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政策期待を上回った景気懸念~リスク回避の台頭かリスク選好の調整か
  • MRA外国為替レポート

2019年3月25日号

◆先週の市場総括


先週のドル円相場は111円台半ばで始まりしばらくはFOMCの結果待ちで小動き。結果は想定を上回るハト派スタンスでドル安が進行。さらに週末にはグローバルな景気先行き懸念が広がりリスク回避が強まるなか米国株が大幅安、円全面高となった。

週末の海外市場でドル円相場は一時110円を割り込んだ。

日本時間木曜日未明に公表されたFOMCでは委員の成長率予測が下方修正され、政策金利の見通しは今年の利上げがゼロ回と12月会合の2回から大幅に変更となった。

またバランスシート縮小(市場からの資金吸収)が正式に9月に終了とされたが、こちらは市場の予想よりも早いタイミングだった。

これらを受けて米長期金利が大きく低下。ドル金利先高感の後退でドルは下落。ドル円相場は一時110円30銭台まで下落した。

さらに週末に発表されたPMI企業景況感指数が欧州・米国ともに弱く、グローバルな景気先行き懸念、リスク回避が広がって米国株は大幅下落。円は全面高となった。

ドル円相場は一時109円80銭割れに下落して週末の引けは110円ちょうど近辺。

ユーロはFOMCを受けて対ドルで一時1.14台にユーロ高ドル安となったが、その後は景気懸念から反落。対ドルで1.13近辺へ。ユーロ円相場の値動きは激しく、週末には126円台から一時123円ちょうどに下落。週末の引けはやや戻して124円40銭だった。

米国株はFRBのハト派スタンスに金融株が下落したが、半導体関連は堅調、もみ合い。ただ週末には景気懸念から大幅安となった。

日経平均はドル安円高が上値を抑えたが、米国株の堅調が支えとなり、概ね21,500円~600円でもみ合いとなった。週末の米国株の大幅安を受けて、次週は波乱の展開が想定される。

月曜日の東京市場の為替相場は111円台半ばで膠着。50銭~60銭で上下動。一方、ユーロが小じっかり。対ドルで1.1320から50へ、対円で1126円20銭台から50銭台へ上昇した。

日経平均は前週末に米国株がハイテク主導で上昇したことを受けて続伸も、米中首脳会談が6月まで先送りされるとの報道が上値を抑えた。21,500円台後半でもみ合い引け。

海外市場に入るとドル円相場は小反落。111円30銭に反落した後は40銭中心に上下して引け。米国株は小幅高。前週末の上昇のあと利食い優勢も後場に持ち直し。ただ市場全体にFOMC待ちで総じて小動きだった。米10年債利回りは2.60%ちょうど近辺。

火曜日の東京市場のドル円相場は111円40銭で始まりやや下落。20銭~30銭でもみ合い。ユーロは前日の海外市場で反落していたが持ち直し。ユーロ円相場は126円10銭~20銭で始まりじり高。

ユーロドル相場も1.1340から底固い値動きとなった。

日経平均は21,450円に下落してスタートしたが持ち直し。21,500円台前半で上下動し、引けにかけてじり高となって21,500円台後半で引けた。

海外市場の為替相場も小動き。ドル円相場は111円40銭中心にもみ合い。ユーロ円相場は126円60銭に上昇したが、40銭~50銭でもみ合い引けた。

米国株は高寄り後反落、結果として前日比ほぼ同水準。中国が通商交渉で積極姿勢を後退させている、との報道がやや嫌気された。イギリスでは離脱合意案の採決が取り止めとなり、メイ首相がEUに離脱期日の延期を要請すると報じられた。

水曜日の東京市場のドル円相場は111円40銭で始まり底固く50銭~60銭でもみ合い。ユーロ円相場も126円40銭~50銭で始まり60銭~70銭に上昇。

朝方、やや円安に進んだが、5・10日決済による円売りが強まった結果との見方が大勢。日銀金融政策決定会合の議事要旨が発表されたがそれに反応した動きではなかった。

日経平均は21,550円で始まり一時500円近辺に下落したが21,600円に反発。後場も底固く同水準で引け。

海外市場ではFOMCの2日目を迎えて様子見。結果は日本時間21日木曜日の未明3時に明らかになった。内容が市場の想定以上のハト派スタンスだったことを受けて米長期金利は大きく低下しドル安が進んだ。

