株急落を受けたリスク回避で総じて軟調
- MRA商品市場レポート for PRO
2018年10月24日 第1424号 商品市況概況
◆昨日の商品市場(全体)の総括
「株急落を受けたリスク回避で総じて軟調」
昨日の商品価格は貴金属などの安全資産が物色されたが、その他は景気循環系商品価格は水準を切り下げた。イタリアの財政問題、サウジアラビアのジャーナリスト殺害問題に加え、米企業決算見通しに米関税政策が影響し始めていることが意識され、株が急落したことが要因。
米関税引き上げの影響はこれまで顕在化してこなかったが、先行きに影響をおよぼしていることが確認されている。キャタピラーは関税引き上げによる原材料価格や鋼材価格の上昇が業績の重石になるとしている。
ほかの市場商品と異なり実需が存在しない株価は、「投機筋のリスク選好の指標」でありこの水準が切り下がっていることは市場参加者のリスクテイクの動きが鈍化していることを意味する。
商品市場においては、投機筋は証拠金という形で先物市場に資金を投入するため「資金が流入したから価格が上がる」というわけではない。
しかし、投機筋は多くの商品において現物を生産しているわけでもなく、充分な現物在庫を保有しているわけでもないので、スクイーズのリスクがあることから、まず「買いから入る」ケースが多い。
このことは投機筋のリスク回避が起きた場合には、「まず売り」から入る可能性が高いことを意味する。もちろん、米天然ガスのように投機筋はむしろ売り手に回っているような商品の場合は買戻しが入るため、上昇することになる(注:もちろん天候や現物の需給が価格に与える影響のほうが大きい)。
ではなぜ株価が下落したか。おおむね上述の通りだが、足元の市場の注目は昨日のこのコラムで挙げた、1.欧州情勢(イタリア、英国)、2.サウジアラビア情勢だろう。
1.についてはイタリアコンテ首相が「
2.についてはトルコ エルドアン大統領が声明を発表したが、新しい材料が出てこなかった。ただし、「殴り合いになってカショギ氏が死亡した」というのは間違いで「周到に準備された計画的な殺害」と断じ、サウジアラビアの考えを真っ向から否定した。
これを受けてトランプ大統領も「証拠隠蔽は良くない。制裁に関しては議会に委ねる」とし、態度を徐々に変化させてきている。
トルコは今回の問題で、
トルコもジャーナリストを弾圧し、クルド人を投獄し、反エルドアン的な国民を次々と逮捕しており、はっきり言ってサウジアラビアに対して偉そうなことを言える立場にはないが、その意味で今回のサウジのジャーナリスト殺害はあからさま過ぎたのかもしれない。
しかし、今でもサウジアラビアでは公開斬首刑が行われているような国である。ある意味、「これぐらいどうってことないだろう」と皇太子が思ってもあまり不思議ではない。
しかしそれは皇太子がビジョン2030を推進する上で、
サウジの今後はどうなるかわからないが、最終手段の石油禁輸はないと思うが、「カっとなったら何をやるかわからない」人間が国のほとんどの権力を握っている以上、シナリオとして無視はできないと考えるべきである。
本日も引き続き、欧州問題や中東問題を睨みながら神経質に動く株価に左右される展開が予想される。昨日の景気循環系商品価格、とくに原油の下落が大きかったため一旦買戻しが入るだろうが、総じてリスク回避姿勢を解除できる状況にないと考えられるため、戻りも限定されむしろ下値余地を探る動きになると考える。
◆昨日の商品市場(個別)の総括
---≪エネルギー≫---
昨日の原油価格は大幅に下落。イタリアの財政問題や、サウジアラビアのジャーナリスト殺害問題を巡り、市場参加者のリスク回避姿勢が強い中、株価が調整したことで景気循環銘柄に下押し圧力が掛かる流れを受けて。
弊社は12月のOPEC総会では、
トルコが米国との関係改善と友好国であるカタールへのサウジの制裁解除を目論んで、今回の殺害事件にムハンマド皇太子が関わっている証拠を米国に大量に開示しているようだ。
エルドアン大統領の声明は、「計画的な犯行」とサウジを批判しつつ、それ以上のことは明かさなかったため、むしろこれからサウジとトルコの間で政治的な駆け引きが続くことを意識させる内容であり、全容解明にはほど遠い内容だった。
敢えて今回はムハンマド皇太子の関与に関して触れておらず、今後の展開によってはムハンマド皇太子更迭、元皇太子のナエフ皇子が皇太子に復帰、というシナリオもあり得る。
また、もし皇太子の関与が示された場合、何の制裁もなしというわけにはいかないだろう。米国は徐々にトーンを「何らかの制裁実施」に傾けつつある感じだ。
ただ、実際に原油禁輸措置まで踏み切ると、イランと対峙する際の「コマ」がなくなるため、米国・サウジとも形式的な制裁を科して幕引きを図るのではないだろうか。
結局、国際市場にイランがいつ戻ってこれるのか?あるいは原油供給減少に伴う価格上昇が需要を減速させる、あるいは株価が急落して市場参加者のリスク選好が後退する、
しかし、需給面の材料を整理すると価格には下向きバイアスがかかりやすい。そもそも景気が循環的に減速する可能性が高い中で米国の利上げが持続する見通しである上、米国発の中国制裁、同盟国への保護主義政策の拡大が景気を下押しすることになる。
そして、中国に対する制裁は、米国の選挙の結果に関わらず長期化する可能性がある。先日のペンス副大統領の講演でのスピーチは、明確に経済面で中国に宣戦布告しているのと同じである。これはトランプ政権というよりも、議会共和党の意向と考えたほうが良い。
ではいつまで制裁が続くかといえば、具体的には、中国の景気拡大が失速して米国と覇権を争えるような状態になくなる、中国が世界シェアを取りに行こうとしているハイテク分野の内製化をあきらめる、人民元高を許容する(バブル崩壊時の日本と同じ)、といった明確な成果があるまで継続するのではないか。
ただし、利上げを継続する中で米国景気が失速し、国民からの不満が高まる可能性がある2019年末頃が、
なお、過去の可処分所得とエネルギー消費額の関係を分析してみると、WTIは107ドル程度までの上昇が許容できるため、
