統計改善とドル安で総じて堅調
- MRA商品市場レポート for PRO
2019年4月9日 第1513号 商品市況概況
◆昨日の商品市場(全体)の総括
「統計改善とドル安で総じて堅調」
【昨日の市場動向総括】
昨日の商品価格はLME非鉄金属の一角が売られたが総じて堅調な推移となった。先週末に発表された米雇用統計が低インフレ下の雇用拡大を確認するものであったことが、景気循環銘柄価格を押し上げ、さらにEU首脳会談を控えたポジション調整に伴う、ユーロ高・ドル安がドル建て資産価格を押し上げたため。
しかし、10日の英国のEU離脱に関連し、EU緊急首脳会談が開催される見通しであるが、ここまでの報道では何らかの妥結があるかは微妙な状況であり、リスク資産価格を押し下げる見込み。
【本日の価格見通し総括】
本日はIMFの経済見通しに注目している。4月2日の講演でラガルド専務理事は景気見通しの下方修正の可能性を指摘している。多くの商品市場参加者は、需要見通しを占う上でIMFの見通しを重視しているため、景気循環銘柄価格には下押し圧力がかかろう。
しかし、米雇用統計が強めの内容になるなど景気に対する過剰な懸念が後退していることもあり、世界的な金融緩和観測が価格を下支えしよう。結果、レンジワークになると考える。
【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】
今週の最大のイベントは10日のEU緊急首脳会議での英国のEU離脱に関する協議と12日の期限だろう。
今のところ期限が延長される、との見方が強まっているが全く何も決められない英国議会がEUの提案を飲むとも思えず、かつ、6月末までの延長を主張する英国案をEUが受け入れるとは思えない。
恐らく、このままだとハードブレグジットになると予想される。この場合、正直何が起きるかわからないが、リーマンショックの時の反省から金融緩和などが行われると予想されるため、リスク資産価格が暴落する、ということはないだろう。
しかし、英国経済が減速し、欧州も影響を受ける可能性は極めて高いと考えられ、世界景気の下押し要因となるだろう。そして英国の経済低迷は長期化する可能性が高いと見る
英国からの企業脱出は既に始まっているのは報道の通りだが、現在英国の大学で研究する学者や研究チームも、チームごと大陸欧州に移籍しているようだ。英国からの頭脳流出は、英国の経済をさらに低迷させるだろう。
この他、あまり報じられていないが弊社は本日予定されている、イスラエルの選挙に注目している。現在、ネタニヤフ首相が率いるリクードが複数政党と連立を組んでいるが、第一党の座は確保できなさそうだ。
しかし、このままいくとネタニヤフ首相は5期目に突入することになる。ネタニヤフ首相は首相を続投する場合、「1967年の第三次中東戦争以降実効支配している、ヨルダン川西岸にある入植地を、イスラエルに併合する」と発言している。
入植地の併合は国際法で違反とされているが、「パレスチナ人に主権は渡さない」と強硬姿勢を貫いている
米国が過剰に肩入れしていることもあって、目立ってイスラエルに攻撃できる国はないが、米・イスラエルの暴走が続けば中東で武力衝突が起きる可能性は排除できない。
【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】
(マクロ要因)
・各国の金融緩和・経済対策を受けたPMI・ISMなどのマインド系指標の改善(価格上昇要因)。
・世界景気の減速観測。IMFは2019年の経済見通しを引き下げ(+3.7%→+3.5%)。EUもユーロの見通しを+1.9%→+1.3%、OECDも世界景気見通しを+3.5%→+3.3%に引き下げ。需要の伸び減速で価格の下落要因。
・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因。
・FRBの利上げ打ち止め~利下げ観測の強まりは、ドル安を通じてドル建て資産価格の上昇要因。
・2020年からインドが人口ボーナス期入りすることによる、構造的な需要の増加は中長期的な価格の上昇要因。
(特殊要因)
・米中貿易交渉は、貿易面で一部妥結の可能性(価格の上昇要因)。ただし、知的財産権や技術の強制移転などの重要なポイントで妥結できておらず、米中の覇権争いであり長期化の見込み。
・欧州の政治混乱(英国のEU離脱、伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気後退など)によるリスク回避の動きの強まり。特に英国のEU離脱が無秩序なものになる可能性は高まっている。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速。
