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非鉄・株は軟調もその他の商品は比較的堅調
  • MRA商品市場レポート for PRO

2019年5月21日 第1534号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「非鉄・株は軟調もその他の商品は比較的堅調」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品価格は非鉄金属や株価が下落したが、それ以外の商品は上昇した。米中通商交渉の難航を受けて総じて景気循環銘柄に売り圧力が強まる中、ドル高の進行に伴い自国通貨建て商品価格は上昇、エネルギーや中東の懸念で上昇した。

米政権は華為技術との取引を停止することを決定、グーグルがOSの提供を停止するなど、影響が具体化し始めている。

【本日の価格見通し総括】

米中交渉が難航しており、規制強化に伴う対立が企業レベルまで下りてきていることから、市場参加者のリスク回避姿勢が強まるため総じて軟調な推移になると予想する。

本日予定されている材料としては、OECDの経済見通しがあるが恐らく下方修正されることになるだろう。

また米国の中古住宅販売件数(市場予想前月比+2.7%の535万戸、前月▲4.9%の521万戸)は改善が予想されており、景気循環銘柄の下支え要因となろう。

【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】

昨日発表された日本のGDPは表面上の数字は悪くなかったものの、中を見てみると決して良い内容とは言えなかった。

実質GDPは前期比年率で+2.1%(市場予想▲0.2%、前期改定+1.6%)と成長ペースが加速した。寄与度が最も高かったのが輸入の減少に伴う外需の影響が大きい)。

輸出は前期比▲2.4%だったが、輸入が▲4.6%と大きく減速したため全体でプラスに作用した。また、民間在庫は+0.1%と小幅な上昇となったが、これはポジティブなものというよりも、出荷減速に伴う「意図せざる在庫積み増し局面入り」による在庫積み増しと考えられる。

さらに個人消費は▲0.1%と減速。住宅投資が+1.1%となったのは消費税上げ前の駆け込み需要の影響だろう。

設備投資も米中貿易戦争への懸念による中国の減速懸念で▲0.3%と落ち込んでおり、やはり年後半にかけての減速リスクは高まっている。

この状況で政府は消費税上げ見送りを模索し始めている。しかし2回延期したものであり、かつ、安倍政権が決定した消費税上げをこのタイミングで先送りするのは政治的には難しいのではないか。

とはいえ米中交渉が難航する局面で景気に明らかにマイナスになる消費税上げは、夏の選挙を考えると先送りされる可能性もあり得る。仮に先送りされなければ、現在の国際経済情勢を鑑みると、オリンピック向けの投資が一巡すると見られる今年の11月以降の減速を、意識しておく必要があるだろう。

ただしそれが、「リーマンショック級の減速」になるのは、何かしらのイベント、例えば中東での軍事衝突や米中の決定的な決裂などが必要になるのではないか。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

(マクロ要因)

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標再びの減速(価格下落要因)。

・世界景気の減速観測。IMFは2019年の経済見通しを引き下げ(+3.5%→+3.3%)ており、先行きの見通しのリスクも下向き。

・FRBの利下げの可能性が再び高まる(トランプ大統領があからさまに要求を始めており、米中貿易戦争の行方次第ではあり得る状況に)。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q119の中国GDPは前年比+6.4%、前期+6.4%と市場予想の+6.3%を上回りやや減速懸念が後退)。

・景気減速下での原油価格高騰は、消費国から生産国への所得移転を通じて景気の下押し要因に。また、リスク回避のドル高進行も価格上昇を抑制。

・2020年からインドが人口ボーナス期入りすることによる、構造的な需要の増加は中長期的な価格の上昇要因。

(特殊要因)

・米政権は対中関税引き上げを表明、中国もこれに対する報復を決定。華為技術との取引を禁じるなど、企業レベルまで制裁が拡大していること(下落要因)。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気後退など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・中東情勢の悪化を受けた域内景気の混乱と、それを受けた欧州景気への悪影響拡大(下落要因)

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。とりあえず5月末、10月末を期限として問題先送り(下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

(投機・投資要因)