トランプ大統領弾劾裁判の可能性が高まっていたが、引き続き米国内では「トランプ礼賛本」がベストセラーの状態であり、「ウォーターゲート事件の再来」はなさそうというのがメインシナリオになりつつある。日本で報じられているほど、米国人はトランプのことを嫌いではない。
また、「より与し難い」ペンスが大統領になるよりは、トランプのほうが良い、と民主党側も判断している可能性があり、弾劾にまでは至らないのではないかとの見方もある。
なお、対中東政策は、大統領が続投しようが、トランプ大統領が辞めてペンス副大統領になろうが、変わらないと見る。ペンス副大統領は敬虔なキリスト教福音派であり、トランプ大統領よりもより強力にイスラエルを支持するだろう。
イランは改めてその点が米国のアキレス腱と考えたか、強硬な姿勢を維持、ホルムズ海峡での軍事演習を実施した。
・イラン政府によるドルの購入・取得
・イランとの貴金属(金など)取引
・黒鉛、原材料及び半製品の金属、石炭、産業用ソフトウェアでのイランとの直接的・間接的な販売、供給、取引
・イラン製の敷物(ペルシャ絨毯など)と食品の米国への輸入及び特定の関連する金融取引
今回の制裁再開により、イランとのエネルギー以外のビジネスを行っている国や企業の活動に影響が出ることは間違いがなく、それ単体では原油価格の下押し要因となる。
問題は11月4日が期限とされる制裁の再開だろう。具体的には、
・イランのエネルギーセクター、保険及び引き受けサービス
・イラン産の原油や石油製品、化学製品の購入を含む石油関連取引
・イラン国営石油などの企業やイランの海運、造船セクターとの取引
・イラン中央銀行など、
・
この2つの政策は供給面で価格上昇要因と下落要因となり、価格には方向性が出難い。しかし、景気が減速する局面での原油価格の上昇は中長期的に景気の減速をもたらすため、トランプ政権の政策は価格の下落要因につながると考えるべきである。
イラン問題の今後の展開は複数考えられるが、最もあり得そうなのが、中間選挙で共和党が勝利し、イランとの緊張緩和に動く(ユダヤ人票を意識する必要がなくなる場合(供給懸念緩和で原油価格の下落要因。ただしさらに苛烈になる可能性もある)、民主党が上下院とも過半数を確保しイラン制裁を緩和する場合(核協議再開による供給懸念緩和で原油価格の下落要因)、共和党勝利で「支持を得た」としてイランに対してさらに強硬な姿勢を取る(供給懸念がさらに強まり価格の上昇要因)あたりが想定される。
しかし、それまでは原油価格は供給を材料に高い水準を維持する可能性が高い。イランの原油供給が途絶すれば、
仮に70ドル~80ドルの原油価格が続けば、
11月が相場の転換点になる可能性が高まっていると考えているが
北朝鮮問題はトランプ大統領からすればある意味「終わった材料(支持率上昇につながらない材料)」だった。
しかし、北朝鮮は核開発を停止しておらず、
ロシアとの距離を縮めているのは、イスラエルと敵対するイランを擁護しているロシアを懐柔することで、シリアからのイラン軍撤退を促す、という意図があるためと考えられる。
よってロシアとの関係改善は、ある程度中東情勢の緊張緩和に寄与すると期待される。原油の価格面では下押し材料となるだろう。
欧州はかつての最も親密な同盟地域だったが、民主主義の傾向が強く、リベラルな雰囲気が強いこの地区とトランプ大統領は反りが合わない。この地区との対立は貿易問題での対立を激化させ、需要面で価格にマイナスに作用すると予想される。
短期的には投機筋動向が価格に影響を与えやすいが、
WTI・
中長期的には中国の人口ボーナス期が2030年頃まで続く事、
なお、EVが普及して原油需要は2035年~
同様に、補助金のサポートが必要なバイオ燃料が化石燃料に取って代わるシナリオも想定し難い。
これに加えて、軽量化目的の樹脂利用(化学製品向け需要の増加)なども期待できること、液体燃料は保存や輸送の観点からみて依然割安であり、アフリカなどの新興国では引き続き利用されると見られることから、2035年に「需要の伸びは鈍化」するものの、
実際に減少に転じるのは世界的に人口伸びの鈍化が実感される頃(2050年頃か)になると見る。
この見通しの上昇・下落の両リスクとなり得る材料として、ジャーナリスト殺害に対する批判に反発して、ムハンマド皇太子が原油の輸出を停止して原油供給が途絶、価格も高騰する場合が考えられる(それは本当に最終手段なので発生の可能性は極めて低いが)。
原油供給が途絶すれば、まず原油価格が上昇するほか、モノの輸送ができなくなるため各地で商品価格が高騰することになる。そしてその価格高騰が需要を減少させ、最終的には景気後退に陥るというシナリオだ。
しかし、もしそこまでいきそうになったら、さすがにサルマン国王はムハンマド皇太子を更迭するだろう。
今まで、サウジアラビアはそのようなことをする国ではなかったはずだが、実務のトップが代われば方針も変わってしまうということなのだろう。そのリスクは意識しなければならない。
この見通しの上昇リスクを現物の需要・供給に分けてみてみると、需要面は原発事故などの突発事象で他のエネルギーを原油で代替せざるを得なくなった時がこれに当たるが、これはなかなか想定し難い。
供給面は、以下のようなものが上昇リスクと考えられる。
1.中東情勢不安の顕在化
2.PDVSA(ベネズエラ)の生産停止
3.上流部門投資の低迷(徐々に再開)
この中で顕在化の可能性が高まっているのが1.と2.だ。
1.については米国・サウジ・イスラエルvsロシア・
そして、イラン産原油を一滴も買うな、という相当強硬な政策が採用されている。それが実際に可能とは思えないが、この結果、イランは核合意離脱並びにホルムズ海峡封鎖オプションを誇示せざるを得ず、それだけで価格は上昇している。
また、イランからすればこれは従来からこの地域に存在する、シーア派とスンニ派の争いである。今までと違うのが、サウジアラビアがイスラエルと一時的に連携する可能性があることだ。
これにクルド人vsトルコ・イラン・シリア・イラク、
さらに、東西分裂状態が続くリビアで原油生産が安定して増加する可能性が低いことも、供給不安を高めるだろう。
2.については5月の選挙でマドゥロ大統領が再選を果たし、
PDVSAの生産が完全に停止すれば恐らく原油価格は10ドル単
1.と2.の違いは、1.
