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G20・米中首脳会議を控えて様子見
  • MRA商品市場レポート for PRO

2018年12月3日 第1446号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「G20・米中首脳会議を控えて様子見」

昨日の商品価格は前日売られた非景気循環系商品のうち、農産品が物色 された。また非鉄金属の一角も売られ過ぎ感から買い戻される形となっ た。

市場は週末に予定されているG20とその後の米中首脳会談の内容を見極 めたいとする向きが多く、どちらかといえばリスク回避的な動き(足元 の状況であればリスク資産売り、商品価格下落)圧力が強かったように 感じる。

注目のG20は首脳宣言は採択されたものの、保護主義政策と戦う、とい った文言は米国が主張しなかったため採用されず、G20がG7同様、あま り機能しなくなっていることを印象付ける形となった。

またもう1つの注目だったサウジアラビア ムハンマド皇太子の扱いだ が、ロシアや米国などの国と接触はしたものの、米国は立ち話程度の雑 談に止まったが、プーチン大統領とは固く握手を交わすなど、温度差が 目立った。

日産・ルノー問題で揺れる仏マクロン大統領とも対談があったが、ムハ ンマド皇太子が「心配しないで欲しい」と発言したのに対し「私は心配 している、(あなたは私の話をまともに)聞いていない」と発言するな ど厳しい口調で同皇太子を咎めた。結局、目立った進捗があったわけで はなく膠着状態が継続している。

G20後の米中首脳会談は、追加関税の引き上げを一時凍結し、貿易問題 の解決に向けて対話を継続することで一致した。しかし引き上げの猶予 期間は90日であり米中に横たわる問題を解決する時間が十分あるとは言 えない。

やはり、米国は中国が「面子をつぶしてまでも米国の要求に応じる」ま で制裁を続ける構えだ。

少し話が逸れるが、先日、トランプ大統領・米国はロシアとのINF(中 距離核戦力全廃条約からの離脱を打ち出した。しかしこれは実はロシア からも渡りに船の可能性はある。

というのもロシアもソ連崩壊後、気が付けば国の周りを、米国以外にも 中国、北朝鮮、イスラエル、インド、パキスタンに囲まれており、これ らの国に対する防衛線を強化する必要が出てきている。

これは米国も同様であり、ロシアに対する対抗することももちろんであ るが、やはり中国を意識したものと考えるべきである。このように米国 は大戦後に進めてきた「親中政策路線」を着々と変更し始めてきている。 本当の対立はこれからだろう。

この週末の米中首脳会談だけに関して言えば、「交渉の前提となる米国 の好景気の持続」や「再来年の大統領選挙を睨んだ場合の米国人ウケ」 を考えると、多少の制裁緩和感を醸成する必要が米国にあったのは間違 いがない。

また、構造的に景気が減速することが必定な中国にとっても、「経済の 急速な悪化・共産党体制維持に赤信号が灯る」ような景気の急減速は望 まないため、今回はとりあえず米国の申し出を受けて一息ついた、とい う感じだろう。

とはいえ、市場は交渉決裂もあると考えていたこと、さしあたり関税引 き上げが見送られたことから週明けは景気循環系商品価格の上昇要因に なると考えられる。

今週は景気の先行きを占う上で重要な統計が多数発表される。特に注目 しているのは米ISM製造業指数(市場予想57.5、前月57.7)と週後半の 米雇用統計(市場予想 前月比+19.9万人、前月+25.0万人)に注目して いる。いずれも足元の好調は続くものの、先月からの減速感が強まる内 容になると見ており、景気循環銘柄価格に緩やかな下押し圧力を掛けつ つ、利上げペースの鈍化を通じて金融面で価格を下支えすることになる と考える。

後、経済統計ではないが今週6日に予定されているOPEC総会も、「景気 減速局面での原油価格の高騰」をもたらす可能性があるため、十分な注 意が必要だ。今のところ▲100万バレル~▲140万バレル程度の減産が見 込まれており、OPEC経済委員会は▲130万バレルの減産を支持している。

弊社は予想の下限である▲100万バレル程度の減産に留まるのではない かと考えている。これを上回る減産になるにはロシアの十分な協力、価 格を押し上げることに関する米国の賛同が必要になるため、若干ハード ルは高いのではないだろうか。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

昨日の原油価格は下落した。G20を控えてリスク回避姿勢が強まる中で ドル高が進行したこと、朝方発表された中国製造業PMIが市場予想を上 回る減速となったことが価格を下押しした。しかし、OPEC経済委員会が ▲130万バレルの減産を支持したことで下げ渋る形となった。

注目のG20は首脳宣言は採択されたものの、保護主義政策と戦う、とい った文言は米国が主張しなかったため採用されず、G20がG7同様、あま り機能しなくなっていることを印象付ける形となった。

またG20後の米中首脳会談は、追加関税の引き上げを一時凍結し、貿易 問題の解決に向けて対話を継続することで一致した。しかし引き上げの 猶予期間は90日であり米中に横たわる問題を解決する時間が十分あると は言えない。ただし、さしあたり関税引き上げが見送られたため週明け は価格上昇要因になると考える。

12月のOPEC総会では▲100万~▲140万バレルの減産が見込まれている。 週後半のOPEC経済委員会では▲130万バレルの減産が支持された。単体 であれば100万バレル、ロシアが賛同すれば140万バレルの減産になると 見ている。

▲140万バレルの減産を行えば、2019年の「前年比でみた場合の供給過 剰感」は払拭されることになるため、原油価格はBrentベースで70ドル 程度、WTIで60ドル程度まで上昇すると予想される。

サウジアラビアは▲100万バレル程度の減産は行いたい、と考えている とみられるが、実際にこれができるかどうかは米国の反応次第だ。

CIAはムハンマド皇太子がカショギ氏の殺害の指示をしたと結論づけて おり、ある意味サウジアラビアは米国に弱みを握られている形となって いる。国際社会もムハンマド皇太子を擁護するトーンは強くない。

となると、下手に大規模な減産を行って原油価格が高騰した場合、安い 原油を望む米トランプ大統領のご機嫌を損ね、ムハンマド皇太子批判が 強まる可能性もある。その意味では▲100万バレル程度の減産にとどめ る可能性は高いとみている

ただ、▲140万バレル程度の減産であっても、来年の供給過剰分の払拭 にとどまるため、価格上昇は穏やかなものに留まり、トランプ大統領が 激怒する、ということはないのではないか。

しかし、これにイランに対する制裁が進捗すると、前年と比較した場合 の需給はよりタイトになり、Brentで70ドルを超える大幅な上昇になる と考えられる。完全にゼロになるなら100ドルを大きく超えるだろう。

この場合、価格には上昇圧力が掛かることになるが、景気拡大ペースの 減速感が強まる中での原油価格上昇であり、その後の景気減速時の需要 の減少を大きくさせ、下落幅が大きくなる可能性がある。

しかし、需給面の材料を整理すると価格には下向きバイアスがかかりや すい。そもそも景気が循環的に減速する可能性が高い中で米国の利上げ が持続する見通しである上、米国発の中国制裁、同盟国への保護主義政 策の拡大が景気を下押しすることになる。

中国に対する制裁は、超党派で決定していると考えられるため、今回の 中間選挙で議会にねじれが発生しているが、恐らく継続することになる だろう。

先日のペンス副大統領の講演でのスピーチは、明確に経済面で中国に宣 戦布告しているのと同じである。これはトランプ政権というよりも、議 会共和党の意向と考えたほうが良い。

米国が中国と貿易で合意するとの報道があったが、選挙前のリップサー ビスであり、実際に合意するのは容易ではない。というのも一連の制裁 で米国は中国から、まだ何も得ていないからだ。

ではいつまで制裁が続くかといえば、具体的には、中国の景気拡大が失 速して米国と覇権を争えるような状態になくなる、中国が世界シェアを 取りに行こうとしているハイテク分野の内製化をあきらめる、人民元高 を許容する(バブル崩壊時の日本と同じ)、といった明確な成果がある まで継続するのではないか。

ただし、利上げを継続する中で米国景気が失速し、国民からの不満が高 まる可能性がある2019年末頃が、翌年に大統領選挙を控える「トランプ 政権のリミット」と考えられ、制裁は継続しつつも来年春頃までに一部 制裁が緩和(追加緩和の一時凍結)されるのがメインシナリオだ。