足元の景気は堅調としつつもややトーンダウンし、今年および来年の成長率見通しを下方修正。失業率見通しをやや引き上げ。政策金利予測は、今年に関して前回12月会合の2.875%から2.375%へ。今年の利上げ回数は2回からゼロ回、利上げなしとの予測に変更された。

来年の政策金利水準は12月の3.125%から今回は2.625%へ。1回の利上げ予測は維持された。長期的な均衡水準は2.75%で概ね変化はなかったが、若干下方修正されている。

さらに、今回の会合で9月にバランスシートの縮小(市場からの資金吸収)を終了することが決定された。年内に終了とされていたが、想定よりも早いタイミングでの終了・決定となり、ハト派スタンスが浮き彫りになった。

これによりドル金利先高感が一段と後退。米10年債利回りは2.50%ちょうど近辺へ大幅低下した。これを受けてドルは下落。ドル円相場は110円60銭~70銭にドル安円高が、ユーロドル相場は1.1450近辺へユーロ高ドル安が進んだ。ユーロ円相場は126円60銭中心の動きから40銭近辺にやや下落。

米国株は金利先高感の後退、長期金利の低下で金融株が売られダウは下落。ナスダックは上昇。

木曜日の東京市場は休場。アジア時間のドル円相場は110円60銭~70銭で始まり続落して110円50銭中心に上下。ユーロドル相場は1.1420~30でもみ合い。

ユーロ円相場は126円40銭で始まり60銭に上昇したものの押されて126円20銭。未明のFOMCの結果を織り込む流れ。夕刻から海外市場にかけてはさらに円高に振れた。

ドル円相場は110円30銭台、ユーロ円相場は125円70銭台へ。この日から始まったEU首脳会議でイギリスの離脱問題が議論されており、その結果を懸念してユーロは軟調。対ドルでも1.13台後半での上下動となった。

米国株は反発、上昇。金融株は続落したがハイテク株が上昇を牽引した。この日発表されたフィラデルフィア連銀製造業景気指数(3月)が予想を大きく上回る強い数字だったことも支援材料となった。

米10年債利回りは2.54%にやや反発。ドル円相場は110円80銭~90銭に上昇してもみ合い、引けは80銭近辺。

EU首脳会議ではメイ首相が求めていた6月末までの延期を要請していたが却下。英国下院が現在の離脱協定案を承認することを条件に欧州議会選挙(5月23日)の直前である5月22日まで延期に応じ(合意に基づく離脱)、承認しない場合は4月12日まで延期としてそれまでに今後の方針を欧州理事会に示すこと(長期延期ないし合意なき離脱)、とした。

ユーロ円相場は126円手前での上下の後、引けは126円ちょうど近辺。

金曜日の東京市場の為替相場は総じて小動き。ドル円相場は110円70銭~80銭でもみ合い。ユーロドル相場は1.1370前後、ユーロ円相場は126円手前で上下。

日経平均は米国株上昇を受けてハイテク株中心に買い先行。21,600円で始まるもアジア株がまちまちとなるなかマイナスに転じ、21,500円近辺に下落。ただ後場には持ち直して21,600円近辺で引けた。

一方、海外市場に入るとリスク回避から大きく株安・円高が進んだ。

発表されたドイツのPMI企業景況感指数(3月)は製造業が44.7と予想48.2、前月47.6を下回る弱い数字だった。ユーロ圏全体でも47.6と予想49.5、前月49.3からさらに景況感が悪化。

これを受けて景気先行き懸念が広がり、リスク回避から株価が下落、ユーロ円相場を中心に円高が進んだ。ユーロ円相場は126円台から125円ちょうどに下落。ドル円相場は110円50銭へ。

さらに米国のPMIでは、製造業が52.5と予想53.5、前月53.0を下回り、またこれまで堅調だったサービス業でも54.8と予想55.7、前月56.0から悪化。景気懸念がさらに深まった。

米国株は大幅安。NYダウは前日比460ドルのマイナス。米10年債利回りは2.44%へ低下。1年債利回り2.45%をこの間で初めて下回ったことで、景気後退リスクがあらためて意識されリスク回避が進んだ。

為替市場では円が全面高。ドル円相場は一時109円80銭割れに下落。ユーロ円相場は123円ちょうど近辺に下落した。その後円高は一服し、ドル円相場は110円20銭に反発したのち110円ちょうど近辺で引け。ユーロ円相場は124円40銭近辺で週末NYの取引を終えた。

