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米統計改善とドル高で高安まちまち
  • MRA商品市場レポート for PRO

2019年4月7日 第1512号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「米統計改善とドル高で高安まちまち」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品価格はエネルギーセクターが上昇、その他農産品と非鉄金属が下落した。欧州不安を背景とするドル高進行が総じて価格を下押ししたが、エネルギーは欧州の気温低下や原油の供給不安が材料となった。

ただ、トランプ大統領がFRBに利下げとバランスシートの縮小停止を要求、長期金利の低下を通じて実質金利が低下したことも価格を支えた。

注目の米雇用統計は、雇用者数の増加ペースが再び加速したが、インフレの兆候は見られず低インフレ下での成長期待を確認する内容で、広く景気循環銘柄価格の上昇要因となった。

【本日の価格見通し総括】

週明け月曜日は予定された手がかり材料に乏しく、週末の雇用統計の改善を受けて、総じて景気循環銘柄が物色される流れになると予想される。

しかし、英メイ首相はEUに対して6月30日までの離脱期限の延期を要請、これに対してEUトゥスク大統領は1年を主張しており10日のEU首脳会議が紛糾する可能性は高く、リスク回避的な動きも継続すると考えられることから、総じてレンジワークとなるだろう。

【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】

週末発表された米雇用統計は雇用者数が前月比+19.6万人(前月+3.3万人)と改善、その一方時間当たり賃金は前年比+3.2%(+3.4%)とインフレの兆候が見られない内容だった。

米中貿易交渉の難航や英国のEU離脱がどのような形になり、経済への影響も不透明な中では、現在FRBが利上げを打ち止めにして様子を見ており、バランスシートの縮小の縮小を9月で終了するというのも、秋口以降の景気の減速を考えると妥当な判断といえる。

しかし、トランプ大統領はFRBに対して利下げを実施し、バランスシートの縮小も直ちに終了すべきだと要請してきた。

米国経済が完全に減速を始めればこれも正当化されようが、株も上昇し、ISM製造業指数や雇用統計の内容を見るに、妥当な判断とは言えない。

しかし世界はトルコはじめ、中国はじめ、政治が金融政策に介入する流れとなっており、日本も例外ではない。結果的に多くのリスク資産価格に上昇圧力がかかる展開が予想される。

足元はそれでよいかもしれないが、世界の景気は循環的な減速局面にあり、中国などは構造的な減速局面入りしているが、まだ後退しているわけではない。理想を言えば自然体に任せて景気やリスク資産価格を調整させて、次の健全な価格上昇に備えるべきである。

それをやらず、とくに意識されているのが株だと思うが、金融政策でリスク資産価格を押し上げることを行うと、その後の反動が大きくなる可能性があることは十分に注意しなければならない。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

(マクロ要因)

・各国の金融緩和・経済対策を受けたPMI・ISMなどのマインド系指標の改善(価格上昇要因)。

・世界景気の減速観測。IMFは2019年の経済見通しを引き下げ(+3.7%→+3.5%)。EUもユーロの見通しを+1.9%→+1.3%、OECDも世界景気見通しを+3.5%→+3.3%に引き下げ。需要の伸び減速で価格の下落要因。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因。

・FRBの利上げ打ち止め~利下げ観測の強まりは、ドル安を通じてドル建て資産価格の上昇要因。

・2020年からインドが人口ボーナス期入りすることによる、構造的な需要の増加は中長期的な価格の上昇要因。

(特殊要因)

・米中貿易交渉は、貿易面で一部妥結の可能性(価格の上昇要因)。ただし、知的財産権や技術の強制移転などの重要なポイントで妥結できておらず、米中の覇権争いであり長期化の見込み。

・欧州の政治混乱(英国のEU離脱、伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気後退など)によるリスク回避の動きの強まり。特に英国のEU離脱が無秩序なものになる可能性は高まっている。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速。

(投機・投資要因)

・長期金利の低下による米長短金利の逆転が株安を誘発、リスク回避のリスク資産売り圧力が強まる場合。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油価格は上昇。注目の米雇用統計は低インフレ下の成長を確認する内容だったこと、イラン・ベネズエラに加え、リビアの首都トリポリで武力衝突が発生するとの見方が強まっていることによる供給懸念が価格を押し上げる形となった。

