CONTENTSコンテンツ

景気循環銘柄米中戦争で売られる~農産品は堅調
  • MRA商品市場レポート for PRO

2019年5月30日 第1541号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「景気循環銘柄米中戦争で売られる~農産品は堅調」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品価格は引き続き農畜産品やソフトコモディティが物色され、景気循環系商品が売られる流れとなった。

中国政府がレアアースを通商交渉の材料にする、との見方が強まっていることが景気循環銘柄価格の下落要因となった。

景気減速懸念を受けた非景気循環銘柄へのシフトが起きているほか、農業セクターではエルニーニョの影響と考えられる気象条件の悪化が供給に影響を及ぼす、との見方が強まっている。

【本日の価格見通し総括】

前日の下げ幅が大きかったこともあり、今日は景気循環銘柄に買戻しが入るとみるが、米中通商協議がさらに厳しくなるとの見方が強まっているため、総じて引けにかけては売られる流れになるのではないか。

その中で農産品は引き続き物色されると予想される。

【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】

昨日の市場の大きな材料は、中国が米国との通商戦争にレアアースを用いる可能性があると報じられたことだ。

レアアースはほとんどのハイテク製品に用いられている必須金属の1つとなっており、これが行われた場合米ハイテク業界への影響は小さくない。

2018年の米国のレアアース輸入は中国からのものが8割を占めており、仮に輸出停止となればサプライチェーンが寸断される可能性は高い。米国が25%の関税上げの対象に、レアアースを含まなかったことからも米国にとって中国のレアアースが重要であることが分かる。

ただ、実際に中国が米国に対してレアアースの輸出を止められるかどうかは微妙である。以前、2010年~2011年に尖閣諸島問題を受けてレアアースの輸出停止に踏み切ったことがあるが、その結果日本は代替調達先を探し、レアアースの使用量を減らすなどの対策を行った。

レアアース価格の高騰で中国政府が取り組んでいた違法生産者の取り締まりができなくなったことも、レアアース輸出再開につながった。

米国の輸入規模は日本よりも大きいため、日本と同じ戦略が有効とは言わないが、国内の鉱山生産は再開しており国内で処理工場の建設も進めている。また、中国にとっても米国はレアアースの重要な輸出先である。

すなわち時間が経過するほどレアアース禁輸の影響は弱まることになるため、やるなら今すぐ、今すぐやらないなら結局脅しに留まる、と考えるのが妥当だろう。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

(マクロ要因)

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標再びの減速(価格下落要因)。

・世界景気の減速観測。IMFは2019年の経済見通しを引き下げ(+3.5%→+3.3%)ており、先行きの見通しのリスクも下向き。

・FRBの利下げの可能性が再び高まる(トランプ大統領があからさまに要求を始めており、米中貿易戦争の行方次第ではあり得る状況に)。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q119の中国GDPは前年比+6.4%、前期+6.4%と市場予想の+6.3%を上回りやや減速懸念が後退)。

・景気減速下での原油価格高騰は、消費国から生産国への所得移転を通じて景気の下押し要因に。また、リスク回避のドル高進行も価格上昇を抑制。

・2020年からインドが人口ボーナス期入りすることによる、構造的な需要の増加は中長期的な価格の上昇要因。

(特殊要因)

・米政権は対中関税引き上げを表明、中国もこれに対する報復を決定。華為技術との取引を禁じるなど、企業レベルまで制裁が拡大していること(下落要因)。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気後退など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・中東情勢の悪化を受けた域内景気の混乱と、それを受けた欧州景気への悪影響拡大(下落要因)

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。とりあえず5月末、10月末を期限として問題先送り(下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

(投機・投資要因)

・長期金利の低下による米長短金利の逆転が株安を誘発、リスク回避のリスク資産売り圧力が強まる場合。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油価格は下落した。中国政府によるレアアース輸出禁止措置の可能性が高まっている、と市場で意識され、株価が大きく調整したことが価格を下押しした。また、リスク回避のドル高が進行したこともドル建て資産価格を下押しした。

【原油価格見通し】

原油価格は一旦下値余地を探る展開になると予想。

米中貿易交渉による対立がさらに深化していることから景気への懸念が強まること、OPECプラスが減産幅の縮小を検討していることが価格を下押しするが、中東情勢不安が高まっていることが供給懸念を強め、価格を下支えする見込み。