1.の場合、
金融面・政策面では、以下の要因が上昇リスクとなる。
1.米金融規制緩和
2.米国の金利上昇があまりに急であることを受け、
3.2.
2.はトランプ大統領が金融政策に介入を始めたため、俄かにその可能性が意識されている。そうでなくとも来年の春ごろまで利上げが継続されれば、そこから先は打ち止め(一旦様子見)となる可能性が高い。
下落リスクは需要面は何かしらの信用リスクが顕在化することが材料となる。
1.中国の金融市場・住宅市場正常化推進加速
2.米国内インフレ発生による利上げペースの加速
3.地政学的リスク(特に需要面では欧州の混乱)の顕在化
4.北朝鮮戦争の開戦や中東情勢悪化を受けたリスク回避の動きの
強まり
5.株価の調整
6.トランプ政権の保護主義政策推進
7.価格上昇に因る需要の減少(レーショニング)
8.トルコ問題の新興国への拡大による、新興国需要の減少
9.ベネズエラをはじめとする新興国のデフォルト
1.の中国の金融市場・住宅市場正常化は不採算の国家プロジェクトを見直すなど緩やかに調整が起きているが、景気をクラッシュさせるほどのものにはなっていない。
2.については原油高の進行に伴うインフレ懸念の高まりが顕在化していたが今のところ後退している。しかし、トランプ政権の関税強化が国内の物価を押し上げる可能性もあるため、このリスクが顕在化する可能性は以前よりも高い。
ただ、潜在成長率の低下もあってこれ以上長期金利は急騰しない、との見方もあり引き続き先行きはグレーだ。
4.はリスクシナリオであるが、米朝首脳会談の結果を受け、目先の開戦リスクは後退した。しかし、交渉は今後も継続する見込みであり、どのように転ぶかはわからない。1つ確実なのは、同問題の
解決に向けて日本の負担は相当重くなるということだ。
中東についてはイランと米国は挑発の応酬となっている。しかし、石油製品価格の上昇が米国民からの支持率を押し下げる可能性があるため、ここにきてイランに対する米国のトーンは若干後退している。
しかし、イランは(国民向けのポーズもあってか)強気の姿勢を崩していないため、しばらく緊張状態は続くだろう。
イランと米国が欧州やロシアのとりなしで交渉のテーブルに着く、というのが希望的観測を含めたメインシナリオだが、この可能性は中間選挙終了まではほぼゼロなのではないか。
5.は株価は投機の動きを示す指標であり、ここに調整圧力が高まれば高値圏にあり記録的な水準まで積み上がっている投機の手仕舞い売りが加速する可能性がある。原油価格の上昇に伴う長期金利の上昇が、そのきっかけになる可能性はある。
6.は同盟国に対しては事前の期待通り常識的な落としどころを探る動きになりつつある。しかし選挙まで「戦う大統領」のポーズを示しておかなければならないため、何かしらの果実を得るまで関税問題は解決しないだろう。
7.は保護主義政策の拡大で世界的に景気の拡大ペースの鈍化が懸念されている中で原油価格が高騰していることは、消費者がこの価格高騰に耐えられない可能性が高まることを示唆している。顕在化の可能性が高いリスク要因となってきた。
9.は比較的現実のものとなるかもしれない。中国はベネズエラに対して622億ドル程度の融資(The Inter-American Dialogue調べ)をしていると考えられ、これは1,
仮にデフォルトしたり、政権が倒れた場合、ベネズエラの次期大統領がこの契約は無効として、
この場合、中国国家開発銀行や中国輸出入銀行の負担となり、最終的には中国政府の負担となる。崩壊の危機に直面しているベネズエラであるが、これ以外の国もデフォルトする可能性はあるため、氷山の一角ともいえる。今のところベネズエラ問題のみで中国が崩壊するとみる向きは少ないが、そのリスクは無視できない。
供給面は、以下の要因が主な下落リスクシナリオだ。
1.北米の増産加速
2.OPECの出口戦略が意識される
3.イスラエルを中心とした中東情勢絵不安でサウジアラビアやイランなどの足並みが揃わず、OPECの結束が崩壊する場合
1.は米国のパイプラインのキャパシティ問題もあり、増産ペースは鈍化している。原油価格が採算ラインに乗ってから増産が始まるまでの時間差や新しいパイプラインの稼働時期を考えると、再び増産ペースが加速するのはQ418になってからだろう。
足元、2.と3.が合わせ技で顕在化しつつある。
石炭価格はじりじりと水準を切り下げながら、高値圏での推移を続けている。中国の国内の生産が減少しているうえに北朝鮮の制裁が続いていることが影響している。価格の減速は、価格に対する説明力が高い、「中国の景況感の鈍化」が影響していると見る。
北朝鮮への制裁解除は当面ない見込みだが、中国が米国にゆさぶりをかける目的で解除する可能性もなくはない(この場合、さらに米国が中国に制裁を科す可能性がある上、米国と関税関連で共闘できると考えていた欧州や日本の協力が得られなくなるため、その可能性は低いが)。
また、12月にCOP24(
この状況で中国は脱退しない方針を打ち出しており、「対米協調」を目的として積極的に石炭使用や鉱山向け融資を絞る可能性もあり得る。このリスクは小さくなく石炭供給懸念を通じて石炭価格を高止まりさせるとみている。
---≪LME非鉄金属≫---
LME非鉄金属価格は総じて軟調な推移となった。
非鉄金属の最大消費国である中国の構造的な景気減速、米国の利上げ継続を受けた実質金利上昇、並びに新興国からの資金流出観測が強まっていること、
しかしその一方で、中国政府は景気を軟着陸させるために、預金準備率を引き下げたり、公共投資などの財政政策に傾斜せざるを得なくなってきていることが需要を押し上げること、
以上から、非鉄金属価格は軟調ながらもしばらくは底堅い推移になると考えている。
