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米中報復関税合戦を受けて総じて軟調
  • MRA商品市場レポート for PRO

2019年5月14日 第1530号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「米中報復関税合戦を受けて総じて軟調」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品価格は穀物セクターの一部や債券、貴金属の一角などの非景気循環銘柄が物色される一方、景気循環銘柄が広く売られた。

米中貿易交渉がほぼ決裂、話し合いは継続する方針ではあるものの、米中の報復関税引き上げ合戦が始まったことで世界景気への懸念が強まったことが背景。やはりムニューシン財務長官の発言は楽観と希望的観測を含むものだった。

【本日の価格見通し総括】

本日の商品価格は昨日の下落幅が大きかったことから、一時的に買戻しが入るものの、米中貿易戦争の激化を受けた景気への懸念が根強く、市場参加者のリスク回避姿勢が強まることから最終的に前日比マイナスに転じると予想。

一方で債券や貴金属、貿易交渉の対象とならない農産品の一角などは買いが入る展開が予想される。

【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】

週末のこのコラムで、米中貿易交渉が合意に至る、と考えるのは早計ではないだろうか?と指摘したがどうもそのような展開になってきた。

市場、特に株式市場は事態を楽観して上昇してきたが、米国がすべての中国からの輸入品に対して関税を引き上げる方針を示すに至り、米中の溝が極めて深くなっていることが明らかになった。

忘れてはいけないのは、この争いは米中の今後50年を決める覇権争いであり、核兵器を保有する国同士の「武器を用いない戦争」であることだ。

そして関税引き上げは米国民が負担するものであり、中国側が負担するものではないことも注意しなければならない。仮に第4弾が実施された場合、iphoneなどを含む多くの商品の関税は、米国民が負担することになる。

しかし、仮にそうであったとしても、現在の景況感や雇用情勢を見るに、米国側が決定的に困ってしまう状況にはない。もちろん、ISM製造業指数などの先行指標を見ると、米景気が減速する可能性は高いが、一致指標である個人消費や賃金等はまだ上昇基調にある。

よって、年内ぐらいはまだ中国との交渉を続け(あるいは再制裁のカードを保有する形で、一時的に関税を引き下げる)、来年の大統領選挙に向けて、制裁を解除し、国内の支持率を高めるというシナリオがメインシナリオである。

少なくとも米国が今回の制裁で果実を得ていないため、それまでは制裁が続くと考えておくべきだろう。その場合、中国側も報復を行うため、やはり景気にはマイナスに作用しよう。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

(マクロ要因)

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標再びの減速(価格下落要因)。

・世界景気の減速観測。IMFは2019年の経済見通しを引き下げ(+3.5%→+3.3%)ており、先行きの見通しのリスクも下向き。

・FRBの利下げの可能性が再び高まる(ただし前回のFOMCでは否定している。インフレ系資産価格の上昇要因)。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q119の中国GDPは前年比+6.4%、前期+6.4%と市場予想の+6.3%を上回りやや減速懸念が後退)。

・景気減速下での原油価格高騰は、消費国から生産国への所得移転を通じて景気の下押し要因に。また、リスク回避のドル高進行も価格上昇を抑制。

・2020年からインドが人口ボーナス期入りすることによる、構造的な需要の増加は中長期的な価格の上昇要因。

(特殊要因)

・米政権は対中関税引き上げを表明(景気循環銘柄価格の下落要因)。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気後退など)によるリスク回避の動きの強まり。

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク(とりあえず5月末、10月末を期限として問題先送り)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速。

(投機・投資要因)

・長期金利の低下による米長短金利の逆転が株安を誘発、リスク回避のリスク資産売り圧力が強まる場合。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油価格は上昇した後に下落。サウジアラビアのタンカーが攻撃を受けたとのニュースを受けて大きく上昇したが、中国の米国に対する報復関税を受けて株価が急落をしたことが材料で水準を切下げた。