イランに対する米国の対応は、場合によると本当に戦争を想定しているものである可能性が出ている(可能性はゼロではなくなったということ)。トランプ大統領はむしろイランと対話を望んでいるが、ペンス・ボルトンなどの共和党議会側が強硬姿勢であるため。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は小幅に上昇。目立った新規材料に乏しい中、米中通商戦争の影響で中国の景気が悪化するとの見方と季節性が価格を下押ししており、価格は低迷している。

【石炭価格見通し】

石炭価格は現状水準でもみ合うものと考えるが、北朝鮮への制裁継続や夏場にかけて季節的な需要増加観測から、7~8月頃にかけて上昇すると予想。その後季節的な調整の後、11月にかけて水準を切り下げる展開に。

また、中国による豪州炭の輸入規制(華為技研問題に対する報復措置)の影響でインドネシア炭にシフトしていることは逆に、上値を抑えると考えられる(日本が輸入する石炭価格CIFへの影響は中立)。米国の中国制裁強化も価格の上値を抑える公算。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・原油価格の上昇に伴う北米の増産継続は、需給緩和で価格の下落要因。

・OPECプラスの協調減産は7月以降も継続見込みであるが、米国の意向や増産したいロシアの意向も踏まえると、減産幅が縮小する可能性が高まっており原油価格の下落要因に。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

(特殊要因)

・米国のイランに対する制裁強化・ベネズエラ・リビアの情勢悪化に伴う供給途絶懸念は価格の上昇要因。

・米国のイスラエルへの過剰な肩入れと、イスラエルネタニヤフ首相の5選達成による、周辺産油国への武力行使の可能性が高まることは原油価格の上昇要因に。

・北朝鮮のミサイル発射により、制裁が継続される可能性が高まっていることは、北朝鮮からの石炭輸出(密輸)を制限し、価格の上昇要因(石炭)。

・米中情報戦争をめぐる華為技術排除の決定を受けて中国政府は豪州からの石炭輸入を規制、インドネシア炭にシフトしていることはNEWC価格の下落要因に(石炭CIF価格に対する影響は中立)。

(投機・投資要因)

・WTIはロング・ショートとも減少しているが、特にロングの解消売りが多い。これは米景気の先行きを懸念するもの。

・Brentはロングが増加はしているが、それ以上にショートの増加が顕著。OPECで減産幅の縮小が議論されていることが材料視されている。

・直近の投機筋のポジションは、WTIはロングが585,979枚(前週比 ▲22,000枚)、ショートが107,581枚(▲12,590枚)、ネットロングは478,398枚(▲9,410枚)、Brentが425,955枚(前週比+1,309枚)、ショートが32,340枚(+5,005枚)、ネットロングは393,615枚(▲3,696枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME非鉄金属価格は下落。中国が米国に対してレアアースの輸出制限を真剣に考えている、と報じられたことやそれを受けた株安、ドル高が影響した。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は景気への懸念から下押し圧力が強まるものの、投機の買戻しが一定程度入ると考えられることが価格を下支えすると考える。

投機の売りがかさみ、ネット売り越しとなっているため中国の経済対策期待やLME指定倉庫在庫の減少継続、(希望的観測であるが)米中の合意期待を材料に買戻しが入りやすい地合いにある。

しかし、米中通商協議は難航、場合によると決裂する可能性が出てきている中、特に最大消費国である中国の期待需要が減少していることから地合いは軟調。またリスク回避のドル高圧力の高まりも価格を下押し。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は再開しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCも高止まり。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

(特殊要因)

・銅の生産減少観測(環境問題によるインド、露天掘りから地下生産に変更するインドネシア)、ヴァーレの尾鉱ダム事故の影響による供給減少(アルミやニッケルなどに波及する可能性)。

・ブラジルの裁判所、ハイドロのAlunorteアルミナ精錬所の再稼働を許可。アルミナ価格の下落を通じてアルミ価格の下落要因に(アルミ)。

・LME指定倉庫在庫の減少が、LMEの倉庫運営ルール変更に伴う保管場所変更の取引の影響である場合、ルールが見直された際に再度、LME指定倉庫在庫が急増する可能性(下落要因)。

(投機・投資要因)

・5月17日付のLMEポジションは、銅と鉛を除き、ショートの買戻しが入り始めたが、先週はむしろ景気の先行きを懸念したロングの売り圧力のほうが強まる形となっている。

