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ドル安進行を受けた金融要因で上昇
  • MRA商品市場レポート

2023年11月21日 第2591号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「ドル安進行を受けた金融要因で上昇」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は自国通貨建て商品価格が総じて軟調になり、その他の景気循環系商品は軒並み水準を切り上げた。

米国の利上げが終了に近づく中、気が早い市場参加者は年明けの利下げを指摘するなど、昨日はドルが売られる中でファイナンシャルな面で多くの商品が物色される流れとなった。

そのため、実需主導による上昇というよりはファンドなどの投機筋の売買が価格動向を左右した可能性が高く、11月末が大手ファンドの決算であり、あと10日で「今年も終りモード」に入ることを考えると、これらのポジションは今月末でいったん解消される流れになると考えられる。

結果、CFTCのロング・ショートの積み上がり度合いが今後の価格の方向性を決めるのではないか。

CFTCデータを元にすると、9月末時点との比較で主要商品のうち、ロングが増加しているのが、米天然ガス、金、PGM、穀物セクター。

ショートが増加しているのが、WTI、灯油、米天然ガス、PGM、小麦。

ネットロングが増加しているのが、米RBOB、銅、金銀、穀物セクター、減少しているのが、WTI、米灯油、天然ガス、プラチナである。

簡単に言えば、ネットロングのものには「期末を意識して」テクニカルに売りが入りやすく、ショートのものには買い戻し圧力が掛かりやすいということだ。ただし、あくまでテクニカルな動きであり、持続的ではないと考えられる。

【本日の見通し】

本日は、引き続きファンドの決算期末を控えて神経質な推移になると考える。特にファイナンシャルな面で価格が変化している可能性が高い事から、FOMC議事録(10月31日、11月1日開催分)の内容には注目したい。

この他、金利上昇の影響が住宅セクターにどの程度影響が出るかを占う上で重要な米中古住宅販売(市場予想 前月比▲1.5%の390万戸、前月▲2.0%の396万戸)にも注目したい。

この他の注目材料は以下の通り。

・ECB総裁講演

・英中銀総裁議会証言

・EU外相理事会

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油・石油製品

昨日の原油価格は上昇した。OPECプラスの減産報道が需給をタイト化するとの見方はあるが、昨日はホルムズ海峡近辺でのフーシ派による日本のチャーター船の拿捕(イスラエル人が保有するとされる)や、ドル安が持続的に進行したことを材料に、売られすぎ感からの買い戻しが入ったと見られる。

特に7月以降、投機筋の売買動向が原油価格を左右しているが、1.想定外のISM製造業指数の改善、2.7月以降もサウジ・ロシアが自主減産を続けることを材料に、新規ロングとショートの手仕舞いが見られ、その後も中東情勢不安が原油価格を押し上げてきた。

しかし、11月のISM製造業指数の突如の悪化や、中東情勢不安による原油供給途絶のリスクが懸念ほどではなかったこと、11月末のファンドの年度決算を睨んだ手仕舞いの動きが強まった。

この間、ロングは手仕舞われたが、新規でショートが積み上がったため恐らくそのポジションの解消が価格を押し上げていると考えられる。

足下は、米国の労働市場需給環境が原油価格を左右しているため、週次の米失業保険申請件数動向は要注目である。

これまで、欧米諸国の首脳が中東を訪問し、イスラエルの現在の行動に理解を求め、域内での民衆の暴発を抑制することに今のところ成功してはいる。

しかし、イスラエル側が民間人を殺害(BBCの報じるところでは現在、確認されている民間人の死亡者数はロシアによるウクライナ人の殺害数に匹敵。ただしウクライナでは集計されている以上に民間人が殺害されているため正確ではない)を続ける見通しであり、これにアラブ諸国が反発する可能性は低くなくなってきた。

さらに、イスラエルはガザ南部への侵攻も開始、現在、南部でインドネシアが支援している病院をイスラエル軍が包囲しており、仮に攻撃されて人が死ぬようであれば、インドネシアやマレーシアなどのアジアのイスラム教国も反発を強めることになろう。

この流れだと、「反イスラエル・親イスラエル」の構図になり、親イスラエル国への原油供給が滞る、ないしは高い価格での販売になる可能性がある。

また、戦後統治に関してもネタニヤフ首相はガザ地区をイスラエルが管理する、と発言している。実際に管理する能力はイスラエルの方があると考えられる為、それは現実解であるとも言える。しかしこのことも、アラブ諸国の反発を買うことになるのではないか。

