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米統計を受けて景気循環系商品軟調 アルミは高騰
  • MRA商品市場レポート

2023年12月25日 第2615号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「米統計を受けて景気循環系商品軟調 アルミは高騰」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は、原油や非鉄金属の一角が下落したが、その他は総じて堅調な推移となった。米PCE価格指数が市場予想以上に減速したことで、米金融緩和観測が強まり、ドルが下落したことが材料。

原油価格は、個人所得は市場予想を上振れしたものの、支出が予想を下回ったことで需要減少観測が強まる中、アンゴラ・ナイジェリアのOPEC脱退を受けた供給面の調整リスクが意識された模様。非鉄金属は米国の建設関係統計の減速が材料視されたようだ。

昨日最も上昇したのがアルミだが、これはギニアの港湾事故の影響により、ボーキサイト輸出が停止していることが影響した(詳しくは非鉄金属のコラムをご参照ください)。

米個人所得は前月比+0.4%(市場予想+0.4%、前月+0.3%)と増加したが、支出は+0.2%(+0.3%、+0.1%)と減速、貯蓄率も4.1%(前月4.0%)と上昇している。これは個人が今後の景気減速に備える動きとも言える。

PCE価格指数は前月比+2.6%(市場予想+2.8%、前月+2.9%)と減速、コアデフレータは+0.1%(+0.2%、+0.1%)とこちらも市場予想を下回った。

【本日の見通し】

週明け月曜日は、クリスマス休暇で欧米主要市場画休場のため、動意薄く現状水準でもみ合うものと考える。

【昨日のトピックス】

昨日発表された日銀短観12月調査は、は大企業製造業が12(市場予想 10、前回調査9)と3期連続の改善となった。裾野の広い自動車の回復が引き続き全体をけん引した。

しかし、先行き見通しは全体で8(9,10)、個別でも減速を見込む業種が大半であり、世界景気の減速の影響は不可避の情勢。

規模別では中小企業も1(市場予想▲4、前回調査▲5)と改善、先行き見通しの悪化は▲1(▲5、▲2)と市場予想、前回調査ほどではなかった。

生産・営業設備判断DIは規模を問わず製造業で余剰感が出ている。しかしこの余剰感は一時的であり、3月見通しでは全ての業種・規模で不足が出る見通しとなっている。

これを受けて設備投資計画は製造業・非製造業とも前年比で大幅な伸びが継続する見込みであり、特に省力化投資のためのソフトウェア投資や、ロボットなどへの投資は増えることになるだろう。

9月調査からの下方修正は日銀短観の「季節的な修正」でありこの季節性の範囲内である。

下期のドル円の見通しは139.97円(前回調査135.88円)と実際の為替レートよりもかなり円高水準での想定となっており、現在の水準だと製造業にとってはプラスとなる見込み。

ただし、高水準の円安進行は国内企業と個人消費にとってはマイナスであることは確実であり、今後、ボディ・ブローのように影響が出てくることになろう。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油・石油製品

昨日の原油価格は上昇後下落した。米個人所得は市場予想を上回ったが、個人支出が市場予想を下回ったため、需要の減少観測が強まったことに加えて、アンゴラに続きナジェリアがOPEC脱退を表明、カルテルの結束の崩壊リスクが意識されたことが価格を下押しした。

ただし、同時に発表されたPCE価格指数が市場予想以上に減速していたため、ドル安進行が価格を下支えした。

価格下落時にOPEC、OPECプラスの結束が揺らぐのは過去に確認された通り。アンゴラ、ナイジェリアは生産体制を強化しても「サウジアラビアの意向で」減産を余儀なくされることに不満を持っている。

この状態が続くと、コロナショックの時に見られた「増産して逆に価格を下げ、減産を余儀なくさせる」手段をサウジアラビアが取る可能性は否定できなくなってきた。

なお、どのような形でも減産で合意した場合、来年は秋頃に景気が底入れするとみられるため、年後半の価格上昇リスクは高まる。それは「価格上昇時にはOPECプラスの結束は強まる」からである。

ただ、来年の大統領選挙でトランプ候補が勝利した場合、化石燃料の生産は増加することが予想されるため、この場合、シェールオイルの増産を阻むための増産が起き、上昇余地は限定されると考えられる。

