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円相場をめぐる微妙なリスクバランス
  • MRA外国為替レポート

2019年3月18日号

◆先週の市場総括


先週のドル円相場は111円ちょうど近辺で始まり小動きながら底固く、週末にかけて111円台後半に上昇した。前週末の弱めの雇用統計もブレの範囲内と解釈され、さらにやや強めの小売売上高、耐久財受注などが支えとなり米国株が上昇。

さらに英国議会がまず合意なき離脱はいかなる状況でも行わない、との案を可決。さらに離脱期日の延期を可決したことがリスク選好を支えた。

ポンドがしっかり。またユーロも堅調。ユーロ円相場は週初の124円台後半からほぼ一本調子に上昇し週末には126円台半ばに達した。

週末には中国の全人代で示された景気刺激スタンスへの期待感が支えとなったが、一方で米国の製造業関連指標が弱め。米国株は堅調ななか週末の取引を終えたが米長期金利は低下。米10年債利回りが2.6%割れに低下してドルの上値を抑えた。

ドル円相場は111円40銭台で引け。ユーロ円相場は126円30銭近辺。

日経平均は21,000円近辺で始まり火曜日に21,500円台に上昇すると、その後は堅調な米国株やドル円相場の安定で底固くもみ合いとなり週末は21,450円で引けた。

月曜日の東京市場の為替相場は111円10銭で始まり一時111円を割ったが持ち直し。ユーロ円相場は124円80銭で始まり一時50銭に下落。その後夕刻にかけては上昇して125円20銭。ユーロが全般的にしっかり。

海外市場に入ると米国株が大幅高。雇用統計で日農業部門雇用者数の伸びが鈍かったがブレの範囲内との解釈。また1月の小売売上高が予想より強い数字だったことも株価を支えた。ドル円相場は111円20銭台でもみ合い。ユーロ円相場は124円90銭中心に上下して引けは125円10銭。

火曜日の東京市場のドル円相場は111円20銭で始まり40銭近辺でもみ合い。ユーロは対ドルで1.1250~60近辺でもみ合い。ユーロ円相場は125円10銭から上昇して40銭~50銭でもみ合った。

日経平均は大幅高寄り。21,400円台に上昇して始まり続伸。一時21,550円まで上昇して引けは21,500円近辺。

米国株の大幅高を好感。また中国・アジア株全般が堅調に推移したことも支えとなった。

海外市場でも英国のEU離脱を巡る混乱が回避されるとの期待感から欧州通貨の買戻しが続いた。ユーロドル相場は1.13近辺に上昇。ユーロ円相場は125円70近辺でもみ合い引け。ドル円相場は111円30銭中心に上下して引け。

米国株はボーイング株下落の影響を除けば全体として堅調。S&P500とナスダックは続伸となった。

発表された2月の米消費者物価指数は前年同月比+1.5%、コア指数は同+2.1%と概ね予想通り。

水曜日の東京市場の為替相場は全般的に小動き、もみ合い。ドル円相場は111円30銭で始まり30銭~40銭で、ユーロドル相場は1.1290近辺で、ユーロ円相場は125円60銭~70銭で、それぞれ横ばい。

日経平均は利食い売りに押されて反落。21,400円台前半で始まり21,200円割れ。引けは21,300円に戻した。海外市場では引き続きユーロがしっかり。ユーロドル相場は1.13ちょうど~1.1310に、ユーロ円相場は125円80銭~90銭に上昇した。

一方でドル円相場は一時111円ちょうどに下落。

米国株は全般にしっかり。発表された1月の米国のコア資本財受注が強めの数字となり、設備投資が堅調との見方が広がったことが支え。

その後、日本時間木曜日の未明に行われた英国議会の投票で、合意なきEU離脱はいかなる状況でも行わない、との案が可決されるとリスク選好が強まった。

為替市場ではポンド、ユーロがさらに上昇。ポンドは対ドルで1.31から1.33へ。ユーロドル相場は1.1330に続伸。ユーロ円相場は126円ちょうどに上昇した。ドル円相場も111円20銭近辺に小幅上昇。

木曜日の東京市場のドル円相場は111円20銭近辺でもみ合った後、昼頃には111円50銭~60銭でもみ合い。ユーロ円相場は126円から126円30銭に上昇した。

英国のEU離脱問題が好転しつつあることを好感してリスク選好が強まるなか総じて円安。日経平均は21,500円で高寄りしたが、なおも戻り売りに押されて前日引値近辺、21,300円まで下落して引けた。