(投機・投資要因)
・長期金利の低下による米長短金利の逆転が株安を誘発、リスク回避のリスク資産売り圧力が強まる場合。
◆昨日の商品市場(個別)の総括
---≪エネルギー≫---
【原油市場動向総括】
原油価格は上昇した。米雇用統計が低インフレ下での雇用環境の改善を示す内容だったほか、リビアの内戦激化懸念による供給懸念が強まったほか、EU首脳会談を控えてポジション調整のユーロ買い・ドル安となったことが背景。
【原油価格見通し】
原油価格は現状の高値水準でもみ合う展開を予想。
景気減速懸念を受けた各国の金融緩和や経済対策期待を受けて、マインド系の経済統計を中心に改善がみられることや、OPECプラスが減産を継続する中、米国の制裁によるイラン・ベネズエラからの供給不安、リビアの内戦激化に伴う供給不安を受けて、期待需給がタイト化すると考えられることが価格を押し上げ。
しかし、英国のEU離脱を巡る混乱やそれに伴うドル高、米中貿易交渉が本当に妥結するかわからない中では積極的にリスクテイクも行い難いことも事実であり、季節的に不需要期であることもあってこれが上値を抑制。
【石炭市場動向総括】
石炭価格は続伸。4月の限月後退以降、中国の不需要期入りを材料に水準を切下げてきたため、石炭の割安感が強まったこと、足元の景気先行きへの懸念が若干後退する中で割安感から買いが入った。
【石炭価格見通し】
石炭価格は4月以降の下落幅が大きかったことから一旦買戻しがはいると見るが、本格的な上昇は季節性敵にも5月以降になるだろう。
その後、8月にかけて高値を試し11月にかけて水準を切り下げる展開を予想。米中貿易協議が難航する見通しであることも価格を押し下げ。下値の目処は80ドル。
ただし、米国の北朝鮮制裁は容易に緩和せず、環境規制強化による供給の伸び鈍化が価格を下支えの見込み。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・原油価格の上昇に伴う北米の増産継続は、需給緩和で価格の下落要因。
・OPECプラスの協調減産は9月末で終了する可能性が高まっており、足元の協調減産は価格の上昇要因だが、年後半は下落要因に。
・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。
・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。
・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。
(特殊要因)
・米国のイランに対する制裁強化・ベネズエラ・リビアの情勢悪化に伴う供給途絶懸念は価格の上昇要因。米国のイスラエルへの過剰な肩入れは中東のパワーバランス変化を通じて供給途絶リスクを高めることに。
・米国の制裁緩和による北朝鮮炭の輸出再開による需給緩和(石炭)。
・北朝鮮が新たにICBMの発射実験を検討していると伝えられ、韓国が北朝鮮に対して石油製品の瀬取りを行っていたことが判明、制裁が厳格になるとの見方は、北朝鮮からの石炭輸出(密輸)を制限(石炭)。
(投機・投資要因)
・直近の投機筋のポジションは、WTIはロングが590,312枚(前週比 +29,760枚)、ショートが108,951枚(▲2,982枚)、ネットロングは481,361枚(+32,742枚)、Brentが395,210枚(前週比+19,085枚)、ショートが46,550枚(▲7,540枚)、ネットロングは348,660枚(+26,625枚)
---≪LME非鉄金属≫---
【非鉄金属市場動向総括】
LME非鉄金属価格は高安まちまち。EU首脳会議を控えてポジション調整のユーロ買い・ドル売りが進んだこと、原油価格の上昇が非鉄金属価格の押し上げ要因となったが、株価の下落、米長期金利の上昇を受けた実質金利の上昇が価格を下押ししたため。
高安まちまちとなった最大の要因はLME指定倉庫在庫の増減。固有材料が少ないことから材料視された。
【非鉄金属価格見通し】
非鉄金属価格は米欧中の経済統計の悪化がベース価格を下押しするが、それを受けた金融緩和や経済対策(特に最大消費国である中国の経済対策)期待が価格を下支えするため、レンジワークを継続すると予想。
LME指定倉庫在庫の減少が継続し、記録的な低水準となっていることや、2020年から次の需要のけん引役として期待されるインドの需要増加観測が価格を下支え。