トランプ大統領弾劾裁判の可能性が高まっていたが、共和党が上院で過 半数を維持しているため、弾劾は実質的に不可能だろう。そして、単体 で人気が採れる大統領候補はほかにはおらず、トランプ政権は二期目に 突入する可能性が高いと見ている。

イラン問題の今後の展開は複数考えられるが、今のところ来年の5月ま では制裁の100%履行が延期された。

イランに対する制裁が解除されるのは、イランが明確に核放棄する場合 に限られるとみられる。上下院を民主党が確保できなかったためだ。

仮に予定通り禁輸措置が行われるとすれば、サウジやUEAがこれを代替 することになるだろう。しかしその場合、OPECスペアキャパシティは 「ゼロ」の状態になり、微小な有事が発生しただけでも原油が100ドル を超える上昇になってもおかしくない。

仮に70ドル~80ドルの原油価格が続けば、景気の循環的な減速局面での 原油価格高騰であるため、米国の増産とOPECの減産幅縮小と相まって、 その後、大幅な価格下落がもたらされると予想する。

ただし、需要の減速が明確ではない上に上流部門投資が十分ではないこ とから、下落したとしてもWTIで50ドル、Brentで60ドルを長期にわたっ て下回り続けるのは難しいと考える。

北朝鮮問題はトランプ大統領からすればある意味「終わった材料(支持 率上昇につながらない材料)」だった。

しかし、選挙の結果議会がねじれたため、大統領選に向けたアピール目 的で北朝鮮と和平条約を結ぶ可能性はあり得る。この場合、地政学的リ スクは後退するが、日本の防衛負担が増えると考えられるため、日本は 国防を巡って議論が紛糾することが予想される。

ロシアとの距離を縮めているのは、イスラエルと敵対するイランを擁護 しているロシアを懐柔することで、シリアからのイラン軍撤退を促す、 という意図があるためと考えられる。

よってロシアとの関係改善は、ある程度中東情勢の緊張緩和に寄与する と期待される。原油の価格面では下押し材料となるだろう。

欧州はかつての最も親密な同盟地域だったが、民主主義の傾向が強く、 リベラルな雰囲気が強いこの地区とトランプ大統領は反りが合わない。 この地区との対立は貿易問題での対立を激化させ、需要面で価格にマイ ナスに作用すると予想される。

短期的には投機筋動向が価格に影響を与えやすいが、11月27日付の WTIの投機筋ポジションは、ロングが前週比▲17,170枚の511,679枚、シ ョートが+1,896枚の163,558枚、Brentは11月27日付でロングが▲6,882 枚の271,729枚、ショートは+7,175枚の103,217枚となっている。

WTI、Brentともロングの解消売り圧力が非常に強く、新規にショートポ ジションが増えている。景気の減速と、OPEC減産合意が難しいのではと の見方が強まっていることによるものだ。

しかし、ショートが増加していることはOPECが減産合意した場合の買戻 し圧力が強まっていることを意味しており、想定以上に価格が大きく上 昇する可能性があることは意識しておきたい。

中長期的には中国の人口ボーナス期が2030年頃まで続く事、2020年頃か らはインドも人口ボーナス期に入り需要の増加が見込まれることから強 気である。

なお、EVが普及して原油需要は2035年~2040年頃にピークを迎えるとの 見方が市場のコンセンサスとなりつつあるが、リチウムやコバルトの供 給問題や、EV普及のための財政負担を考えると、補助金のサポート無し では成立しないEV化が、市場の期待通りに進むとは考え難い。

同様に、補助金のサポートが必要なバイオ燃料が化石燃料に取って代わ るシナリオも想定し難い。

これに加えて、軽量化目的の樹脂利用(化学製品向け需要の増加)など も期待できること、液体燃料は保存や輸送の観点からみて依然割安であ り、アフリカなどの新興国では引き続き利用されると見られることから、 2035年に「需要の伸びは鈍化」するものの、減少に転じると判断するの は早計ではないだろうか。

実際に減少に転じるのは世界的に人口伸びの鈍化が実感される頃(2050 年頃か)になると見る。

この見通しの上昇リスクを現物の需要・供給に分けてみてみると、需要 面は原発事故などの突発事象で他のエネルギーを原油で代替せざるを得 なくなった時がこれに当たるが、これはなかなか想定し難い。

供給面は、以下のようなものが上昇リスクと考えられる。

1.中東情勢不安の顕在化

2.PDVSA(ベネズエラ)の生産停止

3.上流部門投資の低迷(徐々に再開)

この中で顕在化の可能性が高まっているのが1.と2.だ。

1.については米国・サウジ・イスラエルvsロシア・イランの構図で考 えると理解しやすい。トランプ政権がイランに対して強硬な態度を取っ ているのは、ユダヤ人ロビーとキリスト教福音派に配慮してのことであ り、議会としてもロシアとの対決姿勢を強める構図となる。

そして、イラン産原油を一滴も買うな、という相当強硬な政策が採用さ れている。それが実際に可能とは思えないが、この結果、イランは核合 意離脱並びにホルムズ海峡封鎖オプションを誇示せざるを得ず、それだ けで価格は上昇するだろう。

また、イランからすればこれは従来からこの地域に存在する、シーア派 とスンニ派の争いである。今までと違うのが、サウジアラビアがイスラ エルと一時的に連携する可能性があることだ。ただ、米国のイスラエル への大使館移転で、連携する可能性は低下している。

これにクルド人vsトルコ・イラン・シリア・イラク、といった対立軸も 入ってくると本当に理解が困難になる。基本、目の前の敵の敵は見方の 構図がその時発生している問題を理解する上での手助けとなる。

これに加えてムハンマド皇太子のスキャンダル、それに伴う欧米の制裁 と報復が原油供給を著しく減じるシナリオも想定される。

さらに、東西分裂状態が続くリビアで原油生産が安定して増加する可能 性が低いことも、供給不安を高めるだろう。

2.については5月の選挙でマドゥロ大統領が再選を果たし、国内の状況 はさらに悪化している。

PDVSAの生産が完全に停止すれば恐らく原油価格は10ドル単位で上昇す るとみるが、これが現在じわじわと顕在化している形。これはもはやメ インシナリオとなっている(その後OPECの減産解除で大幅に下落する展 開を予想)。

1.と2.の違いは、1.はホルムズ海峡の封鎖が意識されるため、供給 途絶が長期にわたる可能性がある一方、2.が顕在化した場合湾岸諸国 の増産が予想されるため、影響が一時的なものに止まる点である。

1.の場合、実際に封鎖が起きれば原油価格が100ドルを超えても何ら不 思議はない。

金融面・政策面では、以下の要因が上昇リスクとなる。

1.米金融規制緩和

2.米景気拡大ペースの鈍化に伴う利上げペースの減速

3.2.に限らず長期金利が日欧の低金利政策の継続で低下する場合

1.は中間選挙で民主党が下院を押さえたため、その可能性はほぼゼロ になった。

2.は足元の統計減速で、来年の利上げペースが鈍化する可能性が出て きた。FRBパウエル議長も微妙に発言をハト派に傾けている。今のとこ ろ利上げは継続するとみているが、しばらくはこうした口先介入が続く とみられる。

下落リスクは需要面は何かしらの信用リスクが顕在化することが材料と なる。

1.中国の金融市場・住宅市場正常化推進加速

2.米国内インフレ発生による利上げペースの加速

3.地政学的リスク(特に需要面では欧州の混乱)の顕在化

4.北朝鮮戦争の開戦や中東情勢悪化を受けたリスク回避の動きの強ま り

5.株価の調整

6.トランプ政権の保護主義政策推進

7.価格上昇に因る需要の減少(レーショニング)

8.トルコ問題の新興国への拡大による、新興国需要の減少

9.ベネズエラをはじめとする新興国のデフォルト

1.の中国の金融市場・住宅市場正常化は不採算の国家プロジェクトを 見直すなど緩やかに調整が起きているが、景気をクラッシュさせるほど のものにはなっていない。

2.については原油高やトランプ関税引き上げの影響でその可能性が意 識されていたが、足元の経済統計の鈍化やトランプの人気取り目的の緩 和支持を受けて、その可能性は後退している。

これと相まって、5.の長期金利急上昇観測も後退している。

4.はリスクシナリオであるが、恐らくその可能性は大きく低下した。 米朝の交渉は今後も継続する見込みであり、どのように転ぶかはわから ない。1つ確実なのは、同問題の解決に向けて日本の負担は相当重くな るということだ。