中国で発表された1月の経済指標は、小売売上高と都市部固定資産投資はやや強かったが、工業生産と失業率が弱い数字となり、製造業がなお不振であることを示した。

中国株・上海総合指数が下落。これも日経平均の反落を招いた。

海外市場に入ると米国株は小幅続伸。ドルがしっかり。英国議会は前日に続いて採決を行い、EU離脱期日の延期を可決した。

ただ市場は織り込み済みでユーロドル相場は1.13ちょうどに反落。ユーロ円相場は126円台半ばに上昇していたが126円ちょうど近辺に下落。その後は戻して126円20銭~30銭。ドル円相場は111円60銭中心にもみ合い。

一時80銭に上昇する場面もあったが、反落して60銭~70銭で引けた。

この日トランプ大統領は、米中協議は順調に進んでいるが、最終的に取引するかは明言したくない、米国にとって望ましい取引でなければ行わない、と述べた。

また米中首脳会談は早くても4月になる見込みに。知的財産権侵害など構造問題で依然として隔たりが大きいことが要因とされた。

金曜日の東京市場のドル円相場は111円60銭~70銭で始まり一時90銭に上昇する場面もあったが押し戻されてもみ合い。ユーロは離脱期日延期を材料に引き続き対ドル、対円で小じっかり。

ユーロドル相場はやや上昇して1.1320近辺で推移。ユーロ円相場は126円20銭~30銭から一時50銭に上昇し、その後は126円40銭中心にもみ合った。

日経平均は21,400円台で高寄りし500円へ続伸。その後は21,450円~21,500円で上下し引けは21,450円。

この日、中国の全人代が閉幕。李克強首相は会見で、的を絞った景気刺激戦略を堅持する、量的緩和や大規模公共投資への誘惑には抵抗、減税を実施、失業率の上昇に対処、雇用第一、とのスタンスを強調した。

日銀金融政策決定会合では、輸出生産に海外経済減速の影響がみられる、として景気判断が下方修正された。海外市場では米国株は小幅上昇。

一方、米長期金利は低下し10年債利回りは2.6%を割り込んだ。発表されたNY連銀製造業指数(3月)、製造業生産(2月)が弱い数字となりドルは軟調。また円がやや買い戻された。ドル円相場は111円40銭に下げ50銭を中心に上下して引け。ユーロ円相場は126円30銭中心に上下して引けた。

◆今週の3つの注目ポイント


1.FOMC、米国の経済指標

今週火曜日・水曜日の両日、FOMC(連邦公開市場委員会)が開催される。結果は日本時間未明3時。その後パウエル議長の会見も行われる。

今回、政策変更は見込まれず、注目は委員による成長率、物価、政策金利の予測。景気物価見通しが下方修正されるか、また政策金利予測が下方修正され、市場の慎重な見方(今年の利上げはなし)にすり寄るか。

ドル金利先高感があらためて抑制されるようだと、ドル円相場の上値を当面抑制する要因となる。このところ生産関連に弱い数字がみられるなか、木曜日に発表されるフィラデルフィア連銀製造業景気指数(3月)、金曜日に発表されるPMI製造業景況感指数(3月)も注目される。

2.英国議会EU離脱修正案採決、EU首脳会議

先週は英国議会の採決、合意なき離脱を回避、離脱期限の延期、が可決されたことが市場のリスク選好を支えた。

今週は、さらに20日までにEU離脱修正案の採決が実施される。合意できれば短期延期(おそらく6月30日までか)を、合意できなければ長期延期(期限未定)をEUに要請することになる。

再び不透明感が高まるか、さらに安心感をもたらすか。21日・22日の2日間、EU首脳会議が開催される予定であり、いかなる議論となるか。

3.日本の貿易収支、日銀金融政策決定会合議事録、月例経済報告など

このところ日本の景気見通しにも暗雲が垂れ込めている。主として海外経済減速の影響で景気が停滞・悪化。

一時的にせよ景気後退局面に入った懸念が取り沙汰されるなか、月曜日には貿易収支(2月)が発表される。輸出動向は引き続き鈍いままか。また鉱工業生産(1月)も発表となるが弱さを示すか。

水曜日には日銀金融政策決定会合議事要旨(1月22日・23日開催分)、月例経済報告(3月)が公表される。景気見通しの悪化が示され、リスク選好に水を差すことはないか。

金曜日にはPMI製造業景況感指数(3月)が発表されるが、引き続き製造業部門の景況感の悪化を示すか。株価への悪影響、リスク選好の後退から、円高に作用する可能性はないか。

◆今週のMRA's Eye


円相場をめぐる微妙なリスクバランス

中国経済の減速がグローバルに景況感あるいは実体経済そのものの悪化をもたらしているとの見方が広がっている。主として製造業部門、とくに半導体・電機電子部品・製品関連に弱い数字が目立つ。

そうしたなか、日銀も、輸出・生産に海外経済減速の影響がみられる、と景気判断を下方修正した。こうした足元の景気低迷、とくに製造業部門の停滞が一時的かどうか、が、今後の市場動向、株価・金利・為替動向を左右する鍵となる。

