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不透明感高まりリスク選好後退~弱い材料に反応しやすい状況に
  • MRA外国為替レポート

2019年5月13日号

◆先週の市場総括


先週初、合意間近とみられていた米中通商交渉をめぐり状況が一変。中国がこれまでの合意を修正し国内法の修正を拒んできたことから米国が不信感を強めて協議が後退。トランプ政権が対中関税引き上げを打ち出し、市場の警戒感が一気に高まった。

当初は交渉を前にした脅しとの見方もあったが、次第に実施の可能性が高いとの見方から不安感が広がった。

中国の劉鶴副首相は8日訪米の予定を9日に延期しつつワシントンを訪問し、交渉が始まったが容易に合意はできず。現地10日0時、日本時間10日金曜日午後1時に2,000億ドルの関税引き上げは実施された。

株式市場は週初から大きく下落。日経平均は連休明けから4日続落となり連休前の引値22,200円台から先週末は21,300円台まで下げた。

リスク回避が強まるなか為替市場では円高が進み、ドル円相場は109円台半ば、ユーロ円相場は一時122円台半ばに下落した。

ただ今後も交渉が継続する見込みとなったこと、今回の短時間の交渉について米国側が建設的と評価したこと、から週末にはやや安心感が回復。株価は下げ止まり、円高も一服した。ドル円相場は110円近辺、ユーロ円相場は123円台半ばで週末NYの取引を終えた。

6日月曜日の東京市場は連休最終日で休場。5日日曜日にトランプ大統領が、中国が合意を後戻りさせようとしている、中国に対して追加関税引き上げを行う、2,000億ドルについて10%から25%に、さらに3,250億ドルについても25%に引き上げを検討、と発言。アジア市場は緊張感のなかで始まった。

リスク回避が強まるなか、ドル円相場は前週末の111円10銭近辺から110円60銭~70銭に下落して始まりすぐに30銭まで下落。ユーロ円相場は124円台半ばから123円半ばに下落して始まった。

中国株はトランプ発言を受けて全面安・大幅安。米中ともに交渉決裂は避けたいだろうとの見方は根強いなか、トランプ発言が交渉を前にした脅しとの見方もあり、その真意を探る不安定な値動きに。

ドル円相場はその後海外市場にかけて戻して110円70銭~80銭、ユーロ円相場は123円台後半で上下。

海外市場に入ると欧州株も大幅安。米国株も大きく下げてスタートしたが、その後は持ち直して小幅安にとどまった。ドル円相場は110円80銭~90銭、ユーロ円相場は124円台に戻して引けた。米10年債利回りは小幅低下して2.50%。

火曜日、連休明けの東京市場は早朝から円高の動き。ドル円相場は110円80銭台から60銭へ、ユーロ円相場は124円20銭から123円80銭台へ。

日経平均は小幅安寄りもその後は下落して22,000円へ下落。後場には一段安となり21,900円近辺で引けた。海外市場に入るとリスク回避が一段と強まった。

欧州委員会が公表した経済見通しではユーロ圏とくにドイツの成長率見通しが大きく引き下げられた(前回1.1%から0.5%に)。

またライトハイザーUSTR代表が10日0時をもって2,000億ドルについて関税引き上げを決定した旨を表明。中国による合意文書案の修正は深刻とした。

中国との交渉が当初予定の8日から1日延期となり9日からとなったことから、引き上げまでわずか1日となり関税引き上げは不可避との見方が強まった。

これらを受けてグローバル景気失速懸念から米国株は大幅安。米国株の予想変動率指数であるVIXインデックス(別名、恐怖指数)は大幅上昇。米10年債利回りは2.45%に低下した。

ドル円相場は110円20銭まで下落。ドル以外の通貨に対する円相場(クロス円相場)における円高が顕著。ユーロ円相場は123円20銭に低下して40銭で引けた。ユーロドル相場は1.12を中心に上下。

水曜日の東京市場のドル円相場は110円20銭台で始まり110円割れ。ユーロ円相場も123円40銭で始まり20銭を割った。日経平均は21,600円で大幅安寄り。その後も軟調で後場には21,500円台前半に下落。引けにかけてはやや戻して21,600円手前で引けた。

