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景気への懸念強まり景気循環系商品は総じて軟調~中東危機懸念も重石
  • MRA商品市場レポート for PRO

2019年6月17日 第1553号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「景気への懸念強まり景気循環系商品は総じて軟調~中東危機懸念も重石」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品価格はその他の農産品が堅調な推移となり、その他の商品は総じて軟調な推移となった。

中国の経済統計が予想を下回り、より減速したことに加え、ホルムズ海峡でのタンカー攻撃の影響を受けたリスク回避のドル高圧力がかかったこと、期待インフレ率の低下を受けた実質金利の上昇で、ドル高が進行したため。

昨日もシカゴ木材は上昇している。引き続きカナダ生産者の生産能力削減決定が価格を押し上げている(詳しくは2019年6月12日の市場動向総括をご参照ください)。

【本日の価格見通し総括】

週明け月曜日は目立った手がかり材料に乏しい中、米中問題の難航と金融緩和観測の綱引きとなり、軟調地合いの中総じて方向感が出にくい展開になると予想する。

来週の大きな材料はFOMCであり、経済見通しに加えてパウエルFRB議長の記者会見も予定されている。ポイントは、7月以降の利下げに関して何かしら言及するか否か。

市場はすでに年3回の利下げを織り込みつつあり、利下げをにおわせる発言が出てこなければ、あるいは市場の期待以上にハト派ではなかった場合、特に株価の下落を通じてリスク資産価格に下押し圧力がかかることになる。

そのほか、英国保守党の党首選も来週の注目材料だ。下馬評通りであれば強硬離脱派(だったはずの)ジョンソン元外相が勝利する見込みだが、「秩序ある離脱を望む」といった趣旨の発言も出始めており、そもそも世論を巻き込んで首相になりたかっただけなのではないか、と見られても仕方がない。

ただ、だれが党首になるにせよ、英議会下院が機能不全になっていることは変わりなく、ハードブレグジットの可能性は高い。

【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】

週末発表された中国の重要統計(固定資産投資、工業生産、小売売上高、不動産投資)は、市場予想を下回るさえない内容となった。

工業生産は、市場予想が前年比+6.1%だったのに対して+5.0%(前月+5.4%)と悪化、年初来も+6.0%(+6.1%、+6.2%)と大幅に減速した、米中貿易戦争の影響で輸出や国内の生産活動が鈍化している可能性が高い。

固定資産投資も年初来累計で前年比+5.6%(1-4月期+6.1%)と大幅に減速、さらに公的部門+7.2%(+7.8%)、民間部門+5.3%(+5.5%)共に減速している。

不動産投資は政府の緩和策の影響もあって高い伸びを維持はしたが、それでも前年比+11.2%(1-4月期+11.9%)と減速した。

一方で小売売上高は+8.1%(+8.0%、+8.0%)、単月ベースでは+8.6%(+8.1%、+8.0%)と伸びが回復している。

これらのことは、中国市場がルイスの転換点(工業化の過程で農村部の労働力が底をつくこと)を迎え、個人所得の増加に伴い、徐々に生産国から消費国にシフトしていることを示唆している。

つまり、十分な中間所得者層の拡大がないままに、消費国に移行しつつあるということである。この局面でさらに製造業の流出が加速しかねない米国の制裁は、強制的に中所得国の罠に陥れるものであり、中国も正念場である。

今のところG20で両国首脳が面談する可能性は低く、G20以降、再び景気への悲観論が強まり、景気循環銘柄に下押し圧力がかかるというのがメインシナリオになりつつある。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

(マクロ要因)

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標再びの減速(価格下落要因)。

・世界景気の減速観測。IMFは2019年の経済見通しを引き下げ(+3.5%→+3.3%)ており、米中対立の激化があった場合には▲0.5%程度の引き下げリスクも視野に入れている。リスク資産価格に対して下向きのリスク。

・FRBの利下げの可能性が再び高まる(トランプ大統領があからさまに要求を始めており、米中通商戦争の行方次第ではあり得る状況に)。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q119の中国GDPは前年比+6.4%、前期+6.4%と市場予想の+6.3%を上回りやや減速懸念が後退)。

