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イラン問題を受けたリスク回避と供給懸念で高安まちまち
  • MRA商品市場レポート for PRO

2019年6月24日 第1557号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「イラン問題を受けたリスク回避と供給懸念で高安まちまち」

【昨日の市場動向総括】

週末の商品市場は、米国・イランの対立を受けた中東情勢懸念でエネルギーセクターが上昇、同じ景気循環系の商品である非鉄金属は景気への懸念から売られた。

一方、安全資産需要から貴金属セクターや、景気循環銘柄からのシフトが起きた農産品が上昇している。生産懸念が若干後退した穀物セクターは軟調。

【本日の価格見通し総括】

週明け月曜日は、商品市場に影響を与えると考えられる指標は、独IFO企業景況感指数(市場予想97.4、前月97.9)に注目しているが、欧州経済が鈍化していることを確認する内容となり、景気循環系商品が売られる流れになるだろう。

それ以上に注目すべきは中東情勢である。報道の通りであれば、トランプ大統領がイランに対する攻撃命令を、開始10分前に止めさせたとされていた。

しかしこれが事実であるならば、米国は「攻撃時刻を設定していた」ことになり、相当本気で戦闘を行う意思があることになる。原油価格などから期待値を基に計算すると、現在市場は20%程度の確率で、戦闘行為が起きるとみているようだ。

少しスコープがそれるが、月曜日にペンス副大統領が中国に関して講演を行う予定となっている。あくまで中国の問題に関してではあるが、イランに対する方針を判断する上での手がかりになる可能性がある。

いずれにしても、今まで以上に開戦リスクを意識したほうが良い状況になっている。

【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】

昨日発表されたユーロ圏製造業PMIは47.8(市場予想48.0、前月47.7)、独製造業PMIは45.4(44.6、44.3)と依然、閾値である50を下回っているため良いとは言えないが、ユーロ圏は前月、独は市場予想・前月を上回った。

これをもって景気回復した、と判断するのはもちろん早計であるが、欧州地区は2017年12月頃にピークを打って減速しているため、通常の景気循環のサイクル通りであれば、山→谷は1年半、ないしは1年8ヵ月程度であるため、場合によると今月~10月頃にかけて、底入れした可能性が出てきた。

しかし、これは「何も政治的なイベントが発生せず、景気の循環を妨げない」という前提での循環であるため、この通りになるかどうかは不透明である。しかし、通常であれば、底入れしてから拡大局面に入るまで9ヵ月~10ヵ月程度かかるため、欧州地区が景気回復を実感できるのは早くても来年の春~夏頃だろう。

しかし、10月にはBrexitが控えており、今のままではハードBrexitが確実な状況。さらに米中通商協議は長期化する可能性が高く、イランと米国もトランプ大統領が一時、攻撃を許可していた」と報じられるなど、一触即発の状況である。

そのように考えると来年の春から夏にかけての回復は相当楽観シナリオで、メインシナリオは再来年ぐらいからの回復、ということになる可能性が高まってきた。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

(マクロ要因)

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標再びの減速(価格下落要因)。

・世界景気の減速観測。IMFは2019年の経済見通しを引き下げ(+3.5%→+3.3%)ており、米中対立の激化があった場合には▲0.5%程度の引き下げリスクも視野に入れている。リスク資産価格に対して下向きのリスク。

・FRBの利下げの可能性が再び高まる(トランプ大統領があからさまに要求を始めており、米中通商戦争の行方次第ではあり得る状況に)。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q119の中国GDPは前年比+6.4%、前期+6.4%と市場予想の+6.3%を上回りやや減速懸念が後退)。

※中国は地方政府の資金調達規制を実質緩和。

・景気減速下での原油価格高止まりは、消費国から生産国への所得移転を通じて景気の下押し要因に。また、リスク回避のドル高進行も価格上昇を抑制。

・2020年からインドが人口ボーナス期入りすることによる、構造的な需要の増加は中長期的な価格の上昇要因。

(特殊要因)

