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中東情勢膠着で景気減速懸念に焦点 軟調
  • MRA商品市場レポート

2023年11月8日 第2582号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「中東情勢膠着で景気減速懸念に焦点 軟調」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は発電用燃料価格や、自国通貨建て商品の一角が上昇したが、軒並み水準を切り下げる動きとなった。

かなり苛烈な反応を見せていた中東情勢だが、各国の外交努力(欧米、アラブ諸国)もあり、今のところこの問題が中東全域には広がらないのでは、との見方が広がる中で、原油供給が市場の波乱要因にならない(今は考慮しなくても問題ない)との判断が強まる中で、改めて景気そのものがフォーカスされたことが材料。

中東情勢の悪化を受けて余り気にされていなかったが、各国PMIは減速、米国のPMIはさほど悪くなっていなかったが、ISM製造業・非製造業指数が7月以降の改善から一転、悪化したことを受けて、これまでの高金利政策が米国の景気減速に繋がる、との見方が強まっている。

ある意味、景気減速→インフレ抑制、を企図して利上げを行ってきたため、これは中央銀行からすれば望ましい結果といえ、この30年見られていた「米長短金利逆転(逆イールド発生)後の景気後退局面入り」の可能性が高まっていると言える。

ただ、米ISM製造業・非製造業指数の悪化は単月であることを考えると、このリスク資産価格の下落がトレンドになるかどうかは、12月の統計も確認する必要があるため、まだ予断を許さない状況は続く。

【本日の見通し】

本日は、経済統計で注目材料は少ないが、FOMCメンバーの講演が予定されており、この内容に注目したい。

昨日はFOMCメンバーのタカ派な発言もほとんど意に介さず、米長期金利は3年債入札の結果を受けて低下していたが、本日も恐らくFOMCメンバーはタカ派な発言をすると予想され、これがどのように解釈されるかに注目したい。

・FRBパウエル議長開会の辞

・FRBクック理事講演

・FRBジェファーソン副議長閉会の辞

・ニューヨーク連銀総裁講演

・FRBバー副議長(銀行監督担当)講演

・米10年債入札

・独10年債入札

・NATO事務総長とハンガリー首相記者会見

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

昨日の原油価格は大幅に下落した。中東情勢が原油供給減少にまでは繋がらない、との見方が強まっていること、米ISM製造業・非製造業指数とも悪化しており、最大消費国である米国の需要減少見通しが再燃していることが材料視された。

昨日発表された中国の貿易統計は、実際は原油価格への影響が大きくないが、原油・石油製品価格に対してはほぼ中立な内容。

10月の中国の原油輸入は前年比+13.5%の4,896万9,000トン(前月+13.7%の4,574万トン)と伸びが前月から鈍化したが過去5年の最高水準(4,551万1,000トン)を上回った。

一方、石油製品は輸入が前年比+63.4%の413万4,000トン(前月+84.6%の418万6,000トン)と過去5年レンジと比較しても非常に高い水準を維持した。

輸出は+15.9%の517万トン(前月▲3.6%の544万トン)と回復、過去5年平均を上回った。やはり、世界的な石油製品(中間留分)不足を受けて輸出は堅調とみられる。

中国の国内需要回復の可能性もあるが、顕在需要は前年比+16.7%の6,237万トン(前月+22.8%の6,233万トン)と絶対水準は変わっていない。

イスラエルはガザに侵攻、南北を分断しているが、他の地区に今回の対立が広がっていない。

(どちらかを擁護する目的があるか否かはここでは議論しないが)米ブリンケン国務長官が各国への歴訪を続け、まだイランですら落着いた対応をしていることが、地政学的リスクの顕在化による、供給不安を解消しているといえる。

イスラエルによるガザ侵攻作戦終了後の絵姿が見えてこないため、まだアラブ諸国がイスラエルに対して反発し、供給不安が意識される可能性はあると考える。

供給面に不安がなければ、かねてから指摘しているように景気が減速する中で、原油価格には下押し圧力が掛かり、産油国の減産が下げ余地を限定させる、という流れになる。

これまで、米景気は7月頃に底入れし、緩やかな回復基調に入ったがこれを抑制するための金利高誘導が回復ペースを遅らせる、と整理してきたが、直近の米ISM製造業・非製造業指数は大幅に減速しており、「逆イールド発生後の景気後退」の可能性が徐々に高まっている。