なお、トランプ大統領がFRBに対して金融緩和を要請する発言をしたため長期金利が低下したが、欧州懸念から断続的にドル高が進行したため、影響が相殺された。

【原油価格見通し】

原油価格は現状の高値水準でもみ合う展開を予想。

景気減速懸念を受けた各国の金融緩和や経済対策期待を受けて、マインド系の経済統計を中心に改善がみられることや、OPECプラスが減産を継続する中、米国の制裁によるイラン・ベネズエラからの供給不安、リビアの内戦激化に伴う供給不安を受けて、期待需給がタイト化すると考えられることが価格を押し上げ。

しかし、英国のEU離脱を巡る混乱やそれに伴うドル高、米中貿易交渉が本当に妥結するかわからない中では積極的にリスクテイクも行い難いことも事実であり、季節的に不需要期であることもあってこれが上値を抑制。

【石炭市場動向総括】

石炭価格は反発。特段目立った固有の材料があったわけではないが、4月の限月後退以降、中国の不需要期入りを材料に水準を切下げてきたため、足元の景気先行きへの懸念が若干後退する中で割安感から買いが入ったものとみられる。

【石炭価格見通し】

石炭価格は当面季節性通り下落。5月から8月にかけて再び上昇、11月にかけて水準を切り下げる展開を予想。米中貿易協議が難航する見通しであることも価格を押し下げ。下値の目処は80ドルとしていたが、昨日の下落でこの水準を下回っている。

ただし、米国の北朝鮮制裁は容易に緩和せず、環境規制強化による供給の伸び鈍化が価格を下支えの見込み。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・原油価格の上昇に伴う北米の増産継続は、需給緩和で価格の下落要因。

・OPECプラスの協調減産は9月末で終了する可能性が高まっており、足元の協調減産は価格の上昇要因だが、年後半は下落要因に。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

(特殊要因)

・米国のイランに対する制裁強化・ベネズエラ・リビアの情勢悪化に伴う供給途絶懸念は価格の上昇要因。米国のイスラエルへの過剰な肩入れは中東のパワーバランス変化を通じて供給途絶リスクを高めることに。

・米国の制裁緩和による北朝鮮炭の輸出再開による需給緩和(石炭)。

・北朝鮮が新たにICBMの発射実験を検討していると伝えられ、韓国が北朝鮮に対して石油製品の瀬取りを行っていたことが判明、制裁が厳格になるとの見方は、北朝鮮からの石炭輸出(密輸)を制限。

(投機・投資要因)

・直近の投機筋のポジションは、WTIはロングが590,312枚(前週比 +29,760枚)、ショートが108,951枚(▲2,982枚)、ネットロングは481,361枚(+32,742枚)、Brentが395,210枚(前週比+19,085枚)、ショートが46,550枚(▲7,540枚)、ネットロングは348,660枚(+26,625枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME非鉄金属価格は下落。EUの混乱や欧州統計の減速を受けたドル高の断続的な進行が価格を押し下げた。

ただしLME指定倉庫在庫が再び減少に転じたり、米雇用統計が低インフレ下での雇用環境改善を受けて下落余地は限定された。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は米欧中の経済統計の悪化がベース価格を下押しするが、それを受けた金融緩和や経済対策(特に最大消費国である中国の経済対策)期待が価格を下支えするため、レンジワークを継続すると予想。

LME指定倉庫在庫の減少が継続し、記録的な低水準となっていることや、2020年から次の需要のけん引役として期待されるインドの需要増加観測が価格を下支え。

なお、英国のEU離脱を巡る混乱や、米中貿易交渉の行方などは政治的な決断に左右されるため予見し難いが、着地するまでは基本的には積極的な買い材料にも、売り材料にもし難い。しかし、妥決するまでは懸念材料となるため、価格の上値を押さえる要因に。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化(一方鉱山生産は再開しており、亜鉛精鉱需給は緩和)。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

(特殊要因)

・銅の生産減少観測(環境問題によるインド、生産方法変更によるインドネシア)、ヴァーレの尾鉱ダム事故の影響による供給減少(アルミやニッケルなどに波及する可能性)。

(投機・投資要因)

・3月29日付のLMEポジションはまちまち。銅は一転、ロング・ショートともに増加したがロングの増加が顕著でネットロングは増加。亜鉛も同様でネットロングは増加。

アルミは一転引き続きロング・ショートとも減少し、ネットロングを増加させた。

投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は162.0億ドル(前週164.6億ドル)と減少。上昇率は▲1.6%。

