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米中貿易戦争激化懸念で総じて軟調
  • MRA商品市場レポート for PRO

2019年5月7日 第1525号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「米中貿易戦争激化懸念で総じて軟調」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品価格は一部の商品を除いて総じて水準を切下げる展開となった。米国が中国に対する関税引き上げ方針を表明、米中貿易交渉の先行き不透明感が高まったことが売り材料視された。

【本日の価格見通し総括】

本日は米中貿易戦争への懸念や、経済統計の減速もあり、休み明けの市場を中心に水準を切下げる展開を予想。

ただし、米国のイランに対する強硬姿勢の強まりから、エネルギーセクターは堅調な推移となり、同時に安全資産である貴金属セクターも物色されるものとみる。

【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】

GWは市場が大きく荒れることが多いが、今年も結果的に荒れた相場となった。休み中に発表された経済統計はISM製造業指数、製造業PMIを中心に減速感が強い内容となった一方、FRBは過度にハト派的なスタンスを修正する内容となったことで、リスク回避姿勢が強まった。

さらに5日にはトランプ大統領が対中関税を10%から25%に引き上げると表明したことがリスク資産価格を押し下げた。ただ、「所詮トランプ大統領のパフォーマンスだろう」ということで昨日は引けにかけて買戻しが入っている。

市場では「トランプ大統領の言動に過度に反応するべきではない」という整理をしているが、関税が引き上げられれば実体経済に影響が及ぶことは確実であり、リスク資産価格の下押し要因となる。それが一時的であったとしても、市場の混乱要因になることは意識すべきだろう。

今回の教訓は「交渉は進捗している」、と積極的にメディアが報じていたが「こうあって欲しい」という願望が含まれていたと考える必要があることだ。

結局ビジネスと同じで、政治的な交渉は最終合意に至るまでわからないということであり、特にトランプ政権ではこの傾向が顕著だ。

ただ1つ確実であることは「やはりトランプ大統領は一回口にしたことは実行する」ことだろう。となると、日米貿易交渉での自動車関税引き上げは、一時的にでも行われる可能性がゼロではない、というシナリオを現時点で排除すべきではない。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

(マクロ要因)

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標再びの減速(価格下落要因)。

・世界景気の減速観測。IMFは2019年の経済見通しを引き下げ(+3.5%→+3.3%)ており、先行きの見通しのリスクも下向き。

・FRBは利下げの可能性を否定(インフレ系資産価格の下落要因)。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q119の中国GDPは前年比+6.4%、前期+6.4%と市場予想の+6.3%を上回りやや減速懸念が後退)。

・景気減速下での原油価格高騰は、消費国から生産国への所得移転を通じて景気の下押し要因に。また、リスク回避のドル高進行も価格上昇を抑制。

・2020年からインドが人口ボーナス期入りすることによる、構造的な需要の増加は中長期的な価格の上昇要因。

(特殊要因)

・米政権は対中関税引き上げを表明(景気循環銘柄価格の下落要因)。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気後退など)によるリスク回避の動きの強まり。

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク(とりあえず5月末、10月末を期限として問題先送り)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速。

(投機・投資要因)

・長期金利の低下による米長短金利の逆転が株安を誘発、リスク回避のリスク資産売り圧力が強まる場合。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油価格は下落した後、上昇に転じた。トランプ大統領が中国に対する関税引き上げを表明したことで景気への懸念が高まったことが価格を下押ししたが、ボルトン大統領補佐官が、空母エイブラハム・リンカーンを中心とする打撃・空爆群の中東派遣を決定したことで、中東情勢不安が高まるとみられたことが価格を押し上げた。

【原油価格見通し】

原油価格は高値圏を維持する展開を予想。

米国が中東に打撃・空爆戦力覇権を決定、域内情勢が不安定化するとの見方が強まる一方、イランに対する制裁があっても輸入国とも国内の製油所の能力などから直ちに禁輸を行えるわけではないこと、仮に完全に減産が行われても、数字の上では供給は足りること、ロシアが減産を順守していないことといった供給面の不安が後退していることに加え、各国PMI、米ISM製製造業指数の減速といった、下落要因が意識されるため。

