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米統計減速で景気循環銘柄下落~米不作懸念で農産品続伸
  • MRA商品市場レポート for PRO

2019年5月31日 第1542号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「米統計減速で景気循環銘柄下落~米不作懸念で農産品続伸」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品価格は予想通り、引き続き農畜産品やコーヒーなどのソフトコモディティが物色され、貴金属などの安全資産も物色された一方、景気循環系商品が売られる流れが続いた。

米GDP改定値が前期を下回ったことや中古住宅販売仮契約件数の減速など、純粋に景気への懸念が強まった形。

米穀物価格の上昇は昨日のMRA's Eyeで解説した通り、生産地の天候条件の悪化が影響、コーヒーはブラジルレアル高が影響した。

【本日の価格見通し総括】

前日の下げ幅が大きかったこともあり、本日もまずは買戻しから入ると考えられるが、景気の先行きを占ううえで重要な中国製造業PMIなどの結果をにらみつつ、神経質な推移になると考える。

週末ということもあって、今週上昇が顕著だった農産品には売り圧力が高まるとみる。

本日予定されている材料で注目しているのは中国製造業PMI(市場予想49.9、前月50.1)、米個人消費(前月比+0.2%、+0.9%)、所得(+0.3%、+0.1%)だが、いずれも景気減速の強まりを感じさせる内容になると予想される。

【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】

多くのイベントが発生しているにも関わらず、相場は仮に株価が大きく調整したとしてもそれほど大きく景色が変わっているように見えない。比較的市場が冷静に反応し、「●●ショック化」しないで済んでいるように見える。

原油価格を決定するのはファンダメンタルズ要因(景気動向や需給動向など)、特殊要因(戦争や事故など)、投機・投資要因の複合要因であるため、弊社は原油価格動向を語る上でドル指数のみで解説することを通常行っていないが(逆もまた真なりであるが)、今日はあえてドル指数と原油のみに絞って状況を整理してみたい。

この1年のドル指数動向と原油価格動向を俯瞰すると、景気が転換点に向かっている(ないしはすでに転換した)可能性があること示唆している。

昨年夏までは大きなトレンドではドル高が進行し、原油価格もそれに合わせて上昇していた。これは、「好景気に伴う米国の金利上昇とドル高、需要増加による原油価格上昇」が同時に起きていたためと整理できる。

8月以降、原油は米中貿易戦争で大きく下落、その後はOPECの減産を受けて、ほとんどドル指数とは関係ない動きとなる。

そして足元はさらにドル指数が上昇し、原油価格が下落する展開になっている。

米長期金利が低下しているにも関わらずドルが上昇しているのは、恐らくドルはリスク回避で物色され、原油は景気の減速懸念がさらに強まったことで売られている、と整理される。昨日の相場はこの傾向が顕著だった。

ただ、このような状態になると米FRBが利下げに動く、との期待感が強まるため、まずは株が上昇することになり、商品価格に一定の下支え効果をもたらそう。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

(マクロ要因)

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標再びの減速(価格下落要因)。

・世界景気の減速観測。IMFは2019年の経済見通しを引き下げ(+3.5%→+3.3%)ており、先行きの見通しのリスクも下向き。

・FRBの利下げの可能性が再び高まる(トランプ大統領があからさまに要求を始めており、米中通商戦争の行方次第ではあり得る状況に)。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q119の中国GDPは前年比+6.4%、前期+6.4%と市場予想の+6.3%を上回りやや減速懸念が後退)。

・景気減速下での原油価格高止まりは、消費国から生産国への所得移転を通じて景気の下押し要因に。また、リスク回避のドル高進行も価格上昇を抑制。

・2020年からインドが人口ボーナス期入りすることによる、構造的な需要の増加は中長期的な価格の上昇要因。

(特殊要因)

・米政権は対中関税引き上げを表明、中国もこれに対する報復を決定。華為技術との取引を禁じていることに対し、中国はレアアースの輸出規制を検討するなど、企業レベルまで制裁が拡大していること(下落要因)。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・中東情勢の悪化を受けた域内景気の混乱と、それを受けた欧州景気への悪影響拡大(下落要因)

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。。とりあえず10月末を期限として問題先送りしたが、メイ首相退陣、ハードブレグジット推進派の台頭によってよりそのリスクは高まる(下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

(投機・投資要因)

