売られすぎの買戻しで堅調~農畜産品セクター強い
- MRA商品市場レポート for PRO
2019年5月27日 第1538号 商品市況概況
◆昨日の商品市場(全体)の総括
「売られすぎの買戻しで堅調~農畜産品セクター強い」
【昨日の市場動向総括】
昨日の商品価格は総じて買戻しが優勢となり、上昇した商品が目立ったが、特に価格が上昇したのが穀物や畜産品の一角だった。
エルニーニョ現象の影響で米グレートプレーンズでの降雨が続いており、記録的な不作になるのではとの見方が広がっていること、それに伴う飼料価格の上昇で肥育牛などが上昇することとなった。
米中通商交渉が通商戦争に格上げになる中、非景気循環銘柄である農畜産品セクターが物色されやすい地合いにあることも価格を押し上げている。
【本日の価格見通し総括】
週明け月曜日は目立った手がかり材料に乏しい中、やはりリスク回避の動きが強まり景気循環銘柄が売られ、非循環銘柄が物色される流れになると考える。
しばらく材料になっていなかった英ブラグジットに関し、メイ首相が6月7日の辞任を表明、明日まで行われる欧州議会選の結果も欧州の混乱をもたらすと予想されるため、再び欧州を注視する必要がある。
【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】
ハード・ブレグジットを回避するために奔走してきたメイ首相が6月7日に退陣することを決めた。今回のブレグジットを決めたのはキャメロン前首相であり、メイ首相ではない。
私見を言わせていただければ彼女はできる限り頑張ったとは思う。ただ、2017年の総選挙で大敗し、政治基盤が崩壊した結果として何も決められなかった訳で、彼女の政治手法は批判されても仕方がないだろう。
今回の退任の直接の要因は、メイ首相が「再国民投票」を条件付きで容認する方針に対し、下院での説明義務を負うレッドサム院内総務が辞任したことで、「詰み」となってしまったようだ。
では今後はどうなるか。10月31日まで穏健離脱を議論する時間はあるが、これまでの交渉経緯を見るに、すでに「再国民投票」以外選択肢はないのではないようにも見える。しかし、これをやるということは議会政治を放棄(すべてのことを国民の多数決で決める世界に)しているに等しいため、現実的には難しいのではないか。
しかし、仮に国民投票をしたとしても、EU離脱回避とならない可能性も高い。というのも、英国のEU離脱のみを問う方針とする「ブレグジット党」の支持率がトップになっているからだ。
また、次の首相として名前が挙がっているのは、強行離脱派のジョンソン元外相である。この場合国民投票も行われずに、ハード・ブレグジットになるシナリオが濃厚である。以前から上げていた「2019年最大のリスクの1つ」が顕在化する可能性を意識しておく必要がある。
【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】
(マクロ要因)
・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標再びの減速(価格下落要因)。
・世界景気の減速観測。IMFは2019年の経済見通しを引き下げ(+3.5%→+3.3%)ており、先行きの見通しのリスクも下向き。
・FRBの利下げの可能性が再び高まる(トランプ大統領があからさまに要求を始めており、米中貿易戦争の行方次第ではあり得る状況に)。
・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q119の中国GDPは前年比+6.4%、前期+6.4%と市場予想の+6.3%を上回りやや減速懸念が後退)。
・景気減速下での原油価格高騰は、消費国から生産国への所得移転を通じて景気の下押し要因に。また、リスク回避のドル高進行も価格上昇を抑制。
・2020年からインドが人口ボーナス期入りすることによる、構造的な需要の増加は中長期的な価格の上昇要因。
(特殊要因)
・米政権は対中関税引き上げを表明、中国もこれに対する報復を決定。華為技術との取引を禁じるなど、企業レベルまで制裁が拡大していること(下落要因)。
・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気後退など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。
・中東情勢の悪化を受けた域内景気の混乱と、それを受けた欧州景気への悪影響拡大(下落要因)