※中国は地方政府の資金調達規制を実質緩和。

・景気減速下での原油価格高止まりは、消費国から生産国への所得移転を通じて景気の下押し要因に。また、リスク回避のドル高進行も価格上昇を抑制。

・2020年からインドが人口ボーナス期入りすることによる、構造的な需要の増加は中長期的な価格の上昇要因。

(特殊要因)

・米中通商協議がほぼ決裂状態にあることにより世界経済が減速する場合(下落要因)。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・中東情勢の悪化を受けた域内景気の混乱と、それを受けた欧州景気への悪影響拡大(下落要因)

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。とりあえず10月末を期限として問題先送りしたが、メイ首相退陣、ハードブレグジット推進派の台頭によってよりそのリスクは高まる(下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

(投機・投資要因)

・米利下げ観測の高まりで長短金利逆転状況が解消し、金融株を中心に株が上昇、リスクテイク再開で景気循環系商品価格にプラスの影響を与える場合。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油価格は続伸。ホルムズ海峡でのタンカー攻撃の影響で、地政学的なリスクが意識されたことが価格を押し上げたが、米中協議が難航していることやドル高の進行が重石となった。

【原油価格見通し】

原油価格はイランを含む中東情勢の悪化を受けて買戻しが入り、上昇余地を試す展開になると考える。ただし、米中交渉が難航していることや、循環的な景気減速懸念を受けて上値も重いと考える。

実際にさらに大きく上昇するには、具体的にホルムズ海峡で国同士の軍事衝突が起きる必要があると考えるが、今のところそこまでの対立にはならないとの見方が大勢だろう。

この状況でのOPECプラスミーティングは非常に難しい選択を迫られると考えられる。今のところ、現状の減産水準を維持(▲180万~200万バレル程度の減産を維持)がメインシナリオであるが、1.数量を明示せず判断を11月に先送り、2.米国の要請を受けて▲120万バレルの減産順守を決定、といったシナリオもあり得る。

2.は先月上旬頃のメインシナリオで現在はその可能性が後退したが、ホルムズ海峡を巡る緊張が高まって価格が上昇すれば、2.に戻る可能性はある。

なお、安倍首相とハメネイ師の会談は日本では「イランは核を作らない、持たない、使わない」の言質を得た時点で成功と報じられているが、現地メディアはハメネイ師がトランプ大統領と面談する意向がないことを強調しており、イランと日本では相当な温度差がある。

G7首脳で初めてハメネイ師と面談し、今後に向けて一歩進んだという感じがするが、本件は解決しなければ意味がなく、今回の面談を受けた先方の反応を見るに、大成功の面談ではなかったと考える。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は続落した。中国の週間輸入量が329万トンと前週の610万トンから減少したことや、発表された中国の固定遺産投資、鉱工業生産共に市場予想を下回ったことで、中国の需要減速懸念が強まったことが背景。

【石炭価格見通し】

石炭価格は夏場に向けて上昇するとみているものの、期間構造が全ゾーンコンタンゴとなったことに象徴されるように、足元の需要動向が弱まっている可能性が高く、当面下値余地を探る動きになると考える。

中国の石炭の輸入量は回復しており、過去5年のレンジを上抜けした。生産に関しては減少傾向となっているが、港湾在庫は増加するなど、需要面の弱さから総じて中国の石炭需給は緩和傾向にある可能性が高く、ファンダメンタルズは強くない。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・原油価格の上昇に伴う北米の増産継続は、需給緩和で価格の下落要因。

・景気が減速する中での減産継続は、その効果が限定されはするものの、足元の価格下落を受けてOPECプラスの協調減産は7月以降も継続(場合によると減産枠拡大)の見込みであり、一定の下支え効果をもたらす見込み。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・中国の石炭生産鈍化(4月2億9,429万トン)、輸入減少(1,564万7,172トン)にもかかわらず、港湾在庫が増加していることは国内需要の弱さを示唆(石炭)。

(特殊要因)

