CONTENTSコンテンツ

ハト派なFOMCを受けて軒並み高
  • MRA商品市場レポート

2023年12月14日 第2608号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「ハト派なFOMCを受けて軒並み高」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は水準を切り上げる商品が目立った。FOMCがハト派な内容となり、ドル安が急速に進行したことが背景。自国通貨建て商品はドル安・自国通貨高で下落した。

なお、LME非鉄金属は時間的に昨日のドル安を織り込めておらず、中国の中央経済工作会議で目立った経済対策が行われ無いことが確認されたため、アジア~欧州時間に掛けて軟調だった。

昨日(本日早朝)に閉会したFOMCは、想定通り利上げを見送ったが、FOMCメンバーの経済見通し、ドットチャートは前回FOMCからハト派に傾き、政策金利の引下げ回数は2回から3回に増えることとなった。

さらに、パウエル議長は記者会見で利上げをする余地は残っていると発言しつつも、初めて「利下げについて議論した」としており、利上げは想定外のことが発生した時のリスク対応のカードであり、既にメインシナリオではなくなってきたことを明確に示す形となった。

ただ、昨日のFOMCを受けてFedWatchベースでは、来年12月までに▲150bpの利下げを織り込んでおり(発生確率36.7%)、FRBの想定とは依然乖離している状況。

もちろん、米国経済の動向にもよるのだが、FRBのスタンス通りであれば市場が過剰に織り込んで居る利下げ期待との「溝」を埋める形で大きなショックが起きる可能性がある。

2024年で最も経済がシクリカルに弱体化しそうなQ324に、そのショックが顕在化するリスクがあると弊社は見ている。

ただしここを何のショックもなく通り抜けることができれば、原油などの供給が絞られている状況での景気底入れとなるため、価格にはかなり顕著な上昇圧力が掛かることになるのではないだろうか。

【本日の見通し】

本日は、昨日のFOMCがハト派と捉えられていることから、株をはじめとするリスク資産に買いが入り、長期金利低下に伴う実質金利上昇が、金などのインフレ系資産価格を押し上げることになろう。

この他の注目材料は以下の通り。各国中央銀行の政策金利発表が続く。また、自画自賛、ロシアの侵略行為を肯定するための会見になるだろうが、ウクライナ軍事侵攻以降、見送られてきたプーチン大統領の記者会見には注目したい。

・政策金利発表 英中銀、スイス中銀、ノルウェー中銀、メキシコ中銀 ペルー中銀、フィリピン中銀、台湾中銀

・11月米小売売上高 市場予想 前月比▲0.1%(前月 ▲0.1%) 除く自動車 ▲0.1%(+0.1%) 除く自動車・ガソリン +0.2%(+0.1%) 除く自動車・建材 +0.2%(+0.2%)

・米週間新規失業保険申請件数 220千件(前週 220千件)

・ロシア大統領大規模記者会見開催

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油・石油製品

昨日の原油価格は上昇した。これまでの下落ペースが速かったこともあり、割安感からの買い戻しが入ったことが影響した。

昨日のFOMCを受けたドル安も多少は材料になったが、昨日はドル安が進行する以前から買われていたため、やはりテクニカルな買い戻しだったと整理するのが適切だろう。

昨日の米石油統計は、市場予想以上に大幅に原油在庫が減少、石油製品在庫はまちまちだったが、石油製品出荷は減少が続いており、米国の景気が減速局面に入った可能性を示唆している。

今ところ米国内の石油製品出荷の減速が米国の消費減速を示唆しているが、OPECプラスの減産開始が年明け以降であるため、価格が上昇する材料が売られすぎによる買い戻し程度に止まっていること、クリスマス休暇で市場参加者が積極的に動いていないことがより価格を下押ししている。

1.OPECプラスの減産がきちんと遵守された場合2.景気減速で想定よりも早く米国が利下げに舵を切る場合3.ガイアナ危機の顕在化、ないしはガザ紛争を受けたアラブ諸国の親イスラエル国ヘの原油(ガス)供給制限