・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。とりあえず5月末、10月末を期限として問題先送り(下落要因)。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。
(投機・投資要因)
・長期金利の低下による米長短金利の逆転が株安を誘発、リスク回避のリスク資産売り圧力が強まる場合。
◆昨日の商品市場(個別)の総括
---≪エネルギー≫---
【原油市場動向総括】
原油価格は買戻しで上昇した。場中は米経済統計の悪化を受けて下落する局面もあったが、総じて短期的な売られすぎからの買戻しが優勢となった。
【原油価格見通し】
原油価格は高値圏を維持する展開を予想。ただし高値圏ではあるものの景気への懸念から下値余地を探る見込み。
米国が中東に打撃・空爆戦力派遣を決定、イランも核開発の一部再開を通知するなど、域内情勢が不安定化するとの見方が強まっていることが価格の上昇要因。
一方、イランに対する制裁があっても輸入国とも国内の製油所の能力などから直ちに禁輸を行えるわけではないこと、仮に完全に減産が行われても、数字の上では供給は足りること、OPECプラスは減産幅の縮小を検討し始めていることといった供給面での下落要因も存在。
需要面は米中の対立が激化・長期化する可能性が強まっているため、それを受けた景況感の悪化は下落要因に。
イランに対する米国の対応は、場合によると本当に戦争を想定しているものである可能性が出ている(可能性はゼロではなくなったということ)。トランプ大統領はむしろイランと対話を望んでいるが、ペンス・ボルトンなどの共和党議会側が強硬姿勢であるため。
【石炭市場動向総括】
石炭先物市場は小幅下落。目立った新規材料に乏しい中、米中通商戦争の影響で中国の景気が悪化するとの見方と季節性が価格を下押ししている。
【石炭価格見通し】
石炭価格は現状水準でもみ合うものと考えるが、北朝鮮への制裁継続や夏場にかけて季節的な需要増加観測から、7~8月頃にかけて上昇すると予想。その後季節的な調整の後、11月にかけて水準を切り下げる展開に。
また、中国による豪州炭の輸入規制(華為技研問題に対する報復措置)の影響でインドネシア炭にシフトしていることは逆に、上値を抑えると考えられる(日本が輸入する石炭価格CIFへの影響は中立)。米国の中国制裁強化も価格の上値を抑える公算。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・原油価格の上昇に伴う北米の増産継続は、需給緩和で価格の下落要因。
・OPECプラスの協調減産は7月以降も継続見込みであるが、米国の意向や増産したいロシアの意向も踏まえると、減産幅が縮小する可能性が高まっており原油価格の下落要因に。
・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。
・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。
・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。
(特殊要因)
・米国のイランに対する制裁強化・ベネズエラ・リビアの情勢悪化に伴う供給途絶懸念は価格の上昇要因。
・米国のイスラエルへの過剰な肩入れと、イスラエルネタニヤフ首相の5選達成による、周辺産油国への武力行使の可能性が高まることは原油価格の上昇要因に。
・北朝鮮のミサイル発射により、制裁が継続される可能性が高まっていることは、北朝鮮からの石炭輸出(密輸)を制限し、価格の上昇要因(石炭)。
・米中情報戦争をめぐる華為技術排除の決定を受けて中国政府は豪州からの石炭輸入を規制、インドネシア炭にシフトしていることはNEWC価格の下落要因に(石炭CIF価格に対する影響は中立)。
(投機・投資要因)
・WTIはロング・ショートとも減少しているが、特にロングの解消売りが多い。これは米景気の先行きを懸念するもの。
・Brentはロングが増加はしているが、それ以上にショートの増加が顕著。OPECで減産幅の縮小が議論されていることが材料視されている。
・直近の投機筋のポジションは、WTIはロングが585,979枚(前週比 ▲22,000枚)、ショートが107,581枚(▲12,590枚)、ネットロングは478,398枚(▲9,410枚)、Brentが425,955枚(前週比+1,309枚)、ショートが32,340枚(+5,005枚)、ネットロングは393,615枚(▲3,696枚)
---≪LME非鉄金属≫---
【非鉄金属市場動向総括】
LME非鉄金属価格は概ね上昇した。米経済統計の悪化はあったものの、実質金利の低下もあって、米国の3連休を控えて一旦買戻しが入った模様。