ただし、イランに対する制裁が行われる以上、イランの報復懸念に伴うホルムズ海峡封鎖の可能性や、イスラエルに対する米国の過剰な肩入れが域内の供給不安を意識させること、ベネズエラ・リビアの供給不安から、大幅な調整にはならない見込み。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は小幅に下落。米国の中国に対する制裁強化を受け、需要の端境期に同国の景気が減速するとみられたことが材料となった。

【石炭価格見通し】

石炭価格は季節的な需要期に徐々に入りつつあることから、じりじりと水準を切り上げる展開になると予想する。

本格的な上昇は8月頃。その後季節的な調整の後、11月にかけて水準を切り下げる展開を予想。米中貿易協議が難航する見通しであることも価格を押し下げ。下値の目処は80ドル。

ただし、米国の北朝鮮制裁はミサイル発射の影響で容易に緩和せず、環境規制強化による供給の伸び鈍化が価格を下支えの見込み。

また、中国による豪州炭の輸入規制(華為問題の影響)の影響でインドネシア炭にシフトしていることは逆に、上値を抑えると考えられる(日本が輸入する石炭価格CIFへの影響は中立)。米国の中国制裁強化も価格の上値を抑える公算。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・原油価格の上昇に伴う北米の増産継続は、需給緩和で価格の下落要因。

・OPECプラスの協調減産は9月末で終了する可能性が高まっており、足元の協調減産は価格の上昇要因だが、年後半は下落要因に。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

(特殊要因)

・米国のイランに対する制裁強化・ベネズエラ・リビアの情勢悪化に伴う供給途絶懸念は価格の上昇要因。

・米国のイスラエルへの過剰な肩入れと、イスラエルネタニヤフ首相の5選達成による、周辺産油国への武力行使の可能性が高まることは原油価格の上昇要因に。

・スーダンでのクーデター発生、アルジェリアでのデモ発生など、北アフリカ情勢が不安定化しており、周辺諸国に拡大するリスク。

・米国の制裁緩和による北朝鮮炭の輸出再開による需給緩和(石炭)。

・北朝鮮のミサイル発射により、制裁が継続される可能性が高まっていることは、北朝鮮からの石炭輸出(密輸)を制限し、価格の上昇要因(石炭)。

・米中情報戦争をめぐる華為排除の決定を受けて中国政府は豪州からの石炭輸入を規制、インドネシア炭にシフトしていることはNEWC価格の下落要因に(石炭CIF価格に対する影響は中立)。

(投機・投資要因)

・直近の投機筋のポジションは、WTIはロングが638,298枚(前週比 ▲6,372枚)、ショートが114,195枚(+16,884枚)、ネットロングは524,103枚(▲23,256枚)、Brentが433,588枚(前週比+5,324枚)、ショートが29,219枚(▲2,779枚)、ネットロングは404,369枚(+8,103枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME非鉄金属価格は休場。COMEX銅は上昇したが、上海非鉄金属は軒並み水準を切下げた。米中貿易交渉の先行きに暗雲が垂れ込めていることが売り材料となった。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は下値余地を探る動きになると考える。米国が中国に対する制裁強化方針を示したことや、中国の製造業PMIが再び減速、その他の地域の製造業PMIも減速感が強まっていることが実需面で、米FRBは先々の利下の可能性を否定、金融政策がより中立になったことが金融面で価格を押し下げるため。

ただし、中国の経済対策期待に加え、LME指定倉庫在庫の減少が継続し、記録的な低水準となっていることや(統計上はタイトであるが、LME倉庫運営ルールの変更によって、LME指定倉庫以外の倉庫に移されている可能性もあり、単純に需給がタイト化しているとは言えない)、2020年から次の需要のけん引役として期待されるインドの需要増加観測が価格を下支えすると予想する。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は再開しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCも高止まり。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

