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再び「良いとこどり」の市場~微妙なバランスのリスク選好
  • MRA外国為替レポート

2019年4月8日号

◆先週の市場総括


先週は中国の経済指標・企業の景況感が改善したことや米中通商交渉合意への期待感から市場参加者のリスク選好が回復。米国株は週末にかけて堅調となり6か月ぶりの高値に戻した。

米長期金利は低下が一服して、米10年債利回りは2.50%近辺で小動き。

週末に発表された米雇用統計(3月)は強弱まちまちの内容で市場の反応は鈍かった。

ドル円相場は111円ちょうど近辺で始まり週央に111円台半ばで推移。週末にかけて111円台後半に上昇し111円70銭近辺で引けた。

月曜日の東京市場のドル円相場は111円ちょうど近辺で始まり底固いながらも方向感なくもみ合い。ユーロはじり高で、対ドルでは1.1220で始まり夕刻にかけて1.1250に上昇し、対円でも124円50銭近辺から90銭へと上昇した。

日経平均は21,550円で高寄りした後21,650円に上昇。しかし反落して21,500円台前半でじり安推移となり引け。

前日日曜日に発表された中国の製造業PMI(3月)が50.5と予想49.5、前月49.2を上回り景況感の分かれ目である50を越え、またこの日発表された民間調査の財新製造業PMI景況感指数(3月)も50.8と予想50.1、前月49.9を上回った。

中国製造業に景況感改善の兆しがみえたとして市場のリスク選好が強まった。

一方、朝方発表された日銀短観(3月調査)では業況判断DIが製造業を中心に悪化。景気後退に直面しているのではないかとのリスクが指摘されたが市場の反応は鈍かった。

海外市場に入るとドル円相場は一時110円90銭に下落、ユーロ円相場も124円60銭に下押した。

しかし発表された米ISM製造業景気指数(3月)が強かったことでリスク選好が強まった。結果は55.3と予想54.5、前月54.2を上回る数字となり、欧州景気は不振も米国経済は良好として、景気後退懸念や利下げ観測が後退。

米国株は高寄り後続伸、上昇。米長期金利は上昇して10年債利回りと短期金利の逆イールドが解消した。米10年債利回りは2.50%を回復。ドルは堅調。ドル円相場は111円40銭に上昇。

ユーロドル相場は1.20ちょうど近辺へとユーロ安ドル高が進んだ。ユーロ円相場は124円60銭に下落したが80銭~90銭に戻してもみ合い引け。ドル円相場は111円30銭~40銭でもみ合い引けた。

火曜日の東京市場の為替相場は総じて小動き、横ばい。ドル円相場は111円40銭で始まり30銭~40銭でもみ合い。ユーロドル相場は1.12中心に上下。ユーロ円相場は124円80銭台からやや押して70銭~80銭でもみ合いとなった。

日経平均は堅調な米国株の動向を受けて21,700円台で高寄りも利食い売りに押される展開。後場にかけてじり安となり21,500円ちょうど近辺、前月比変わらずの水準で引けた。

海外市場でもドル円相場は小動きとなり111円30銭で引け。ユーロはやや下落する場面もあったが、こちらも対ドルで1.12ちょうど近辺、対円で124円70銭~80銭と東京市場とほぼ同水準で引けた。

米国株はまちまちの動き。ダウは軟調、ナスダックは上昇。米長期金利は小幅低下して10年債利回りは2.47%。

水曜日の東京市場では朝方やや円安の動きとなった。FT紙が、米中当局者は貿易合意に向けた問題の大半を解消した、と報じたことでリスク選好が強まった。

ドル円相場は111円30銭で始まり50銭に、ユーロ円相場は124円70銭近辺から125円10銭に上昇。ただ昼過ぎには上昇一服。日経平均は21,500円台で始まり同ニュースを受けて21,600円台に上昇しその後もじり高。21,700円近辺で引けた。

発表された中国の財新サービス業PMI景況感指数(3月)は54.4と予想52.3、前月51.1を上回り良好な数字で市場に安心感をもたらした。

海外市場でもリスク選好は維持され欧州株は続伸、米国株も小幅上昇。NYダウは反発、S&P500、ナスダックは5日続伸。米長期金利は小幅上昇して10年債利回りは2.52%。