ニッケルがわずか5分で400ドル近い上昇となったが、アルゴリズムトレードによるものであり特段の材料があった訳ではない。
【非鉄金属価格見通し】
非鉄金属価格は一旦買戻しが入って上昇するが、総じて軟調地合いを維持すると考えられる。
投機の売りがかさみ、ネット売り越しとなっているため中国の経済対策期待やLME指定倉庫在庫の減少継続、(希望的観測であるが)米中の合意期待を材料に買戻しが入るため、一時的に価格が上昇すると予想する。
しかし、米中通商協議は難航、場合によると決裂する可能性が出てきている中、特に最大消費国である中国の期待需要が減少していることから地合いは軟調。またリスク回避のドル高圧力の高まりも価格を下押し。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)
・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。
・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。
・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は再開しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCも高止まり。
・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。
・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。
(特殊要因)
・銅の生産減少観測(環境問題によるインド、露天掘りから地下生産に変更するインドネシア)、ヴァーレの尾鉱ダム事故の影響による供給減少(アルミやニッケルなどに波及する可能性)。
・ブラジルの裁判所、ハイドロのAlunorteアルミナ精錬所の再稼働を許可。アルミナ価格の下落を通じてアルミ価格の下落要因に(アルミ)。
・LME指定倉庫在庫の減少が、LMEの倉庫運営ルール変更に伴う保管場所変更の取引の影響である場合、ルールが見直された際に再度、LME指定倉庫在庫が急増する可能性(下落要因)。
(投機・投資要因)
・5月17日付のLMEポジションは、銅と鉛を除き、ショートの買戻しが入り始めたが、先週はむしろ景気の先行きを懸念したロングの売り圧力のほうが強まる形となっている。
投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は▲37.7億ドル(前週▲32.2億ドル)と売り越し幅を拡大。上昇率は▲16.9%。
買い越し枚数はトン数換算ベースで▲1,106千トン(▲1,043千トン)と減少。亜鉛と錫以外はトン数ベースでネット売り越しのまま。ネット売り越しの増加率は6.1%。
今後、総じてこれらのポジションの買戻し圧力が強まる可能性があり、テクニカルに非鉄金属価格が上昇する余地があることは留意。
---≪鉄鋼原料≫---
【鉄鋼原料市場動向総括】
中国向け海上輸送鉄鉱石スワップ市場は上昇、原料炭スワップ先物は横ばい、中国鉄鋼製品価格は小幅下落した。
経済統計の悪化や、米中問題の難航が引き続き材料視されている。
【鉄鋼原料価格見通し】
鉄鉱石価格は高値圏でもみ合うものと考える。ヴァーレのブルクツ鉱山が再び稼働停止になったことや、中国生産者の洪水事故など、鉄鉱石の供給懸念が強まる一方、中国の粗鋼生産の回復が需要を押し上げるものの、米中貿易交渉の難航に伴う景気への懸念が上値を抑えるため。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・中国の鉄鋼製品在庫水準の高さは価格の下落要因。鉄鋼製品在庫は前週比▲40.9万トンの1,153.3万トン(過去5年平均1,162.1万トン)と例年をやや下回っている。
・中国の鉄鉱石在庫水準の高さは価格を下押し。鉄鉱石在庫は前週比▲39.0万トンの1億2,780万トン(過去5年平均1億1,952.6万トン)、在庫日数は▲1.0日の33.2日(過去5年平均 30.6日)と例年の水準を上回る。
・季節的に鉄鋼製品在庫の取り崩し時期であり、価格には下押し圧力がかかりやすい。
・長期的には2020年に人口ボーナス期入りするインドの需要が鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。
(特殊要因)
・ヴァーレの尾鉱ダム決壊の影響が拡大し、さらに供給減少が起きた場合(自社・他社ともにあり得る)、価格の上昇要因に。