中東についてはイランと米国は挑発の応酬となっている。しかし、石油 製品価格の上昇が米国民からの支持率を押し下げる可能性があるため、 ここにきてイランに対する米国のトーンは若干後退している。

しかし、イランは(国民向けのポーズもあってか)強気の姿勢を崩して いないため、しばらく緊張状態は続くだろう。

イランと米国が欧州やロシアのとりなしで交渉のテーブルに着く、とい うのが希望的観測を含めたメインシナリオだったが、中間選挙を受けて 対外的なポイントを稼ぎたいトランプ政権が、イランに対して弱腰にな ると考え難いため、このシナリオの可能性は後退した。

6.は同盟国に対しては事前の期待通り常識的な落としどころを探る動 きになりつつある。しかし選挙まで「戦う大統領」のポーズを示してお かなければならないため、何かしらの果実を得るまで関税問題は解決し ないだろう。

7.は保護主義政策の拡大で世界的に景気の拡大ペースの鈍化が懸念さ れている中で原油価格が高騰していることは、消費者がこの価格高騰に 耐えられない可能性が高まることを示唆している。顕在化の可能性が高 いリスク要因となってきた。

8.はトルコやアルゼンチンの通貨安を契機に新興国にそれが波及する 懸念があったが、米国の利上げが打ち止めになるのではとの期待も高ま っているため、「今のところ」その危機感は後退している。

9.は比較的現実のものとなるかもしれない。中国はベネズエラに対し て622億ドル程度の融資(The Inter-American Dialogue調べ)をしてい ると考えられ、これは1,300億ドル程度と言われるベネズエラの外貨建 て債務(+PDVSA債務)の5割近くに相当する。

仮にデフォルトしたり、政権が倒れた場合、ベネズエラの次期大統領が この契約は無効として、IMFや米国に泣きつく可能性はあり、この場合 の中国は債権放棄を余儀なくされる可能性がある。

この場合、中国国家開発銀行や中国輸出入銀行の負担となり、最終的に は中国政府の負担となる。崩壊の危機に直面しているベネズエラである が、これ以外の国もデフォルトする可能性はあるため、氷山の一角とも いえる。今のところベネズエラ問題のみで中国が崩壊するとみる向きは 少ないが、そのリスクは無視できない。

供給面は、以下の要因が主な下落リスクシナリオだ。

1.北米の増産加速

2.OPECの出口戦略が意識される

3.イスラエルを中心とした中東情勢絵不安でサウジアラビアや イランなどの足並みが揃わず、OPECの結束が崩壊する場合

1.は米国のパイプラインのキャパシティ問題もあり、増産ペースは鈍 化している。原油価格が採算ラインに乗ってから増産が始まるまでの時 間差や新しいパイプラインの稼働時期を考えると、再び増産ペースが加 速するのはQ119になってからだろう。

2.は、サウジとロシアがむしろ減産に舵を切る可能性が出てきたため、 顕在化の可能性が後退した。

3.はイランに対する制裁の度合いによるが、今のところは崩壊までに は至らないとみられる。

石炭価格はじりじりと水準を切り下げながら、高値圏での推移を続けて いる。中国の国内の生産が減少しているうえに北朝鮮の制裁が続いてい ることが影響している。価格の減速は、価格に対する説明力が高い、 「中国の景況感の鈍化」が影響していると見る。

北朝鮮への制裁解除は当面ない見込みだが、中国が米国にゆさぶりをか ける目的で解除する可能性もなくはない(この場合、さらに米国が中国 に制裁を科す可能性がある上、米国と関税関連で共闘できると考えてい た欧州や日本の協力が得られなくなるため、その可能性は低いが)

また、12月にCOP24(第24回気候変動枠組条約締結国会議)が開催され る。米国はこの枠組みから脱退を表明しており欧州諸国は米国の引き留 めに必死だ。

この状況で中国は脱退しない方針を打ち出しており、「対米協調」を目 的として積極的に石炭使用や鉱山向け融資を絞る可能性もあり得る。こ のリスクは小さくなく石炭供給懸念を通じて石炭価格を高止まりさせる とみている。

---≪LME非鉄金属≫---

LME非鉄金属価格は小幅に上昇。中国製造業PMIが市場予想を上回る減速 となったほか、G20を控えたリスク回避姿勢が強まり、ドル高が進行し たことが価格を下押ししたが、米利上げ打ち止め観測の強まりが実質金 利を押し下げたため、価格は下支えされた。

注目のG20は首脳宣言は採択されたものの、保護主義政策と戦う、とい った文言は米国が主張しなかったため採用されず、G20がG7同様、あま り機能しなくなっていることを印象付ける形となった。

またG20後の米中首脳会談は、追加関税の引き上げを一時凍結し、貿易 問題の解決に向けて対話を継続することで一致した。しかし引き上げの 猶予期間は90日であり米中に横たわる問題を解決する時間が十分あると は言えない。ただし、さしあたり関税引き上げが見送られたため週明け は価格上昇要因になると考える。

11月の中国製造業PMIは50.0と減速、詳しい内訳をみると新規受注の減 少と完成品・原材料在庫の増加が確認され、新規受注在庫レシオは低下、 非鉄金属価格の押し下げ要因になる。

非鉄金属の最大消費国である中国の構造的な景気減速、米国の利上げ継 続や原油価格の続落を受けた実質金利上昇、並びに新興国からの資金流 出観測が強まっていること、米国の中国に対する追加制裁発動が外需を 減速させ、非鉄金属価格を下押しすると予想される。

しかし、中国政府は景気を軟着陸させるために預金準備率を引き下げた り、公共投資などの財政政策に傾斜せざるを得なくなってきていること が需要を押し上げること、LME指定倉庫在庫の減少は継続しており、足 元の需給はまだタイトと考えられることが価格を下支えすると考えられ る。

以上から、非鉄金属価格は軟調ながらもしばらくは底堅い推移になると 予想する。

中国に対する米国の制裁は、超党派で決定していると考えられるため、 今回の中間選挙で議会にねじれが発生しているが、恐らく継続すること になるだろう。そして、内政面で新たな政策を打ち出し難い状況にある ためより中国に対する対応は苛烈になると予想され、工業金属価格にマ イナスに作用すると見る。

足元の株価の調整や経済統計の鈍化を受けて、米国がG20で中国に対す る制裁を一部緩和するのでは、との期待が高まっているが、何かしらの 緩和はあるかもしれないが、制裁自体は継続するだろう。

先日のペンス副大統領の講演でのスピーチは、明確に経済面で中国に宣 戦布告しているのと同じである。これはトランプ政権というよりも、議 会共和党の意向と考えたほうが良い。

ではいつまで制裁が続くかといえば、具体的には、中国の景気拡大が失 速して米国と覇権を争えるような状態になくなる、中国が世界シェアを 取りに行こうとしているハイテク分野の内製化をあきらめる、人民元高 を許容する(バブル崩壊時の日本と同じ)、といった明確な成果がある まで継続するのではないか。

しかし、利上げを継続する中で米国景気が失速し、国民からの不満が高 まる可能性があり、場合によると11月に開催されるG20での米中首脳会 談で何らかの緩和措置が取られる可能性はある(あったとしても限定的 で、制裁は継続すると考えられるが)。

そしてこうした制裁の影響は顕在化しつつある。中国工業部門利益は、 年初来ベースで前年比+13.6%の5兆5,212億元(1-9月期+14.7%の4兆9,71 3億元)、10月は+3.6%の5,480億元(前月+4.1%の5,455億元)と大幅に 伸びが減速している。構造的・循環的な景気減速に加え、米国の制裁の 影響が徐々に顕在化していることの証左であろう。

結局、工業金属の最大消費国である中国への制裁は緩和はすれども継続 する見込みであるため、非鉄金属需要にとってマイナスに作用すること は避けえない。

また、中国の構造的な景気の減速、循環的な減速、保護主義政策に対抗 するための人民元安誘導が資本流出を招き、その他の新興国にも影響が 出ること、なども価格を下押ししよう。

トランプ大統領弾劾裁判の可能性が高まっていたが、共和党が上院で過 半数を維持しているため、弾劾は実質的に不可能だろう。そして、単体 で人気が採れる大統領候補はほかにはおらず、トランプ政権は二期目に 突入する可能性が高いと見ている。

