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再び強まる景気懸念、強まるリスクシナリオ
  • MRA外国為替レポート

2019年5月27日号

◆先週の市場総括


先週は米中通商交渉をめぐる週初の期待が後半には懸念に転じリスク選好が後退した。欧米の経済指標の弱さも市場の不安感を後押しする要因に。

米国株価は週後半に大きく下落し、米10年債利回りは一時2.3%割れに低下。円高が進んだ。

ドル円相場は週初110円台に乗せて始まり、ファーウェイへの規制を一部緩和との報道に110円台半ばへ上昇したが、交渉長期化の様相がみえ始め、加えて弱い経済指標が景気減速懸念を再燃させると109円台前半に反落した。

ユーロ円相場は123円ちょうど近辺から123円台半ばに上昇したが一時122円台前半に下落して上値の重い展開。週末にかけては米景気減速懸念からドルはユーロに対して下落し、ユーロドル相場は1.12台に乗せて引けた。

日経平均は21,300円台に乗せて始まり週初こそ底固く堅調だったが週央以降は大きく反落。21,000円を割り込んでようやく支えられた。週末の引けは21,100円台。

月曜日の東京市場のドル円相場は110円10銭近辺で始まり小幅上昇したものの、午後には反落。欧州時間に入ると110円を割り109円80銭台に下落した。

ユーロ円相場も同様に122円90銭で始まり123円に乗せたものの、海外市場に入ると122円60銭割れ。

日経平均は21,300円台に乗せるも上値重く、21,300円~350円でもみ合い、21,300円で引けた。

朝方発表された日本の1-3月期GDP速報は前期比年率+2.1%と市場のマイナス予想を上回った。しかし内容をみると消費は前期比▲0.1%、設備投資は同▲0.3%、輸出も減少。内需減少により輸入が大幅に減少したことと、公共投資が押し上げた結果で喜べない数字。

株価は当初プラスに反応したものの上値が重くなった。欧米市場では株価が米中通商交渉をあらためて懸念し下落。米国株はファーウェイ社に対する規制が嫌気されハイテク関連株が大幅安となり、ナスダック指数の下げがきつかった。

一方、米10年債利回りは小幅上昇して2.42%。NY市場引けにかけてはやや円安に戻して、ドル円相場は110円台を回復、ユーロ円相場は123円手前で引け。

火曜日の東京市場のドル円相場は110円ちょうど近辺で始まり10銭~20銭で上下。

ユーロ円相場は123円手前で始まり122円70銭近辺に小幅下落。ユーロドル相場は1.1170近辺から1.1150中心に小幅ユーロ安となり上下。

日経平均は米国株の下落を嫌気して21,200円近辺に安寄りしたが持ち直し。21,200円台後半で上下した。

朝方伝えられたFRBパウエル議長の発言はとくに市場にインパクトはなかった。海外市場に入ると円が軟調。ドル円相場は110円60銭~70銭に、ユーロ円相場は123円60銭台に上昇した。

米国株は高寄りの後もしっかりで、前週末の引値を上回り上昇した。米国政府が中国ファーウェイ社に対する規制措置を一部緩和。既存顧客を支援するために通信ネットワークやスマートフォンの保守に限って取引を90日間行うこととしたことを材料視。

また中国の雀駐米大使は、中国政府は米国との通商協議を妥結に向けて続ける用意がある、と述べた。

また、中国人民銀行は地方の商業銀行の預金準備率を段階的に引き下げる計画の詳細を発表。2,800億元の資金を市場に放出し、苦しむ中小企業に対する融資の促進を図る。

この日講演したボストン連銀総裁は、金利をいずれの方向に動かす明確な根拠はない、貿易摩擦をめぐる不確実性が米国経済の見通しに下振れリスクを与えている、と述べた。

ドル円相場はその後小幅反落して110円50銭近辺、ユーロ円相場も同様に123円30銭近辺にやや戻して引け。ユーロドル相場は1.1160中心にもみ合い引けた。

水曜日の東京市場のドル円相場は110円50銭~60銭で始まりもみ合いながらじり安。ユーロ円相場は123円30銭で始まり123円台前半で上下。

日経平均は21,300円台後半で高寄りしたが300円割れ。その後は21,300円台前半で上下したが引けは21,300円を割った。

この日発表された日本の貿易収支(4月)は黒字幅が600億円に留まった。市場予想は2,000億円。中国向け半導体製造装置や電子部品の輸出減少、イランからの原油輸入増、などが要因。

