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経済データ無視で高まるリスク
  • MRA外国為替レポート

2019年3月4日号

◆先週の市場総括


先週のドル円相場は、110円60銭台で始まり、引き続き米中通商合意への期待から総じて円安気味に推移するなか早々に111円台に上昇した。

ただその後はFRBパウエル議長のハト派発言や上値の重い米国株の動向に反落し110円台後半で上下。

週末にかけては米国および中国の経済指標がまちまち、弱い数字も散見されたものの、米中合意への期待感が引き続きリスク選好を支え米国株は上昇。再び円全面安となり、ドル円相場は一時112円へ。ユーロ円相場も127円50銭近辺まで円安が進んだ。ドル円相場は111円90銭台で週末の取引を終えた。

米国株は週初こそ先週末からの流れ、米中合意期待で高く始まったが、その後は軟調な展開。FRB議長の慎重スタンスも株価上昇材料とはならず。

新たな買い材料に乏しいなか利食い売りに押されてじり安となった。ただ週末には反発して引け。週を通じてみればしっかり。日経平均は21,500円台で始まり500円中心に上下。下値は400円近辺に押される場面もあったが底固く、週末には21,600円台に上昇して引けた。

月曜日の東京市場のドル円相場は概ね110円60銭台で始まり、朝方一時80銭台に上昇したがその後は概ね60銭~70銭で上下動。ユーロ円相場も125円50銭を中心に方向感なく上下した。

日経平均は21,550円近辺で高寄り。その後は21,500円~550円でもみ合い。中国株、上海総合指数が米中合意への期待感から大きく上昇したことも支えとなった。

トランプ大統領が24日、日曜日に、構造改革でも進展がみられ通商協議を継続する、3月中にも米中首脳会談を実施することで最終合意、関税の引き上げは見送り、としたことが好材料。海外市場に入ると、あらためてリスク選好が強まるかたちで円安が進んだ。

ドル円相場は111円20銭台に、ユーロ円相場は126円30銭に上昇。米国株は米中交渉への期待から上昇、その後じり安となったがプラスで引け。米長期金利は小幅反発して10年債利回りは2.67%。

イギリス・メイ首相が、離脱期限の延長を検討している、との報道もやや安心感をもたらした。

この日の米国の経済指標はまちまち。ダラス連銀製造業景気指数(2月)は13.1と予想4.7前月1.0を大きく上回った一方、シカゴ連銀全米活動指数(1月)は▲0.43と前月0.05(0.27から下方修正)から悪化。ドル円相場の引けは111円ちょうど近辺。

火曜日の東京市場のドル円相場は111円台で始まったが早々に110円80銭に押されてその後は80銭~90銭でもみ合い。日経平均は小幅高スタート、21,550円~600円で堅調推移も昼頃から利益確定売りに押され先物主導で下落。21,400円~450円でもみ合い引け。

海外市場に入るとドルは下落。この日、パウエル議長は上院銀行委員会で半年に1度の議会証言を行った。

議長は、欧州、中国の景気減速が続いており米国経済への脅威となる可能性がある、など、予想通りハト派的な発言。新味はなかったものの米長期金利が小幅低下。10年債利回りは2.64%に。ドル円相場は一時110円50銭割れに下落して50銭~60銭で引け。ユーロドル相場もややユーロ高ドル安に振れて1.1390~1.1400。

発表された住宅着工件数(12月)は季節調整済み年率換算で1,078千戸と前月1,256千戸から減少して弱め。

一方、消費者信頼感指数(2月)は131.4と前月120.2から大きく改善し、消費者の強気を示した。米国株は安寄りしたものの盛り返して前日比同水準で引け。

水曜日の東京市場のドル円相場は110円50銭~60銭で始まり午後に入ると110円40銭割れにやや円高となった。ユーロ円相場も126円手前から125円50銭台に下落。パキスタンがインド軍機を撃墜したことで両国の緊張が高まったことからリスク選好が後退し、円買戻しが生じた。

一方、日経平均は21,500円で高寄りしたあとじり高。21,550円で引け。海外市場に入るとドルは堅調。パウエル議長発言でハト派織り込みがピークとなったところ、米債利回りがやや上昇したことで、ドルを押し上げた。米10年債利回りは2.69%に上昇。ドル円相場は110円40銭台のもみ合いから上昇して111円台を回復した。米国株は小幅安、横ばい、もみ合い。

木曜日の東京市場のドル円相場は111円ちょうど近辺で始まり上値の重い展開。110円90銭割れに下落した後、日中はもみ合い。その後夕刻にかけて70銭台に下げた。ユーロ円相場も126円20銭近辺で始まり126円割れへ下落。リスク選好が緩むなか総じて円が買われた。