貿易戦争への懸念は、同盟国に対しては一定の譲歩を引き出しつつ緩和の方向に向かっているが、中国に対する制裁は覇権国家を競う上での制裁と考えられるため、長期化するだろう。
先日のペンス副大統領のスピーチは、明確に経済面で中国に宣戦布告しているのと同じである。これはトランプ政権というよりも、議会共和党の意向と考えたほうが良い。
そしてこうした制裁の影響は顕在化しつつある。中国工業部門利益は、年初来累計でみても1-8月期は前年比+16.2%
中国製造業PMIの輸出向け新規受注が制裁問題が取り上げられる
ただし、利上げを継続する中で米国景気が失速し、国民からの不満が高まる可能性がある2019年末頃が、
ではいつまで制裁が続くかといえば、具体的には、中国の景気拡大が失速して米国と覇権を争えるような状態になくなる、中国が世界シェアを取りに行こうとしているハイテク分野の内製化をあきらめる、人民元高を許容する(バブル崩壊時の日本と同じ)、といった明確な成果があるまで継続するのではないか。
結局、工業金属の最大消費国である中国への制裁は緩和はすれども継続する見込みであるため、非鉄金属需要にとってマイナスに作用することは避けえない。
また、中国の構造的な景気の減速、循環的な減速、保護主義政策に対抗するための人民元安誘導が資本流出を招き、その他の新興国にも影響が出ること、なども価格を下押ししよう。
トランプ大統領弾劾裁判の可能性が高まっていたが、引き続き米国内では「トランプ礼賛本」がベストセラーの状況であり、「ウォーターゲート事件の再来」はなさそうというのがメインシナリオになりつつある。日本で報じられているほど、米国人はトランプのことを嫌いではない。
なお、構造的に工業金属需要が増加し、価格が上昇するのはおそらく次の需要のけん引役となるインドが人口ボーナス期入りする20
短期的には投機筋の動向が重要になるが、
投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は181.
しかしこの買戻しによって枚数ベースの買戻しは6月の「米中貿易ショック」の水準まで戻っている。価格は追いついていないが、投機の買戻しは一旦一巡しており、そろそろ投機的な上昇圧力が緩和すると見ている。
中長期的な見通しは人口動態が重要になるが、中国の人口ボーナス期は2030年頃まで続く事、
なお、アジア開発銀行は2016年~
一帯一路構想は「中国の周辺国の実効支配」を目的とするものであることは明確であり、このまま世界中がすんなりこれを受け入れるかは微妙であり、実際パキスタン、ネパール、ミャンマーの水力発電プロジェクトが相次いでキャンセルになっている。マレーシアの鉄道案件も先送りとなった。
現実は、貧困国に資金を貸し出し、返済がなければ担保としてその土地や港湾を召し上げる、というバブルのころに日本で問題になったことを国家として行っている。老練なマハティールは中国の戦略の意味を理解しているということだ。
また、2018年の軍事費も前年比+8.1%の1兆1,
これらは中国と対立するインドの影響によるものと考えられるが、一方でロシアはインドに対して中国への協力を促すなど極めて政治的な色彩が強まっており、一帯一路構想の質(たち)の悪さが明らかになってきている。
しかし、そもそも中国自身の資金繰りが十分なのか、という懸念は残る。事実が明らかにはなっていないが、中国の地方政府の金繰りは厳しく火の車との報道も流れ始めた。もし地方政府が連鎖的にデフォルトするようなことがあれば、その場合にはグローバル危機に突入することになるが...。
この見通しの上昇・下落の両リスクとなり得る材料として、ジャーナリスト殺害に対する批判に反発して、ムハンマド皇太子が原油の輸出を停止して原油供給が途絶、価格も高騰する場合が考えられる(それは本当に最終手段なので発生の可能性は極めて低いが)。
原油供給が途絶すれば、まず原油価格が上昇するほか、モノの輸送ができなくなるため各地で商品価格が高騰することになる。そしてその価格高騰が需要を減少させ、最終的には景気後退に陥るというシナリオだ。
しかし、もしそこまでいきそうになったら、さすがにサルマン国王はムハンマド皇太子を更迭するだろう。
今まで、サウジアラビアはそのようなことをする国ではなかったはずだが、実務のトップが代われば方針も変わってしまうということなのだろう。そのリスクは意識しなければならない。
この見通しの上昇リスクは需要面では、
1.中国の財政出動並びに住宅価格上昇容認
2.環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、
3.トランプ政権のインフラ投資計画実施
などが考えられる。
1.は米国の経済制裁を受けて、構造的な景気の軟着陸を目指すには内需刺激しかなくなっており、預金準備率の引き下げや、住宅セクターの再度の過熱を容認する可能性は排除できなくなっている。
市場はEVブームに沸いているが、コバルトの壁に加え、
ここまでのニッケル価格の上昇はEVブームというよりは中国の住
供給面は個別性が強いが、
1.大規模鉱山の減少に伴う安価な資源確保環境の悪化(コストを掛ければ採掘できる。リサイクルの充実は必須)
2.中国の環境規制強化に伴う減産の継続
3.石炭価格上昇による生産コスト(電力コスト)の高止まり
4.労使交渉動向
5.Rusalに対する制裁が長期化し供給懸念が強まる場合
4.
5.はすでに顕在化してしまったリスクだが、特にアルミ・ニッケル・パラジウムへの影響が大きい。
金融面・政策面では、以下が主な上昇リスク要因だ。
1.米金融規制緩和
2.米国の金利上昇があまりに急であることを受け、
3.2.
