。

(投機・投資要因)

・WTI・Brentともロングの減少が顕著だが、WTIのショートには買戻し、Brentはショートが増加した。中東情勢を巡り市場参加者のスタンスはまちまちだが、とにかく積み上がったロングから解消する動きが強まっているようだ。

・テクニカルには、世界の市場参加者は原油取引において「一目均衡表」を活用するようになっており、「雲のねじれ」がある7月初に、例えば中東情勢不安が顕在化したり、金融緩和が意識されるようになったり、OPECが減産幅を拡大したり、ということがあれば、7月意向、ポジションの巻き戻しで急騰リスクはあり得る。

・直近の投機筋のポジションは、WTIはロングが496,941枚(前週比 ▲5,808枚)、ショートが118,138枚(▲21,524枚)、ネットロングは378,803枚(+15,716枚)

Brentが326,480枚(前週比▲7,003枚)、ショートが71,726枚(+9,749枚)、ネットロングは254,754枚(▲16,752枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME非鉄金属価格はもみ合った結果、総じて前日比マイナスで引けた。基本、G20での米中会合を控えて様子見気分が強かったが、米シカゴ購買部協会指数の悪化が売り材料視された。しかし、統計の悪化で利下げ期待が高まり、金融面が価格を支えた。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は一旦買戻しが入って上昇すると考える。週末開催のG20ではほぼ予想通りだったが、米中が一旦通商戦争休戦で合意、追加関税が見送られたことで、景気への過剰な懸念が後退したことで、投機筋の買戻しが入ると考えられることから。

ただし、米シカゴ購買部協会指数の悪化や個人消費の伸びが緩やかなものにとどまるなど、マクロ経済環境の悪化もあって上昇余地は限定されると考える。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は再開しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCも高止まり。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

(特殊要因)

・中国政府がシャドーバンキングを含む、違法な資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは、需要面で価格の上昇要因に。

・銅の生産減少観測(環境問題によるインド、露天掘りから地下生産に変更するインドネシア、コデルコのストライキ)、ヴァーレの尾鉱ダム事故の影響による供給減少(アルミやニッケルなどに波及する可能性)。

オランダ ニルスター社の豪鉛精錬所(ポート・ピリー)停止による、供給不安(鉛)。

ハイドロのAlunorteアルミナ精錬所の問題に象徴されるように、広く非鉄金属を含む鉱物セクターは、環境問題への高まりから供給が政府命令で急に停止してしまう可能性は低くない。

・LME指定倉庫在庫の減少が、LMEの倉庫運営ルール変更に伴う保管場所変更の取引の影響である場合、ルールが見直された際に再度、LME指定倉庫在庫が急増する可能性(下落要因)。

(投機・投資要因)

・6月21日付のLMEポジションは動きがまちまち。

亜鉛を除くすべての金属で、G20への期待などから積み上がっていたショートの解消が進んだ。銅、鉛、ニッケル、錫のロングが増加した。総じて、G20での米中協議、四半期末を控えたポジション調整の取引が主体だったと考えられる。

投機筋のLME+CME銅ネット売り越し金額は▲57.0億ドル(前週▲67.1億ドル)と売り越し幅を縮小。売り越し額の減少幅は▲15.1%に。

買い越し枚数はトン数換算ベースで▲1,411千トン(前週▲1,631千トン)と売り越し幅を縮小。亜鉛と錫以外はトン数ベースでネット売り越しのまま。ネット売り越しの減少率は▲13.5%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップ市場は上昇、原料炭スワップ先物は上昇、中国鉄鋼製品市場はまちまちだった。

G20での米中協議を控えて先物がポジション調整取引が主体となる中、鉄鉱石在庫の水準低下に伴う積み上げ需要が価格を押し上げている。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は、中国政府の公共投資促進策と豪州からの供給不安、ヴァーレの生産が完全に回復していないこと、リオの減産見通しといった供給面、米中首脳会談実施期待を受けた鉄鋼製品の投機的な買戻しを背景に、高値圏での推移になると予想。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・直近の鉄鋼業PMIは50.0(前月52.1)と減速。生産の回復(54.5→56.0)はあったが、新規受注の落ち込みが顕著(51.7→46.7)であり、輸出向け新規受注も大きく落ち込み(48.9→45.9)。