なお、英国のEU離脱を巡る混乱や、米中貿易交渉の行方などは政治的な決断に左右されるため予見し難いが、着地するまでは基本的には積極的な買い材料にも、売り材料にもし難い。しかし、妥決するまでは懸念材料となるため、価格上昇を抑制。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)
・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。
・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。
・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は再開しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCも大幅に上昇。
・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。
(特殊要因)
・銅の生産減少観測(環境問題によるインド、露天掘りから地下生産に変更するインドネシア)、ヴァーレの尾鉱ダム事故の影響による供給減少(アルミやニッケルなどに波及する可能性)。
(投機・投資要因)
・3月29日付のLMEポジションはまちまち。銅は一転、ロング・ショートともに増加したがロングの増加が顕著でネットロングは増加。亜鉛も同様でネットロングは増加。
アルミは一転引き続きロング・ショートとも減少し、ネットロングを増加させた。
投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は162.0億ドル(前週164.6億ドル)と減少。上昇率は▲1.6%。
買い越し枚数はトン数換算ベースで4,181千トン(前週4,295千トン)と減少、増加率は▲2.7%。
---≪鉄鋼原料≫---
【鉄鋼原料市場動向総括】
中国向け海上輸送鉄鉱石スワップ価格は上昇、原料炭スワップ先物は上昇、中国鉄鋼製品価格は大幅に常勝した。
そもそものヴァーレの供給減少に加え、豪州に襲来したサイクロンの影響で鉄鉱石の供給が絞られるとの見方が強まったことが背景。
また、これを受けた鉄鋼製品価格の上昇も相乗効果で鉄鉱石価格を押し上げた。
【鉄鋼原料価格見通し】
鉄鉱石価格は高値圏での推移になると考える。ヴァーレの尾鉱ダム決壊の影響や豪州の供給減少懸念、足元の中国関連統計が改善していることが価格を押し上げる一方、米中協議の先行きがはっきりせず、最大消費国である中国の景気先行きが不透明なため。
ただし、目先は中国の経済対策効果による景気の下支えが期待されるほか、供給が強くクローズアップされているため一時的に100ドルを試す展開になってもおかしくない。なお、2020年からはインドの需要が構造的に増加すると見込まれることも価格を下支え。
しかし、鉄鋼製品在庫の取り崩し時期にあり、季節的に価格が下押しされるため上値も重くなると予想。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・中国の鉄鋼製品在庫水準の高さは価格の下落要因。鉄鋼製品在庫は前週比▲82.5万トンの1,566.3万トン(過去5年平均1,474万トン)と例年を大きく上回る。
・中国の鉄鉱石在庫水準の高さは価格を下押し。鉄鉱石在庫は前週比+13万トンの1億4,890万トン(過去5年平均1億1,902万トン)、在庫日数は▲0.9日の37.5日(過去5年平均 29.9日)と例年の水準を上回る。
・季節的に鉄鋼製品在庫の取り崩し時期であり、価格には下押し圧力がかかりやすい。
(特殊要因)
・ヴァーレの尾鉱ダム決壊の影響が拡大、現在稼働停止命令が出ている3鉱山の合計8,280万トン以上の供給減少が起きた場合(自社・他社ともにあり得る)、価格の上昇要因。
(投機・投資要因)
・固有の要因は特になし。
---≪貴金属≫---
【貴金属市場動向総括】
金銀価格は上昇。原油価格が地政学的リスクの高まりで上昇していること、英国のEU離脱が無秩序なものになる可能性があることから、安全資産需要が高まったことが背景。
PGMはプラチナ・パラジウムとも物色された。金銀価格の上昇を受けて買戻しが優勢となった(PGM見通しに関しては2019年4月8日付のMRA's Eyeをご参照ください)。
PGM現物の需給バランスを見る上での指標となるロジウムの価格は3,050ドル(前日比±0.0ドル)と前日比では変わっていない。
【貴金属価格見通し】