買い越し枚数はトン数換算ベースで4,181千トン(前週4,295千トン)と減少、増加率は▲2.7%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップ価格は小幅下落、原料炭スワップ先物は横這い、中国鉄鋼製品価格は休場。

中国市場が休場で積極的な買い手が不在の中、ここまでの価格高騰を背景に売り圧力が強まったとみられる。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は高値圏での推移になると考える。ヴァーレの尾鉱ダム決壊の影響による供給減少、足元の中国関連統計が改善していることが価格を押し上げる一方、米中協議の先行きがはっきりせず、最大消費国である中国の景気先行きが不透明なため。

中国政府は経済対策や金融緩和による景気テコ入れを行う方針であり、2020年からはインドの需要が構造的に増加すると見込まれることも価格を下支え。

しかし、鉄鋼製品在庫の取り崩し時期にあり、季節的に価格が下押しされるため上値も重くなると予想。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・中国の鉄鋼製品在庫水準の高さは価格の下落要因。鉄鋼製品在庫は前週比▲82.5万トンの1,566.3万トン(過去5年平均1,474万トン)と例年を大きく上回る。

・中国の鉄鉱石在庫水準の高さは価格を下押し。鉄鉱石在庫は前週比+13万トンの1億4,890万トン(過去5年平均1億1,902万トン)、在庫日数は▲0.9日の37.5日(過去5年平均 29.9日)と例年の水準を上回る。

・季節的に鉄鋼製品在庫の取り崩し時期であり、価格には下押し圧力がかかりやすい。

(特殊要因)

・ヴァーレの尾鉱ダム決壊の影響が拡大、現在稼働停止命令が出ている3鉱山の合計8,280万トン以上の供給減少が起きた場合(自社・他社ともにあり得る)、価格の上昇要因。

(投機・投資要因)

・固有の要因は特になし。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金銀価格はもみ合った結果、前日比マイナスで引けた。

欧州不安を背景にドル高が断続的に進行する一方、米トランプ大統領が、「FRBは金利を下げるべきだ。バランスシートの縮小もやめるべきだ」と緩和圧力を強める発言をしたことで長期金利が急落、原油価格上昇に伴う期待インフレ率の上昇を受けて実質金利が低下したため。

PGMはプラチナ・パラジウムとも物色された(詳しくは本日のMRA's Eyeをご参照ください)。

PGM現物の需給バランスを見る上での指標となるロジウムの価格は3,050ドル(前日比±0.0ドル)と前日比では変わっていない。

【貴金属価格見通し】

金価格は上昇余地を探る動きになると予想。世界的な金融緩和観測と原油価格の上昇を受け、実質金利に低下圧力がかかると考えられるため。

ただし、原油価格は年後半に下落する見通しであり、ベース価格の上昇余地は限定。

一方、欧州の政情不安、米国の債務上限問題、中東情勢の混乱懸念(イスラエル・イランを中心に)が安全資産需要を高めるため、リスクプレミアムが乗る形で価格を押し上げへ。

PGM価格は金銀価格が上昇余地を探る動きになるため下値は堅いが、景気先行き懸念から対金銀では割安に推移。

プラチナは割安感からETFに強烈な買いが入っており、この5年の最高水準まで残高が積み上がっている。当面はこのトレンドが続こうが、先々の売り圧力となる可能性があることは留意。

パラジウムはリースレートが10%を割り込み、実際の需給面は緩和に向かいつつある。ロジウム価格の調整もあって、暫くは下値余地を探りやすい。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・FRBの利上げ打ち止め~利下げ観測の強まり、原油価格の高止まりは実質金利の低下を通じて金銀価格の上昇要因に。

・実質金利の低下に伴うドル安の進行は、金銀価格の上昇要因に(逆に欧州の政情混乱や景況感の悪化でユーロ安・ドル高となった場合には金銀価格の下落要因)。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト(パラジウムの上昇要因・プラチナの下落要因)。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

・割安感からプラチナのETFに買いが入っており、短期的には上昇要因、中期的には手仕舞い圧力で売り要因に(プラチナ)。

(特殊要因)