・長期金利の低下による米長短金利の逆転が株安を誘発、リスク回避のリスク資産売り圧力が強まる場合。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油価格は総じて軟調。米中貿易交渉が長期化する可能性が高いうえ、米国が華為技術との取引を米企業に禁じたことで、さらに対立が深まるとみられたことが材料。

ただし同時に中東情勢も緊迫しているため、供給懸念が価格を下支えした。

【原油価格見通し】

原油価格は高値圏を維持する展開を予想。

米国が中東に打撃・空爆戦力派遣を決定、イランも核開発の一部再開を通知するなど、域内情勢が不安定化するとの見方が強まっていることは価格の上昇要因。

一方、イランに対する制裁があっても輸入国とも国内の製油所の能力などから直ちに禁輸を行えるわけではないこと、仮に完全に減産が行われても、数字の上では供給は足りること、ロシアが減産を順守していないことといった供給面での下落要因も存在。

需要面は米中交渉が長期化する可能性が強まっているため、それを受けた景況感の悪化は下落要因に。

イランに対する米国の対応は、場合によると本当に戦争を想定しているものである可能性が出ている。トランプ大統領はむしろイランと対話を望んでいるが、ペンス・ボルトンなどの共和党議会側が強硬姿勢であるため。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は小幅に続落。米中の報復関税合戦で両国の景気が減速するとみられていること、季節的な需要の減速が材料。

【石炭価格見通し】

石炭価格は足元、季節的な需要減速を受けて水準を切り下げる(目処は80ドル)が、北朝鮮への制裁継続や夏場にかけて季節的な需要増加観測から、7~8月頃にかけて上昇すると予想。その後季節的な調整の後、11月にかけて水準を切り下げる展開に。

また、中国による豪州炭の輸入規制(華為技研問題の影響)の影響でインドネシア炭にシフトしていることは逆に、上値を抑えると考えられる(日本が輸入する石炭価格CIFへの影響は中立)。米国の中国制裁強化も価格の上値を抑える公算。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・原油価格の上昇に伴う北米の増産継続は、需給緩和で価格の下落要因。

・OPECプラスの協調減産は9月末で終了する可能性が高まっており、足元の協調減産は価格の上昇要因だが、年後半は下落要因に。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

(特殊要因)

・米国のイランに対する制裁強化・ベネズエラ・リビアの情勢悪化に伴う供給途絶懸念は価格の上昇要因。

・米国のイスラエルへの過剰な肩入れと、イスラエルネタニヤフ首相の5選達成による、周辺産油国への武力行使の可能性が高まることは原油価格の上昇要因に。

・北朝鮮のミサイル発射により、制裁が継続される可能性が高まっていることは、北朝鮮からの石炭輸出(密輸)を制限し、価格の上昇要因(石炭)。

・米中情報戦争をめぐる華為技術排除の決定を受けて中国政府は豪州からの石炭輸入を規制、インドネシア炭にシフトしていることはNEWC価格の下落要因に(石炭CIF価格に対する影響は中立)。

(投機・投資要因)

・直近の投機筋のポジションは、WTIはロングが607,979枚(前週比 ▲8,810枚)、ショートが120,171枚(▲2,282枚)、ネットロングは487,808枚(▲6,528枚)、Brentが424,646枚(前週比▲9,436枚)、ショートが27,335枚(▲572枚)、ネットロングは397,311枚(▲8,864枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME非鉄金属価格は下落した。米国が中国華為技術との取引を禁じる決定をしたことで、米中の交渉が決裂するのではとの見方が広がったことで、最大消費国である中国の需要減速懸念が強まったことから。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は軟調地合いを維持すると考えられる。米中通商協議は難航、場合によると決裂する可能性が出てきている中、特に最大消費国である中国の期待需要が減少していることが背景。またリスク回避のドル高圧力の高まりも価格を下押し。

ただし、投機の売りが拡大しており、テクニカルに買戻しが入りやすい地合いであること、中国の経済対策期待、供給面の不安やLME在庫の減少継続が価格を下支え。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は再開しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCも高止まり。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

(特殊要因)

・銅の生産減少観測(環境問題によるインド、露天掘りから地下生産に変更するインドネシア)、ヴァーレの尾鉱ダム事故の影響による供給減少(アルミやニッケルなどに波及する可能性)。