といったことがあれば、水準は切り上がることになる。労働市場の改善があれば上昇は顕著なものになろう。

しかし、金融緩和を渋り過去に見られたような「政策金利据え置き~緩やかな利下げ局面での危機発生」の場合、ないしはOPECプラスの減産遵守を促すために逆にサウジなどが増産する、という選択をした場合、Brentで60ドル程度までの下落リスクもリスクシナリオとして棄てきれない。

上述の通り、かなり上下のリスクシナリオ顕在化時の「振れ」が大きくなる可能性が高い。

ロシア情勢・中東情勢を踏まえた原油供給状況は大きく変化していないため、原油価格の「想定されるレンジ」は以下の通り。

現在は 3.の状態。今のところこの問題がイランにまで波及する展開は、確度の低いリスクシナリオの位置づけになりつつある。

こうなると市場の注目は再び減速した米ISM製造業・非製造業指数を受けた米景気の減速動向に集まることになろう。

<シナリオ別原油価格見通し>

1. 中東問題が悪化し、イランやベネズエラに対する制裁、ガイアナからの供給減少、中東諸国の親イスラエル国ヘの供給制限など、オイルショック時
Brent 90-150ドル(Q324まで景気が減速する場合)

2.OPECプラスの減産が遵守される場合
Brent 75-100ドル

3.OPECプラスの減産が遵守されない場合
Brent 65-90ドル

4.OPEC諸国が逆に増産する
Brent 55-80ドル

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

5. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)
Brent 60-90ドル

6. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)
Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次修正している。

Q423 需要の伸び横這いも供給制限は始まらず(↓調整)グローバル・リセッション、危機顕在化の場合(↓↓)OPECプラスの結束崩壊・増産合戦開始(↓↓↓)
Q124 欧米の景気後退局面入りによる需要鈍化・生産調整継続 ただし、OPECプラスの自主減産開始で年初に水準を切り上げ(→その後OPECプラスの減産が下支え)
Q224~Q324 実質金利プラス維持による景気幻想継続 製造業の循環的な回復が下支え(→)OPECプラス減産維持の場合(→)
Q324以降 景気の循環的な回復・中国の正常化(↑)OPECプラス減産維持の場合(↑↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

12月5日時点のWTIの投機筋ポジションは、ロングが▲2,721枚、ショートが+11,460枚と弱気ポジションに。

Brentはロングが▲3,570枚、ショートが+20,156枚と、こちらも弱気に転じた。

本日は、ドル安進行で、これまで短期的に売られすぎたことから買い戻しが継続すると考える。しかし、石油製品出荷の減速を見るにファンダメンタルズは強くなく、しばらくは「ドル安・原油安」の流れになると予想される。

恐らく、価格の絶対水準の訂正(上昇)があるのは、OPECプラスが実際に自主減産を始める年明け以降になるとみている。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は上昇。テクニカルに買い戻しが入ってもおかしくない水準だったため、冬場ということもあり買い戻しが入った。ただし、200日移動平均線のレジスタンスが意識されているため、上昇余地も限定されている。

欧州の在庫水準の高さを考えると、今冬に関しては数量ベースで調達が不充分、というリスクはかなり低下したと見ている。

しかし、弊社のシミュレーションの結果では、来年夏以降にガス調達が不足するリスクはまだ残存しているため、むしろ来年以降が重要になろう。結局のところ需要動向が需給を左右すると考えられる(詳細は有料のマンスリーレポート12月号で解説)。

欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続

2.LNGターミナル・ガス田・船舶の不慮の停止

3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)

4.景気減速(価格下落要因)

5.季節要因・気象状況

1.は弊社の試算では欧州が完全にロシア産ガスを排除(第三国経由でもロシア産のLNGを購入しない状態になる)できるのは2027年頃。ロシア産のLNGの輸出が阻害されなければ2025年頃と予想される。