投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は▲37.7億ドル(前週▲32.2億ドル)と売り越し幅を拡大。上昇率は▲16.9%。

買い越し枚数はトン数換算ベースで▲1,106千トン(▲1,043千トン)と減少。亜鉛と錫以外はトン数ベースでネット売り越しのまま。ネット売り越しの増加率は6.1%。

今後、総じてこれらのポジションの買戻し圧力が強まる可能性があり、テクニカルに非鉄金属価格が上昇する余地があることは留意。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップ市場は上昇、原料炭スワップ先物は横ばい、中国鉄鋼製品価格は小幅続落となった。

米中通商交渉の難航度合いがさらに深化していることが、鉄鋼製品価格を押し下げていることが鉄鉱石価格を下押しする一方、鉄鉱石の供給不安が価格を押し上げている。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は高値圏でもみ合うものと考える。ヴァーレの尾鉱ダムの再稼働見込みが立っていないことや、中国生産者の洪水事故など、鉄鉱石の供給懸念が強まる一方、中国の粗鋼生産の回復が需要を押し上げるものの、米中貿易交渉の難航に伴う景気への懸念が上値を抑えるため。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・中国の鉄鋼製品在庫水準の高さは価格の下落要因。鉄鋼製品在庫は前週比▲40.9万トンの1,153.3万トン(過去5年平均1,162.1万トン)と例年をやや下回っている。

・中国の鉄鉱石在庫水準の高さは価格を下押し。鉄鉱石在庫は前週比▲39.0万トンの1億2,780万トン(過去5年平均1億1,952.6万トン)、在庫日数は▲1.0日の33.2日(過去5年平均 30.6日)と例年の水準を上回る。

・季節的に鉄鋼製品在庫の取り崩し時期であり、価格には下押し圧力がかかりやすい。

・長期的には2020年に人口ボーナス期入りするインドの需要が鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

(特殊要因)

・ヴァーレの尾鉱ダム決壊の影響が拡大し、さらに供給減少が起きた場合(自社・他社ともにあり得る)、価格の上昇要因に。

・ヴァーレの尾鉱ダム事故の影響で、今後、低品位鉱石価格にも上昇圧力がかかる公算。

(投機・投資要因)

・固有の要因は特になし。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金・銀価格は上昇した。景気への懸念から長期金利が低下したことで実質金利が低下したこと、米中の対立の激化、イタリアの財政問題、中東情勢などの安全資産需要が価格を押し上げたが、同時にドル高が進行したことが価格を下押しした。

PGMは金銀価格が堅調に推移したものの、株安の進行でプラチナは下落、パラジウムは供給不足が材料視され、結果前日比プラスで引けた。

PGM現物の需給バランスを見る上での指標となるロジウムの価格は2,840ドルと変わらず。需給は緩和方向(需要の減速)にある模様。

【貴金属価格見通し】

金価格は米中貿易交渉の進展状況をにらみつつ、神経質な展開になると予想されるが、中東情勢や欧州の情勢不安を材料に安全資産需要は堅調とみられること、ここにきて市場は再びFRBの利下げを期待し始めていることから総じて底堅い推移になると考える。

銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)の上昇が金銀レシオを押し上げているため対金で割安に推移。

一方、イタリアの財政問題、米国の債務上限問題、中東情勢の混乱懸念(イラン・サウジアラビア・イスラエルを中心に)が安全資産需要を高めるため、リスクプレミアムが乗る形で価格を押し上げへ。

PGM価格は金銀価格が底堅い推移になるため堅調だが、同時に米中通商協議が難航、対立が激化する中で株価が下押しされやすく、対金銀では割安に推移することになると予想。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・FRBの利下げ期待が市場で再び高まっていること、原油価格の高止まりは実質金利の低下を通じて金銀価格の上昇要因に。

・景気の先行きを懸念した株価下落とそれに伴う長期金利・実質金利の低下(金銀価格の上昇要因)。ただし、欧州の政情安定化や米中貿易戦争の合意、景況感の改善で株価が上昇した場合には金銀価格の下落要因。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト(パラジウムの上昇要因・プラチナの下落要因)。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

(特殊要因)

・米中通商交渉は難航しており、相互報復まで発展(価格の上昇要因)。知的財産権や技術の強制移転などの重要なポイントで妥結できておらず、米中の覇権争いであり長期化の見込み(価格の下支え要因)。