DOEデータを元にした価格分析では、ロシアのウクライナ侵攻後、直近までのデータを含む分析だと2024年のBrentの予想平均価格は84.7ドルとなる。

しかし現状、ロシアからの原油輸出は安定しており、中東情勢も他国(特にイラン)に拡大していない。仮にサウジアラビア・ロシアの追加減産が来年以降、継続しないと仮定し、ロシアのウクライナ軍事侵攻前までのデータを元にすると2024年のBrent価格は77.5ドルとなる。

ロシア情勢・中東情勢を踏まえた原油供給状況は大きく変化していないため、原油価格の「想定されるレンジ」は以下の通り。

現在は 3.の状態。今のところこの問題がイランにまで波及する展開は、確度の低いリスクシナリオの位置づけになりつつある。

こうなると市場の注目は再び減速した米ISM製造業・非製造業指数を受けた米景気の減速動向に集まることになろう。

<シナリオ別原油価格見通し>

1. 中東問題がイランにまで波及し、OPEC諸国も対立国ヘの供給を絞る(オイルショック状態)、イランに対する制裁強化など
Brent 120-150ドル

2.中東問題がイランにまで波及するが、OPEC諸国が増産する
Brent 90-120ドル

3.中東問題がイランに波及せず、OPEC諸国が増産しない
Brent 75-95ドル

4.中東問題がイランに波及せず、OPEC諸国が増産する
Brent 70-90ドル

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

5. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)
Brent 60-90ドル

6. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)
Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

Q423 需要の伸び横這い・中東情勢不安による供給制限懸念(→高値維持)グローバル・リセッション、危機顕在化の場合(↓↓)
Q124 欧米の景気後退局面入りによる需要鈍化・生産調整継続(↓高値維持も下落開始)
Q224~Q324 実質金利プラス維持による景気幻想継続 製造業の循環的な回復が下支え(↓↓)OPECプラス減産維持の場合(↓)
Q324以降 景気の循環的な回復・中国の正常化(↑)OPECプラス減産維持の場合(↑↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

10月31日時点のWTIの投機筋ポジションは、ロングが▲12,748枚、ショートが+25,759枚と弱気ポジションに転じている。原油価格高騰による景気への懸念が、供給不安の懸念よりも勝っている状況。

Brentはロングが▲10,120枚、ショートが+6,293枚と、こちらも供給不安というよりも景気そのものへの懸念が強まっている状況。

本日は、昨日の大幅下落を受けた買い戻しで上昇すると考える。供給面の不安が後退したため、市場は再び景況感に注目することになるが、足下発表されている景況感関連や消費関連指標の減速を受けて、再び価格レンジは「プレ・中東情勢不安」の水準に戻った感。

今のところ、中東諸国、欧米外交努力によって、暴力の連鎖が広がることは抑制されているが、イスラエル軍のガザ地区侵攻で民衆レベルまで暴動が広がるリスクは無視できない状況は変わっていない。

原油価格が中東情勢を背景に上昇するとすれば、イスラエル・ハマス問題がその他の地域に波及し、米国が物理的に関与せざるを得なくなった場合だろう。これまでの報道ベースでは発生可能性の低いリスクに。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は上昇。気温上昇や中東情勢が膠着していることを材料に売られてきたが、一応ピークシーズンでもあり、割安感から買われた模様。

欧州の在庫水準の高さを考えると、今冬に関しては数量ベースで調達が不充分、というリスクはさほど高くないと見ている(ただし供給途絶が発生すれば、価格には上昇圧力が掛かるが、ウクライナ危機発生時のような暴騰にはならないだろう)。

欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続

2.LNGターミナル・ガス田・船舶の不慮の停止

3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)

4.景気減速(価格下落要因)

5.季節要因・気象状況

1.はロシアのLNGカーゴはまだ取引されており、スポットカーゴ価格の上昇要因にはならなくなってきた。ロジカルには西側諸国が脱ロシアを完全に完了するまでは、気温の変化や政治的なイベントによって季節的に価格が高騰するリスクは残る。

弊社のシミュレーションでは、今冬の欧州のガス調達は、ロシアが仮にガス輸出を完全に停止したとしても凌げる見通し。

ただし、在庫が減少すれば翌年以降の調達に影響が出る(数量確保の問題と、価格上昇の問題両面)ため、脱ロシアの完全完了までは上昇リスクは無視できない。

弊社の試算では欧州が完全にロシア産ガスを排除(第三国経由でもロシア産のLNGを購入しない状態になる)できるのは2027年頃。ロシア産のLNGの輸出が阻害されなければ2025年頃。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