・ホルムズ海峡でのタンカー攻撃が定常化し始めており、武力衝突の可能性がじりじりと高まっていることは供給懸念を通じて価格の上昇要因。

・北朝鮮のミサイル発射により、制裁が継続される可能性が高まっていることは、北朝鮮からの石炭輸出(密輸)を制限し、価格の上昇要因(石炭)。

・米中情報戦争をめぐる華為技術排除の決定を受けて中国政府は豪州からの石炭輸入を規制、インドネシア炭にシフトしていることはNEWC価格の下落要因に(石炭CIF価格に対する影響は中立)。

(投機・投資要因)

・WTI・Brentともロングの減少が顕著で、同時にショートが増加している。景気への懸念と生産増加観測を意識したポジション取りに。

・逆に、景気刺激策や貿易協定の妥決、生産調整の進捗、といった価格面でのプラス材料が出た場合、このショートポジションに急速に巻き戻しが入る可能性があることはリスク。

・テクニカルには、世界の市場参加者は原油取引において「一目均衡表」を活用するようになっており、「雲のねじれ」がある7月初に、例えば中東情勢不安が顕在化したり、金融緩和が意識されるようになったり、OPECが減産幅を拡大したり、ということがあれば、7月意向、ポジションの巻き戻しで急騰リスクはあり得る。

・直近の投機筋のポジションは、WTIはロングが515,457枚(前週比 ▲23,490枚)、ショートが163,802枚(+25,023枚)、ネットロングは351,655枚(▲48,513枚)、Brentが346,066枚(前週比▲5,391枚)、ショートが54,040枚(+6,910枚)、ネットロングは292,026枚(▲12,301枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME非鉄金属価格は総じて軟調。中国の固定資産投資や鉱工業生産が懸念を上回る減速となり、最大消費国の需要減速懸念が強まったことに加え、リスク回避のドル高が進行したことが重石となった。

チュキカマタ鉱山のストライキの影響はあるが、景気減速を受けた需要面のリスクのほうが意識されているためそこまで強い買い材料にはならず。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は中国の経済対策による需要押し上げ観測と、米FRBの利下げ期待の高まり、米統計の改善で一旦売り込んでいた投機筋の買戻しが入り上昇すると考えるが、最大消費国である中国の景況感が悪化していることに加え、G20で米中首脳会談が行われない可能性が高まっていることから、上値も重いと考える。

投機の売りが積み上がり、ネット売り越しとなっているため、仮にG20での米中首脳会談が実施されたり、米国の金融緩和、LME指定倉庫在庫の減少継続があった場合、これらを材料に買戻しが入りやすい地合いにあることは事実だが、一時的な回復に留まるだろう。

なお、中国政府の経済対策の効果は年後半に顕在化する、との見方が多く価格に対するプラス効果は年末にかけてとみられる。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は再開しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCも高止まり。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

(特殊要因)

・中国政府がシャドーバンキングを含む、違法な資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは、需要面で価格の上昇要因に。

・銅の生産減少観測(環境問題によるインド、露天掘りから地下生産に変更するインドネシア、コデルコのストライキ)、ヴァーレの尾鉱ダム事故の影響による供給減少(アルミやニッケルなどに波及する可能性)。

・ブラジルの裁判所、ハイドロのAlunorteアルミナ精錬所の再稼働を許可。アルミナ価格の下落を通じてアルミ価格の下落要因に(アルミ)。

・オランダ ニルスター社の豪鉛精錬所(ポート・ピリー)停止による、供給不安(鉛)。

・LME指定倉庫在庫の減少が、LMEの倉庫運営ルール変更に伴う保管場所変更の取引の影響である場合、ルールが見直された際に再度、LME指定倉庫在庫が急増する可能性(下落要因)。

(投機・投資要因)

・5月31日付のLMEポジションは再びすべての商品でショートが積み上がり始めた。ただし、ニルスターの供給途絶などで鉛のロングは増加している。

投機筋のLME+CME銅ネット売り越し金額は▲54.1億ドル(前週▲45.8億ドル)と売り越し幅を拡大。売り越し額の増加は+18.1%に。

買い越し枚数はトン数換算ベースで▲1,444千トン(▲1,321千トン)と減少。亜鉛と錫以外はトン数ベースでネット売り越しのまま。ネット売り越しの増加率は+9.3%。