【原油価格見通し】

原油価格は高値圏を維持する展開を予想。

米国が中東に打撃・空爆戦力派遣を決定、イランも核開発の一部再開を通知するなど、域内情勢が不安定化するとの見方が強まる一方、イランに対する制裁があっても輸入国とも国内の製油所の能力などから直ちに禁輸を行えるわけではないこと、仮に完全に減産が行われても、数字の上では供給は足りること、ロシアが減産を順守していないことといった供給面の不安が後退していることに加え、各国PMI、米ISM製製造業指数の減速といった下落要因が意識されるため。

ただし、イランに対する制裁が行われる以上、イランの報復懸念に伴うホルムズ海峡封鎖の可能性や、イスラエルに対する米国の過剰な肩入れが域内の供給不安を意識させること、ベネズエラ・リビアの供給不安から、大幅な調整にはならない見込み。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は小幅に続落。中国政府が米国に対して報復関税を課すことを決定したことで景気への懸念が強まったことが背景。

【石炭価格見通し】

石炭価格は季節的な需要期に徐々に入りつつあること、北朝鮮への制裁継続から、じりじりと水準を切り上げる展開になると予想する。本格的な上昇は8月頃。その後季節的な調整の後、11月にかけて水準を切り下げる展開を予想。

しかし、足元は世界景気への懸念が根強いことから一時的に下値余地を探る動きになると予想。下値の目処は80ドル程度。

また、中国による豪州炭の輸入規制(華為技研問題の影響)の影響でインドネシア炭にシフトしていることは逆に、上値を抑えると考えられる(日本が輸入する石炭価格CIFへの影響は中立)。米国の中国制裁強化も価格の上値を抑える公算。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・原油価格の上昇に伴う北米の増産継続は、需給緩和で価格の下落要因。

・OPECプラスの協調減産は9月末で終了する可能性が高まっており、足元の協調減産は価格の上昇要因だが、年後半は下落要因に。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

(特殊要因)

・米国のイランに対する制裁強化・ベネズエラ・リビアの情勢悪化に伴う供給途絶懸念は価格の上昇要因。

・米国のイスラエルへの過剰な肩入れと、イスラエルネタニヤフ首相の5選達成による、周辺産油国への武力行使の可能性が高まることは原油価格の上昇要因に。

・北朝鮮のミサイル発射により、制裁が継続される可能性が高まっていることは、北朝鮮からの石炭輸出(密輸)を制限し、価格の上昇要因(石炭)。

・米中情報戦争をめぐる華為排除の決定を受けて中国政府は豪州からの石炭輸入を規制、インドネシア炭にシフトしていることはNEWC価格の下落要因に(石炭CIF価格に対する影響は中立)。

(投機・投資要因)

・直近の投機筋のポジションは、WTIはロングが616,789枚(前週比 ▲21,509枚)、ショートが122,453枚(+8,258枚)、ネットロングは494,336枚(▲29,767枚)、Brentが434,082枚(前週比+494枚)、ショートが27,907枚(▲1,312枚)、ネットロングは406,175枚(+1,806枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME非鉄金属価格は総下落した。米国の制裁に対して中国が報復を決定したことで、中国景気の先行きが懸念されたことが背景。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は一旦下値余地を探る動きになると考える。米中貿易交渉が難航、両国が関税を引き上げたことで、景気への影響が懸念されることが価格を下押しするため。

また、中国のファイナンス関連統計の減速に加え、各国の製造業PMIも減速していることから基本的には軟調に推移しやすい。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は再開しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCも高止まり。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

(特殊要因)

・銅の生産減少観測(環境問題によるインド、露天掘りから地下生産に変更するインドネシア)、ヴァーレの尾鉱ダム事故の影響による供給減少(アルミやニッケルなどに波及する可能性)。

・LME指定倉庫在庫の減少が、LMEの倉庫運営ルール変更に伴う保管場所変更の取引の影響である場合、ルールが見直された際に再度、LME指定倉庫在庫が急増する可能性(下落要因)。

(投機・投資要因)

・5月3日付のLMEポジション動向はまちまち。おおむねロング・ショートともポジションを落としていく動きに変わりはないが、鉛と錫はロングの減少とショートの増加が確認されており弱気のポジション取りに。