中国の王外相は、米国が極度の圧力をかけることを選ぶなら最後まで戦うことに迷いはない、と発言。習主席はそれより前に、米中貿易戦争が激しさを増すなか「新長征」に加わるように国民に呼びかけ。

中国の人民日報は、テクノロジーでの独立性を成し遂げない限り中国の安全保障は確保されない、とした。

一方、米国政府がファーウェイに加え新たに5社をブラックリストに掲載することを検討、米国からの技術移転を禁じる措置を検討していることが明らかになった。

ムニューシン財務長官は北京訪問の計画はない、とする一方、6月末に米中首脳が会う可能性は高い、と述べた。

米国株は下落してもみ合い。米10年債利回りは小幅低下して2.38%。ドル円相場、ユーロ円相場、ともに海外市場ではもみ合いながらじり安となり、110円30銭、123円ちょうど近辺でそれぞれ引けた。

木曜日の東京市場のドル円相場は110円30銭で始まり上下動、横ばい。ユーロ円相場は123円手前で推移。日経平均は海外株安を受けて21,200円割れで安寄りし、一時21,100円を割ったが、その後は21,100円~150円でもみ合い21,150円で引けた。

日本の携帯電話大手各社はファーウェイ社製端末の販売延期や停止を発表した。夕刻に欧州の経済指標が発表されるとユーロ安、円は全面高。円高の流れは米国市場にかけても続いた。

ユーロ圏製造業PMI(5月)は47.7、ドイツは44.3と景況感の分かれ目50を下回る弱い数字。ドイツのIFO企業景況感指数(5月)も97.9と予想99.2、前月99.2を大きく下回った。

ECB理事会(4月)議事要旨では、年後半の回復に対する信頼感が低下した、とされていた。

トランプ大統領は、ファーウェイ社は危険としつつも米中通商合意で問題が解決される可能性もある、中国との貿易戦争は早期に終了する、と述べたが、ポンペオ国務長官はファーウェイ社CEOを嘘つきと批判。米中摩擦の先鋭化懸念が強まった。

そうしたなか、米国のPMI企業景況感指数(5月)は製造業が50.6と9年ぶりの弱い数字(予想53.0、前月52.6)、サービス業が50.9と3年ぶりの弱い数字(予想53.2、前月53.0)。

米国株は半導体関連、自動車、エネルギー関連を中心に大幅続落しNYダウは300ドル近い下落。米10年債利回りは一時2.3%を割って低下し2017年10月以来の水準、2.32%で引けた。

ドル円相場は109円50銭まで下落し60銭で引け。ユーロ円相場は122円20銭まで下落し60銭に戻して引け。ユーロドル相場はアジア時間では1.1150台でもみ合い、欧州の弱い指標で1.1110へ下落、その後は米国の弱い数字で1.1180に持ち直して引けた。

金曜日の東京市場のドル円相場は109円60銭で始まり50銭~70銭で方向感なく上下動。ユーロ円相場も同様に122円60銭で始まり50銭~70銭で上下した。

日経平均は米国株安を嫌気して21,000円割れで安寄りしたが、反発し、引けにかけて上昇。21,100円台に戻して引けた。

海外市場に入るとドルは下落。発表された米国の耐久財受注・資本財受注(4月)が弱い数字だったことから米景気減速がさらに意識された。

設備投資の先行指数であるコア資本財受注(非国防・除く航空機)が前月比▲0.9%と予想▲0.3%を上回る減少を示したことでドル売りが広がった。

ドル円相場は109円30銭~40銭で上下し引けは109円30銭。ユーロドル相場は1.1210にユーロ高ドル安となりもみ合い引け。ユーロ円相場は122円50銭中心にもみ合い。

米国株は小幅反発してもみ合い。米10年債利回りは変わらず、2.32%。

イギリスのメイ首相は6月7日に保守党党首を辞任することを表明。後継候補はいずれも離脱強硬派とみられる。筆頭と目されるジョンソン元外相は、合意なき離脱に備える必要がある、と発言。再び混迷するリスクが高まってきた。

◆今週の3つの注目ポイント


月曜日のロンドン、NY市場は休場。

1.米国の経済指標

先週は再び景気懸念が強まった。引き続き弱い数字に反応しやすいことには留意が必要だ。

火曜日 ケースシラー住宅価格指数(3月)、消費者信頼感指数(5月、予想129.8、前月129.2)、ダラス連銀製造業景気指数(5月)

水曜日 リッチモンド連銀製造業指数(5月)

木曜日 GDP(1-3月期)改定値、中古住宅販売(4月)

