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リスクが小さいと考えることのリスク
  • ビジネスへのヒント
  • MRA商品市場レポート for MANAGEMENT(週末版)

【ビジネスへのヒント】第365号

市場リスクは実際に発生してから初めて意識されるもので、リスクが顕在化するまではリスクと認識していません。当たり前といえば当たり前の話ですが、例えばこの10年、全く価格が変わらない商品があったとして、それが「今年度中に2倍になるかもしれない」と想定するのは通常不可能です。しかし、今回の米中貿易戦争に象徴されるように、突如環境が変化して対応に追われる可能性があります。
このような事態を回避するには、市場リスク見通しを作成するときの考え方が役に立つことがあります。具体的に言うと、「あえてリスクの小さいもの」「リスクが大きくなさそうなもの」にフォーカスすることです。

例えば原油価格が高騰すると、新聞やテレビ、ネットの記事はほとんどが原油価格に関する記事で埋め尽くされます。しかし、リスクマネジメントの観点からするとこうなっているときは「すでにリスクが顕在化している状態」、いわゆる火事の状態です。この場合、例えば購買の方であれば、粛々と値決めをして数量を減らすなどの省エネに努めるといった対応をする以外に方法がありません。(少し話が逸れますが、間違ってもこの時に、何らかのオプションが組み込まれた金融商品を用いてはいけません)

ですが、この間、むしろほとんど価格が動いていない商品にフォーカスしていると、万一の場合の価格上昇時の対応が容易になります。弊社の場合、穀物とコーヒーなどの農産品の価格が上昇するリスクを考えた方が良い、と昨年から主張してきましたが(もちろん、これらの商品を購入いていない消費者の方には関係ありません)、懸念が当たって足元価格が上昇を始めています(弊社の指摘を受けて対応した会社は今、そのリスクを回避できているはずですが...)。

このことは市場性のない商品の購買に関して、冒頭のコメント通りこの10年、価格が見直しされていない商品や、価格が低い商品の価格や購買体制をあえて見直す必要があることを示唆しています。一度、「何もないとき」に「何も起きていない商品」の購入先や値決めについて見直しをすることをお勧めします。「リスクが小さい」ということも「リスクである」とぜひ考えるようにしてみてください。