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リスク選好は維持されるも微妙なリスクバランス
  • MRA外国為替レポート

2019年5月6日号

◆先週の市場総括


連休前は米中通商交渉への期待が市場のリスク選好を支えるなか米企業決算による株価動向に左右される展開。週末にはやや楽観的なムードが後退した。

週央にはS&P500、ナスダックが史上最高値を更新するなど概ね堅調な値動き。米長期金利は小幅上昇したが、週末のGDPが個人消費や設備投資の弱さやインフレの鎮静化を示したことで反転・低下した。

欧州からの材料は不芳。欧州の経済指標が弱く、欧州長期金利が低下して米長期金利の上昇を抑制した。

ユーロは週央にかけて下落してそのまま引け。ユーロドル相場は週初に1.12台半ばで始まり1.1150割れ。ユーロ円相場も126円近辺から124円台半ばへ。

ドル円相場は112円近辺でもみ合い上値を試して112円40銭に上昇したが反落。日本の10連休を前に週末にかけて円買いが広がり、また米国のGDPも重しになって111円60銭近辺で週末NYの取引を終えた。

日経平均は米国株の上昇に支えられたものの、決算発表や10連休への警戒感から上値も重く、22,100円~22,300円で上下した。引けは22,250円。

先週は日本市場が週を通じて休場。その間、急激な円高が警戒されていたが、さほど大きな値動きとならなかった。

FOMCや雇用統計の発表などを前に週前半は小動き。その後はドルの上下動が中心の値動きでややドル安となった。

FOMCでは政策変更はなかったが景気判断はやや楽観的。パウエル議長がインフレ率低下は一時的な要因が影響との見方を示したことで利下げ観測が後退しドルが堅調に。

しかしISM景気指数や雇用統計がやや弱めで週末にかけてはドルが軟調となった。ドル円相場は111円台半ばで始まり週末は111円10銭近辺で引け。

ユーロドル相場は1.11台半ばで始まり週央にかけてじりじりとユーロ高ドル安。一時1.12台半ばに上昇。その後はドル高、ドル安の動きで1.12ちょうど近辺で引け。

ユーロ円相場は124円台半ばで始まり一時125円台をつけたが週末にかけて反落し124円台半ばで引け。米国株はFOMCで利下げ観測が後退したことで調整・下落したが週末にかけて持ち直し、概ね週初と同水準で引けた。

29日月曜日のアジア時間のドル円相場は111円60銭近辺でもみ合い。ユーロは対ドルで1.1150、対円では124円40銭で始まり小じっかり。

欧米市場にかけてはユーロ高、円安が進んだ。ユーロ円相場は125円ちょうど近辺へ、ユーロドル相場は1.1180~90に上昇。ドル円相場は一時111円90銭に上昇した後、111円70銭近辺に押し戻されて引けた。

米国株は小動き、小幅高。米10年債利回りは小幅上昇、2.50%から2.53%へ。発表された米国の3月の個人所得は前月比▲0.1%とやや弱めだったが、消費支出は同+0.9%としっかり。

30日火曜日のアジア時間にはやや円高に。ユーロ円相場は125円ちょうどから124円50銭近辺へ、ドル円相場は111円70銭から111円30銭~40銭に下落してもみ合い。

発表された中国の製造業PMI景況感指数(4月)は50.1と辛うじて景況感の分かれ目である50を上回り、前月の50.5から低下して予想50.5を下回った。

民間調査による財新・製造業PMI景況感指数も50.2と前月の50.8から悪化し予想51.0に届かず。リスク選好ムードに水を差し円相場の反発を招いた。

欧米市場ではドル円相場は111円40銭近辺で変わらず。傍らでユーロ高ドル安が進行。1.1220~30近辺に上昇。ユーロ円相場は124円80銭~125円で上下し125円ちょうど近辺で引け。

発表されたシカゴ購買部協会景気指数(4月)は52.6と前月58.7から悪化して弱め。一方、消費者信頼感指数(4月)は129.2と前月124.1から上昇し予想126.0より強い数字だった。