基本は多くの国が「穏当に」終らせたいと考えていると思うが、ガザ侵攻作戦終了後の絵姿が見えてこないため、アラブ諸国がイスラエルに対して反発して供給不安が意識される可能性はあると考える。

供給面に不安がなければ、かねてから指摘しているように景気が減速する中で、原油価格には下押し圧力が掛かり、産油国の減産が下げ余地を限定させる、という流れになる。

DOEデータを元にした価格分析では、ロシアのウクライナ侵攻後、直近までのデータを含む分析だと2024年のBrentの予想平均価格は84.7ドルとなる。

しかし現状、ロシアからの原油輸出は安定しており、中東情勢も他国(特にイラン)に拡大していない。仮にサウジアラビア・ロシアの追加減産が来年以降、継続しないと仮定し、ロシアのウクライナ軍事侵攻前までのデータを元にすると2024年のBrent価格は77.5ドルとなる。

ロシア情勢・中東情勢を踏まえた原油供給状況は大きく変化していないため、原油価格の「想定されるレンジ」は以下の通り。

現在は 3.の状態。今のところこの問題がイランにまで波及する展開は、確度の低いリスクシナリオの位置づけになりつつある。

こうなると市場の注目は再び減速した米ISM製造業・非製造業指数を受けた米景気の減速動向に集まることになろう。

<シナリオ別原油価格見通し>

1. 中東問題がイランにまで波及し、OPEC諸国も対立国ヘの供給を絞る(オイルショック状態)、イランに対する制裁強化など
Brent 120-150ドル

2.中東問題がイランにまで波及するが、OPEC諸国が増産する
Brent 90-120ドル

3.中東問題がイランに波及せず、OPEC諸国が増産しない
Brent 75-95ドル

4.中東問題がイランに波及せず、OPEC諸国が増産する
Brent 70-90ドル

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

5. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)
Brent 60-90ドル

6. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)
Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

Q423 需要の伸び横這い・中東情勢不安による供給制限懸念(→高値維持)グローバル・リセッション、危機顕在化の場合(↓↓)
Q124 欧米の景気後退局面入りによる需要鈍化・生産調整継続(↓高値維持も下落開始)
Q224~Q324 実質金利プラス維持による景気幻想継続 製造業の循環的な回復が下支え(↓↓)OPECプラス減産維持の場合(↓)
Q324以降 景気の循環的な回復・中国の正常化(↑)OPECプラス減産維持の場合(↑↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

11月14日時点のWTIの投機筋ポジションは、ロングが▲16,772枚、ショートが+3,464枚と弱気ポジションを維持。

Brentはロングが▲3,195枚、ショートが+1,858枚と、こちらも弱気ポジションを維持している。

本日は、昨日の買い戻しでテクニカルに重要な200日移動平均線を上回れなかったことで、テクニカルに売りが入り、下落すると考える。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は小幅に上昇した。フーシ派が日本のチャーター船(イスラエル人が実質保有するとされる)を拿捕、海上輸送に影響が出るのではとの見方と、欧州北西部に寒波が襲来し、平年の気温を下回る予報が発表されたことが価格を押し上げた。

欧州の在庫水準の高さを考えると、今冬に関しては数量ベースで調達が不充分、というリスクはさほど高くないと見ている。

しかし、弊社のシミュレーションの結果では、来年夏以降にガス調達が不足するリスクはまだ残存しているため、むしろ来年以降が重要になろう(詳細は有料のマンスリーレポート12月号で解説の予定です)。

欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続

2.LNGターミナル・ガス田・船舶の不慮の停止

3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)

4.景気減速(価格下落要因)

5.季節要因・気象状況

1.はロシアのLNGカーゴはまだ取引されており、スポットカーゴ価格の上昇要因にはならなくなってきた。ロジカルには西側諸国が脱ロシアを完全に完了するまでは、気温の変化や政治的なイベントによって季節的に価格が高騰するリスクは残る。