・米中通商協議が難航しており、世界経済が減速する場合(下落要因)。

足元、米中首脳会談が開催される見通しが示されたが、話し合いを継続することは決められても合意に至るかどうかは極めて不透明。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・中東情勢の悪化を受けた域内景気の混乱と、それを受けた欧州景気への悪影響拡大(下落要因)

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。とりあえず10月末を期限として問題先送りしたが、メイ首相退陣、ハードブレグジット推進派の台頭によってよりそのリスクは高まる(下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

(投機・投資要因)

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油価格は続伸した。米国の偵察機をイランが撃墜したことを受けて、米側が報復攻撃を行う準備を整えていたことが発覚、トランプ大統領が「釣り合わない」として攻撃10分前に停止命令を出していたことが判明し、有事必須、の機運が高まったことが背景。

ただし、欧州・米国のPMIが低迷していることから上値も限られた。

【原油価格見通し】

原油価格は高値圏での推移になると考える。基本、両国の国力を削る開戦はない、というのがメインシナリオではあるものの、米軍が具体的に軍事的な進行を準備していたことが明らかになり、「米国はその気」であることが分かったことが、供給不安を高めるため。

トランプ大統領はイランに対して攻撃したくない、というのが本音と見られるが、ボルトンを筆頭とする共和党保守強硬派の意向が強く反映されているとみられる。引き続き両国動向は、ニュースに一喜一憂とならざるを得ない。

これ以上、中東を材料に価格が上昇するとすれば、さらに具体的に米国とイランが軍事的に衝突することであるが、現時点では希望的観測も含めて「ない」と信じたい。

この中東有事の高まりで、OPECプラス会合での方針は急速に従来の見通し、すなわち▲120万バレルの減産水準を順守、という方向に舵が切られるとみられる。

中東情勢が緊迫しているためBrentベースで60ドル程度まで、価格を押し下げると期待されるが、中東の緊張が緩和されれば、ISM製造業指数の低下もあってBrentベースで55ドル程度までの下落が見込まれる。

なお、この状況においてもOPEC諸国に対する影響を残すことができるため、イランがOPECを脱退する、というのは選択肢になっていないと考える。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は上昇した。中国国内の供給懸念が価格を押し上げたようだが、基本的には欧州炭価格の下落と、港湾在庫の積み上がりで上昇余地も限定されている。

【石炭価格見通し】

石炭価格は夏場に向けて上昇するとみているものの、欧州市場の需給緩和(よりクリーンなエネルギーへのシフト、景気減速による電力需要の後退)、中国の景況感の悪化を受け、当面は下値余地を探る動きになると考える。

中国の石炭の輸入量は回復しており、過去5年のレンジを上抜けした。生産に関しては減少傾向となっているが、港湾在庫は増加するなど、需要面の弱さから総じて中国の石炭需給は緩和傾向にある可能性が高く、ファンダメンタルズは強くない。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・原油価格の上昇に伴う北米の増産継続は、需給緩和で価格の下落要因。

・景気が減速する中での減産継続は、その効果が限定されはするものの、足元の価格下落を受けてOPECプラスの協調減産は7月以降も継続(場合によると減産枠拡大)の見込みであり、一定の下支え効果をもたらす見込み。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・中国の石炭生産鈍化(4月2億9,429万トン)、輸入減少(1,564万7,172トン)にもかかわらず、港湾在庫が増加していることは国内需要の弱さを示唆(石炭)。

(特殊要因)

・米国がイランを攻撃する準備を整えていたことが発覚、両国の緊張はこれまでにないほど高まっていることは、開戦を通じた供給懸念を通じて価格の上昇要因に。

・北朝鮮のミサイル発射により、制裁が継続される可能性が高まっていることは、北朝鮮からの石炭輸出(密輸)を制限し、価格の上昇要因(石炭)。

・米中情報戦争をめぐる華為技術排除の決定を受けて中国政府は豪州からの石炭輸入を規制、インドネシア炭にシフトしていることはNEWC価格の下落要因に(石炭CIF価格に対する影響は中立)。

(投機・投資要因)

