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雇用関連統計悪化・ドル高・米石油製品出荷急減速で軟調
  • MRA商品市場レポート

2023年12月7日 第2603号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「雇用関連統計悪化・ドル高・米石油製品出荷急減速で軟調」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は発電燃料や鉄鋼原料価格が上昇したが、その他の景気に連動しやすい原油や非鉄金属価格は下落した。

欧州の複数の国がテクニカル・リセッション入りする可能性が高まる中、ECBが来年3月には利下げに踏み切るとの見方が強まりユーロが全面安となり、ドル高が進行したことが広くドル建て資産価格を押し下げる形となった。

また、注目のADP雇用統計は前月比+10.3万人(市場予想+13万人、前月+10.6万人)と市場予想、前月を下回り米国の労働市場需給が緩和していることが確認された。

また、昨日発表された米石油統計では、石油製品の出荷が急減速している。これまで価格上昇でガソリンは低迷していたが、ディスティレートの出荷も減少、唯一好調だったケロシン(ジェット燃料など)の出荷も急減速している。

これまでFRBが継続してきた景気減速・インフレ抑制のための高金利政策の影響が顕在化し始めた、といえる。「逆イールドカーブの期間発生の後は、ほぼ確実に景気後退局面が訪れる」というこれまで担保されてきたルール通りになってきた、とも言えるだろう。

この景気の急減速を回避し、ソフトランディングを目指すため各国とも金融緩和を検討し始めている。気が早い市場は米欧とも3月頃の利下げを織り込み始めた。

また、バランスシート不況にある中国も、政府の財政出動への期待が高まっている状況。しかしいずれの国も「先々、再び価格が上昇する、ないしはバブル再燃」を意識しているため、過去に見られたほどの大規模な経済対策や金融緩和の実施は難しいのではないか。

【本日の見通し】

本日は、明日の雇用統計を控えていったん、昨日売られた商品が買い戻され、買われた商品が売られる動きになると考える(投機の対象になり難い、流動性の低い発電燃料はやや別議論)。

しかし足下、欧州の景気減速とそれにともなうユーロ安・ドル高が価格を下押しすると考える。

本日の注目材料は以下の通り。この中では米国の雇用関連統計と、中国の貿易統計が重要になる。特に中国は輸出の減速が一時的なもので回復するのか、国内の景気刺激策ヘの期待を背景に輸入が増加するかに焦点。

ただし、中国は現在「在庫調整局面」にある可能性が高いため、市場予想の輸入増加はやや強気過ぎるかもしれない。

また、景気が悪化する中では中国に妥協しやすいEU中国首脳会談、原油価格動向、中東情勢が不安定化している中でのロシア・イラン首脳会談も注目したい。

・11月米チャレンジャー人員削減数 前月 前年比+8.8%

・米週間新規失業保険申請件数 市場予想 220千件(前週 218千件)

・11月中国貿易統計 貿易収支 市場予想 549億ドルの黒字(前月 565億3,000万ドルの黒字) 輸出 前年比±0.0%(▲6.4%) 輸入 +3.9%(+3.0%)

・EU中国首脳会談(北京、8日まで)

・ロシア・イラン首脳会談(モスクワ)

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油・石油製品

昨日の原油価格は下落した。米ADP雇用統計の悪化と、米石油統計でほとんどの製品の出荷が急減していることを受けた需給ファンダメンタルズの緩和観測と、欧州の利下げ観測を受けたユーロ安の影響でドル高が進行したことが材料となった。

件のOPECプラスの追加自主減産は早くても年明けからであり、需給バランスのタイト化も年明け以降であることから、足下の弱気に傾いたセンチメントが強気に傾く材料が無い状態。

今のところ「OPECプラスは減産で合意しなかった(≒減産見送り)」と市場は判断している状態。この状態だと、Q124のBrentは77ドル程度、減産がきちんと遵守された場合で80ドル程度、信頼が回復してかつ、減産が維持されるならば85ドル程度が想定される。

ただし、足下、ベネズエラがガイアナに対して軍事侵攻する可能性が出てきた。軍事侵攻がなかったとしても勝手にエセキボ地域の油田をPDVSAに開発することを許可している。