今のところロシア産ガスの供給は実質的に制限されていないが、仮に脱ロシアが完了した場合、ロシアがこれまで供給してきた西側諸国向けのガスが「浮く」ことになる。

2022年、欧州向けにロシアが削減したパイプライン輸出量は708億立方メートルで、総輸出量9,685億立方メートルの7.3%に及ぶ。

これを他地域の需要増加で補うことは恐らく不可能であり、FID済みのプロジェクトも見直しせざるを得なくなると予想される。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

2.は、異常気象の影響による干ばつでパナマ運河の水位が低下しており、LNG輸送に障害が発生、米国産のLNGは喜望峰周りでの輸送にシフトしており、スポット価格の上昇要因に。

3.は既にロシアからの供給削減は現時点ででき得る限界まで行われているため、目先は材料になり難い。

4.は顕在化しているが、足下、欧州の統計が改善しており来年以降の需要回復が価格の押し上げ要因となる可能性が出てきた。

5.は2.とも関係するが、エルニーニョ現象中は暖冬になりやすく価格上昇方向のバイアスは強まらないと予想される。ただ、エルニーニョ現象発生後のラニーニャ現象発生はリスクとなる(2024年夏以降か)。

米メキシコ湾発のLNGのタンカーレートは、日本向け・欧州向けとも低下している。

11月27-12月3日の週のLNGトレードは、854万トン(前週753万トン)と増加、中国を除くほとんどの地区での輸入増加が影響した。

輸送中のLNG在庫は前年比+11%の410万トン。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米天然ガス価格は軟調。気温上昇見通しで。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物市場はTTFの上昇を受けて小幅に上昇。

10月のJLCの水準は11.86ドル(前月比+0.32ドル)であり、現在のスポット価格はこの水準を上回っている。

その他のアジアの国の長期契約ベースの価格は恐らくJLCと大差がないと考えられ、今年の冬場の需要期の価格はほぼJLCの水準で推移している。

今年は回避されているが、豪州は国内供給が充分でない場合、通常7月1日まで、遅くとも10月1日までにガス不足の懸念を通知し、実際に国内供給が不充分と判断された場合、次の1年間は輸出が制限される(ADGSM)。

この条項が発動された場合、スポット価格の上昇リスクとなるため、意識はしておきたい。

また、サハリン2の生産能力の低下、供給の減少はかなり前から指摘されているが、今のところ顕在化していない。多くの必要な部材は中国などを経由してロシアにもたらされている可能性があり、実は長期の供給リスクは懸念ほどではないかもしれない。

10月の中国の天然ガス生産は+4.3%の1,411万8,000トン(前月+11.6%の1,345万6,000トン)と同じ時期の過去5年の最高水準を上回っている。

11月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比+6.1%の1,095万トン(前月+15.5%の879万トン)と前年比ベースの伸びは減速したが、過去5年の最高水準を上回った。

10月のパイプラインベースの輸入は前年比+1.1%の362万トン(前月+4.9%の446万トン)と過去5年の最高水準(358万トン)を上回っているが、増加幅は急速に縮小した。

10月のLNG輸入は前年比+28.2%の516万9,000トン(前月▲3.5%の568万7,000トン)と減少し、過去5年平均に近接。

国内生産の増加と、固定インフラであるパイプラインからの供給が優先される中で、調整弁的に用いられるLNG調達需要が低下している。

ただし合計の「ガス顕在需要」は前年比+8.4%の2,290万5,000トン、年初来累計は+7.3%の2億3,632万4,000トン(前月+6.3%の2,360万3,000トン、年初来累計+7.2%の2億1,341万7,000トン)と着実に増加している。

※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

12月10日時点の日本の大手発電業者のLNG在庫は254万トン(過去5年平均245万4,100トン、大手発電業者在庫の過去5年平均は206万トン)と、先週から増加し、過去5年平均を上回った。

