景気の楽観とドル安で総じて堅調
- MRA商品市場レポート for PRO
2019年4月15日 第1517号 商品市況概況
◆昨日の商品市場(全体)の総括
「景気の楽観とドル安で総じて堅調」
【昨日の市場動向総括】
昨日の商品価格は総じて堅調な推移となった。中国の貿易統計が市場予想を上回った事や、英国のEU離脱問題がとりあえず先送りとなったことを受けて、市場参加者のリスクテイク意欲が回復したことが背景。
しかし、株価の上昇とともに長期金利が上昇、実質金利が上昇したことを受けてインフレ系資産は引けにかけて売られることとなった。
【本日の価格見通し総括】
週末発表された中国の統計が改善したことを受けて、景気循環銘柄が物色される動きが継続すると考える。しかし、同時に米国の長期金利も上昇しており、実質金利の上昇が特にインフレ系資産価格の上値を押さえると予想。
今週は主要企業の決算が予定されているため、決算動向を受けた株価動向にも注目したい。
もう1つの注目は、15日・16日にワシントンで行われる米ライトハイザー通商代表部と茂木再生相の貿易交渉初協議だろう。
自動車に対する関税引き上げが最大の焦点と見られていたが、他国に対しても要求している、為替操作の停止(日銀の緩和で実質的に円安誘導を行っている)を日本に対しても要求してくることは確実であり、円高・株価下落を通じて国内の景況感を悪化させる可能性がある。
【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】
週末発表された中国の貿易統計では、輸出が中国の貿易収支は輸出が前年比+14.2%(市場予想+6.5%、前月▲20.8%)と市場予想を大幅に上回る改善となった。
米国向けは引き続き低迷(年初来前年比▲8.5%)するも、ボリュームの大きいアセアン向け(+9.8%)、欧州向け(+8.8%)の改善がこの原則を相殺した。
しかし、輸入は▲7.6%(市場予想+0.2%、前月▲5.2%)と減速している。ポイントは米国(▲31.8%)からの輸入が報復関税で大幅に減速しているが、アセアン(▲5.3%)、日本(▲6.1%)、韓国(▲13.5%)といった地域も減速していることだ。
中国の統計を通じて見えてくる、世界の景気はやはり減速局面に差し掛かっていると見るべきであり、とくに株式市場に代表される景気の先行き楽観は、一時的なものに留まると考えるべきである。
さらに懸念すべきは「とりあえず材料として先送り」された英国のEU離脱は、英国がEU議会選に参加しない、10月末までに離脱協定で合意できなければ無秩序離脱となる可能性が高い。
問題の先送りは英国経済を真綿で首を締めるように減速させ、気が付けば欧州の景気も悪化している、ということになりかねない。
【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】
(マクロ要因)
・各国の金融緩和・経済対策を受けたPMI・ISMなどのマインド系指標の改善(価格上昇要因)。
・世界景気の減速観測。IMFは2019年の経済見通しを引き下げ(+3.5%→+3.3%)ており、先行きの見通しのリスクも下向きとしている。
・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因。
・FRBの利上げ打ち止め~利下げ観測の強まりは、ドル安を通じてドル建て資産価格の上昇要因。
・2020年からインドが人口ボーナス期入りすることによる、構造的な需要の増加は中長期的な価格の上昇要因。
(特殊要因)
・米中貿易交渉は、貿易面で一部妥結の可能性(価格の上昇要因)。ただし、知的財産権や技術の強制移転などの重要なポイントで妥結できておらず、米中の覇権争いであり長期化の見込み。
・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気後退など)によるリスク回避の動きの強まり。
・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク(とりあえず10月末まで先送り)。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速。
(投機・投資要因)
・長期金利の低下による米長短金利の逆転が株安を誘発、リスク回避のリスク資産売り圧力が強まる場合。
◆昨日の商品市場(個別)の総括
---≪エネルギー≫---