・中国の鉄鋼製品在庫水準の高さは価格の下落要因。鉄鋼製品在庫は前週比▲0.3万トンの1,178万トン(過去5年平均1,077.7万トン)と例年を上回っている。

中国の鉄鉱石在庫水準の高さは徐々に低下し、価格の下支え要因となる可能性。鉄鉱石在庫は前週比▲150万トンの1億1,525万トン(過去5年平均1億1,827.6万トン)、在庫日数は▲0.3日の23.5日(過去5年平均 28.5日)と例年の水準を下回った状態が続いている。

・季節的に鉄鋼製品在庫の取り崩し時期であり、価格には下押し圧力がかかりやすい。

・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、すでにインフラ整備のための投資拡大方針を示しており、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

・ヴァーレ、リオ・ティントの生産目標引き下げによる供給減速。

(特殊要因)

・中国政府がシャドーバンキングを含む、違法な資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは価格の上昇要因。

・ヴァーレの尾鉱ダム決壊の影響が拡大し、さらに供給減少が起きた場合(自社・他社ともにあり得る)、価格の上昇要因に。

ヴァーレの尾鉱ダム事故の影響で、今後、低品位鉱石価格にも上昇圧力がかかる公算。

(投機・投資要因)

・供給懸念などを通じて大連取引所は建玉を積み増しながら、価格を切り上げており、先々の下落リスクは高まっている状況。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金価格は上昇後下落した。米利下げ期待や中東情勢不安、米中懸念などを材料に1,400ドルを上回る上昇となっていたが、米中が停戦で合意した、との報道もありG20を控えて引けにかけて水準を切下げた。

銀価格はもみ合った結果上昇。金価格の下落はあったものの、金銀レシオがあまりに高水準であるため、G20を控えて買戻しが入った様子。

PGMは一昨日と反対の値動きとなり、プラチナには買戻しが入り、パラジウムは売られた。やはり同様にポジション調整取引が主体と考えられる。

【貴金属価格見通し】

金価格は、ほぼ予想通りではあるが、米中が一時停戦で合意したことで安全資産需要が後退するため、一旦下値余地を探る動きになると考える。

ただし、FRBが緩和方向に舵を切ったこと、中東情勢の悪化やイタリアなどの情勢不安を材料に下値余地も限定されるとみる。

銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)の上昇が金銀レシオを押し上げているため対金で割安に推移。

PGM価格は金銀価格が底堅い推移になるため堅調だが、株価動向に左右され神経質な推移を継続。供給不安で基本的にパラジウムは堅調な推移が続こう。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・FRB・ECBの金融緩和期待が市場で再び高まっていること、原油価格の高止まりは実質金利の低下を通じて金銀価格の上昇要因に(逆に利下げ期待が高まりすぎているため、期待と金融当局の判断の乖離から、7月FOMCで下落に転じる可能性も)。

・景気の先行きを懸念した株価下落とそれに伴う長期金利・実質金利の低下(金銀価格の上昇要因)。ただし、欧州の政情安定化や米中貿易戦争の合意、景況感の改善で株価が上昇した場合には金銀価格の下落要因。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト期待(パラジウムの上昇要因・プラチナの下落要因)。ただし実際にシフトが起きるには相当の時間がかかる見込み。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

(特殊要因)

・米中通商交渉は一旦追加関税引き上げなどが先送りになったが、企保的に難航している。知的財産権や技術の強制移転などの重要なポイントで妥結できておらず、長期化の見込み(価格の下支え要因)。

・米国とイランの開戦リスクが高まっている。共和党議会側はイランに対する戦闘の準備を終えており、それをトランプ大統領が止めた、という状況。

・米国の債務上限問題の顕在化(8月~9月にデフォルトするリスク)。

・欧州議会選でのポピュリズム政党の躍進。それに伴うEU懐疑論の高まりによる域内の政情不安定化。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