今のところロシア産ガスの供給は実質的に制限されておらず、LNGの形で欧州諸国も購入を続けている。ガスがLNGに置き換わっただけとも言える。

しかし、脱ロシアが完了した場合、ロシアがこれまで供給してきた西側諸国向けのガスが「浮く」ことになる。2022年、欧州向けにロシアが削減したパイプライン輸出量は708億立方メートルで、総輸出量9,685億立方メートルの7.3%に及ぶ。

これを他地域の需要増加で補うことは恐らく不可能であり、FID済みのプロジェクトも見直しせざるを得なくなる可能性がある。

2.は、Chevronがイスラエル沖のTamarガス田での生産をイスラエル・ハマスの戦闘による情勢不安を理由に停止している。

今回の戦闘が長期化するのか否か、現在では不透明であり、戦闘行為の中でパイプラインが破壊される可能性も否定できない(恐らく米国の空母打撃群がイスラエル沖に展開しているため、そのリスクは低いと考えられるが)

また、フィンランドとエストニアを結ぶパイプラインが、何らかの工作で破壊されたと報じられていることも、供給懸念を高めている(当然、ロシアは関与を否定)。

この他、異常気象発生時にはインフラに障害が出る可能性が高まる。米海洋大気庁の見通しでは、大西洋でのハリケーンの発生頻度は例年を上回る見通し。

通常、エルニーニョ現象が発生したときは大西洋の海水温が低下してハリケーンの発生・勢力が弱まるが今年は例外的な見通しとなっており、北米→欧州のLNG輸送や輸出ファシリティへの影響は無視できないリスクに。

また、異常気象の影響による干ばつでパナマ運河の水位が低下しており、LNG輸送に障害が発生、スポット価格が上昇する可能性が出てきた。

3.4.は顕在化している。しかし3.に関しては、ロシアもこれ以上ガス供給を削減することは難しい。

ロシア・ウクライナ戦争は越冬して来年に持ち越される可能性が高まる中、この冬にロシアがなりふり構わない対応をしてくる可能性は否定できない。

それでもガス在庫の水準は高く、仮にロシアが輸出を完全に止めても今冬の調達には問題がなさそうな状況(ただしこの場合、供給が足りていても価格は上昇する)

5.は2.とも関係するが、今年の冬はエルニーニョ現象が見込まれ、通常であれば暖冬となりやすいため、価格上昇方向のバイアスは強まらないと予想される。

米メキシコ湾発のLNGのタンカーレートは日本向け・欧州向けとも小幅に上昇している。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米天然ガス価格は下落。日替わりで気温上昇/低下観測が価格を左右しているが、昨日は北部の気温がさらに上昇するとの予報が価格を押し下げた。

基本的に米国のガス供給は十分であり、気温動向だけが足下の価格を形成していると言っても言い過ぎではない。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物市場は小幅に上昇。TTFが上昇したことを受けて。

9月のJLCの水準は11.51ドルであり、現在のスポット価格はこの水準を上回っている。

その他のアジアの国の長期契約ベースの価格は恐らくJLCと大差がないと考えられ、今年の冬場の需要期の価格はほぼJLCの水準で推移している。

今年は回避されているが、豪州は国内供給が充分でない場合、通常7月1日まで、遅くとも10月1日までにガス不足の懸念を通知し、実際に国内供給が不充分と判断された場合、次の1年間は輸出が制限される(ADGSM)。

この条項が発動された場合、スポット価格の上昇リスクとなるため、意識はしておきたい。

また、サハリン2の生産能力の低下、供給の減少はかなり前から指摘されているが、今のところ顕在化していない。多くの必要な部材は中国などを経由してロシアにもたらされている可能性があり、実は長期の供給リスクは懸念ほどではないかもしれない。

9月の中国の天然ガス生産は+6.5%の1,330万9,000トン(前月+8.2%の1,360万3,000トン)と同じ時期の過去5年の最高水準を上回っている。

10月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比+15.5%の879万トン(前月±0.0%の1,015万トン)と前年比ベースでは回復したが、昨年9月の輸入水準が高かったことによる前年比ベースでの上昇であり、総じて減少基調にある。季節的な需要減少。