【原油市場動向総括】
原油価格は上昇した。中国統計の改善(輸出の加速)を受けた景気の先行き楽観と、イラン・ベネズエラの共有不安と、既に内戦が激化し始めているリビアに加え、スーダンでクーデダーが発生し供給懸念が意識されたことが材料となった。
【原油価格見通し】
原油価格は現状の高値水準でもみ合う展開を予想。
足元の景気先行きへの懸念後退に加え、供給面での不安材料が多数噴出していることが背景。
OPECプラスが減産を継続する中、米国の制裁によるイラン・ベネズエラからの供給不安、リビアの内戦激化に伴う供給不安、ネタニヤフ5選による周辺産油国との武力衝突への懸念、スーダンでのクーデター発生など、期待需給がタイト化すると考えられることが価格を押し上げ。
しかし、米中貿易交渉が本当に妥結するかわからない中では積極的にリスクテイクも行い難いことも事実であり、季節的に不需要期であることもあってこれが上値を抑制。
スーダンではバシル大統領が拘束され、クーデターが発生した。クーデター発生の理由はパンの価格を値上したことが切っ掛けとされており、「生活の困窮」を理由に発生した、チュニジアのジャスミン革命と要因がだぶる。
アルジェリアでも現政権への不満から大規模なデモが発生した直後でもあり、産油国の財政状況の悪化が「アラブの春」を再発させるリスクを意識する必要があるだろう。
【石炭市場動向総括】
石炭価格は続伸。4月の限月後退以降、中国の不需要期入りを材料に水準を切下げてきたため、石炭の割安感が強まったこと、足元の景気先行きへの懸念が若干後退する中で割安感から買いが入った。
【石炭価格見通し】
石炭価格は4月以降の下落幅が大きかったことから一旦買戻しが入ると見るが、本格的な上昇は季節性的にも5月以降になるだろう。
その後、8月にかけて高値を試し11月にかけて水準を切り下げる展開を予想。米中貿易協議が難航する見通しであることも価格を押し下げ。下値の目処は80ドル。
ただし、米国の北朝鮮制裁は容易に緩和せず、環境規制強化による供給の伸び鈍化が価格を下支えの見込み。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・原油価格の上昇に伴う北米の増産継続は、需給緩和で価格の下落要因。
・OPECプラスの協調減産は9月末で終了する可能性が高まっており、足元の協調減産は価格の上昇要因だが、年後半は下落要因に。
・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。
・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。
・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。
(特殊要因)
・米国のイランに対する制裁強化・ベネズエラ・リビアの情勢悪化に伴う供給途絶懸念は価格の上昇要因。
・米国のイスラエルへの過剰な肩入れと、イスラエルネタニヤフ首相の5選達成による、周辺産油国への武力行使の可能性が高まることは原油価格の上昇要因に。
・スーダンでのクーデター発生、アルジェリアでのデモ発生など、北アフリカ情勢が不安定化しており、周辺諸国に拡大するリスク。
・米国の制裁緩和による北朝鮮炭の輸出再開による需給緩和(石炭)。
・北朝鮮が新たにICBMの発射実験を検討していると伝えられ、韓国が北朝鮮に対して石油製品の瀬取りを行っていたことが判明、制裁が厳格になるとの見方は、北朝鮮からの石炭輸出(密輸)を制限(石炭)。
(投機・投資要因)
・直近の投機筋のポジションは、WTIはロングが621,766枚(前週比 +31,454枚)、ショートが105,104枚(▲3,847枚)、ネットロングは516,662枚(+35,301枚)、Brentが396,440枚(前週比+1,230枚)、ショートが38,299枚(▲8,251枚)、ネットロングは358,141枚(+9,481枚)
---≪LME非鉄金属≫---
【非鉄金属市場動向総括】
LME非鉄金属価格は上昇。中国の貿易統計の輸出が市場予想を上回る伸びとなり、世界景気の減速懸念が後退したことや、リスクテイク再開に伴うドル安進行が材料となった。ただし、実質金利の上昇が上値を押さえた。
【非鉄金属価格見通し】
非鉄金属価格は米欧中の経済統計の悪化がベース価格を下押しするが、それを受けた金融緩和や経済対策(特に最大消費国である中国の経済対策)期待が価格を下支えするため、レンジワークを継続すると予想。