・米中貿易交渉は、貿易面で一部妥結の可能性(価格の下落要因)。ただし、知的財産権や技術の強制移転などの重要なポイントで妥結できておらず、米中の覇権争いであり長期化の見込み(価格の下支え要因)。

・米国の債務上限問題の顕在化(8月~9月にデフォルトするリスク)。

・欧州の政治混乱(英国のEU離脱、伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化など)による安全資産需要の増加。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

(投機・投資要因)

・長期金利の低下による米長短金利の逆転が株安を誘発、リスク回避のリスク資産売り圧力が強まり、安全資産需要が高まる場合。

・銀価格は金銀在庫レシオが銀在庫の減少、ないしは金在庫の増加、あるいは両要因によって低下した場合、金銀レシオが上昇するリスク(銀価格の上昇要因)。

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが193,784枚(前週比 ▲21,113枚)、ショートが99,228枚(+4,269枚)、ネットロングは94,556枚(▲25,382枚)、銀が78,993枚(+2,452枚)、ショートが62,210枚(+12,346枚)、ネットロングは16,783枚(▲9,894枚)

・直近の投機筋のポジションは、プラチナはロングが41,464枚(前週比 ▲1,887枚)、ショートが18,109枚(▲1,035枚)、ネットロングは23,355枚(▲852枚)、パラジウムが13,920枚(▲3,455枚)、ショートが3,841枚(▲1,366枚)、ネットロングは10,079枚(▲2,089枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物価格は下落。英国のEU離脱を巡る懸念で断続的にドル高が進行したことが価格を下押しした。

【穀物価格見通し】

穀物価格はレンジの中、堅調な推移になると考える。米中貿易摩擦でシカゴの需給が緩和している可能性が高いが、エルニーニョの影響による供給懸念がショートの買戻しを誘うことが価格を押し上げると考えられるため。

ただし、各国の経済対策の影響から景気循環銘柄に一時的な買戻しが入る可能性はあり、非景気循環銘柄が売られる可能性があること、Brexitを意識したリスク回避のドル高進行が価格の上昇を阻害しよう。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・米穀物生産増産見通しを受けた需給緩和観測。

トウモロコシ作付意向面積 9,279万エーカー(市場予想 9,127万エーカー、前年8,803万エーカー)

大豆 8,462万エーカー(8,620万エーカー、8,898万エーカー)小麦 4,575万エーカー(4,688万エーカー、4,734万エーカー)

・実質金利の低下に伴うドル安の進行は、シカゴ穀物の輸出競争力を改善し、需給面で価格の上昇要因に。

(特殊要因)

・米中貿易交渉は、貿易面で一部妥結の可能性(価格の上昇要因)。ただし、知的財産権や技術の強制移転などの重要なポイントで妥結できておらず、米中の覇権争いであり長期化の見込み(価格の下落要因)。

・エルニーニョ現象発生による北米の増産は価格の下落要因。ただし洪水などが発生し、災害が激甚化した場合には価格の上昇要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

(投機・投資要因)

・直近の投機筋のポジションは、トウモロコシはロングが399,979枚(前週比 ▲10,260枚)、ショートが505,090枚(+33,003枚)、ネットロングは▲105,111枚(▲43,263枚)、大豆はロングが144,764枚(+9,603枚)、ショートが188,804枚(+26,132枚)、ネットロングは▲44,040枚(▲16,529枚)、小麦はロングが135,641枚(▲1,284枚)、ショートが163,045枚(▲9,956枚)、ネットロングは▲27,404枚(+8,672枚)

◆本日のMRA's Eye


「プラチナETFは急増」

記録的な上昇となっていたパラジウムが下落に転じ、今度は一転、プラチナが急上昇し始めた。パラジウム価格の上昇と、プラチナ価格の下落はプラチナ需要が減少する中で、プラチナの副産物として産出されるパラジウムの需要増加に対応するため、プラチナが増産されたことが影響している。

プラチナ需要の減少は、まず欧州の自動車販売の減少がディーゼル車向けのプラチナ需要を減じたこと、欧州のディーゼル車の後処理システムでPGMの使用量が減少したことによるものだ。

欧州の自動車メーカーはEuro 6d-TEMPに対応せねばならず、欧州ではPGMを使用しない選択還元触媒(SCR)と、選択還元触媒機能付きのフィルター(SCRF)技術を用いたシステムの利用が拡大している。