現在発生しているエルニーニョ現象は来年6月頃まで続く見通しであり、その影響もあって今年の北半球は記録的な暖冬が見込まれているため、この在庫水準であれば冬は乗りきれる可能性が高まっている。

本日は、冬場の調達圧力が弱まっているものの、ピークシーズンでもあるため高値を維持の公算。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP・東京ガス提示の数値を使用している。 LNG1トン=2.19立方メートル(液体)=1,360立方メートル(気体)= 46MMBtu LNG船1隻 147,000立方メートル=67,000トン 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル=7,757トン 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップは期先が小幅に下落した。ガス価格で説明可能な水準までの訂正で上昇していた期近の価格は冬場のピークということもあり、第2限月が上昇している。

現在のガス価格(JKM)との関係性を元に回帰分析を行うとNEWC価格は168ドル、±1標準偏差で100~240ドル程度までが統計的に説明可能なレベル。

期先の価格は現在の生産コストに近いことを考慮すると、期先の価格が130~140ドル程度まで再び上昇しているため、130~240ドルが説明可能なレンジであり、現在のスポット価格は価格想定レンジの下限。

ロシア問題が継続する以上、欧州が完全に脱ロシアを達成することが期待される2027年(早ければ2025年、現実的には2026年)までは、ピークシーズン中の価格上昇リスクはつきまとう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

11月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比+34.7%の4,350万6,000トン(前月+23.3%の3,599万2,000トン)と過去5年レンジを大幅に上回る水準を維持した。燃料炭の輸入が10月は減少しており、恐らく原料炭の輸入が増加したと見られる。

10月の燃料炭輸入は、ほとんどの地区で前月から減少している。最も輸入シェアが大きいのがロシアで36.3%(前月35.7%)だが、輸入量は564万トン(658万トン)と減少、シェア3位のインドネシアは23.6%の366万トン(27.6%の508万トン)と減少している。

一方、シェア2位の豪州は29.7%の461万トン(前月24.7%の454万トン)と増加している。

10月の中国の石炭生産は、前年比+4.7%の3億8,707万トン、1,248万トン/日(前月+1.3%の3億9,131万トン、1,304万トン/日)と伸びが加速、過去最高水準を上回っている。

10月の中国の電力消費量は前年比+8.6%の7,419億kwh(前月+10.1%の7,811億kwh)と伸びが鈍化した。景気減速と例年よりも気温が高いことが影響していると見られる。

本日は、ガス価格が暖冬傾向で軟調に推移する中、同様に軟調に推移するとみるがそれでもピークシーズンであることから高値は維持の公算。

◆LME非鉄金属

LME非鉄金属市場は下落した。12月11日・12日のスケジュールで中央経済工作会議が開催されたが、不動産問題に取り組み、インフラ投資を継続することも確認、前年程度(5%か)の成長計画を維持する比較的意欲的な内容だったが、追加で大規模な対策が行われる訳ではないことから、これまで対策期待先行で上昇していたため、調整売りに押された。

現状、中国が苦境を脱するには、財政出動を伴う対策と、不動産不良債権処理の進捗が必要だが、後者は過去の日本の例を見るに時間が掛かるだろう。

財政出動に多少影響を与える可能性がある、中国の信用格付引下げ見通しは、恐らく直接的に非鉄金属価格に影響を及ぼさないが、中国当局が格下げを回避するために財政規律重視の姿勢を打ち出した場合、来年の公共投資の減少観測を強め、価格の下落要因となり得る。

しかし、恐らく中国当局は景気下支え・近代化のためのインフラ投資は予算を張って継続すると考えられるため、現時点での非鉄帰属価格への影響は限定されるだろう。

中国の不動産問題は解決していないことが需要の下押し要因となっているが、中国政府が1兆元の予算を前倒ししてインフラ投資を行うなどの対策を行っていること、脱炭素の動きにともなう投資はペースが減速するものの継続が予想されること、脱中国に伴う他地区での設備投資は継続が予想されることから、期待需要も含めて、需給ファンダメンタルズはやや供給過剰~中立と見ている