・米国とイランの開戦リスク。トランプ大統領はその気がなさそうだが、共和党議会はイランとの開戦に前向きな可能性。

・米国の債務上限問題の顕在化(8月~9月にデフォルトするリスク)。

・欧州議会選でのポピュリズム政党の躍進。それに伴うEU懐疑論の高まりによる域内の政情不安定化。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

(投機・投資要因)

・長期金利の低下による米長短金利の逆転が株安を誘発、リスク回避のリスク資産売り圧力が強まり、安全資産需要が高まる場合。

・銀価格は金銀在庫レシオが銀在庫の減少、ないしは金在庫の増加、あるいは両要因によって低下した場合、金銀レシオが上昇するリスク(銀価格の上昇要因)。

・金銀はロングが減少、ショートが増加している。むしろ地政学的リスクが高まっているため、ショートの買戻しによる上昇リスクは警戒。

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが203,628枚(前週比 ▲22,733枚)、ショートが114,823枚(+12,998枚)、ネットロングは88,805枚(▲35,731枚)、銀が75,482枚(▲2,060枚)、ショートが90,144枚(+10,393枚)、ネットロングは▲14,662枚(▲12,453枚)

・直近の投機筋のポジションは、プラチナはロングが46,174枚(前週比 +1,437枚)、ショートが30,684枚(+11,697枚)、ネットロングは15,490枚(▲10,260枚)、パラジウムが11,556枚(+617枚)、ショートが3,507枚(+189枚)、ネットロングは8,049枚(+428枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物価格はトウモロコシ・小麦が下落、大豆が上昇した。トウモロコシはこの数日の上昇ペースがあまりに早かったため、ドル高が進行する中で若干売られ、大豆は今後の作付けの遅れが懸念され物色された(詳しくは本日のMRA's Eyeをご参照ください)。

【穀物価格見通し】

穀物価格はトウモロコシ・大豆・小麦とも生産地の作付けが天候の影響で遅れが深刻な状況となっており、豪州では小麦が不作となるなど、異常気象に伴う生産の下振れが強く意識されているため、記録的な水準にある投機の売り解消が価格を押し上げ、上昇余地を探るとみる。

ただし、米中貿易戦争の継続は上値を抑えよう。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・米国のトウモロコシ・大豆の生産増加観測による需給緩和観測。

・米国の作付けの遅れに伴う需給タイト化観測。トウモロコシ、大豆とも過去5年の最低水準。

・豪州東部の大干ばつによる小麦生産の減少懸念。

・作付面積動向(トウモロコシは下落、大豆は上昇、小麦は上昇)トウモロコシ作付意向面積 9,279万エーカー(市場予想 9,127万エーカー、前年8,803万エーカー)大豆 8,462万エーカー(8,620万エーカー、8,898万エーカー)小麦 4,575万エーカー(4,688万エーカー、4,734万エーカー)

・5月の米需給報告の在庫見通し

トウモロコシ24億8,500万ブッシェル(前穀物年度20億3,500万Bu)大豆 9億7,000万Bu(8億9,500万Bu)小麦 11億4,100万Bu(10億8,700万Bu)

・実質金利の低下に伴うドル安の進行は、シカゴ穀物の輸出競争力を改善し、需給面で価格の上昇要因に。

(特殊要因)

・米中貿易交渉は相互報復まで発展(価格の下落要因)。知的財産権や技術の強制移転などの重要なポイントで妥結できておらず、米中の覇権争いであり長期化の見込み。

・米政府はブッシェル当たり大豆2ドル、トウモロコシ0.04ドル、小麦0.63ドルの補助金を供給することを検討。生産減少を食い止めるため価格の下落要因に。

・エルニーニョ現象発生による北米の増産は価格の下落要因。ただし洪水などが発生し、災害が激甚化した場合には価格の上昇要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

(投機・投資要因)

・主要穀物のショートポジションは、作付けの遅れなどからトウモロコシ・大豆・小麦とも解消圧力が強まっており、価格の押し上げ要因となっている。

・直近の投機筋のポジションは、トウモロコシはロングが415,551枚(前週比 +41,920枚)、ショートが412,306枚(▲145,214枚)、ネットロングは3,245枚(+187,134枚)、大豆はロングが149,946枚(+10,743枚)、ショートが249,887枚(▲12,711枚)、ネットロングは▲99,941枚(+23,454枚)、小麦はロングが135,831枚(▲6,743枚)、ショートが151,962枚(▲34,017枚)、ネットロングは▲16,131枚(+27,274枚)