詳しい説明は2019年2月18日付MRA's Eye「2019年PGM需給見通し~J&Mレポートより」を参照していただきたいが、本稿で要点だけまとめると、排ガスで発生する粒子物質の規制が厳しくなる結果、PGMを利用したディーゼル微粒子捕集フィルタはSCR技術と組み合わせて用いられているが、圧倒的にその使用量は減少することが予想されている。

この規制は近くインドでも導入される見込みであり、プラチナの工業向け需要見通しは明るくない。

一方パラジウムは同様の規制強化で、ガソリン車向けのパラジウム充填量が増加することが予想されており、近く、ガソリン車主体の中国も同様の規制を導入する見込みで、これが需要見通しを押し上げている。

その結果、「パラジウム買い」「プラチナ売り」となったわけだ。

パラジウムは実際に供給が不足しており、一時、リースレートは30%を超えていたが、今は10%を切る水準まで低下しており、需給に緩和感が出てきているようだ。

パラジウムの現物不足はETFの残高の推移にも表れており、通常「価格が上昇するのであれば、値上がり期待でETFが買われる」訳だが、逆に現物需要の高まりでこの在庫の取り崩しが発生した。しかし、リースレートの低下にも反映されているように需給バランスの著しいタイト化が落ち着いたと見られ、ETFの管理残高の減少にも歯止めがかかっている。

減速の背景は、世界的に自動車販売が減速していることが影響したとみられる。実際、CFTCのポジションで見てみるとロングがじりじりと水準を切り下げる一方、記録的な水準まで低下していたショートが増加に転じている。このことは「売る現物」を投機筋が確保できている可能性があることを示唆している。

一方プラチナであるが、ETFの残高が急増しており、過去最高水準に達している。しかし、投機のポジションはロングが増加したというよりは、大きく積み上がっていたショートポジションが解消される流れとなっており、こちらが価格を押し上げている。

つまり、プラチナ・パラジウムもロングが減少している、ということは景気の先行きへの懸念が強まっていることから投機筋はそれほど強気になっていないといえ、プラチナのショートの買戻しが一巡すればプラチナ価格の上昇も歯止めがかかる可能性が高い、ということだ。

世界の自動車販売の見通しは明るいものではないが、プラチナ価格の上昇とパラジウム価格の下落は早晩終了し、再びパラジウムがプラチナに対して割高に推移することになると予想する。

◆主要ニュース


・3月日本外貨準備 1兆2,918億ドル(前月1兆2,818億ドル)

・2月日本毎月勤労統計 現金給与総額 前年比▲0.8%(前月改定▲0.6%)。実質賃金総額 ▲1.1%(▲0.7%)

・2月独鉱工業生産 前月比+0.7%(前月改定±0.0%)、前年比 ▲0.4%(▲2.7%)

・3月米雇用統計 非農業部門雇用者数 前月比+196千人(前月改定+33千人(速報比+13千人))
 民間部門雇用者数 +182千人(+28千人)
 製造業雇用者数 ▲6千人(+1千人)

・3月米失業率 3.8%(前月 3.8%)
 不完全雇用率 7.3%(7.3%)
 労働参加率 63.0%(63.2%)
 時間当たり平均賃金 前月比+0.1%(+0.4%)、前年比+3.2%(+3.4%)
 週平均労働時間 34.5時間(34.4時間)

・2月米消費者信用残高 前月比+152億ドル(前月改定+177億ドル)
 回転信用+30億ドル(+26億ドル)
 非回転信用+122億ドル(+151億ドル)

・英メイ首相、EUに対して6月30日までの期限延長を要請。EU大統領は1年延長を支持。

・米トランプ大統領、「FRBは利下げすべきだ。量的引き締めも中止するべきだ。」

・クリーブランド連銀メスター総裁(投票権なし・タカ派)、「当局のバイアスは金利据え置きか利上げだ。利下げではない。」

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・ベイカー・ヒューズ週間米国石油リグ稼働数831(前週比+15)、 ガスリグ 194(前週比+4)。