そのため、中国とは直接関係ないところでのドル指数の変動が、非鉄金属価格を左右しやすい。

中国が不動産危機を乗り切ることに失敗し、中国政府が想定以上にこれまで積み上がった余剰生産能力の解消に手間取った場合、景気は長期低迷、いわゆる「日本化」が10年単位で起きる可能性が高い。

さらに労働人口がピークアウトし、かつ、西側諸国の制裁によって先端分野の発展が阻害され生産性が低下、将来的にはインフレをもたらしソ連型の国家崩壊、というシナリオも長期的には有り得る話。

就任以降の習近平国家主席の政策は、決して成功しているとは言えない。

11月の中国の貿易統計では、ベンチマークである銅地金・製品輸入は前年比+2.0%の55万566トン(前月+23.7%の50万168トン)と過去5年平均を維持した。中国の精錬銅輸入は年末にかけて増加する傾向があるが、今年は3月頃からの輸入量の回復トレンドが継続している。

11月の銅鉱石・コンセントレートの輸入は前年比+1.4%の244万3,318トン(前月+23.5%の231万トン)と過去5年の最高水準を上回った。

10月の中国の精錬銅生産は+23.8%の114万3,000トン(前月+20.7%の114万1,000トン)と過去5年の最高水準を大きく上回っている。

10月の銅スクラップの輸入は前年比+37.7%の15万5,359トン(前月+2.0%の17万283トン)と過去5年平均を維持している。

精錬銅輸入の増加と銅鉱石輸入の増加は、製造業PMIの悪化、海取引所在庫の水準が低迷していることを考えると、統計に反映されない企業在庫として取得されている可能性があると見ている。

本日は、時間的に織り込めなかったハト派なFOMCを受けたドル安進行で、買い戻しが優勢になると考える。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、大連は上昇、豪州原料炭スワップ先物は変わらず、大連原料炭価格は下落、上海鉄筋先物は下落した。

中国で中国中央経済工作会議が開幕・閉幕したが、大規模な対策実施が見送られる方針だったことから、対策期待で上昇していた鉄鋼製品価格が下落、鉄鋼原料価格も下押しされる形となった。

なお、中央経済工作会議では、不動産セクターのテコ入れ(国有化の後解体)、インフラ整備の強化方針継続が確認された。前者は不動産会社の整理統合を進めるため、実施過程で鉄鋼需要の下押し要因となるが、後者は需要の増加期待となるため結局、鉄鋼需要はフラット、とみてよいのではないか。

10月の中国粗鋼生産は前年比▲5.6%の8,211万トン(前月+3.0%の8,641万トン)と減速し、過去5年平均を下回った。

11月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲18.1%の61万3,940トン(前月▲13.0%の67万トン)と低迷が続き、同じ時期の過去5年の最低水準を下回る状態が続いている。

11月の中国の鉄鋼製品の輸出は前年比+43.2%の800万51トン(前月+53.3%の793万8,700トン)と過去5年の最高水準を大きく上回る状態が続いている。同時に鉄鋼製品輸出額は前年比▲11.7%の64.9億ドル(前月▲7.1%の62.9億ドル)と金額・伸び率とも前月から減速した。

輸出額を数量で割ったトン当り単価は811ドル(前月792ドル)と、11月はやや改善した。しかし引き続き年初来では最低水準となっている。欧米のPMIやISM指数の減速を見るに、中国の景況感は改善するには至らず、値引きで在庫を解消する動きが続いていると考えるのが妥当だろう。

単月の統計で判断するのは早計であるが、まだ中国の在庫調整には時間が掛かる可能性があると考えるべきだろう。

週間の鉄鋼製品港湾在庫統計は、鉄鋼製品在庫は▲20万2,000トンの955万トン(過去5年平均 933万9,000トン)と過去5年平均を上回っている。

鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比+260万トンの1億1,300万トン(過去5年平均1億3,740万トン)、在庫日数は26.4日(+0.6日、過去5年平均 32.9日)。