米国のADP雇用報告(3月)では雇用者数前月比は+129千人と予想+160千人に届かず。またISM非製造業景気指数(3月)も56.1と予想58.7、前月59.7に対し弱い数字。

ただ米中通商協議、中国景気持ち直しへの期待や、世界経済減速のなかでも米国経済はしっかりとの見方がリスク選好を支えた。

そうしたなか為替市場は小動き。ドル円相場は111円40銭~50銭でもみ合い。ユーロも1.1230~50で横ばい、上下動。ユーロ円相場は125円台前半で推移し125円20銭~30銭で引けた。

木曜日の東京市場のドル円相場は111円40銭台で始まりやや上値の重い展開でもみ合い、ユーロ円相場も125円30銭で始まり小動き。

日経平均は21,700円ちょうど近辺で寄り付き前場はしっかりした値動きで21,800円近くに上昇。しかし後場には反落して21,700円台前半で引けた。

中国株・上海総合指数は5日続伸。海外市場でも株価は堅調。欧州株、米国株ともにしっかり。米中合意が近いとの期待感が支えとなった。

米長期金利は前日比変わらず10年債利回りは2.51%。ドルはしっかり。ドル円相場は111円50銭~60銭に上昇してもみ合いの後、60銭~70銭にじり高となり引けた。

発表されたECB理事会(3月)の議事要旨では、景気悪化を背景に2020年3月まで利上げを先送りしてはどうかとの意見もみられた。

ユーロは欧州時間に軟調となりユーロ円相場は125円ちょうど近辺に下落。ただその後はリスク選好が回復するなか円が軟調となりドル円相場が上昇するのと同時にユーロ円相場も125円30銭に上昇して引けた。

金曜日の東京市場の為替相場は全般に小動き。ドル円相場は111円60銭で始まり70銭を中心にもみ合い。ユーロ円相場は125円40銭近辺で小動き。日経平均は21,750円で寄り付きじり高。引けは21,800円近辺。米雇用統計の発表を前に様子見となった。

海外市場でも全般的に動きの鈍い展開。米雇用統計(3月)は強弱まちまちの内容で市場の反応は鈍かった。

非農業部門雇用者数前月比は+196千人と予想+175千人よりやや強め。一方で平均時給は前年同月比+3.2%と前月の+3.4%より弱かった。

米国株は小幅高。米国株の主要3指標はいずれも6か月ぶりの高値水準。米10年債利回りは2.50%で前日比ほぼ同水準。ドル円相場は111円70銭近辺でもみ合い小動きで引け。

ユーロドル相場は1.1210~20にややユーロ安でもみ合い。ユーロ円相場も125円30銭近辺へ小幅下落してもみ合い引けた。

◆今週の3つの注目ポイント


1.米国の経済指標

今週は米国で物価関連の指標が発表となる。FRBパウエル議長は、景気重視に軸足を移し、ある程度のインフレ率上昇、目標水準の2%を上回ることを許容するスタンスに。

引き続き物価の安定が示されるようなら、今年の利上げ見送りの確度は上がる。市場は景気持ち直しの兆しと政策金利据え置きの可能性、双方を良いところ取りしてリスク選好の維持につながるか。

月曜日 製造業新規受注(2月)

水曜日 消費者物価指数(3月、コア指数、前年同月比、予想+2.1%、前月+2.1%)

木曜日 生産者物価指数(同)

金曜日 輸入物価指数(同)、ミシガン大学消費者マインド指数(4月)

2.FOMC議事録(3月19日・20日開催分)