・LME指定倉庫在庫の減少が、LMEの倉庫運営ルール変更に伴う保管場所変更の取引の影響である場合、ルールが見直された際に再度、LME指定倉庫在庫が急増する可能性(下落要因)。

(投機・投資要因)

・5月10日付のLMEポジション総じてショートポジションが積み上がり、ネットロングを縮小させた。

投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は▲32.3億ドル(前週5.7億ドル)と大幅に減少。上昇率は▲663.7%。

買い越し枚数はトン数換算ベースで▲1,043千トン(▲53千トン)と減少。亜鉛と錫以外はMt数ベースでネット売り越しに転じた。ショートの増加率は1,857.3%。

今後、総じてこれらのポジションの買戻し圧力が強まる可能性があり、テクニカルに非鉄金属価格が上昇する余地があることは留意。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップ市場は上昇、原料炭スワップ先物は横ばい、中国鉄鋼製品価格はまちまちとなった。

米中の協議難航が引き続き景気への懸念を強めているが、ブラジル ヴァーレの減産が続く中、中国の粗鋼生産が8,033万トンと、同じ時期の過去5年の最高水準となったことで鉄鉱石需要が増加するとみられたことが引き続き、材料となっている。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は高値圏でもみ合うものと考える。ヴァーレのブルクツ鉱山が再び稼働停止になったことで、鉄鉱石の供給懸念が強まる一方、中国の粗鋼生産の回復が需要を押し上げるものの、米中貿易交渉の難航に伴う景気への懸念が上値を抑えるため。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・中国の鉄鋼製品在庫水準の高さは価格の下落要因。鉄鋼製品在庫は前週比▲35.8万トンの1,194.2万トン(過去5年平均1,195.8万トン)と例年をやや下回った。

・中国の鉄鉱石在庫水準の高さは価格を下押し。鉄鉱石在庫は前週比▲16.5万トンの1億1,700万トン(過去5年平均1億1,901.6万トン)、在庫日数は▲0.4日の34.2日(過去5年平均 30.5日)と例年の水準を上回る。

・季節的に鉄鋼製品在庫の取り崩し時期であり、価格には下押し圧力がかかりやすい。

・長期的には2020年に人口ボーナス期入りするインドの需要が鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

(特殊要因)

・ヴァーレの尾鉱ダム決壊の影響が拡大し、さらに供給減少が起きた場合(自社・他社ともにあり得る)、価格の上昇要因に。

(投機・投資要因)

・固有の要因は特になし。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金・銀価格はもみ合い。実質金利の上昇やそれを受けたドル高進行が価格を下押ししたものの、米中対立を受けた株価の調整や中東情勢の緊迫による安全資産需要が価格を支えた。

PGMは金銀価格がもみ合ったが、米中対立懸念を受けて株価が調整したことでプラチナが下落、パラジウムは買戻しが入り上昇した。

PGM現物の需給バランスを見る上での指標となるロジウムの価格は2,875ドルと前日比▲15ドルと下落、需給は緩和方向(需要の減速)にある模様。

【貴金属価格見通し】

金価格は米中貿易交渉の進展状況をにらみつつ、神経質な展開になると予想されるが、中東情勢や欧州の情勢不安を材料に安全資産需要は堅調とみられること、ここにきて市場は再びFRBの利下げを織り込み始めていることから総じて底堅い推移になると考える。

銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)の上昇が金銀レシオを押し上げているため対金で割安に推移。

一方、欧州の政情不安、米国の債務上限問題、中東情勢の混乱懸念(イラン・サウジアラビア・イスラエルを中心に)が安全資産需要を高めるため、リスクプレミアムが乗る形で価格を押し上げへ。

PGM価格は金銀価格が底堅い推移になるため堅調だが、同時に米中貿易交渉の状況によっては株価が上下するため、軟調地合いの中、神経質な推移が続くことになると予想。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・FRBの利下げ期待が再び高まっていること、原油価格の高止まりは実質金利の低下を通じて金銀価格の上昇要因に。