なお、構造的に工業金属需要が増加し、価格が上昇するのはおそらく次 の需要のけん引役となるインドが人口ボーナス期入りする2020年頃から になるとみているため、長期的には強気の見通しである。

短期的には投機筋の動向が重要になるが、11月23日付のLMEポジション を見ると全ての金属でロング・ショートとも減少し、ネット買い越し幅 はアルミとニッケル以外が増加した。

投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は174.3億ドル(前週165.2億ド ル)と買い越し額が増加している。しかし買い越し枚数はトン数換算 ベースで4,876千トン(4,696千トン)と6月頃から始まった米中貿易戦 争開始前とほぼ同水準まで買い戻されている。

このことはさらに価格が上昇するには追加の材料が必要であることを示 唆している。具体的には中国や米国の公共投資実施や、米国の利上げ ペースの鈍化などだろう。

中長期的な見通しは人口動態が重要になるが、中国の人口ボーナス期は 2030年頃まで続く事、2020年頃からインドが人口ボーナス期に入ること から構造的な需要増加はまだ継続すると見ており、強気のスタンスを崩 していない。

なお、アジア開発銀行は2016年~2030年のアジアのインフラ投資規模は 26兆ドル(3,000兆円、年間1兆7,000億円)に達すると試算している。

一帯一路構想は「中国の周辺国の実効支配」を目的とするものであるこ とは明確であり、このまま世界中がすんなりこれを受け入れるかは微妙だ。実際パキスタン、ネパール、ミャンマーの水力発電プロジェクトが 相次いでキャンセルになっている。マレーシアの鉄道案件も先送りとな った。

現実は、貧困国に資金を貸し出し、返済がなければ担保としてその土地 や港湾を召し上げる、というバブルのころに日本で問題になったことを国家として行っている。老練なマハティールは中国の戦略の意味を理解 しているということだ。

また、2018年の軍事費も前年比+8.1%の1兆1,069億元と大幅に積み増しされており、中国が軍事的に周辺国を支配しようとしているのは明らか だ。

しかし、10月の米中首脳会議で安倍首相は透明性を高めることなどを前提に、一帯一路構想への協力を約束した。中国の資金繰りが悪化している可能性は高く、中国は日本の支援を欲しがっている、とも考えられる。

一帯一路構想が、中国の軍事的支配権拡大に用いられないよう、日本が監視できるかどうか。非常に重要な決断だったといえる。

また、結果的に省エネが進む中では非鉄金属需要が増加するため、この観点からも強気だ。

この見通しの上昇リスクは需要面では、

1.中国の財政出動並びに住宅価格上昇容認

2.環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、 EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台が使われる)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

3.トランプ政権のインフラ投資計画実施

などが考えられる。

1.は米国の経済制裁を受けて、構造的な景気の軟着陸を目指すには内 需刺激しかなくなっており、預金準備率の引き下げや、住宅セクターの再度の過熱を容認する可能性は排除できなくなっている。

2.の環境規制強化の流れの中でのEVブームは、若干鎮静化している。E V普及のためには補助金負担は必須であり、景気が減速する中ではなかなか積極的にEV政策を推し進められないことが背景にある。

よって、市場が期待しているほどのペースで普及するとは見ていない。 ただ、新世代自動車の主流が電気自動車であることは間違いがなく、実際の需要に影響を及ぼすのは順調に行ったとして2020年頃以降になるの ではないか。

3.はそもそも大きな政府を目指している民主党の理解が得られやすい ため、メキシコとの壁は作らないと思うが一部実施される可能性は高まった。

供給面は個別性が強いが、以下が上昇リスク要因として挙げられる。

1.大規模鉱山の減少に伴う安価な資源確保環境の悪化(コストを掛け れば採掘できる。リサイクルの充実は必須)

2.中国の環境規制強化に伴う減産の継続

3.石炭価格上昇による生産コスト(電力コスト)の高止まり

4.労使交渉動向

5.Rusalに対する制裁が長期化し供給懸念が強まる場合

5.はすでに顕在化してしまったリスクだが、特にアルミ・ニッケル・ パラジウムへの影響が大きい。Rusalに対する制裁は米財務省が一部緩和する趣旨のコメントをしており、事前予想ほどの影響が出ない可能性 が出てきた。

金融面・政策面では、以下が主な上昇リスク要因だ。

1.米金融規制緩和

2.米景気拡大ペースの鈍化に伴う利上げペースの減速

3.2.に限らず長期金利が日欧の低金利政策の継続で低下する場合

1.は中間選挙で民主党が下院を押さえたため、その可能性はほぼゼロ になった。

2.は足元の統計減速で、来年の利上げペースが鈍化する可能性が出て きた。FRBパウエル議長も微妙に発言をハト派に傾けている。今のところ利上げは継続するとみているが、しばらくはこうした口先介入が続く とみられる。

下落リスクは多く、以下があげられるが主に信用リスクの拡大が要因の 軸となる。

1.中国の金融市場・住宅市場正常化推進加速

2.米国内インフレ発生による利上げペースの加速

3.地政学的リスク(特に需要面では欧州の混乱)の顕在化

4.北朝鮮戦争の開戦や中東情勢悪化を受けた、リスク回避の動きの強 まり

5.長期金利の上昇

6.5.に付随するが株価の調整

7.米輸入規制強化並びにそれに対する報復

8.トルコ危機や米利上げの影響を受けた新興国需要の減少

9.ベネズエラをはじめとする新興国のデフォルト

1.の中国の金融市場・住宅市場正常化は不採算の国家プロジェクトを 見直すなど緩やかに調整が起きているが、景気をクラッシュさせるほどのものにはなっていない。

2.については原油高やトランプ関税引き上げの影響でその可能性が意 識されていたが、足元の経済統計の鈍化やトランプの人気取り目的の緩和支持を受けて、その可能性は後退している。

これと相まって、5.の長期金利急上昇観測も後退している。

4.はリスクシナリオであるが、恐らくその可能性は大きく低下した。 米朝の交渉は今後も継続する見込みであり、どのように転ぶかはわからない。1つ確実なのは、同問題の解決に向けて日本の負担は相当重くな るということだ。

中東については今のところ落ち着いているが、イランが米制裁に対して どのように反応するかに今後の動向は依拠することになる。

欧州やロシアのとりなしでイランと米国が交渉のテーブルに着く、とい うのが希望的観測を含めたメインシナリオだったが、選挙結果を受けて、トランプ政権はイランに対してより強硬な姿勢を取ると予想されるため、 この可能性は低下している。

懸念されるのは、CIAがムハンマド皇太子がカショギ氏殺害を指示した と結論付けた、と報じられていることだ。この通りであれば欧米が制裁 をせざるを得なくなり、サウジアラビアが報復措置を取る可能性も排除 できない。

6.は株式市場は投機の動きを示す指標であり、ここに調整圧力が高ま れば高値圏にあり記録的な水準まで積み上がっている投機の手仕舞い売 りが加速する可能性がある。

7.は同盟国に対しては事前の期待通り常識的な落としどころを探る動 きになりつつある。しかし選挙まで「戦う大統領」のポーズを示してお かなければならないため、何かしらの果実を得るまで関税問題は解決し ないだろう。

8.はトルコやアルゼンチンの通貨安を契機に新興国にそれが波及する 懸念があったが、米国の利上げが打ち止めになるのではとの期待も高ま っているため、「今のところ」その危機感は後退している。

9.は比較的現実のものとなるかもしれない。中国はベネズエラに対し て622億ドル程度の融資(The Inter-American Dialogue調べ)をしてい ると考えられ、これは1,300億ドル程度と言われるベネズエラの外貨建 て債務(+PDVSA債務)の5割近くに相当する。

仮にデフォルトしたり、政権が倒れた場合、ベネズエラの次期大統領が この契約は無効として、IMFや米国に泣きつく可能性はあり、この場合 の中国は債権放棄を余儀なくされる可能性がある。

この場合、中国国家開発銀行や中国輸出入銀行の負担となり、最終的に は中国政府の負担となる。崩壊の危機に直面しているベネズエラである が、これ以外の国もデフォルトする可能性はあるため、氷山の一角とも いえる。今のところベネズエラ問題のみで中国が崩壊するとみる向きは 少ないが、そのリスクは無視できない。

---≪鉄鋼原料≫---

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップ価格は高安まちまち、原料炭スワップ 先物は小幅下落、鉄鋼製品価格は大幅に下落した。