◆本日のMRA's Eye


「米国 記録的な穀物作付け遅れ」

北米の穀物、この場合トウモロコシ、大豆、小麦を指しているが年初来の価格上昇が顕著で、足元の年初来上昇率も12.1%(原稿執筆時点)となった。これは年初、北米に大寒波が襲来、それに伴うと考えられる「歴史的な洪水」がグレートプレーンズ近辺に発生したためだ。

正確なことは言えないが、昨年の秋からエルニーニョ現象が発生しており、世界的に異常気象が発生してもおかしくない状況にあったため、それに伴うものと考えるのが自然だろう。

エルニーニョ現象やラニーニャ現象は、それに伴うい異常気象の発生にそれなりの傾向値があるが温暖化の影響もあるせいか、発生する異常気象が激甚化する傾向が強まっている。

例えば通常であればエルニーニョ現象の発生は「多雨」により穀物生産にはプラスであるが、今回のように洪水にまで規模が拡大してしまうことも起こり得るため、もはやエルニーニョ・ラニーニャ発生時には想定できない気象事故が発生する、と整理しておいた方がリスクマネジメント上は正しいのではないだろうか。

結局、この洪水の影響で北米の穀物の作付けには大幅な遅れが出ている。通常、北米ではトウモロコシの播種は4月上旬~6月上旬まで行われ、遅くとも6月第2週頃には作付けを終える。

しかし、現時点で北米の作付け進捗率は58%に止まっている。これは過去5年平均の90.0%を大きく下回る。

さらに言えば、データ取得が可能な1990年以降で見てみても、ヒストリカルアベレージが88.6%(弊社の計算による季節調整前の単純平均)であることを考えると、歴史的に見ても北米のトウモロコシの作付けが危機的な状況にあることを伺わせるものだ。

1990年以降のデータで見てみるとこの時期に50%台の作付け進捗だった年は、1995年の1年だけだ。この年は今年と同様、作付け時期の低温と多雨の影響で作付けが遅れたのだ。

その後、作付けが急速に進捗し、進捗率は91%まで回復して作付けを終えているが、その後も雨で種が流されたり、夏にかけての熱波などの不幸が重なった。

また、作付けの遅れで作付け自体を諦めた農家が増えたため、作付面積も年比▲800万エーカーの7,120万エーカーに減少、収穫面積に至っては▲730万エーカーの6,520万エーカーに減少した。

単収は113.43ブッシェル/エーカーと前年の138.61ブッシェル/エーカーから大幅に低下、単収・作付け両方の影響で生産は前穀物年度が記録的な豊作だったこともあり、前年比▲26.4%の1億8,797万ブッシェルとなった。

さらに翌年もその影響が残存したため、トウモロコシ価格は2年にわたり、記録的な価格上昇となる。結局豊作の影響で大きく価格が下落し、210セント/ブッシェル(1994年9月21日)からピークとなる554.5セント/ブッシェル(1996年7月12日)まで、実に164%の上昇となった。

国連世界気象機関の直近の発表では、今年はエルニーニョの発生が予想されているが(気象庁はすでにエルニーニョが発生しているとしている。これは各国のエルニーニョ・ラニーニャ発生の定義が異なることによる)、影響は大きくないとしている。

しかし上述の通り、異常気象の発生確率が上がることを考えると、1995年の時のように、夏場の重要な受粉期に熱波が襲う可能性も排除できない。

通常、トウモロコシの作付けに遅れが出た場合には、大豆へのシフトが進むことになるが大豆の作付けにも遅れがみられており、今年はトウモロコシ、大豆とも不作になる可能性が高いと考えられる。

直近のデータでは、大豆の作付け進捗率は29%、同じ時期の過去5年の最低水準が56%であることを考えても、明らかに例年よりも作付けに遅れがみられている。

もちろん、この1~2週間で急速に作付けが進み、気象状況が改善するという期待がないわけではないが、この30年で見た時の最も悪い状況に酷似する状況であるだけに、トウモロコシ、大豆の作付けが無事終了し、豊作になるというのはやや見方が楽観的過ぎるだろう。

5月の米農務省データを基にシカゴトウモロコシ価格に対する説明力の高い、「需給率(需要÷供給:弊社作成の指標)」を算出すると、89.4%が見込まれているが、仮に1995年と同様の状況になったとすると、恐らく単収は現在見込まれている176.4ブッシェル/エーカーから▲10ブッシェル/エーカー程度は低下することになるだろう。