米中通商交渉を巡っては、ライトハイザーUSTR代表が議会でなお慎重な意見を表明。インド・パキスタン間の緊張が高まったこともネガティブな材料。

また中国で発表された2月のPMI景況感指数は製造業・非製造業ともに前月から悪化し、予想をやや下回る弱い数字。なおも景気減速が続いていることが示された。

アジア株は下落。日経平均は21,500円割れで始まるとその後は450円~500円でもみ合い。引けにかけて一段安となり21,300円台半ばで取引を終えた。

米朝首脳会談が決裂し、声明発表に至らなかったことが圧迫材料。一方、海外市場に入ると円は下落。ドルは米長期金利の反発基調をうけてしっかり。

発表された米国10-12月期GDPは前期比年率+2.6%と前期の+3.4%から減速したものの予想+2.4%より強め。個人消費は予想をやや下回ったが設備投資が+6.2%と予想外に加速した。

またシカゴ購買部協会景気指数(2月)は64.7と予想58.1、前月56.7を大きく上回った。米10年債利回りは前日に続き上昇して2.72%。ドル円相場は111円40銭に上昇して上下動。ドル以外の通貨に対する円売りが目立ち、ユーロ円相場は126円ちょうど近辺から126円70銭台に上昇した。

ユーロドル相場は1.1420に上昇していたが1.1370台に反落、ユーロ安ドル高。米国株は小幅安だった。

金曜日の東京市場のドル円相場は111円40銭で始まり111円70銭に上昇して上下。日経平均はドル高円安を好感して先物主導で買われ、21,500円台後半で高寄り、その後ももみ合いじり高となり21,600円近辺で取引を終えた。

中国で発表された財新製造業景気指数(2月)は49.9と3ヶ月連続で景況感の分かれ目である50を下回ったが、予想48.5、前月48.3は上回ったことも、やや安心材料に。

◆今週の3つの注目ポイント


1.米国の経済指標、ベージュブック

米国の経済指標には強弱まだら模様の数字が続いているが総じて堅調な景気動向を示すことになるか。

火曜日 ISM非製造業景気指数(2月、予想57.3、前月56.7)、新築住宅販売(12月、季節調整済み年率換算、予想619千戸、前月657千戸)

金曜日 住宅着工(11月)、雇用統計(2月、非農業部門雇用者数・前月比、予想+170千人、前月+304千人、平均時給・前年同月比、予想+3.3%、前月+3.2%)

この他、水曜日にはベージュブック(地区連銀経済報告)が公表される。定性的な景況判断はどうか。足元景気の強さが確認されるかどうかが鍵。

2.ECB(欧州中銀)理事会

欧州景気に先行き懸念が広がるなか、慎重なスタンスに傾いたECBの次の一手が気になるところ。木曜日にECB理事会が開催される。すでに長期資金供給の再開が検討されているようだが、踏み込んだ判断、決定がなされるか。

量的緩和再開となれば、リスク選好・株価には追い風、ユーロには下押し圧力、ドルには反面で下支え要因となる可能性がある。一方、景気に対して弱気すぎる判断が背景となると、リスク選好に水を差しかねないので留意を要する。

3.中国・全国人民代表大会(全人代)

5日火曜日から15日金曜日まで、中国で全国人民代表大会(全人代)が開催される。今年の経済成長率、インフレ、通貨供給量、与信拡大、などの目標ないし方針が示される。

経済成長率の目標は従来の6.5%から6.0~6.5%と幅をもたせるかたちになるとの見方もある。米中通商摩擦・交渉のただなかにあるところ、いかなる方針の表明となるか。

総じて市場に安心感をもたらす内容となるか、景気持ち直し期待を抱かせることとなるか、逆に中国経済に対する不透明感や不安感が払拭しきれないか。グローバル市場全体のリスクセンチメントを左右するため注目される。

◆今週のMRA's Eye


経済データ無視で高まるリスク

先週も米国株は底固い値動き。市場全体でリスク選好が維持された。米中通商交渉が合意に向けて具体的な覚書締結に向けて動いていること、米中首脳会談が3月にも開催されるとの報道で、さらに期待感が高まっている。

合意内容はともかく、時間軸でみれば、市場の期待感は首脳会談まで続く可能性がある。ただ一方で経済指標は強弱まちまち。むしろ弱い数字が目立ったが、それを引き続き無視するかたちでリスク選好が維持されている。

経済指標は過去の数字として、今後への期待感が勝った状況がなお続いている。米中合意への期待を背景に、という材料はトレンドとしてはポジティブな材料だが、レベルとしては、さてそれでどこまで株価が上昇するのか、円安が進むのか。

次第に、市場のムード、方向性、などから、経済指標をにらんだ水準論に移行していく可能性がある。

中国では、製造業PMI景況感指数が足元2月に49.2と1月の49.5から低下してなお悪化が続いていることを示した。非製造業はなお54.3と景況感の分かれ目である50を上回ってはいるが低下傾向が続く。