LME指定倉庫在庫の減少が継続し、記録的な低水準となっていることや(統計上はタイトであるが、LME倉庫運営ルールの変更によるものである可能性もあり、単純に需給がタイト化しているとは言えない)、2020年から次の需要のけん引役として期待されるインドの需要増加観測が価格を下支え。
なお、米中貿易交渉の行方などは政治的な決断に左右されるため予見し難いが、着地するまでは基本的には積極的な買い材料にも、売り材料にもし難い。しかし、妥決するまでは懸念材料となるため、価格上昇を抑制。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)
・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。
・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。
・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は再開しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCも大幅に上昇。
・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。
(特殊要因)
・銅の生産減少観測(環境問題によるインド、露天掘りから地下生産に変更するインドネシア)、ヴァーレの尾鉱ダム事故の影響による供給減少(アルミやニッケルなどに波及する可能性)。
・LME指定倉庫在庫の減少が、LMEの倉庫運営ルール変更に伴う保管場所変更の取引の影響である場合、ルールが見直された際に再度、LME指定倉庫在庫が急増する可能性(下落要因)。
(投機・投資要因)
・4月5日付のLMEポジションはまちまち。銅は一転、ロング・ショートともに減少したが先週増加したロングの手仕舞いが顕著で、ネットロングは減少。亜鉛も同様。
アルミは一転、ロング・ショートとも増加したが、ショートの増加が顕著でショートは減少。
投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は155.1億ドル(前週162.0億ドル)と減少。上昇率は▲4.2%。
買い越し枚数はトン数換算ベースで4,027千トン(前週4,181千トン)と減少、増加率は▲3.7%。
---≪鉄鋼原料≫---
【鉄鋼原料市場動向総括】
中国向け海上輸送鉄鉱石スワップ価格は上昇、原料炭スワップ先物は横這い、中国鉄鋼製品価格は上昇した。
中国の貿易統計で輸出の伸びが市場予想を上回ったことや、鉄鉱石の輸入が過去5年平均を上回る高い水準を維持したこと、継続しているヴァーレの供給減少などが材料となった。
【鉄鋼原料価格見通し】
鉄鉱石価格は高値圏での推移になると考える。ヴァーレの尾鉱ダム決壊の影響や豪州の供給減少懸念、足元の中国関連統計が改善していることが価格を押し上げる一方、米中協議の先行きがはっきりせず、欧州に対する制裁が再開される可能性があること、最大消費国である中国が昨年と同レベルの生産を継続できる可能性は低いため。
ただし、目先は中国の経済対策効果による景気の下支えが期待されるほか、供給が強くクローズアップされているため一時的に100ドルを試す展開になってもおかしくない。
なお、2020年からはインドの需要が構造的に増加すると見込まれることも価格を下支え。
しかし、鉄鋼製品在庫の取り崩し時期にあり、季節的に価格が下押しされるため上値も重くなると予想。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・中国の鉄鋼製品在庫水準の高さは価格の下落要因。鉄鋼製品在庫は前週比▲87.0万トンの1,479.3万トン(過去5年平均1,425.5万トン)と例年を大きく上回る。
・中国の鉄鉱石在庫水準の高さは価格を下押し。鉄鉱石在庫は前週比+13万トンの1億4,890万トン(過去5年平均1億1,902万トン)、在庫日数は▲0.9日の37.5日(過去5年平均 29.9日)と例年の水準を上回る。
・季節的に鉄鋼製品在庫の取り崩し時期であり、価格には下押し圧力がかかりやすい。
(特殊要因)
・ヴァーレの尾鉱ダム決壊の影響が拡大、現在稼働停止命令が出ている3鉱山の合計8,280万トン以上の供給減少が起きた場合(自社・他社ともにあり得る)、価格の上昇要因に。