逆に、脱炭素に前向きで、化石燃料の生産増加にそれほど前向ではなく、中東諸国と折り合いが悪い民主党政権が勝利した場合、原油価格の上昇は顕著なものになるのではないか。

今のところ米国内の石油製品出荷の減速が米国の消費減速を示唆しているが、OPECプラスの減産開始が年明け以降であるため、価格が上昇する材料が売られ過ぎによる買い戻し程度に止まっていること、クリスマス休暇で市場参加者が積極的に動いていないことがより価格を下押ししている。

1.OPECプラスの減産がきちんと遵守された場合2.景気減速で想定よりも早く米国が利下げに舵を切る場合3.ガイアナ危機の顕在化、ないしはガザ紛争を受けたアラブ諸国の親イスラエル国ヘの原油(ガス)供給制限

といったことがあれば、水準は切り上がることになる。労働市場の改善があれば上昇は顕著なものになろう。

しかし、金融緩和を渋り過去に見られたような「政策金利据え置き~緩やかな利下げ局面での危機発生」の場合、ないしはOPECプラスの減産遵守を促すために逆にサウジなどが増産する、という選択をした場合、Brentで60ドル程度までの下落リスクもリスクシナリオとして棄てきれない。

上述の通り、かなり上下のリスクシナリオ顕在化時の「振れ」が大きくなる可能性が高い。

ロシア情勢・中東情勢を踏まえた原油供給状況は大きく変化していないため、原油価格の「想定されるレンジ」は以下の通り。

現在は 3.の状態。今のところこの問題がイランにまで波及する展開は、確度の低いリスクシナリオの位置づけになりつつある。

こうなると市場の注目は再び減速した米ISM製造業・非製造業指数を受けた米景気の減速動向に集まることになろう。

<シナリオ別原油価格見通し>

1. 中東問題が悪化し、イランやベネズエラに対する制裁、ガイアナからの供給減少、中東諸国の親イスラエル国ヘの供給制限など、オイルショック時
Brent 90-150ドル(Q324まで景気が減速する場合)

2.OPECプラスの減産が遵守される場合
Brent 75-100ドル

3.OPECプラスの減産が遵守されない場合
Brent 60-90ドル

4.OPEC諸国が逆に増産する
Brent 55-80ドル

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

5. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)
Brent 60-90ドル

6. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)
Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次修正している。

Q423 需要の伸び横這いも供給制限は始まらず(↓調整)グローバル・リセッション、危機顕在化の場合(↓↓)
Q124 欧米の景気後退局面入りによる需要鈍化・生産調整継続ただし、OPECプラスの自主減産開始で年初に水準を切り上げ(→その後OPECプラスの減産が下支え)Q124にOPECプラスの減産が確認されない場合(↓↓↓)
Q224~Q324 実質金利プラス維持による景気幻想継続 製造業の循環的な回復が下支え(→)OPECプラス減産維持の場合(→)
Q324以降 景気の循環的な回復・中国の正常化(↑)OPECプラス減産維持の場合(↑↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

12月19日時点のWTIの投機筋ポジションは、ロングが▲11,250枚、ショートが▲42,394枚とクリスマス・年間休暇を控えたポジション解消の動きが見られた。

Brentはロングが+27,419枚、ショートが▲29,835枚と、こちらは強気に転じている。

週明け月曜日は、欧米市場はクリスマスのため休場。

火曜日以降は、アンゴラ・ナイジェリアのOPEC脱退を受けてOPECプラスの結束が疑われていることから、軟調な推移が予想される。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は小幅に上昇した。新規材料はないがピークシーズンであることや、スエズ運河の航行が事実上停止していることが影響したとみられる。

今冬の欧州のガス調達リスクは後退している。しかし弊社のシミュレーションの結果では、来年夏以降にガス調達が不足するリスクはまだ残存しているため、むしろ来年以降が重要になろう。

結局のところ需要動向が需給を左右すると考えられる(詳細は有料のマンスリーレポート12月号で解説)。

欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続

2.LNGターミナル・ガス田・船舶の不慮の停止

3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)

4.景気減速(価格下落要因)

5.季節要因・気象状況

1.は弊社の試算では欧州が完全にロシア産ガスを排除(第三国経由でもロシア産のLNGを購入しない状態になる)できるのは2027年頃。ロシア産のLNGの輸出が阻害されなければ2025年頃と予想される。