・長期金利の低下による米長短金利の逆転が株安を誘発、リスク回避のリスク資産売り圧力が強まる場合。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油価格は大幅に下落した。米石油統計で原油在庫の減少が市場予想を下回ったことや、米GDPの下方修正を含む統計減速で、景気への懸念が高まったことが背景。

今のところ中東情勢不安やOPEC減産の影響よりも、景気自体への懸念の影響が大きい状況。

【原油価格見通し】

原油価格は一旦下値余地を探る展開になると予想。

米中貿易交渉による対立がさらに深化していることから景気への懸念が強まること、OPECプラスが減産幅の縮小を検討していることが価格を下押しするが、中東情勢不安が高まっていることが供給懸念を強め、価格を下支えする見込み。

イランに対する米国の対応は、場合によると本当に戦争を想定しているものである可能性が出ている(可能性はゼロではなくなったということ)。トランプ大統領はむしろイランと対話を望んでいるが、ペンス・ボルトンなどの共和党議会側が強硬姿勢であるため。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は小幅に下落。目立った新規材料に乏しい中、米中通商戦争の影響で中国の景気が悪化するとの見方と季節性が価格を下押ししており、価格は低迷している。

【石炭価格見通し】

石炭価格は現状水準でもみ合うものと考えるが、北朝鮮への制裁継続や夏場にかけて季節的な需要増加観測から、7~8月頃にかけて上昇すると予想。その後季節的な調整の後、11月にかけて水準を切り下げる展開に。

また、中国による豪州炭の輸入規制(華為技研問題に対する報復措置)の影響でインドネシア炭にシフトしていることは逆に、上値を抑えると考えられる(日本が輸入する石炭価格CIFへの影響は中立)。米国の中国制裁強化も価格の上値を抑える公算。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・原油価格の上昇に伴う北米の増産継続は、需給緩和で価格の下落要因。

・OPECプラスの協調減産は7月以降も継続見込みであるが、米国の意向を受けたサウジアラビアの立場、増産したいロシアの意向も踏まえると、減産幅が縮小する可能性が高まっており原油価格の下落要因に。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

(特殊要因)

・米国のイランに対する制裁強化・ベネズエラ・リビアの情勢悪化に伴う供給途絶懸念は価格の上昇要因。

・米国のイスラエルへの過剰な肩入れと、イスラエルネタニヤフ首相の5選達成による、周辺産油国への武力行使の可能性が高まることは原油価格の上昇要因に(ただしイスラエルは再選挙の予定であり、ネタニヤフ首相が再選されるかどうかは不透明に)。

・北朝鮮のミサイル発射により、制裁が継続される可能性が高まっていることは、北朝鮮からの石炭輸出(密輸)を制限し、価格の上昇要因(石炭)。

・米中情報戦争をめぐる華為技術排除の決定を受けて中国政府は豪州からの石炭輸入を規制、インドネシア炭にシフトしていることはNEWC価格の下落要因に(石炭CIF価格に対する影響は中立)。

(投機・投資要因)

・WTIはロング・ショートとも減少しているが、特にロングの解消売りが多い。これは米景気の先行きを懸念するもの。

・Brentはロングが増加はしているが、それ以上にショートの増加が顕著。OPECで減産幅の縮小が議論されていることが材料視されている。

・直近の投機筋のポジションは、WTIはロングが585,979枚(前週比 ▲22,000枚)、ショートが107,581枚(▲12,590枚)、ネットロングは478,398枚(▲9,410枚)、Brentが425,955枚(前週比+1,309枚)、ショートが32,340枚(+5,005枚)、ネットロングは393,615枚(▲3,696枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME非鉄金属価格は総じて軟調。米中通商戦争の激化懸念に加え、米GDPの下方修正や中古住宅販売仮契約件数の減速が売り材料視された。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は景気への懸念から下押し圧力が強まるものの、投機の買戻しが一定程度入ると考えられることが価格を下支えすると考える。

投機の売りがかさみ、ネット売り越しとなっているため中国の経済対策期待やLME指定倉庫在庫の減少継続、(希望的観測であるが)米中の合意期待を材料に買戻しが入りやすい地合いにある。

しかし、米中通商協議は難航、場合によると決裂する可能性が出てきている中、特に最大消費国である中国の期待需要が減少していることから地合いは軟調。またリスク回避のドル高圧力の高まりも価格を下押し。