金価格は上昇余地を探る動きになると予想。世界的な金融緩和観測と原油価格の上昇を受け、実質金利に低下圧力がかかると考えられるため。
ただし、原油価格は年後半に下落する見通しであり、ベース価格の上昇余地は限定。
一方、欧州の政情不安、米国の債務上限問題、中東情勢の混乱懸念(イスラエル・イランを中心に)が安全資産需要を高めるため、リスクプレミアムが乗る形で価格を押し上げへ。
PGM価格は金銀価格が上昇余地を探る動きになるため下値は堅いが、景気先行き懸念から対金銀では割安に推移。
プラチナは割安感からETFに強烈な買いが入っており、この5年の最高水準まで残高が積み上がっている。当面はこのトレンドが続こうが、先々の売り圧力となる可能性があることは留意。
パラジウムはリースレートが10%を割り込み、実際の需給面は緩和に向かいつつある。ロジウム価格の調整もあって、暫くは下値余地を探りやすい。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・FRBの利上げ打ち止め~利下げ観測の強まり、原油価格の高止まりは実質金利の低下を通じて金銀価格の上昇要因に。
・実質金利の低下に伴うドル安の進行は、金銀価格の上昇要因に(逆に欧州の政情混乱や景況感の悪化でユーロ安・ドル高となった場合には金銀価格の下落要因)。
・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。
・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト(パラジウムの上昇要因・プラチナの下落要因)。
・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。
・割安感からプラチナのETFに買いが入っており、短期的には上昇要因、中期的には手仕舞い圧力で売り要因に(プラチナ)。
(特殊要因)
・米中貿易交渉は、貿易面で一部妥結の可能性(価格の下落要因)。ただし、知的財産権や技術の強制移転などの重要なポイントで妥結できておらず、米中の覇権争いであり長期化の見込み(価格の下支え要因)。
・米国の債務上限問題の顕在化(8月~9月にデフォルトするリスク)。
・欧州の政治混乱(英国のEU離脱、伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化など)による安全資産需要の増加。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。
(投機・投資要因)
・長期金利の低下による米長短金利の逆転が株安を誘発、リスク回避のリスク資産売り圧力が強まり、安全資産需要が高まる場合。
・銀価格は金銀在庫レシオが銀在庫の減少、ないしは金在庫の増加、あるいは両要因によって低下した場合、金銀レシオが上昇するリスク(銀価格の上昇要因)。
・直近の投機筋のポジションは、金はロングが193,784枚(前週比 ▲21,113枚)、ショートが99,228枚(+4,269枚)、ネットロングは94,556枚(▲25,382枚)、銀が78,993枚(+2,452枚)、ショートが62,210枚(+12,346枚)、ネットロングは16,783枚(▲9,894枚)
・直近の投機筋のポジションは、プラチナはロングが41,464枚(前週比 ▲1,887枚)、ショートが18,109枚(▲1,035枚)、ネットロングは23,355枚(▲852枚)、パラジウムが13,920枚(▲3,455枚)、ショートが3,841枚(▲1,366枚)、ネットロングは10,079枚(▲2,089枚)
---≪農産品≫---
【穀物市場動向総括】
シカゴ穀物価格は総じて軟調。ドル安が進行したものの、米農務省の需給報告発表を控えてポジション調整取引が進んだため。
【穀物価格見通し】
穀物価格はレンジワークを継続すると考える。米中貿易摩擦でシカゴの需給が緩和している可能性が高いが、エルニーニョの影響による供給懸念(洪水懸念)がショートの買戻しを誘うことが価格を押し上げると考えられるため。
ただし、各国の経済対策の影響から景気循環銘柄に一時的な買戻しが入る可能性はあり、非景気循環銘柄が売られる可能性があること、Brexitを意識したリスク回避のドル高進行が価格の上昇を阻害しよう。
今晩発表される米需給報告の在庫見通しは、トウモロコシが19億8,771万ブッシェル(前回18億3,500万ブッシェル)、大豆が9億1,182万ブッシェル(9億ブッシェル)、小麦が10億7,500万ブッシェルといずれも増加見込みである。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・米穀物生産増産見通しを受けた需給緩和観測。