その他は亜鉛のロング解消の動きが顕著だが、銅・アルミ・ニッケルはショート解消圧力が強いため、結果ネットロングを拡大している。

投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は5.7億ドル(前週1.2億ドル)と減少。上昇率は+360.9%。

買い越し枚数はトン数換算ベースで▲53千トン(▲123千トン)と増加、増加率は+56.7%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップ市場は小幅下落、原料炭スワップ先物は上昇、中国鉄鋼製品価格はまちまちだった。

ブラジルのヴァーレの鉱山停止が需給を逼迫させているが、米中貿易交渉が相互報復まで発展しており、両国の景気への懸念が根強いことが背景。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は高値圏でもみ合うものと考える。ヴァーレのブルクツ鉱山が再び稼働停止になったことで、鉄鉱石の供給懸念が強まる一方、米中貿易交渉の難航に伴う景気への懸念が上値を抑えるため。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・中国の鉄鋼製品在庫水準の高さは価格の下落要因。鉄鋼製品在庫は前週比▲50.9万トンの1,230万トン(過去5年平均1,231.9万トン)と例年をやや下回った。

・中国の鉄鉱石在庫水準の高さは価格を下押し。鉄鉱石在庫は前週比▲25万トンの1億3,350万トン(過去5年平均1億1,937万トン)、在庫日数は▲0.1日の34.7日(過去5年平均 30.6日)と例年の水準を上回る。

・季節的に鉄鋼製品在庫の取り崩し時期であり、価格には下押し圧力がかかりやすい。

・長期的には2020年に人口ボーナス期入りするインドの需要が鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

(特殊要因)

・ヴァーレの尾鉱ダム決壊の影響が拡大し、さらに供給減少が起きた場合(自社・他社ともにあり得る)、価格の上昇要因に。

(投機・投資要因)

・固有の要因は特になし。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金・銀価格は上昇した。米中貿易戦争の激化を受けて株価が急落、それに合わせて米国債が物色される中で実質金利が低下したことが材料。

また、ホルムズ海峡近辺でサウジアラビア船が攻撃を受けたことも、安全資産需要を高めた。

PGMは金銀価格が上昇したものの、株価の急落を受けて水準を切下げた。

PGM現物の需給バランスを見る上での指標となるロジウムの価格は2,925ドルと前日から▲10ドルとなった。

【貴金属価格見通し】

金価格は上昇余地を探る展開を予想。米中貿易戦争がそう簡単に解決せず、株に調整圧力がかかる展開が予想される上、中東情勢が緊迫化していること、それに伴う原油価格の上昇が実質金利を押し下げるため。ただし、米金融政策がややタカ派(過剰なハト派観測が後退)よりになることが上値を抑えると予想。

銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)の上昇が金銀レシオを押し上げているため対金で割安に推移。

一方、欧州の政情不安、米国の債務上限問題、中東情勢の混乱懸念(イスラエル・イランを中心に)が安全資産需要を高めるため、リスクプレミアムが乗る形で価格を押し上げへ。

PGM価格は金銀価格が上昇余地を探る展開が予想されることから、堅調だが、同時に米中貿易交渉の難航などを背景に景気の先行きを懸念して株価の上値も重いことから、対金銀では水準を切下げる展開を予想。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・FRBの利上げ打ち止め、原油価格の高止まりは実質金利の低下を通じて金銀価格の上昇要因に。

・景気の先行きを懸念した株価下落とそれに伴う長期金利・実質金利の低下(金銀価格の上昇要因)。ただし、欧州の政情安定化や米中貿易戦争の合意、景況感の改善で株価が上昇した場合には金銀価格の下落要因。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト(パラジウムの上昇要因・プラチナの下落要因)。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

(特殊要因)

・米中貿易交渉は難航しており、相互報復まで発展(価格の上昇要因)。知的財産権や技術の強制移転などの重要なポイントで妥結できておらず、米中の覇権争いであり長期化の見込み(価格の下支え要因)。

・米国の債務上限問題の顕在化(8月~9月にデフォルトするリスク)。

・欧州の政治混乱(英国のEU離脱、伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化など)による安全資産需要の増加。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