中国製造業PMIが減速した上、鉄鋼業PMIが大幅な悪化となったことが鉄 鋼製品価格を押し下げた。

先週後半に発表された中国鉄鋼PMIは45.2(前月52.1)と大幅に減速し た。特に新規受注が35.4(52.3)と急落、完成品在庫も58.8 (42.3)、原材料在庫も54.8(54.2)と大きく積み上がった。

より注目すべきは輸出向け新規受注の落ち込みが47.3→43.2にとどまっ ている一方で、全体では52.3→35.4となっていることだ。このことは中 国国内の鉄鋼需要が減少していることを意味し、鉄鋼製品価格の下落要 因となる。当然、鉄鉱石価格にもマイナスに作用するだろう。

注目のG20は首脳宣言は採択されたものの、保護主義政策と戦う、とい った文言は米国が主張しなかったため採用されず、G20がG7同様、あま り機能しなくなっていることを印象付ける形となった。

またG20後の米中首脳会談は、追加関税の引き上げを一時凍結し、貿易 問題の解決に向けて対話を継続することで一致した。しかし引き上げの 猶予期間は90日であり米中に横たわる問題を解決する時間が十分あると は言えない。ただし、さしあたり関税引き上げが見送られたため週明け は価格上昇要因になると考える。

鉄鉱石価格は調整するが、下げ余地は限定されるとみる。季節的に中国 の生産が減少、輸入が増加する時期に当たること、米国の制裁はあるも のの国内需要の刺激や冬場の鉄鋼生産抑制継続による鉄鋼製品価格の高 止まりが、投機的な観点での鉄鉱石買いを誘うと考えられること、冬場 の鉄鋼製品減産が需給面で鉄鋼製品価格を下支えすると予想されること が背景(詳しくは2018年10月31日付の MRA's Eyeをご参照ください)。

こうした国内の減速による、景況感の悪化、とくに中小企業の景況感悪 化を回避するために中国政府は何らかの経済対策(インフラ投資)を実 施するとみられる。

ただし、同時に地方政府の財政状況も厳しく、バブルを誘発するほどの 公共投資も実施できないため、鉄鋼製品、鉄鉱石価格の下支え要因には なるが、価格を大きく押し上げるほどの効果はないのではないと見る。

中国に対する制裁は、超党派で決定していると考えられるため、今回の 中間選挙で議会にねじれが発生しているが、恐らく継続することになる だろう。そして、内政面で新たな政策を打ち出し難い状況にあるためよ り中国に対する対応は苛烈になると予想され、工業金属価格にマイナス に作用すると見る。

足元の株価の調整や経済統計の鈍化を受けて、米国がG20で中国に対す る制裁を一部緩和するのでは、との期待が高まっているが、何かしらの 緩和(あったとしても、来年からの追加関税引き上げをしばらく延期程 度か)はあるかもしれないが、制裁自体は継続するだろう。

先日のペンス副大統領の講演でのスピーチは、明確に経済面で中国に宣 戦布告しているのと同じである。これはトランプ政権というよりも、議 会共和党の意向と考えたほうが良い。

ではいつまで制裁が続くかといえば、具体的には、中国の景気拡大が失 速して米国と覇権を争えるような状態になくなる、中国が世界シェアを 取りに行こうとしているハイテク分野の内製化をあきらめる、人民元高 を許容する(バブル崩壊時の日本と同じ)、といった明確な成果がある まで継続するのではないか。

そしてこうした制裁の影響は顕在化しつつある。中国工業部門利益は、 年初来ベースで前年比+13.6%の5兆5,212億元(1-9月期+14.7%の4兆9,71 3億元)、10月は+3.6%の5,480億元(前月+4.1%の5,455億元)と大幅に 伸びが減速している。構造的・循環的な景気減速に加え、米国の制裁の 影響が徐々に顕在化していることの証左であろう。

結局、工業金属の最大消費国である中国への制裁は緩和はすれども継続 する見込みであるため、工業金属需要にとってマイナスに作用すること は避けえない。

今年の鉄鉱石価格の上昇は、鉄鋼製品価格の上昇によるものであり、さ らに製鉄所の稼働率の上昇が実需を押し上げたことも影響している

中国最大の鉄鋼生産地区である河北省の高炉稼働率は、現在73.9%と過 去5年平均の84.1%を下回っている。しかし、強制的に生産削減となった 昨年の61.3%よりかなり高い水準を維持している。

今後、昨年と同様、生産抑制される見込みであるため、鉄鋼製品価格は 冬場、高い水準を維持することになるのではないか。

ただ、鉄鋼製品在庫が前週比▲0.7万トンの821.2万トン(過去5年平均9 69.5万トン)であり鉄鋼製品価格は例年よりも高い水準を維持しそうだ。

鉄鋼製品が高止まりするため、鉄鉱石に関しても、冬場に向けた国内生 産の減速時期に突入していることから、季節的に鉄鉱石価格は高止まり するだろう。

直近の統計では、鉄鉱石在庫が前週比▲31万トンの1億37,850万トン、 (過去5年平均1億624万トン)、在庫日数は前週比▲0.7日の 29.8日(過去5年平均28.6日)と、例年よりも高い水準を維持している。

鉄鋼製品価格につられて水準を切り上げていた鉄鉱石であるが、やはり 徐々に下押し圧力が掛かるのではないか。

長期的な見通しは人口動態が重要になるが、中国の人口ボーナス期は20 30年頃まで続く事、2021年からインドが人口ボーナス期に入ることから 構造的な需要増加はまだ継続すると見ており、強気である。

なお、アジア開発銀行は2016年~2030年のアジアのインフラ投資規模は 26兆ドル(3,000兆円、年間1兆7,000億円)に達すると試算している。

一帯一路構想は「中国の周辺国の実効支配」を目的とするものであるこ とは明確であり、このまま世界中がすんなりこれを受け入れるかは微妙 だ。実際パキスタン、ネパール、ミャンマーの水力発電プロジェクトが 相次いでキャンセルになっている。マレーシアの鉄道案件も先送りとな った。

現実は、貧困国に資金を貸し出し、返済がなければ担保としてその土地 や港湾を召し上げる、というバブルのころに日本で問題になったことを 国家として行っている。老練なマハティールは中国の戦略の意味を理解 しているということだ。

また、2018年の軍事費も前年比+8.1%の1兆1,069億元と大幅に積み増し されており、中国が軍事的に周辺国を支配しようとしているのは明らか だ。

しかし、10月の米中首脳会議で安倍首相は透明性を高めることなどを前 提に、一帯一路構想への協力を約束した。中国の資金繰りが悪化してい る可能性は高く、中国は日本の支援を欲しがっている、とも考えられる。

一帯一路構想が、中国の軍事的支配権拡大に用いられないよう、日本が 監視できるかどうか。非常に重要な決断だったといえる。

上昇リスクについては、以下のようなものが考えられる。

1.中国の財政出動並びに住宅価格上昇容認

2.一帯一路構想が市場予想を上回るペースで実施される場合

3.米国のインフラ投資計画が実際に実施される場合

1.は米国の経済制裁を受けて、構造的な景気の軟着陸を目指すには内 需刺激しかなくなっており、預金準備率の引き下げや、住宅セクターの 再度の過熱を容認する可能性は排除できなくなっている。

2.はそのプロジェクトの質の悪さから導入を見送る国が増えており、 中国自体の資金繰りの問題もあって以前ほど高いリスクではなくなって きた。

3.は民主党が選挙で下院の過半数を占めたことから実施の可能性が後 退した。しかしそもそも民主党は大きい政府を標榜しているため、部分 的に実施される可能性はある。

下落リスクは信用リスク系のものが多いが以下が主なところだ。

1.中国の住宅バブル崩壊

2.中国のインフラ投資が財政悪化で規模が期待ほどにはならない場合

3.米利上げぺースの加速によるドル高で新興国からの資金流出が加速 した場合

4.何らかの理由で北朝鮮に対する制裁が解除され、原料炭価格が下落 する場合

5.北朝鮮、中東情勢不安が世界的にリスク回避姿勢を強め、金融市場 の混乱が実態経済に悪影響を及ぼす場合

6.世界的な株価の調整によるリスク回避の動きの強まり

7.米国の進める保護主義政策の拡大

8.トルコの政情不安が新興国通貨安(資本流出)を通じて、新興国需 要の減速につながる場合

9.ベネズエラをはじめとする新興国のデフォルト

10.ジャーナリスト殺害に対する批判に反発して、ムハンマド皇太子が 原油の輸出を停止して原油調達ができなくなる、原油価格が高騰する場 合

4.の可能性は出てきたが、核放棄を行わない限り制裁は継続の方針で ある。しかし、米国が体制保証を認めた以上、今後は北朝鮮が国際社会 に復帰する方向性に進む可能性が高い。