・WTI・Brentともロングの減少が顕著だが、WTIのショートには買戻し、Brentはショートが増加した。中東情勢を巡り市場参加者のスタンスはまちまちだが、とにかく積み上がったロングから解消する動きが強まっているようだ。

・テクニカルには、世界の市場参加者は原油取引において「一目均衡表」を活用するようになっており、「雲のねじれ」がある7月初に、例えば中東情勢不安が顕在化したり、金融緩和が意識されるようになったり、OPECが減産幅を拡大したり、ということがあれば、7月意向、ポジションの巻き戻しで急騰リスクはあり得る。

・直近の投機筋のポジションは、WTIはロングが502,749枚(前週比 ▲12,708枚)、ショートが139,662枚(▲24,140枚)、ネットロングは363,087枚(+11,432枚)、Brentが333,483枚(前週比▲12,583枚)、ショートが61,977枚(+7,937枚)、ネットロングは271,506枚(▲20,520枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME非鉄金属価格は下落した。米中協議の進展期待を受けて投機筋の買戻しが入って上昇していたが、欧州・米国の製造業PMIの悪化や、中東で米・イランの対立が激化して景気減速につながる可能性が意識されたため。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は、米中首脳会談実施の可能性が高まったこと、FOMCが利下げに舵を切ったことで、投機の買戻しが入り上昇余地を探る動きになると考える。

ただし、米中会談が行われるものの合意するわけではないこと、景気は循環的に減速していること、中東で場合によると戦争が始まる可能性が否定できなくなってきたことから景気にはマイナスであり、上値も重いと考える。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は再開しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCも高止まり。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

(特殊要因)

・中国政府がシャドーバンキングを含む、違法な資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは、需要面で価格の上昇要因に。

・銅の生産減少観測(環境問題によるインド、露天掘りから地下生産に変更するインドネシア、コデルコのストライキ)、ヴァーレの尾鉱ダム事故の影響による供給減少(アルミやニッケルなどに波及する可能性)。

オランダ ニルスター社の豪鉛精錬所(ポート・ピリー)停止による、供給不安(鉛)。

ハイドロのAlunorteアルミナ精錬所の問題に象徴されるように、広く非鉄金属を含む鉱物セクターは、環境問題への高まりから供給が政府命令で急に停止してしまう可能性は低くない。

・LME指定倉庫在庫の減少が、LMEの倉庫運営ルール変更に伴う保管場所変更の取引の影響である場合、ルールが見直された際に再度、LME指定倉庫在庫が急増する可能性(下落要因)。

(投機・投資要因)

・6月14日付のLMEポジションは動きがまちまちだったが、銅や鉛、アルミ、錫のショートポジションに買戻しの動きが強まった。米中首脳会談が開催され、米中協議が進捗するとの期待が買戻しにつながっている。

14日以降も価格上昇が続いているが、恐らく四半期末を控えた投機の買戻しは継続しているとみられる。

投機筋のLME+CME銅ネット売り越し金額は▲67.1億ドル(前週▲60.8億ドル)と売り越し幅を拡大。売り越し額の増加は+10.8%に。

買い越し枚数はトン数換算ベースで▲1,631千トン(前週▲1,532千トン)と減少。亜鉛と錫以外はトン数ベースでネット売り越しのまま。ネット売り越しの増加率は+6.5%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップ市場は上昇、原料炭スワップ先物は小幅上昇、中国鉄鋼製品市場はまちまちだった。

景気の見通しはネガティブながら、米中通商協議が進展するのではとの期待が高まっていることがこの影響を緩和するとみられていること、ヴァーレやリオの生産見通しが弱気であることが価格を高止まりさせている。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は、中国政府の公共投資促進策と、豪州からの供給不安、ヴァーレの生産が完全に回復していないこと、リオの減産見通しといった供給面、米中首脳会談実施期待を受けた鉄鋼製品の投機的な買戻しを背景に、高値圏での推移になると予想。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・直近の鉄鋼業PMIは50.0(前月52.1)と減速。生産の回復(54.5→56.0)はあったが、新規受注の落ち込みが顕著(51.7→46.7)であり、輸出向け新規受注も大きく落ち込み(48.9→45.9)。