ただしこの単収の水準は、過去からの単収の改善ペースを考えるとほぼ回帰直線上に乗る程度のものであるため歴史的な凶作というレベルではない。

仮に歴史的な凶作となれば156.4ブッシェル/エーカー程度までの減産を見込む必要があり、需給率は101.5%に上昇する。その場合には輸出削減、エタノール向けの使用減少、といった需要面の対応に加え、輸入の増加なども検討しなければならなくなる。

需給率の説明力が高い2000年以降のデータを用いて2019年のトウモロコシ価格の推定を行うと、▲10ブッシェル/エーカー程度の単収低下で615セント/ブッシェル、▲20ブッシェル/エーカーまでの単収低下で900セント/ブッシェルまでの上昇があり得ることになる。

農業技術の進歩によって1995年と同様のリスクが顕在化する可能性は、決して高くはないと考えられるが単純なシミュレーションではトウモロコシ価格にはさらなる上昇の可能性があることを示唆している。

CFTCの投機筋のポジション動向を見るに、トウモロコシのショートポジションは今年の3月18日時点で過去5年の最高水準となる433,114枚となったが、足元、急速にこのショートポジションの巻き戻し(買戻し)が発生している。今後もこのポジション調整は継続すると見られさらに上昇余地を探る動きとなるだろう。

米中貿易戦争の影響でシカゴ穀物価格には強い下押し圧力が掛かっていたが、供給面のリスクが顕在化する可能性が高まっていることにより、上昇リスクを警戒すべき時期にきている。穀物価格の上昇は直接的には日本の畜産業に影響を及ぼすため、影響は小さくない。

なお、仮にトウモロコシの競合飼料である、小麦に影響が波及した場合、北アフリカや中東などの産油国の食品価格上昇につながり、域内経済が不安定化するリスクも無視できない。

まずは6月の米需給報告の内容に注目したいが、それ以上に気象変化に注目しておく必要があるだろう。価格上昇リスクを回避するために、先物などの活用も検討するべき時期にあるといえる。

◆主要ニュース


・5月独失業者数 前月比+60千人(前月▲12千人)
 失業保険申請率 5.0%(4.9%)

・米MBA住宅ローン申請指数 前週比 ▲3.3%(前週+2.4%)
 購入指数▲1.4%(▲2.0%)
 借換指数▲6.0%(+8.3%)
 固定金利30年 4.33%(4.33%)、15年 3.73%(3.78%)

・華為技術、米中戦争を受けて米国で訴訟。

・ポンペオ国務長官、「華為技術は中国政府の道具。」

・EU、財政規律違反でイタリアに対して書簡を送付。月末までに事情説明を求める。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・DOE米在庫統計市場予想
 原油▲1,045KB(前週+4,740KB)
 ガソリン▲592KB(+3,716KB)
 ディスティレート+534KB(+768KB)
 稼働率+1.08%(▲0.60%)

・API石油統計 原油在庫▲5.27MB
 クッシング▲0.18MB
 ガソリン+2.7MB
 ディスティレート▲2.1MB

・米ボルトン大統領補佐官、「イランがタンカー攻撃の背後にある
ことはほぼ確実。」

・イラク Basra Oil、原油生産を▲50万バレル/日程度減産し、280万バレル/日に。理由は不明。

・ノルウェー 原油労働組合、来週以降のストライキを計画。少なくとも3つの鉱区の生産が停止し▲16万バレル/日程度の減産に。

・イラン ロウハニ大統領、「米国が原油制裁を停止するならば対話に応じる。」

・米アルンデンカー財務次官、「欧州がイラン制裁を迂回するならば、金融システムから排除も。」

【メタル】
・サザンカッパー、2026年までに新しい技術を喚起し、今後8年で世界のトップ3の生産者になることを目標。

・CRU、「2019年の世界のアルミ需要は生産を160万トン上回る見込みで、2023年まで供給不足は継続する見込み。中国は新しい精錬所に限定的にしか投資をしないため。」

・4月日本伸銅品生産 前年比▲7.0%の6万4,960トン(前月▲7.3%の6万7,384トン)