(投機・投資要因)

・長期金利の低下による米長短金利の逆転が株安を誘発、リスク回避のリスク資産売り圧力が強まり、安全資産需要が高まる場合。

・銀価格は金銀在庫レシオが銀在庫の減少、ないしは金在庫の増加、あるいは両要因によって低下した場合、金銀レシオが上昇するリスク(銀価格の上昇要因)。

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが185,801枚(前週比 +8,526枚)、ショートが110,390枚(▲666枚)、ネットロングは75,411枚(+9,192枚)、銀が77,346枚(+226枚)、ショートが78,303枚(+3,319枚)、ネットロングは▲957枚(▲3,093枚)

・直近の投機筋のポジションは、プラチナはロングが45,857枚(前週比 ▲2,331枚)、ショートが17,164枚(+2,298枚)、ネットロングは28,693枚(▲4,629枚)、パラジウムが11,880枚(▲855枚)、ショートが3,900枚(+573枚)、ネットロングは7,980枚(▲1,428枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物価格は大豆が米中貿易戦争の激化懸念と週間輸出統計での輸出減少(60万3,000トン→51万3,380トン)を受けて下落、トウモロコシ、小麦は輸出増加(トウモロコシ 97万6,840トン→100万760トン、小麦 53万7,490トン→84万2,420トン)で水準を切り上げた。

【穀物価格見通し】

穀物価格はトウモロコシは、貿易戦争激化を受けた需給見通しの下方修正観測から軟調推移すると考える。

ただし、トウモロコシ・大豆・春小麦とも作付けの進捗に遅れがみられており供給懸念が意識されていることが価格を下支え。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・米国のトウモロコシ・大豆の生産増加観測による需給緩和観測。

・米国の作付けの遅れに伴う需給タイト化観測。

・作付面積動向(トウモロコシは下落、大豆は上昇、小麦は上昇)トウモロコシ作付意向面積 9,279万エーカー(市場予想 9,127万エーカー、前年8,803万エーカー)大豆 8,462万エーカー(8,620万エーカー、8,898万エーカー)小麦 4,575万エーカー(4,688万エーカー、4,734万エーカー)

・5月の米需給報告の在庫見通し

トウモロコシ24億8,500万ブッシェル(前穀物年度20億3,500万Bu)大豆 9億7,000万Bu(8億9,500万Bu)小麦 11億4,100万Bu(10億8,700万Bu)

・実質金利の低下に伴うドル安の進行は、シカゴ穀物の輸出競争力を改善し、需給面で価格の上昇要因に。

(特殊要因)

・米中貿易交渉は相互報復まで発展(価格の下落要因)。知的財産権や技術の強制移転などの重要なポイントで妥結できておらず、米中の覇権争いであり長期化の見込み。

・エルニーニョ現象発生による北米の増産は価格の下落要因。ただし洪水などが発生し、災害が激甚化した場合には価格の上昇要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

(投機・投資要因)

・再び主要穀物のショートポジションが大きく積み上がっている。これらの巻き戻し(買戻し)圧力が播種の状況によって強まる可能性があることは留意。

・直近の投機筋のポジションは、トウモロコシはロングが375,616枚(前週比 +2,014枚)、ショートが566,664枚(▲15,230枚)、ネットロングは▲191,048枚(+17,244枚)、大豆はロングが138,532枚(+12,910枚)、ショートが256,043枚(+12,086枚)、ネットロングは▲117,511枚(+824枚)、小麦はロングが141,095枚(+5,412枚)、ショートが189,792枚(▲1,069枚)、ネットロングは▲48,697枚(+6,481枚)

◆本日のMRA's Eye


「日本景気後退への懸念」

日本経済は世界経済の循環的な減速や米中貿易戦争の激化、中国の構造的な景気減速を受けて、下振れリスクが強まっている。

内閣府が昨日、3月の景気動向指数を発表、景気の現状を示す一致指数は99.6(前月100.2)と減速、基調判断を6年2ヵ月ぶりに悪化していると下方修正した。

悪化の判断は、3ヵ月以上連続して3ヵ月後方移動平均が下落していること、当月の前月変化の符号がマイナス(前月から悪化していること)、というルールを基準に機械的に引き下げられる。