(特殊要因)

・銅の生産減少観測(環境問題によるインド、露天掘りから地下生産に変更するインドネシア)、ヴァーレの尾鉱ダム事故の影響による供給減少(アルミやニッケルなどに波及する可能性)。

・LME指定倉庫在庫の減少が、LMEの倉庫運営ルール変更に伴う保管場所変更の取引の影響である場合、ルールが見直された際に再度、LME指定倉庫在庫が急増する可能性(下落要因)。

(投機・投資要因)

・4月26日付のLMEポジションは亜鉛と錫を除くと全てネットショートとなった。アルミ・ニッケルはショートが増加する中でネットショートが増加しているが、その他はロングの減少(需要の減少観測)幅の方が大きかった。

投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は1.2億ドル(前週10.8億ドル)と減少。上昇率は▲88.5%。

買い越し枚数はトン数換算ベースで▲123千トン(86千トン)と減少、増加率は▲242.3%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップ市場は小幅安、原料炭スワップ先物は横ばい、中国鉄鋼製品価格は下落した。

トランプ大統領が中国に対する制裁強化方針を表明、そもそも同国の経済統計が鈍化している中での発表だっただけに、景気の先行きへの懸念が強まったことが背景。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は高値圏でもみ合うものと考える。ヴァーレのブルクツ鉱山の稼働の再開が供給懸念を緩和する一方、鉄鋼製品価格が記録的な高値になっていることが価格を需要面で押し上げるため。

しかし、米国の中国に対する制裁強化、各国経済統計の鈍化、米国の欧州に対する制裁が再開される可能性があること、最大消費国である中国が昨年と同レベルの生産を継続できる可能性は低いこと、原油価格高騰に伴う消費国経済への悪影響、鉄鋼製品在庫の取り崩し時期にあり、季節的に価格が下押しされるため上値も重くなると予想。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・中国の鉄鋼製品在庫水準の高さは価格の下落要因。鉄鋼製品在庫は前週比▲74.0万トンの1,315万トン(過去5年平均1,306.2万トン)と例年をやや上回っている。

・中国の鉄鉱石在庫水準の高さは価格を下押し。鉄鉱石在庫は前週比▲400万トンの1億3,600万トン(過去5年平均1億1,887万トン)、在庫日数は▲1.0日の34.2日(過去5年平均 29.8日)と例年の水準を上回る。

・季節的に鉄鋼製品在庫の取り崩し時期であり、価格には下押し圧力がかかりやすい。

・長期的には2020年に人口ボーナス期入りするインドの需要が鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

(特殊要因)

・ヴァーレの尾鉱ダム決壊の影響が拡大し、さらに供給減少が起きた場合(自社・他社ともにあり得る)、価格の上昇要因に。

(投機・投資要因)

・固有の要因は特になし。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金・銀価格は総じて堅調。米国がイランに打撃群を派遣したと報じられたことや原油価格の上昇が、金銀の安全資産需要を高めたほか、実質金利の低下が材料となった。

PGMはプラチナが投機的に物色された一方、パラジウムが自動車販売の減速と、米国の中国に対する制裁強化で水準を切下げた。

PGM現物の需給バランスを見る上での指標となるロジウムの価格は2,950ドル(前日比変わらず)。

【貴金属価格見通し】

金価格は上昇余地を探る展開を予想。米国の中東への空母派遣が安全資産需要を高め、それに伴う原油価格の上昇が実質金利を押し下げるため。ただし、米金融政策がややタカ派(過剰なハト派観測が後退)よりになることが上値を抑えると予想。

銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)の上昇が金銀レシオを押し上げているため対金で割安に推移。