2.はトランプ大統領が金融政策に介入を始めたため、俄かにその可能性が意識されているが、日銀の政策変更によってむしろ米長期金利に上昇圧力がかかっており、その影響は限定されている。
下落リスクは多く、以下があげられるが主に信用リスクの拡大が要因の軸となる。
1.中国の金融市場・住宅市場正常化推進加速
2.米国内インフレ発生による利上げペースの加速
3.地政学的リスク(特に需要面では欧州の混乱)の顕在化
4.北朝鮮戦争の開戦や中東情勢悪化を受けた、リスク回避の動きの強まり
5.長期金利の上昇
6.5.に付随するが株価の調整
7.米輸入規制強化並びにそれに対する報復
8.トルコ危機や米利上げの影響を受けた新興国需要の減少
9.ベネズエラをはじめとする新興国のデフォルト
1.の中国の金融市場・住宅市場正常化は不採算の国家プロジェクトを見直すなど緩やかに調整が起きているが、景気をクラッシュさせるほどのものにはなっていない。
2.については原油高の進行に伴うインフレ懸念の高まりが顕在化していたが今のところ後退している。しかし、トランプ政権の関税強化が国内の物価を押し上げる可能性もあるため、このリスクが顕在化する可能性は以前よりも高い。
ただ、潜在成長率の低下もあってこれ以上長期金利は急騰しない、との見方もあり引き続き先行きはグレーだ。
4.はリスクシナリオであるが、米朝首脳会談の結果を受け、目先の開戦リスクは後退した。しかし、交渉は今後も継続する見込みであり、どのように転ぶかはわからない。1つ確実なのは、同問題の解決に向けて日本の負担は相当重くなるということだ。
中東については今のところ落ち着いているが、イランが米制裁に対してどのように反応するかに今後の動向は依拠することになる。欧州やロシアのとりなしでイランと米国が交渉のテーブルに着く、というのが希望的観測を含めたメインシナリオだが、この通りになるかどうかは正直五分五分だろう。
6.は株式市場は投機の動きを示す指標であり、ここに調整圧力が高まれば高値圏にあり記録的な水準まで積み上がっている投機の手仕舞い売りが加速する可能性がある。
7.は同盟国に対しては事前の期待通り常識的な落としどころを探る動きになりつつある。しかし選挙まで「戦う大統領」のポーズを示しておかなければならないため、何かしらの果実を得るまで関税問題は解決しないだろう。
8.はトルコ危機を発端に新興国通貨安となり、米利上げ継続観測や中国に対する制裁による中国景気減速懸念を受け、新興国通貨安が加速していることはこれらの国の財政状況を悪化させ、インフラ投資などの減速を誘発するが、
9.は比較的現実のものとなるかもしれない。中国はベネズエラに対して622億ドル程度の融資(The Inter-American Dialogue調べ)をしていると考えられ、これは1,
仮にデフォルトしたり、政権が倒れた場合、ベネズエラの次期大統領がこの契約は無効として、
この場合、中国国家開発銀行や中国輸出入銀行の負担となり、最終的には中国政府の負担となる。崩壊の危機に直面しているベネズエラであるが、これ以外の国もデフォルトする可能性はあるため、氷山の一角ともいえる。今のところベネズエラ問題のみで中国が崩壊するとみる向きは少ないが、そのリスクは無視できない。
---≪鉄鋼原料≫---
中国向け海上輸送鉄鉱石スワップ価格はまちまち、原料炭スワップ先物は小幅下落、鉄鋼製品価格は高安まちまちとなった。
株価の急落によるリスク回避姿勢の強まりと、景気の急減速を回避する目的で中国政府が経済対策を実施するとの見方(すでにいくらかの対策が講じられている)が交錯した形。
鉄鉱石価格は高値圏でもみ合うものと考える。そもそも季節的に中国の生産が減少、輸入が増加する時期に当たること、米国の制裁はあるものの国内需要の刺激や冬場の鉄鋼生産抑制継続による鉄鋼製品価格の高止まりが、投機的な観点での鉄鉱石買いを誘うと考えられることが背景。
ただし、インフラ投資バブルを誘発するほどの公共投資を中国が継続することは、国内の評価的にも、資金繰り的にも困難と考えられること、
しかし、減産は冬の間続くため、政治的なイベントリスクの顕在化(Brexitなど)がなければ、
貿易戦争への懸念は、同盟国に対しては一定の譲歩を引き出しつつ緩和の方向に向かっているが、中国に対する制裁は覇権国家を競う上での制裁と考えられるため、長期化するだろう。
先日のペンス副大統領のスピーチは、中国に対する宣戦布告といっても言い過ぎではない。
具体的には、中国の景気拡大が失速して米国と覇権を争えるような状態になくなる、中国が世界シェアを取りに行こうとしているハイテク分野の内製化をあきらめる、人民元高を許容する(バブル崩壊時の日本と同じ)、
現在、この制裁の効果は徐々に顕在化し始めているようだ。今週発表された中国の工業利益は、単月で前年比+9.2%の5,
年初来累計でみても1-8月期は前年比+16.2%の4兆4,
今年の鉄鉱石価格の上昇は、
実際、中国最大の鉄鋼生産地区である河北省の高炉稼働率は昨年後半から急速に落ち込み60%まで低下、その後85%
しかし、鉄鋼製品と鉄鉱石の価格、鉄鋼原料から算出されるコストベースの鉄鋼製品価格を比較すると、明らかに鉄鋼製品価格はオーバー・バリューであり、鉄鋼製品と鉄鉱石の価格差の拡大は、「鉄鋼製品先物の売りと鉄鋼製品買い」を促し、徐々に持続可能な水準に収れんするものと考えられる。
なお、鉄鉱石と鉄鋼製品のスプレッドについては、鉄鋼製品価格の下落でスプレッドが縮小すると見ていたが、中国の鉄鋼需要の減速よりも供給の減少の影響による需給タイト化で鉄鋼製品価格が高止まりしており、下落が顕在化する前に冬場に突入するため、鉄鉱石価格が上昇してスプレッドが縮小する可能性のほうが高まっていると見る。
直近の統計では、鉄鉱石在庫が前週比+150万トンの1億4,
鉄鋼製品在庫が前週比▲49.1万トンの1,044.6万トン(
長期的な見通しは人口動態が重要になるが、中国の人口ボーナス期は2030年頃まで続く事、
なお、アジア開発銀行は2016年~
一帯一路構想は「中国の周辺国の実効支配」を目的とするものであることは明確であり、このまま世界中がすんなりこれを受け入れるかは微妙であり、実際パキスタン、ネパール、ミャンマーの水力発電プロジェクトが相次いでキャンセルになっている。マレーシアの鉄道案件も先送りとなった。
現実は、貧困国に資金を貸し出し、返済がなければ担保としてその土地や港湾を召し上げる、というバブルのころに日本で問題になったことを国家として行っている。老練なマハティールは中国の戦略の意味を理解しているということだ。
また、2018年の軍事費も前年比+8.1%の1兆1,
これらは中国と対立するインドの影響によるものと考えられるが、一方でロシアはインドに対して中国への協力を促すなど極めて政治的な色彩が強まっており、一帯一路構想の質(たち)の悪さが明らかになってきている。
しかし、そもそも中国自身の資金繰りが十分なのか、という懸念は残る(もしその場合にはグローバル危機に突入することになるが...)