トウモロコシ作付意向面積 9,279万エーカー(市場予想 9,127万エーカー、前年8,803万エーカー)
大豆 8,462万エーカー(8,620万エーカー、8,898万エーカー)小麦 4,575万エーカー(4,688万エーカー、4,734万エーカー)
・実質金利の低下に伴うドル安の進行は、シカゴ穀物の輸出競争力を改善し、需給面で価格の上昇要因に。
(特殊要因)
・米中貿易交渉は、貿易面で一部妥結の可能性(価格の上昇要因)。ただし、知的財産権や技術の強制移転などの重要なポイントで妥結できておらず、米中の覇権争いであり長期化の見込み(価格の下落要因)。
・エルニーニョ現象発生による北米の増産は価格の下落要因。ただし洪水などが発生し、災害が激甚化した場合には価格の上昇要因に。
・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。
(投機・投資要因)
・直近の投機筋のポジションは、トウモロコシはロングが399,979枚(前週比 ▲10,260枚)、ショートが505,090枚(+33,003枚)、ネットロングは▲105,111枚(▲43,263枚)
大豆はロングが144,764枚(+9,603枚)、ショートが188,804枚(+26,132枚)、ネットロングは▲44,040枚(▲16,529枚)
小麦はロングが135,641枚(▲1,284枚)、ショートが163,045枚(▲9,956枚)、ネットロングは▲27,404枚(+8,672枚)
◆本日のMRA's Eye
「コーヒー価格は低迷~気象リスクとブラジル改革推進に注意」
2019年の商品市況は景気の減速への懸念が強い中、経済対策や金融政策が景気のマイナス面を相殺、総じて景気循環系商品の需要はまだ底堅く推移しているという印象である。
これに対して、農畜産品は再生可能エネルギー向けの利用が義務付けられたり、現在多くの商品価格に影響を及ぼしている米中貿易戦争に代表される、関税の制度変更などがあった場合など、何かしらの政策的な意図が働いて需要の構造が変わらない限り、価格に影響を与えるのは主に供給面である。
原稿執筆時点で弊社がウォッチしている主要商品の中で、最も下落しているのは東商取トウモロコシで、次いでICEアラビカ(コーヒー豆)となっている。本日のレポートではこのコーヒー豆動向について取り上げる。
先物市場で取引されているコーヒーは一般に高級豆とされるアラビカ種と、インスタントコーヒーなどの加工品に用いられるロブスタ種の2種類に大別される。
アラビカ種は主に中南米で、ロブスタ種は南米でももちろん生産されているが、ベトナムやインドネシアといった東南アジアで生産されている。いずれも赤道近辺のコーヒーベルトで生産され、生産地は偏在している。
米農務省の推計では、2018-2019年のコーヒー生産は表年(コーヒーなどの果樹は、豊作年と不作年が交互に訪れる傾向がある。豊作年のことを表年、不作年のことを裏年と呼ぶ)ということもあって、過去最高となる前年比+1,561万1,000袋の1億7,449万3,000袋が見込まれている(増産の内訳は、アラビカが+956万4,000袋、ロブスタ豆が+604万7,000袋)。
しかし、この増産の大半はブラジルの増産(前年比+1,250万袋の6,340万袋、アラビカ+840万袋、ロブスタ+410万袋)によるものだ。これに対して需要は世界計で前年比+331万5,000袋の1億6,358万9,000袋が見込まれており、コーヒー豆の需給バランスは2年振りに1,090万4,000袋の供給過剰に転じる見込みである。
アラビカの取引所在庫は価格に対する説明力が高いが、記録的な低水準となった2016年から回復し、現在2014年の水準まで回復している。
在庫の積み上がりは需要の減速か供給の増加のいずれかの要因によるものだが、ここまでの積み上がりは生産の増加によるものと考えられる。
上記の需給見通しを背景とするとコーヒー価格は2019年も低迷が予想される。すでにアラビカの価格は2004年以来の低水準となっており、投機筋も一時縮小させていた売りポジションを再び拡大させている。
また、改革を期待して当選したブラジル・ボルソナロ大統領の支持率が低迷しており、レアル高に繋がる財政改革が思ったように進んでいないこともアラビカ豆価格を押し下げている。
改革の停滞はレアル安を進行させて輸出の増加を誘発、国際需給の緩和観測が強まるためだ(実際、昨年後半からブラジルのコーヒー輸出は急速に回復しており、現在は過去5年の最高水準を大きく上回っている)。