金曜日 個人所得・消費支出(4月)、シカゴ購買部協会景気指数(5月、予想53.7、前月52.6)、ミシガン大学消費者信頼感指数(5月、確報)

2.中国の経済指標

中国の景気動向も気になるところ。米中関税報復の再開で企業部門の景況感から悪化が想定されるがどうか。金曜日に製造業・非製造業PMI景況感指数(5月)が発表される。

製造業の予想は50.5と前月50.1から持ち直しが予想されているが、予想外に悪化して景況感の分かれ目である50を下回れば市場の不安感が高まる可能性がある。

3.米中通商交渉をめぐる応酬

引き続き米中双方からの通商交渉をめぐる報道に市場は神経質な状況が続くとみられる。交渉継続に疑念を抱かせるような言動が双方から新たに出てくることはないか。

大筋では交渉継続で双方の考えは一致しているようだが、現時点ではその糸口がみえない。協議が再開される見込みが生じるのか。6月末の大阪G20で米中首脳は会談を行うのか。

◆今週のMRA's Eye


再び強まる景気懸念、強まるリスクシナリオ

市場のメインシナリオが揺さぶられている。昨年末にかけて市場は様々な不透明要因からリスク回避を強め株価は大きく調整。為替市場では年初にかけて円高が進んだ。その後は米中合意が近く、景気は年後半に持ち直し、イギリスは合意なき離脱だけは回避する、というシナリオで動いてきた。

年初来、米国株は反発してS&P500指数は史上最高値を更新。ドル円相場は一時112円台までドル高円安が進んだ。その前提条件が怪しくなってきた。

最大のリスクは、再び半導体不況・製造業不振に陥るのか、という点。あるいは、そもそも景気改善は年後半への期待に過ぎず、足元で企業部門の景況感悪化は続いており、その流れのまま企業部門を中心とする景気減速・悪化が続いてしまうのではないか、という懸念。

このところのニュースは悪い話ばかりが目立つ。米中交渉は、再開のめどが立たず、長期化の予想を呈している。中国サイドは米国に誠意がない、とし、米国は中国企業への警戒感を強めている。

トランプ政権は交渉継続を目論んでいるが、中国が今の状況に耐えられないはずだ、という前提がある。中国側はそうした米国による「兵糧攻め」に対して、反撃しつつも籠城戦略で対抗しようというようにもみえる。

習主席が今回の事態に対して「新長征」という言葉を使っているのは気がかりだ。国民に忍耐を求める長期的な抵抗戦略に模していることは、中国経済の鈍化を容認してでも、逆に米国側が音を上げるのを待つ策にもみえる。

王毅外相も、米国の圧力に対して最後まで戦うことに迷いはない、と戦闘姿勢だ。双方の言動をみれば、合意期待は一転。関税報復合戦がさらに強まり、交渉が長期化する可能性は、昨年よりも現時点の方が高まっている。さらにイギリスの合意なき離脱の可能性はここにきて再び高まっている。

市場は日本のゴールデンウィーク以降、弱い経済指標、とくに企業部門の景況感指数に景気悪化の兆しを探り、反応しやすい状況が続いている。実際に、今回の関税引き上げの影響が出てくるのはこれからだ。

週末に発表された4月の米国・資本財受注には、今回の関税引き上げの影響は出ていないはずだが、それでも前月比▲0.9%と数字が弱かった。

より足の早い経済指標である米国のPMI企業景況感指数は、製造業・サービス業ともに景況感の分かれ目である50すれすれの数字となった。

製造業は50.6と2009年9月以来の低水準。サービス業も50.9と3年ぶりの低水準。資本財受注・企業の設備投資には、これからこうした景況感の悪化がさらに反映される可能性がある。

欧州でもドイツのIFO企業景況感指数(5月)が97.9と4年半ぶりの低水準。PMIはユーロ圏、ドイツ、ともに製造業で50を下回っている。ECBはすでに4月の理事会において、年後半の景気回復の信頼感が低下している、として不透明感を示している。

ファーウェイ問題がさらに半導体業界の低迷、製造業不振を加速させるのか。ファーウェイに代替する端末や装置への需要が増えるので問題ない、と言い切れるのかどうか。

日本にとっても、先日の1-3月期のGDPに示された通り、対中輸出の減少、さらに内需不振による輸入減少、公共投資頼みの景気拡大が明確になっている。

これが短期的な現象なのか、今回の米中関税引き上げの影響が、やはりこれからなお明確になってくるのか不透明だ。

景気持ち直し期待の背景には政策期待がある。FRBは利上げを休止して様子見姿勢の長期化を明らかにしている。中国は景気対策に動き、金融緩和とくに中小企業対策に前進している。