(投機・投資要因)
・固有の要因は特になし。
---≪貴金属≫---
【貴金属市場動向総括】
金・銀価格はもみ合った結果、金は前日比マイナス、銀は前日比プラスで引けた。ドル安が進行したことが価格を押し上げたが、長期金利上昇に伴う実質金利の上昇が上値を押さえた。
PGMは金銀価格がもみ合ったこともあり、同様に方向感に欠ける展開となった。
PGM現物の需給バランスを見る上での指標となるロジウムの価格は2,980ドル(前日比▲20ドル)と低下基調にある。
【貴金属価格見通し】
金価格は高値圏でのもみ合いになると予想。英国のEU離脱問題が先送りされたことで、とりあえず安全資産需要が減少すると予想されることが価格を下押しするが、世界的な金融緩和観測と原油価格の上昇を受け、実質金利に低下圧力がかかると考えられるため。
ただし、原油価格は年後半に下落する見通しであり、ベース価格の上昇余地は限定。銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)の上昇が金銀レシオを押し上げているため対金で割安に推移。
一方、欧州の政情不安、米国の債務上限問題、中東情勢の混乱懸念(イスラエル・イランを中心に)が安全資産需要を高めるため、リスクプレミアムが乗る形で価格を押し上げへ。
PGM価格は金銀価格が高値圏を維持するものの、ここまでの上昇がやや投機的な側面が強いため、対金銀では割安に推移。
プラチナは割安感からETFに強烈な買いが入っており、この5年の最高水準まで残高が積み上がっている。当面はこのトレンドが続こうが、先々の売り圧力となる可能性があることは留意。
パラジウムはリースレートが10%を割り込み、実際の需給面は緩和に向かいつつある。ロジウム価格の調整もあって、暫くは下値余地を探りやすい。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・FRBの利上げ打ち止め、原油価格の高止まりは実質金利の低下を通じて金銀価格の上昇要因に。
・実質金利の低下に伴うドル安の進行は、金銀価格の上昇要因に(逆に欧州の政情混乱や景況感の悪化でユーロ安・ドル高となった場合には金銀価格の下落要因)。
・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。
・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト(パラジウムの上昇要因・プラチナの下落要因)。
・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。
・割安感からプラチナのETFに買いが入っており、短期的には上昇要因、中期的には手仕舞い圧力で売り要因に(プラチナ)。
(特殊要因)
・米中貿易交渉は、貿易面で一部妥結の可能性(価格の下落要因)。ただし、知的財産権や技術の強制移転などの重要なポイントで妥結できておらず、米中の覇権争いであり長期化の見込み(価格の下支え要因)。
・米国の債務上限問題の顕在化(8月~9月にデフォルトするリスク)。
・欧州の政治混乱(英国のEU離脱、伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化など)による安全資産需要の増加。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。
(投機・投資要因)
・長期金利の低下による米長短金利の逆転が株安を誘発、リスク回避のリスク資産売り圧力が強まり、安全資産需要が高まる場合。
・銀価格は金銀在庫レシオが銀在庫の減少、ないしは金在庫の増加、あるいは両要因によって低下した場合、金銀レシオが上昇するリスク(銀価格の上昇要因)。
・直近の投機筋のポジションは、金はロングが199,507枚(前週比 +5,723枚)、ショートが94,143枚(▲5,085枚)、ネットロングは105,364枚(+10,808枚)、銀が76,410枚(▲2,583枚)、ショートが59,992枚(▲2,218枚)、ネットロングは16,418枚(▲365枚)
・直近の投機筋のポジションは、プラチナはロングが47,148枚(前週比 +5,684枚)、ショートが15,304枚(▲2,805枚)、ネットロングは31,844枚(+8,489枚)、パラジウムが13,021枚(▲899枚)、ショートが3,530枚(▲311枚)、ネットロングは9,491枚(▲588枚)