選挙結果を受けて対外的な政策成功をアピールしたいトランプ大統領が、 電撃的に制裁を解除する可能性は以前よりも高まった。

ただし、首脳会談のスケジュールを見るに、年明け以降の解除の可能性 が高いと考える(逆に言えば年内は解除はなしか)。

5.はリスクシナリオであるが、米朝首脳会談の結果を受け開戦リスク は後退した。しかし、交渉は今後も継続する見込みであり、どのように 転ぶかはわからない。1つ確実なのは、同問題の 解決に向けて日本の負担は相当重くなるということだ。

中東については今のところ落ち着いているが、イランが米制裁に対して どのように反応するかに今後の動向は依拠することになる。

欧州やロシアのとりなしでイランと米国が交渉のテーブルに着く、とい うのが希望的観測を含めたメインシナリオだが、この通りになるかどう かは正直五分五分だろう。

懸念されるのはCIAがサウジアラビア ムハンマド皇太子がカショギ氏 殺害を指示したと断定したと報じられたことだ。もし欧米がサウジアラ ビアに対して制裁、サウジが報復した場合、原油価格高騰が景気にマイ ナスに作用することになる。

7.は常識的な落としどころを探る動きになる、とみていたが結局、米 中の貿易戦争は開戦となった(その他の地域に対する関税引き上げはこ れとは別に存在)。

関税引き上げは消費税引き上げのような緊縮財政と同様の経済効果をも たらすため、景気には明らかにマイナスだ。今のところ、中間選挙を睨 んだ対策であるため、目に見える効果が上がらない限りは解除はしない だろう。

結果、中国国内の鉄鋼製品価格を押し下げ鉄鉱石価格の押し下げ要因と なるだろう。

9.は比較的現実のものとなるかもしれない。中国はベネズエラに対し て622億ドル程度の融資(The Inter-American Dialogue調べ)をしてい ると考えられ、これは1,300億ドル程度と言われるベネズエラの外貨建 て債務(+PDVSA債務)の5割近くに相当する。

仮にデフォルトしたり、政権が倒れた場合、ベネズエラの次期大統領が この契約は無効として、IMFや米国に泣きつく可能性はあり、この場合 の中国は債権放棄を余儀なくされる可能性がある。

この場合、中国国家開発銀行や中国輸出入銀行の負担となり、最終的に は中国政府の負担となる。崩壊の危機に直面しているベネズエラである が、これ以外の国もデフォルトする可能性はあるため、氷山の一角とも いえる。今のところベネズエラ問題のみで中国が崩壊するとみる向きは 少ないが、そのリスクは無視できない。

10.は鉄鉱石・鉄鋼原料に限った話ではない。原油供給が途絶すれば世 界経済に与える影響は当然小さくない。そして、サウジアラビアはその ようなことをする国ではなかったはずだが、実務のトップが代われば方 針も変わってしまうということなのだろう。そのリスクは意識しなけれ ばならない。

---≪貴金属≫---

金銀価格は下落した。G20と米中首脳会談を控えて様子見気分が強い中、 リスク回避の動きが強まりドルが物色されたことが価格を下押しした。

PGMは金銀価格の下落を受けて水準を切り下げる動きとなった。パラジ ウムはどちらかといえばここまでの上昇ペースが大きかっただけに、米 中首脳会議、G20などの大きなイベントを控えて一旦益出し売りの動き が強まったためとみられる。

注目のG20は首脳宣言は採択されたものの、保護主義政策と戦う、とい った文言は米国が主張しなかったため採用されず、G20がG7同様、あま り機能しなくなっていることを印象付ける形となった。

またG20後の米中首脳会談は、追加関税の引き上げを一時凍結し、貿易 問題の解決に向けて対話を継続することで一致した。しかし引き上げの 猶予期間は90日であり米中に横たわる問題を解決する時間が十分あると は言えない。ただし、さしあたり関税引き上げが見送られたため週明け は安全資産価格の下押し要因になると考える。

ただ、同時にリスク選好の回復でドル安進行が予想されるため、この影 響は結果的に相殺されることになると予想する。

金価格は再び上昇余地を探る動きになると考える。サウジアラビアのジ ャーナリスト殺害問題やイタリアの財政問題などのリスク、英Brexitに 再び焦点が当たっていること、リスク回避で株に調整圧力が掛かり続け ているため、「株安→債券高・金高」の流れになりやすいことも、価格 を押し上げると考える。

また、米中間選挙の結果議会がねじれたため、国内でポイントを稼ぐこ とができないトランプ大統領が海外政策をより強硬なものにする可能性 があることも、安全資産需要を高めると考える。

英国とEUが離脱条件で合意したと伝えられたが、EU離脱担当相が辞任す るなど、英政権内が混乱してきた。EU議会では承認が得られたが12月11 日に予定されている離脱条件を問う英国議会の投票に注目が集まる

なお、金価格は、地政学がフルに影響すれば1,400ドル程度までの上昇 はあると考えていたが、現在の実質金利水準や、過去の実質金利からの 乖離(いわゆるリスクプレミアム)を考えると、あと50ドル程度しかリ スクプレミアム分の上昇余地はなさそうだ(詳しくは 2018年10月18日付のMRA's Eyeをご参照ください)。

ただし、米国の利上げが来年の春に終了し、原油価格も高止まりを続け るようであれば実質金利が低下し、ベース価格が上昇することになるた め米金融政策、原油価格動向に価格が左右される環境にあることは変わ りない。

なお、地政学的リスクの影響がないとすれば、実質金利で説明可能な水 準である1,050ドル程度までの下落はあると考える。

銀は、Silver Instituteなどの分析では供給の減少と電気製品向けの需 要増加で供給不足になっていると指摘されているが、それよりは金価格 動向や貿易戦争の影響が強く意識され、対金で軟調な推移となっている。

今後についても金価格が軟調に推移することから水準を切り下げる動き になると考える。現在の金銀レシオは80に大きなチャートポイントが重 なり、底堅い推移となりつつ過去最高水準を維持している。

足元、COMEXの金銀在庫レシオの金銀レシオに対する説明力が高いが、 足元でも金銀在庫レシオは高い水準を維持している。記録的な水準まで 積み上がった銀の取引所在庫の影響で、しばらくはこの80越えの水準を 維持するだろう(詳しくは2018年10月19日付のMRA's Eyeをご参照下さ い)。

金銀レシオが80である前提であれば、地政学的リスクがフルに影響して 1,300ドルになった場合、リスクプレミアムがはげ落ちて1,150ドルまで 下落した場合に対応する銀価格は、16.25ドル、14.4ドルとなる。

金銀レシオが鉱工業生産などから説明可能な、長期の平均的な水準であ る74程度であれば、17.6ドル、15.5ドルとなる。

短期的な価格動向を占う上で参考になる投機筋の売買動向は、 11月27日時点で金のロングが▲8,727枚の156,779枚、ショートが ▲1,702枚の154,908枚、銀のロングが▲3,833枚の67,813枚、 ショートが▲3,595枚の78,779枚となっている。

注目すべきは金銀ともネットロングを減らし、銀はネットショートの状 態が継続していることだ。銀がネット売り越しになったのはこの5年で 今年だけであり、その後、買戻しが入って価格が上昇していることを考 えると、テクニカルに銀はそろそろ底値に近付いているとみる。

金はネット買い越しではあるものの、ショートポジションが歴史的にみ ても最高水準にあり、同時にロングはこの10年の最低水準である。銀と 同様、むしろ今後はテクニカルに価格が上昇する可能性が高いと予想す る。

PGM価格は景気の先行きへの懸念が強まる中、下値余地を探る動きにな ると考える。ただし、金銀価格が上昇余地を試す可能性が出てきてるた め、そのことが下落余地を限定させるだろう。

また、ディーゼル自動車比率の高い欧州景気の減速(プラチナ需要減 速)、ガソリン自動車比率の高い米国景気の拡大継続(パラジウム需要 加速)で、プラチナ・パラジウムレシオはしばらく低下を続けると予想 される。