ただし、これらは今回の関税報復合戦が始まる前から明確に打ち出された政策であるため、今後の景気下押し圧力で相殺される可能性がある。

米中双方の関税引き上げによる影響はさほどでもない、との見方もある。IMFの試算によれば、米中双方がすべての輸入品に関税をかけた場合、世界全体の成長率を0.3%押し下げる、という。これを大きいとみるか、さほどでもない、とみるか。

2019年の成長率見通しは現在3.3%だが、これが好不況の分かれ目である3%すれすれまで減速するという。そうした数字の解釈の前に、あるいは実体経済にどのような影響が生じるか明らかになる前に、市場のセンチメントが悪化することは否めない。

すでに米国の長期金利、10年債利回りは2.3%近辺に低下した。昨年10月頃は一時3.2%に乗せていたことを考えれば、1%近くも低下したことになる。水準としては2017年末のレベルだ。

これは一方で株価などリスク資産にはプラスに働く。ただ、それは少なくとも景気悪化・企業業績の悪化がさほど大きくないとの前提のもとでの、金融相場的な効果。

肝心の業績が悪化すれば金利低下と株安が同時に発生する。「金利低下→株価下支え」、ではなく、「株安→金利低下」、となる。ドル円相場の上値は一段と重くなる。

週末にはドルが対円、対ユーロで軟調となった。なお米国経済が相対的に日欧よりも強い状況は変わっていない。金利水準も高い。そのもとで大幅なドル安が進む可能性は小さい。

ドル円相場の下値は引き続き107円台程度だろう。シカゴ通貨先物における投機的な円売りポジションも55千枚程度、ピークの半分程度まで減少して、短期的な円高リスク、円高圧力は減少している。逆にドル高円安サイドは112円がさらに遠くなり、当面は110円の攻防となりそうだ。

ここからのリスクシナリオは米国経済の本格的な減速、下振れとなるケース。現時点で、FRBは、利下げが必要なほどの確証はない、としつつ、下振れリスクが高まっているとの判断だ。それが生じた場合には105円に下落する可能性がある。

米中関税合戦で双方がそこまで自国経済を犠牲にできるのか、というのが市場のメインシナリオだ。しかし、これが戦争だとすると、想定外に悪いケースに突入してしまうリスクもある。引き続き要注意だ。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :109.31(▲0.30)
ユーロ :122.46(▲0.10)
英ポンド :138.965(+0.24)
豪ドル :75.715(+0.09)
カナダドル :81.346(▲0.01)
スイスフラン :109.054(▲0.19)
ブラジルレアル :27.1681(+0.03)
中国人民元 :15.842(▲0.03)
韓国ウォン(日本円=100) :9.214(+0.00)


【対ドルレート】
ユーロ :1.1203(+0.002)
英ポンド :1.2714(+0.006)
豪ドル :0.6927(+0.003)
カナダドル :1.3437(▲0.004)
スイスフラン :1.0022(▲0.001)
ブラジルレアル :4.0229(▲0.017)
中国人民元 :6.8989(▲0.012)
韓国ウォン :1188.22(▲1.07)

【主要国政策金利】
米国 :2.50
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :2.32(+0.00)
米2年債 :2.16(+0.02)
日本10年債利回り :▲0.07(▲0.01)
日本2年債利回り :▲0.07(+0.00)
独10年債利回り :▲0.12(+0.00)
独2年債利回り :▲0.63(+0.01)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :25,585.69(+95.22)
NASDAQ  :7,637.01(+8.73)
S&P500 :2,826.06(+3.82)
日経平均株価 :21,117.22(▲33.92)
ドイツ DAX :12,011.04(+58.63)
インド センセックス :39,434.72(+623.33)
中国上海総合 :2,853.00(+0.48)
ブラジル ボベスパ :93,627.80(▲282.23)
英国FT250 :19,127.26(+96.05)
ビットコイン :8112.36(+233.90)

【主要商品価格】
WTI :58.63(+0.72)
Brent :68.69(+0.93)
米ガソリン :193.45(+2.12)
米灯油 :197.13(+0.89)

金 :1284.93(+1.48)
銀 :14.57(▲0.03)
プラチナ :806.05(+6.45)
パラジウム :1335.68(+24.23)
銅 :5950.00(+53:31C)
アルミニウム :1795.00(+25:33.5C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :829.75(+8.25)
シカゴ とうもろこし :404.25(+14.50)
シカゴ小麦 :489.50(+19.25)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更
新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。