この場合、部分的に解除された米国のベネズエラに対する制裁は再び実行され、供給不安が価格を押し上げる可能性がある。

ロシア情勢・中東情勢を踏まえた原油供給状況は大きく変化していないため、原油価格の「想定されるレンジ」は以下の通り。

現在は 3.の状態。今のところこの問題がイランにまで波及する展開は、確度の低いリスクシナリオの位置づけになりつつある。

こうなると市場の注目は再び減速した米ISM製造業・非製造業指数を受けた米景気の減速動向に集まることになろう。

<シナリオ別原油価格見通し>

1. 中東問題がイランにまで波及し、OPEC諸国も対立国ヘの供給を絞る(オイルショック状態)、イランに対する制裁強化など
Brent 120-150ドル

2.中東問題がイランにまで波及するが、OPEC諸国が増産する
Brent 90-120ドル

3.中東問題がイランに波及せず、OPEC諸国が増産しない
Brent 75-95ドル

4.中東問題がイランに波及せず、OPEC諸国が増産する
Brent 55-75ドル

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

5. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)
Brent 60-90ドル

6. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)
Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

Q423 需要の伸び横這い・中東情勢不安による供給制限懸念(→高値維持)グローバル・リセッション、危機顕在化の場合(↓↓)OPECプラスの結束崩壊・増産合戦開始(↓↓↓)
Q124 欧米の景気後退局面入りによる需要鈍化・生産調整継続(↓高値維持も下落開始)
Q224~Q324 実質金利プラス維持による景気幻想継続 製造業の循環的な回復が下支え(↓)OPECプラス減産維持の場合(→)
Q324以降 景気の循環的な回復・中国の正常化(↑)OPECプラス減産維持の場合(↑↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

11月28日時点のWTIの投機筋ポジションは、ロングが+1,597枚、ショートが+25,750枚と新たにショートが積増しされた。これは先々の買い戻し圧力となる。

Brentはロングが+6,767枚、ショートが▲4,863枚と、こちらは強気に転じている。OPECプラスの減産を期待してのものと考えられるが、今回の決定を受けてロングの解消が原油価格を下押ししよう。

本日は、昨日の雇用統計の減速と、米石油統計での製品出荷の急速な減少を背景とする需給緩和観測から軟調推移を予想。OPECプラスの口先介入は続いているが、実際に減産が始まるまでは一時的に下値余地を探る動きになると考えられる。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は上昇。これまで材料視されていなかった気温低下が、足下の在庫減少ペースの加速を受けて材料視された形。

欧州の在庫水準の高さを考えると、今冬に関しては数量ベースで調達が不充分、というリスクはかなり低下したと見ている。

しかし、弊社のシミュレーションの結果では、来年夏以降にガス調達が不足するリスクはまだ残存しているため、むしろ来年以降が重要になろう。結局のところ需要動向が需給を左右すると考えられる(詳細は有料のマンスリーレポート12月号で解説)。

欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続

2.LNGターミナル・ガス田・船舶の不慮の停止

3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)

4.景気減速(価格下落要因)

5.季節要因・気象状況

1.は弊社の試算では欧州が完全にロシア産ガスを排除(第三国経由でもロシア産のLNGを購入しない状態になる)できるのは2027年頃。ロシア産のLNGの輸出が阻害されなければ2025年頃と予想される。

今のところロシア産ガスの供給は実質的に制限されていないが、仮に脱ロシアが完了した場合、ロシアがこれまで供給してきた西側諸国向けのガスが「浮く」ことになる。

2022年、欧州向けにロシアが削減したパイプライン輸出量は708億立方メートルで、総輸出量9,685億立方メートルの7.3%に及ぶ。

これを他地域の需要増加で補うことは恐らく不可能であり、FID済みのプロジェクトも見直しせざるを得なくなると予想される。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

2.は、異常気象の影響による干ばつでパナマ運河の水位が低下しており、LNG輸送に障害が発生、米国産のLNGは喜望峰周りでの輸送にシフトしており、スポット価格の上昇要因に。