しかし、アラビカ豆の価格が記録的な低水準にあること、エルニーニョ現象が発生しており、主要生産地域である南米・東南アジアとも生産が減少する可能性があること、価格下落に伴い生産者が他の作物への生産シフトを進めていること、仮にボルソナロ大統領の改革が進捗した場合、米国の利上げ打ち止めと相まって再びレアル高が進行する可能性がゼロではないこと、といった上昇要因もあるためむしろこの水準では、上昇リスクを警戒するべきだろう(下落余地は限定される)。
◆主要ニュース
・3月日本経常収支(季節調整済) 1兆9,576億円の黒字(前月1兆7,330億円の黒字) (季節調整前)2兆6,768億円の黒字(6,
貿易収支 2,023億円の黒字(517億円の黒字)
輸出 6兆5,396円(6兆3,398億円)
輸入 6兆3,373億円(6兆2,882億円)
サービス収支 395億円の黒字(▲856億円の黒字)
第一次所得収支 2兆145億円の黒字(1兆7,592億円の黒字)
・3月日本企業倒産 前年比▲16.09%(前月▲4.53%)
・3月日本消費者態度指数 40.5(前月 41.5)
・3月日本景気ウォッチャー調査 現状判断DI 44.8(前月47.5)、先行き判断DI 48.6(48.9)
・2月独経常収支 163億ユーロの黒字(前月188億ユーロの黒字)
貿易収支 179億ユーロの黒字(146億ユーロの黒字)
輸出 前月比▲1.3%(+0.1%)、輸入▲1.6%(+1.4%)
・4月ユーロ圏センティックス投資家信頼感 ▲0.3(前月 ▲2.2)
・2月米製造業耐久財受注改定 前月比▲1.6%(±0.0%、前月改定+0.1%)
除く輸送機器▲0.1%(▲0.2%、▲0.1%)
製造業新規受注資本財非国防除く航空▲0.1%(±0.0%、+
・2月米製造業新規受注 前月比▲0.5%(前月改定±0.0%)、製造業受注除く輸送機器+0.3%(▲0.1%)
・3月中国外貨準備 3兆987億ドル(前月3兆901.8億ドル)
・パキスタン クレシ外相、「インドは今月中に再びカシミール地方を攻撃する準備をしている。」と国連安保理の常任理事5ヵ国に懸念を通達、インドは反発。
・日銀支店長会議、9地区中3地区(北陸、九州、沖縄)
◆エネルギー・メタル関連ニュース
【エネルギー】
・Shell、欧州最大のPernis製油所の稼働率65%に。
・UAEマズルーイ エネルギー相、「OPECは原油市場均衡の目標を達成しつつある。」
・リビア、国民軍と暫定政府、トリポリで軍事衝突。
・米国、イラン革命防衛隊を「テロ組織」指定、イランは米軍をテロ組織指定。
【メタル】
・中国、3月末金準備、11.2トン増加。4ヵ月連続。
◆主要商品騰落率
【上昇率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.TCM天然ゴム ( その他農産品 )/ +3.56%/ +8.31%
2.原料炭スポット ( 鉄鋼原料 )/ +3.08%/ ▲11.58%
3.SGX鉄鉱石 ( 鉄鋼原料 )/ +2.16%/ +32.54%
4.NYM WTI ( エネルギー )/ +2.09%/ +41.82%
5.ニューキャッスル炭 ( エネルギー )/ +1.97%/ ▲21.22%
【下落率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
68.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ ▲4.75%/ ▲35.91%
67.CBTオレンジジュース ( その他農産品 )/ ▲4.54%/ ▲10.95%
66.CME木材 ( その他農産品 )/ ▲1.70%/ +4.30%
65.ICE粗糖 ( その他農産品 )/ ▲1.49%/ +4.49%
64.欧州排出権 ( 排出権 )/ ▲1.18%/ ▲1.94%
※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
◆主要指標
【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :26,341.02(▲83.97)
S&P500 :2,894.79(+2.05)
日経平均株価 :21,761.65(▲45.85)
ドル円 :111.48(▲0.25)
ユーロ円 :125.56(+0.24)
米10年債利回り :2.52(+0.02)