弊社のシミュレーションでは、今冬の欧州のガス調達は問題なさそうだが、翌年以降の調達は需要動向次第の状況であり、脱ロシアの完了までは上昇リスクは無視できない。

弊社の試算では欧州が完全にロシア産ガスを排除(第三国経由でもロシア産のLNGを購入しない状態になる)できるのは2027年頃。ロシア産のLNGの輸出が阻害されなければ2025年頃。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

今のところロシア産ガスの供給は実質的に制限されておらず、LNGの形で欧州諸国も購入を続けている。ガスがLNGに置き換わっただけとも言える。

しかし、脱ロシアが完了した場合、ロシアがこれまで供給してきた西側諸国向けのガスが「浮く」ことになる。2022年、欧州向けにロシアが削減したパイプライン輸出量は708億立方メートルで、総輸出量9,685億立方メートルの7.3%に及ぶ。

これを他地域の需要増加で補うことは恐らく不可能であり、FID済みのプロジェクトも見直しせざるを得なくなる可能性がある。

2.は、異常気象の影響による干ばつでパナマ運河の水位が低下しており、LNG輸送に障害が発生、米国産のLNGは喜望峰周りでの輸送にシフトしており、スポット価格の上昇要因に。

また、イエメンの親イラン武装組織のフーシ派がイスラエル船に対する圧力を強めており、この地域の海上輸送に影響が出る可能性が出てきた。

3.4.は顕在化している。しかし3.に関しては、ロシアもこれ以上ガス供給を削減することは難しい。

ロシア・ウクライナ戦争は越冬して来年に持ち越される可能性が高まる中、この冬にロシアがなりふり構わない対応をしてくる可能性は否定できない。

それでもガス在庫の水準は高く、仮にロシアが輸出を完全に止めても今冬の調達には問題がなさそうな状況(ただしこの場合、供給が足りていても価格は上昇する)

5.は2.とも関係するが、今年の冬はエルニーニョ現象の継続が見込まれ、通常であれば暖冬となりやすいため、価格上昇方向のバイアスは強まらないと予想される。

米メキシコ湾発のLNGのタンカーレートは日本向け・欧州向けとも低下した。

11月12日の週のLNGトレードは、783万トン(前週860万トン)と減少、主に中国と台湾の輸入減少と、2023年で最高水準になった先週からの反動とみられる。

なお、スエズ運河を経由するLNG船の数は先週の4隻から10隻に増加、一方でパナマ運河経由は2隻(5隻)、喜望峰経由は3隻(8隻)、北海経由はゼロ(1隻)となった模様。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米天然ガス価格は米東部の気温低下見通しであるものの、先日の予報からは気温低下の度合いが緩和したことが材料となり、下落。

なお、米国のガス在庫の水準は高く、この冬の調達に影響が出るとは今のところ見られていない。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物市場は上昇。欧州ガス価格が、フーシ派による船舶拿捕の報道を受けて、海上輸送ヘの懸念が生じたことでTTFが上昇したことが材料。

9月のJLCの水準は11.51ドルであり、現在のスポット価格はこの水準を上回っている。

その他のアジアの国の長期契約ベースの価格は恐らくJLCと大差がないと考えられ、今年の冬場の需要期の価格はほぼJLCの水準で推移している。

今年は回避されているが、豪州は国内供給が充分でない場合、通常7月1日まで、遅くとも10月1日までにガス不足の懸念を通知し、実際に国内供給が不充分と判断された場合、次の1年間は輸出が制限される(ADGSM)。

この条項が発動された場合、スポット価格の上昇リスクとなるため、意識はしておきたい。

また、サハリン2の生産能力の低下、供給の減少はかなり前から指摘されているが、今のところ顕在化していない。多くの必要な部材は中国などを経由してロシアにもたらされている可能性があり、実は長期の供給リスクは懸念ほどではないかもしれない。

10月の中国の天然ガス生産は+4.3%の1,411万8,000トン(前月+11.6%の1,345万6,000トン)と同じ時期の過去5年の最高水準を上回っている。

10月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比+15.5%の879万トン(前月±0.0%の1,015万トン)と前年比ベースでは回復したが、昨年9月の輸入水準が高かったことによる前年比ベースでの上昇であり、総じて減少基調にある。季節的な需要減少。

10月のパイプラインベースの輸入は前年比+1.1%の362万トン(前月+4.9%の446万トン)と過去5年の最高水準(358万トン)を上回っているが、増加幅は急速に縮小した。