今後、総じてこれらのポジションの買戻し圧力が強まる可能性があり、テクニカルに非鉄金属価格が上昇する余地があることは留意。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップ市場は下落、原料炭スワップ先物は横ばい、中国鉄鋼製品市場は軟調な推移となった。

中国の固定資産投資、鉱工業生産が市場予想を下回り、前月から減速したことで景気減速、需要減速への懸念が強まったことが背景。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は、中国政府の公共投資促進策とサイクロン、ヴェロニカの影響による豪州からの供給不安、ヴァーレの生産が回復していないことなどを材料に、高値圏での推移になると予想。

ただし、中国の工業系の経済統計の減速感が強まっていること、米中通商戦争が長期化する可能性が高いことが上値を抑える見込み。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・直近の鉄鋼業PMIは50.0(前月52.1)と減速。生産の回復(54.5→56.0)はあったが、新規受注の落ち込みが顕著(51.7→46.7)であり、輸出向け新規受注も大きく落ち込み(48.9→45.9)。

・中国の鉄鋼製品在庫水準の高さは価格の下落要因。鉄鋼製品在庫は前週比+27.2万トンの1,156万トン(過去5年平均1,095.3万トン)と例年を上回っている。

中国の鉄鉱石在庫水準の高さは徐々に低下し、価格の下支え要因となる可能性。鉄鉱石在庫は前週比▲290万トンの1億1,870万トン(過去5年平均1億1,851.6万トン)、在庫日数は▲0.6日の24.9日(過去5年平均 28.6日)と例年の水準を下回った状態が続いている。

粗鋼生産の回復で原材料在庫が減少した形。これは鉄鋼業PMIとほぼ平仄が取れている。

・季節的に鉄鋼製品在庫の取り崩し時期であり、価格には下押し圧力がかかりやすい。

・長期的には2020年に人口ボーナス期入りするインドの需要が鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

(特殊要因)

・中国政府がシャドーバンキングを含む、違法な資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは、需要面で価格の上昇要因に。

・ヴァーレの尾鉱ダム決壊の影響が拡大し、さらに供給減少が起きた場合(自社・他社ともにあり得る)、価格の上昇要因に。

・ヴァーレの尾鉱ダム事故の影響で、今後、低品位鉱石価格にも上昇圧力がかかる公算。

(投機・投資要因)

・固有の要因は特になし。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金・銀価格は下落した。期待インフレ率の低下を受けた実質金利の上昇と、ドル高進行が背景。ただし、中東のタンカー攻撃や欧州情勢不安を受けた安全資産需要の高まりで下支えされた。

PGMは金銀価格が実質低下に伴う金銀価格の下落を受けてプラチナが水準を切り下げたが、供給懸念が再度意識されているパラジウムは、同じ排ガス触媒であるロジウムの上昇(前日比+25ドルの3,500ドル)に平仄を合わせる形で上昇している。

【貴金属価格見通し】

金価格は米中通商交渉のが難航していること、中東情勢の悪化やイタリアなどの情勢不安を材料に、安全資産需要が高まるとみられること、景気悪化を懸念した長期金利の低下が確認される中、原油が下落したとはいえ、OPECの減産期待で高値圏を維持していることが実質金利を押し下げることから、総じて底堅い推移になると考える。

銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)の上昇が金銀レシオを押し上げているため対金で割安に推移。

PGM価格は金銀価格が底堅い推移になるため堅調だが、同時に米中通商交渉が難航、対立が激化する中で株価が下押しされやすく、対金銀では割安に推移することになると予想。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・FRBの利下げ期待が市場で再び高まっていること、原油価格の高止まりは実質金利の低下を通じて金銀価格の上昇要因に(逆に利下げ期待が高まりすぎているため、期待と金融当局の判断の乖離から、7月FOMCで下落に転じる可能性も)。