なお、中国政府の経済対策の効果は年後半に顕在化する、との見方が多く価格に対するプラス効果は年末にかけてとみられる。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は再開しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCも高止まり。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

(特殊要因)

・銅の生産減少観測(環境問題によるインド、露天掘りから地下生産に変更するインドネシア)、ヴァーレの尾鉱ダム事故の影響による供給減少(アルミやニッケルなどに波及する可能性)。

・ブラジルの裁判所、ハイドロのAlunorteアルミナ精錬所の再稼働を許可。アルミナ価格の下落を通じてアルミ価格の下落要因に(アルミ)。

・LME指定倉庫在庫の減少が、LMEの倉庫運営ルール変更に伴う保管場所変更の取引の影響である場合、ルールが見直された際に再度、LME指定倉庫在庫が急増する可能性(下落要因)。

(投機・投資要因)

・5月24日付のLMEポジションは再びすべての商品でショートが積み上がり始めた。中でも銅とニッケルはロングも減少しており、明確に弱気なポジション状況となっている。

投機筋のLME+CME銅ネット売り越し金額は▲45.8億ドル(前週▲37.7億ドル)と売り越し幅を拡大。売り越し額の増加は+21.4%に。

買い越し枚数はトン数換算ベースで▲1,321千トン(▲1,106千トン)と減少。亜鉛と錫以外はトン数ベースでネット売り越しのまま。ネット売り越しの増加率は+19.4%。

今後、総じてこれらのポジションの買戻し圧力が強まる可能性があり、テクニカルに非鉄金属価格が上昇する余地があることは留意。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップ市場は高安まちまち、原料炭スワップ先物は小幅下落、中国鉄鋼製品価格は小幅続落となった。

米中通商交渉の難航度合いがさらに深化していることや、米住宅関連統計の減速などが、鉄鋼製品価格を押し下げ鉄鉱石価格を下押ししているが、鉄鉱石の供給不安が価格を押し上げている。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は高値圏でもみ合うものと考える。ヴァーレの尾鉱ダムの再稼働見込みが立っていないことや、中国生産者の洪水事故など、鉄鉱石の供給懸念が強まる一方、中国の粗鋼生産の回復が需要を押し上げるものの、米中貿易交渉の難航に伴う景気への懸念が上値を抑えるため。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・中国の鉄鋼製品在庫水準の高さは価格の下落要因。鉄鋼製品在庫は前週比▲40.9万トンの1,153.3万トン(過去5年平均1,162.1万トン)と例年をやや下回っている。

・中国の鉄鉱石在庫水準の高さは価格を下押し。鉄鉱石在庫は前週比▲39.0万トンの1億2,780万トン(過去5年平均1億1,952.6万トン)、在庫日数は▲1.0日の33.2日(過去5年平均 30.6日)と例年の水準を上回る。

・季節的に鉄鋼製品在庫の取り崩し時期であり、価格には下押し圧力がかかりやすい。

・長期的には2020年に人口ボーナス期入りするインドの需要が鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

(特殊要因)

・ヴァーレの尾鉱ダム決壊の影響が拡大し、さらに供給減少が起きた場合(自社・他社ともにあり得る)、価格の上昇要因に。

・ヴァーレの尾鉱ダム事故の影響で、今後、低品位鉱石価格にも上昇圧力がかかる公算。

(投機・投資要因)

・固有の要因は特になし。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金・銀価格は上昇した。米統計の減速を受けた景気への懸念から長期金利が低下、実質金利を押し下げたことが材料となった。なお、原油価格急落による期待インフレ率上の影響は限定された。

PGMは金銀価格が堅調に推移したこと、株に買戻しが入ったことが材料となり上昇。特に供給面に懸念の残るパラジウムの上昇は顕著なものとなった。

PGM現物の需給バランスを見る上での指標となるロジウムの価格は2,840ドルと変わらず。需給は緩和方向(需要の減速)にある模様。

【貴金属価格見通し】

金価格は米中通商交渉のが難航していること、中東情勢や欧州の情勢不安を材料に安全資産需要は堅調とみられること、ここにきて市場は再びFRBの利下げを期待し始めていることから総じて底堅い推移になると考える。

銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)の上昇が金銀レシオを押し上げているため対金で割安に推移。