水曜日にFOMC議事録(3月19日・20日開催分)が公表される。この会合では、市場の期待を上回るハト派スタンスが示された。

委員の政策金利予想は今年に関して前回12月の2回から利上げなしに下方修正。またバランスシート縮小は9月で終了することが決定された。

様子見というよりもややハト派に振れた内容に、市場はむしろ決断の背景にある景気に対する慎重な見方を懸念材料ととらえてネガティブに反応した。

足元ではリスク選好が回復しているが、景気に対する慎重な見方が再び市場に慎重さ、リスク選好の後退をもたらすことはないか。

3.中国の経済指標

直近の中国の企業景況感指数が持ち直したことで、景気先行きに対する懸念がやや後退している。その他の指標も改善の兆しを示せるのかどうか。

木曜日に消費者物価指数、生産者物価指数(いずれも3月)、金曜日に貿易収支(3月)が発表になる。

とくに貿易収支に中国景気持ち直しの兆し、ないし悪化に歯止めがかかったとのイメージを抱かせる数字がみられるか。輸出入双方の落ち込み度合いの改善、ないし持ち直しがみられるか。

そのほか、米中通商協議に何らかの協議進展に関する情報が得られるか。イギリスのEU離脱問題を巡っては10日にEU首脳会議が開催されるが、何らかの決定が得られるか。

イギリス政府は野党との交渉継続を理由に6月末までの延期を要望しているが、それだけの理由で延期に応じられるのか。

◆今週のMRA's Eye


再び「良いとこどり」の市場~微妙なバランスのリスク選好

先週の市場は、中国の経済指標が持ち直したこと、米中通商交渉が継続していること、イギリスの合意なき離脱が避けられるのではないかとの見方、などでリスク選好が回復した。

これまでは実体経済の悪さと政策や通商交渉への期待が対峙するかたちで、リスク回避とリスク選好の間を彷徨っていた。しかし中国の経済指標に持ち直しがみられたことで、実体悪への不安が緩和し、市場心理のバランスがリスク選好に傾いた。

中国の企業景況感指数であるPMIには、国家統計局と物流購入連合会が共同で調査しているものと、民間ベースでメディアグループ財新と英国の調査会マークィットが共同で調査しているもの、の2種類がある。

3月の数字はその双方ともに改善した。とくに懸念されていた製造業のPMIは、国家統計局ベースの数字が50.5と前月49.2から改善し、数か月にわたり景況感の分かれ目である50を下回っていた状況から浮上した。

民間ベースの数字も50.8と前月49.9から改善。また非製造業・サービス業をみても、前者が54.8、後者が前月の51.1から54.4に改善した。この数字に市場心理が好転し、リスク選好が強まるのはもっともだ。

ただ、この数字を実態悪の後退ととらえて良いかは、まだ慎重な判断が必要だ。

まず3月については、中国においては旧正月による活動低迷からの反動の影響が出ている可能性がある。

もうひとつ、この統計は企業への調査であり、センチメントのヒアリングで構成されている。実数値ではない。

米中通商交渉が進展しているとの見方や、中国政府が景気対策を打っていることそのものが、企業心理を好転させている結果である可能性もある。

経済統計ではありながら実数値ではなく期待感に左右される面があることは割り引いて考える必要がある。

企業心理の改善が実際の企業活動の改善につながり生産や雇用が実際に上向きとなるかどうか。生産や雇用、失業率の改善や消費の活発化につながるかどうかが実際には重要だ。もちろん、PMIが改善していることそのものは悪い話ではない。

米国でもISM製造業景気指数(3月)が55.3と前月54.2から持ち直し、このところの低下基調に歯止めがかかったようにみえる。これも同様に企業へのヒアリングであり米中通商交渉の進展への期待が反映されている可能性がある。

一方、非製造業景気指数は56.1と前月59.7から悪化したが水準としては50を上回っており悪い数字ではないが、こちらは堅調な状況を維持できるかどうか。

中国経済の動向が先進国、米国、欧州、そして日本に影響しているとすれば、タイムラグをもって実体経済に影響が出てくるはずだ。中国のPMIの改善は「先行指標の先行指標」といった位置づけになる。

市場はそもそも期待感ないし可能性を織り込んで動くものであり、足元のリスク選好回復は、後押しで実体経済の改善が示される限り、崩れることはない。

中国の経済指標改善が続けば、様々なリスク資産価格の下値リスクが後退する。円相場がリスク選好・回避に左右される状況が続いているが、リスク選好がやや回復したことで110円割れの可能性は現時点でやや後退した。