・景気の先行きを懸念した株価下落とそれに伴う長期金利・実質金利の低下(金銀価格の上昇要因)。ただし、欧州の政情安定化や米中貿易戦争の合意、景況感の改善で株価が上昇した場合には金銀価格の下落要因。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト(パラジウムの上昇要因・プラチナの下落要因)。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

(特殊要因)

・米中通商交渉は難航しており、相互報復まで発展(価格の上昇要因)。知的財産権や技術の強制移転などの重要なポイントで妥結できておらず、米中の覇権争いであり長期化の見込み(価格の下支え要因)。

・米国とイランの開戦リスク。トランプ大統領はその気がなさそうだが、共和党議会はイランとの開戦に前向きな可能性。

・米国の債務上限問題の顕在化(8月~9月にデフォルトするリスク)。

・欧州議会選でのポピュリズム政党の躍進。それに伴うEU懐疑論の高まりによる域内の政情不安定化。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

(投機・投資要因)

・長期金利の低下による米長短金利の逆転が株安を誘発、リスク回避のリスク資産売り圧力が強まり、安全資産需要が高まる場合。

・銀価格は金銀在庫レシオが銀在庫の減少、ないしは金在庫の増加、あるいは両要因によって低下した場合、金銀レシオが上昇するリスク(銀価格の上昇要因)。

・金銀はロングが増加、ショートが減少し、明確に強気のポジション取りとなっている。FRBの利下げ期待が織り込まれている形。

・プラチナはロング・ショートとも減少しているがロングの解消圧力のほうが顕著。パラジウムはロングが増加、ショートが減少しており、強気のポジション取りを継続。

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが250,114枚(前週比 +9,637枚)、ショートが65,876枚(▲18,486枚)、ネットロングは184,238枚(+28,123枚)、銀が85,225枚(+8,572枚)、ショートが82,565枚(▲2,531枚)、ネットロングは2,660枚(+11,103枚)

・直近の投機筋のポジションは、プラチナはロングが47,336枚(前週比 ▲781枚)、ショートが40,384枚(▲664枚)、ネットロングは6,952枚(▲117枚)、パラジウムが12,361枚(+239枚)、ショートが2,826枚(▲113枚)、ネットロングは9,535枚(+352枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物価格は堅調な推移となった。引き続き米国の作付けの遅れが深刻な供給不足をもたらす、との見方が強く投機の買戻しが継続したと考えられる(詳しくは2019年6月13日付のMRA's Eyeをご参照ください)。

【穀物価格見通し】

穀物価格は再び買戻しが入り、上昇すると考える。米農務省の需給報告でトウモロコシの生産見通しが引き下げられたこと、作付けの遅れで大豆生産にも影響が出る可能性があること、競合飼料である小麦価格の上昇も見込まれることが背景。

ただし、米中の通商交渉が難航しており、シカゴ穀物の需要を下押しすることが上値を抑制。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・米国のトウモロコシ・大豆の生産減少観測による需給タイト化観測。

・豪州東部の大干ばつによる小麦生産の減少懸念。

・作付面積動向(トウモロコシは下落、大豆は上昇、小麦は上昇)トウモロコシ作付意向面積 9,279万エーカー(市場予想 9,127万エーカー、前年8,803万エーカー)大豆 8,462万エーカー(8,620万エーカー、8,898万エーカー)小麦 4,575万エーカー(4,688万エーカー、4,734万エーカー)

・6月の米需給報告の生産見通し トウモロコシ136億8,000万ブッシェル(前月150億3,000万Bu)大豆 41億5,000万Bu(41億5,000万Bu)小麦 19億300万Bu(18億9,700万Bu)

・6月の米需給報告の在庫見通し トウモロコシ16億7,500万ブッシェル(前月24億8,500万Bu)大豆 10億4,500万Bu(9億7,000万Bu)小麦 10億7,200万Bu(11億4,100万Bu)

・実質金利の低下に伴うドル安の進行は、シカゴ穀物の輸出競争力を改善し、需給面で価格の上昇要因に。

(特殊要因)