この見通しの上昇・下落の両リスクとなり得る材料として、ジャーナリスト殺害に対する批判に反発して、ムハンマド皇太子が原油の輸出を停止して原油供給が途絶、価格も高騰する場合が考えられる(それは本当に最終手段なので発生の可能性は極めて低いが)。
原油供給が途絶すれば、まず原油価格が上昇するほか、モノの輸送ができなくなるため各地で商品価格が高騰することになる。そしてその価格高騰が需要を減少させ、最終的には景気後退に陥るというシナリオだ。
しかし、もしそこまでいきそうになったら、さすがにサルマン国王はムハンマド皇太子を更迭するだろう。
今まで、サウジアラビアはそのようなことをする国ではなかったはずだが、実務のトップが代われば方針も変わってしまうということなのだろう。そのリスクは意識しなければならない。
上昇リスクについては、以下のようなものが考えられる。
1.中国の財政出動並びに住宅価格上昇容認
2.一帯一路構想が市場予想を上回るペースで実施される場合
3.米国のインフラ投資計画が実際に実施される場合
1.は米国の経済制裁を受けて、構造的な景気の軟着陸を目指すには内需刺激しかなくなっており、預金準備率の引き下げや、住宅セクターの再度の過熱を容認する可能性は排除できなくなっている。
2.はそのプロジェクトの質の悪さから導入を見送る国が増えており、中国自体の資金繰りの問題もあって以前ほど高いリスクではなくなってきた。
3.は支持率低下に喘ぐトランプ政権が人気取りのために実施する見込みだ。しかし、そもそも好調な米景気をさらに過熱させるものであり、将来の価格下落幅を拡大することが予想される。
下落リスクは信用リスク系のものが多いが以下が主なところだ。
1.中国の住宅バブル崩壊
2.中国のインフラ投資が財政悪化で規模が期待ほどにはならない場合
3.米利上げぺースの加速によるドル高で新興国からの資金流出が加速した場合
4.何らかの理由で北朝鮮に対する制裁が解除され、原料炭価格が下落する場合
5.北朝鮮、中東情勢不安が世界的にリスク回避姿勢を強め、金融市場の混乱が実態経済に悪影響を及ぼす場合
6.世界的な株価の調整によるリスク回避の動きの強まり
7.米国の進める保護主義政策の拡大
8.トルコの政情不安が新興国通貨安(資本流出)を通じて、新興国需要の減速につながる場合
9.ベネズエラをはじめとする新興国のデフォルト
10.ジャーナリスト殺害に対する批判に反発して、
4.の可能性は出てきたが、核放棄を行わない限り制裁は継続の方針である。しかし、米国が体制保証を認めた以上、今後は北朝鮮が国際社会に復帰する方向性に進む可能性が高く、時期は不明だが、制裁が解除される可能性は高まっているとみている。
首脳会談のスケジュールを見るに、年明け以降の解除の可能性が高いと考える(逆に言えば年内は解除はなしか)。
5.はリスクシナリオであるが、米朝首脳会談の結果を受け、目先の開戦リスクは後退した。しかし、交渉は今後も継続する見込みであり、どのように転ぶかはわからない。1つ確実なのは、同問題の解決に向けて日本の負担は相当重くなるということだ。
中東については今のところ落ち着いているが、イランが米制裁に対してどのように反応するかに今後の動向は依拠することになる。欧州やロシアのとりなしでイランと米国が交渉のテーブルに着く、というのが希望的観測を含めたメインシナリオだが、この通りになるかどうかは正直五分五分だろう。
7.は常識的な落としどころを探る動きになる、
関税引き上げは消費税引き上げのような緊縮財政と同様の経済効果をもたらすため、景気には明らかにマイナスだ。今のところ、中間選挙を睨んだ対策であるため、目に見える効果が上がらない限りは解除はしないだろう。
結果、中国国内の鉄鋼製品価格を押し下げ鉄鉱石価格の押し下げ要因となるだろう。
9.は比較的現実のものとなるかもしれない。中国はベネズエラに対して622億ドル程度の融資(The Inter-American Dialogue調べ)をしていると考えられ、これは1,
仮にデフォルトしたり、政権が倒れた場合、ベネズエラの次期大統領がこの契約は無効として、
この場合、中国国家開発銀行や中国輸出入銀行の負担となり、最終的には中国政府の負担となる。崩壊の危機に直面しているベネズエラであるが、これ以外の国もデフォルトする可能性はあるため、氷山の一角ともいえる。今のところベネズエラ問題のみで中国が崩壊するとみる向きは少ないが、そのリスクは無視できない。
10.は鉄鉱石・鉄鋼原料に限った話ではない。
---≪貴金属≫---
金・銀価格は堅調な推移となった。イタリアの財政問題やサウジアラビアのジャーナリスト殺害問題を受けた中東情勢の混乱を受けて安全資産需要が高まったため。
PGMは大幅に上昇。
金価格は再び高値圏でもみ合うものと考える。サウジアラビアのジャーナリスト殺害問題やイタリアの財政問題、
また、欧州の金利上昇や米利上げ継続観測を背景に実質金利が8年振りの高水準となっており金銀のベース価格を押し下げていることも上昇余地を限定すると考える。
なお、金価格は、地政学がフルに影響すれば1,
ただし、米国の利上げが来年の春に終了し、原油価格も高止まりを続けるようであれば実質金利が低下し、ベース価格が上昇することになるため米金融政策、原油価格動向に価格が左右される環境にあることは変わりない。
なお、地政学的リスクの影響がないとすれば、実質金利で説明可能な水準である1,050ドル程度までの下落はあると考える。
銀は、Silver Instituteなどの分析では供給の減少と電気製品向けの需要増加で供給不足になっていると指摘されているが、それよりは金価格動向や貿易戦争の影響が強く意識され、対金で軟調な推移となっている。
今後についても金価格が軟調に推移することから水準を切り下げる動きになると考える。
足元、
しかし、相関性の高い中国鉱工業生産との回帰分析結果は、現在のレシオが75程度であることを示唆しており、
仮にその水準までの低下があるとするとチャート的にはさらにレシオの下げが予想されるため、この場合銀価格には対金で上昇圧力が強まることになる。
金銀レシオが80である前提であれば、
金銀レシオが74であれば、17.6ドル、15.5ドルとなる。
短期的な価格動向を占う上で参考になる投機筋の売買動向は、10月16日時点で金のロングが+9,454枚の189,
先週は株の上昇で安全資産売りの流れが強まっていたが、中東情勢不安などもあってショートの買戻しとロングの増加が顕著になった
PGM価格は金銀価格が上昇余地を試す中、