(投機・投資要因)
・固有の要因は特になし。
---≪貴金属≫---
【貴金属市場動向総括】
金・銀価格はもみ合った。ドル指数が上昇したことが価格を下押ししたが、同時に英国のハード・ブレグジットの懸念や中東情勢不安が価格を押し上げた。
PGMは金銀価格が価格を維持する中、株価が上昇したことで水準を切り上げた。このような局面だと特にパラジウムの上昇圧力が強まる。
PGM現物の需給バランスを見る上での指標となるロジウムの価格は2,840ドル(前日比▲20ドル)と下落、需給は緩和方向(需要の減速)にある模様。
【貴金属価格見通し】
金価格は米中貿易交渉の進展状況をにらみつつ、神経質な展開になると予想されるが、中東情勢や欧州の情勢不安を材料に安全資産需要は堅調とみられること、ここにきて市場は再びFRBの利下げを織り込み始めていることから総じて底堅い推移になると考える。
銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)の上昇が金銀レシオを押し上げているため対金で割安に推移。
一方、欧州の政情不安、米国の債務上限問題、中東情勢の混乱懸念(イラン・サウジアラビア・イスラエルを中心に)が安全資産需要を高めるため、リスクプレミアムが乗る形で価格を押し上げへ。
PGM価格は金銀価格が底堅い推移になるため堅調だが、同時に米中通商協議が難航、対立が激化する中で株価が下押しされやすく、対金銀では割安に推移することになると予想。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・FRBの利下げ期待が再び高まっていること、原油価格の高止まりは実質金利の低下を通じて金銀価格の上昇要因に。
・景気の先行きを懸念した株価下落とそれに伴う長期金利・実質金利の低下(金銀価格の上昇要因)。ただし、欧州の政情安定化や米中貿易戦争の合意、景況感の改善で株価が上昇した場合には金銀価格の下落要因。
・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。
・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト(パラジウムの上昇要因・プラチナの下落要因)。
・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。
(特殊要因)
・米中貿易交渉は難航しており、相互報復まで発展(価格の上昇要因)。知的財産権や技術の強制移転などの重要なポイントで妥結できておらず、米中の覇権争いであり長期化の見込み(価格の下支え要因)。
・米国とイランの開戦リスク。トランプ大統領はその気がなさそうだが、共和党議会はイランとの開戦に前向きな可能性。
・米国の債務上限問題の顕在化(8月~9月にデフォルトするリスク)。
・欧州の政治混乱(英国のEU離脱、伊仏の対立、イタリアの財政不安再燃、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化など)による安全資産需要の増加。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。
(投機・投資要因)
・長期金利の低下による米長短金利の逆転が株安を誘発、リスク回避のリスク資産売り圧力が強まり、安全資産需要が高まる場合。
・銀価格は金銀在庫レシオが銀在庫の減少、ないしは金在庫の増加、あるいは両要因によって低下した場合、金銀レシオが上昇するリスク(銀価格の上昇要因)。
・金銀はロングが減少、ショートが増加している。むしろ地政学的リスクが高まっているため、ショートの買戻しによる上昇リスクは警戒。
・直近の投機筋のポジションは、金はロングが203,628枚(前週比 ▲22,733枚)、ショートが114,823枚(+12,998枚)、ネットロングは88,805枚(▲35,731枚)、銀が75,482枚(▲2,060枚)、ショートが90,144枚(+10,393枚)、ネットロングは▲14,662枚(▲12,453枚)
・直近の投機筋のポジションは、プラチナはロングが46,174枚(前週比 +1,437枚)、ショートが30,684枚(+11,697枚)、ネットロングは15,490枚(▲10,260枚)、パラジウムが11,556枚(+617枚)、ショートが3,507枚(+189枚)、ネットロングは8,049枚(+428枚)
---≪農産品≫---
【穀物市場動向総括】
シカゴ穀物価格は上昇。通常、メモリアルデーを含む5月最終週がトウモロコシの作付けの期限とされるが降雨のため進捗せず、来週も降雨予報のため。