今のところロシア産ガスの供給は実質的に制限されていないが、仮に脱ロシアが完了した場合、ロシアがこれまで供給してきた西側諸国向けのガスが「浮く」ことになる。

2022年、欧州向けにロシアが削減したパイプライン輸出量は708億立方メートルで、総輸出量9,685億立方メートルの7.3%に及ぶ。

これを他地域の需要増加で補うことは恐らく不可能であり、FID済みのプロジェクトも見直しせざるを得なくなると予想される。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

2.は、アラビア半島周辺海域の航行にやや不透明感が強まっている。

3.は既にロシアからの供給削減は現時点ででき得る限界まで行われているため、目先は材料になり難い。

4.は顕在化しているが、足下、欧州の統計が改善しており来年以降の需要回復が価格の押し上げ要因となる可能性が出てきた。

5.は2.とも関係するが、エルニーニョ現象中は暖冬になりやすく価格上昇方向のバイアスは強まらないと予想される。ただ、エルニーニョ現象発生後のラニーニャ現象発生はリスクとなる(2024年夏以降か)。

米メキシコ湾発のLNGのタンカーレートは、日本向け・欧州向けとも低下している。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米天然ガス価格は小動き。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物市場はほぼ変わらず。

10月のJLCの水準は11.86ドル(前月比+0.32ドル)であり、現在のスポット価格はこの水準を上回っている。

その他のアジアの国の長期契約ベースの価格は恐らくJLCと大差がないと考えられ、今年の冬場の需要期の価格はほぼJLCの水準で推移している。

今年は回避されているが、豪州は国内供給が充分でない場合、通常7月1日まで、遅くとも10月1日までにガス不足の懸念を通知し、実際に国内供給が不充分と判断された場合、次の1年間は輸出が制限される(ADGSM)。

この条項が発動された場合、スポット価格の上昇リスクとなるため、意識はしておきたい。

また、サハリン2の生産能力の低下、供給の減少はかなり前から指摘されているが、今のところ顕在化していない。多くの必要な部材は中国などを経由してロシアにもたらされている可能性があり、実は長期の供給リスクは懸念ほどではないかもしれない。

11月の中国の天然ガス生産は+5.8%の1,470万6,000トン(前月+4.3%の1,411万8,000トン)と同じ時期の過去5年の最高水準を上回っている。

11月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比+6.1%の1,095万トン(前月+15.5%の879万トン)と前年比ベースの伸びは減速したが、過去5年の最高水準を上回った。

11月のパイプラインベースの輸入は前年比+6.7%の415万トン(前月+1.1%の362万トン)と過去5年の最高水準(358万トン)を上回っている。

11月のLNG輸入は前年比+5.9%の680万トン(前月+28.2%の516万9,000トン)と減少し、過去5年の最高水準(690万1,000トン)に迫った。

国内生産の増加と、固定インフラであるパイプラインからの供給が優先される中で、調整弁的に用いられるLNG調達需要が低下している。

ただし合計の「ガス顕在需要」は前年比+8.4%の2,290万5,000トン、年初来累計は+7.3%の2億3,632万4,000トン(前月+6.3%の2,360万3,000トン、年初来累計+7.2%の2億1,341万7,000トン)と着実に増加している。

※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

12月17日時点の日本の大手発電業者のLNG在庫は265万トン(過去5年平均245万4,100トン、大手発電業者在庫の過去5年平均は206万トン)と、先週から増加し、過去5年平均を上回った。

現在発生しているエルニーニョ現象は来年6月頃まで続く見通しであり、その影響もあって今年の北半球は記録的な暖冬が見込まれているため、この在庫水準であれば冬は乗りきれる可能性が高まっている。

週明け月曜日はクリスマスで休場。

火曜日以降は、冬場の調達へのリスクが後退しているが、ピークシーズンであることもあり現状水準を維持の公算。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP・東京ガス提示の数値を使用している。 LNG1トン=2.19立方メートル(液体)=1,360立方メートル(気体)= 46MMBtu LNG船1隻 147,000立方メートル=67,000トン 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル=7,757トン 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップは期近が小幅に上昇、第2限月以降は小幅に下落した。

12月に入ってから石炭価格の上昇が顕著で、期近がバックワーデーションとなっているが、ガス価格対比での割安感、特に欧州はガスのストレージキャパシティの問題から、保管がより容易な石炭にシフトしていると見られ、輸入が増加していることが背景。中国、日本、韓国、西欧州の輸入が急増している。