一方、欧州の政情不安、米国の債務上限問題、中東情勢の混乱懸念(イスラエル・イランを中心に)が安全資産需要を高めるため、リスクプレミアムが乗る形で価格を押し上げへ。

PGM価格は金銀価格が上昇余地を探る展開が予想されることから、堅調だが、同時に株価に調整圧力が高まると予想されることから結果、現状水準でのもみ合いを予想。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・FRBの利上げ打ち止め、原油価格の高止まりは実質金利の低下を通じて金銀価格の上昇要因に。

・景気の先行きを楽観した株価上昇とそれに伴う長期金利・実質金利の上昇(金銀価格の下落要因)。ただし、欧州の政情混乱や景況感の悪化で株価が調整した場合には金銀価格の上昇要因。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト(パラジウムの上昇要因・プラチナの下落要因)。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

・割安感からプラチナのETFに買いが入っており、短期的には上昇要因、中期的には手仕舞い圧力で売り要因に(プラチナ)。

(特殊要因)

・米中貿易交渉は、貿易面で一部妥結の可能性(価格の下落要因)。ただし、知的財産権や技術の強制移転などの重要なポイントで妥結できておらず、米中の覇権争いであり長期化の見込み(価格の下支え要因)。

・米国の債務上限問題の顕在化(8月~9月にデフォルトするリスク)。

・欧州の政治混乱(英国のEU離脱、伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化など)による安全資産需要の増加。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

(投機・投資要因)

・長期金利の低下による米長短金利の逆転が株安を誘発、リスク回避のリスク資産売り圧力が強まり、安全資産需要が高まる場合。

・銀価格は金銀在庫レシオが銀在庫の減少、ないしは金在庫の増加、あるいは両要因によって低下した場合、金銀レシオが上昇するリスク(銀価格の上昇要因)。

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが177,275枚(前週比 +584枚)、ショートが111,056枚(▲28,240枚)、ネットロングは66,219枚(+28,824枚)、銀が77,120枚(+1,231枚)、ショートが74,984枚(▲1,015枚)、ネットロングは2,136枚(+2,246枚)

・直近の投機筋のポジションは、プラチナはロングが48,188枚(前週比 +1,045枚)、ショートが14,866枚(▲1,197枚)、ネットロングは33,322枚(+2,242枚)、パラジウムが12,735枚(+111枚)、ショートが3,327枚(▲356枚)、ネットロングは9,408枚(+467枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物価格はトウモロコシ・大豆が下落、小麦が上昇した。2019-2020の需給見通しのアナリスト予想で需給が緩和するとの見方が強まっていることが材料となった。

米トウモロコシ在庫は前年比+1億1,900万ブッシェルの21億5,400万ブッシェル、米大豆在庫は、前年比+4,800万ブッシェルの9億4,300万ブッシェル、米小麦在庫は、前年比▲3,500万ブッシェルの10億5,200万ブッシェルが見込まれている。

【穀物価格見通し】

穀物価格はトウモロコシは、需給見通しの下方修正観測から軟調推移すると考える。ただし、降雨の影響で北米の作付けに遅れがみられており、同じ時期の過去5年の最低水準であることから下落余地も限定。

大豆は米中貿易交渉の進捗がはっきりしないことや、中国の豚コレラの影響で大豆の飼料向け需要の減少が価格を下押し。

小麦は冬小麦の作柄が良好であることや、黒海周辺国の輸出増加が、シカゴ小麦価格を下押しすると予想されることから、低迷を予想。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・米国のトウモロコシ・大豆の生産増加観測による需給緩和観測。

・米国の作付けの遅れに伴う需給タイト化観測。

・作付面積動向(トウモロコシは下落、大豆は上昇、小麦は上昇)トウモロコシ作付意向面積 9,279万エーカー(市場予想 9,127万エーカー、前年8,803万エーカー)大豆 8,462万エーカー(8,620万エーカー、8,898万エーカー)小麦 4,575万エーカー(4,688万エーカー、4,734万エーカー)