・中国の鉄鋼製品在庫水準の高さは価格の下落要因。鉄鋼製品在庫は前週比+22.2万トンの1,178.1万トン(過去5年平均1,084.8万トン)と例年を上回っている。

中国の鉄鉱石在庫水準の高さは徐々に低下し、価格の下支え要因となる可能性。鉄鉱石在庫は前週比▲195万トンの1億1,675万トン(過去5年平均1億1,839.6万トン)、在庫日数は▲0.4日の24.5日(過去5年平均 28.6日)と例年の水準を下回った状態が続いている。

粗鋼生産の回復で原材料在庫が減少した形。これは鉄鋼業PMIとほぼ平仄が取れている。

・季節的に鉄鋼製品在庫の取り崩し時期であり、価格には下押し圧力がかかりやすい。

・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、すでにインフラ整備のための投資拡大方針を示しており、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

・ヴァーレ、リオ・ティントの生産目標引き下げによる、供給減速。

(特殊要因)

・中国政府がシャドーバンキングを含む、違法な資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは価格の上昇要因。

・ヴァーレの尾鉱ダム決壊の影響が拡大し、さらに供給減少が起きた場合(自社・他社ともにあり得る)、価格の上昇要因に。

ヴァーレの尾鉱ダム事故の影響で、今後、低品位鉱石価格にも上昇圧力がかかる公算。

(投機・投資要因)

・供給懸念などを通じて大連取引所は建玉を積み増しながら、価格を切り上げており、先々の下落リスクは高まっている状況。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金・銀価格は中東有事懸念で大きく上昇していたが、トランプ大統領の攻撃中止命令や、来週に2年・5年・7年国債入札を控える中でポジション調整の国債売りで長期金利が上昇したことで実質金利が上昇、引けにかけては上げ幅を削り、銀は前日比マイナスで引けた。

PGMは金銀価格の急上昇を受けて上昇していたが、米国株が引けにかけて下落したことを受けて同様に引けにかけて水準を切下げる展開。

【貴金属価格見通し】

金価格は、FRBが緩和方向に舵を切ったこと、中東情勢の悪化やイタリアなどの情勢不安を材料に堅調な推移になると考える。

また、中東情勢、英国のEU離脱、欧州問題などの悪化を受けて安全資産需要が継続していることも価格を下支えするとみる。

銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)の上昇が金銀レシオを押し上げているため対金で割安に推移。

PGM価格は金銀価格が底堅い推移になるため堅調で、目先、米中協議が実施される見通しとなったことや米利下げ観測が株を押し上げるため、金銀以上に上昇すると考える。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・FRB・ECBの金融緩和期待が市場で再び高まっていること、原油価格の高止まりは実質金利の低下を通じて金銀価格の上昇要因に(逆に利下げ期待が高まりすぎているため、期待と金融当局の判断の乖離から、7月FOMCで下落に転じる可能性も)。

・景気の先行きを懸念した株価下落とそれに伴う長期金利・実質金利の低下(金銀価格の上昇要因)。ただし、欧州の政情安定化や米中貿易戦争の合意、景況感の改善で株価が上昇した場合には金銀価格の下落要因。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト(パラジウムの上昇要因・プラチナの下落要因)。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

(特殊要因)

・米中通商交渉は難航しており、相互報復まで発展(価格の上昇要因)。知的財産権や技術の強制移転などの重要なポイントで妥結できておらず、米中の覇権争いであり長期化の見込み(価格の下支え要因)。

・米国とイランの開戦リスクが高まっている。共和党議会側はイランに対する戦闘の準備を終えており、それをトランプ大統領が止めた、という状況。

・米国の債務上限問題の顕在化(8月~9月にデフォルトするリスク)。

・欧州議会選でのポピュリズム政党の躍進。それに伴うEU懐疑論の高まりによる域内の政情不安定化。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

(投機・投資要因)