10月のLNG輸入は前年比+28.2%の516万9,000トン(前月▲3.5%の568万7,000トン)と減少し、過去5年平均に近接。

国内生産の増加と、固定インフラであるパイプラインからの供給が優先される中で、調整弁的に用いられるLNG調達需要が低下している。

ただし合計の「ガス顕在需要」は前年比+8.4%の2,290万5,000トン、年初来累計は+7.3%の2億3,632万4,000トン(前月+6.3%の2,360万3,000トン、年初来累計+7.2%の2億1,341万7,000トン)と着実に増加している。

※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

11月12日時点の日本の大手発電業者のLNG在庫は242万トン(過去5年平均264万6,300トン、大手発電業者在庫の過去5年平均は212万トン)と、先週から大幅に増加している。

夏場の在庫減少に対応するための調達や、冬入が例年よりも遅いことが在庫の積み上がりに寄与していると言える。

ただ、まだ在庫の水準は低く、仮に冬場が寒くなった場合、再びガスや石炭不足となり価格が上昇する可能性はある。通常過不足はスポット(JKMベース)で行い、電力のスポット価格はJKMの影響を受けるため、再び冬場の電力価格が上昇するリスクは無視できない。

また、今年はエルニーニョ現象の影響で太平洋側は台風の発生頻度・勢力が強まる可能性がある。この場合、輸送に影響が出ることも考えられるため、エルニーニョ現象が発生しているものの在庫水準の低さを考えると、冬場の価格上昇リスクも無視できない。

JEPXベースで調達して大手電力会社の価格で電気を販売している業者、JEPXベースで電気を調達している消費者はこのJKMのリスクを抱えることになる。

本日は、海上輸送市場の不安定化の可能性や、欧州の気温低下見通しを受けて堅調な推移が予想される。米HHは供給過剰感が強く、下落か。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP・東京ガス提示の数値を使用している。 LNG1トン=2.19立方メートル(液体)=1,360立方メートル(気体)= 46MMBtu LNG船1隻 147,000立方メートル=67,000トン 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル=7,757トン 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップは下落、期先が大きく上昇した。

現在のガス価格(JKM)との関係性を元に回帰分析を行うとNEWC価格は170ドル、±1標準偏差で100~240ドル程度までが統計的に説明可能なレベル。

期先の価格は現在の生産コストに近いことを考慮すると、期先の価格が130~150ドル程度まで再び上昇しているため、130~220ドルが説明可能なレンジであり、現在のスポット価格はやや安く、足下の需給が緩和していることを示唆。

なお、昨年対比で今年の冬が寒くなる(昨年は記録的な暖冬)可能性が後退、北半球はアジアを含めて暖冬見通しであることは、石炭価格を押し下げよう。

ロシア問題が継続する以上、欧州が完全に脱ロシアを達成することが期待される2027年(早ければ2025年、現実的には2026年)までは、ピークシーズン中の価格上昇リスクはつきまとう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

10月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比+23.3%の3,599万2,000トン(前月+27.5%の4,214万トン)と過去5年レンジを大幅に上回る水準を維持した。

ガスも同様であるが、中国の夏場の終了で季節的な需要が減少していることが、輸入数量の絶対水準の低下をもたらしている。

国別では9月は米国・モンゴル以外の地域では輸入量が概ね減少しているが引き続きロシアのシェアが35.7%(前月35.8%)と高い。次いでインドネシアが27.6%(25.5%)、豪州24.7%(30.3%)となっている。

10月の中国の石炭生産は、前年比+4.7%の3億8,707万トン、1,248万トン/日(前月+1.3%の3億9,131万トン、1,304万トン/日)と伸びが鈍化したが、生産量は過去最高水準を上回っている。

10月の中国の電力消費量は前年比+8.6%の7,419億kwh(前月+10.1%の7,811億kwh)と伸びが鈍化した。構造的な需要増加継続と、季節性による需要減少による。

本日は、ピークシーズン入したガス価格の高止まりを受けて、同様に石炭価格も高止まりすると考える。

◆LME非鉄金属

LME非鉄金属市場は大幅に上昇した。固有の材料はなかったが、米国の利上げ打ち止め期待や欧州統計の改善(ZEW景況感指数など)を受けたユーロ買い戻しの流れを受けたドル安進行が、割安感からの買いを誘った。