通常、豊作要因となるエルニーニョ現象による降雨増加が逆に影響している。大豆、小麦も同様。
【穀物価格見通し】
穀物価格はトウモロコシ・大豆・小麦とも生産地の作付けが天候の影響で遅れが深刻な状況となっており、豪州では小麦が不作となるなど、異常気象に伴う生産の下振れが強く意識されているため、記録的な水準にある投機の売り解消が価格を押し上げるため、上昇余地を探るとみる。
ただし、米中貿易戦争の継続は上値を抑えよう。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・米国のトウモロコシ・大豆の生産増加観測による需給緩和観測。
・米国の作付けの遅れに伴う需給タイト化観測。トウモロコシ、大豆とも過去5年の最低水準。
・豪州東部の大干ばつによる小麦生産の減少懸念。
・作付面積動向(トウモロコシは下落、大豆は上昇、小麦は上昇)トウモロコシ作付意向面積 9,279万エーカー(市場予想 9,127万エーカー、前年8,803万エーカー)大豆 8,462万エーカー(8,620万エーカー、8,898万エーカー)小麦 4,575万エーカー(4,688万エーカー、4,734万エーカー)
・5月の米需給報告の在庫見通し
トウモロコシ24億8,500万ブッシェル(前穀物年度20億3,500万Bu)大豆 9億7,000万Bu(8億9,500万Bu)小麦 11億4,100万Bu(10億8,700万Bu)
・実質金利の低下に伴うドル安の進行は、シカゴ穀物の輸出競争力を改善し、需給面で価格の上昇要因に。
(特殊要因)
・米中貿易交渉は相互報復まで発展(価格の下落要因)。知的財産権や技術の強制移転などの重要なポイントで妥結できておらず、米中の覇権争いであり長期化の見込み。
・米政府はブッシェル当たり大豆2ドル、トウモロコシ0.04ドル、小麦0.63ドルの補助金を供給することを検討。生産減少を食い止めるため価格の下落要因に。
・エルニーニョ現象発生による北米の増産は価格の下落要因。ただし洪水などが発生し、災害が激甚化した場合には価格の上昇要因に。
・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。
(投機・投資要因)
・主要穀物のショートポジションは、作付けの遅れなどからトウモロコシ・大豆・小麦とも解消圧力が強まっており、価格の押し上げ要因となっている。
・直近の投機筋のポジションは、トウモロコシはロングが415,551枚(前週比 +41,920枚)、ショートが412,306枚(▲145,214枚)、ネットロングは3,245枚(+187,134枚)、大豆はロングが149,946枚(+10,743枚)、ショートが249,887枚(▲12,711枚)、ネットロングは▲99,941枚(+23,454枚)、小麦はロングが135,831枚(▲6,743枚)、ショートが151,962枚(▲34,017枚)、ネットロングは▲16,131枚(+27,274枚)
◆本日のMRA's Eye
「天然ゴム価格は上昇も上値重い」
年初に上昇し、一旦下落していた天然ゴムの価格が再び上昇している。年初の上昇は、元日に発生した台風1号「パブーク」の影響で主要生産国であるマレーシアの生産に影響が出ると見られたことが要因。その後、影響の緩和を受けて水準を切り下げたが、4月からゴム輸出国の間で価格維持を目的とする輸出規制が発動、タイ(2018年生産量487万9,000トン)、インドネシア(363万トン)、マレーシア(60万3,000トン)の3国で天然ゴム価格維持を目的に輸出を制限したことで価格は上昇している。
報道では、5月20日からタイが12万6,200トンを削減、4月1日からインドネシアが9万8,200トン、マレーシアが1万5,600トンの輸出削減を開始している。
足元の価格上昇は、これに加えて中国の雲南省の気温上昇で、ゴムのタッピングが停止していること、米国が日本や欧州に対する自動車関税の引き上げを6ヵ月延期するとの方針を示したことが材料となっているようだ。
しかし、結局のところ価格を決めるのは需要動向であり、さらに言えば最大消費国である中国の景気動向に左右される。
中国の需給環境は、中国政府が天然ゴムの月次生産データがタイムリーに発表されていないため、輸入動向や最大用途先の1つであるタイヤの生産、取引所在庫、期間構造から類推する必要がある。
天然ゴムの最大用途であるタイヤの生産は低迷している。中国国家統計局の統計では、アウタータイヤの3月生産は7,639万本(過去5年平均8,461万本、前年8,536万本)に留まった。