・景気の先行きを懸念した株価下落とそれに伴う長期金利・実質金利の低下(金銀価格の上昇要因)。ただし、欧州の政情安定化や米中貿易戦争の合意、景況感の改善で株価が上昇した場合には金銀価格の下落要因。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト(パラジウムの上昇要因・プラチナの下落要因)。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

(特殊要因)

・米中貿易交渉は難航しており、相互報復まで発展(価格の上昇要因)。知的財産権や技術の強制移転などの重要なポイントで妥結できておらず、米中の覇権争いであり長期化の見込み(価格の下支え要因)。

・米国とイランの開戦リスク。トランプ大統領はその気がなさそうだが、共和党議会はイランとの開戦に前向きな可能性。

・米国の債務上限問題の顕在化(8月~9月にデフォルトするリスク)。

・欧州の政治混乱(英国のEU離脱、伊仏の対立、イタリアの財政不安再燃、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化など)による安全資産需要の増加。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

(投機・投資要因)

・長期金利の低下による米長短金利の逆転が株安を誘発、リスク回避のリスク資産売り圧力が強まり、安全資産需要が高まる場合。

・銀価格は金銀在庫レシオが銀在庫の減少、ないしは金在庫の増加、あるいは両要因によって低下した場合、金銀レシオが上昇するリスク(銀価格の上昇要因)。

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが226,361枚(前週比 +40,560枚)、ショートが101,825枚(▲8,565枚)、ネットロングは124,536枚(+49,125枚)、銀が77,542枚(+196枚)、ショートが79,751枚(+1,448枚)、ネットロングは▲2,209枚(▲1,252枚)

・直近の投機筋のポジションは、プラチナはロングが44,737枚(前週比 ▲1,120枚)、ショートが18,987枚(+1,823枚)、ネットロングは25,750枚(▲2,943枚)、パラジウムが10,939枚(▲941枚)、ショートが3,318枚(▲582枚)、ネットロングは7,621枚(▲359枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物価格は上昇。生産地の天候条件の悪化を受けた作付けの遅れが強く意識された。昨晩発表された米輸出統計での輸出量減少や、ドル高進行はあまり材料とならなかった。

【穀物価格見通し】

穀物価格はトウモロコシ・大豆・小麦とも生産地の作付けが天候の影響で遅れる見通しであることが価格を押し上げるものの、米中貿易交渉の難航に伴う輸出需要の鈍化観測、米統計の改善を受けたドル高進行が重石に。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・米国のトウモロコシ・大豆の生産増加観測による需給緩和観測。

・米国の作付けの遅れに伴う需給タイト化観測。トウモロコシ、大豆とも過去5年の最低水準。

・豪州東部の大干ばつによる小麦生産の減少懸念。

・作付面積動向(トウモロコシは下落、大豆は上昇、小麦は上昇)トウモロコシ作付意向面積 9,279万エーカー(市場予想 9,127万エーカー、前年8,803万エーカー)大豆 8,462万エーカー(8,620万エーカー、8,898万エーカー)小麦 4,575万エーカー(4,688万エーカー、4,734万エーカー)

・5月の米需給報告の在庫見通し

トウモロコシ24億8,500万ブッシェル(前穀物年度20億3,500万Bu)大豆 9億7,000万Bu(8億9,500万Bu)小麦 11億4,100万Bu(10億8,700万Bu)

・実質金利の低下に伴うドル安の進行は、シカゴ穀物の輸出競争力を改善し、需給面で価格の上昇要因に。

(特殊要因)

・米中貿易交渉は相互報復まで発展(価格の下落要因)。知的財産権や技術の強制移転などの重要なポイントで妥結できておらず、米中の覇権争いであり長期化の見込み。

・エルニーニョ現象発生による北米の増産は価格の下落要因。ただし洪水などが発生し、災害が激甚化した場合には価格の上昇要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

(投機・投資要因)

・主要穀物のショートポジションは、作付けの遅れなどからトウモロコシと小麦で解消圧力が強まり、大豆は増加している。大豆は米中協議の進展次第では買戻し圧力が強まるため注意。