現在のガス価格(JKM)との関係性を元に回帰分析を行うとNEWC価格は168ドル、±1標準偏差で100~240ドル程度までが統計的に説明可能なレベル。

期先の価格は現在の生産コストに近いことを考慮すると、期先の価格が130~140ドル程度まで再び上昇しているため、130~240ドルが説明可能なレンジであり、現在のスポット価格は価格想定レンジの下限。

ロシア問題が継続する以上、欧州が完全に脱ロシアを達成することが期待される2027年(早ければ2025年、現実的には2026年)までは、ピークシーズン中の価格上昇リスクはつきまとう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

11月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比+34.7%の4,350万6,000トン(前月+23.3%の3,599万2,000トン)と過去5年レンジを大幅に上回る水準を維持した。燃料炭の輸入が10月は減少しており、恐らく原料炭の輸入が増加したと見られる。

10月の燃料炭輸入は、ほとんどの地区で前月から減少している。最も輸入シェアが大きいのがロシアで36.3%(前月35.7%)だが、輸入量は564万トン(658万トン)と減少、シェア3位のインドネシアは23.6%の366万トン(27.6%の508万トン)と減少している。

一方、シェア2位の豪州は29.7%の461万トン(前月24.7%の454万トン)と増加している。

10月の中国の石炭生産は、前年比+4.7%の3億8,707万トン、1,248万トン/日(前月+1.3%の3億9,131万トン、1,304万トン/日)と伸びが加速、過去最高水準を上回っている。

10月の中国の電力消費量は前年比+8.6%の7,419億kwh(前月+10.1%の7,811億kwh)と伸びが鈍化した。景気減速と例年よりも気温が高いことが影響していると見られる。

週明け月曜日はクリスマスで休場。

火曜日以降は、ガスの在庫貯蔵スペースが限られる中、代替で石炭を物色する動きがしばらく続くと考えられ、高値維持の公算。ただし、ガス価格の上昇余地が限られているため、同様に上昇余地も限定されると考える。

◆LME非鉄金属

LME非鉄金属市場は下落した商品が目立った。米経済統計が米国の早期利下げを意識させる内容だったものの、米新築住宅販売が想定とは裏腹に、大幅な減少となったことが、米国の建材向け需要減少観測を意識させたようだ。

LMEの中ではアルミが暴騰。中国向けのボーキサイト輸出の7割を占めるギニアの港湾で爆発事故が発生、輸出が停止していることが供給懸念を意識させたことが材料。

英国によるロシア産金属の取扱禁止の方針は、LMEの金属需給がひっ迫するため短期的には価格が上昇するが、時間経過後は取引量が減少し下落に転じると予想される。

そして、LME外で取引される金属が増加、ロシアに対する制裁発動国と、非発動国の価格が異なる「一物二価」の状態となることが予想される。

ロシア産のアルミやニッケルを加工して生産した製品が流通すると予想されるが、このとき西側諸国政府がどこまでこの原料のトレースを要求してくるかが次の焦点となろう。

米国のウクライナへの軍事支援が予算的に細る中、欧州は独自にロシアに対する制裁を強める必要性が出てきていると考えられ、非鉄金属以外の資源への制裁が強化されることも有り得る状況に。

現状、中国が苦境を脱するには、財政出動を伴う対策と、不動産不良債権処理の進捗が必要だが、後者は過去の日本の例を見るに時間が掛かるだろう。

財政出動に多少影響を与える可能性がある、中国の信用格付引下げ見通しは、恐らく直接的に非鉄金属価格に影響を及ぼさないが、中国当局が格下げを回避するために財政規律重視の姿勢を打ち出した場合、来年の公共投資の減少観測を強め、価格の下落要因となり得る。

しかし、恐らく中国当局は景気下支え・近代化のためのインフラ投資は予算を張って継続すると考えられるため、現時点での非鉄帰属価格への影響は限定されるだろう。

中国の不動産問題は解決していないことが需要の下押し要因となっているが、中国政府が1兆元の予算を前倒ししてインフラ投資を行うなどの対策を行っていること、脱炭素の動きにともなう投資はペースが減速するものの継続が予想されること、脱中国に伴う他地区での設備投資は継続が予想されることから、期待需要も含めて、需給ファンダメンタルズはやや供給過剰~中立と見ている