9月のパイプラインベースの輸入は前年比+4.9%の446万トン(前月+10.4%の456万トン)と過去5年の最高水準(425万トン)を上回っている。

9月のLNG輸入は前年比▲3.5%の568万7,000トン(前月+33.4%の629万8,000トン)と減少し、過去5年平均に近接した。

国内生産の増加と、固定インフラであるパイプラインからの供給が優先される中で、調整弁的に用いられるLNG調達需要が低下したとみられる。

ただし合計の「ガス顕在需要」は前年比+6.3%の2,360万3,000トン、年初来累計は+7.2%の2億1,341万7,000トンと着実に増加している。

※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

10月29日時点の日本の大手発電業者のLNG在庫は218万トン(過去5年平均259万8,600トン、大手発電業者在庫の過去5年平均は201万トン)と、先週から大幅に増加したが、いずれの集計でも過去5年平均を下回った状態が続いている。

速報性がない、大手電力以外のLNG在庫を含めた過去5年の水準と比較すると、過去5年の最低水準(235万2,800トン)も下回っている。

夏が例年よりも暑い猛暑で電力需要が増加したことに加え、原子力発電所の再稼働、大手発電業者のLNG調達は、自社の顧客を対象にした数量しか行われない。これは新電力の顧客の需要データが開示されないため、他社分まで調達することができないため。

仮に冬場が寒くなった場合、再びガスや石炭不足となり価格が上昇する可能性はある。通常過不足はスポット(JKMベース)で行い、電力のスポット価格はJKMの影響を受けるため、再び冬場の電力価格が上昇するリスクは無視できない。

また、今年はエルニーニョ現象の影響で太平洋側は台風の発生頻度・勢力が強まる可能性がある。この場合、輸送に影響が出ることも考えられるため、エルニーニョ現象が発生しているものの在庫水準の低さを考えると、冬場の価格上昇リスクも無視できない。

JEPXベースで調達して大手電力会社の価格で電気を販売している業者、JEPXベースで電気を調達している消費者はこのJKMのリスクを抱えることになる。

本日は、中東情勢不安が解消していないことと、温暖な気温見通しを背景に結局高い水準を維持すると考える。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP・東京ガス提示の数値を使用している。 LNG1トン=2.19立方メートル(液体)=1,360立方メートル(気体)= 46MMBtu LNG船1隻 147,000立方メートル=67,000トン 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル=7,757トン 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップ先物は上昇した。石炭価格に対する説明力が高いTTFの上昇と、これまでの下落を受けて買い戻しが入った。

現在のガス価格(JKM)との関係性を元に回帰分析を行うとNEWC価格は170ドル、±1標準偏差で100~240ドル程度までが統計的に説明可能なレベル。

期先の価格は現在の生産コストに近いことを考慮すると、期先の価格が130~150ドル程度まで再び上昇しているため、130~220ドルが説明可能なレンジであり、現在のスポット価格はやや安く、足下の需給が緩和していることを示唆。

なお、昨年対比で今年の冬が寒くなる(昨年は記録的な暖冬)可能性が後退、北半球はアジアを含めて暖冬見通しであることは、石炭価格を押し下げよう。

ロシア問題が継続する以上、欧州が完全に脱ロシアを達成することが期待される2027年(早ければ2025年、現実的には2026年)までは、ピークシーズン中の価格上昇リスクはつきまとう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

10月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比+23.3%の3,599万2,000トン(前月+27.5%の4,214万トン)と過去5年レンジを大幅に上回る水準を維持した。

ガスも同様であるが、中国の夏場の終了で季節的な需要が減少していることが、輸入数量の絶対水準の低下をもたらしている。

国別では9月は米国・モンゴル以外の地域では輸入量が概ね減少しているが引き続きロシアのシェアが35.7%(前月35.8%)と高い。次いでインドネシアが27.6%(25.5%)、豪州24.7%(30.3%)となっている。

9月の中国の石炭生産は、前年比+1.3%の3億9,131万トン、1,304万トン/日(前月+3.0%の3億7,902万トン、1,222万6,000トン/日)と伸びが鈍化したが、過去最高水準は上回っている。