(投機・投資要因)

・銀価格は金銀在庫レシオが銀在庫の減少、ないしは金在庫の増加、あるいは両要因によって低下した場合、金銀レシオが上昇するリスク(銀価格の上昇要因)。

・金銀はロングが増加、ショートが減少しており、利下げ期待を織り込みながら強気のポジション取りに。

・プラチナはロングが増加、ショートも増加しネットポジションはほぼ変わらず。パラジウムはロング・ショートとも増加しているが、ロングの増加のほうが大きい。

パラジウムは基本的に供給不足であり、積み上がったショートの買戻しでさらに上昇する可能性も。

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが298,108枚(前週比 +23,475枚)、ショートが61,554枚(▲8,756枚)、ネットロングは236,554枚(+32,231枚)

 銀が97,573枚(+4,298枚)、ショートが67,008枚(▲11,751枚)、ネットロングは30,565枚(+16,049枚)

・直近の投機筋のポジションは、プラチナはロングが48,631枚(前週比 +1,834枚)、ショートが46,645枚(+1,818枚)、ネットロングは1,986枚(+16枚)

 パラジウムが15,181枚(+1,638枚)、ショートが4,332枚(+994枚)、ネットロングは10,849枚(+644枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物価格は高安まちまち。最終作付け面積や、四半期在庫などが材料となった。

トウモロコシの最終確定作付け面積は9,170万エーカー(市場予想8,703万エーカー、前年8,913万エーカー)と大幅な増加、作付け進捗率の遅れはあったが生産の落ち込みが限定されるとの期待が高まった。

一方大豆は8,004万エーカー(8,468万エーカー、8,920万エーカー)、小麦は4,561万エーカー(4,561万エーカー、4,780万エーカー)となった。

四半期在庫はトウモロコシが52億200万ブッシェル(市場予想53億1,389万ブッシェル)、大豆が17億9,000万ブッシェル(18億6,544万ブッシェル)、小麦が10億7,200万ブッシェル(10億8,947万ブッシェル)

【穀物価格見通し】

穀物価格は当面、天候状況が価格を左右する展開となり、神経質な推移が続くと考える。

しかし、基本的には北米の作付けの遅れから、ショートの買戻しが入り上昇すると考える。米中首脳会談で、米中交渉再開が確認されたこと、米農務省の需給報告で、トウモロコシの生産見通しが引き下げられたこと、欧州の気温も上昇しており、収穫への懸念が強まっていることも材料。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・米国のトウモロコシ・大豆の生産減少観測による需給タイト化観測。

・豪州東部の大干ばつによる小麦生産の減少懸念。

・欧州・ロシアの気温上昇に伴う小麦生産の減少懸念。

・最終確定作付け面積動向(トウモロコシは増加、大豆は減少、小麦は横ばい)トウモロコシ 9,170万エーカー(市場予想8,703万エーカー、前年8,913万エーカー)大豆 8,004万エーカー(8,468万エーカー、8,920万エーカー)小麦 4,561万エーカー(4,561万エーカー、4,780万エーカー)

・6月の米需給報告の生産見通し

トウモロコシ136億8,000万ブッシェル(前月150億3,000万Bu)大豆 41億5,000万Bu(41億5,000万Bu)小麦 19億300万Bu(18億9,700万Bu)

・6月の米需給報告の在庫見通しトウモロコシ16億7,500万ブッシェル(前月24億8,500万Bu)大豆 10億4,500万Bu(9億7,000万Bu)小麦 10億7,200万Bu(11億4,100万Bu)

・米緩和観測に伴う実質金利の低下に伴うドル安の進行は、シカゴ穀物の輸出競争力を改善し、需給面で価格の上昇要因に。

(特殊要因)

・米中通商交渉は交渉再開で合意したが、覇権争いであり長期化の可能性は高い(価格の下落要因)。

・米政府はブッシェル当たり大豆2ドル、トウモロコシ0.04ドル、小麦0.63ドルの補助金を供給することを検討。生産減少を食い止めるため価格の下落要因に。

・エルニーニョ現象発生による北米の増産は基本的には価格の下落要因だが、今年は洪水が発生しており、夏場の気温上昇や乾燥といった育成環境の悪化の可能性はあり、価格の上昇要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