このまま良好な経済指標が続けばさらに110円が固くなる。112円をやや上回る可能性が生じつつある。

もうひとつ、リスク選好を支えている重要な要素が、柔軟かつ慎重あるいは緩和に傾いた米欧の金融政策だ。

景気重視でインフレリスクが高まらない限り利上げに舵を切らない姿勢、あるいはインフレ率目標を一時的に上回っても許容する姿勢が明らかになっており、市場の安心感、リスク選好を支えている。

その姿勢は、物価関連指標が落ち着いている限り変わりそうにない。

実際にインフレ率は安定ないしむしろ上昇率が鈍る状況にある。市場が懸念しているのは、金融当局がそこまで慎重になるほど景気は弱いのか、という点。

これが良好な経済指標で否定されれば、景気は底固くインフレ懸念はなく金融政策は緩和的、ということで、いわゆる「適温相場」の条件が整う。

ただ景気の動向は減速に何とか歯止めがかかる程度の状況で、リスク選好が活発化する状況にはない。リスク選好を表象する米国株の動向は、史上最高値の回復までは遠いものの、昨年末に急落する前の水準を概ね回復した。

長期金利低下は株価の割高感を抑制する要素として働いており、長期金利が上昇していた年末時点と異なって株価が下落しにくい状況となっている。

ここからは企業業績の伸びに応じた株価上昇が期待できるということになるが、景気動向と連動するとすれば、かなり緩慢な上昇となりそうだ。

引き続き微妙なバランスのなかでリスク選好が緩慢に維持された状況が続こう。円高が抑制された状況がやや安定さを欠くなか、ドル金利先高感の低迷からドルの上値はなお重い。

短期的なリスクは、公表される金融政策決定会合の議事録で景気に対する懸念が議論されていたことが明らかになり市場の警戒感が高まる可能性。

米国が利上げ様子見姿勢を続けているなかではリスクが低下しているものの、リスク選好の回復にともなう長期金利の反転上昇、リスク資産価格のバリュエーション圧迫、住宅価格の下落、などによる金融リスク・市場リスクの顕在化、あるいは超低金利継続による金融機関の収益圧迫とリスク回避姿勢の強化による金融面からの景気圧迫、などだ。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :111.73(+0.07)
ユーロ :125.3(+0.01)
英ポンド :145.665(▲0.35)
豪ドル :79.377(▲0.05)
カナダドル :83.473(▲0.12)
スイスフラン :111.673(±0.0)
ブラジルレアル :28.8344(▲0.11)
中国人民元 :16.658(+0.05)
韓国ウォン(日本円=100) :9.819(▲0.01)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1216(▲0.001)
英ポンド :1.3038(▲0.004)
豪ドル :0.7105(▲0.001)
カナダドル :1.3384(+0.003)
スイスフラン :1.0003(+0.000)
ブラジルレアル :3.8732(+0.015)
中国人民元 :6.7079(▲0.009)
韓国ウォン :1136.13(▲0.22)

【主要国政策金利】
米国 :2.50
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :2.50(▲0.02)
米2年債 :2.34(+0.00)
日本10年債利回り :▲0.03(+0.02)
日本2年債利回り :▲0.03(+0.01)
独10年債利回り :0.01(+0.01)
独2年債利回り :▲0.57(+0.01)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :26,424.99(+40.36)
NASDAQ  :7,938.69(+46.91)
S&P500 :2,892.74(+13.35)
日経平均株価 :21,807.50(+82.55)
ドイツ DAX :12,009.75(+21.74)
インド センセックス :38,862.23(+177.51)
中国上海総合 :休場( - )
ブラジル ボベスパ :97,108.17(+795.11)
英国FT250 :19,538.30(+30.97)
ビットコイン :4999.01(+151.97)

【主要商品価格】
WTI :63.26(+1.16)
Brent :70.39(+0.99)
米ガソリン :197.32(+3.33)
米灯油 :204.62(+3.28)

金 :1291.76(▲0.45)
銀 :15.11(▲0.04)
プラチナ :901.17(+2.41)
パラジウム :1371.39(+4.41)
銅 :6434.00(▲31:15C)
アルミニウム :1886.50(▲6:22.5C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :899.00(▲7.50)
シカゴ とうもろこし :362.50(▲2.75)
シカゴ小麦 :467.75(▲3.00)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。

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