◆今週の3つの注目ポイント


1.英国議会採決

市場のリスク回避が強まるなか、今週が期限とされる英国議会のEU離脱案採決の行方が注目される。

3月末の合意なき離脱は回避されたものの、着実に時間切れが迫っている。

採決で現在の合意案が可決されれば5月22日に離脱。否決されれば4月12日まで延期されたうえで、それまでに英国がEUに対して態度を明らかにしなければならない。

いずれにしても5月23日の欧州議会選挙が絶対的なタイムリミットであることは不変。合意なき離脱の可能性も再浮上してきた。

否決となれば市場のリスク回避に追い打ちをかけるかたちとなりかねず注意が必要だ。

2.米国の経済指標

先週のFOMCでは想定以上にハト派なスタンスが明らかとなった。景気認識が下方修正されたことが主要因だ。

米国でも製造業を中心とした景気悪化が続くのか。米国の経済指標とくに弱い数字に敏感な状態が当面は続きそうで、リスク選好が深まるかどうか留意を要する。

月曜日 シカゴ連銀景気指数(2月)、ダラス連銀製造業景気指数(3月)

火曜日 住宅着工件数(2月)、消費者信頼感指数(6月)、リッチモンド連銀製造業指数(3月)

水曜日 貿易収支(1月)

木曜日 GDP(10-12月期、改定値)、中古住宅販売(2月)

金曜日 個人所得(2月)・消費支出(1月)、シカゴ購買部協会景気指数(3月)、ミシガン大学消費者マインド指数(3月)

3.FRB当局者発言、ドラギ総裁発言

FOMCが終わり、FRB当局者の発言が解禁となる。今週は連銀総裁や理事、副議長の発言機会がある。市場はFOMC以降、リスクに敏感になっているようにみえるが、何らかの安心材料を与えることができるか。

景気に弱気な発言が続けば市場の不安を助長しかねない。また水曜日にはECBドラギ総裁の発言機会も予定されている。

◆今週のMRA's Eye


政策期待を上回った景気懸念~リスク回避の台頭かリスク選好の調整か

先週末にかけて市場のリスク回避が急速に高まった。

このところ、政策動向に対する期待感がリスク選好を支えていたが、足元の景気の弱さという現実を前に、不安心理・リスク回避が勝ってしまったかたちだ。

米国株は大幅に下落し、円が全面高となった。

折しも、米中通商交渉が難航しているのではないか、との見方が強まり、またイギリスのEU離脱問題も、最終局面に向けてタイムリミットが迫るなかでの二者択一、合意離脱か合意なき離脱か、となってきたことも、リスク回避に拍車をかけた。

もとより足元の景気の弱さは自明の事実だったが、FOMCでそれをあらためて認識させられたかたち。市場の想定以上のハト派スタンスは、一面では本来は市場に安心感を与えるが、他方でそこまでハト派になる背景である景気の弱さが意識されると、金融市場の安定性・リスク選好が損なわれてしまう。

金融政策そのもの、あるいはアナウンスメント・市場との対話の難しさはそのあたりにある。

金融政策は景気・物価のコントロールが主目的で、市場動向とくに株価動向やリスク選好については副次的な結果であり、金融システムの安定については責務を負う。

先週末にかけての株価下落やリスク選好の後退は、ある意味で市場が勝手に期待してリスク選好に走り、各国の中央銀行の政策スタンスやその背景にある景気認識をあらためて共有するに至り、現実に立ち戻ったというところ。

FRBは楽観的ではないが、かといって過度に悲観的でもない。

米国のイールドカーブが一部で逆イールドとなったことも不安を誘ったという。

3か月、1年の利回りは2.45%、2年債利回りは2.32%、10年債利回りは2.44%。FOMCで今年の利上げがゼロ回、来年の利上げが1回、そこで利上げは打ち止め、となったことからすれば、より長い期間の金利が足元の水準と同じとなるのは自然。