一方、イタリアの財政問題、米国の債務上限問題、中東情勢の混乱懸念(イラン・サウジアラビア・イスラエルを中心に)が安全資産需要を高めるため、リスクプレミアムが乗る形で価格を押し上げへ。

PGM価格は金銀価格が底堅い推移になるため堅調だが、同時に米中通商交渉が難航、対立が激化する中で株価が下押しされやすく、対金銀では割安に推移することになると予想。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・FRBの利下げ期待が市場で再び高まっていること、原油価格の高止まりは実質金利の低下を通じて金銀価格の上昇要因に。

・景気の先行きを懸念した株価下落とそれに伴う長期金利・実質金利の低下(金銀価格の上昇要因)。ただし、欧州の政情安定化や米中貿易戦争の合意、景況感の改善で株価が上昇した場合には金銀価格の下落要因。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト(パラジウムの上昇要因・プラチナの下落要因)。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

(特殊要因)

・米中通商交渉は難航しており、相互報復まで発展(価格の上昇要因)。知的財産権や技術の強制移転などの重要なポイントで妥結できておらず、米中の覇権争いであり長期化の見込み(価格の下支え要因)。

・米国とイランの開戦リスク。トランプ大統領はその気がなさそうだが、共和党議会はイランとの開戦に前向きな可能性。

・米国の債務上限問題の顕在化(8月~9月にデフォルトするリスク)。

・欧州議会選でのポピュリズム政党の躍進。それに伴うEU懐疑論の高まりによる域内の政情不安定化。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

(投機・投資要因)

・長期金利の低下による米長短金利の逆転が株安を誘発、リスク回避のリスク資産売り圧力が強まり、安全資産需要が高まる場合。

・銀価格は金銀在庫レシオが銀在庫の減少、ないしは金在庫の増加、あるいは両要因によって低下した場合、金銀レシオが上昇するリスク(銀価格の上昇要因)。

・金銀はロングが減少、ショートが増加している。むしろ地政学的リスクが高まっているため、ショートの買戻しによる上昇リスクは警戒。

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが203,628枚(前週比 ▲22,733枚)、ショートが114,823枚(+12,998枚)、ネットロングは88,805枚(▲35,731枚)、銀が75,482枚(▲2,060枚)、ショートが90,144枚(+10,393枚)、ネットロングは▲14,662枚(▲12,453枚)

・直近の投機筋のポジションは、プラチナはロングが46,174枚(前週比 +1,437枚)、ショートが30,684枚(+11,697枚)、ネットロングは15,490枚(▲10,260枚)、パラジウムが11,556枚(+617枚)、ショートが3,507枚(+189枚)、ネットロングは8,049枚(+428枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物価格は上昇した。米生産地の降雨が続くとの見方から、供給懸念が強まっていることが背景(詳しくは2019年5月30日付MRA's Eyeをご参照ください)。

昨日、コーヒー価格が上昇しているが、記録的な低水準に価格が下落していることに加え、ブラジルレアル高の進行で記録的な水準まで積み上がっているコーヒーのショートの巻き戻し圧力が強まっていることが背景。

【穀物価格見通し】

穀物価格はトウモロコシ・大豆・小麦とも生産地の作付けが天候の影響で遅れが深刻な状況となっており、豪州では小麦が不作となるなど、異常気象に伴う生産の下振れが強く意識されているため、記録的な水準にある投機の売り解消が価格を押し上げ、上昇余地を探るとみる。

ただし、米中貿易戦争の継続は上値を抑えよう。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・米国のトウモロコシ・大豆の生産増加観測による需給緩和観測。

・米国の作付けの遅れに伴う需給タイト化観測。トウモロコシ、大豆とも過去5年の最低水準。

・豪州東部の大干ばつによる小麦生産の減少懸念。

・作付面積動向(トウモロコシは下落、大豆は上昇、小麦は上昇)トウモロコシ作付意向面積 9,279万エーカー(市場予想 9,127万エーカー、前年8,803万エーカー)大豆 8,462万エーカー(8,620万エーカー、8,898万エーカー)小麦 4,575万エーカー(4,688万エーカー、4,734万エーカー)

・5月の米需給報告の在庫見通し

トウモロコシ24億8,500万ブッシェル(前穀物年度20億3,500万Bu)大豆 9億7,000万Bu(8億9,500万Bu)小麦 11億4,100万Bu(10億8,700万Bu)