9月の中国の電力消費量は前年比+10.1%の7,811億kwh(前月+4.0%の8,861億kwh)と伸びが加速した。構造的な需要増加の影響とみられる。

本日は、中東情勢不安を受けたガス価格の高止まり、目先の供給不安拡大に今のところ拡大していないことや、気温上昇観測が価格を下押しするため、現状維持と見る。

2024-2025年の価格下落はやや気になる動きであり、さらに下落して全ゾーンコンタンゴ化する可能性も否定できず。

◆LME非鉄金属

LME非鉄金属市場は下落した。ユーロ安を背景とするドル高進行がそもそも価格を押し下げたが、中国の貿易統計は輸入が増加したが輸出が減速、世界景気の減速を受けて中国の国内余剰在庫の解消に時間が掛かると見られたことも材料となった。

中国政府は景気刺激のためのインフラ投資前倒しを決定しており、恐らくこの流れであれば年末開催される中央経済工作会議でも、財政赤字を拡大させつつ景気刺激を行う方針が確認されると考えられる。

また、これに加えて脱炭素の動きにともなう投資や、脱中国に伴う他地区での設備投資は継続が予想されることも価格を下支えするとみている。

しかし、循環的な景気の回復への期待があったが、国内外とも指標が減速を始めている(ついに米国の指標も減速を始めた)ため、政策要因が価格を下支えするが、基調としては年内は弱気と考えられる。

なお、不動産問題が解消した訳ではなく、むしろ問題を先送りしたためいずれかのタイミングで大きなリスクとなる見込みだ。

中国が不動産危機を乗り切ることに失敗し、中国政府が想定以上にこれまで積み上がった余剰生産能力の解消に手間取った場合、景気は長期低迷、いわゆる「日本化」が10年単位で起きる可能性が高い。

さらに労働人口がピークアウトし、かつ、西側諸国の制裁によって先端分野の発展が阻害され生産性が低下、将来的にはインフレをもたらしソ連型の国家崩壊、というシナリオも長期的には有り得る話だ。

就任以降の習近平国家主席の政策は、決して成功しているとは言えない。

10月の中国の貿易統計では、ベンチマークである銅地金・製品輸入は前年比+23.7%の50万168トン(前月▲5.8%の48万426トン)と過去5年平均を回復した。中国の精錬銅輸入は年末にかけて増加する傾向があるが、昨年は10月に輸入が減少していたが、今年は3月頃からの輸入量の回復トレンドが継続している。

10月の銅鉱石・コンセントレートの輸入は前年比+23.5%の230万9,738トン(前月▲1.3%の224万1,135トン)と過去5年の最高水準を再び上回った。

9月の中国の精錬銅生産は+20.7%の114万1,000トン(前月+18.4%の108万5,000トン)と過去5年の最高水準を大きく上回っている。

9月の銅スクラップの輸入は前年比+2.0%の17万283トン(前月+0.9%の15万6,077トン)と過去5年平均を維持している。

精錬銅輸入の増加と銅鉱石輸入の増加は、製造業PMIの悪化、10月中は上海取引所在庫が減少していることを合わせて考えると、統計に反映されない企業在庫として取得された可能性があると見ている。

本日は、昨日の下落を受けた安値拾いの買いが価格を支えるものの、需給ファンダメンタルズが悪化している中、ユーロの景況感悪化を受けたドル高進行が価格上昇を抑制すると考える。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、大連は上昇、豪州原料炭スワップ先物は上昇、大連原料炭価格は下落、上海鉄筋先物は下落した。

中国貿易統計では鉄鋼製品輸出が増加したが単価が再び下落しており、安売りによる在庫解消の動きが続く一方、海外の景況感の悪化が国内の在庫解消に影響を及ぼすとの見方が強まったこと、中国北部に寒波が襲来していることで、建設需要が減速するとの見方が強まったことが背景。

10月の中国粗鋼生産は前年比▲5.6%の8,211万トン(前月+3.0%の8,641万トン)と減速し、過去5年平均を下回った。

一方、10月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲13.3%の66万7,750トン(前月▲28.1%の64万トン)と低迷が続き、同じ時期の過去5年の最低水準を下回る状態が続いている。

10月の中国の鉄鋼製品の輸出は前年比+53.3%の793万8,700トン(前月+61.8%の806万トン)と過去5年の最高水準を大きく上回る状態が続いている。同時に鉄鋼製品輸出額は前年比▲7.1%の62.9億ドル(前月▲6.0%の65.6億ドル)と金額・伸び率とも前月から減速した。

輸出額を数量で割ったトン当り単価は792ドル(前月814ドル)と、9月は前月から回復していたが、再び減速、価格は今年最低水準に低下しており、中国国内の鉄鋼製品在庫の処理や需給が緩和、貿易統計の輸出総額の減少をみるに、海外の景況感も悪化している可能性が高いことを示唆している。