---≪農産品≫---
【穀物市場動向総括】
シカゴ穀物価格はドル安進行と生産地の洪水懸念が価格を押し上げる一方、景気への楽観から景気循環系商品が物色され、非景気循環系商品の売り圧力の高まりが、上値を押さえた。
【穀物価格見通し】
穀物価格はレンジワークを継続すると考える。米中貿易摩擦でシカゴの需給が緩和している可能性が高いが、エルニーニョの影響による供給懸念(洪水懸念)がショートの買戻しを誘うことが価格を押し上げると考えられるため。
ただし、各国の経済対策の影響から景気循環銘柄に一時的な買戻しが入る可能性はあり、非景気循環銘柄が売られる可能性があること、ブレグジットを意識したリスク回避のドル高進行が価格の上昇を阻害しよう。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・米穀物生産増産見通しを受けた需給緩和観測。
トウモロコシ作付意向面積 9,279万エーカー(市場予想 9,127万エーカー、前年8,803万エーカー)
大豆 8,462万エーカー(8,620万エーカー、8,898万エーカー)小麦 4,575万エーカー(4,688万エーカー、4,734万エーカー)
・4月の米需給報告の在庫見通し
トウモロコシ 20億3,500万Bu(市場予想19億8,771万Bu、前回18億3,500万Bu)、大豆 8億9,500万Bu(9億1,182万Bu、9億Bu)小麦 10億8,700万Bu(10億7,500万Bu、10億5,500万Bu)
・実質金利の低下に伴うドル安の進行は、シカゴ穀物の輸出競争力を改善し、需給面で価格の上昇要因に。
(特殊要因)
・米中貿易交渉は、貿易面で一部妥結の可能性(価格の上昇要因)。ただし、知的財産権や技術の強制移転などの重要なポイントで妥結できておらず、米中の覇権争いであり長期化の見込み(価格の下落要因)。
・エルニーニョ現象発生による北米の増産は価格の下落要因。ただし洪水などが発生し、災害が激甚化した場合には価格の上昇要因に。
・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。
(投機・投資要因)
・直近の投機筋のポジションは、トウモロコシはロングが403,322枚(前週比 +3,343枚)、ショートが532,560枚(+27,470枚)、ネットロングは▲129,238枚(▲24,127枚)、大豆はロングが145,108枚(+344枚)、ショートが183,751枚(▲5,053枚)、ネットロングは▲38,643枚(+5,397枚)、小麦はロングが133,695枚(▲1,946枚)、ショートが159,961枚(▲3,084枚)、ネットロングは▲26,266枚(+1,138枚)
◆本日のMRA's Eye
「投資銀行の商品市場からの撤退リスク」
商品市場から投資銀行の撤退が相次いでいる。今年の2月には投資銀行において商品市場をけん引してきた、ゴールドマン・サックスが商品トレーディングビジネスの規模縮小方針を発表。
先週は欧州における商品デリバティブではリーダー的存在だったソシエテ・ジェネラル銀行が、商品デリバティブの相対取引から撤退の方針を表明した。
いずれも「トレーディング部門の収益が低迷する中で」商品数が多く、負担が大きいコモディティのビジネスも縮小せざるを得なくなった、ということのようだ。
近年の商品市場の流れを見ると、これは「第3次投資銀行の規模縮小」の動きであり、今後、商品市場の構造を変化させ、さらに価格の変動性を高めることになると予想される。
これまでの世界のコモディティ市場の流れを、簡単におさらいしておこう。
投資銀行のコモディティビジネスは、2000年以降に始まった中国の資源バブルで過熱した。
この頃の特長として、中国の需要爆発により価格が上昇していくことがある程度明白だったため、「比較的長く、多くの量を、人よりも(他社よりも)早く、出来るだけ安い価格で買う」ことに主眼が置かれた。
しかしタイミングを逸して予算レートを市場価格が上回り、進退窮まった状態になった消費者側はさらにリスクの大きな商品に手を出すようになった。
例えば、通常の取引よりも、はるかに安い価格で銅の購入価格を1年間固定するが、一定の条件を満たす場合に数量が2倍になるといったものがこれに当たる。