ドル円相場はその後110円台に戻して海外市場にかけても110円ちょうど~20銭でかろうじて110円を維持。ユーロ円相場も123円20銭~30銭近辺でもみ合いとなった。

米国株は下げ止まり横ばい。翌日からの米中通商交渉を見極めようとの姿勢が強まった。USTRは2,000億ドルについての関税引き上げを官報で正式に発表。中国は対抗措置を表明した。

木曜日の東京市場のドル円相場は110円ちょうどを挟んで小動き上下動。ユーロ円相場も123円ちょうどを挟んで上下。日経平均は21,500円近辺で寄り付き続落して21,300円台前半まで下げた。後場にはやや持ち直したが引けは21,400円近辺。

夕刻から海外市場にかけては一段と円高が進み、ドル円相場は109円60銭へ、ユーロ円相場は122円60銭を割り込んだ。ただ海外市場に入ると持ち直して上下。ドル円相場は109円90銭に反発した後、50銭に下落、60銭~80銭で上下した。

ユーロ円相場は123円ちょうど~20銭に戻して上下。ユーロドル相場は1.12ちょうどから1.1250近辺にユーロ高ドル安が進んだ後は1.1220近辺でもみ合い。

米国株は大幅安の後に持ち直し、前日比下落したが下落幅を縮めて引けた。中国・劉鶴副首相がワシントンに到着。トランプ大統領は、習主席から素晴らしい書簡を受け取った、主席と電話会談の可能性がある、と述べた。この発言を受けて株安には歯止めがかかった。

金曜日の東京市場では米国の対中関税引き上げ発動期限である午後1時を前にやや円安に巻き戻しが入った。ドル円相場は109円70銭で始まり一時110円台を回復、午後1時には109円80銭近辺。ユーロ円相場は123円10銭で始まり123円60銭に上昇した後、20銭~30銭。

日経平均は21,400円で寄り付き一時21,600円近くに戻したが反落。後場早々、1時ころには21,200円近辺に下落した。

結局、対中関税の引き上げは実施へ。市場は織り込み済みで反応は鈍く、若干円高に振れたにとどまった。

海外市場に入ると、米国株があらためて関税引き上げ実施を嫌気して大幅安となり前日の安値割れ。つれてドル円相場は一時109円50銭近辺に、ユーロ円相場は123円10銭台に下落した。

ただムニューシン財務長官が、話し合いは建設的だった、と述べ、またトランプ大統領は、合意は全く急ぐ必要はない、2日間の協議で率直かつ建設的な対話をもった、今後の協議進展次第で関税は撤廃か維持かのいずれか、習主席との関係は引き続き強固だ、と発言。

市場は交渉継続を好感するかたちで株価は大きく戻して前日比プラスに。ドル円相場は110円ちょうど近辺まで反発してNYの取引を終えた。ユーロ円相場は123円50銭~60銭。ユーロドル相場は1.12台前半。

◆今週の3つの注目ポイント


株価が落ち着きを取り戻すか、なお不安定な値動きを続けるか。

1.米国の経済指標

再び対中関税が引き上げられるなか米国景気への影響が再び気になるところ。経済指標に表れるのはまだ先だが、当面は一段と指標に対して敏感な状況が続くだろう。

火曜日 輸入物価(4月、前月比、予想+0.7%、前月+0.6%)

水曜日 小売売上高(4月、コア指数、前月比、予想+0.7%、前月+1.2%)、NY連銀製造業景気指数(5月、予想8.0、前月10.0)、鉱工業生産(4月、前月比、予想+0.1%、前月▲0.1%)

木曜日 住宅着工(4月、季節調整済み年率換算、予想1,215千戸、前月1,139千戸)、フィラデルフィア連銀製造業指数(5月、予想10.0、前月8.5)

金曜日 ミシガン大学消費者信頼感指数(5月、予想97.7、前月97.2)