・銀価格は金銀在庫レシオが銀在庫の減少、ないしは金在庫の増加、あるいは両要因によって低下した場合、金銀レシオが上昇するリスク(銀価格の上昇要因)。

・金銀はロング・ショートとも増加しているがロングの増加が極めて多い。銀も同様にロングが増加、ショートは減少している。

・プラチナはロングが減少、ショートが増加。需要の減少とパラジウムの供給不足による生産維持観測が市場参加者を弱気にさせている。パラジウムはロングが大幅に増加。ショートも増加しているが、ロングの増加が顕著。

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが274,633枚(前週比 +24,519枚)、ショートが70,310枚(+4,434枚)、ネットロングは204,323枚(+20,085枚)、銀が93,275枚(+8,050枚)、ショートが78,759枚(▲3,806枚)、ネットロングは14,516枚(+11,856枚)

・直近の投機筋のポジションは、プラチナはロングが46,797枚(前週比 ▲539枚)、ショートが44,827枚(+4,443枚)、ネットロングは1,970枚(▲4,982枚)、パラジウムが13,543枚(+1,182枚)、ショートが3,338枚(+512枚)、ネットロングは10,205枚(+670枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物価格は下落した。生産地の天候改善観測を受けて供給懸念が若干和らいだことが背景。

【穀物価格見通し】

穀物価格は再び買戻しが入り上昇すると考える。米中首脳会談が実施される見通しが示されたこと、米農務省の需給報告で、トウモロコシの生産見通しが引き下げられたことが作付けの遅れで大豆価格を、競合飼料である小麦価格を押し上げることから。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・米国のトウモロコシ・大豆の生産減少観測による需給タイト化観測。

・豪州東部の大干ばつによる小麦生産の減少懸念。

・作付面積動向(トウモロコシは下落、大豆は上昇、小麦は上昇)トウモロコシ作付意向面積 9,279万エーカー(市場予想 9,127万エーカー、前年8,803万エーカー)大豆 8,462万エーカー(8,620万エーカー、8,898万エーカー)小麦 4,575万エーカー(4,688万エーカー、4,734万エーカー)

・6月の米需給報告の生産見通し

トウモロコシ136億8,000万ブッシェル(前月150億3,000万Bu)大豆 41億5,000万Bu(41億5,000万Bu)小麦 19億300万Bu(18億9,700万Bu)

・6月の米需給報告の在庫見通しトウモロコシ16億7,500万ブッシェル(前月24億8,500万Bu)大豆 10億4,500万Bu(9億7,000万Bu)小麦 10億7,200万Bu(11億4,100万Bu)

・米緩和観測に伴う実質金利の低下に伴うドル安の進行は、シカゴ穀物の輸出競争力を改善し、需給面で価格の上昇要因に。

(特殊要因)

・米中通商交渉はほぼ戦争にまで発展(価格の下落要因)。知的財産権や技術の強制移転などの重要なポイントで妥結できておらず、米中の覇権争いであり長期化の見込み。

・米政府はブッシェル当たり大豆2ドル、トウモロコシ0.04ドル、小麦0.63ドルの補助金を供給することを検討。生産減少を食い止めるため価格の下落要因に。

・エルニーニョ現象発生による北米の増産は基本的には価格の下落要因だが、今年は洪水が発生しており、夏場の気温上昇や乾燥といった育成環境の悪化の可能性はあり、価格の上昇要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

(投機・投資要因)

・トウモロコシはロングが増加、ショートが減少。ロング増加は米中貿易交渉の進捗期待、ショートの減少継続は米生産地の生育環境悪化で。

大豆はロングが増加、ショートが減少、小麦も同様。

・直近の投機筋のポジションは、トウモロコシはロングが473,643枚(前週比 +26,087枚)、ショートが203,297枚(▲4,884枚)、ネットロングは270,346枚(+30,971枚)、大豆はロングが157,233枚(+16,801枚)、ショートが159,967枚(▲28,134枚)、ネットロングは▲2,734枚(+44,935枚)、小麦はロングが139,346枚(+13,534枚)、ショートが110,043枚(▲6,059枚)、ネットロングは29,303枚(+19,593枚)