米国の10月の自動車販売は1,750万台(市場予想 1,705万台、前月1,74 0万台)と急回復しているが、これは米国が自動車関税を引き上げる可 能性があるため駆け込み需要が顕在化しているためと考えられる。

11月の米消費者信頼感は135.7と引き続き高い水準を維持、6ヵ月以内に 自動車を購入すると答えた人の比率も13.8と前月の14.0から小幅に低下 している。自動車関税引き上げ前の駆け込み需要の剥落の影響だろう。

FRBの利上げも継続する見込みであり、自動車メーカーのディーラー向 けのインセンティブ負担も重くなることが予想され、自動車関税引き上 げが宣言通り実施されるのであれば、自動車販売は減速する可能性が高 く、PGM価格を下押しすると予想される。

中国の10月の自動車販売(工場出荷台数)は前年比▲11.7%の238万台 (前月▲11.55%の239万4,100台、前々月▲3.75%の210万3,400台、 前々々月▲4.02%の188万9,100台)と4ヵ月連続でマイナス成長となり、 同国の耐久財需要が減少していることが伺える。

弊社は需給面の見通しに関しWPICの見通しを参考にしているが、直近の 見通しでは2018年のプラチナの需給は50万5,000オンスの供給過剰と、 前回発表の29万5,000オンスから供給過剰幅が引き上げられた。2019年 についても45万5,000オンスの供給過剰が見込まれている。

2019年の自動車向けの触媒需要は前年比▲40万オンスとなる一方、供給 は、南アフリカ(+5.5万オンス)、北米(+4.5万オンス)の増産がロシ アの減産(▲2万オンス)を相殺、供給が+13万オンスとなることで需給 の緩和感が強まる見込み。

この結果、地上在庫は312万オンス(2018年 266万5,000オンス))に 増加する見込みで、在庫日数も146.8日(128.4日)と増加見込みであり、 在庫の顕著な増加が価格上昇を抑制することになろう。

なお、南アフリカのPGM生産指数は9月時点で108.00(季節調整前)と過 去5年平均を回復した。今の需要動向をみるとよりプラチナ需給が緩和 し、パラジウムの供給は不十分で両者のスプレッドは、需給面からまた 拡大する可能性が出ている。

11月27日現在、CFTCのプラチナポジションはロングが+1,975枚の 44,969枚、ショートが+945枚の22,154枚、パラジウムはロングが ▲189枚の17,734枚、ショート▲401枚3,258枚となっている。

---≪農産品≫---

シカゴ穀物市場はG20とその後の米中首脳会議で、貿易戦争に関して何 らかの緩和策が打ち出されるのではないかとの期待から上昇した。

注目のG20は首脳宣言は採択されたものの、保護主義政策と戦う、とい った文言は米国が主張しなかったため採用されず、G20がG7同様、あま り機能しなくなっていることを印象付ける形となった。

またG20後の米中首脳会談は、追加関税の引き上げを一時凍結し、貿易 問題の解決に向けて対話を継続することで一致した。しかし引き上げの 猶予期間は90日であり米中に横たわる問題を解決する時間が十分あると は言えない。

また、穀物類の関税が引き下げられたわけではないため、リスク選好が 回復する中で景気循環系商品が物色されるとみられることから、むしろ 穀物には下押し圧力が掛かるのではないかと考える。

トウモロコシの収穫率は94%(前週90%)と遅れがあったが概ね終了して いる。大豆の収穫率も94%(91%)とこちらもほぼ終了している。

冬小麦の作況は55%(56%)と過去5年平均を下回っている。収穫量は春 小麦よりも冬小麦のほうが圧倒的に大きく、2018-2019穀物年度への影 響が意識される。

ただ、「小麦は雑草」の格言通り世界のどこかで生産がされるため、最 終的に供給は足りることになると考えるが、供給が足りて価格が下落す るまでに価格が高騰するリスクは存在する。

11月の米需給報告では、トウモロコシの生産見通しが146億2,600万ブッ シェル(市場予想147億2,907万ブッシェル、前月147億7,800万ブッシェ ル)、大豆が46億ブッシェル(46億7,643万ブッシェル、 46億9,000万ブッシェル)、小麦が18億8,400万ブッシェル(前月18億8, 400万ブッシェル)と、総じて「期待ほどの生産」にはならない見通し が示された。

一方で輸出見通しは、トウモロコシが24億5,000万ブッシェル(前月24 億7,500万ブッシェル)、大豆が19億ブッシェル(20億6,000万ブッシェ ル)と減速が見込まれている。

11月27日付のCFTC投機筋ポジションは、トウモロコシのロングが ▲52,262枚の336,010枚、ショートが+4,811枚の293,988枚、大豆のロン グが+3,526枚の139,055枚、ショートが+1,025枚の178,901枚、小麦のロ ングが▲26,153枚の130,727枚、ショートが▲745枚の 146,296枚となっている。

大豆は米中貿易戦争の影響もあり、ショートが同じ時期の過去5年の最 高水準まで積み上がっていることから、ネットポジションは過去5年の 最低水準となった。週末の米中首脳会談で何らかの緩和策が打ち出され ることが期待されたが、見送られたため、しばらく価格は低迷すること になるだろう。

◆本日のMRA's Eye


「天然ゴム価格は低迷も追加下落リスクを警戒」

弊社が重要と考えてウォッチしている商品60品目の中で、天然ゴムのパ フォーマンス(上昇率)は低迷している。しかし天然ゴム価格はしばら く低迷を続けるだろう。

天然ゴムの最大用途の1つであるタイヤ向け需要が、世界の自動車販売 が減速することを背景に減速すると予想されるためだ。そもそも自動車 販売の減速は、景気の循環的な減速によるものであり、ごく自然なこと である。

ただ、これに米トランプ大統領が主導する、世界的な米国向け自動車輸 出に対する自動車関税の引き上げとそれに対する報復合戦で世界の自動 車販売がさらに下押しされる可能性が高まっている。

トランプ大統領はGMが先々の自動車販売不振に備えるためリストラを実 施したことを、「関税が低いせいで安い外国製品が入ってくるからだ」 と批判、ピックアップトラック以外にも25%の高関税を課すことを考え 始めている。

この調子だと、「日米物品貿易協定(TAG)交渉中は、自動車関税引き 上げ棚上げ」となっていたはずだが、これが撤回される可能性は排除で きない。最終的には日本の農産品市場の解放が目標だとしても、一時的 な関税引き上げはあり得るだろう。

中国に対しては既に関税が引き上げられており、自動車関税に関しては 7月6日の第一回の関税引き上げで、米中とも25%引き上げ中国→米国は2 7.5%、米国→中国は40%となっている。

しかし、2017年の北米から中国への自動車関連輸出は132億ドルにとど まり、中国から米国を含む北米への自動車輸出も15億ドルに留まるため、 この自動車関税の相互引き上げの影響は実は軽微で、ゴム価格への影響 は大きくない。

それよりは世界1位・2位の国が相互に関税を引き上げ合っていることに 伴う景気の減速→自動車販売の減速→ゴム需要の減少、といった影響の ほうが大きい。

週末開催のG20では首脳宣言が採択されたものの、保護主義と戦うとい う文言は米国の反対で採用されなかった。

やはり当面は米国主導の貿易戦争は継続し、多くの景気循環系賞品価格 に影響をおよぼすことになる。

なお、G20後の米中首脳会談では市場の事前予想通り、来年からの追加 関税引き上げを凍結し、90日間交渉期限を延期することで合意したよう だ。

結局、年明け以降の日米のTAGの行方がゴム価格に大きく影響しそうだ。 仮に関税が引き上げられれば域内需要の減速の可能性は高く、ゴム価格 はさらに水準を切り下げることになるだろう。

しかしTAG交渉の影響を考慮しなかったとしてもゴム価格には下押し圧 力が掛かる可能性が高いと考えている。

中国の国内需給の指標である上海ゴム在庫の水準は過去5年の最高水準 だった前年を+19.4%上回る583,253トンとなっており、同時に自動車販 売も減速基調が鮮明になっているためだ。

指標の東京ゴムと中国の自動車販売の前年比変化の間には高い相関性が 確認されているが、中国の住宅セクターの減速もあって自動車販売は低 迷、ゴム価格の下押し要因となっている。