・5月の米需給報告の在庫見通し

トウモロコシ21億5,400万ブッシェル(前穀物年度20億3,500万Bu)大豆 9億4,300万Bu(8億9,500万Bu)小麦 10億5,200万Bu(10億8,700万Bu)

・実質金利の低下に伴うドル安の進行は、シカゴ穀物の輸出競争力を改善し、需給面で価格の上昇要因に。

(特殊要因)

・米中貿易交渉は、貿易面で一部妥結の可能性(価格の上昇要因)。ただし、知的財産権や技術の強制移転などの重要なポイントで妥結できておらず、米中の覇権争いであり長期化の見込み(価格の下落要因)。

・エルニーニョ現象発生による北米の増産は価格の下落要因。ただし洪水などが発生し、災害が激甚化した場合には価格の上昇要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

(投機・投資要因)

・再び主要穀物のショートポジションが大きく積み上がっている。これらの巻き戻し(買戻し)圧力が播種の状況によって強まる可能性があることは留意。

・直近の投機筋のポジションは、トウモロコシはロングが373,602枚(前週比 ▲43,925枚)、ショートが581,894枚(▲8,775枚)、ネットロングは▲208,292枚(▲35,150枚)、大豆はロングが125,622枚(▲17,301枚)、ショートが243,957枚(+14,534枚)、ネットロングは▲118,335枚(▲31,835枚)、小麦はロングが135,683枚(▲3,341枚)、ショートが190,861枚(+4,764枚)、ネットロングは▲55,178枚(▲8,105枚)

◆本日のMRA's Eye


「大豆価格は下値余地探る~夏場の価格上昇を警戒」

トランプ大統領は5月5日、中国に対して2,000億ドルを対象として10%の関税を25%に引き上げる方針を示した。米政権が望む通りに交渉が進んでいないことが背景にある。

実際、中国は自国産業の補助金撤廃を小出しにして、制裁の影響を緩和しようとし、さらには中国が合意に違反した場合の米国による制裁再開も拒否するなどの罰則条項でも対立が続いているため、ある意味、この関税引き上げは今までの米政権の振る舞いを見れば当然ともいえる。

少なくともこの関税引き上げは単なる脅しではなく、明確に中国の輸出関税が25%引き上げられるため、世界経済への影響は小さくない。

当然、米中貿易交渉の焦点の1つである農産品分野にも影響が出てくる。4月の米需給報告以降、大豆価格は水準を切り下げ、この10年の最安値である810.5セントを目指す展開となっている。そもそも需給バランスが緩和する見通しであるほか、上述の米中貿易交渉の難航が影響していると考えられる。

4月の米需給報告では、世界の大豆生産は、アルゼンチンや米国の増産で2018-2019穀物年度で前年比+1,891万トンの3億6,058万トンが見込まれている。

アルゼンチンは前年比+1,720万トンの5,500万トンが見込まれている。米国は、大豆作付面積が前年比▲100万エーカー(▲1.1%)の8,920万エーカーと減少しているが、低水準だった昨年から単収が+2.4ブッシェル/エーカー(+4.8%)の51.6ブッシェル/エーカー)に上昇することから、全体でも+410万トンの1億2,368万トンが見込まれている。

結果、世界の需給バランスは前年比+838万トンの1,147万トンと大幅に緩和する見込みであり、需給率も2006-2007年以来の82.4%への低下が見込まれている。

この頃とは市場環境が異なるが、2006-2007年の大豆平均価格は592セントだった。大豆価格の指標である米国も、1968-1970年の74.3%に次ぐ低さとなる、82.1%までの低下が見込まれ、価格の下押し要因となる。