独10年債利回り :0.01(±0.0)
日10年債利回り :▲0.05(▲0.02)
中国10年債利回り :3.25(▲0.01)
ビットコイン :5,198.46(+199.45)
【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :20.96(+0.04)
エネルギー :26.09(+0.67)
ベースメタル :16.95(▲0.29)
貴金属 :21.40(+0.09)
穀物 :18.27(▲0.33)
その他農畜産品 :21.50(+0.04)
【主要商品ボラティリティ】
WTI :18.46(+0.7)
Brent :11.74(▲0.19)
米天然ガス :23.10(+0.11)
米ガソリン :18.42(▲0.16)
ICEガスオイル :16.05(+0.81)
LME銅 :15.48(▲0.12)
LMEアルミニウム :16.79(▲0.37)
金 :13.04(▲0.3)
プラチナ :22.03(▲0.03)
トウモロコシ :23.93(+0.06)
大豆 :13.04(▲0.3)
【エネルギー】
WTI :64.40(+1.32)
Brent :71.04(+0.70)
Oman :70.70(+0.55)
米ガソリン :198.80(+1.93)
米灯油 :205.71(+1.47)
ICEガスオイル :627.25(+9.25)
米天然ガス :2.71(+0.04)
英天然ガス :39.14(▲1.95)
【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :71.04(+0.70)
SPO380cst :430.33(+7.00)
SPOケロシン :82.78(+0.35)
SPOガスオイル :83.03(+0.42)
ICE ガスオイル :84.19(+1.24)
NYMEX灯油 :205.99(+0.51)
【貴金属】
金 :1297.81(+6.05)
銀 :15.26(+0.15)
プラチナ :909.27(+8.10)
パラジウム :1383.57(+12.18)
※ニューヨーククローズ。
【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :6,452(+18:19.5C)
亜鉛 :2,892(▲17:68.5B)
鉛 :2,001(+8:21C)
アルミニウム :1,883(▲4:24.5C)
ニッケル :13,240(+40:90C)
錫 :20,840(▲310:160B)
コバルト :32,000(±0.0)
(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :6486.00(+88.50)
亜鉛 :2899.00(▲21.00)
鉛 :1991.00(+4.00)
アルミニウム :1873.00(▲9.50)
ニッケル :13200.00(+140.00)
錫 :20835.00(▲10.00)
バルチック海運指数 :711.00(+12.00)
※C=Cash2M コンタンゴ、B=Cash2M バック
【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :94.26(+1.99)
NYMEX鉄鉱石 :93.63(+1.82)
NYMEX原料炭スワップ先物 :201(+6.00)
上海鉄筋直近限月 :4,007(+166)
上海鉄筋中心限月 :3,687(+105)
米鉄スクラップ :350(±0.0)
【農産物】
大豆 :899.00(±0.0)
シカゴ大豆ミール :309.10(+1.10)
シカゴ大豆油 :28.87(▲0.28)
マレーシア パーム油 :2111.00(▲18.00)
シカゴ とうもろこし :359.75(▲2.75)
シカゴ小麦 :463.75(▲4.00)
シンガポールゴム :170.60(+2.60)
上海ゴム :11750.00(±0.0)
砂糖 :12.57(▲0.19)
アラビカ :92.95(▲0.25)
ロブスタ :1426.00(+6.00)
綿花 :78.92(+0.67)
【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :78.70(▲0.33)
シカゴ生牛 :125.73(▲0.33)
シカゴ飼育牛 :146.78(+0.63)
※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。