そのため、中国とは直接関係ないところでのドル指数の変動が、非鉄金属価格を左右しやすい。

中国が不動産危機を乗り切ることに失敗し、中国政府が想定以上にこれまで積み上がった余剰生産能力の解消に手間取った場合、景気は長期低迷、いわゆる「日本化」が10年単位で起きる可能性が高い。

さらに労働人口がピークアウトし、かつ、西側諸国の制裁によって先端分野の発展が阻害され生産性が低下、将来的にはインフレをもたらしソ連型の国家崩壊、というシナリオも長期的には有り得る話。

就任以降の習近平国家主席の政策は、決して成功しているとは言えない。

11月の中国の貿易統計では、ベンチマークである銅地金・製品輸入は前年比+2.0%の55万566トン(前月+23.7%の50万168トン)と過去5年平均を維持した。中国の精錬銅輸入は年末にかけて増加する傾向があるが、今年は3月頃からの輸入量の回復トレンドが継続している。

11月の銅鉱石・コンセントレートの輸入は前年比+1.4%の244万3,318トン(前月+23.5%の231万トン)と過去5年の最高水準を上回った。

11月の中国の精錬銅生産は+0.4%の111万9,000トン(前月+23.8%の114万3,000トン)と過去5年の最高水準を大きく上回っている。

11月の銅スクラップの輸入は前年比+37.7%の15万5,359トン(前月+2.0%の17万283トン)と過去5年平均を維持している。

精錬銅輸入の増加と銅鉱石輸入の増加は、製造業PMIの悪化、海取引所在庫の水準が低迷していることを考えると、統計に反映されない企業在庫として取得されている可能性があると見ている。

週明け月曜日はクリスマスで休場。

火曜日以降は米国の利下げ期待を受けたドル安が価格を押し上げると考える。足下、アルミはギニアの事故で上昇、いったん買い戻しは一巡しただろうが、港湾が回復しなければかなり顕著な供給懸念が意識されるため、さらに水準を切り上げる可能性も。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、大連は上昇、豪州原料炭スワップ先物は変わらず、大連原料炭価格は上昇、上海鉄筋先物は上昇した。

大気汚染を背景とする河北省の生産制限や、中国政府のインフラ投資期待などを材料に鉄鋼製品価格が上昇していることが、鉄鋼原料価格も押し上げている。

11月の中国粗鋼生産は前年比+2.1%の7,610万トン(前月▲0.8%の7,609万トン)と減速し、過去5年平均を下回った状態が続いている。

11月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲18.1%の61万3,940トン(前月▲13.0%の67万トン)と低迷が続き、同じ時期の過去5年の最低水準を下回る状態が続いている。

11月の中国の鉄鋼製品の輸出は前年比+43.2%の800万51トン(前月+53.3%の793万8,700トン)と過去5年の最高水準を大きく上回る状態が続いている。同時に鉄鋼製品輸出額は前年比▲11.7%の64.9億ドル(前月▲7.1%の62.9億ドル)と金額・伸び率とも前月から減速した。

輸出額を数量で割ったトン当り単価は811ドル(前月792ドル)と、11月はやや改善した。しかし引き続き年初来では最低水準となっている。欧米のPMIやISM指数の減速を見るに、中国の景況感は改善するには至らず、値引きで在庫を解消する動きが続いていると考えるのが妥当だろう。

単月の統計で判断するのは早計であるが、まだ中国の在庫調整には時間が掛かる可能性があると考えるべきだろう。

週間の鉄鋼製品港湾在庫統計は、鉄鋼製品在庫は▲5万5,000トンの935万トン(過去5年平均 883万9,000トン)と過去5年平均を上回っている。

鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比+5万トンの1億1,365万トン(過去5年平均1億3,722万トン)、在庫日数は26.5日(±0.0日、過去5年平均 32.9日)。

鉄鉱石は在庫は日数ベースでも、数量ベースでも過去5年平均を下回っており、鉄鉱石の需給はタイトで一定の在庫積み増し需要が存在する。

主要原料炭の輸入港である京唐港の原料炭在庫は+3万トンの260万トン(過去5年平均 170万2,000トン)、在庫日数は+0.1日の11.3日(過去5年平均 7.3日)と、原料炭の需給は緩和している。

週明け月曜日は、主要生産地の唐山市の生産調整観測が鉄鋼製品価格を押し上げること、来年の季節的な鉄鋼製品在庫積増しの時期に向け、鉄鋼原料在庫の積増し需要が期待されることから高値維持の公算。