・東京ガス、シェルとLNG売買契約。年平均50万トンを10年間。一部は石炭価格リンク。

・リビア「国民軍」首都トリポリに侵攻。

【メタル】
・特になし。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ +14.68%/ ▲32.72%
2.NYM WTI ( エネルギー )/ +1.87%/ +39.31%
3.NYM RBOB ( エネルギー )/ +1.72%/ +49.07%
4.NYM灯油 ( エネルギー )/ +1.63%/ +21.74%
5.ニューキャッスル炭 ( エネルギー )/ +1.48%/ ▲22.73%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
68.ICEアラビカ ( その他農産品 )/ ▲2.20%/ ▲8.49%
67.CME木材 ( その他農産品 )/ ▲2.08%/ +6.11%
66.LIFFEロブスタ ( その他農産品 )/ ▲1.93%/ ▲5.71%
65.LME錫 3M ( ベースメタル )/ ▲1.49%/ +7.12%
64.LMEアルミ 3M ( ベースメタル )/ ▲1.39%/ +1.59%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :26,424.99(+40.36)
S&P500 :2,892.74(+13.35)
日経平均株価 :21,807.50(+82.55)
ドル円 :111.73(+0.07)
ユーロ円 :125.32(+0.02)
米10年債利回り :2.50(▲0.02)
独10年債利回り :0.01(+0.01)
日10年債利回り :▲0.03(+0.02)
中国10年債利回り :休場( - )
ビットコイン :4,999.01(+151.97)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :20.95(▲0.27)
エネルギー :25.60(▲0.11)
ベースメタル :17.24(▲0.88)
貴金属 :21.31(▲0.69)
穀物 :18.60(+0.12)
その他農畜産品 :21.46(▲0.13)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :18.00(▲0.27)
Brent :12.01(▲0)
米天然ガス :22.99(▲0.17)
米ガソリン :18.76(+0.47)
ICEガスオイル :15.83(▲0.94)
LME銅 :15.60(▲0.3)
LMEアルミニウム :17.16(+0.05)
金 :13.35(+0.04)
プラチナ :22.05(+0.01)
トウモロコシ :23.88(+0.15)
大豆 :13.35(+0.04)

【エネルギー】
WTI :63.26(+1.16)
Brent :70.39(+0.99)
Oman :70.15(+0.97)
米ガソリン :197.32(+3.33)
米灯油 :204.62(+3.28)
ICEガスオイル :623.75(+8.00)
米天然ガス :2.68(+0.04)
英天然ガス :41.09(+5.26)

【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :70.39(+0.99)
SPO380cst :423.33(▲1.37)
SPOケロシン :82.43(+1.18)
SPOガスオイル :82.61(+1.26)
ICE ガスオイル :83.72(+1.07)
NYMEX灯油 :204.78(+1.31)

【貴金属】
金 :1291.76(▲0.45)
銀 :15.11(▲0.04)
プラチナ :901.17(+2.41)
パラジウム :1371.39(+4.41)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :6,434(▲31:15C)
亜鉛 :2,909(▲13:60.5B)
鉛 :1,993(▲14:20C)
アルミニウム :1,887(▲6:22.5C)
ニッケル :13,200(+60:110C)
錫 :21,150(±0.0:130B)
コバルト :32,000(+500)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :6397.50(▲52.50)
亜鉛 :2920.00(+5.50)
鉛 :1987.00(▲13.00)
アルミニウム :1882.50(▲26.50)
ニッケル :13060.00(▲100.00)
錫 :20845.00(▲315.00)
バルチック海運指数 :699.00(+27.00)
※C=Cash2M コンタンゴ、B=Cash2M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :92.27(▲0.56)
NYMEX鉄鉱石 :91.81(▲0.72)
NYMEX原料炭スワップ先物 :195(±0.0)
上海鉄筋直近限月 :休場( - )
上海鉄筋中心限月 :休場( - )
米鉄スクラップ :350(▲2.00)

【農産物】
大豆 :899.00(▲7.50)
シカゴ大豆ミール :308.00(▲3.90)
シカゴ大豆油 :29.15(▲0.05)
マレーシア パーム油 :2129.00(+29.00)
シカゴ とうもろこし :362.50(▲2.75)
シカゴ小麦 :467.75(▲3.00)
シンガポールゴム :168.00(+0.20)
上海ゴム :休場( - )
砂糖 :12.76(+0.05)
アラビカ :93.20(▲2.10)
ロブスタ :1420.00(▲28.00)
綿花 :78.25(+0.93)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :79.03(▲0.55)
シカゴ生牛 :126.05(▲1.50)
シカゴ飼育牛 :146.15(▲0.18)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。