米国では住宅関連の指標の数字が弱い。個人所得・消費関連の数字も1月まで弱い数字が示された。これが政府機関の一部閉鎖の影響で、業務が再開された2月以降は反発するのかどうか。

企業部門の景況感も判断が難しい。地区連銀が集計している指標には強い数字もみかけるが、最も重視されるISM製造業景気指数(2月)は54.2と50を上回ったが、2016年11月以来の低水準となった。

引き続き米中通商交渉の期待感でどこまで弱い数字を無視できるか。中国政府が景気てこ入れを図り、何とかするのだろう、という達観を続けることが可能か。米国景気については企業の設備投資と雇用情勢の強さが続くのかどうか。

今週は中国の全人代で経済政策の方針がどのように打ち出されるか。景気持ち直しを確信できるような指針が示されるのか。景気減速を許容するようなスタンスとなるのか。

米国では指標がまちまちで判断がつきにくいが、ベージュブック(直連銀経済報告)でいかなる定性的な判断が示されるか。

金融当局の慎重なスタンスは、リスク選好にとって二面的な影響がある。優しい金融政策はリスク資産にとってポジティブだが、その背景が景気に対する慎重な見方であり、それが強調されればネガティブだ。

景気に対する先行き懸念が市場で強まれば、リスク回避と金融市場環境の悪化がスパイラル的に進む可能性もある。そのあたりの匙加減、どのようなメッセージを発信するか、金融当局にとって難しいところ。

現状は政策動向による期待感により、足元の景気の足踏みにもかかわらず、市場は緩和的な金融政策スタンスを良いように解釈してくれており、金融当局としてはやりやすい。

真に難しいのは連続した指標の悪化などにより、市場に景気先行き懸念が蔓延して不安が広がった場合だ。短期的には、雇用情勢はなお堅調とみられているだけに、雇用統計が弱い数字となった場合のリスクの方が強い数字となった場合のリスクよりも大きいだろう。

リスク選好が回復基調にあるなか、弱い数字によるネガティブインパクトの方が大きくなりやすい。

最新のシカゴ通貨先物の投機ポジションのデータは2月19日時点まで発表された。円売りポジションは12月18日の10万枚強から8週連続で減少していたが、2月19日は前週比増加した。ここに市場が強気に転じた証左がみられる。

その後にリスク選好が全般的に強まり円安が進んでいることから、円売りは増加していると推察される。その間にリスクバイアスはやや円高サイドに傾きつつある。

円売りポジションの減少、そこからの円売りポジションの増加、という局面では、確かに円安となりやすい。しかしその要因が弱い経済指標を無視した米中合意頼みであれば、合意がなった瞬間に、あるいは首脳会談が開かれた瞬間に、材料出尽くしと、円高に振れる可能性があり留意を要する。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :111.89(+0.50)
ユーロ :127.18(+0.51)
英ポンド :147.719(▲0.01)
豪ドル :79.228(+0.21)
カナダドル :84.157(▲0.42)
スイスフラン :111.978(+0.39)
ブラジルレアル :29.63(▲0.06)
中国人民元 :16.661(+0.02)
韓国ウォン(日本円=100) :9.924(+0.03)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1365(▲0.001)
英ポンド :1.3202(▲0.006)
豪ドル :0.7079(▲0.002)
カナダドル :1.3297(+0.013)
スイスフラン :0.9993(+0.001)
ブラジルレアル :3.778(+0.022)
中国人民元 :6.7064(+0.012)
韓国ウォン :1124.87(+0.43)

【主要国政策金利】
米国 :2.50
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :2.75(+0.04)
米2年債 :2.55(+0.04)
日本10年債利回り :▲0.01(+0.02)
日本2年債利回り :▲0.01(+0.01)
独10年債利回り :0.18(+0.00)
独2年債利回り :▲0.51(+0.01)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :26,026.32(+110.32)
NASDAQ  :7,595.35(+62.82)
S&P500 :2,803.69(+19.20)
日経平均株価 :21,602.69(+217.53)
ドイツ DAX :11,601.68(+86.04)
インド センセックス :36,063.81(+196.37)
中国上海総合 :2,994.01(+53.05)
ブラジル ボベスパ :94,603.75(▲980.60)
英国FT250 :19,399.65(+218.30)
ビットコイン :3828.22(+25.69)

【主要商品価格】
WTI :55.80(▲1.42)
Brent :65.07(▲0.96)
米ガソリン :173.03(+10.10)
米灯油 :200.10(▲2.25)

金 :1293.44(▲19.88)
銀 :15.20(▲0.41)
プラチナ :859.21(▲11.64)
パラジウム :1543.65(▲2.73)
銅 :6524.00(+30:48B)
アルミニウム :1910.50(▲6:20C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :899.25(+1.75)
シカゴ とうもろこし :364.00(+2.00)
シカゴ小麦 :454.00(+1.50)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。

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