・実質金利の低下に伴うドル安の進行は、シカゴ穀物の輸出競争力を改善し、需給面で価格の上昇要因に。

(特殊要因)

・米中貿易交渉は相互報復まで発展(価格の下落要因)。知的財産権や技術の強制移転などの重要なポイントで妥結できておらず、米中の覇権争いであり長期化の見込み。

・米政府はブッシェル当たり大豆2ドル、トウモロコシ0.04ドル、小麦0.63ドルの補助金を供給することを検討。生産減少を食い止めるため価格の下落要因に。

・エルニーニョ現象発生による北米の増産は価格の下落要因。ただし洪水などが発生し、災害が激甚化した場合には価格の上昇要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

(投機・投資要因)

・主要穀物のショートポジションは、作付けの遅れなどからトウモロコシ・大豆・小麦とも解消圧力が強まっており、価格の押し上げ要因となっている。

・直近の投機筋のポジションは、トウモロコシはロングが415,551枚(前週比 +41,920枚)、ショートが412,306枚(▲145,214枚)、ネットロングは3,245枚(+187,134枚)、大豆はロングが149,946枚(+10,743枚)、ショートが249,887枚(▲12,711枚)、ネットロングは▲99,941枚(+23,454枚)、小麦はロングが135,831枚(▲6,743枚)、ショートが151,962枚(▲34,017枚)、ネットロングは▲16,131枚(+27,274枚)

◆主要ニュース


・Q119米GDP改定 前期比年率 +3.1%(速報比▲0.1%、前期確定+2.2%)
 個人消費+1.3%(+0.1%、+2.5%)
 総民間国内投資+4.5%(▲0.6%、+3.7%)
 設備投資+2.3%(▲0.4%、+5.4%)
 輸出+4.8%(+1.1%、+1.8%)
 輸入▲2.5%(+1.2%、+2.0%)
 政府支出+2.5%(+0.1%、▲0.4%)
 GDPデフレータ+0.8%(▲0.1%、+1.7%)
 コアPCE +1.0%(▲0.3%、+1.8%)

・米週間新規失業保険申請件数 215千件(前週212千件)、失業保険継続受給者数 1,657千人(1,683千人)

・4月米前渡商品貿易収支 ▲721億ドルの赤字(▲719億ドルの赤字)

・4月米中古住宅販売仮契約 前月比▲1.5%(前月+3.9%)

・Q119ブラジルGDP 前期比▲0.2%(前期改定+0.1%)、前年比+0.5%(+1.1%)

・中国人民銀行 易総裁、「人民元は安定している。中国は中小銀行のリスクを管理する十分な能力がある。」

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・DOE米石油統計 原油▲0.3MB(クッシング▲0.0MB)
 ガソリン+2.2MB
 ディスティレート▲1.6MB
 稼働率+1.3%

 原油・石油製品輸出 8,185KBD(前週比+199KBD)
 原油輸出 2,977KBD(+176KBD)
 ガソリン輸出 602KBD(+7KBD)
 ディスティレート輸出 1,311KBD(+36KBD)
 レジデュアル輸出 264KBD(▲14KBD)
 プロパン・プロピレン輸出 1,294KBD(▲20KBD)
 その他石油製品輸出 1,530KBD(+3KBD)

・DOE天然ガス稼働在庫 1,866BCF(前週比+112BCF)
 東部 383BCF(+30BCF)
 中西部 399BCF(+35BCF)
 山間部 93BCF(+4BCF)
 太平洋地区198BCF(+12BCF)
 南中央 793BCF(+31BCF)