価格下落要因の1つである米中貿易交渉が進展したとしても、中国の豚コレラ禍は終息しておらず(北朝鮮などにも拡大)、中国国内の飼料向け大豆需要は旺盛ではない。

実際、中国の大豆輸入は3月実績で492万トンと過去5年平均である565万トンを下回って低迷している。このことは米国産に限らず、中国の大豆需要が減速していることを示唆している。

以上を勘案すると、当面はチャート的な節目である800セントを下回るか否かに焦点が当たることになるだろう。仮にこの水準を下回れば、リーマンショック後に着けた776セントが意識されることになる。

ただし、さらなる下落余地は限定されると考える。エルニーニョ現象の影響などにより、米国の作付けに遅れが出る可能性があることや、米中貿易交渉が妥結する可能性も否定できないためだ。

3月の貿易統計では中国の米国産大豆の輸入シェアは5.4%(年率換算ベース)まで低下している。ただしこれは豚コレラの影響で中国の需要が減少しているために成立しているとも言え、仮に中国の豚コレラが終息した場合、米国産大豆の輸入が増加することになろう。現時点でもブラジル・シカゴ大豆スプレッドは80セントを上回っており、割安感が出ていることもシカゴ大豆価格を下支えすると考えられる。

ここまでの大豆価格下落で最も価格に対する説明力が高いのが、投機のショートポジション動向であるが、現在の投機筋ショートポジションは、過去5年の同じ時期の最高水準である190,418枚をはるかに上回る243,957枚まで積み上がっている。

例年、春先にショートポジションが積み上がった年は、播種から開花期にかけてショートポジションの巻き戻しが起き、価格上昇することが多い。今年は秋にかけてエルニーニョ現象が継続する可能性が高く、生産地の異常気象発生による生産減少リスクは小さくない。このことも価格の上振れリスクを高めることになる。

当面、大豆の価格は下向きではあるものの、夏にかけてはむしろ上昇リスクを意識するべきだろう。

◆主要ニュース


※GW中発表の主要なものを掲載しています。

・3月日本鉱工業生産速報  前月比▲0.9%(前月改定+0.7%)、前年比▲4.6%(▲1.1%)
 出荷▲0.6%(+1.6%)、▲3.3%(▲0.3%)
 在庫+1.6%(+0.4%)、+0.4%(+1.4%)

・1-3月期中国工業セクター利益 前年比▲3.3%の1兆2,972億元(1-2月期▲14.0%の7,080億元) 3月+13.9%の5,895億元

・4月中国製造業PMI 50.1(前月50.5)
 生産 52.1(52.7)
 新規受注 51.4(51.6)
 輸出新規受注 49.2(47.1)
 受注残 44.0(46.4)
 輸入 49.7(48.7)
 完成品在庫 46.5(47.0)
 原材料在庫 47.2(48.4)
 雇用 47.2(47.6)

・4月中国非製造業PMI 54.3(前月54.8)。新規受注 50.8(52.5)
 新規輸出 49.2(49.9)
 受注残 44.2(45.0)
 在庫 46.3(47.1)
 雇用 48.7(48.7)

・4月中国財新製造業PMI 50.2(前月50.8)

・4月中国財新サービス業PMI 54.5(前月 54.4)、コンポジット 52.7(52.9)

・4月日経インド製造業PMI 51.8(前月52.6)

・3月ユーロ圏マネーサプライM3 前年比+4.5%(前月改定+4.3%)

・Q119ユーロ圏実質GDP速報 前期比+0.4%(前期確定+0.2%)、前年比+1.2 %(+1.2%)

・4月ユーロ圏製造業PMI改定 47.9(速報比+0.1、前月改定 47.5)
 サービス業 52.8(+0.3、53.3)
 コンポジット 51.5(+0.2、51.6)

・4月独製造業PMI改定 44.4(速報比▲0.1、前月改定 44.1)
 サービス業 55.7(+0.1、55.4)
 コンポジット 52.2(+0.1、51.4)