これは自動車の補助金の終了の反動によるものと見られるが、それ以上に構造的な景気の減速と、米国の中国に対する制裁強化が影響しているためと考えられる。
これを受けて今年の中国の天然ゴム輸入は過去5年の最低水準で推移しており、結果的に上海のゴム在庫の水準は過去5年の最高水準から徐々に水準を切り下げ、ついに前年比▲4.6%の43万トンまで減少した。決して需給がタイトというわけではないが、徐々に引き締まっている可能性がありえる。
しかし、上海の天然ゴムの価格期間構造を見てみると、確かにこの3ヵ月で水準を切り上げているが、先物の全ゾーン、ほぼパラレルに上昇しており、顕著に需給がひっ迫しているというわけではなさそうだ。
今後の中国南部、東南アジアの天候にもよるが、タイ・マレーシアが増産期に当たる5月~7月にかけて、エルニーニョの影響による天候要因が供給を減じる可能性は否定できないが、それ以上に景気の減速懸念の方が根強いため、この価格上昇は一時的なものに留まり、下落に転じると考えている。
このシナリオが崩れるとすれば、中東情勢不安を受けた供給不安で原油価格が上昇する場合が考えられるが、この場合の原油価格上昇は、景気が減速する中での価格上昇であり景気にマイナスに作用する可能性が高いため、結局最終的には売り材料になると考えている。
多くの商品価格が上昇に転じるのは、景気が底入れして、インドなどの新興国の需要が顕在化する2020年以降になると見ている。
◆主要ニュース
・4月日本全国消費者物価指数 前年比+0.9%(前月+0.5%)
除く生鮮+0.9%(+0.8%)
除く生鮮エネルギー+0.6%(+0.4%)
・3月日本全産業活動指数 前月比▲0.4%(前月▲0.2%)
・4月米製造業耐久財受注速報 前月比▲2.1%(前月改定+1.7%)
除く輸送機器±0.0%(▲0.5%)
製造業新規受注資本財非国防除く航空▲0.9%(+0.3%)
・北朝鮮外務省報道官、「
・英メイ首相、6月7日に辞任することを表明。
・インド モディ首相率いるインド人民党(BPJ)、543議席のうち、前回選挙を上回る300議席超を確保する見込み。圧勝。
◆エネルギー・メタル関連ニュース
【エネルギー】
・ベイカー・ヒューズ週間米国石油リグ稼働数797(前週比▲
・米国防総省、「中東タンカーやサウジアラビアのパイプライン攻撃の背後にイランが存在。」
・ハフタル将軍率いる武装勢力、リビアの首都トリポリを空爆。議会ビルも標的に。
・米トランプ大統領、中東に1,
・大阪ガス、社債の主幹事から野村証券を外す方針。
・安倍首相、6月中旬にイランを往訪、米国・イランの仲介役を果たす狙い。
・米政権、サウジアラビアに対して80億ドル相当の武器を売却。
・サウジアラビア、国連安保理に対して「イランが国際平和や安全保障のほか、イランの地域における破壊的な行動が阻止されるよう求める。」
【メタル】
・コデルコ、前10年の銅生産量は169万トン、
◆主要商品騰落率
【上昇率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.CME肥育牛 ( 畜産品 )/ +5.62%/ ▲3.78%
2.LMEニッケル 3M ( ベースメタル )/ +4.12%/ +16.30%
3.CBT小麦 ( 穀物 )/ +4.09%/ ▲2.73%
4.TGE小豆 ( 穀物 )/ +3.74%/ +36.86%
5.CBTトウモロコシ ( 穀物 )/ +3.72%/ +7.80%
【下落率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
68.TCMガソリン ( エネルギー )/ ▲5.07%/ +23.19%
67.TCM灯油 ( エネルギー )/ ▲3.42%/ +12.38%
66.CME豚赤身肉 ( 畜産品 )/ ▲3.35%/ +41.74%
65.SHF錫 ( ベースメタル )/ ▲3.23%/ ▲1.10%
64.欧州排出権 ( 排出権 )/ ▲2.27%/ +2.71%
※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
◆主要指標
【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :25,585.69(+95.22)
S&P500 :2,826.06(+3.82)
日経平均株価 :21,117.22(▲33.92)
ドル円 :109.31(▲0.30)
ユーロ円 :122.46(▲0.09)
米10年債利回り :2.32(+0.00)
独10年債利回り :▲0.12(+0.00)