・イスラエルのデレク、シェブロンの北海油田など取得へ。

・安倍首相、サウジアラビア ムハンマド皇太子と電話会談、中東和平に向けて緊密に協力していくことで一致。

・トルコ、同国南部の防衛に、ロシアのミサイル防衛システムを導入することを検討。

・米国務省、フック・イラン担当特別代表、「イランが権益を攻撃するならば武力行使する。」

・イスラエル、9月に再選挙決定。連立政権不成立で。

【メタル】
・Q119Codelco銅生産 前年比+18%の342千トン(前年470千トン)、キャッシュコスト▲0.3%の2,968ドル/トン

・4月日本アルミ圧延品生産 前年比▲2.4%の16万6,157トン

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.CBT小麦 ( 穀物 )/ +4.89%/ +2.24%
2.CBTトウモロコシ ( 穀物 )/ +4.18%/ +16.33%
3.CBTエタノール ( エネルギー )/ +3.40%/ +20.25%
4.LIFFEロブスタ ( その他農産品 )/ +3.12%/ ▲3.32%
5.ICEアラビカ ( その他農産品 )/ +2.86%/ +0.49%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
68.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ ▲5.51%/ ▲53.69%
67.DME Oman ( エネルギー )/ ▲4.23%/ +19.83%
66.NYM WTI ( エネルギー )/ ▲3.77%/ +24.62%
65.ICE Brent ( エネルギー )/ ▲3.71%/ +24.29%
64.NYM RBOB ( エネルギー )/ ▲3.42%/ +41.92%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :25,169.88(+43.47)
S&P500 :2,788.86(+5.84)
日経平均株価 :20,942.53(▲60.84)
ドル円 :109.62(+0.03)
ユーロ円 :122.00(+0.01)
米10年債利回り :2.21(▲0.05)
独10年債利回り :▲0.18(+0.00)
日10年債利回り :▲0.08(+0.01)
中国10年債利回り :休場( - )
ビットコイン :8,463.48(▲182.86)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :23.67(▲0.17)
エネルギー :25.50(+1.4)
ベースメタル :18.75(▲0.31)
貴金属 :16.26(+0.11)
穀物 :24.98(+1.14)
その他農畜産品 :26.55(▲1.43)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :30.63(+3.05)
Brent :27.79(+3.61)
米天然ガス :22.44(+0.36)
米ガソリン :28.41(+1.22)
ICEガスオイル :27.66(+1.08)
LME銅 :16.07(▲0.87)
LMEアルミニウム :16.46(+0.02)
金 :25.30(+0.71)
プラチナ :18.60(▲0.51)
トウモロコシ :31.94(+1.97)
大豆 :25.30(+0.71)

【エネルギー】
WTI :56.59(▲2.22)
Brent :66.87(▲2.58)
Oman :64.12(▲2.83)
米ガソリン :187.86(▲6.66)
米灯油 :191.50(▲5.25)
ICEガスオイル :598.00(▲7.75)
米天然ガス :2.55(▲0.09)
英天然ガス :28.28(▲1.65)

【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :66.87(▲2.58)
SPO380cst :380.57(▲11.07)
SPOケロシン :77.25(▲2.34)
SPOガスオイル :77.45(▲2.44)
ICE ガスオイル :80.27(▲1.04)
NYMEX灯油 :191.83(▲2.14)

【貴金属】
金 :1288.65(+8.87)
銀 :14.53(+0.10)
プラチナ :796.25(+2.46)
パラジウム :1369.27(+21.09)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :5,854(▲36:31C)
亜鉛 :2,548(+16:157.5B)
鉛 :1,813(+3:15C)
アルミニウム :1,787(▲10:25C)
ニッケル :12,015(▲75:35C)
錫 :18,730(▲70:170B)
コバルト :33,500(±0.0)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :5858.00(▲33.00)
亜鉛 :2559.00(+18.50)
鉛 :1799.00(▲24.50)
アルミニウム :1781.00(▲15.00)
ニッケル :12095.00(+55.00)
錫 :18775.00(+5.00)
バルチック海運指数 :1,107.00(+25.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :99(▲0.04)
NYMEX鉄鉱石 :98.72(+0.13)
NYMEX原料炭スワップ先物 :206.2(▲0.05)
上海鉄筋直近限月 :3,888(▲25)
上海鉄筋中心限月 :3,806(▲12)
米鉄スクラップ :310(±0.0)

【農産物】
大豆 :889.00(+17.00)
シカゴ大豆ミール :327.40(+8.40)
シカゴ大豆油 :27.78(+0.05)
マレーシア パーム油 :2020.00(▲24.00)
シカゴ とうもろこし :436.25(+17.50)
シカゴ小麦 :514.50(+24.00)
シンガポールゴム :189.20(+0.50)
上海ゴム :11910.00(+50.00)
砂糖 :11.76(▲0.11)
アラビカ :102.35(+2.85)
ロブスタ :1456.00(+44.00)
綿花 :69.34(+0.28)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :83.68(▲1.53)
シカゴ生牛 :110.08(▲2.28)
シカゴ飼育牛 :138.23(▲4.50)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。