2.中国の経済指標

米国の関税引き上げで中国の景気動向にもあらためて懸念が強まる。影響はまだ先だが弱い数字に反応しやすいことには変わらない。

水曜日 4月都市部固定資産投資(前年同月比、予想+6.3%、前月+6.3%)、鉱工業生産(同、+6.5%、+8.5%)、小売売上高(同、+8.6%、+8.7%)、失業率(前月5.2%)

3.欧州の経済指標

欧州景気には底打ちの兆しがみえるとの見方が高まっている。FRBの景気認識も海外経済のリスクがやや後退したとしているが、数字で裏打ちされるか。

火曜日 ユーロ圏鉱工業生産(3月)、ドイツZEW景況感指数(5月、期待指数、予想5.0、前月3.1)

水曜日 ユーロ圏およびドイツのGDP速報(1-3月期)

◆今週のMRA's Eye


不透明感高まりリスク選好後退~弱い材料に反応しやすい状況に

合意間近とみられていた米中通商交渉が急転直下、暗礁に乗り上げる気配となり、楽観サイドに傾いていた市場にショックを与えた。

米国が2,000億ドルの対中輸入品を対象に関税を10%から25%に引き上げ、中国は対抗措置を表明。再び関税報復合戦の様相を呈し始めた。

今回の米国の関税引き上げ実施にもかかわらず、両者の交渉が継続し、物別れ決裂に至らなかったことは一定の安心感をあたえた。

市場の極度の警戒感は短期的には鎮静化した。しかしここ数日で4月までとは状況が大きく変化したことは間違いなく、中期的に不透明感が漂いリスク選好が弱い状態、何らかのショックでリスク回避に陥りやすい状態が続きそうだ。

昨年末にかけて、市場全体にリスク回避心理が蔓延し、米国株は大きく下落した。その最大の要因が米中通商摩擦の激化。さらに2019年の景気減速予想・懸念。イギリスの合意なきEU離脱懸念や米政府機関の閉鎖も重なった。

しかし年明けには米政府機関の閉鎖は早々に解除され、イギリスのEU離脱も合意なき離脱だけは回避しようというイギリス・EU双方のスタンスが確認されて懸念が緩和。

さらに最も大きな安心材料となったのが米中交渉の開始決定と、それに伴うすでに決定していた対中輸入品2,000億ドルに対する関税引き上げの猶予だった。

それ以降、米中通商交渉の合意が成立するとの見方が次第に強まり、合意時期についても5月中との見方が広がった。

もうひとつの懸念である景気悪化観測については、米FRBが利上げ休止・資金吸収の終了決定したこと、中国が景気下支え策を明確にしたことが、経済指標の悪化にもかかわらず不安感を抑制。また経済指標が中国、欧州で持ち直しの気配を示したことがリスク選好の回復をもたらした。

景気悪化と政策ミスが世界経済や市場にとってのリスク。金融政策は緩和的となったことから当面のリスクではなくなった。

しかし政策ミスについては最も重要な米中通商交渉の合意が長期化し、関税報復の応酬に向かい始めたことは大きなリスクだ。

米中両国による関税の引き上げが、持ち直し・回復に向かい始めた中国・欧州の景気動向に再び悪影響をもたらさないか。堅調を維持している米国の景気動向を悪化させることはないか。

米中通商交渉は継続しつつも合意までは遠い道のりであることが意識される。その間に関税引き上げの悪影響がまずは企業業績に再び顕在化し、やがて景気全体・経済指標にも表面化する可能性がある。市場参加者は警戒感をベースに悪い兆しをチェックすることとなり、弱い経済指標に敏感な状況が続きそうだ。

もっとも早く影響が表れそうなのが企業部門。指標としては企業景況感指数で、PMIやISM、地区連銀の調査など。

1-3月期の決算発表が終わったばかりであることから、次に、4-6月期の企業決算における予想となろう。これは7月入ってからになる。

その時点で合意に至り今回の関税引き上げが撤廃となっていなければ、7-9月にはフルに影響が発生してさらに業績見通しが悪化するだろう。

その前、6月末には大阪サミットが開催される。トランプ大統領と習近平主席が顔を合わせることになることから、まずはそこまでに交渉の進展があるかどうか、今回引き上げた関税の引き下げ、ないし、さらなる追加関税賦課に至らずにすむかどうか。