◆本日のMRA's Eye


「穀物価格上昇の波及リスク」

穀物価格が米国の悪天候の影響で上昇しているのは、2019年6月13日付のMRA's Eye「米穀物需給動向アップデート」をご参照いただきたいが、本日のMRA's Eyeでは、穀物価格の上昇がその他の市場に及ぼす影響を整理したい。

日本で暮らす我々にとって、北米のトウモロコシの価格が上昇したとしても、普段の生活に直接影響が出るわけではない。しかし、トウモロコシ価格の上昇は巡り巡って、私たちの生活に大きな影響を及ぼすため、無視できないリスクである。

トウモロコシは日本では食用、というイメージが強いが日本のトウモロコシの消費の77%は家畜の飼料向けに用いられており、22%が甘味料やでんぷんなどの加工向けで、食用は全体の1%にも満たない。

そのため、トウモロコシ価格が上昇した場合、飼料価格を通じて牛や豚などの畜産業、鶏などの養鶏業が最も影響を受ける。飼育方法やその時の相場水準にもよるため一概に言えないが、経営コストに占める飼料費は、牛が4割~5割、豚・鶏では6割にも達する。

価格が上昇した場合にはコメなどの代替飼料へのシフトなどを進めるなどの対策もあり得るが、代替飼料の価格も上昇するため最終的に肉類の生産コストは上昇することになる。

一般に、飼料価格が上昇してコスト負担の上昇懸念が高まった時や、疫病が発生した場合などはと畜が進むため、一時的に肉類の価格が低下することがある。しかし、飼育頭数が減少するため最終的には価格上昇に繋がる。そのため、長期にわたる飼料価格の上昇はコスト面で大きなリスクとなる。

また近年、米国ではトウモロコシを原料として自動車向けのエタノールが生産されるようになった。そのため、米国のトウモロコシ需要の内訳をみると、最大用途がエタノールで全体の約4割を占めている。 このことは実は非常に大きな意味を持っている。本来、トウモロコシや大豆などは家畜や人向けに飼料や食料品といった「食べる」目的で使われてきた。そのため消費量は人口が増加したり、食の西欧化が進んで肉食が増加し、それに応えるために家畜の飼育頭数が増加、飼料向け需要が増加するといった形でしか増加してこなかった。

すなわち、ある年に突如需要が激増したり激減したりということは起きず、生産動向が価格を大きく左右してきた。

しかし、エタノールのような景気の変動に需要が左右される工業向けの製品に加工されることにより、需要動向が景気の影響を受けるようになったのだ。これは逆もまた真なりで、トウモロコシ価格が上昇することによりエタノール価格が上昇、エタノールの代替原料である粗糖(砂糖)価格も上昇、最終的にはガソリン価格が上昇し、消費行動に影響を及ぼす可能性が出てきているということである。

トウモロコシは景気の影響を受け難い「非景気循環銘柄」であったはずだが、バイオ燃料の利用が進捗すれば景気の影響を受けやすい「景気循環銘柄」にシフトし、極論を言えば金融政策が食品価格を動かす可能性があるということだ。

しかし、より世界経済に影響が大きいと考えられるのが、新興国の政情不安に繋がる可能性があることだ。特に気にすべきは中東北アフリカの産油国内で暴動が起きる場合である。

産油国で暴動が起きれば、原油の安定供給の大きな障害となるため、価格の上昇要因となる。また最悪の場合、暴動が拡大して国と国との武力衝突に拡大することもなくはない。

中東・北アフリカの産油国はエネルギーや医療費の他、食品に補助金を拠出しているケースが多い。しかし、原油価格の低迷や石油以外の産業育成が遅れていることから原油価格動向が財政状況を左右しやすい状況が続いており、これらの補助金を見直す動きが強まっている。