・米中通商交渉はほぼ戦争にまで発展(価格の下落要因)。知的財産権や技術の強制移転などの重要なポイントで妥結できておらず、米中の覇権争いであり長期化の見込み。

・米政府はブッシェル当たり大豆2ドル、トウモロコシ0.04ドル、小麦0.63ドルの補助金を供給することを検討。生産減少を食い止めるため価格の下落要因に。

・エルニーニョ現象発生による北米の増産は価格の下落要因。ただし洪水などが発生し、災害が激甚化した場合には価格の上昇要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

(投機・投資要因)

・トウモロコシはロング・ショートとも減少。ロング減少はメキシコとの通商懸念、ショートは悪天候の影響。小麦は競合飼料のトウモロコシ価格の上昇を受けて、ロング増加・ショート減少。

大豆はロング・ショートとも増加しており方向感が出難い。

・直近の投機筋のポジションは、トウモロコシはロングが447,556枚(前週比 ▲1,963枚)、ショートが208,181枚(▲17,323枚)、ネットロングは239,375枚(+15,360枚)、大豆はロングが140,432枚(+677枚)、ショートが188,101枚(+453枚)、ネットロングは▲47,669枚(+224枚)、小麦はロングが125,812枚(+6,539枚)、ショートが116,102枚(▲6,856枚)、ネットロングは9,710枚(+13,395枚)

◆本日のMRA's Eye


「銅/金レシオ」

世界のリスク資産価格の下落圧力が強まっている。循環的な景気減速に加えてIMFが懸念していた米中通商交渉が激化しているためだ。

IMFはこのままの制裁合戦が継続すれば、2020年の世界経済成長が▲0.5%、中国が▲1.0%、米国は▲0.2%下押しされると予想している。世界経済への影響は小さくない。2020年のGDP成長見通しは3.6%であるため、この前提のままであれば3.1%までの成長減速があり得る。

ちなみに原油需要の伸びと、実質GDP成長をファクターとする簡単な回帰分析を行うと、原油需要が前年比でマイナスになる世界GDP成長率は1.7%であり上記のショックがあったとしても、原油の需要は増加することになる。

しかし、世界2位の原油消費国である中国が人口ボーナス期にある中で需要が急成長した2000年代を含む分析であることから、実際はここまでの大きな経済成長の鈍化がなくとも、前年比ベースでの需要の伸びはマイナスになる可能性が高い。

また、仮に需要の伸びがマイナスにならなかったとしても、想定している需要見通しが下方修正されること、生産調整がそれほど速やかに行えないことを考えると、このリスクが顕在化する中では原油価格は急落する可能性が高い。

同じ景気循環系商品である銅の需要についても同様の分析を行うと、偶然であるがGDP成長が1.7%を下回ると需要の伸びが鈍化するという結果となった。またこれも原油と同様であるがそこまでの景気減速にならなかったとしても、期待需給バランスが緩和するため、銅価格も下落することになるだろう。

結果、金や債券などの安全資産が物色されることになる。この時、金価格を銅価格で割った「金/銅レシオ」を見てみると、2015年の景気悪化懸念が強まった時と類似している。金/銅レシオは「景気が良くなれば低下し、悪くなってリスクが意識される局面では上昇する」指標である。

同じインフレ資産であるが銅価格が急落する中、金価格が上昇し、金/銅レシオが前年比でプラスになると株価の前年比上昇率は急速に水準を切り下げることが確認されている。

リーマンショックや欧州危機、上海株ショックが顕在化した時に金/銅レシオは50%を超える上昇となった。足元は26%の上昇にとどまっているためまだ危機が発生するまでhには至らないと期待されるものの、そのリスクは徐々に高まっていると考えられる。

今後金価格の上昇が続き、銅価格の下落が続けば、各国政府・中央銀行が対策を行わなければならなくなる危機が発生する可能性は否定できない。

◆主要ニュース


・4月日本鉱工業生産改定  前月比+0.6(速報比変わらず、前月改定▲0.6%)、前年比▲1.1%(±0.0%、▲4.3%)
 出荷+1.8%(+0.1%、▲1.3%)、▲1.4%(+0.1%、▲4.0%)
 在庫±0.0%(±0.0%、+1.4%)、+1.2%(+±0.0%、+0.2%)