中国政府が1兆元の予算を前倒ししてインフラ投資を行うなどの対策を行っていることが、需給ファンダメンタルズを「横這い」にすると期待される中、中国とは直接関係ないところでのドル安進行が、ファイナンシャルな面で価格を押し上げた形。

なお、冬場の到来を受けてこれまで暖冬見通しだったが、寒波襲来が指摘されており、鉛価格はLME非鉄金属の中ではかなり顕著に上昇している。

」現状、需給ファンダメンタルズは中国の停滞でほぼ横這い~やや軟調、ファイナンシャルな面ではドル高基調がドル安に転じる気配が出てきていることが価格を押し上げ、という構図であり、結局水準を変えずにもみ合っているとの印象。

中国政府は景気刺激のためのインフラ投資前倒しを決定しており、恐らくこの流れであれば年末開催される中央経済工作会議でも、財政赤字を拡大させつつ景気刺激を行う方針が確認されると考えられる。

また、これに加えて脱炭素の動きにともなう投資は、そのペースが減速するものの継続が予想されることや、脱中国に伴う他地区での設備投資は継続が予想されることも価格を下支えするとみている。

しかし、循環的な景気の回復への期待があったが、国内外とも指標が減速を始めている(ついに米国の指標も減速を始めた)ため、政策要因が価格を下支えするが、基調としては年内は弱気と見ている。

なお、不動産問題が解消した訳ではなく、むしろ問題を先送りしたためいずれかのタイミングで大きなリスクとなる見込み。

中国が不動産危機を乗り切ることに失敗し、中国政府が想定以上にこれまで積み上がった余剰生産能力の解消に手間取った場合、景気は長期低迷、いわゆる「日本化」が10年単位で起きる可能性が高い。

さらに労働人口がピークアウトし、かつ、西側諸国の制裁によって先端分野の発展が阻害され生産性が低下、将来的にはインフレをもたらしソ連型の国家崩壊、というシナリオも長期的には有り得る話だ。

就任以降の習近平国家主席の政策は、決して成功しているとは言えない。

10月の中国の貿易統計では、ベンチマークである銅地金・製品輸入は前年比+23.7%の50万168トン(前月▲5.8%の48万426トン)と過去5年平均を回復した。中国の精錬銅輸入は年末にかけて増加する傾向があるが、昨年は10月に輸入が減少していたが、今年は3月頃からの輸入量の回復トレンドが継続している。

10月の銅鉱石・コンセントレートの輸入は前年比+23.5%の230万9,738トン(前月▲1.3%の224万1,135トン)と過去5年の最高水準を再び上回った。

10月の中国の精錬銅生産は+23.8%の114万3,000トン(前月+20.7%の114万1,000トン)と過去5年の最高水準を大きく上回っている。

10月の銅スクラップの輸入は前年比+37.7%の15万5,359トン(前月+2.0%の17万283トン)と過去5年平均を維持しているが水準は低下。国慶節の季節性の影響もある。

精錬銅輸入の増加と銅鉱石輸入の増加は、製造業PMIの悪化、10月中は上海取引所在庫が減少していることを合わせて考えると、統計に反映されない企業在庫として取得された可能性があると見ている。

本日は、昨日の上昇でも200日移動平均線を上回っていない(除鉛)ことから、テクニカルに売られると考える。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、大連は上昇、豪州原料炭スワップ先物は下落、大連原料炭価格は下落、上海鉄筋先物は小幅に下落した。

非鉄金属セクターは恐らく投機の買いが入って上昇したが、鉄鋼製品価格は、寒波襲来などによる需要ヘの影響から軟調、鉄鋼原料は在庫水準が低い鉄鉱石価格が上昇、余剰感が出てきた原料炭は下落した。調整的な取引との印象。

10月の中国粗鋼生産は前年比▲5.6%の8,211万トン(前月+3.0%の8,641万トン)と減速し、過去5年平均を下回った。

一方、10月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲13.3%の66万7,750トン(前月▲28.1%の64万トン)と低迷が続き、同じ時期の過去5年の最低水準を下回る状態が続いている。