また、通常、「景気が足踏み状態(3ヵ月後方移動平均(前月比)の富豪がマイナスに変化し、マイナス幅(1ヵ月、2ヵ月、または3ヵ月の累積)が1標準偏差分以上。当月の前月比がマイナス」の判断が出ると高い確率で景気は後退局面入りしている。

「足踏み」表現は米中貿易戦争が開戦となった昨年の8月以降、9月からであり過去の分析通り日本景気に下押し圧力が強まっているようだ。

菅官房長官は、「雇用や所得など内需を支える日本経済のファンダメンタルズはしっかりしている」との認識を示しており、「消費税上げはリーマンショック級の出来事が起きない限り、予定通り引き上げるよう経済運営に取り組みたい」とし、消費税上げは高い確率で実施される可能性が出ている。

もちろん、米中通商交渉が決裂、今後対話も持たれないといった事態になれば夏の選挙もあることから、利上げを先送りする可能性は高い。ただ、目先の景気悪化を回避するため、一時的に米中が合意してお互いのメンツを保つ、という展開がまだメインシナリオであるため、年内、米中問題は一時的に解決するとみている。

ただし、米国は中国が取り決めに違反した場合に制裁関税を復活する条項を織り込むと予想されるため、そう簡単に中国は折れてこないだろう。結果、外的要因は日本経済にマイナスに作用する。企業の設備投資にも頭打ち感が出てきているため、総じて日本景気の先行き見通しは明るくない。

この中で日米の貿易協議や、米中の対立激化に伴う域内防衛の強化など、日本の経済や治安を巡る情勢は悪化を始めている。まだ公共投資やオリンピック特需などから景気の減速が実感できるほどにはなっていないが、やはり秋口から来年にかけての景気の調整に関しては、今から準備をする必要があるだろう。

仮にこの状況で中東有事が発生、原油価格が上昇した場合、広く日本経済に大きな影響を及ぼす可能性があることは、すでに無視できないリスクになっていると考えるべきである。

◆主要ニュース


・3月日本景気動向指数速報 先行指数 96.3(前月改定 97.1)、景気一致指数 99.6(100.5)

・4月インド消費者物価指数 前年比+2.92%(前月+2.86%)

・中国龍鶴副首相、「米中は北京で話し合いを継続することで合意。」

・中国が米国に対して報復関税を発動。6月1日から600億ドル相当の米製品に追加関税を適用。

・米国、安全保障上の懸念がある外国企業に中国企業6社を追加。

・米トランプ大統領、日本のG20で中国習近平国家主席と面談の予定を発表。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・サウジアラビアのタンカー2隻、UAE沖で攻撃を受ける。

・イスラエル シュタイニッツ エネルギー相、「米国とイランの対立が激化した場合、イランがイスラエルに対して直接的ないしは支援する武装勢力を介して攻撃を仕掛ける可能性がある。」

【メタル】
・ICSG、「2019年の銅市場は▲189千トンの供給不足(10月時点予想▲6万5,000トンの供給不足)に。生産は2,478万トン、需要は2,497万トンに増加。

2020年には▲25万トンに供給不足幅は拡大へ。需要は中国のEVやインフラ投資によって支えられるが世界経済の減速がこれを相殺。生
産はCobre PanamaやToquepalaなどの鉱山からの供給増加をインドネシアの生産落ち込みが相殺。」