この取引数量が2倍になるのは、多くの場合銀行ではなく個客側に不利な状態の時であり、かつ、その時の価格動向に数量が連動するため、相場が期待と逆に触れた時に巨額損失の計上を余儀なくされる企業が相次いだ。
しかしこれは商品を購入している企業側だけではなく、商品を提供している投資銀行側にも大きな負担を要求するもので、リーマン・ショックが発生した時に多くの企業がこうしたレバレッジの効いた取引で損失を被るが、同時に投資銀行側も多数のデスクが縮小、ないしは閉鎖される流れとなった。
これが商品市場における、第1次の規模縮小の動きである。
その後、各国中銀による大規模緩和、財政出動によって再び商品価格が急騰、金融政策の思惑を背景に価格が乱高下するようになった。
この頃から市場参加者は長期の取引を回避するようになる。価格リスク制御の主眼が「人よりも安く、長い期間」というテーマから「価格の乱高下の制御」に主眼が置かれるようになったためだ。
結果、上述のレバレッジの効いた商品は敬遠されるようになり、期間1年以内の、よりプレーンな取引(スワップや先物など)にシフトすることとなる。期間が短くなれば取扱数量も減少し、投資銀行の収益は減少する。
そして、リーマンショックの反省からボルカールールなどが設定され、投資銀行による投機的な取引が規制されるようになる中、レバレッジの効いた取引で儲けることが出来なくなった投資銀行が再び商品市場から撤退をし始めた。
投資銀行が撤退したことと、商品市場での投機的な取引主体が、商品ファンドなどの純然とした投機筋にシフトする中、高速取引の普及と相まって「期近の流動性は逆に増す」こととなったが、「期先の流動性が低下」するようになった。
原油などの流動性が高い商品であれば話は別だが、これによって期先の価格のマネジメントが困難になり、期先の価格ヘッジニーズが強い上流部門の鉱山・油田開発にも支障が出るようになった。供給が不安定化するということである。
また、消費者側であっても期先のヘッジを行おうとすると、価格が出せないことも増えた。
こうした「プライスが取得できない」というのは、2000年代初めの頃の金属市場に非常に状況が似ている。これが第2次の規模縮小の動きだ。
そして今回の第3次が起きているわけだが、今後は、実際に金融商品をヘッジに用いる場合、今まで積極的に選択肢としてこなかった先物取引所の活用を検討する必要が出てくることになると予想される。
ここで重要なのは、たとえ投資銀行が当該ビジネスから撤退すると、市場の流動性の供給者が減少しても、投機取引を行うプレイヤーはまだ市場に残留しているため、価格の変動性がさらに増す可能性がある点だ。
具体的には現物の売り手と買い手しかいない市場になるわけで、供給不足になれば投機の買いも加わって上昇が加速、下落はその逆になる。つまり、企業からすれば、価格変動リスクが増す中で、価格リスク制御の手段が減少することを意味する。
では変わった商品を組成してきた投資銀行の人間は、次に何をするのか。恐らく、商品の現物市場に再流入し、今度は現物にデリバティブの効果を組み込んだ商品を開発し、消費者に提供するようになると考えられる。
「現物契約だから」といって取引を行うと、そこには様々な特殊条項が組み込まれている、といったことが増えるのではないだろうか。
そしてこの20年、商品価格変動リスク制御のツール提供者として地位を確保してきた、投資銀行の立ち位置が変化していく可能性があることを意識し、先物市場での直接取引などの新たな手段を検討するべき時期に来ているといえる。
仮に投資銀行が再び市場に戻ってくれば、その時に従来通り、活用をすればよいだけのことであるため、そうした検討を躊躇する必要はないのではないか。
◆主要ニュース
・3月中国貿易収支 326.5億ドルの黒字(前月40.8億ドルの黒字)
輸出総額 前年比+14.2%(▲20.8%)
輸入総額▲7.6%(▲5.2%)
輸出年初来ベース
対米国 前年比 ▲8.5%(▲14.1%)
対欧州 +8.9%(+2.4%)
対日本 +2.6%(▲1.1%)
対アセアン諸国 +9.8%(+2.0%)
輸入
対米国 前年比 ▲31.8%(▲35.1%)
対欧州 +1.8%(+5.8%)
対日本 ▲6.1%(▲0.7%)
対アセアン諸国 ▲5.3%(▲8.2%)
・3月中国人民元建て新規融資 前年比+50.9%の16,900億元(前月 +5.5%の8,858億元)
・3月中国マネーサプライ M2 前年比+8.6%の188兆9,400億元(前月+8.0%の186兆7,400億元)
