CONTENTSコンテンツ

あらためて意識された景気の弱さ
  • MRA外国為替レポート

2019年3月11日号

◆先週の市場総括


先週は市場の関心が米中通商合意から世界経済の先行き懸念へと移った。週後半にかけて欧州経済・中国経済への懸念から世界的な景気減速が意識されリスク選好が後退。

株安・円高が進んだ。欧州中銀が成長率見通しを大きく引き下げ、長期資金供給の再開を決定。また中国の輸出が大きくマイナスとなったことも不安材料に。

週末の米雇用統計では非農業部門雇用者数の増加が想定外の低水準となった。

米国株は週を通じて軟調。前週から反発していた米長期金利も再び低下した。

日経平均は米株安や円高の進行を受けて週末は21,000円ちょうど近辺まで下落。ドル円相場は週初に111円90銭近辺で始まり一時112円をつけたが上値の重い展開。その後はじり安となり週末には111円割れに下落したのち111円台に戻して引けた。

ユーロは大きく下落。ユーロドル相場は1.14手前でスタートしたが週末には1.12割れ。引けは1.12台半ば。ユーロ円相場は127円台前半から124円台前半へと大幅下落。その後は125円ちょうど近辺に反発して週末の取引を終えた。

月曜日の東京市場の為替相場は全般的に小動き。円とドルがともにややしっかり。ドル円相場は111円90銭近辺で始まり、そのまま112円手前でもみ合い、その後は111円80銭台に小幅安。

ユーロドル相場は1.1380~90で始まりじり安。ユーロ円相場は127円30銭中心にもみ合いの後軟調。

日経平均は前週末の米株反発やドル円相場が112円近辺で推移したことを好感して21,800円で高寄りし一段高、850円に上昇。引けは21,800円台前半。

しかし海外市場に入ると米中通商合意への期待が漂うなかでも、弱い米国の建設支出をきっかけに米国株が利食い先行で下落。リスク選好に歯止めがかかった。

ドル円相場は111円70銭台に下落して引け。ユーロ円相場は126円50銭に下落したのち70銭~80銭で引け。ユーロドル相場は1.1310まで下落したあと40~50にやや戻して引けた。

火曜日の東京市場のドル円相場は111円70銭台で始まりじり高。112円手前に持ち直した。ドルが小じっかり。ユーロ円相場は126円80銭中心にもみ合い。

日経平均は21,700円近辺に下落して始まり、そのままもみ合い引けた。

この日から中国で全人代(全国人民代表会議)が始まった。李克強首相は、減税規模の拡大、増値税率の引き下げによる企業支援、インフラ投資の拡大、中小企業への積極融資、など経済下支え策を示した。成長率目標は2018年の6.5%から6.0~6.5%へと幅をもたせたかたちで引き下げ。

積極財政により財政赤字目標はGDP比2.8%と昨年の2.6%から引き上げた。また対米配慮から次世代情報技術などを含め世界の製造強国入りを目指す「中国製造2025」には言及せず。成長率見通しの下方修正は市場の予想通りでとくに反応せず。

海外市場に入るとドルは一段高。発表されたISM非製造業景気指数(2月)が59.7と予想57.3、前月56.7を上回ったことに反応した。

ドル円相場は一時112円10銭台に。ユーロドル相場は1.1330中心のもみ合いから1.13ちょうど近辺へ。ただ米国株は強い数字にも反応鈍く小動き、小幅安。ドル円相場は反落して111円80銭~90銭でもみ合い引けた。ユーロ円相場は126円50銭。

ボストン連銀総裁は、米国経済へのリスク見極めのため今後数回のFOMCでは利上げ見送りの可能性がある、と示唆した。

水曜日の東京市場ではやや円高に振れるなかドル円相場は111円80銭中心にもみ合い小動き。ユーロ円相場は126円30銭中心。ユーロドル相場は1.13ちょうど近辺で推移した。