◆貴金属

昨日の金は上昇した。実質金利の上昇が金の基準価格を押し下げたが、ドル安進行がリスク・プレミアムを押し上げた。

銀は調整売りに押され、プラチナは上昇、パラジウムは下落した。いずれもクリスマス前のポジション調整と見られる。

これまで、政策金利の引き上げと共に「諸々のリスクの高まり」から、リスク・プレミアムが上昇して金価格を押し上げてきた。金リスク・プレミアムの上昇要因の主なところは、

1.米利上げによる信用不安の高まり(低格付企業・新興国)

2.ロシアに対するドル決済禁止制裁を受けた、準備金におけるドルから金ヘのシフト

3.ロシアのウクライナ侵攻

4.イスラエルとパレスチナの戦争開始による中東情勢不安並びに、テロ組織の大規模攻撃であるため、各地にテロが拡散するリスク

あたりだろう。これらと同じ事象は、ニクソン・ショック~プラザ合意~アジア危機収束まで30年近く続き、金価格に占めるリスク・プレミアムのシェアが高止まりした。

2019年基準で算出した現在のリスク・プレミアムのシェアは50%と、ほぼ上記の期間と同様の状況になっており金利水準以上にその他の要因が金価格の形成に影響を与えていることが確認できる。

現状を理解する手助けとなるため、あえて実質金利・信用リスク・その他、に分離した場合、実質金利部分が45%、信用リスク要因が20%、その他の要因が35%となった(2019年データを元にした分析結果に変更)。

直近1年間の説明力を相関係数で確認するとほとんどの項目が金価格と無相関の状態になっている。3ヵ月間の相関関係では、最も金価格に対する説明力が高いのがドル指数で▲0.69、次いでFF金利で0.65。これまで価格に対する説明力が以前よりも低下していた実質金利は▲0.53まで上昇している。

この5年間のデータを元にした分析では、FF金利±1%の変化で、金価格は±10ドル変化し、リスク・プレミアムは±160ドル変化する。

今回のFOMCでFRBは来年▲0.75%の利下げを予想しているが、市場予想は2024年は▲1.50%程度のFF金利引下げを見込んでいるため、金の基準価格は+15ドル程度の押し上げ要因となり、リスク・プレミアムは、▲240ドルの低下要因となるため、仕上がりで▲225ドルの価格低下となる。

現在の金価格は2,050ドル近辺であるが、1,800ドル程度までの下落余地があることになる。

銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。

月次のボリンジャーバンドの分析は有効に機能しているが、仮にボリンジャーバンドの下限だと75倍、上限ならば90倍程度が目処になるが、金が2,000ドルを固めた結果、を1,900ドル程度とすると22.20~26.65ドルが現在取り得る範囲となる。

また、中国の鉱工業生産を元にすると、現在の金銀レシオは90倍程度が上限とみられる。

週明け月曜日は、欧米主要市場が休場であるため、方向感に欠ける展開で現状水準を維持すると考える。

◆穀物

シカゴ穀物市場は、上昇した。ドル安進行が価格を押し上げた形。

長期的な話だが、今年地中海を襲ったハリケーン(ストーム・ダニエルと命名)の影響で中東北アフリカ地域に降雨がもたらされたことは、先々の穀物供給に影響を及ぼす、サバクトビバッタの越冬を可能にし、来年以降の供給減少のリスクを高めることが懸念される。

尚、Locust Watchでは中東・北アフリカ地域でのバッタの大量発生は確認されていない。

週明け月曜日はクリスマスで休場。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

◆信用リスク・マクロ経済のリスク

・米国債の格下げリスク、米国債格下げの動きが連鎖して、金融機関の格下げが加速、信用不安に繋がる場合。

・日本政府の財政規律の欠如、成長期待への失望から円が暴落するリスク。

・景気が想定よりも早く底入れしてインフレが再燃、あるいは景気を刺激する目的で早期の利下げが行われ資源価格が高騰、各国中銀の金融政策が再びタカ派の状態になった場合(リスク資産価格の上昇→下落リスク これは顕在化している可能性)

新興国の財政破綻、先進国も含めた債券の格下げによる金融機関・ファンドの突発的な損失拡大による信用収縮、低格付企業の破綻や、市場変動性の高まりによるファンド破綻などもリスクに。