3.は既にロシアからの供給削減は現時点ででき得る限界まで行われているため、目先は材料になり難い。

4.は顕在化しているが、足下、欧州の統計が改善しており来年以降の需要回復が価格の押し上げ要因となる可能性が出てきた。

5.は2.とも関係するが、エルニーニョ現象中は暖冬になりやすく価格上昇方向のバイアスは強まらないと予想される。ただ、エルニーニョ現象発生後のラニーニャ現象発生はリスクとなる(2024年夏以降か)。

米メキシコ湾発のLNGのタンカーレートは、日本向け・欧州向けとも低下している。

11月27-12月3日の週のLNGトレードは、854万トン(前週753万トン)と増加、中国を除くほとんどの地区での輸入増加が影響した。

輸送中のLNG在庫は前年比+11%の410万トン。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米天然ガス価格は気温上昇見通しを背景に下落。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物市場はTTFの上昇はあったが、期近はほぼ変わらなかった。

9月のJLCの水準は11.53ドルであり、現在のスポット価格はこの水準を上回っている。

その他のアジアの国の長期契約ベースの価格は恐らくJLCと大差がないと考えられ、今年の冬場の需要期の価格はほぼJLCの水準で推移している。

今年は回避されているが、豪州は国内供給が充分でない場合、通常7月1日まで、遅くとも10月1日までにガス不足の懸念を通知し、実際に国内供給が不充分と判断された場合、次の1年間は輸出が制限される(ADGSM)。

この条項が発動された場合、スポット価格の上昇リスクとなるため、意識はしておきたい。

また、サハリン2の生産能力の低下、供給の減少はかなり前から指摘されているが、今のところ顕在化していない。多くの必要な部材は中国などを経由してロシアにもたらされている可能性があり、実は長期の供給リスクは懸念ほどではないかもしれない。

10月の中国の天然ガス生産は+4.3%の1,411万8,000トン(前月+11.6%の1,345万6,000トン)と同じ時期の過去5年の最高水準を上回っている。

10月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比+15.5%の879万トン(前月±0.0%の1,015万トン)と前年比ベースでは回復したが、昨年9月の輸入水準が高かったことによる前年比ベースでの上昇であり、総じて減少基調にある。季節的な需要減少。

10月のパイプラインベースの輸入は前年比+1.1%の362万トン(前月+4.9%の446万トン)と過去5年の最高水準(358万トン)を上回っているが、増加幅は急速に縮小した。

10月のLNG輸入は前年比+28.2%の516万9,000トン(前月▲3.5%の568万7,000トン)と減少し、過去5年平均に近接。

国内生産の増加と、固定インフラであるパイプラインからの供給が優先される中で、調整弁的に用いられるLNG調達需要が低下している。

ただし合計の「ガス顕在需要」は前年比+8.4%の2,290万5,000トン、年初来累計は+7.3%の2億3,632万4,000トン(前月+6.3%の2,360万3,000トン、年初来累計+7.2%の2億1,341万7,000トン)と着実に増加している。

※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

12月3日時点の日本の大手発電業者のLNG在庫は219万トン(過去5年平均245万4,100トン、大手発電業者在庫の過去5年平均は206万トン)と、先週から減少している。

まだ在庫の水準は低く、仮に冬場が寒くなった場合、再びガスや石炭不足となり価格が上昇する可能性は残る。通常過不足はスポット(JKMベース)で行い、電力のスポット価格はJKMの影響を受けるため、冬場の電力価格が上昇するリスクは無視できない。

本日は、冬場の調達圧力が弱まっているものの、ピークシーズンでもあるため高値を維持の公算。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP・東京ガス提示の数値を使用している。 LNG1トン=2.19立方メートル(液体)=1,360立方メートル(気体)= 46MMBtu LNG船1隻 147,000立方メートル=67,000トン 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル=7,757トン 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップは上昇した。ガス価格が上昇したことと、ガス価格対比では168ドル程度でも説明が可能な状況で、かなり割安に放置されていたことで割安感が修正された。