これはサウジアラビアも例外ではない。さらに、産油国の多くは働き手である若年層の失業率が高く、若者の不満に十分国が対応できていない状況だ。その状況で食品価格が上昇した場合、財政状況にゆとりがあれば対応も可能だがそうでない国の場合、暴動に繋がることも十分考えられる。 アルジェリアのジャスミン革命から始まった「アラブの春」は、民主化を望む若者が、ツイッターやフェースブックなどのSNSでつながり、現政権の打倒に動いた、という論調で日本では語られることが多いが、実際は高失業率の中で食品価格が上昇し、それに対応する十分な資力がない国で若者が暴動を起こしたというのがより事実に近いだろう。

ただ、現時点で食品価格に顕著な上昇は見られておらず、仮に暴動が起きるとするならばさらに原油価格が下落して産油国の財政状況が悪化する、ないしは、食品価格がさらに上昇する、あるいはその両方が起きる必要があるため今すぐそれが顕在化するとは見ていない。しかし、今後の見通しを考えるとそうなってしまう可能性はある。

◆主要ニュース


・6月日経日本製造業PMI速報 49.5(前月改定 49.8)

・5月日本全国消費者物価指数 前年比+0.7%(前月+0.9%)
 除く生鮮+0.8%(+0.9%)
 除く生鮮エネルギー+0.5%(+0.6%)

・5月日本全国百貨店売上高 前年比▲0.8%の4,443億円(前月▲1.1%の4,488億円)
 東京都区部百貨店売上高▲1.6%の1,228億円(▲0.8%の1,262億円)

・6月独製造業PMI速報 45.4(前月改定 44.3)、サービス業 55.6(55.4)、コンポジット 52.6(52.6)

・6月ユーロ圏製造業PMI速報 47.8(前月改定 47.7)、サービス業 53.4(52.9)、コンポジット 52.1(51.8)

・6月米製造業PMI速報 50.1(前月改定 50.5)、サービス業 50.7(50.9)、コンポジット 50.6(50.9)

・5月米中古住宅販売 前月比+2.5%の534万戸(前月±0.0%の521万戸)

・ボストン連銀ローゼングレン総裁(投票権あり・タカ派)、「日本の一部の地域金融機関は懸念すべきほど高水準のCLOを購入している。」

・クラリダFRB副議長(投票権あり・中間派)、「不確実性が高まる中で相反する流れが米経済に打撃を与えている。利下げを支持する論拠が強まった。」

・ミネアポリス連銀カシュカリ総裁(投票権なし・ハト派)、「FOMCで▲25bpの利下げを求めた。」

・英保守党次期党首、ジョンソン氏、大差で決選投票へ。

・米商務省、「軍事用途のスーパーコンピューターを手掛ける複数の中国企業と1つの国有機関について、安全保障上懸念のある外国企業のエンティティー・リスト(EL)に追加」

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・ベイカー・ヒューズ週間米国石油リグ稼働数789(前週比+1)、 ガスリグ 177(前週比▲4)。

・米国、イラン情勢を巡り国連安保理会合開催を要請。

・米トランプ大統領、「イラン攻撃は10分前に中止を判断した。無人機攻撃とは釣り合わない。イランとの戦争は望まない。そうなればこれまでに見たことのないような完全な破壊を目にすることになるだろう。」