(投機・投資要因)

・すべての穀物で、ロング・ショートとも減少。G20や需給報告、四半期末を控えたポジション解消の動きが強まったため。いずれもネットロングが減少している。

・直近の投機筋のポジションは、トウモロコシはロングが462,115枚(前週比 ▲11,528枚)、ショートが154,914枚(▲48,383枚)、ネットロングは307,201枚(+36,855枚)

大豆はロングが127,643枚(▲29,590枚)、ショートが129,511枚(▲30,456枚)、ネットロングは▲1,868枚(+866枚)

小麦はロングが129,662枚(▲9,684枚)、ショートが99,458枚(▲10,585枚)、ネットロングは30,204枚(+901枚)

◆本日のMRA's Eye


「有事の金リスク影響総括」

金価格と実質金利の間には高い相関性が確認されているが、昨年末頃から米国が金融緩和に転じたことが最も金価格を押し上げている。

ただ、中東情勢不安の高まりから、実質金利~説明可能な価格よりも140ドル程度高い水準で金価格は推移している。今のところはまだ小競り合いで済んでいるが、仮に国対国の戦闘行為に発展した場合、過去の分析では現在の水準から50%程度上昇してもおかしくない。

その場合、原油価格は100ドル程度まで上昇することになるが、過去1年のデータを基に原油価格と期待インフレ率、それを通じた金価格の感応度について分析すると、原油価格が100ドル程度まで上昇した場合、実質金利は75bp程度低下し、金価格は75ドル程度、現在の水準から上昇することになる。

今の水準から75ドル上昇すれば、金価格は1,500ドルを超えることになるが、さらに地政学的なリスクプレミアムが乗ることになる。細かい計算はここでは紹介しないが、1,600ドル程度までの上昇があってもおかしくない。

では、金は過去、どのようなケースでリスクプレミアムが乗っていたのだろうか。

グラフは湾岸戦争以降の金価格と原油価格の前年比変化率だが、明らかに有事が発生した際に価格が前年比で上昇していることが分かる(より詳しいグラフは、MRAマンスリーレポートに掲載の予定です)。

そして、金価格の絶対値が高くなったことから、年を追うごとに前年比ベースでの上昇率が低下傾向にあることも見て取れる。

過去前年比で最も上昇したのは2006年のイランの核濃縮問題を巡る、米国との応酬の時である。しかし、この頃は金がまだ「安全資産」として強く認知されておらず、かつ、絶対価格水準が高かったことから現在の状況とはやや異なる。

有事発生の際に金価格はプラスで反応するが、過去の例を見るに「信用リスクが顕在化」した場合の方が上昇の度合いが大きい。

その意味で、現在問題となっているBrexitや夏頃にフォーカスされる米国の債務上限問題の方が、価格への影響が大きい可能性があることは忘れてはならない。もちろん、イタリアの財政問題も無視できないことは、過去のケースが物語っている。

なお、銀も金価格の上昇を受けて上昇しているが、対金では極めて割安に推移している。金銀レシオは過去の水準からみても極めて高いが、金の取引所在庫に比して、銀の取引所在庫が多いことにより、「需給が金よりも緩和している」と判断されていることが背景だ。

しかし、現在の金銀レシオは在庫水準から見た場合、それでもやや高過ぎの感があるため、もう少し対金で価格が上昇してもおかしくないと考えている。

◆主要ニュース


・5月日本失業率 2.4%(前月2.4%)。有効求人倍率 1.62倍(1.63倍)

・6月東京消費者物価指数 前年比+1.1%(前月+1.1%)
 除く生鮮+0.9%(+1.1%)
 除く生鮮エネルギー+0.8%(+0.8%)