10月の中国の鉄鋼製品の輸出は前年比+53.3%の793万8,700トン(前月+61.8%の806万トン)と過去5年の最高水準を大きく上回る状態が続いている。同時に鉄鋼製品輸出額は前年比▲7.1%の62.9億ドル(前月▲6.0%の65.6億ドル)と金額・伸び率とも前月から減速した。

輸出額を数量で割ったトン当り単価は792ドル(前月814ドル)と、9月は前月から回復していたが、再び減速、価格は今年最低水準に低下しており、中国国内の鉄鋼製品在庫の処理や需給が緩和、貿易統計の輸出総額の減少をみるに、海外の景況感も悪化している可能性が高いことを示唆している。

中国不動産問題は先送りし、それがいつどのタイミングで噴出するかは分らないうえ、最悪期を循環的に脱したとみられた鉄鋼製品市場の状況は再び減速している可能性が出てきた。

先月、単月の回復で判断するのは早計と指摘したが、まだ中国の在庫調整には時間が掛かる可能性があると考えるべきだろう。

週間の鉄鋼製品港湾在庫統計は、鉄鋼製品在庫は▲31万1,000トンの1,0312万6,000トン(過去5年平均 1,045万7,000トン)と過去5年平均を下回っているが、かなり水準は過去5年平均に近づいており、鉄鋼製品価格の下押し要因となっている。

鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比▲120万トンの1億760万トン(過去5年平均 1億3,734万トン)、在庫日数は23.4日(▲0.3日、過去5年平均 30.4日)。

鉄鉱石は在庫は日数ベースでも、数量ベースでも過去5年平均を下回っており、鉄鉱石の需給はタイトで一定の在庫積み増し需要が存在する。

主要原料炭の輸入港である京唐港の原料炭在庫は+4万トンの216万トン(過去5年平均 158万6,000トン)、在庫日数は+0.2日の9.9日(過去5年平均 6.6日)と、原料炭の需給は緩和している。

週明け月曜日は、中国の対策期待やそれを受けた統計の緩やかな改善、鉄鋼製品生産の減少が需給をタイト化させることから水準を切り上げる展開を予想。

ただし、鉄鉱石価格は既にこの時期としては異例な過去5年レンジを上回る上昇となっており、鉄鋼製品生産者の採算性悪化も意識されることから、上昇余地も限れるとみる。

◆貴金属

昨日の金銀は小幅安、PGMは上昇した。金銀は金融引締め終了観測が基準価格を押し上げたが、金融引締め終了に伴うリスク回避の動きの鈍化がリスク・プレミアムを押し下げており、全体で下押し圧力となっている。

PGMは金融引締め終了観測が株価を押し上げたため、買いが入った。

足下、金価格の構成要素のうち、リスク・プレミアムの占める比率が高まっている。金リスク・プレミアムの上昇要因の主なところは、

1.米利上げによる信用不安の高まり(低格付企業・新興国)

2.ロシアに対するドル決済禁止制裁を受けた、準備金におけるドルから金ヘのシフト

3.ロシアのウクライナ侵攻

4.イスラエルとパレスチナの戦争開始による中東情勢不安並びに、テロ組織の大規模攻撃であるため、各地にテロが拡散するリスク

あたりだろう。これらと同じ事象は、ニクソン・ショック~プラザ合意~アジア危機収束まで30年近く続き、金価格に占めるリスク・プレミアムのシェアが高止まりした。

2019年基準で算出した現在のリスク・プレミアムのシェアは55%と、ほぼ上記の期間と同様の状況になっており金利水準以上にその他の要因が金価格の形成に影響を与えていることが確認できる。

現状を理解する手助けとなるため、あえて実質金利・信用リスク・その他、に分離した場合、実質金利部分が45%、信用リスク要因が20%、その他の要因が35%となった(2019年データを元にした分析結果に変更)。

直近1年間の説明力を相関係数で確認すると、最も金価格に対する説明力が高いのがFF金利で0.68、次いでドル指数で▲0.64、リスク・プレミアムが0.59程度、期待インフレ率(▲0.30)、実質金利(▲0.01)と、実質金利は現在の価格形成に大きな影響を与えていない。