・直近の投機筋のポジションは、トウモロコシはロングが373,631枚(前週比 ▲1,985枚)、ショートが557,520枚(▲9,144枚)、ネットロングは▲183,889枚(+7,159枚)、大豆はロングが139,203枚(+671枚)、ショートが262,598枚(+6,555枚)、ネットロングは▲123,395枚(▲5,884枚)、小麦はロングが142,574枚(+1,479枚)、ショートが185,979枚(▲3,813枚)、ネットロングは▲43,405枚(+5,292枚)

◆本日のMRA's Eye


「中東の混乱拡大リスク」

米トランプ政権は今月からイランに対する制裁を再開、同国の原油の禁輸措置を開始、全面禁輸に踏み切った。また、ボルトン大統領補佐官は中東に空母エイブラハム・リンカーンを旗艦とする打撃群派遣を決定した。そもそもトランプ政権はオバマ政権が結んだイランとの核合意を「不十分」としており、イランに対して強硬姿勢を維持している。

トランプ政権のこれまでのやり方が強引であるため、今回の核合意の放棄は無謀、という印象を受けるが、前回の核合意では一定期間終了後に核開発を再開できる「サンセット条項」が盛り込まれているなど、実際不十分である。

しかし、合意を前提に交渉のテーブルに着ける環境が維持できることと、合意を破棄してまず交渉のテーブルに着かせることから始めなければならないのとでは、状況は明らかに前者のほうが悪くないはずだ。しかし、米政権は後者を選択した。

これを受けて原油相場は高値圏で乱高下している。これは禁輸措置の影響が意識される一方、禁輸に合意している国でも受け入れ態勢がまだ完全に整っていない(例えばイラン産原油以外の原油を処理しても装置的に問題がないか、といった調整が終わっていない)などの問題があって完全に禁輸が発動できていないことや、ロシアが減産を順守していないこと、米中の経済統計鈍化が確認されていることなどが材料だ。  しかし、今回の禁輸措置の原油相場への影響は限定されると考える。「数字の上では」イランの原油が一滴も出てこなかったとしても、OPECプラスや米国の増産でカバーができる範囲であるためだ。

ただしこれに、OPECの減産継続、イラン全面禁輸、リビア生産停止、ベネズエラ生産停止といった付加条項が加わった場合には供給は十分ではなく、原油価格は上昇することになるだろう。

さらに、その可能性はほとんどないとみてはいるものの、追い詰められたイランがホルムズ海峡封鎖オプションを発動、ないしは示唆するリスクはある。

万が一、イランがホルムズ海峡を封鎖すると、一気に世界供給の約5分の1に相当する1,800万バレルの供給が止まることになる。この場合、戦略備蓄の放出で影響が緩和されることが期待されるものの、原油価格は一時的に100ドルを超える上昇になるだろう。

また、影響が大きいため、封鎖を示唆する行動をとるだけで原油価格にはプラスに作用する。後はその可能性をどの程度見積もるかに依拠する。

しかし、イランの制裁リスクは原油価格の高騰だけにとどまらない可能性があることには十分注意を払う必要がある。

米国はトランプ政権になってから、過剰にイスラエルに肩入れしている。これは、1.来年の大統領選挙を控えたユダヤ人票の獲得、2.トランプ大統領自身の宗教観、が強く影響していると考えられる。

特に2.についてはトランプ大統領の娘婿であるクシュナー氏、並びにその嫁のイヴァンカ氏はともにユダヤ教徒である。

「お金がかかる」ということで基本的にはどこの国も戦争を積極的に考えてはいない、ということは全ての前提となる。しかし、この数ヵ月で、イスラエルでは極右のネタニヤフが選挙戦で勝利、「ゴラン高原はユダヤ人の土地」「ヨルダン川西岸の入植地のユダヤ人の主権を認める」といった、パレスチナを強く刺激する政策を公約としている。

これまでのネタニヤフの行動を見るに、米国のサポートを得てこれらの公約を実行に移す可能性は高い。これに反発するイランの出先の基地である、シリアのイラン基地をイスラエルが大規模攻撃する可能性もある(すでに攻撃は実施)。

そしてこの場合、宗教的に対立し、かつ、中東での覇権を争うサウジアラビアが参戦する可能性も排除できない。ホルムズ海峡閉鎖リスクはほぼないと見るが、この場合にはイランが最後の手段として海峡封鎖に踏み切る可能性はないわけではない。