・Q119米GDP速報 前期比年率 +3.2%(前期確定+2.2%)
 個人消費+1.2%(+2.5%)
 総民間国内投資+5.1%(+3.7%)
 設備投資+2.7%(+5.4%)
 輸出+3.7%(+1.8%)
 輸入▲3.7%(+2.0%)
 政府支出+2.4%(▲0.4%)
 GDPデフレータ+0.9%(+1.7%)
 コアPCE +1.3%(+1.8%)

・3月米個人所得 前月比 +0.1%(前月+0.2%)
 個人支出+0.9%(+0.1%)
 実質支出+0.7%(±0.0%)
 PCEデフレータ 前月比+0.2%(+0.1%)、前年比+1.3%(+1.4%
 コアデフレータ前月比±0.0%(+0.1%)、前年比+1.6%(+1.7%)
 貯蓄率 6.5%(7.3%)

・3月米中古住宅販売 前月比+3.8%(前月▲1.0%)

・4月米コンファレンスボード消費者信頼感指数 129.2(前月改定 124.2)
 現況指数 168.3(163.0)
 期待指数 103.0(98.3)
 6ヵ月以内自動車購入 13.6(14.2)、住宅 5.0(6.4)

・4月米ISM製造業景況指数 52.8(前月55.3)
 仕入れ価格 50.0(54.3)
 生産 52.3(55.8)
 新規受注 51.7(57.4)
 受注残 53.9(50.4)
 在庫 52.9(51.8)
 顧客在庫 42.6(42.7)
 輸出 49.5(51.7)
 輸入 49.8(51.1)

・4月米ISM非製造業景況指数 55.5(前月 56.1)
 新規受注 58.1(59.0)
 受注残 55.0(56.5)
 在庫増減 51.5(50.0)
 在庫景況感 60.0(62.5)
 雇用 53.7(55.9)

・4月米自動車販売年率 1,640万台(前月 1,750万台)

・Q119米非農業部門労働生産性速報 前期比年率+3.6%
(前期確定+1.3%)
 単位当たり労働コスト▲0.9%(+2.5%)

・3月米製造業耐久財受注改定 前月比+2.6%(速報比▲0.1%、前月改定▲1.1%)、除く輸送機器+0.4%(▲0.2%)
 製造業新規受注資本財非国防除く航空+1.4%(+0.1%、+0.1%)

・4月米雇用統計 非農業部門雇用者数 前月比+263千人
(前月改定+189千人(速報比▲7千人))
 民間部門雇用者数 +236千人(+179千人)
 製造業雇用者数 +4千人(±0千人)

・4月米失業率 3.6%(前月 3.8%)
 不完全雇用率 7.3%(7.3%)
 労働参加率 62.8%(63.0%)
 時間当たり平均賃金 前月比+0.2%(+0.2%)、前年比+3.2%(+3.2%)
 週平均労働時間 34.4時間(34.5時間)

・FOMC、政策金利であるFFレートの誘導目標を2.25%~2.50%で据え置き。超過準備への付利(IOER)を5bp引き下げて2.35%

・米トランプ大統領、「中国に対して2,000億ドルの輸入品を対象に25%の関税を適用する。」

・中国劉鶴副首相、今週予定している米中貿易協議の延期または中止を検討。

・中国人民銀行、中小規模の銀行向け預金準備率を8%に引き下げ。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・米ボルトン大統領補佐官、空母エイブラハム・リンカーンを中心とする打撃軍と爆撃隊を中東に派遣。