米国ではなお雇用情勢は堅調で消費者信頼感も強い。設備投資もまずまずだ。それらに生産の弱さが影響し始めることはないか。ひいては日本にもさらなる悪影響が及ばないか。

米国経済が持ちこたえているうちに、中国経済が政府の景気対策により、市場の期待通り持ち直してくれるか。

持ち直さないまでも、期待感が維持されればリスク回避に陥るリスクは回避される可能性がある。期待と実体悪の間で微妙なバランスが保たれた状況が続くというのがメインシナリオだ。ただリスクバランスは悪い方へ傾く可能性が大きい。

そうしたなか円相場も、様々な政策動向に対する期待によるリスク選好の維持で円安方向の力が働き、実体経済の弱さによるリスク選好の弱さが円安の抑制となり、双方が微妙に均衡した状態が続いている。

さらに経済指標が円相場に与える影響も円安・円高、双方向、二面性が伺える。

とくに日本の貿易収支は、輸出の減少による貿易収支の悪化という面では円高圧力の後退・円安圧力の増加、となり、景気の悪化・株価下落、とくにグローバルな景気低迷を示すという点ではリスク選好の後退・リスク回避要因として円高気味に働く。

この二面性も、少し細かくみれば、相場に与える影響やスピードが異なる点には留意が必要だ。貿易収支は大きな流れ、ゆったりとした流れとして、円高を阻む方向に作用しつつある。

一方でリスク選好・回避といった材料は投機的な動きに働きかけて、比較的短期に影響する可能性がある。そして後者については、足元で投機的なポジションが円売り・円買いにどの程度傾いているかによって、影響が異なってくる。

シカゴ通貨先物のポジションをみると、年末に大きく円売りに傾いていたことから、1月以降は円高に振れるリスクが大きかった。

その後は年初に急速に円高に振れたことをきっかけに、リスク選好が回復し株高円安に振れるなかで次第に円売りが減少した。

しかし足元では再び、政治・外交・通商・政策への期待からリスク選好に強まるなか、円売りポジションが増加している。日本の貿易収支は底流で円高を阻止する要因となっているが、リスク選好の後退・リスク回避が強まることによる投機ポジションの解消による円高のリスクは再び強まりつつある。

短期的・一時的には期待による円安方向へのブレもありそうだが、むしろリスクはやや円高方向への力が強まっているようにみえる。

ドル円相場にとって下値を支える要因があるとすれば、米10年債利回りがこれ以上は下がりにくいだろう、という点。

リスク選好の盛り上がりやドル金利上昇によるドル円相場の上昇の可能性、リスクは、現時点では小さいと考えられる。当面のドル円相場のレンジとしては110円~112円程度となりそうだ。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :111.48(▲0.22)
ユーロ :126.27(±0.0)
英ポンド :148.229(+0.33)
豪ドル :78.982(+0.08)
カナダドル :83.595(▲0.18)
スイスフラン :111.278(▲0.01)
ブラジルレアル :29.2215(+0.17)
中国人民元 :16.606(±0.0)
韓国ウォン(日本円=100) :9.82(▲0.01)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1326(+0.002)
英ポンド :1.329(+0.005)
豪ドル :0.7085(+0.002)
カナダドル :1.3336(+0.000)
スイスフラン :1.0021(▲0.002)
ブラジルレアル :3.815(▲0.031)
中国人民元 :6.7137(▲0.009)
韓国ウォン :1137.14(+2.24)

【主要国政策金利】
米国 :2.50
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :2.59(▲0.04)
米2年債 :2.44(▲0.02)
日本10年債利回り :▲0.03(+0.01)
日本2年債利回り :▲0.03(+0.01)
独10年債利回り :0.08(▲0.00)
独2年債利回り :▲0.54(▲0.00)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :25,848.87(+138.93)
NASDAQ  :7,688.53(+57.62)
S&P500 :2,822.48(+14.00)
日経平均株価 :21,450.85(+163.83)
ドイツ DAX :11,685.69(+98.22)
インド センセックス :38,024.32(+269.43)
中国上海総合 :3,021.75(+31.07)
ブラジル ボベスパ :99,136.74(+532.07)
英国FT250 :19,491.03(+207.97)
ビットコイン :3897.41(+45.84)

【主要商品価格】
WTI :58.52(▲0.09)
Brent :67.02(▲0.21)
米ガソリン :185.77(+0.82)
米灯油 :196.77(▲1.72)

金 :1302.40(+6.23)
銀 :15.29(+0.10)
プラチナ :831.78(+7.23)
パラジウム :1552.99(▲0.11)
銅 :6400.50(+10:9.5B)
アルミニウム :1892.00(▲6:24C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :909.25(+19.75)
シカゴ とうもろこし :373.25(+11.75)
シカゴ小麦 :462.25(+14.00)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。

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