ただし今年はエルニーニョが発生しており、東南アジア地区、インドネ シアやマレーシアなどに水不足が発生し供給面の懸念が価格を押し上げ る可能性はある。

また、過去の例を見ると持続的な効果は期待されないが、タイ政府はゴ ム農家に対して1エーカー当たり4,500バーツの補助金を出すことを決定 している(1人当たり最大6エーカー分、総額180億バーツ)ことも一定 の価格押し上げ効果をもたらそう。

ただ農産品ではあるが他の景気循環系商品と同様、価格を決定するのは 需要動向であり、世界景気の減速感が強まる中ではやはり価格は低迷す るというのがメインシナリオである。

◆主要ニュース


・10月日本鉱工業生産速報  前月比+2.9%(前月▲0.4%)、前年比+4.2%(▲2.5%)
 出荷+5.4%(▲2.0%)、+7.7%(▲2.9%)
 在庫▲1.4%(+1.2%)、▲0.8%(+3.5%)

・10月日本失業率 2.4%(前月2.3%)
 有効求人倍率 1.62倍(1.64倍)

・11月東京消費者物価指数 前年比+0.8%(前月+1.5%)
 除く生鮮+1.0%(+1.0%)。除く生鮮エネルギー+0.6%(+0.6%)

・9月日本自動車生産 前年▲5.3%の809,884台(前月▲0.3%の693,977台)、
 乗用車▲6.2%の692,919台(▲0.1%の595,931台)
 トラック+2.3%の108.120台(▲1.4%の88,672台)
 バス▲17.7%の8,845台(+1.3%の9,374台)

・11月日本消費者態度指数 42.9(前月 43.0)

・10月日本住宅着工戸数 前年比+0.3%の95万戸(前月▲1.5%の94.3万戸)

・10月日本建設工事受注 前年比▲16.5%(前月+1.0%)

・10月独小売売上高 前月比 ▲0.3%(前月▲0.3%)、前年比 +5.0%(▲2.8%)

・10月独輸入物価指数 前月比+1.0%(前月+0.4%)、前年比+4.8%(+4.4%)

・11月ユーロ圏消費者物価指数 前年比+2.0%(+2.2%)、
コア指数 +1.0%(+1.1%)

・10月インド財政収支 538億5,100万ルピーの黒字(前月344億1,000万ルピーの黒字)

・Q318ブラジルGDP 前期比+0.8%(前期改定+0.2%)。前年比+1.3%(+0.9%)

・11月シカゴ購買部協会指数 66.4(前月 58.4)

・FRB、マレーシアの政府系会社1マレーシア・デベロップメント(1MDB)の資金調達に関連する疑惑調査を強化。

・ミネアポリス連銀カシュカリ総裁(投票権なし・ハト派)、「政策金利は中立金利に近い。」

・G20、首脳制限採択も、保護主義と戦うとの文言は採用されず。

・米中首脳会談、2018年以降の追加関税を停止、交渉継続で合意。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・ベイカー・ヒューズ週間米国石油リグ稼働数887(前週比+2)、ガスリグ 189(前週比▲5)。

・ロイター、「11月のOPEC生産は3,311万バレルと前月から▲16万バレル程度の減産に留まる。イランに対する制裁が再開されたが、サウジやUAEがこれを増産でカバー」

・OPEC経済委員会、2018年10月水準から130万バレルの削減を推奨。

・ロシア リャブコフ外務次官、「ロシアはよりスムーズで、予見可能な原油価格を望む。人為的な不足や供給過剰のどちらにも誰も興味はない。OPECプラスに米国が協力するのは名案かもしれないが、まず信頼をさらに築く必要がある。」

・アラスカ南部でM7.0の地震発生。北極海と州南部を結ぶ全長800マイルのトランス・アラスカ・パイプライン・システム(TAPS)は念のため操業を停止。

【メタル】
・Codelco ピザロCEO、「中国の銅需要は驚くほど旺盛。貿易戦争は金属需要の減速に寄与していない。」

・Codelco1-9月期生産 前年比▲2%の132万トン。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.CBT小麦 ( 穀物 )/ +3.88%/ +20.78%
2.LME亜鉛 3M ( ベースメタル )/ +3.05%/ ▲23.54%
3.欧州排出権 ( 排出権 )/ +2.40%/ +151.53%
4.SHFニッケル ( ベースメタル )/ +2.09%/ ▲5.09%
5.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ +1.93%/ +19.69%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
68.ICEアラビカ ( その他農産品 )/ ▲4.84%/ ▲18.19%
67.プラチナ ( 貴金属 )/ ▲2.65%/ ▲14.02%
66.LIFFEロブスタ ( その他農産品 )/ ▲1.80%/ ▲7.82%
65.CME木材 ( その他農産品 )/ ▲1.76%/ ▲27.70%
64.ICEガスオイル ( エネルギー )/ ▲1.61%/ ▲8.25%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :25,538.46(+199.62)
S&P500 :2,760.17(+22.41)
日経平均株価 :22,351.06(+88.46)
ドル円 :113.57(+0.09)
ユーロ円 :128.53(▲0.76)
米10年債利回り :2.99(▲0.04)
独10年債利回り :0.31(▲0.01)
日10年債利回り :0.09(+0.01)
中国10年債利回り :3.37(▲0.00)
ビットコイン :3,930.38(▲253.20)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :25.34(▲0.45)
エネルギー :49.23(▲0.13)
ベースメタル :18.51(▲1.68)
貴金属 :15.76(+0.29)
穀物 :16.20(▲0.29)
その他農畜産品 :24.68(▲0.33)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :46.24(▲0.26)
Brent :42.55(▲0.13)
米天然ガス :119.75(+0.73)
米ガソリン :47.53(▲0.57)
ICEガスオイル :26.01(+0.09)
LME銅 :12.28(▲3.72)
LMEアルミニウム :11.19(▲0.07)
金 :17.11(▲3.67)
プラチナ :14.75(+1.77)
トウモロコシ :12.50(+1.15)
大豆 :17.11(▲3.67)

【エネルギー】
WTI :50.93(▲0.52)
Brent :58.71(▲0.80)
Oman :59.26(▲0.29)
米ガソリン :144.13(▲1.34)
米灯油 :184.55(+0.19)
ICEガスオイル :550.75(▲9.00)
米天然ガス :4.61(▲0.03)
英天然ガス :67.54(+1.28)

【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :58.71(▲0.80)
SPO380cst :382.77(+0.15)
SPOケロシン :73.64(▲0.80)
SPOガスオイル :71.03(▲0.61)
ICE ガスオイル :73.93(▲1.21)
NYMEX灯油 :182.35(▲0.67)

【貴金属】
金 :1220.52(▲3.69)
銀 :14.20(▲0.11)
プラチナ :798.10(▲21.70)
パラジウム :1181.09(▲1.98)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :6,202(▲39:36B)
亜鉛 :2,500(+45:129B)
鉛 :1,970(+19:13.5C)
アルミニウム :1,939(+6:3.5C)
ニッケル :11,090(+135:70C)
錫 :18,525(▲35:0B)
コバルト :55,000(±0.0)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :6198.50(▲7.00)
亜鉛 :2535.50(+75.00)
鉛 :1953.00(+22.00)
アルミニウム :1950.00(+16.50)
ニッケル :11095.00(+85.00)
錫 :18430.00(▲80.00)
バルチック海運指数 :1,281.00(▲49.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :72.28(+0.02)
NYMEX鉄鉱石 :72.28(▲0.32)
NYMEX原料炭スワップ先物 :220.98(▲0.02)
上海鉄筋直近限月 :3,512(▲109)
上海鉄筋中心限月 :3,269(▲44)
米鉄スクラップ :399(+3.00)

【農産物】
大豆 :894.75(+7.50)
シカゴ大豆ミール :308.30(+1.40)
シカゴ大豆油 :27.82(+0.14)
マレーシア パーム油 :1872.00(+5.00)
シカゴ とうもろこし :366.50(+6.25)
シカゴ小麦 :515.75(+19.25)
シンガポールゴム :132.30(+0.80)
上海ゴム :10915.00(+40.00)
砂糖 :12.84(▲0.03)
アラビカ :103.25(▲5.25)
ロブスタ :1580.00(▲29.00)
綿花 :77.16(+0.52)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :57.88(▲0.85)
シカゴ生牛 :116.93(+0.33)
シカゴ飼育牛 :145.23(▲0.75)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。