M1 +4.6%の54兆7,600億元(+2.0%の52兆7,
ファイナンス規模 2兆8,600億元(7,030億元)
・3月独卸売物価指数 前月比+0.3%(前月+0.3%)、前年比+1.8%(+1.6%)
・2月ユーロ鉱工業生産 前月比 ▲0.2%(前月改定+1.9%)、前年比▲0.3%(▲0.7%)
・2月インド鉱工業生産 前年比+2.86%(前月改定+2.57%)
・3月インド消費者物価指数 前年比+2.86%(前月+2.57%)
・3月米輸入物価 前月比 +0.6%(前月+1.0%)、前年比±0.0%(▲0.8%)
輸出物価 前月比+0.7%(+0.7%)、前年比+0.6%(+0.3%
・4月米ミシガン大学消費者マインド指数速報 96.9 (前月98.4)
現況指数 114.2(113.3)
先行指数 85.8(88.8)
1年期待インフレ率 2.4%(2.5%)
5年期待インフレ率 2.3%(2.5%)
・日銀黒田総裁、「必要あれば、さらなる追加緩和を考える余地がある。」
・FRBパウエル議長、「(大統領に関する言及を避けつつ)
・北朝鮮 金正恩委員長、米トランプ大統領との3回目の会談に意欲。合意に至る期限を年末に。年末までに米国が勇断を下すのを辛抱強く待つ。
◆エネルギー・メタル関連ニュース
【エネルギー】
・ベイカー・ヒューズ週間米国石油リグ稼働数833(前週比+
・スーダン、クーデターが発生しバシル大統領が失脚、国防大臣は軍主導の軍事評議会が期間2年の移行期間を設け選挙を実施すると表明。
・イスラム系武装組織、パキスタンのタリバン運動、パキスタン南西部ブルチスタン州の州都クエッタで、イスラム教シーア派を狙ったテロを実行、20名が死亡。
・米シェブロン、500億ドルで独立系アナダルコを買収。
・3月中国石炭輸入 2,348.2万トン(前月1,764.1万トン)、輸出 57万トン(66万トン)
・3月中国原油輸入 3,934万トン、939万バレル/日(前月3,923万トン、1,037万バレル)、輸出 32万トン(NA)
精製石油製品輸入 299万トン(235万トン)、輸出 721万トン(381万トン)
※原油1トン=7.4バレルとして算出。
【メタル】
・3月中国銅輸入 39万トン(前月 31万トン)、銅鉱石・精鉱 177万トン(193万トン)。アルミ(未加工品含む) 輸出 55トン(34万トン)
・3月中国鉄鉱石輸入 8,642万トン(前月8,308万トン)
・中国Steelhome、「
◆主要商品騰落率
【上昇率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.SHF 銀 ( 貴金属 )/ +2.50%/ +0.11%
2.CME木材 ( その他農産品 )/ +2.47%/ +4.87%
3.LME亜鉛 3M ( ベースメタル )/ +1.90%/ +19.21%
4.CBTもみ米 ( 穀物 )/ +1.70%/ +3.62%
5.LME銅 3M ( ベースメタル )/ +1.58%/ +10.04%
【下落率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
68.欧州排出権 ( 排出権 )/ ▲2.71%/ +7.24%
67.ブラジル・ボベスパ ( 株式 )/ ▲1.98%/ +5.68%
66.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ ▲1.58%/ ▲36.92%
65.SHF鉛 ( ベースメタル )/ ▲1.00%/ ▲12.08%
64.SHFニッケル ( ベースメタル )/ ▲0.83%/ +15.76%
※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
◆主要指標
【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :26,412.30(+269.25)
S&P500 :2,907.41(+19.09)
日経平均株価 :21,870.56(+159.18)
ドル円 :112.02(+0.36)
ユーロ円 :126.57(+0.92)
米10年債利回り :2.57(+0.07)
独10年債利回り :0.06(+0.06)
日10年債利回り :▲0.06(▲0.00)
中国10年債利回り :3.35(+0.08)