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.CBT小麦 ( 穀物 )/ +2.92%/ ▲14.31%
2.TGE米 ( 穀物 )/ +2.24%/ +0.81%
3.原料炭スポット ( 鉄鋼原料 )/ +1.71%/ ▲8.28%
4.CBTトウモロコシ ( 穀物 )/ +1.46%/ ▲7.33%
5.CBTエタノール ( エネルギー )/ +1.15%/ +4.03%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
68.NYB綿花 ( その他農産品 )/ ▲4.38%/ ▲9.35%
67.ブラジル・ボベスパ ( 株式 )/ ▲2.69%/ +4.37%
66.パラジウム ( 貴金属 )/ ▲2.51%/ +4.89%
65.LME亜鉛 3M ( ベースメタル )/ ▲2.42%/ +5.01%
64.S&P500 ( 株式 )/ ▲2.41%/ +12.17%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :25,324.99(▲617.38)
S&P500 :2,811.87(▲69.53)
日経平均株価 :21,191.28(▲153.64)
ドル円 :109.31(▲0.64)
ユーロ円 :122.71(▲0.80)
米10年債利回り :2.40(▲0.07)
独10年債利回り :▲0.07(▲0.03)
日10年債利回り :▲0.05(+0.00)
中国10年債利回り :3.27(▲0.04)
ビットコイン :7,896.4(+1605.07)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :21.38(+0.2)
エネルギー :21.48(+0.1)
ベースメタル :16.36(+0.3)
貴金属 :20.03(+0.61)
穀物 :15.78(+0.36)
その他農畜産品 :26.26(+0.01)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :21.08(+0.27)
Brent :19.88(▲0.12)
米天然ガス :26.35(+0.14)
米ガソリン :24.27(+0.5)
ICEガスオイル :19.85(▲0.21)
LME銅 :14.50(+0.59)
LMEアルミニウム :11.13(▲0.01)
金 :10.14(▲0.22)
プラチナ :20.51(+0.49)
トウモロコシ :18.81(+0.92)
大豆 :10.14(▲0.22)

【エネルギー】
WTI :61.04(▲0.62)
Brent :70.23(▲0.39)
Oman :70.33(▲0.55)
米ガソリン :196.37(▲2.54)
米灯油 :203.84(▲1.20)
ICEガスオイル :629.25(▲3.00)
米天然ガス :2.62(+0.00)
英天然ガス :32.15(▲0.39)

【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :70.23(▲0.39)
SPO380cst :399.26(▲14.43)
SPOケロシン :81.62(▲1.23)
SPOガスオイル :81.78(▲0.95)
ICE ガスオイル :84.46(▲0.40)
NYMEX灯油 :204.05(▲0.70)

【貴金属】
金 :1299.96(+13.91)
銀 :14.76(▲0.02)
プラチナ :853.47(▲12.08)
パラジウム :1323.42(▲34.04)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :6,069(▲78:26.5C)
亜鉛 :2,598(▲32:121.5B)
鉛 :1,803(▲33:18C)
アルミニウム :1,801(+1:35.5C)
ニッケル :11,770(▲155:40C)
錫 :19,350(+20:115B)
コバルト :34,500(±0.0)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :6021.50(▲124.50)
亜鉛 :2577.00(▲64.00)
鉛 :1790.00(▲29.00)
アルミニウム :1810.50(▲4.50)
ニッケル :11765.00(▲195.00)
錫 :19375.00(▲75.00)
バルチック海運指数 :1,013.00(+39.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :94.45(▲0.78)
NYMEX鉄鉱石 :94.38(▲0.70)
NYMEX原料炭スワップ先物 :208.5(+3.50)
上海鉄筋直近限月 :4,151(+12)
上海鉄筋中心限月 :3,721(▲15)
米鉄スクラップ :313(+1.00)

【農産物】
大豆 :791.00(▲6.00)
シカゴ大豆ミール :284.00(▲0.10)
シカゴ大豆油 :26.35(▲0.15)
マレーシア パーム油 :1927.00(+7.00)
シカゴ とうもろこし :347.50(+5.00)
シカゴ小麦 :431.25(+12.25)
シンガポールゴム :174.50(+0.10)
上海ゴム :11500.00(▲45.00)
砂糖 :11.84(+0.12)
アラビカ :88.25(▲1.20)
ロブスタ :1320.00(▲17.00)
綿花 :65.45(▲3.00)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :83.55(▲0.20)
シカゴ生牛 :109.75(▲2.70)
シカゴ飼育牛 :135.05(▲2.58)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。