鉄鉱石は在庫は日数ベースでも、数量ベースでも過去5年平均を下回っており、鉄鉱石の需給はタイトで一定の在庫積み増し需要が存在する。

主要原料炭の輸入港である京唐港の原料炭在庫は+2万トンの258万トン(過去5年平均 175万6,000トン)、在庫日数は+0.1日の11.2日(過去5年平均 7.6日)と、原料炭の需給は緩和している。

本日は、中国政府の対策期待が後退していることから鉄鋼製品価格に下押し圧力が掛りやすく、鉄鋼原料価格も水準を切下げると予想。

ただし。年明け以降の季節的な鉄鋼製品在庫積増しを睨んだ、原料調達圧力の強まりで低下余地も限定されると考える。

◆貴金属

昨日の金は大幅に上昇した。FOMCがハト派な内容になり、長期金利が急低下、実質金利が低下したことが基準価格を押し上げた。なお、リスク・プレミアムは金利低下の影響もあり、小幅に低下している。

銀は大幅に上昇、PGMも株価上昇もあって水準を切り上げた。

これまで、政策金利の引き上げと共に「諸々のリスクの高まり」から、リスク・プレミアムが上昇して金価格を押し上げてきた。金リスク・プレミアムの上昇要因の主なところは、

1.米利上げによる信用不安の高まり(低格付企業・新興国)

2.ロシアに対するドル決済禁止制裁を受けた、準備金におけるドルから金ヘのシフト

3.ロシアのウクライナ侵攻

4.イスラエルとパレスチナの戦争開始による中東情勢不安並びに、テロ組織の大規模攻撃であるため、各地にテロが拡散するリスク

あたりだろう。これらと同じ事象は、ニクソン・ショック~プラザ合意~アジア危機収束まで30年近く続き、金価格に占めるリスク・プレミアムのシェアが高止まりした。

2019年基準で算出した現在のリスク・プレミアムのシェアは50%と、ほぼ上記の期間と同様の状況になっており金利水準以上にその他の要因が金価格の形成に影響を与えていることが確認できる。

現状を理解する手助けとなるため、あえて実質金利・信用リスク・その他、に分離した場合、実質金利部分が45%、信用リスク要因が20%、その他の要因が35%となった(2019年データを元にした分析結果に変更)。

直近1年間の説明力を相関係数で確認するとほとんどの項目が金価格と無相関の状態になっている。3ヵ月間の相関関係では、最も金価格に対する説明力が高いのがドル指数で▲0.69、次いでFF金利で0.65。これまで価格に対する説明力が以前よりも低下していた実質金利は▲0.53まで上昇している。

この5年間のデータを元にした分析では、FF金利±1%の変化で、金価格は±10ドル変化し、リスク・プレミアムは±160ドル変化する。

今回のFOMCでFRBは来年▲0.75%の利下げを予想しているが、市場予想は2024年は▲1.50%程度のFF金利引下げを見込んでいるため、金の基準価格は+15ドル程度の押し上げ要因となり、リスク・プレミアムは、▲240ドルの低下要因となるため、仕上がりで▲225ドルの価格低下となる。

現在の金価格は2,050ドル近辺であるが、1,800ドル程度までの下落余地があることになる。

銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。

月次のボリンジャーバンドの分析は有効に機能しているが、仮にボリンジャーバンドの下限だと75倍、上限ならば90倍程度が目処になるが、金が2,000ドルを固めた結果、を1,900ドル程度とすると22.20~26.65ドルが現在取り得る範囲といえる。