この5年間のデータを元にした分析では、FF金利±1%の変化で、実質金利は±0.5%変化、金価格は±20ドル変化し、リスク・プレミアムは±150ドル変化する。

市場予想では2024年は▲0.5%程度のFF金利引下げが見込まれているため、金の基準価格は+10ドル程度の押し上げ要因となり、リスク・プレミアムは、▲75ドルの低下要因となるため、仕上がりで▲65ドルの価格低下となる。

現在の金価格は1,950ドル近辺であるが、1,885程度までの下落余地があることになる。しかし中東情勢次第だろう。

銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。

月次のボリンジャーバンドの分析は有効に機能しているが、仮にボリンジャーバンドの下限だと75倍、上限ならば90倍程度が目処になるが、金を1,900ドル程度とすると21.1~25.33ドルが現在取り得る範囲といえる。

また、中国の鉱工業生産を元にすると、現在の金銀レシオは90倍程度が上限とみられる。

本日は、米国の利上げ終了観測が強まる中、リスク・プレミアムの低下が金価格を押し下げるため、金銀価格は調整するとみる。PGMは株高を受けて上昇余地を探る動きに。

◆穀物

シカゴ穀物市場は上昇した。ドル指数が利上げ打ち止めや、欧州統計の悪化に歯止めが掛かったことからドル安となっていることが価格を支える一方、ブラジル北部の天候が降雨から乾燥気候に転じたことが会材料となった。

小麦は供給不安の後退を受けて軟調推移が続いている。

長期的な話だが、今年地中海を襲ったハリケーン(ストーム・ダニエルと命名)の影響で中東北アフリカ地域に降雨がもたらされたことは、先々の穀物供給に影響を及ぼす、サバクトビバッタの越冬を可能にし、来年以降の供給減少のリスクを高めることが懸念される。

尚、Locust Watchでは中東・北アフリカ地域でのバッタの大量発生は確認されていない。

本日は、昨日の情緒の反動でトウモロコシと大豆は下落、小麦は割安感からの買い戻しで上昇するとみる。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

◆信用リスク・マクロ経済のリスク

・米国債の格下げリスク(残るMoody'sもネガティブウォッチに)、米国債格下げの動きが連鎖して、金融機関の格下げが加速、信用不安に繋がる場合。

・日本政府の財政規律の欠如、成長期待への失望から円が暴落するリスク。

・景気が想定よりも早く底入れしてインフレが再燃、あるいは景気を刺激する目的で早期の利下げが行われ資源価格が高騰、各国中銀の金融政策が再びタカ派の状態になった場合(リスク資産価格の上昇→下落リスク これは顕在化している可能性)

新興国の財政破綻、先進国も含めた債券の格下げによる金融機関・ファンドの突発的な損失拡大による信用収縮、低格付企業の破綻や、市場変動性の高まりによるファンド破綻などもリスクに(米銀格下げ検討は始まっている)。

・中国の構造的成長が終了、過剰債務や不動産問題を抱え、中国が「日本化」するリスク(この場合長期低迷で工業金属やエネルギーなどの景気循環系商品価格の下押し要因となる可能性)

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、モディ支持率の低下による近代化投資の遅れ、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

◆地政学的リスク

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。

・中東情勢不安が拡大し、先進国でテロが発生(景気の下振れリスク)、産油国でテロが発生して原油価格が高騰(インフレ発生で景気下振れリスク)するリスク。

中東問題が、「反イスラエル・親イスラエル」の対立となり、世界に拡散する場合(可能性の低い顕著な景気下振れリスク)

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。暴動激化で中国が分裂するリスク(極めて可能性の低いリスク)。

・西アフリカ・北アフリカで、フランスが旧宗主国である国の反仏感情が高まり、武力衝突が発生して域内治安が悪化する場合。

欧州に難民が流入するほか、地域によっては(リビア、アルジェリア、ナイジェリアなど)原油・ガス供給に影響が及ぶ恐れ。

◆その他のリスク

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。

また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。

◆本日のMRA's Eye


「長期の穀物供給リスク」

2020年から始まったコロナ危機は世界の物流やサプライチェーンの脆弱さを明らかにし、ロシアのウクライナ軍事侵攻は「重要資源の供給能力が特定の国に偏っていること」を示した。

また、100年後の持続可能な社会を目指したとして、コロナショック以降に加速した脱炭素の流れにより、食品として用いられてきた農産品がエネルギーとして用いられる動きが強まっている。