また、ディーゼル自動車比率の高い欧州景気の減速(プラチナ需要減速)、ガソリン自動車比率の高い米国景気の拡大継続(パラジウム需要加速)で、プラチナ・パラジウムレシオはしばらく低下を続けると予想される。
ただ、需給がタイトなパラジウムは投機商品的な色彩が強いプラチナに比べると割高に推移するだろう。
米国の自動車販売は、9月が米自動車販売は1,740万台(
8月の米消費者信頼感は回復、
FRBの利上げも継続する見込みであり、自動車メーカーのディーラー向けのインセンティブ負担も重くなることが予想され、自動車関税引き上げが宣言通り実施されるのであれば、自動車販売は減速する可能性が高く、PGM価格を下押しすると予想される。
中国の9月の自動車販売(工場出荷台数)は前年比▲11.55%
弊社は需給面の見通しに関しWPICの見通しを参考にしているが
自動車向けの触媒需要が前年比▲21万オンスとなるものの、
この結果、地上在庫は249万5,
なお、南アフリカのPGM生産指数は8月時点で91.2(
10月16日現在、CFTCのプラチナポジションはロングが+
プラチナのロングポジションはリーマンショック後の金価格上昇を受けて積み上がってきたが、欧州のディーゼル不正を切っ掛けに需要観測が減速、さらに米保護主義政策の推進を受けた需要減少観測で減少し、低迷している。
プラチナのネットロングは、過去5年で初めてマイナス圏に沈んでおり、さすがにこのポジションに買戻し圧力が掛かることは否定できない。
パラジウムのロングポジションは減少を続け、この5年の最低水準まで低下した。ショートポジションもこの5年の最低水準である。今後は景気自体や主な用途である自動車の販売動向にポジション動向が左右されると予想されるが、米利上げや米国・中国の自動車販売減速から見通しはそれ程強気ではない。
---≪農産品≫---
シカゴ穀物市場は小動きだった。トルコやイタリア情勢を受けたリスク回避のドル選好が続き、ドルが高止まりしたことが価格を下押ししたが、大豆の収穫の遅れや冬小麦の作付け遅れが意識された。
穀物価格は引き続き政治動向に振らされる形となるが、トランプ政権がエタノールの規制緩和に動く方針であるため、トウモロコシのエタノール向け需要が増加すると見られていることが他穀物価格をけん引し、上昇余地を探る動きになると考える。ただし、北米が総じて豊作であること、ハーベストプレッシャーから頭重い推移になると考える。
トウモロコシの作柄は(68%→68%)、大豆の作況(66%→
なお、冬小麦の作付けが始まったが、72%(65%)
ただ、「小麦は雑草」
また、穀物ではないが綿花の収穫は39%(32%)
10月の米需給報告では、
10月16日付のCFTC投機筋ポジションは、
◆本日のMRA's Eye
「プラチナ・パラジウムレシオ低下の背景」
世界の自動車販売は世界の循環的な景気減速に加え、米国の利上げや、中国の住宅セクターの減速を受けて主要国全体での前年比伸び率が明確に鈍化を始めている。結果、
欧州ではEuro 6d-TEMPの段階的導入により、Noxの制御に関してPGMを用いない、SCR技術への移行が予想されるため、
その一方でプラチナ価格の下落を受けて主要生産国である南アフリカはPGM生産を減少させており、
弊社は需給面の見通しに関しWPICの見通しを参考にしているが
自動車向けの触媒需要が前年比▲21万オンスとなるものの、
この結果、地上在庫は249万5,
なお、南アフリカのPGM生産指数は8月時点で91.2(
しかしここで注目すべきは、プラチナとパラジウムの値動きに差が発生していることだ。具体的にはプラチナは下落し、パラジウムが上昇する展開が鮮明になっている。
この背景には、
グラフはプラチナとパラジウム、
なお、中国や日本でもガソリン自動車が主体であるが、中国の需要は辛うじて前年比プラスを維持している一方、日本の自動車販売は規模的な影響が大きくないためと考えられる。しかし、それ以上に市場が米国の景況感を材料に売買をしている可能性が高いことを示唆している。
別の視点では、プラチナ在庫をパラジウム在庫で割った「プラチナ・パラジウム在庫レシオ」はこの5年上昇を続けており、それに呼応する形でプラチナ・パラジウムレシオも低下している(ある程度在庫水準の相対的な差はプラチナ・パラジウムの相対価格差に影響)。ただし、在庫レシオは高止まりしており、そろそろプラチナ・パラジウムレシオが上昇に転じてもおかしくない。
また、投機筋のポジションを見ると、プラチナに関してはこの5年に1回もなかった「ネット売り越し」に転じていることが分かる。パラジウムの買戻しが進んでいることを考えると、今後投機的な視点でプラチナに買戻しが入る可能性は低くないと予想する。
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◆主要ニュース
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・9月日本全国百貨店売上高 前年比▲3.0%の4,198億円(前月▲0.2%の4,118億円)
東京都区部百貨店売上高+0.3%の1,188億円(+1.6%
・9月日本工作機械受注改定 前年比+2.9%の1,534億5,400万円(前月5.1%の1,403億9,100万円)
外需+1.1%の890億4,200万円(▲4.6%
・9月独生産者物価指数 前月比+0.5%(前月+0.3%)、前年比+3.2%(+3.1%)
・10月ユーロ圏消費者信頼感速報 ▲2.7(前月改定 ▲2.9)
・トルコ エルドアン大統領、「カショギ氏の殺害は、サウジで入念に計画された作戦。サウジ国王に殺人に関わった全員処罰を求める。」ムハンマド皇太子に関しては言及せず。
・米トランプ大統領、「10%程度の中間層減税を行う。
・米トランプ大統領、「カショギ氏の死亡に関するサウジ政府の説明で、これまで聞いてきたことに私は満足していない。かつてないほどひどい隠蔽だ。武器輸出停止などの制裁については議会の判断に任せる。」
・米ポンペオ国務長官、「
・イタリア コンテ首相、「イタリア予算にEUが変更要求をしてきても、それは受け入れられない。」
・英メイ首相、「EUとの離脱交渉の95%は決着している。」
◆エネルギー・メタル関連ニュース
【エネルギー】
・サウジアラビア ファリハ石油相、「OPECは極力大量に生産する姿勢。」
・ムニューシン財務長官、「イランの原油輸出はいずれゼロに。」
・API石油統計
原油在庫+9.88MB
クッシング+0.97MB
ガソリン▲2.85MB
ディスティレート▲2.35MB
・DOE米在庫統計市場予想
原油+3,523KB
ガソリン▲1,425KB