・イスラエル、ハマスなどと停戦で合意。

・イラン、核開発を一部再開へ。

【メタル】
・特になし。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.SHF天然ゴム ( その他農産品 )/ +1.39%/ +2.96%
2.NYM WTI ( エネルギー )/ +1.10%/ +37.90%
3.ICE Brent ( エネルギー )/ +0.93%/ +32.92%
4.CME牛乳 ( 畜産品 )/ +0.61%/ +19.09%
5.欧州排出権 ( 排出権 )/ +0.52%/ +2.14%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
68.中国CSI300 ( 株式 )/ ▲5.84%/ +22.39%
67.CME豚赤身肉 ( 畜産品 )/ ▲3.49%/ +35.10%
66.NYB綿花 ( その他農産品 )/ ▲2.85%/ +0.62%
65.SHFニッケル ( ベースメタル )/ ▲2.21%/ +8.71%
64.パラジウム ( 貴金属 )/ ▲2.10%/ +6.37%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :26,438.48(▲66.47)
S&P500 :2,932.47(▲13.17)
日経平均株価 :休場( - )
ドル円 :110.87(▲0.23)
ユーロ円 :124.17(▲0.24)
米10年債利回り :2.50(▲0.03)
独10年債利回り :0.01(▲0.02)
日10年債利回り :▲0.04(±0.0)
中国10年債利回り :3.36(▲0.04)
ビットコイン :5,700.79(+11.74)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :20.31(+0.08)
エネルギー :22.27(+0.26)
ベースメタル :14.96(▲0.26)
貴金属 :19.06(+1.35)
穀物 :14.09(▲0.46)
その他農畜産品 :24.77(+0.01)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :22.99(▲0.07)
Brent :20.88(+0)
米天然ガス :24.48(+0.08)
米ガソリン :25.82(▲0.14)
ICEガスオイル :18.91(+0.76)
LME銅 :14.18(▲0.42)
LMEアルミニウム :10.91(+0.16)
金 :9.50(▲1.02)
プラチナ :19.89(+2.33)
トウモロコシ :12.63(▲0.21)
大豆 :9.50(▲1.02)

【エネルギー】
WTI :62.62(+0.68)
Brent :71.51(+0.66)
Oman :71.34(+0.34)
米ガソリン :200.43(▲2.22)
米灯油 :207.70(+0.68)
ICEガスオイル :644.75(▲4.25)
米天然ガス :2.52(▲0.05)
英天然ガス :33.99(±0.0)

【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :71.51(+0.66)
SPO380cst :420.55(+5.45)
SPOケロシン :83.71(+0.40)
SPOガスオイル :83.92(+0.47)
ICE ガスオイル :86.54(▲0.57)
NYMEX灯油 :207.94(+0.38)

【貴金属】
金 :1280.49(+1.38)
銀 :14.90(▲0.04)
プラチナ :876.01(+4.11)
パラジウム :1342.13(▲28.86)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :休場( - )
亜鉛 :休場( - )
鉛 :休場( - )
アルミニウム :休場( - )
ニッケル :休場( - )
錫 :休場( - )
コバルト :34,500(±0.0)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :休場( - )
亜鉛 :休場( - )
鉛 :休場( - )
アルミニウム :休場( - )
ニッケル :休場( - )
錫 :休場( - )
バルチック海運指数 :985.00(▲47.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :93.37(▲0.84)
NYMEX鉄鉱石 :93.51(▲0.30)
NYMEX原料炭スワップ先物 :205(±0.0)
上海鉄筋直近限月 :4,151(▲41)
上海鉄筋中心限月 :3,758(▲53)
米鉄スクラップ :休場( - )

【農産物】
大豆 :817.50(▲12.00)
シカゴ大豆ミール :291.80(▲1.80)
シカゴ大豆油 :26.84(▲0.23)
マレーシア パーム油 :1877.00(▲23.00)
シカゴ とうもろこし :355.75(▲7.25)
シカゴ小麦 :428.00(±0.0)
シンガポールゴム :176.00(▲1.40)
上海ゴム :11320.00(+155.00)
砂糖 :11.88(▲0.13)
アラビカ :88.80(▲0.45)
ロブスタ :1321.00(±0.0)
綿花 :72.65(▲2.13)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :82.38(▲2.98)
シカゴ生牛 :112.28(▲1.15)
シカゴ飼育牛 :136.03(▲1.13)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。