先般、国際連合食料農業機関(FAO)が経済協力開発機構(OECD)と共同で発表した今後10年間の世界の農業市場見通しでは、人口増加や所得増加に伴い食料品の需要・穀物の需要が増加するが、供給能力の改善によってむしろ価格は下落すると予想している。

この背景には、新興諸国で生産効率の悪い低・中所得国の畜産業の集約化が起こり、生産性が改善する一方、先進国では畜産需要の伸び鈍化と生産性の改善継続によって、飼料向けの需要の伸びがこの10年比で緩やかになることが挙げられている。

また、これまで積極的に燃料に用いられてきたバイオ燃料向けに、穀物を利用することが特にEUで制限される見通しであることから、バイオ燃料向けの油脂類の需要の伸びもこれまでの想定よりも緩やかになることも要因として挙げられていた。

食料問題はいつも「人口増加で不足する」と言われる。しかし、1961年以降の穀物需給のデータを見ると、主要穀物に関してはほとんどの年が供給過剰になっているケースが多い。

穀物を含む食品が不足するのは恐らく、物流や保管能力の制限、あるいは専制国家の一部で十分に国民に食品を供給していないことなどが背景にあると考えられる。

実際、過去10年間の主要穀物+大豆の需要の伸びを人口の伸びと、国連データを元にした人口の伸びを比較すると、10年間の前年比増加率平均は、人口増加率が1.0%であったが、小麦は1.4%、コメは1.0%だった。

一方大豆とトウモロコシは各々、3.3%、2.3%となっており、人口の伸びよりも明らかに高い。

これは、小麦やコメが各地で主食として用いられる以外の需要が、大豆やトウモロコシなどよりも高いことが背景にあると考えられ、特に大豆、トウモロコシは上述のバイオ燃料向け需要が顕在化したほか、新興諸国の近代化に伴う食の西欧化により肉食が増加し、飼料向けの需要が増加した影響が大きい。

データを全ての主要穀物について取得できた1963年以降の長期の平均では、人口伸びが1.5%、小麦は2.0%、コメは2.1%、大豆が4.4%、トウモロコシが2.9%であり、全ての穀物の需要の伸びが鈍化している。

これは近代化が進む中で世界的に少子化が進むため(近代化が進むとより高い学歴を志向するようになり、教育費の高騰から経済的に少子化が進むとされる)、人口の伸び率が鈍化していることが需要の伸びに下向きのバイアスを掛けているためと考えられる。

FAO-OECD見通しの通りバイオ燃料向けの需要が減少するのであれば、恐らく今後も農産品の供給は十分であり価格にはやはり下向きのバイアスが掛かることになろう。

恐らく、価格が高騰するのはFAO-OECD見通しが想定していない(リスクシナリオとしている)異常気象の発生や、サプライチェーンの寸断、今回のような戦争勃発の影響で供給が意図的に制限されるような場合に限定され、恐らくこれも過去の例を見れば長期にわたるものにはならなさそうだ。

しかし、農産品の供給の増加動向を見ると収穫面積の拡大よりも、単収の改善に拠るところが大きい。上記と同様、直近10年の内訳を見ると、生産量は24.7%の増加となっているが、収穫面積は8.5%の増加に止まる一方、単収は14.9%の増加となっている。

これは、遺伝子組み換えやより効能の高い化学肥料、農法の開発などの影響が大きいことを示している。しかし、今の脱炭素、環境重視の流れが続くなら化学肥料も使用に制限が掛かり、遺伝子組み換え食品に関しても何らかの規制が掛かることも想定される。

また、そもそも土地自体が有限であり不足する可能性も十分に有り得る。例えば、これまでパーム油を生産するためにインドネシアの森林が伐採され、深刻な生態系への影響が指摘されている。

一度失った森林を元に戻すのはそれこそ百年単位での投資が必要になってくるため、今後、燃料を求めるための森林伐採や開拓などにも規制が掛かるのではないだろうか。

この問題を解消するためにはバイオ燃料などへの過度な依存を見直し、土地に関係なく生産が可能な屋内栽培の能力拡大なども重要な選択肢となるのではないか。

ただ、その場合のエネルギー確保の問題は恒に付き纏うため、化石燃料や水力、原子力などの従来型のエネルギー供給能力確保も重要な課題になると予想される。


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