・5月日本鉱工業生産速報  前月比+2.3%(前月改定+0.6%)、前年比▲1.8%(▲1.1%)
 出荷+1.6%(+1.8%)、▲1.5%(▲1.4%)
 在庫+0.6%(±0.0%)、+1.6%(+1.2%)

・4月日本自動車生産 前年+4.7%の814,351台(前月▲4.1%の900,593台)
 乗用車+4.8%の699,356台(▲3.8%の780,165台)
 トラック+4.5%の104,925台(▲6.4%の111,152台)
 バス+4.7%の10,070台(▲1.8%の9,276台)

・5月日本住宅着工戸数 前年比▲8.7%の90.0万戸(前月▲5.7%の93.1万戸)

・5月日本建設工事受注 前年比▲16.9%(前月▲19.9%)

・5月独輸入物価指数 前月比▲0.1%(前月+0.3%)、前年比▲0.2%(+1.4%)

・6月ユーロ圏消費者物価指数 前年比+1.2%(+1.2%)、コア指数 +1.1%(+0.8%)

・5月インド財政収支 ▲2兆910億9,000万ルピーの赤字(前月▲1兆5,704億8,000万ルピーの赤字)

・Q119インド経常収支 ▲460億ドルの赤字(前期 ▲177.4億ドルの赤字)

・5月米個人所得 前月比 +0.5%(前月+0.5%)
 個人支出+0.4%(+0.6%)
 実質支出+0.2%(+0.2%)
 PCEデフレータ 前月比+0.2%(+0.3%)、前年比+1.5%(+1.5%
 コアデフレータ 前月比+0.2%(+0.2%)、前年比+1.6%(+1.6%
 貯蓄率 6.1%(6.1%)

・6月シカゴ購買部協会指数 49.7(前月 54.2)

・6月米ミシガン大学消費者マインド指数改定 98.2(速報比+0.3、前月100.0)
 現況指数 111.9(▲0.6、110.0)
 先行指数 89.3(+0.7、93.5)
 1年期待インフレ率 2.7%(+0.1%、2.9%)
 5年期待インフレ率 2.3%(+0.1%、2.6%)

・インタファクス、「トランプ大統領はプーチン大統領との会談で、極めて貧弱な経済関係の再構築に向けて、建設的なアプローチを示し、軍縮に関して対話を開始する用意がある、と発言した。」

・新華社通信、「米中は貿易戦争の一時休戦で合意。米国は追加関税を見送り。」

・米トランプ大統領、「米中は元の軌道に戻った。」

・G20首脳宣言、自由、公平、無差別で、安定的な貿易・投資環境を実現するために、各国が努力するとの方針を明記。機能不全が指摘される世界貿易機関の改革については、紛争処理制度を含めて早急に取り組んでいくことを確認。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・ベイカー・ヒューズ週間米国石油リグ稼働数793(前週比+4)、 ガスリグ 173(前週比▲4)。