日経平均は米国株上昇一服で売り先行。21,600円近辺に下落して始まり、21,550円~600円でもみ合い、引けは21,600円。

海外市場でも総じて動きが鈍いなかドル円相場は小幅下落。111円70銭中心に上下した。米国株は続落。米長期金利は小幅低下し、10年債利回りは2.69%と再び2.7%割れ。2年債利回りは2.52%。

公表された米地区連銀経済報告(ベージュブック)では、雇用は堅調としながらも、世界経済の減速や政府機関の一部閉鎖が成長の重しになった、関税により企業利益が圧迫されている、とされた。

ADP雇用報告では前月比雇用者数増加が+183千人とほぼ予想(+190千人)通り。NY連銀総裁は、米国経済が減速するなか様子見しデータを待つことが可能、と述べた。

木曜日の東京市場のドル円相場は111円台で始まり60銭に下落。その後はじりじりと戻して70銭~80銭で上下した。

ユーロ円相場も126円40銭から20銭台に下落したが、40銭近辺に戻してもみ合い。

日経平均は21,400円台半ばで安寄り、400円台前半でもみ合い引けは21,450円。日本政府は景気の基調判断を下方修正。海外要因を主因に景気が後退局面に入った可能性が示された。

海外市場に入るとユーロが大幅安となり、また円が全面高となった。この日、欧州ではECB理事会(金融政策決定会合)が開催され、結果が想定以上にハト派スタンスとなったことに反応した。

政策金利のガイダンスを、従来の「少なくとも今年夏にかけて現状水準を維持する」から「少なくとも年末まで」とし、今年の利上げを断念。

また噂されていた長期資金供給オペの再開、第3弾の9月からの実施を決定。背景には景気先行き不確実性の高まりが指摘された。

今年の成長率見通しを1.7%から1.1%へ大幅下方修正。景気減速が一過性ものとはいえず懸念すべきとされた。

株式市場はこうしたハト派スタンスよりも景気見通しの悪化に反応。米国株は世界景気減速懸念で4日続落。欧州長期金利が急低下するなか、米国の長期金利も低下。10年債利回りは2.64%。ユーロは対ドルで1.13ちょうど近辺から1.12割れ。

ユーロ円相場は126円40銭から124円80銭へ急落。ドル円相場はユーロ安円高に押されて111円50銭~60銭に下落して上下。

金曜日の東京市場ではリスク選好が大きく後退するなか株安・円高が進んだ。ドル円相場は111円60銭台で始まり夕刻には111円割れ。ユーロ円相場は124円90銭近辺から124円30銭へ。ユーロドル相場は1.12近辺で横ばいもみ合い。

日経平均は21,300円割れで始まると続落。後場には21,000円ちょうど近辺まで下げてもみ合い、そのまま引けた。

中国で2月の貿易収支が発表され、輸出が前年同月比▲20.7%と大きく減少。輸入は▲5.2%とこちらも予想を超える減少。春節の影響もあるとされたが、世界的な景気減速懸念が広がるなか市場の不安を煽るかたちとなった。

海外市場に入ると円高はやや一服。ドル円相場は111円20銭に、ユーロ円相場は124円70銭に持ち直し。ユーロドル相場は1.1220近辺にこちらもやや持ち直して雇用統計の発表待ち。

発表された米国の2月の雇用統計は、非農業部門雇用者数前月比が+20千人と予想+180千人、前月+311千人(+304千人から上方修正)から大きく減少、伸び悩み。失業率は3.8%で前月から変わらず。

一方で平均時給の上昇率は前月比+0.4%、前年同月比+3.4%と、こちらは予想よりも若干強めだった。ドル円相場は発表直後に一時110円80銭に下落。ユーロ円相場は124円50銭に下落。

米国株は安寄りして5日続落のスタートとなったが、その後じわじわと持ち直し前日比小幅安にとどまった。連れて円高も一服。ドル円相場は111円10銭~20銭に戻して引け。