ビットコイン :5,042.54(▲11.49)
【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :19.74(▲0.62)
エネルギー :27.04(+0.04)
ベースメタル :15.41(▲0.36)
貴金属 :21.03(▲0.1)
穀物 :14.40(▲2.16)
その他農畜産品 :20.39(▲0.51)
【主要商品ボラティリティ】
WTI :19.10(▲0.11)
Brent :13.70(+0.18)
米天然ガス :22.50(▲0.04)
米ガソリン :21.52(+0.01)
ICEガスオイル :15.99(▲0.03)
LME銅 :14.39(+0.34)
LMEアルミニウム :15.78(▲0.01)
金 :10.30(▲2.79)
プラチナ :21.51(+0.03)
トウモロコシ :20.06(▲3.27)
大豆 :10.30(▲2.79)
【エネルギー】
WTI :63.89(+0.31)
Brent :71.55(+0.72)
Oman :70.62(+0.49)
米ガソリン :203.70(+0.61)
米灯油 :207.07(+0.35)
ICEガスオイル :633.00(+6.00)
米天然ガス :2.66(▲0.00)
英天然ガス :38.52(▲0.62)
【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :71.55(+0.72)
SPO380cst :425.20(+2.85)
SPOケロシン :83.26(▲0.08)
SPOガスオイル :83.59(▲0.34)
ICE ガスオイル :84.97(+0.81)
NYMEX灯油 :206.97(+0.07)
【貴金属】
金 :1290.43(▲2.09)
銀 :14.97(+0.00)
プラチナ :891.27(▲1.94)
パラジウム :1374.38(+3.29)
※ニューヨーククローズ。
【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :6,515(+72:24.5C)
亜鉛 :2,909(+15:101B)
鉛 :1,927(▲32:16.5C)
アルミニウム :1,865(+2:21.5C)
ニッケル :13,030(▲95:85C)
錫 :20,725(▲10:125B)
コバルト :34,500(±0.0)
(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :6505.50(+101.00)
亜鉛 :2925.50(+54.50)
鉛 :1932.00(+8.50)
アルミニウム :1864.00(+5.00)
ニッケル :13020.00(+50.00)
錫 :20705.00(+70.00)
バルチック海運指数 :726.00(▲2.00)
※C=Cash2M コンタンゴ、B=Cash2M バック
【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :87.77(+0.03)
SGX鉄鉱石 :94.66(+0.46)
NYMEX鉄鉱石 :93.79(+0.19)
NYMEX原料炭スワップ先物 :202(±0.0)
上海鉄筋直近限月 :4,120(+101)
上海鉄筋中心限月 :3,777(+4)
米鉄スクラップ :347(+2.00)
【農産物】
大豆 :895.25(±0.0)
シカゴ大豆ミール :307.90(+0.70)
シカゴ大豆油 :28.95(▲0.03)
マレーシア パーム油 :2038.00(▲2.00)
シカゴ とうもろこし :361.00(+1.00)
シカゴ小麦 :464.50(+4.00)
シンガポールゴム :174.20(+1.60)
上海ゴム :11280.00(±0.0)
砂糖 :12.77(+0.11)
アラビカ :90.40(+0.15)
ロブスタ :1387.00(▲5.00)
綿花 :78.11(+1.13)
【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :79.30(+0.08)
シカゴ生牛 :126.55(+0.55)
シカゴ飼育牛 :145.43(±0.0)
※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。