・米トランプ大統領、「イランへの対応に時間的な制約は全くない。」

・ファリハ石油相、「サウジ、イラク、UAEは現在の減産を継続したいと考えている。」

・プーチン大統領、ムハンマド皇太子とG20で会談へ。

・イラン アラグチ外務次官、「英仏中ロとの高官協議で核合意維持に向けた進展はみられたものの、合意の一部履行停止を覆すには不十分。」

・EU、「貿易取引支援機関(INSTEX)で最初の取引が処理された。」INSTEXを使うと、米国のイランに対する制裁にも関わらず、イランとの取引が可能になる。

【メタル】
・中国江西省、レアアースを戦略的資源として扱う方針。

・チュキカマタ鉱山の労使交渉終了、ストライキも終了。

・ニッケル鉱石港湾在庫、1,271万トン、ニッケル含有量ベース前週比+1,000トンの107,000トン。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.ビットコイン ( その他 )/ +14.29%/ +232.39%
2.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ +6.08%/ ▲58.00%
3.SHF 金 ( 貴金属 )/ +2.79%/ +13.22%
4.ICEアラビカ ( その他農産品 )/ +2.56%/ +6.28%
5.プラチナ ( 貴金属 )/ +2.56%/ +4.91%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.CBTトウモロコシ ( 穀物 )/ ▲4.49%/ +12.07%
69.CBTエタノール ( エネルギー )/ ▲3.59%/ +19.07%
68.CBT小麦 ( 穀物 )/ ▲3.56%/ +4.92%
67.CME豚赤身肉 ( 畜産品 )/ ▲2.34%/ +18.25%
66.欧州排出権 ( 排出権 )/ ▲2.27%/ +6.19%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :26,599.96(+73.38)
S&P500 :2,941.76(+16.84)
日経平均株価 :21,275.92(▲62.25)
ドル円 :107.85(+0.06)
ユーロ円 :122.66(+0.11)
米10年債利回り :2.01(▲0.01)
独10年債利回り :▲0.33(▲0.01)
日10年債利回り :▲0.16(▲0.02)
中国10年債利回り :3.23(▲0.02)
ビットコイン :12,212.7(+1526.56)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :24.90(▲0.45)
エネルギー :34.24(▲2.25)
ベースメタル :21.92(+0.22)
貴金属 :15.92(▲0.55)
穀物 :21.80(+0.82)
その他農畜産品 :26.06(▲0.48)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :35.77(▲5.45)
Brent :35.55(▲2.46)
米天然ガス :33.71(+0.88)
米ガソリン :36.45(▲3.39)
ICEガスオイル :25.95(▲3.03)
LME銅 :13.76(▲0.35)
LMEアルミニウム :18.07(+0.1)
金 :17.55(▲0.05)
プラチナ :19.82(+1.84)
トウモロコシ :29.97(+3.88)
大豆 :17.55(▲0.05)

【エネルギー】
WTI :58.47(▲0.96)
Brent :66.55(±0.0)
Oman :64.63(▲0.15)
米ガソリン :194.25(▲0.41)
米灯油 :194.46(▲0.79)
ICEガスオイル :595.00(+1.00)
米天然ガス :2.31(▲0.02)
英天然ガス :25.65(+1.47)

【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :66.55(±0.0)
SPO380cst :399.68(▲3.34)
SPOケロシン :77.92(▲0.67)
SPOガスオイル :77.35(▲0.86)
ICE ガスオイル :79.87(+0.13)
NYMEX灯油 :193.40(▲1.14)

【貴金属】
金 :1409.55(▲0.23)
銀 :15.32(+0.06)
プラチナ :834.75(+20.81)
パラジウム :1537.66(▲14.47)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :5,982(+14:9.5C)
亜鉛 :2,496(+24:85B)
鉛 :1,927(±0.0:13C)
アルミニウム :1,794(▲11:20C)
ニッケル :12,710(+20:45C)
錫 :18,850(±0.0:45C)
コバルト :28,650(▲120)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :6001.00(▲1.50)
亜鉛 :2493.00(+6.50)
鉛 :1933.00(▲7.00)
アルミニウム :1794.00(▲4.50)
ニッケル :12675.00(▲60.00)
錫 :18800.00(▲80.00)
バルチック海運指数 :1,354.00(+14.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :109.18(+0.11)
NYMEX鉄鉱石 :109.18(+0.46)
NYMEX原料炭スワップ先物 :197.33(+1.33)
上海鉄筋直近限月 :3,780(▲50)
上海鉄筋中心限月 :4,044(+9)
米鉄スクラップ :267(+1.00)

【農産物】
大豆 :899.75(+12.00)
シカゴ大豆ミール :313.10(+0.90)
シカゴ大豆油 :28.24(+0.43)
マレーシア パーム油 :1865.00(▲15.00)
シカゴ とうもろこし :420.25(▲19.75)
シカゴ小麦 :528.00(▲19.50)
シンガポールゴム :202.80(+0.50)
上海ゴム :11240.00(▲255.00)
砂糖 :12.32(▲0.21)
アラビカ :108.25(+2.70)
ロブスタ :1421.00(+23.00)
綿花 :63.15(+0.16)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :72.10(▲1.73)
シカゴ生牛 :110.50(▲0.08)
シカゴ飼育牛 :136.85(+1.05)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。