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.ICEアラビカ ( その他農産品 )/ +3.59%/ ▲2.31%
2.LIFFEロブスタ ( その他農産品 )/ +2.92%/ ▲6.24%
3.CME木材 ( その他農産品 )/ +2.86%/ ▲4.87%
4.CBT大豆ミール ( 穀物 )/ +1.98%/ +4.18%
5.NYM米天然ガス ( エネルギー )/ +1.98%/ ▲10.44%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
68.TGE小豆 ( 穀物 )/ ▲15.80%/ +23.54%
67.CBT小麦 ( 穀物 )/ ▲2.82%/ ▲2.53%
66.DME Oman ( エネルギー )/ ▲2.05%/ +25.12%
65.SHFニッケル ( ベースメタル )/ ▲1.91%/ +12.08%
64.LME錫 3M ( ベースメタル )/ ▲1.86%/ ▲3.55%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :25,126.41(▲221.36)
S&P500 :2,783.02(▲19.37)
日経平均株価 :21,003.37(▲256.77)
ドル円 :109.61(+0.23)
ユーロ円 :122.01(▲0.06)
米10年債利回り :2.26(▲0.01)
独10年債利回り :▲0.18(▲0.02)
日10年債利回り :▲0.09(▲0.02)
中国10年債利回り :3.29(▲0.03)
ビットコイン :8,653.95(▲33.84)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :23.83(+0.05)
エネルギー :24.03(▲0.24)
ベースメタル :19.05(+0.57)
貴金属 :16.15(▲1.1)
穀物 :23.83(+0.45)
その他農畜産品 :27.98(+0.1)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :27.59(▲0.23)
Brent :24.09(▲0.05)
米天然ガス :22.08(+0.01)
米ガソリン :27.24(▲1.19)
ICEガスオイル :26.15(+0.46)
LME銅 :16.94(+0.54)
LMEアルミニウム :16.45(▲0.21)
金 :24.59(+0.62)
プラチナ :19.11(▲1.3)
トウモロコシ :29.97(+0.28)
大豆 :24.59(+0.62)

【エネルギー】
WTI :58.81(▲0.33)
Brent :69.63(▲0.48)
Oman :66.95(▲1.40)
米ガソリン :194.52(▲1.15)
米灯油 :196.75(▲2.50)
ICEガスオイル :609.00(▲9.75)
米天然ガス :2.63(+0.05)
英天然ガス :29.93(▲0.49)

【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :69.63(▲0.48)
SPO380cst :391.64(▲6.02)
SPOケロシン :79.59(▲0.75)
SPOガスオイル :79.89(▲0.96)
ICE ガスオイル :81.74(▲1.31)
NYMEX灯油 :197.75(▲0.68)

【貴金属】
金 :1280.19(+0.86)
銀 :14.43(+0.08)
プラチナ :793.68(▲6.04)
パラジウム :1348.89(+6.44)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :5,890(▲90:25.5C)
亜鉛 :2,532(▲43:148B)
鉛 :1,810(▲15:12C)
アルミニウム :1,797(▲7:27C)
ニッケル :12,090(▲160:50C)
錫 :18,800(▲460:165B)
コバルト :33,500(±0.0)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :5891.00(▲75.00)
亜鉛 :2540.50(▲18.50)
鉛 :1823.50(+10.50)
アルミニウム :1796.00(▲7.50)
ニッケル :12040.00(▲110.00)
錫 :18770.00(▲355.00)
バルチック海運指数 :1,082.00(+16.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :99.04(▲0.37)
NYMEX鉄鉱石 :98.59(+0.21)
NYMEX原料炭スワップ先物 :206.25(±0.0)
上海鉄筋直近限月 :3,913(▲29)
上海鉄筋中心限月 :3,818(▲26)
米鉄スクラップ :310(±0.0)

【農産物】
大豆 :872.00(+16.00)
シカゴ大豆ミール :319.00(+6.20)
シカゴ大豆油 :27.73(+0.44)
マレーシア パーム油 :2044.00(+26.00)
シカゴ とうもろこし :418.75(▲1.50)
シカゴ小麦 :490.50(▲14.25)
シンガポールゴム :188.70(+1.80)
上海ゴム :11860.00(+185.00)
砂糖 :11.87(+0.12)
アラビカ :99.50(+3.45)
ロブスタ :1412.00(+40.00)
綿花 :69.06(▲0.41)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :85.20(+1.23)
シカゴ生牛 :112.35(+0.80)
シカゴ飼育牛 :142.73(+0.50)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。