・1-5月期中国工業生産 前年比+6.0%(1-3月期+6.2%)、5月+5.0%(前月+5.4%)

・1-5月期中国固定資産投資 前年比+5.6%の21兆7,555億元(1-4月期前年比+6.1%の15兆5,747億元)
 公的 +7.2%(+7.8%)、民間 +5.3%(+5.5%)

・1-5月期中国小売売上高 前年比+8.1%の16超1,332億元(1-4月期+8.0%の12兆8,376億元)
 5月+8.6%の3兆2,956億元(前月+7.2%の3兆586億元)

・1-5月期中国不動産開発投資 前年比+11.2%の4兆6,075億元(1-4月期+11.9%の3兆4,217億元)

・5月インド貿易収支 ▲153億6,000万ドルの赤字(前月▲153億3,000万ドルの赤字)
 輸出 前年比+0.5%(±0.0%)、輸入 +4.3%(+4.5%)

・5月独卸売物価指数 前月比+0.3%(前月+1.6%)、前年比+1.6%(+2.1%)

・5月米小売売上高 前月比 +0.5%(前月+0.3%)
 除く自動車+0.5%(+0.5%)
 除く自動車ガソリン+0.5%(+0.3%)
 除く自動車・建材+0.5%(+0.4%)

・5月米鉱工業生産 前月比+0.2%(前月改定▲0.5%)、設備稼働率 78.1%(77.9%)

・6月米ミシガン大学消費者マインド指数速報 97.9(前月100.0)
 現況指数 112.5(110.0)
 先行指数 88.6(93.5)
 1年期待インフレ率 2.6%(2.9%)
 5年期待インフレ率 2.2%(2.6%)

・4月米企業在庫 前月比+0.5%(前月±0.0%)、企業売上高▲0.2%(+1.3%)、売上高在庫比率 1.39ヵ月(1.38ヵ月)

 製造業在庫+0.5%(+0.1%)、製造業売上高▲0.5%(+0.2%)、売上高在庫率1.37ヵ月(1.36ヵ月)

 小売在庫+0.5%(▲0.3%)、小売売上高+0.3%(+1.9%)、小売売上高在庫率 1.45ヵ月(1.45ヵ月)

 卸売在庫+0.8%(±0.0%)、卸売売上高▲0.4%(+1.8%)、在庫率 1.34ヵ月(1.33ヵ月)

・トランプ大統領、「G20に習近平国家主席が姿を現せば、それは良いことだ。一方、現れなかった場合は、毎月わが国に数十億ドルが入ってくる。中国はいずれ取引に応じる。そうするしかないからだ。何千億ドルも負担するのだから。」

・米政府高官、「香港の逃亡犯条例改正への抗議デモに中国が直接介入するなどした場合、米国が制裁を検討する可能性がある。」

・インド 米国製品に報復関税。週明けから適用へ。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・ベイカー・ヒューズ週間米国石油リグ稼働数788(前週比▲1)、 ガスリグ 181(前週比▲5)。

・IEA月報 世界石油需要 Q119:98.7、Q219:100.0、Q319:101.4、Q419:101.2、2019:100.3
 非OPEC供給(含むNGLs) Q119:63.6、Q219:64.0、Q319:65.0、Q419:65.7、2019:64.6
 Call on OPEC Q119:35.1、Q219:36.0、Q319:36.4、Q419:35.5、2019:35.7