また、中国の鉱工業生産を元にすると、現在の金銀レシオは90倍程度が上限とみられる。

本日は、FOMCの結果を受けた実質金利の低下とドル安進行が一時的に価格を押し上げると考えられる。銀、PGMも強気に推移するのではないか。

なお、実際に利下げが始まると、リスク・プレミアムが低下するため金価格の下落要因に。

◆穀物

シカゴ穀物市場は下落した。アルゼンチンがペソを50%切下げたことや、輸出税の段階的廃止などが輸出市場の需給を緩和させるとの見方が広がったことが材料。

しかし、後付けの理由の感じは否めず、テクニカルな売りと整理した方が適切だろうか。

長期的な話だが、今年地中海を襲ったハリケーン(ストーム・ダニエルと命名)の影響で中東北アフリカ地域に降雨がもたらされたことは、先々の穀物供給に影響を及ぼす、サバクトビバッタの越冬を可能にし、来年以降の供給減少のリスクを高めることが懸念される。

尚、Locust Watchでは中東・北アフリカ地域でのバッタの大量発生は確認されていない。

本日は、FOMCを受けた急速なドル安で買い戻しが入ると考える。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

◆信用リスク・マクロ経済のリスク

・米国債の格下げリスク(残るMoody'sもネガティブウォッチに)、米国債格下げの動きが連鎖して、金融機関の格下げが加速、信用不安に繋がる場合。

・日本政府の財政規律の欠如、成長期待への失望から円が暴落するリスク。

・景気が想定よりも早く底入れしてインフレが再燃、あるいは景気を刺激する目的で早期の利下げが行われ資源価格が高騰、各国中銀の金融政策が再びタカ派の状態になった場合(リスク資産価格の上昇→下落リスク これは顕在化している可能性)

新興国の財政破綻、先進国も含めた債券の格下げによる金融機関・ファンドの突発的な損失拡大による信用収縮、低格付企業の破綻や、市場変動性の高まりによるファンド破綻などもリスクに(米銀格下げ検討は始まっている)。

・中国の構造的成長が終了、過剰債務や不動産問題を抱え、中国が「日本化」するリスク(この場合長期低迷で工業金属やエネルギーなどの景気循環系商品価格の下押し要因となる可能性)

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、モディ支持率の低下による近代化投資の遅れ、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

◆地政学的リスク

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。

・中東情勢不安が拡大し、先進国でテロが発生(景気の下振れリスク)、産油国でテロが発生して原油価格が高騰(インフレ発生で景気下振れリスク)するリスク。

中東問題が、「反イスラエル・親イスラエル」の対立となり、世界に拡散する場合(可能性の低い顕著な景気下振れリスク)

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。暴動激化で中国が分裂するリスク(極めて可能性の低いリスク)。

・西アフリカ・北アフリカで、フランスが旧宗主国である国の反仏感情が高まり、武力衝突が発生して域内治安が悪化する場合。

欧州に難民が流入するほか、地域によっては(リビア、アルジェリア、ナイジェリアなど)原油・ガス供給に影響が及ぶ恐れ。

◆その他のリスク

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。

また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。

◆本日のMRA's Eye


「2024年錫価格見通し」

2023年の錫価格は、年初に上昇したものの長続きせず、2月以降に急落した。しかしその後、米国の金融引締めが終了するとの期待から水準を切り上げてきた。半導体サイクルの底入れが期待されることや、8月1日以降のミャンマーの輸出停止も意識された形。

2023年の錫需給は錫生産が前年比+4.5千トンの385.3千トンと増加する一方、錫需要に対する影響が大きい半導体向け需要の増加などを背景に需要が前年比+7.1千トンの386.2千トンと生産の回復を上回るため、▲0.9千トンの供給不足(前年+1.7千トンの供給過剰)が見込まれている。

2024年は生産が+5.7千トンの391千トン、需要が+8.9千トンの395.1千トンとなる見込みであり、需給バランスは▲4.1千トンの供給不足と、供給不足幅が拡大、価格を押し上げに寄与すると予想される。

錫の需要面では半導体セクターの動向が錫需要に与える影響が高く、世界の半導体販売の前年比増加率とLME錫価格の相関性は高く、主用途である半導体市場の動向に錫価格が左右されることがわかる。