ユーロ円相場は125円に反発して124円90銭近辺でNYの取引を終えた。ユーロドル相場は1.1230台。こちらはユーロ安ドル高に歯止めがかかった。

◆今週の3つの注目ポイント


1.米国の経済指標

世界経済の先行き見通しに不安感が広がるなか、最も堅調な米国の経済が外部要因の弱さに耐えて堅調さを維持できるかが今後もポイント。経済指標が市場の不安感を緩和できるか。

月曜日 小売売上高(1月、前月比、予想+0.1%、コア同+0.3%)、

火曜日 消費者物価指数(2月、前年同月比、予想+1.6%、コア+2.1%)

水曜日 生産者物価指数(同、予想+1.9%、コア+2.6%)、耐久財受注(1月、前月比、予想▲0.8%、コア+0.1%)

木曜日 新築住宅販売(1月)、金曜日に鉱工業生産(2月)、ミシガン大学消費者マインド指数(3月、予想93.0、前月93.8)、NY連銀製造業指数(3月、予想7.00、前月8.80)

2.中国の経済指標

このところの世界経済の先行き懸念を悪い意味でけん引しているのが中国景気の動向。なおも市場の不安感を強めたままとなるか。今週は木曜日に1月の主要経済指標の発表がある。

小売売上高(前年同月比、予想+8.1%、前月+8.2%)、工業生産(同、+5.5%、前月+5.7%)、都市部固定資産投資(同、+6.0%、前月+5.9%)。

3.日銀金融政策決定会合

今週、木曜日・金曜日の2日間にわたり日銀の金融政策決定会合が開催される。終了後には黒田総裁が定例記者会見を実施。

欧州ECBが緩和に舵を切り、米国FRBが金融正常化の休止を明確に、世界経済の先行き懸念が広がり、日本も景気後退が懸念されるなか、日銀はどのようなスタンスで臨むのか。

打つ手は限られるとみられるが、市場に見透かされて一時的にせよ投機筋が円高などしかけるきっかけを与える可能性はないか。

◆今週のMRA's Eye


あらためて意識された景気の弱さ

足元の景気減速を前に、米中通商合意への期待感によるリスク選好がどこまで続くのか、という点が当面の市場動向をみる際のポイントだった。

早晩、壁に直面するのではないかとの警戒感を強めていた矢先、先週早くもリスク選好が後退。株価は反落し円高が進んだ。期待先行でリスク選好が行き過ぎていたことの反動はしかるべきだが、一方で、年末年初のような極端な悲観論・リスク回避に再び陥ることも当面は避けられそうだ。ドル円相場は110円割れでは底固く、112円では上値が重い状況が続くとみられる。

世界的な景気減速懸念、とくに足元での半導体・電気電子関連を中心とする製造業不振が一時的なものなのか。欧州ではECBが成長率見通しを大きく下方修正した。海外要因や製造業の弱さに言及し、景気減速が一過性ものとはいえず懸念すべき、としている。

米国でも海外要因が経済に対する懸念材料とされ、FRBは様子見姿勢を強めている。

日本でも海外要因から景気判断が下方修正され、景気後退の可能性が指摘されている。これらに共通して指摘されている海外経済の不振は中国の景気減速だ。その中国では輸出不振が明らかになっている。

中国からみた海外経済の弱さが中国の輸出不振、製造業の苦境、景気圧迫要因だとすれば、堂々巡りのような話になる。

本当の原因はどこにあるのか。それは何によって解決され、世界経済全体を覆う霧が晴れるのか。各国中央銀行の懸念をようやく市場も共有し始めたが、今後はそれがどのように解消していくかが注目ポイントとなる。

中国の景気減速、製造業の不振が、主として米中通商摩擦に起因するのか。そうであれば米中合意による持ち直しが今後期待できる。

しかし米中合意で中国が米国から農産物輸入を増加させることによる米中間の貿易不均衡が改善されるのでは、中国を中心とする製造業不振の解決にならないだろう。

米国が中国製の電気電子部品・製品や電機・機器を購入するのか。中国経済は輸出でなく内需主導による成長再加速が可能なのか。

中国製造2025は世界の工場として質を高め地位向上を図る産業競争力・輸出競争力の強化作戦だが、米中摩擦はそれに構造的なダメージを与えた。

米国の狙いが経済的・軍事的な中国の抑止であれば、米中合意で中国経済が息を吹き返すことは論理的に考えにくい。結果としてこのまま中国の戦略が頓挫するのであれば、足元の中国経済の弱さ、とくに製造業の弱さは、一時的ではなく今後も続く構造的な問題ということになる。