・米トランプ大統領、オマーンを通じてイランに警告、「攻撃が近い、協議を望む。」

【メタル】
・金価格、2013年9月以来1,400ドルを上回る。

・イランタイムス、3月から5月のイランの鉛と亜鉛の生産量は前年比▲50%の129,172トン。

・ベルギー ニルスター、「豪ポートピリー精錬所の生産が大幅に減少する可能性。」

・SMM、「中国のニッケル港湾在庫は1,271万トン(ニッケル含有量ベースでは+1,000トンの107,00トン)」

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.TCMガソリン ( エネルギー )/ +5.93%/ +21.78%
2.CME木材 ( その他農産品 )/ +4.92%/ +21.89%
3.NYM RBOB ( エネルギー )/ +3.91%/ +40.22%
4.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ +3.35%/ ▲55.54%
5.TGE小豆 ( 穀物 )/ +3.29%/ +55.04%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
68.CME豚赤身肉 ( 畜産品 )/ ▲3.79%/ +25.05%
67.NYB綿花 ( その他農産品 )/ ▲3.20%/ ▲15.25%
66.TGE米 ( 穀物 )/ ▲2.75%/ ▲1.03%
65.CBT大豆ミール ( 穀物 )/ ▲2.29%/ +3.07%
64.CBTトウモロコシ ( 穀物 )/ ▲1.72%/ +17.93%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :26,719.13(▲34.04)
S&P500 :2,950.46(▲3.72)
日経平均株価 :21,258.64(▲204.22)
ドル円 :107.32(+0.02)
ユーロ円 :122.01(+0.84)
米10年債利回り :2.05(+0.03)
独10年債利回り :▲0.29(+0.03)
日10年債利回り :▲0.16(+0.01)
中国10年債利回り :休場( - )
ビットコイン :9,939.81(+377.15)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :26.27(+0.19)
エネルギー :36.27(▲0.44)
ベースメタル :21.44(+0.35)
貴金属 :16.16(▲0.09)
穀物 :25.51(▲0.04)
その他農畜産品 :27.27(+0.56)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :42.93(▲4.34)
Brent :40.20(▲0.1)
米天然ガス :28.50(+0.45)
米ガソリン :37.92(+0.74)
ICEガスオイル :30.18(+0.47)
LME銅 :15.06(▲0.43)
LMEアルミニウム :16.39(+1.63)
金 :21.33(+0.56)
プラチナ :18.47(▲0.19)
トウモロコシ :33.80(+0.44)
大豆 :21.33(+0.56)

【エネルギー】
WTI :57.43(+0.78)
Brent :65.20(+0.75)
Oman :64.40(+0.55)
米ガソリン :185.61(+6.98)
米灯油 :191.58(+3.15)
ICEガスオイル :587.00(+7.50)
米天然ガス :2.19(+0.00)
英天然ガス :27.15(+0.88)

【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :65.20(+0.75)
SPO380cst :381.36(+6.51)
SPOケロシン :77.82(+1.25)
SPOガスオイル :77.62(+1.14)
ICE ガスオイル :78.79(+1.01)
NYMEX灯油 :192.81(+1.54)

【貴金属】
金 :1399.63(+11.19)
銀 :15.35(▲0.08)
プラチナ :809.88(+2.34)
パラジウム :1504.46(+17.58)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :5,952(▲20:11C)
亜鉛 :2,433(▲56:110B)
鉛 :1,898(▲24:3.5C)
アルミニウム :1,768(▲36:24C)
ニッケル :12,180(▲125:45C)
錫 :19,125(▲200:5B)
コバルト :28,000(±0.0)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :5959.50(▲12.50)
亜鉛 :2433.00(▲32.50)
鉛 :1908.50(+4.00)
アルミニウム :1768.00(▲14.00)
ニッケル :12115.00(▲210.00)
錫 :18955.00(▲170.00)
バルチック海運指数 :1,194.00(+15.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :109.5(+0.25)
NYMEX鉄鉱石 :107.54(+0.33)
NYMEX原料炭スワップ先物 :195.5(+0.50)
上海鉄筋直近限月 :3,751(▲9)
上海鉄筋中心限月 :3,816(+16)
米鉄スクラップ :264(±0.0)

【農産物】
大豆 :902.75(▲12.75)
シカゴ大豆ミール :315.60(▲7.40)
シカゴ大豆油 :28.44(▲0.15)
マレーシア パーム油 :1998.00(▲6.00)
シカゴ とうもろこし :442.25(▲7.75)
シカゴ小麦 :526.00(▲0.50)
シンガポールゴム :203.50(+2.60)
上海ゴム :11635.00(+55.00)
砂糖 :12.22(▲0.21)
アラビカ :99.80(▲1.25)
ロブスタ :1381.00(▲4.00)
綿花 :61.19(▲2.02)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :76.25(▲3.00)
シカゴ生牛 :106.55(▲1.63)
シカゴ飼育牛 :133.68(▲1.03)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。