※需要見通し下方修、生産見通し上方修正でCall on OPEC減少。

・米国、イラン船舶が不発の機雷を除去しているとされる動画を配布。

【メタル】
・インドネシアの洪水発生で、ニッケルの主要生産地に被害。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.CBTエタノール ( エネルギー )/ +3.94%/ +27.37%
2.CME木材 ( その他農産品 )/ +3.26%/ +16.09%
3.NYM米天然ガス ( エネルギー )/ +2.67%/ ▲18.81%
4.CBTトウモロコシ ( 穀物 )/ +2.49%/ +20.80%
5.SHFニッケル ( ベースメタル )/ +1.78%/ +13.97%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
68.LMEアルミ 3M ( ベースメタル )/ ▲1.57%/ ▲5.13%
67.CBT大豆油 ( 穀物 )/ ▲1.46%/ +0.22%
66.LIFFEロブスタ ( その他農産品 )/ ▲1.44%/ ▲9.43%
65.ICEアラビカ ( その他農産品 )/ ▲1.39%/ ▲5.74%
64.NYB綿花 ( その他農産品 )/ ▲1.33%/ ▲8.67%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :26,089.61(▲17.16)
S&P500 :2,886.98(▲4.66)
日経平均株価 :21,116.89(+84.89)
ドル円 :108.56(+0.18)
ユーロ円 :121.67(▲0.54)
米10年債利回り :2.08(▲0.01)
独10年債利回り :▲0.26(▲0.01)
日10年債利回り :▲0.13(▲0.02)
中国10年債利回り :3.25(▲0.02)
ビットコイン :8,452.83(+191.78)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :25.24(▲0.52)
エネルギー :34.20(▲0.07)
ベースメタル :19.74(▲1.09)
貴金属 :15.14(▲0.81)
穀物 :25.56(▲0.3)
その他農畜産品 :26.50(▲0.47)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :39.84(▲0.54)
Brent :38.59(+0.64)
米天然ガス :26.94(+0.34)
米ガソリン :33.16(▲1.57)
ICEガスオイル :29.24(+0.78)
LME銅 :14.31(▲1.15)
LMEアルミニウム :14.31(▲1.19)
金 :22.24(+0.12)
プラチナ :18.22(▲0.84)
トウモロコシ :31.03(▲0.06)
大豆 :22.24(+0.12)

【エネルギー】
WTI :52.51(+0.23)
Brent :62.01(+0.70)
Oman :60.90(+0.55)
米ガソリン :173.25(+1.26)
米灯油 :182.94(+2.28)
ICEガスオイル :564.00(+6.00)
米天然ガス :2.39(+0.06)
英天然ガス :28.31(▲0.20)

【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :62.01(+0.70)
SPO380cst :356.09(+3.86)
SPOケロシン :74.24(+0.86)
SPOガスオイル :73.99(+0.79)
ICE ガスオイル :75.70(+0.81)
NYMEX灯油 :183.74(+0.94)

【貴金属】
金 :1341.70(▲0.61)
銀 :14.88(▲0.03)
プラチナ :804.91(▲7.76)
パラジウム :1468.58(+19.28)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :5,828(▲3:22C)
亜鉛 :2,463(▲30:112.5B)
鉛 :1,877(▲18:5.5B)
アルミニウム :1,771(▲17:33.5C)
ニッケル :11,955(▲35:60C)
錫 :19,400(+25:150B)
コバルト :28,000(±0.0)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :5807.50(▲56.00)
亜鉛 :2455.50(▲20.50)
鉛 :1873.00(▲19.50)
アルミニウム :1758.00(▲28.00)
ニッケル :11920.00(+75.00)
錫 :19215.00(▲120.00)
バルチック海運指数 :1,062.00(▲18.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :105.58(▲0.91)
NYMEX鉄鉱石 :104.33(▲1.96)
NYMEX原料炭スワップ先物 :196(±0.0)
上海鉄筋直近限月 :3,730(▲30)
上海鉄筋中心限月 :3,785(+11)
米鉄スクラップ :267(▲3.00)

【農産物】
大豆 :896.75(+8.75)
シカゴ大豆ミール :323.50(+1.80)
シカゴ大豆油 :27.61(▲0.41)
マレーシア パーム油 :2000.00(+11.00)
シカゴ とうもろこし :453.00(+11.00)
シカゴ小麦 :538.50(+3.00)
シンガポールゴム :200.40(+0.50)
上海ゴム :11865.00(±0.0)
砂糖 :12.75(±0.0)
アラビカ :96.00(▲1.35)
ロブスタ :1364.00(▲20.00)
綿花 :65.94(▲0.89)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :79.38(+0.15)
シカゴ生牛 :108.78(▲0.28)
シカゴ飼育牛 :135.53(▲0.70)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。