全人代では景気浮揚策が示されたが、その中身は、減税、インフラ投資拡大、中小企業への積極的な融資、だった。

政治的に必須な雇用重視、輸出依存ではなく内需刺激による景気浮揚ということになろうが、その効果が貿易を通じて海外に波及するのかどうか。

仮に政策が直ちに実施されたとしても、それがグローバルな貿易・通商を通じて、欧米あるいは日本の景気持ち直しに寄与するにはかなり時間がかかりそうだ。

その間は米国経済が頼みの綱だ。幸い米国経済は一部に弱い指標もみられるがなお底固く、景気後退まで見込むのは時期尚早。利下げを織り込むまでの材料はない。

ドル金利先高感が強まることはなさそうだが、ここからさらに米長期金利が低下するには利下げを織り込むことが必要。

またリスク回避の状況のもとでは円高となりやすいがドルも安全通貨として堅調であり、結果としてドル円相場は大幅な下落とはならなそうだ。景気動向が不透明なのと同じく、ドル円相場も方向感が定まらない状況が続くとみられる。

現時点でのリスクバイアスは景気減速状態の長期化に傾いている。一方で景気減速に歯止めがかかりあるいは持ち直す可能性は政策効果への期待にとどまる。

結果、現時点でのドル円相場のバイアスも、111円台からは、ドル高円安よりもドル安円高サイドに傾いているとみられる。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :111.17(▲0.41)
ユーロ :124.88(▲0.02)
英ポンド :144.691(▲1.31)
豪ドル :78.326(+0.04)
カナダドル :82.859(▲0.08)
スイスフラン :110.266(▲0.06)
ブラジルレアル :28.7478(▲0.07)
中国人民元 :16.517(▲0.10)
韓国ウォン(日本円=100) :9.802(▲0.03)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1235(+0.004)
英ポンド :1.3015(▲0.007)
豪ドル :0.7045(+0.003)
カナダドル :1.3416(▲0.004)
スイスフラン :1.0082(▲0.003)
ブラジルレアル :3.8655(▲0.011)
中国人民元 :6.7214(+0.007)
韓国ウォン :1136.2(+7.20)

【主要国政策金利】
米国 :2.50
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :2.63(▲0.01)
米2年債 :2.46(▲0.01)
日本10年債利回り :▲0.03(▲0.03)
日本2年債利回り :▲0.03(+0.00)
独10年債利回り :0.07(+0.00)
独2年債利回り :▲0.53(+0.01)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :25,450.24(▲22.99)
NASDAQ  :7,408.14(▲13.32)
S&P500 :2,743.07(▲5.86)
日経平均株価 :21,025.56(▲430.45)
ドイツ DAX :11,457.84(▲59.96)
インド センセックス :36,671.43(▲53.99)
中国上海総合 :2,969.86(▲136.56)
ブラジル ボベスパ :95,364.85(+1,024.68)
英国FT250 :19,047.67(▲136.15)
ビットコイン :3868.84(▲2.58)

【主要商品価格】
WTI :56.07(▲0.59)
Brent :65.74(▲0.56)
米ガソリン :180.17(▲0.37)
米灯油 :199.98(▲1.29)

金 :休場( - )
銀 :15.34(+0.31)
プラチナ :818.21(+3.44)
パラジウム :1516.05(▲11.75)
銅 :6368.00(▲53:30.5B)
アルミニウム :1872.00(+8:24C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :883.75(▲7.00)
シカゴ とうもろこし :354.75(▲1.25)
シカゴ小麦 :432.75(+1.25)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。

【MRA外国為替レポート】について