米国株は上下して概ね前日同水準。米10年債利回りは反落して2.50%。この日は2日間にわたるFOMCの初日で5月1日の結果を前に徐々に様子見に。

またNY市場の引け後に発表されたアップル社の決算は売上高見通しが良好だったことで警戒感が後退した。年初のようなショックによる円高は生じなかった。

5月1日のアジア時間のドル円相場は111円40銭から小じっかり、ユーロ円相場は124円90銭~125円ちょうどでもみ合い。ユーロドル相場は1.1220近辺で推移。

リスク選好は維持されつつも、FOMCの結果やパウエル議長の会見、週末にかけての重要指標の発表待ち。

欧米市場に入るとまずドルが下落。発表されたISM製造業景気指数(4月)は52.8と前月55.3から悪化して予想55.0を下回る弱い数字。

ドル円相場は111円ちょうど近辺に下落。ユーロドル相場は1.1240~50へユーロ高ドル安が進んだ。ユーロ円相場は125円20銭~125円ちょうどに小幅下落。米10年債利回りは2.46%に低下。

日本時間2日未明3時に発表となったFOMCの結果は予想通り据え置き。ただし景気判断は、労働市場は力強さを維持し経済活動の伸びは着実なペースで拡大した、とやや上方修正された。

またパウエル議長は会見で、年初のコアインフレ率の低下は想定外だが一時的な要因による可能性がある、経済成長や雇用の伸びは予想以上に強いが物価は予想よりも弱い、忍耐強い対応が依然として正当化される、と述べた。

これにより市場が織り込んでいた年内利下げ観測が後退し米10年債利回りは2.50%に反発。ドルは上昇し、ドル円相場は111円60銭に、ユーロドル相場は1.12割れへ急落。ユーロ円相場は124円70銭~80銭で引け。

米国株はハト派的なスタンスの後退を嫌気して引けにかけて大幅下落した。なお発表されたADP雇用報告(4月)は雇用者数前月比+275千人と前月+129千人から加速。

2日のアジア時間のドル円相場は111円50銭を挟んで上下し、50銭~60銭で小動き。ユーロ円相場も125円中心に上下。ユーロドル相場は1.12近辺。総じて雇用統計の発表を翌日に控えて小動き

。欧米市場では、米国株が寄り付きから一段安。前日からのFOMCの強気スタンスを嫌気する展開となった。ただし引けにかけては下げ止まり。ユーロ円相場は124円60銭~70銭に下落してもみ合い。

ユーロドル相場も1.1170~80に小幅ユーロ安ドル高となり引け。米10年債利回りは2.55%に上昇。ドルは底固く、ドル円相場は111円50銭近辺で小動き、もみ合い引けた。

3日金曜日のアジア時間のドル円相場は引き続き111円50銭近辺で小動き。欧州時間にかけてはユーロがやや軟調。ユーロドル相場は1.1150、ユーロ円相場は124円30銭にそれぞれ小幅安。

注目の米雇用統計(4月)は、非農業部門雇用者数・前月比が+263千人と強めで前月の+189千人から加速。

一方、平均時給は前月比+0.2%、前年同月比+3.2%と予想より弱め。また週平均労働時間も34.4時間と前月の34.5時間からわずかながら減少した。

またISM非製造業景気指数(4月)は55.5と前月56.1から悪化し予想57.2を大きく下回った。

これらを受けてドルは下落。ドル円相場は111円10銭近辺に下落して引け。ユーロドル相場は1.12ちょうど近辺。ユーロ円相場は124円50銭近辺でもみ合い引けた。

米国株は前日の下げをすべて取り戻して上昇、引け。米10年債利回りは小幅低下して2.53%。

◆今週の3つの注目ポイント


1.米中通商協議

今週は8日水曜日にワシントンで米中通商協議閣僚級会合が行われる。中国の劉鶴副首相が訪米。前週は北京で会合が実施されたが、今回、何らかの成果が明らかになるか。

トランプ大統領は5月中の決着をほのめかしていたが、それにはそろそろ結果がみえてもおかしくないタイミング。市場のリスク選好持ち直しとなるか。

2.中国の経済指標

先週発表された経済指標、企業の景況感指数である中国のPMIや米国のISMは予想よりも弱く市場のリスク選好を抑制した。

パウエル議長は海外リスクはやや和らいだ、と述べたが、今週の中国の指標は市場の不安感を再燃させずに済むか。

月曜日 財新サービス業PMI景況感指数(4月、予想54.2、前月54.4)