半導体販売は概ね4年程度の周期で変動しており(いわゆる半導体サイクル)、前回の半導体販売増加のピークは2021年7月頃だったことから、今回の周期的な底は2023年7月頃と予想されるが、前年比での変化率、という意味では今年の5月頃にボトムアウトしている(ただし前年比マイナスの状態は変わらず)。

ボトムアウトから販売が前年比プラスに転じるには、周期性を考慮すると1年程度は掛るため、半導体セクターの回復は2024年5月頃になる見込みで、錫価格にも上昇圧力が強まると予想される。

半導体販売は足下前年比マイナスの状況だが、この間にLME+上海の取引所錫在庫は大幅に増加しており、特に上海在庫の水準はデータ取得が可能な2015年以降の最高水準に達しており、中国国内の需給緩和を示唆している。

市場参加者が期待している中国当局の「大規模な」経済対策は、1兆元のインフラ投資の前倒し執行が決まったが、半導体セクターの需要増加には直接繋がる可能性は低い。そのため、やはり錫価格の回復には時間が掛かろう。

しかし、供給面ではリスクが無いわけではない。ミャンマーのワ州からの錫鉱石輸出はミャンマーの錫鉱石生産の大半を占めるが、2023年10月の中国の貿易統計を見る限りでは、ミャンマーからの鉱石輸出はほぼ昨年と変わらない水準を確保している。

以上を考慮すると、2024年の錫価格は、最大消費国である中国の景気低迷の影響に加え、今年の秋頃に半導体サイクルで回復が期待されていた半導体市況の回復が遅れており、前年比プラスに転じるのは2024年以降にずれ込む見通しである。

また、そもそも世界の景気がQ324頃まで減速する可能性が高いことから、しばらく低迷が予想されるものの、年後半は循環的な回復、需給のタイト化見通しと相まって上昇に転じると予想。

2024年の平均価格は25,875ドル/トン(10月予想比▲2,125ドル/トン)と現在の水準を考慮して見通しを引き下げた。

しかし、ミャンマーの少数部族勢力が中国との国境地帯で軍事政権の拠点に攻撃を仕掛けており、同軍事政権は2021年2月のクーデター以来の窮地に陥っている。

ミャンマー民族民主同盟軍(MNDAA)はその他の武装組織と共に軍事政権に対する攻撃を宣言、今回の軍事行動により中国との国境付近の主要都市は制圧されているため、同国との越境貿易は停止している状況にあるようだ。

足下、取引所在庫の積み上がりと需要回復の遅れから、投機筋のショートポジションは積み上がっているため、今回の紛争が拡大し、ミャンマーからの鉱石輸出が減少ないしは停止し、その後、半導体セクターの回復があった場合、想定以上に価格が上昇するリスクも無視できない。

この他の上昇リスクは、米国を初めとする各国の金融引締めのペースが鈍化した場合、中東情勢不安・異常気象を背景にエネルギー供給に制限(ガス・石炭)が発生して生産に影響が及ぶ場合、脱炭素の流れに乗って資源国で資源ナショナリズムの動きが加速する場合(ミャンマー以外にもインドネシアなど)、異常気象発生により主要生産国であるインドネシアの海上鉱区からの供給が停止する場合が考えられる。

下落リスクは、各国金融引締めペースが早すぎて経済がオーバーキルになってしまう場合、米金融引締めの影響で需要の牽引役である新興国も金融引締めを余儀なくされ、新興国の需要減少・デフォルトが発生した場合が考えられる。

また、中国政府が梃子入れを始めてはいるが、中国の不動産セクターの回復に目処が立たず、中国政府が取り組んでいる秩序ある不動産セクターの調整が上手くいかなかった場合、脱炭素の流れ一服、石炭・LNG価格の急落など。


主要ニュース/エネルギー・メタル関連ニュース/主要商品騰落率/主要指数/市場の詳細データPDFは、有料版「MRA商品市場レポート」にてご確認いただけます。
【MRA商品市場レポート】について