現在のガス価格(JKM)との関係性を元に回帰分析を行うとNEWC価格は168ドル、±1標準偏差で100~240ドル程度までが統計的に説明可能なレベル。

期先の価格は現在の生産コストに近いことを考慮すると、期先の価格が130~140ドル程度まで再び上昇しているため、130~240ドルが説明可能なレンジであり、現在のスポット価格は価格想定レンジの下限。

ロシア問題が継続する以上、欧州が完全に脱ロシアを達成することが期待される2027年(早ければ2025年、現実的には2026年)までは、ピークシーズン中の価格上昇リスクはつきまとう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

10月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比+23.3%の3,599万2,000トン(前月+27.5%の4,214万トン)と過去5年レンジを大幅に上回る水準を維持した。

国別では9月は米国・モンゴル以外の地域では輸入量が概ね減少しているが引き続きロシアのシェアが35.7%(前月35.8%)と高い。次いでインドネシアが27.6%(25.5%)、豪州24.7%(30.3%)となっている。

10月の中国の石炭生産は、前年比+4.7%の3億8,707万トン、1,248万トン/日(前月+1.3%の3億9,131万トン、1,304万トン/日)と伸びが鈍化したが、生産量は過去最高水準を上回っている。

10月の中国の電力消費量は前年比+8.6%の7,419億kwh(前月+10.1%の7,811億kwh)と伸びが鈍化した。構造的な需要増加継続と、季節性による需要減少による。

本日は、欧州ガス価格が寒波の影響で上昇していることもあり、高値維持の公算。

◆LME非鉄金属

LME非鉄金属市場は下落した。米統計の減速はあったものの、欧州の利下げ観測を背景にドル高が進行したことが価格を押し下げた。

クリスマス休暇を控えて市場参加者の動きが鈍る中、値が飛びやすい環境にあるのは事実。

中国の信用格付引下げ見通しは、直接的に非鉄金属価格に影響を及ぼさないが、格下げを回避するために中国当局が緊縮財政を強化した場合、来年の公共投資の減少観測を強め、価格の下落要因となり得る。

しかし、恐らく中国当局は景気下支え・近代化のためのインフラ投資は予算を張って継続すると考えられるため、現時点での非鉄帰属価格への影響は限定されるだろう。

中国の不動産問題は解決していないことが需要の下押し要因となっているが、中国政府が1兆元の予算を前倒ししてインフラ投資を行うなどの対策を行っていること、脱炭素の動きにともなう投資はペースが減速するものの継続が予想されること、脱中国に伴う他地区での設備投資は継続が予想されることから、期待需要も含めて、需給ファンダメンタルズはやや供給過剰~中立と見ている

そのため、中国とは直接関係ないところでのドル指数の変動が、非鉄金属価格を左右しやすく、足下、欧州の利下げ観測を受けたドル高が進行しているため、しばらく価格は下押しされやすい。

中国が不動産危機を乗り切ることに失敗し、中国政府が想定以上にこれまで積み上がった余剰生産能力の解消に手間取った場合、景気は長期低迷、いわゆる「日本化」が10年単位で起きる可能性が高い。

さらに労働人口がピークアウトし、かつ、西側諸国の制裁によって先端分野の発展が阻害され生産性が低下、将来的にはインフレをもたらしソ連型の国家崩壊、というシナリオも長期的には有り得る話。

就任以降の習近平国家主席の政策は、決して成功しているとは言えない。

10月の中国の貿易統計では、ベンチマークである銅地金・製品輸入は前年比+23.7%の50万168トン(前月▲5.8%の48万426トン)と過去5年平均を回復した。

中国の精錬銅輸入は年末にかけて増加する傾向があるが、昨年は10月に輸入が減少していたが、今年は3月頃からの輸入量の回復トレンドが継続している。

10月の銅鉱石・コンセントレートの輸入は前年比+23.5%の230万9,738トン(前月▲1.3%の224万1,135トン)と過去5年の最高水準を再び上回った。

10月の中国の精錬銅生産は+23.8%の114万3,000トン(前月+20.7%の114万1,000トン)と過去5年の最高水準を大きく上回っている。

10月の銅スクラップの輸入は前年比+37.7%の15万5,359トン(前月+2.0%の17万283トン)と過去5年平均を維持しているが水準は低下。国慶節の季節性の影響もある。