日10年債利回り :▲0.07(▲0.01)
中国10年債利回り :3.30(+0.00)
ビットコイン :8,112.36(+233.90)
【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :23.82(+0.51)
エネルギー :24.15(▲0.76)
ベースメタル :18.81(+1.06)
貴金属 :19.19(▲0.72)
穀物 :22.00(+0.84)
その他農畜産品 :27.94(+1.03)
【主要商品ボラティリティ】
WTI :27.57(▲0.76)
Brent :23.14(▲1.14)
米天然ガス :24.43(▲0.03)
米ガソリン :27.96(+0.35)
ICEガスオイル :24.45(▲2.93)
LME銅 :16.16(+0.72)
LMEアルミニウム :16.67(+0.92)
金 :21.16(+0.38)
プラチナ :19.95(▲0.55)
トウモロコシ :27.57(+2.23)
大豆 :21.16(+0.38)
【エネルギー】
WTI :58.63(+0.72)
Brent :68.69(+0.93)
Oman :67.50(+0.85)
米ガソリン :193.45(+2.12)
米灯油 :197.13(+0.89)
ICEガスオイル :604.75(▲2.75)
米天然ガス :2.60(+0.02)
英天然ガス :29.93(▲0.50)
【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :68.69(+0.93)
SPO380cst :395.63(+10.91)
SPOケロシン :80.05(+0.85)
SPOガスオイル :80.46(+0.83)
ICE ガスオイル :81.17(▲0.37)
NYMEX灯油 :198.83(+1.06)
【貴金属】
金 :1284.93(+1.48)
銀 :14.57(▲0.03)
プラチナ :806.05(+6.45)
パラジウム :1335.68(+24.23)
※ニューヨーククローズ。
【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :5,950(+53:31C)
亜鉛 :2,546(+28:159.5B)
鉛 :1,830(+36:13.5C)
アルミニウム :1,795(+25:33.5C)
ニッケル :12,200(+320:45C)
錫 :19,245(▲105:285B)
コバルト :33,500(▲750)
(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :5962.50(+20.50)
亜鉛 :2555.00(+29.00)
鉛 :1830.00(+14.50)
アルミニウム :1802.00(+6.00)
ニッケル :12380.00(+490.00)
錫 :19290.00(▲55.00)
バルチック海運指数 :1,068.00(+9.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック
【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :98.6(▲0.10)
NYMEX鉄鉱石 :98.14(+0.83)
NYMEX原料炭スワップ先物 :206.5(±0.0)
上海鉄筋直近限月 :3,963(▲5)
上海鉄筋中心限月 :3,863(▲36)
米鉄スクラップ :315(▲1.00)
【農産物】
大豆 :829.75(+8.25)
シカゴ大豆ミール :300.50(+3.30)
シカゴ大豆油 :27.01(+0.23)
マレーシア パーム油 :1976.00(+2.00)
シカゴ とうもろこし :404.25(+14.50)
シカゴ小麦 :489.50(+19.25)
シンガポールゴム :185.50(+5.00)
上海ゴム :11580.00(+35.00)
砂糖 :11.66(+0.09)
アラビカ :93.30(▲0.20)
ロブスタ :1352.00(±0.0)
綿花 :68.39(+0.91)
【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :86.43(▲3.00)
シカゴ生牛 :111.18(+0.38)
シカゴ飼育牛 :143.23(+7.63)
※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。