トランプ大統領は合意を急がないと言明している。米中ともに安易な妥協をしない姿勢が強まっている。とくにトランプ大統領は選挙モードとなっていることから明確な進展がみられない限り、頑なな態度をとり続けそうだ。

こうした状況を踏まえれば、リスク選好が弱まった状況は長期化しそうだ。その間、各国における緩和的な金融政策や中国の景気刺激策がどの程度景気を支え、市場心理を支えられるか。

年後半には景気持ち直しとの見方が維持されるのか、それが変更を余儀なくされて投資スタンスをリスク回避サイドに修正させられるのか。

米国株の動向がもっとも重要で、当面調整が深まらずにすむかどうか、年末にかけてのような大幅な調整に至らないまでも軟調な展開が時間帯として長引くか。

為替市場においては、楽観論やボラティリティの低下とともに投機的な円売りが積み上がっていたが、短期的にはその修正、不透明感やボラティリティの上昇で円買い戻しが円高を招かないかには留意を要する。

また短期的な円買い戻しにとどまれば年初のような一時的な円高で終わるが、景気トレンドの転換、悪化が明確になれば円高が長引くことになる。米中通商交渉の行方というイベントは重要だが、より根本的にドル円相場を左右するのは堅調な米国景気の動向に陰りが見え始めるかどうかだ。

水準としては、楽観論に支えられた連休前の水準、111円~112円に回帰するのは当面難しいだろう。110円近辺で事態の進捗を見守りながら、弱い材料・経済指標に反応して円高に振れやすい状況がしばらく続きそうだ。

一方、米国経済が崩れない限り、年初のような105円をつける展開は想定しにくい。年初の105円はグローバルに市場参加者がほとんどいないなかでつけた水準であり、実質的な年初の底値は107円台とみておくべきだ。

現時点での下値リスクはそこまでの円高ドル安で、それ以上円高に突っ込む材料は現時点では確認されていない。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :109.96(+0.22)
ユーロ :123.53(+0.45)
英ポンド :142.974(+0.18)
豪ドル :76.96(+0.24)
カナダドル :81.954(+0.52)
スイスフラン :108.662(+0.57)
ブラジルレアル :27.7809(▲0.03)
中国人民元 :16.059(+0.02)
韓国ウォン(日本円=100) :9.352(+0.05)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1233(+0.002)
英ポンド :1.3003(▲0.001)
豪ドル :0.6999(+0.001)
カナダドル :1.3419(▲0.006)
スイスフラン :1.0119(▲0.003)
ブラジルレアル :3.9586(+0.011)
中国人民元 :6.8261(▲0.001)
韓国ウォン :1177.38(▲2.17)

【主要国政策金利】
米国 :2.50
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :2.47(+0.03)
米2年債 :2.27(+0.01)
日本10年債利回り :▲0.05(▲0.00)
日本2年債利回り :▲0.05(+0.00)
独10年債利回り :▲0.05(+0.00)
独2年債利回り :▲0.62(+0.01)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :25,942.37(+114.01)
NASDAQ  :7,916.94(+6.35)
S&P500 :2,881.40(+10.68)
日経平均株価 :21,344.92(▲57.21)
ドイツ DAX :12,059.83(+85.91)
インド センセックス :37,462.99(▲95.92)
中国上海総合 :2,939.21(+88.26)
ブラジル ボベスパ :94,257.56(▲550.29)
英国FT250 :19,366.80(+81.22)
ビットコイン :6342.73(+262.01)

【主要商品価格】
WTI :61.72(+0.02)
Brent :70.77(+0.38)
米ガソリン :199.10(+1.56)
米灯油 :205.59(+1.23)

金 :1286.12(+2.04)
銀 :14.78(+0.01)
プラチナ :865.69(+16.60)
パラジウム :1356.90(+57.64)
銅 :6146.50(+26:11C)
アルミニウム :1800.50(+2:35.5C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :797.00(▲3.25)
シカゴ とうもろこし :342.50(▲2.00)
シカゴ小麦 :419.00(▲2.75)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。

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