精錬銅輸入の増加と銅鉱石輸入の増加は、製造業PMIの悪化、10月中は上海取引所在庫が減少していることを合わせて考えると、統計に反映されない企業在庫として取得された可能性があると見ている。

本日は、昨日の下落が大きかったことからまずは買い戻しからスタートすると考えられる。しかし、米景気減速にも関わらず、欧州の利下げ観測を背景にドル高が進行しやすいことを考えると、上昇余地は限定されるとみる。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、大連は上昇、豪州原料炭スワップ先物は下落、大連原料炭価格は上昇、上海鉄筋先物は中心限月が小幅に上昇した。

特段材料はないが最終消費は弱く、鉄鋼製品在庫も過去5年平均を上回ったため、鉄鉱石の在庫水準の低さを背景とする在庫積増し程度しか材料が無いのは事実。

ただ、来年以降のインフラ投資、年明けから始まる季節的な鉄鋼製品在庫積み増しの動きもあり、鉄鉱石・原料炭とも高い水準を維持している状況。

11月の中国鉄鋼業PMIは総合指数が48.2(前月45.6)と改善した。新規受注が49.7(45.0)と政府の不動産セクターテコ入れ策で回復が続いているが、輸出受注は44.3(45.7)と景況感の悪化が続いており、全体でまだ閾値の50を上回っていない状況。

生産も48.0(43.4)と回復しているが、貿易統計で鉄鋼製品輸出が増加していることを考えると、まだ国内需要が完全に回復していると言うわけではなさそうだ。ただ、悪化していた建設業PMIも政策効果で55.0(53.5)と回復しており、徐々に政策効果が顕在化していることも事実だろう。

結局、バランスシート不況にあると考えられる中国がどの程度財政出動を行い、民需の不足をカバーできるかが景気回復のタイミングを図る上で重要になるが、恐らく年末の中央経済工作会議まで待つ必要があると考えられる

週間の鉄鋼製品港湾在庫統計は、鉄鋼製品在庫は▲12万6,000トンの975万2,000トン(過去5年平均 954万9,000トン)と過去5年平均を上回った。

鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比+220万トンの1億1,070万トン(過去5年平均1億3,7294万トン)、在庫日数は25.8日(+1.3日、過去5年平均 30.8日)。

鉄鉱石は在庫は日数ベースでも、数量ベースでも過去5年平均を下回っており、鉄鉱石の需給はタイトで一定の在庫積み増し需要が存在する。

主要原料炭の輸入港である京唐港の原料炭在庫は+3万トンの257万トン(過去5年平均 178万6,000トン)、在庫日数は+0.5日の11.2日(過去5年平均 7.6日)と、原料炭の需給は緩和している。

本日は、特段材料はないものの、鉄鉱石は在庫水準の低さと年初以降の在庫積増しの動きに備えて在庫の積増しが継続するとみられ、高値を維持、原料炭は在庫水準の高さから低迷するとみる。

◆貴金属

昨日の金は小幅に上昇した。長期金利の低下が金の基準価格を押し上げる一方、ドル高進行がリスク・プレミアムを削った。

銀は下落、プラチナも下落、パラジウムは小幅に買い戻されている。

足下、金価格の構成要素のうち、リスク・プレミアムの占める比率が高止まりしている。

金リスク・プレミアムの上昇要因の主なところは、

1.米利上げによる信用不安の高まり(低格付企業・新興国)

2.ロシアに対するドル決済禁止制裁を受けた、準備金におけるドルから金ヘのシフト

3.ロシアのウクライナ侵攻

4.イスラエルとパレスチナの戦争開始による中東情勢不安並びに、テロ組織の大規模攻撃であるため、各地にテロが拡散するリスク

あたりだろう。これらと同じ事象は、ニクソン・ショック~プラザ合意~アジア危機収束まで30年近く続き、金価格に占めるリスク・プレミアムのシェアが高止まりした。

2019年基準で算出した現在のリスク・プレミアムのシェアは55%と、ほぼ上記の期間と同様の状況になっており金利水準以上にその他の要因が金価格の形成に影響を与えていることが確認できる。