ディスティレート▲1,682KB
稼働率+0.09%
【メタル】
・インドネシア政府、PT Surveyorsの停止で錫輸出に影響。輸出前にICDXで取引を行わなければならず、
◆主要商品騰落率
【上昇率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.ICEアラビカ ( その他農産品 )/ +2.93%/ ▲4.04%
2.NYM米天然ガス ( エネルギー )/ +2.71%/ +9.14%
3.CME豚赤身肉 ( 畜産品 )/ +2.54%/ ▲24.03%
4.パラジウム ( 貴金属 )/ +1.79%/ +7.59%
5.プラチナ ( 貴金属 )/ +1.24%/ ▲10.29%
【下落率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
68.ICE Brent ( エネルギー )/ ▲4.65%/ +13.83%
67.NYM WTI ( エネルギー )/ ▲4.51%/ +9.32%
66.NYM RBOB ( エネルギー )/ ▲3.91%/ +1.83%
65.DME Oman ( エネルギー )/ ▲3.76%/ +19.15%
64.TCM天然ゴム ( その他農産品 )/ ▲3.30%/ ▲30.14%
※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
◆主要指標
【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :25,191.43(▲125.98)
S&P500 :2,740.69(▲15.19)
日経平均株価 :22,010.78(▲604.04)
ドル円 :112.44(▲0.38)
ユーロ円 :128.98(▲0.36)
米10年債利回り :3.17(▲0.03)
独10年債利回り :0.41(▲0.04)
日10年債利回り :0.15(▲0.00)
中国10年債利回り :3.58(▲0.01)
ビットコイン :6,390.78(▲22.73)
【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :23.69(+0.12)
エネルギー :24.62(+2.68)
ベースメタル :24.13(+0.32)
貴金属 :16.01(+0.29)
穀物 :19.06(+0.06)
その他農畜産品 :27.27(▲1.07)
【主要商品ボラティリティ】
WTI :30.04(+4.31)
Brent :28.35(+4.99)
米天然ガス :32.77(+1.25)
米ガソリン :28.29(+2.71)
ICEガスオイル :18.72(+2.81)
LME銅 :21.37(+0.91)
LMEアルミニウム :32.66(▲0.08)
金 :18.34(▲0.07)
プラチナ :13.97(+0.55)
トウモロコシ :17.82(▲0.23)
大豆 :18.34(▲0.07)
【エネルギー】
WTI :66.05(▲3.12)
Brent :76.12(▲3.71)
Oman :76.23(▲2.98)
米ガソリン :183.21(▲7.46)
米灯油 :224.43(▲7.38)
ICEガスオイル :694.00(▲22.25)
米天然ガス :3.22(+0.09)
英天然ガス :69.30(▲1.23)
【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :76.12(▲3.71)
SPO380cst :466.33(▲18.96)
SPOケロシン :92.00(▲3.44)
SPOガスオイル :91.34(▲3.28)
ICE ガスオイル :93.15(▲2.99)
NYMEX灯油 :224.99(▲2.90)
【貴金属】
金 :1230.30(+8.20)
銀 :14.73(+0.17)
プラチナ :832.69(+10.21)
パラジウム :1144.20(+20.12)
※ニューヨーククローズ。
【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :6,174(▲106:6.5C)
亜鉛 :2,641(▲25:57B)
鉛 :2,017(±0.0:22C)
アルミニウム :2,016(+3:19C)
ニッケル :12,400(▲175:70C)
錫 :19,400(+200:25B)
コバルト :60,250(±0.0)
(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :6183.00(▲45.50)
亜鉛 :2666.00(+10.00)
鉛 :2003.50(+2.50)
アルミニウム :2003.00(▲7.00)
ニッケル :12395.00(▲65.00)
錫 :19250.00(+50.00)
バルチック海運指数 :1,579.00(+3.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック
【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :72.34(▲0.01)
NYMEX鉄鉱石 :71.79(+0.08)
NYMEX原料炭スワップ先物 :216.5(▲0.50)
上海鉄筋直近限月 :4,563(▲4)
上海鉄筋中心限月 :4,154(+20)
米鉄スクラップ :407(±0.0)
【農産物】
大豆 :857.50(▲1.00)
シカゴ大豆ミール :310.70(▲2.10)
シカゴ大豆油 :28.76(▲0.39)
マレーシア パーム油 :2122.00(▲23.00)
シカゴ とうもろこし :370.25(+0.75)
シカゴ小麦 :509.00(+1.00)
シンガポールゴム :142.80(+1.20)
上海ゴム :10640.00(▲65.00)
砂糖 :13.81(▲0.01)
アラビカ :121.10(+3.45)
ロブスタ :1693.00(▲3.00)
綿花 :78.99(▲1.03)
【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :54.53(+1.35)
シカゴ生牛 :112.78(▲0.03)
シカゴ飼育牛 :155.08(▲0.58)
※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。