仮にイランとサウジアラビア、イスラエルの衝突があった場合、多数の難民が欧州に流入、すでに英国のEU離脱で混乱し、5月の議会選挙や財政赤字問題を巡って対立が激しくなっている、イタリア・フランスの関係が決定的に悪化する可能性も出てくる。この場合、世界経済を大きく下押しすることになるだろう。

◆主要ニュース


・Q119日本実質GDP速報 前期比+0.5%(前期確定+0.4%)、前期比年率+2.1%(+1.6%)
 GDPデフレータ 前年比+0.2%(▲0.3%)
 民間消費支出 前期比▲0.1%(+0.2%)
 民間住宅+1.1%(+1.4%)
 民間企業設備投資▲0.3(+2.5%)
 公的需要+0.2%(+0.7%)

・3月日本鉱工業生産改定  前月比▲0.6%(速報比+0.3%、前月改定+0.7%)、前年比▲4.3%(+0.3%、▲1.1%)
 出荷▲1.3%(▲0.7%、+1.6%)、▲4.0%(▲0.7%、▲0.3%)
 在庫+1.4%(▲0.2%、+0.4%)、+0.2%(▲0.2%、+1.4%)

・4月日本コンビニエンスストア売上高 前年比+1.3%(前月±0.0%)

・3月ユーロ圏経常収支季節調整済 247億ユーロの黒字(前月改定 279億ユーロの黒字)

・4月独生産者物価指数 前月比+0.5%(前月▲0.1%)、前年比+2.5%(+2.4%)

・4月シカゴ連銀製造業活動 ▲0.45(前月 0.05)

・クラリダFRB副議長(投票権あり・中間派)、「米経済は当局の2つの目標近辺で推移。」

・フィラデルフィア連銀ハーカー総裁(投票権なし・中間派)、「資産バブルのリスクを懸念。」

・セントルイス連銀ブラード総裁(投票権あり・ハト派)、「トランプ大統領が金利についてコメントすることに意外感はない。大統領が過去に携わっていた不動産業では金利は極めて重要だから。」

・米トランプ大統領、「中国は我々ほどうまくやっていない。対中関税の引き上げで企業が生産拠点を中国からベトナムなど他のアジア諸国に移しており、中国との合意は五分五分の合意にはなり得ない。」

・欧州商業会議所、「中国の欧州企業に対する技術移転強要が増加。」

・インド下院選、モディ首相率いる与党連合の勝利を出口調査が示唆。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・米トランプ大統領、「イランに核兵器を保有させない。イランが戦争を望むなら終わりだ。」

・バグダッドの米大使館近くで爆発。ロケット砲が撃ち込まれる。

・サウジアラビア ジュベイル外相、「サウジアラビアは戦争を望まないが、イランが開戦を決めるなら力と決意を以って応じる。」

・サウジアラビア ファリハ石油相、「イランがどれほどの原油を生産し、輸出しているか誰もわからない。恐らくイランは原油をイラン産のものではないとして輸出を継続しているとみられ、そのためにアナリストが予想しているほど需給がひっ迫していない。」

・OPECとOPECプラス、会合を7月上旬に変更することを検討。

・イラン、濃縮ウランの製造を4倍に拡大。

・ホワイトハウス、パレスチナの経済成長に向けた方策を議論する国際会議を、バーレーンで6月25日~26日に開催へ。

【メタル】
・習近平、レアアースの関連施設を視察、対米交渉に利用との観測。

・ザンビア政府、インド ヴェダンタ保有のコンコラ銅山の資産没収を通知。

・IAI、4月の世界アルミ生産量、前月比ほぼ変わらずの17万3,400トン/日(前月17万3,500トン/日)。前年比では▲1.8%。中国の生産が前年比▲2.2%と減少したことによる。