現状を理解する手助けとなるため、あえて実質金利・信用リスク・その他、に分離した場合、実質金利部分が45%、信用リスク要因が20%、その他の要因が35%となった(2019年データを元にした分析結果に変更)。

直近1年間の説明力を相関係数で確認すると、最も金価格に対する説明力が高いのがFF金利で0.68、次いでドル指数で▲0.64、リスク・プレミアムが0.59程度、期待インフレ率(▲0.30)、実質金利(▲0.01)と、実質金利は現在の価格形成に大きな影響を与えていない。

この5年間のデータを元にした分析では、FF金利±1%の変化で、実質金利は±0.5%変化、金価格は±20ドル変化し、リスク・プレミアムは±150ドル変化する。

市場予想では2024年は▲1.25%程度のFF金利引下げが見込まれているため、金の基準価格は+25ドル程度の押し上げ要因となり、リスク・プレミアムは、▲187.5ドルの低下要因となるため、仕上がりで▲162.5ドルの価格低下となる。

現在の金価格は2,050ドル近辺であるが、1,880ドル程度までの下落余地があることになる。

更なる上昇があるか否かは、中東問題の広がり具合によるだろう。

銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。

月次のボリンジャーバンドの分析は有効に機能しているが、仮にボリンジャーバンドの下限だと75倍、上限ならば90倍程度が目処になるが、金が2,000ドルを固めた結果、を1,900ドル程度とすると22.20~26.65ドルが現在取り得る範囲といえる。

また、中国の鉱工業生産を元にすると、現在の金銀レシオは90倍程度が上限とみられる。

本日は、欧州の利下げ観測を受けたドル高進行がリスク・プレミアムを押し下げるが、同時に米長期金利の低下が実質金利を押し下げるため、高値維持の公算。銀も高値維持。

PGMは株安に加え、中国、欧米の景気減速観測を背景とする需要下振れ見通しが価格を押し下げると考える。

◆穀物

シカゴ穀物市場は下落した。原油価格の下落に加え、ドル高が進行したことが材料となった。

長期的な話だが、今年地中海を襲ったハリケーン(ストーム・ダニエルと命名)の影響で中東北アフリカ地域に降雨がもたらされたことは、先々の穀物供給に影響を及ぼす、サバクトビバッタの越冬を可能にし、来年以降の供給減少のリスクを高めることが懸念される。

尚、Locust Watchでは中東・北アフリカ地域でのバッタの大量発生は確認されていない。

本日は、米ドル高進行と原油安を受けて軟調推移を予想。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

◆信用リスク・マクロ経済のリスク

・米国債の格下げリスク(残るMoody'sもネガティブウォッチに)、米国債格下げの動きが連鎖して、金融機関の格下げが加速、信用不安に繋がる場合。

・日本政府の財政規律の欠如、成長期待への失望から円が暴落するリスク。

・景気が想定よりも早く底入れしてインフレが再燃、あるいは景気を刺激する目的で早期の利下げが行われ資源価格が高騰、各国中銀の金融政策が再びタカ派の状態になった場合(リスク資産価格の上昇→下落リスク これは顕在化している可能性)

新興国の財政破綻、先進国も含めた債券の格下げによる金融機関・ファンドの突発的な損失拡大による信用収縮、低格付企業の破綻や、市場変動性の高まりによるファンド破綻などもリスクに(米銀格下げ検討は始まっている)。

・中国の構造的成長が終了、過剰債務や不動産問題を抱え、中国が「日本化」するリスク(この場合長期低迷で工業金属やエネルギーなどの景気循環系商品価格の下押し要因となる可能性)

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、モディ支持率の低下による近代化投資の遅れ、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

◆地政学的リスク

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。

・中東情勢不安が拡大し、先進国でテロが発生(景気の下振れリスク)、産油国でテロが発生して原油価格が高騰(インフレ発生で景気下振れリスク)するリスク。

中東問題が、「反イスラエル・親イスラエル」の対立となり、世界に拡散する場合(可能性の低い顕著な景気下振れリスク)