中国不動産問題は先送りし、それがいつどのタイミングで噴出するかは分らないうえ、最悪期を循環的に脱したとみられた鉄鋼製品市場の状況は再び減速している可能性が出てきた。

先月、単月の回復で判断するのは早計と指摘したが、まだ中国の在庫調整には時間が掛かる可能性があると考えるべきだろう。

週間の鉄鋼製品港湾在庫統計は、鉄鋼製品在庫は▲52万8,000トンの1,105万3,000トン(過去5年平均 1,154万8,000トン)と過去5年平均を下回っているが、かなり水準は過去5年平均に近づいており、鉄鋼製品価格の下押し要因となっている。

鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比+210万トンの1億700万トン(過去5年平均 1億3,531万トン)、在庫日数は23.3日(▲0.3日、過去5年平均 29.8日)。

鉄鉱石は在庫は日数ベースでも、数量ベースでも過去5年平均を下回っており、鉄鉱石の需給はタイトで一定の在庫積み増し需要が存在する。

主要原料炭の輸入港である京唐港の原料炭在庫は+10万トンの204万トン(過去5年平均 125万8,000トン)、在庫日数は+0.1日の8.3日(過去5年平均 5.2日)と、原料炭の需給は緩和している。

本日は、中国の対策期待や鉄鋼製品生産の減少が需給をタイト化させるものの、中国国内外の景気減速感の強まりを受けて、鉄鋼製品価格が軟調に推移すると予想されることから、鉄鋼原料価格にも下押し圧力が掛かる公算。

◆貴金属

昨日の金銀価格は続落した。米当局者がタカ派な発言をしたものの、景気減速観測の強まりが長期金利と実質金利を押し下げ基準価格は上昇したが、利上げサイクルの終了期待や、中東情勢が今のところ膠着していることで、リスク・プレミアムが剥落したことが結果的に価格を押し下げた形。

PGMは金価格の下落や、景気の減速観測を受けて大幅に下落した。

足下、金価格の構成要素のうち、リスク・プレミアムの占める比率が高まっている。金リスク・プレミアムの上昇要因の主なところは、

1.米利上げによる信用不安の高まり(低格付企業・新興国)

2.ロシアに対するドル決済禁止制裁を受けた、準備金におけるドルから金ヘのシフト

3.ロシアのウクライナ侵攻

4.イスラエルとパレスチナの戦争開始による中東情勢不安並びに、テロ組織の大規模攻撃であるため、各地にテロが拡散するリスク

あたりだろう。これらと同じ事象は、ニクソン・ショック~プラザ合意~アジア危機収束まで30年近く続き、金価格に占めるリスク・プレミアムのシェアが高止まりした。

2019年基準で算出した現在のリスク・プレミアムのシェアは55%と、ほぼ上記の期間と同様の状況になっており金利水準以上にその他の要因が金価格の形成に影響を与えていることが確認できる。

現状を理解する手助けとなるため、あえて実質金利・信用リスク・その他、に分離した場合、実質金利部分が45%、信用リスク要因が20%、その他の要因が35%となった(2019年データを元にした分析結果に変更)。

直近1年間の説明力を相関係数で確認すると、最も金価格に対する説明力が高いのがFF金利で0.68、次いでドル指数で▲0.64、リスク・プレミアムが0.59程度、期待インフレ率(▲0.30)、実質金利(▲0.01)と、実質金利は現在の価格形成に大きな影響を与えていない。

この5年間のデータを元にした分析では、FF金利±1%の変化で、実質金利は±0.5%変化、金価格は±20ドル変化し、リスク・プレミアムは±150ドル変化する。

市場予想では2024年は▲0.5%程度のFF金利引下げが見込まれているため、金の基準価格は+10ドル程度の押し上げ要因となり、リスク・プレミアムは、▲75ドルの低下要因となるため、仕上がりで▲65ドルの価格低下となる。

現在の金価格は1,950ドル近辺であるが、1,885程度までの下落余地があることになる。しかし中東情勢次第だろう。

銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。

月次のボリンジャーバンドの分析は有効に機能しているが、仮にボリンジャーバンドの下限だと75倍、上限ならば90倍程度が目処になるが、金を1,900ドル程度とすると21.1~25.33ドルが現在取り得る範囲といえる。