水曜日 貿易収支(4月)輸出(前年同月比)+2.3%(前月+14.2%)、輸入▲3.6%(前月▲7.6%)

木曜日 消費者物価指数(4月、前年同月比、予想+2.5%、前月+2.3%)、生産者物価指数(同、予想+0.4%、前月+0.4%)

3.米国の経済指標

先週発表された指標は弱めだったが、FOMCやパウエル議長の景況判断は強めだった。今週の経済指標はそうした見方を裏付けるか。とくに、インフレ率の低下は一時的とされたが、反発する兆しがみられるか。

木曜日 生産者物価指数(4月、コア、前年同月比、予想+2.5%、前月+2.4%)、貿易収支(3月)

金曜日 消費者物価指数(4月、同、予想+2.1%、前月+2.0%)

◆今週のMRA's Eye


リスク選好は維持されるも微妙なリスクバランス

先週は日本市場が長期にわたり休場、本邦投資家が不在となるなか急激な円高が警戒されたが、ふたを開けてみればドル円相場は概ね111円台で推移し、大幅な値動きとはならなかった。

週前半はFOMCやISM景気指数、雇用統計の発表など重要イベントを控えて様子見姿勢が強く、またこれらの材料がリスク回避をもたらす材料とならなかったため。

大きくリスク回避には陥らず、急激な円高とならなかったものの、一方でリスク選好が強まる想定外の好材料もなかった。リスクバランスは均衡したままだ。

発表された米中の経済指標は総じて弱めだったが、FOMCの景気判断、パウエル議長の景気物価認識はむしろ上方修正されている。米国経済は想定よりも堅調、インフレ率の低下は一時的、海外リスクはやや後退した、との認識を示した。

従前は、実体経済の悪化に対して政策期待が市場参加者のリスク選好を維持するかたちだった。中国の景気対策や緩和サイドに傾いた先進国の金融政策が株価を支えた。

ここにきてその構図には微妙な変化がみられる。実体経済にやや改善の兆しがみえ、FRBの景気認識がやや改善するとともに、過度な金融政策への期待は後退。FRBが年内利下げに動くのではないかとの見方が勢いを失った。

結果として景気面からリスク回避に陥るリスクは後退したが、政策期待によるリスク選好も後退して、リスクバランスが均衡するかたちとなっている。

米国株は上下動して概ね横ばい。FRBが長期にわたり政策金利を据え置くとの見方が強まり米長期金利は安定ないしやや上昇。ドルは底固いものの、米金利先高感は盛り上がらず上昇力を欠いたまま。リスク選好が緩和したことで円安にも勢いがつかない。

当面のリスクバランスの傾きを想定すれば、なおリスク回避に傾くバイアスが勝っているようにみえる。

リスク選好は、政策期待によるか、実体経済やイベントによる強まるか、いずれか。政策期待はすでに十分織り込まれており、これ以上強まることは難しい。

当局の景気認識が好転すれば、逆説的な結果となるが、政策期待が後退してリスク選好が弱まる。現状はそのステージに入っており、今後もそこは変わらないだろう。

実体経済の好転によるリスク選好の高まりは急速には生じない。景気の好転そのものはゆっくりしか生じず、トレンドとして認識されるには時間がかかる。

経済指標への反応でリスク選好が強まることはあるが、1回の指標でリスク選好が急激に強まり、またトレンドとして継続することは難しい。生じるとしてもじわじわとした動きとなる。