・ベネズエラ、制裁の中金準備、5億7,000万ドル分を販売。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.TGE小豆 ( 穀物 )/ +4.40%/ +17.12%
2.インド・センセックス ( 株式 )/ +3.75%/ +9.11%
3.CBTオレンジジュース ( その他農産品 )/ +3.62%/ ▲19.90%
4.NYB綿花 ( その他農産品 )/ +2.91%/ ▲5.94%
5.CBT小麦 ( 穀物 )/ +2.85%/ ▲4.97%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
68.CME木材 ( その他農産品 )/ ▲3.06%/ ▲5.53%
67.LMEアルミ 3M ( ベースメタル )/ ▲2.29%/ ▲3.43%
66.ICEガスオイル ( エネルギー )/ ▲1.86%/ +26.24%
65.NYM RBOB ( エネルギー )/ ▲1.45%/ +52.42%
64.LME鉛 3M ( ベースメタル )/ ▲1.04%/ ▲10.40%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :25,679.90(▲84.10)
S&P500 :2,840.23(▲19.30)
日経平均株価 :21,301.73(+51.64)
ドル円 :110.04(▲0.04)
ユーロ円 :122.86(+0.03)
米10年債利回り :2.42(+0.02)
独10年債利回り :▲0.09(+0.02)
日10年債利回り :▲0.04(+0.01)
中国10年債利回り :3.26(+0.01)
ビットコイン :7,970.69(+864.38)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :22.99(▲0.2)
エネルギー :20.99(▲1.17)
ベースメタル :18.49(+0.06)
貴金属 :19.95(▲0.01)
穀物 :21.91(+0.36)
その他農畜産品 :27.10(▲0.18)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :19.36(▲2.26)
Brent :17.95(▲2.86)
米天然ガス :24.15(▲0.04)
米ガソリン :23.76(▲1.82)
ICEガスオイル :23.23(▲0.05)
LME銅 :14.89(▲0.53)
LMEアルミニウム :15.64(+0.36)
金 :21.01(+0.73)
プラチナ :20.34(+0)
トウモロコシ :25.79(▲0.23)
大豆 :21.01(+0.73)

【エネルギー】
WTI :63.20(+0.44)
Brent :72.09(▲0.12)
Oman :71.42(▲0.68)
米ガソリン :201.76(▲2.97)
米灯油 :207.61(▲1.94)
ICEガスオイル :644.75(▲12.25)
米天然ガス :2.67(+0.04)
英天然ガス :30.60(+0.77)

【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :72.09(▲0.12)
SPO380cst :414.61(▲0.74)
SPOケロシン :83.70(▲0.64)
SPOガスオイル :83.80(▲0.61)
ICE ガスオイル :86.54(▲1.64)
NYMEX灯油 :207.86(▲0.56)

【貴金属】
金 :1277.89(+0.36)
銀 :14.47(+0.07)
プラチナ :814.43(▲4.46)
パラジウム :1333.82(+18.72)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :6,011(▲33:26C)
亜鉛 :2,556(▲52:149.5B)
鉛 :1,810(▲14:13C)
アルミニウム :1,820(▲16:33.5C)
ニッケル :11,900(▲160:15B)
錫 :19,350(▲125:325B)
コバルト :34,500(±0.0)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :6033.50(▲23.50)
亜鉛 :2573.00(▲21.00)
鉛 :1801.50(▲19.00)
アルミニウム :1789.50(▲42.00)
ニッケル :11985.00(▲15.00)
錫 :19470.00(▲5.00)
バルチック海運指数 :1,040.00(+8.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :97.81(+0.09)
NYMEX鉄鉱石 :96.38(+0.04)
NYMEX原料炭スワップ先物 :208.5(±0.0)
上海鉄筋直近限月 :3,928(▲23)
上海鉄筋中心限月 :3,775(+3)
米鉄スクラップ :321(+1.00)

【農産物】
大豆 :831.75(+10.00)
シカゴ大豆ミール :297.30(+3.00)
シカゴ大豆油 :27.50(+0.28)
マレーシア パーム油 :休場( - )
シカゴ とうもろこし :389.00(+5.75)
シカゴ小麦 :478.25(+13.25)
シンガポールゴム :休場( - )
上海ゴム :11985.00(+55.00)
砂糖 :11.62(+0.07)
アラビカ :88.25(+0.90)
ロブスタ :1314.00(+33.00)
綿花 :67.91(+1.92)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :91.75(▲0.63)
シカゴ生牛 :111.35(+0.08)
シカゴ飼育牛 :134.15(▲0.38)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。