また、中国の鉱工業生産を元にすると、現在の金銀レシオは90倍程度が上限とみられる。

本日は、米実質金利の低下と中東情勢不安の継続が価格を押し上げるが、中東情勢が足下は膠着していることに伴うリスク・プレミアムの剥落で軟調推移。

◆穀物

シカゴ穀物市場はまちまち。米需給報告発表を控えて。

10月の中国の大豆輸入は前年比+24.6%の515万8,000トン(前月▲7.4%の715万4,000トン)と過去5年の最低水準だった昨年からは回復したが、輸入需要は低迷している。

中国の大豆港湾在庫は690万5,580トンと過去5年平均を回復、大豆ミール在庫も71万7,000トンとやはり過去5年平均を回復した。

・11月米単収見通し 市場予想(前月)トウモロコシ 173.3Bu/エーカー(173.0Bu/エーカー)大豆 49.6Bu/エーカー(49.6Bu/エーカー)小麦 NA(48.6Bu/エーカー)

・11月米生産見通し 市場予想(前月)トウモロコシ 150億8,885万Bu(151億6,400万Bu)大豆 41億167万Bu(41億400万Bu)小麦 NA(18億1,200万Bu)

・11月米輸出見通し 市場予想(前月)トウモロコシ NA(20億2,500万Bu)大豆 NA(17億5,500万Bu)小麦 NA(7億Bu)

・11月米在庫見通し 市場予想(前月)トウモロコシ 21億4,056万Bu(21億1,100万Bu)大豆 2億2,250万Bu(2億2,000万Bu)小麦 6億7,004万Bu(6億7,000万Bu)

・11月CONABブラジル作付け面積(市場予想/前月)トウモロコシ 2,193万ha(2,119万ha)大豆 4,553万ha(4,518万ha)

・11月CONABブラジル生産量(市場予想/前月)トウモロコシ 1億2,779万トン(1億1,940万トン) 単収 5,824kg/ha(5,636kg/ha)大豆 1億6,323万トン(1億6,200万トン) 単収 3,589kg/ha(3,586kg/ha)

長期的な話だが、今年地中海を襲ったハリケーン(ストーム・ダニエルと命名)の影響で中東北アフリカ地域に降雨がもたらされたことは、先々の穀物供給に影響を及ぼす、サバクトビバッタの越冬を可能にし、来年以降の供給減少のリスクを高めることが懸念される。

尚、Locust Watchでは中東・北アフリカ地域でのバッタの大量発生は確認されていない。

本日は、CONABの生産見通し上方修正を受けて、軟調な推移を予想。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

◆信用リスク・マクロ経済のリスク

・米国債の格下げリスク(残るMoody'sの格下げリスク)、米国債格下げの動きが連鎖して、金融機関の格下げが加速、信用不安に繋がる場合。

・日本政府の財政規律の欠如、成長期待への失望から円が暴落するリスク。

・景気が想定よりも早く底入れしてインフレが再燃、あるいは景気を刺激する目的で早期の利下げが行われ資源価格が高騰、各国中銀の金融政策が再びタカ派の状態になった場合(リスク資産価格の上昇→下落リスク これは顕在化している可能性)

新興国の財政破綻、先進国も含めた債券の格下げによる金融機関・ファンドの突発的な損失拡大による信用収縮、低格付企業の破綻や、市場変動性の高まりによるファンド破綻などもリスクに(米銀格下げ検討は始まっている)。

・中国の構造的成長が終了、過剰債務や不動産問題を抱え、中国が「日本化」するリスク(この場合長期低迷で工業金属やエネルギーなどの景気循環系商品価格の下押し要因となる可能性)

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、モディ支持率の低下による近代化投資の遅れ、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

◆地政学的リスク

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。

・中東情勢不安が拡大し、先進国でテロが発生(景気の下振れリスク)、産油国でテロが発生して原油価格が高騰(インフレ発生で景気下振れリスク)するリスク。

中東問題が、「反イスラエル・親イスラエル」の対立となり、世界に拡散する場合(可能性の低い顕著な景気下振れリスク)

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。暴動激化で中国が分裂するリスク(極めて可能性の低いリスク)。

・西アフリカ・北アフリカで、フランスが旧宗主国である国の反仏感情が高まり、武力衝突が発生して域内治安が悪化する場合。

欧州に難民が流入するほか、地域によっては(リビア、アルジェリア、ナイジェリアなど)原油・ガス供給に影響が及ぶ恐れ。

◆その他のリスク

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。

また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。


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