・中国の構造的成長が終了、過剰債務や不動産問題を抱え、中国が「日本化」するリスク(この場合長期低迷で工業金属やエネルギーなどの景気循環系商品価格の下押し要因となる可能性)

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、モディ支持率の低下による近代化投資の遅れ、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

◆地政学的リスク

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。

・中東情勢不安が拡大し、先進国でテロが発生(景気の下振れリスク)、産油国でテロが発生して原油価格が高騰(インフレ発生で景気下振れリスク)するリスク。

中東問題が、「反イスラエル・親イスラエル」の対立となり、世界に拡散する場合(可能性の低い顕著な景気下振れリスク)

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。暴動激化で中国が分裂するリスク(極めて可能性の低いリスク)。

・西アフリカ・北アフリカで、フランスが旧宗主国である国の反仏感情が高まり、武力衝突が発生して域内治安が悪化する場合。

欧州に難民が流入するほか、地域によっては(リビア、アルジェリア、ナイジェリアなど)原油・ガス供給に影響が及ぶ恐れ。

◆その他のリスク

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。

また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。

◆本日のMRA's Eye


「2023年高騰した農産品」

2023年も残り僅かとなった。2022年の農産品セクターの価格動向を見ると、大きく値動きに差が出た。2023年、セクターの中で最も価格が上昇したのがオレンジジュースであり、次いでココア、コーヒー豆となった。

農産品は極端な需要の増加が起きることが余り無く、基本的には気象状況の変化に伴う供給面のリスクが顕在化して価格が上昇することが多い。

このコラムでは即時性がある異常気象の指標として、米海洋大気庁が提供している海洋ニーニョ指数を参考にしているが、過去30年程度のニーニョ指数の推移と農産品価格を比較すると、ほとんどの農産品価格が、海洋ニーニョ指数が上昇する局面では下落し、逆に低下するときには上昇する傾向があることが確認されている(相手は植物であり、海水温の変化にかかわらず、例年の傾向とは異なる異常気象が発生することがあるため、一概に言えない)。

最も価格が上昇したオレンジジュースは2000年以降、海洋ニーニョ指数とは逆相関の関係にあったが、2020年以降、ほぼ一貫して水準を切り上げている。

価格上昇の背景には、異常気象に起因するとみられる病害とハリケーンの影響によるものだ。また2020年に危機が拡大したコロナ危機も、コロナにビタミンCが聞くという俗説が広まる中で価格押し上げの一因になったと考えられる。

次にココア(カカオ豆)だが、こちらは比較的海洋ニーニョ指数と価格が正の相関関係にあるが、海洋ニーニョ指数低下時の価格下落に下方硬直性がある。

これはオレンジと異なり、主要な生産地域が赤道近辺の国に集中しており、かつ、最大の生産地域の政情が安定しているとは言い難いアフリカに集中している(2021年のアフリカ諸国の生産シェアは合計で67.6%)ことが影響していると考えられる。

そして西アフリカ地域の降雨の影響でCocoa Swollen Shoot Virus Disease(CSSVD)とブラックポット病の感染が広がったことや、ロシアのウクライナへの軍事侵攻以降、肥料価格が高騰したことが生産量を下振れさせ、価格を押し上げた。

またコートジボワールとガーナ両国は、カカオ豆生産者支援のために割増料金を上乗せしていたが、これを回避する目的で先物市場で取引を行い現物を受け取るという抜け道的な取引が発生し認証在庫の減少と共に価格を押し上げた。

アラビカ豆は4月以降に水準を切下げていたが、10月以降、再び上昇に転じた。こちらも異常気象の影響で生産が下振れ、ICE認証在庫が激減したことが影響している。

これらは結果的にエルニーニョ現象の発生の影響によるものといっても良いかもしれない。米海洋大気庁の見通しでは、2024年6月頃までエルニーニョ現象が継続する見込みであり、カカオ豆やコーヒー、オレンジジュース価格は来年も価格上昇リスクに晒される可能性が高い。

またこれらの農産品は一年草ではなく果樹である点も問題である。病害の影響で樹木自体にダメージがあれば翌年の生産にも影響が及ぶためだ。そのため、気象状況が落着いたとしても価格の下方硬直性は強いと考えられる。特に生産地が限定されているカカオ豆への影響は小さくないのではないか。


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