傾向として景気好転が続いても、一時的に弱い数字となることもあり、市場心理はブレやすい。先週の中国のPMI景況感指数や米国のISM景気指数は前月より弱めの数字だった。

景気底打ち好転期待を削ぐほどではなかったが、期待やリスク選好の勢いを削ぐ数字だった。

イベントについては事前の期待次第。米中通商交渉は何らかの合意に至るとの見方が大勢のため、結果として合意に至っても、好材料ではあるもののリスク選好が大きく強まることは難しいのではないか。

一方で、リスク回避に陥るリスクは、政策ミス、弱い経済指標によるショック、リスク選好が強まっている状況そのもののリスク、など。

政策ミスについては、可能性があるものの、現時点では回避される方向に動いている。金融政策は緩和的ないし現状維持となっているため、景気を悪化させるミスは生じる可能性は小さい。

ただ通商外交に関してはなおリスクがある。期待値が高いためにリスクはダウンサイドが勝る。経済指標についても、現状は改善期待が強まりつつあるが、それだけに弱い数字に対する反応の方が大きく、リスク選好がくじかれやすい。

リスク選好が強まった状況そのもののリスクは、株価上昇の継続やポジションの積み上がりによるもの。米国株はこの間、年初から右肩上がりで反発・上昇を続け史上最高値近辺にある。

決算発表が一巡したことや、政策期待があらたに強まることが難しい時間帯となることから、リスクはダウンサイドが強まる。

米中通商合意などが一段高をもたらせるかどうか。為替市場においては円売りポジションが増加している。シカゴ通貨先物の投機ポジションは円売りがじわじわと増加し、昨年末、年初の円高をもたらす前の水準を回復している。

何らかのきっかけによる手仕舞いによる円買い戻し、円高リスクもじわじわと増していることには留意を要する。投機的な円安が生じにくい状況となっていることは、引き続きドル円相場の上値を重くしそうだ。引き続き110円割れは底固く、112円からは上値の重い状況が続こう。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :111.1(▲0.41)
ユーロ :124.45(▲0.16)
英ポンド :146.36(+1.04)
豪ドル :78.017(▲0.05)
カナダドル :82.784(+0.02)
スイスフラン :109.304(▲0.14)
ブラジルレアル :28.2083(+0.10)
中国人民元 :16.508(▲0.04)
韓国ウォン(日本円=100) :9.542(▲0.01)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1198(+0.003)
英ポンド :1.3173(+0.014)
豪ドル :0.7018(+0.002)
カナダドル :1.342(▲0.006)
スイスフラン :1.0166(▲0.003)
ブラジルレアル :3.9385(▲0.027)
中国人民元 :6.7354(+0.001)
韓国ウォン :1169.85(+4.06)

【主要国政策金利】
米国 :2.50
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :2.53(▲0.02)
米2年債 :2.33(▲0.01)
日本10年債利回り :▲0.04(±0.0)
日本2年債利回り :▲0.04(+0.00)
独10年債利回り :0.03(▲0.00)
独2年債利回り :▲0.59(▲0.00)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :26,504.95(+197.16)
NASDAQ  :8,164.00(+127.22)
S&P500 :2,945.64(+28.12)
日経平均株価 :休場( - )
ドイツ DAX :12,412.75(+67.33)
インド センセックス :38,963.26(▲18.17)
中国上海総合 :休場( - )
ブラジル ボベスパ :96,007.89(+480.27)
英国FT250 :19,705.17(+18.51)
ビットコイン :5689.05(+283.59)

【主要商品価格】
WTI :61.94(+0.13)
Brent :70.85(+0.10)
米ガソリン :202.65(+0.82)
米灯油 :207.02(▲0.76)

金 :1279.11(+8.42)
銀 :14.94(+0.31)
プラチナ :871.90(+20.60)
パラジウム :1370.99(+12.57)
銅 :6180.50(▲35:0.5C)
アルミニウム :1811.00(▲7:27.5C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :829.50(▲1.00)
シカゴ とうもろこし :363.00(+1.00)
シカゴ小麦 :428.00(▲5.25)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。

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