2年債の金利はそれよりも低下してしまったが、必ずしも景気後退や利下げまで視野に入れての動きではないだろう。

長期金利は先々の金融政策の予測だけを反映するものではない。今回のようなリスク回避が強まる局面では債券に資金が流入して一段と金利が低下する。

1年債と10年債のわずかな逆イールドを、景気後退や早期の利下げのシグナルととるのは時期尚早だ。

2年債と10年債の利回りが逆転し、逆イールド幅が拡大し長期化するようなら、本格的な景気後退を示唆する可能性があるが、今はまだその状態にはなっていない。

総合すれば、このタイミングでグローバル市場の悪化、リスク回避トレンドが始まったとは判断できない。

市場が昨年末・今年初の極端なリスク回避を経て、年初から期待先行でリスク選好に走りすぎた、その反動が生じている、というところまで。

足元の景気の弱さはこの間の指標で明らかであり、中国、欧州、そして米国の政策動向、とくに中央銀行の政策変化は、それに対応したもの。目新しい不安材料が生じたわけではない。

問題はこの弱さがどこまで続くのか。政策によって持ち直すのか。その結果を得るには時間がかかるということ。

今回のリスク選好の反動としてのリスク回避はもう少し続く可能性がある。ただトレンドとして長期化することはなく、リスク選好とリスク回避の間で、確たる自信や見通し、確信を持てないなか、上下動、彷徨う時間帯がなお続きそうだ。

これまで以上に、企業の景況感や業績動向が意識されるだろう。

ごく短期的には先週末の米国株の大幅下落が早々に収まるかどうか。金利低下を材料とした金融株の下落に歯止めがかかるかどうかも、不安心理が後退するかどうかの鍵となる。

ドル円相場は先週末に110円を割った。投機的な円売りポジションが残存するなか、当面は上値の重い展開が続きそうだ。

短期リスクはなお円高サイド。ドル金利先高感を、完全に近いかたちで、喪失したことはドルの上値をこれまで以上に抑制することになる。

想定外にハト派となったFRBのスタンスを尊重すれば、ドル円相場の当面3ヵ月程度の予想レンジはやや円高サイドに広げて109円程度を想定する必要がある。

また中期的なドル円相場の上値も、115円がさらに遠のいたのではないか。中期リスクもやや円高方向にバイアスがかかりはじめた。円安サイドのリスクは、経済指標が景気減速に歯止めがかかり政策効果が表れてきたことを示すまで強まらないだろう。

昨年の高値114円台を越えることは一段と難しくなってきた。逆にドル安円高サイドは、年初の105円割れはなお難しく、108円台での攻防が相応に厚い壁となりそうだ。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :109.92(▲0.90)
ユーロ :124.24(▲1.80)
英ポンド :145.193(▲0.10)
豪ドル :77.835(▲0.98)
カナダドル :81.849(▲1.07)
スイスフラン :110.627(▲1.08)
ブラジルレアル :28.1417(▲1.07)
中国人民元 :16.366(▲0.18)
韓国ウォン(日本円=100) :9.681(▲0.14)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1302(▲0.007)
英ポンド :1.3209(+0.010)
豪ドル :0.7083(▲0.003)
カナダドル :1.3429(+0.007)
スイスフラン :0.9936(+0.002)
ブラジルレアル :3.9065(+0.113)
中国人民元 :6.7182(+0.019)
韓国ウォン :1130.16(+2.50)

【主要国政策金利】
米国 :2.50
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :2.44(▲0.10)
米2年債 :2.32(▲0.09)
日本10年債利回り :▲0.07(▲0.03)
日本2年債利回り :▲0.07(+0.02)
独10年債利回り :-0.02(▲0.06)
独2年債利回り :▲0.57(▲0.02)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :25,502.32(▲460.19)
NASDAQ  :7,642.67(▲196.29)
S&P500 :2,800.71(▲54.17)
日経平均株価 :21,627.34(+18.42)
ドイツ DAX :11,364.17(▲185.79)
インド センセックス :38,164.61(▲222.14)
中国上海総合 :3,104.15(+2.69)
ブラジル ボベスパ :93,735.15(▲2,993.93)
英国FT250 :18,998.46(▲349.12)
ビットコイン :3977.74(+4.50)

【主要商品価格】
WTI :59.04(▲0.94)
Brent :67.03(▲0.83)
米ガソリン :192.59(+0.56)
米灯油 :196.59(▲2.12)

金 :1313.68(+4.32)
銀 :15.42(▲0.05)
プラチナ :847.23(▲14.37)
パラジウム :1553.43(▲45.40)
銅 :6369.00(▲132:6B)
アルミニウム :1893.50(▲27:26.5C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セト
ル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :903.75(▲6.75)
シカゴ とうもろこし :378.25(+2.00)
シカゴ小麦 :466.00(▲0.50)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更
新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。

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