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。暴動激化で中国が分裂するリスク(極めて可能性の低いリスク)。

・西アフリカ・北アフリカで、フランスが旧宗主国である国の反仏感情が高まり、武力衝突が発生して域内治安が悪化する場合。

欧州に難民が流入するほか、地域によっては(リビア、アルジェリア、ナイジェリアなど)原油・ガス供給に影響が及ぶ恐れ。

◆その他のリスク

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。

また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。

◆本日のMRA's Eye


「COP28レビュー~米国は原発容量拡大を提案」

2021年COP26で合意した「グラスゴー合意」では、世界の二酸化炭素排出量を2010年比で2030年までに45%削減し、2050年に「ネットゼロ」にすることを合意している。

このとき、特にやり玉に挙がったのが石炭火力であり、石炭火力発電所を「段階的に廃止する」という文言が盛り込まれた。

翌年のCOP27では温暖化による損失と損害がフォーカスされ、温暖化の影響(であるとされている)異常気象の損害を受けている国々対してどのように資金支援を行うかが議論された。これを主導したのは「新興国である」と言い張っている中国だ。

COP28では2030年までに世界の再生可能エネルギーの設備を3倍にすることをUAEが提案し、100を超える参加国がこれに賛同。

COP28の資料を元にすると、世界の再生可能エネルギーのキャパシティは3,382GWであるが、これを2030年までに11,174GWにする目標。また、IEAのデータだと2020年の再生可能エネルギーのシェアは26.7%(うち17.0%は水力発電)。計画では太陽光を3倍に、風力を4倍に、水力を+21%に増加させるとしている。

2022年の再生可能エネルギー向けの投資は年間5,640億ドルだが、COP28では2030年に1兆1,800億ドルに増加させる必要があると指摘している。しかし、こうした財政的な支援は景気が良ければよいが、減速時には国の支援は不透明である。

しかし、この規模の投資を行うならばこれまでも主張してきた様に、主要資源の大半は中国が保有しているため別の制約が掛かることになる。そのため、新たな技術を用いて特定の地域に偏在していない素材を脱炭素に使う必要が出てくることになるだろう。

EVの普及も重要、と指摘されているが今のところ普及ペースは緩慢だ。そのためひっ迫が見込まれていたバッテリー資源価格は足下、下落している。

EVを再び軸に据えて、かつ、自然エネルギーの備蓄をバッテリーで行うのであれば、早晩これらの必須資源の価格が上昇することに変りは無い。また、バッテリー向け鉱物資源に限った話ではなく、自然エネルギーの場合、大規模な構造物の建設が必要になるため、鉄鋼や亜鉛、アルミなどの資源需要も増加、価格の上昇に繋がる可能性がある。

日本はIEAのデータでは2021年時点の水力を含む再エネの比率は23.5%に達しており、これを3倍にするとシェアは7割を超えることに。ただ、8.8%が水力であり、これを30%にすることは事実上困難だろう。

これは日本に限った話ではないが、結果的に原発の使用を検討する必要が出てくる。実際、米国は2050年までに原発の発電容量を3倍にすることを提案、20ヵ国以上が賛同した。

IEAの2020年の数字では日本の原子力発電のシェアは10.2%。日本もこれに賛同している。

結局、本気で二酸化炭素をそこまで削減しようと思った場合、自然エネルギーだけでは困難ということであり、排出量を減らすだけではなく二酸化炭素自体を減らすネガティブエミッションを考えると、そのために「クリーンエネルギーが必要」ということである。

この場合のクリーンは二酸化炭素やSOX、NOXを出さない、ということを指すがもちろん原発の場合、事故発生時の環境汚染が顕著であるのは事実だ。しかし世界は「原発をより安全なものにすること」を新たな手段として選択している、ということである。

実際、世界の原発の設備容量は緩やかではあるが増加を続けている。これに歩調を合わせる形で、ウラン価格も上昇している。

ウランの価格は2017年頃を底に既に上昇しているが、COP26以降、価格上昇が加速している。今後、脱炭素の流れが強まる中で世界では「より安全な原子力発電の活用」が進むと予想される。


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