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米雇用統計悪化でエネルギー軟調・その他はドル安で堅調
  • MRA商品市場レポート

2023年11月6日 第2580号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「米雇用統計悪化でエネルギー軟調・その他はドル安で堅調」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は、エネルギーが総じて水準を切下げたが、その他の商品は軒並み水準を切り上げる動きとなった。

注目の米雇用統計が市場予想を下回り、特に失業者数が大幅に増加したことが「最大消費国でのエネルギー需要減少観測」を強めたこと(詳しくは有料レポートの「昨日のトピックス」をご参照ください)が、エネルギ-価格を押し下げた。

その一方で、米FOMC以降、利上げはもう打ち止めではとの解釈を市場はしていたため、米長期金利が低下してドル安が進行したことが、ドル建て資産価格の押し上げ要因となった。

昨日の簡易版でコメントしているが、各国の統計とアナリスト予想の乖離が「下方向に」大きくなっている。通常、アナリストは過去数ヵ月のデータの傾向を元に先行き予想を行うため(注:統計の種類による)、これが下方向に乖離している、ということは米国を例に挙げると7月以降の回復傾向が反転し始めた可能性があることを示唆している。

一方、各国、地域の経済統計とアナリスト予想の乖離を示す「経済サプライズ指数」はシティバンクのデータに基づくと、昨日は全ての主要地域で低下している。

昨日の繰り返しとなるが、統計発表のたびに、1.金融引締め観測の後退(ファイナンシャルな面で商品価格を押し上げ)、2.需給ファンダメンタルズの緩和(景気循環系商品価格の下落)、をもたらすことになる。

昨日は上記の解釈通りとなったが、結局、需給ファンダメンタルズと金融要因が、商品毎に解釈が異なった。インフレ抑制のための高金利政策の効果が顕在化し始めた、と言えるのではないか。

過去30年、米国で長短金利が逆転する逆イールドカーブ状態になった後で、景気後退局面が訪れなかったことはない。

【本日の見通し】

週明け月曜日は、多くのドル建て商品価格が上昇するが、世界最大の経済国の景気減速観測が重石となり上値も重い展開が予想される。

昨日売られたエネルギーは、中東情勢不安が解消しておらず、CFTCなどのポジションを見ても新規のショートが積み上がっており、いったん買い戻されると考える。

週明け月曜日は目立った材料に乏しい。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

昨日の原油価格は続落した。イスラエルがガザ地区を包囲した、との報道を受けて供給面への波及が意識される中、水準を切り上げていたが、米国時間に発表された米雇用統計で失業率・失業者数が増加、米国の労働需給の緩和が石油製品需要の減少に繋がる、との見方が強まったことが価格を押し下げた。

昨日は同時にドル安も進行しているため、「米景気後退に伴うドル安・原油安」になったと考えられる。

弊社は景気減速を受けて原油価格は来年に掛けて下落すると予想しているが、その水準感については中東情勢並びにOPECプラスの減産スタンスに依拠するためまだはっきりとしたことが言えない状況。

ただ、これまでの情勢を見ると、米国はイスラエルを支持しつつも、人道的対応に配慮する姿勢を見せており、イスラエル側も無茶はできず、(全く穏やかではないが)想定よりも中東全土にこの問題が拡大している、という感じではなくなってきた。

ガザ地区の病院爆破以降、米国内でもユダヤ人、アラブ人に対する風当たりと対立が強まる中で、米国もこれまでほどの「無条件でイスラエル支持」はできなくなりつつあるようだ。

これがイスラエル・パレスチナ(既にイスラエル・ハマス問題ではなく、格上げされてしまった感)の恒久的な和平に繋がれば良いが、イスラエルは憲政上最も極右な与党であり、予断を許さない状況は続く。

今後は、世界の景況感は減速するため需要は減速、価格を下押しするが、それを中東情勢不安の影響による供給不安がどれだけ支えるか、という展開になるだろう。

ロシア情勢・中東情勢を踏まえた原油供給状況は大きく変化していないため、原油価格の「想定されるレンジ」は以下の通り。

現在は 3.の状態。今のところこの問題がイランにまで波及する展開は、確度の低いリスクシナリオの位置づけ。

<シナリオ別原油価格見通し>

1. 中東問題がイランにまで波及し、OPEC諸国も対立国ヘの供給を絞る(オイルショック状態)、イランに対する制裁強化など
Brent 120-150ドル

2.中東問題がイランにまで波及するが、OPEC諸国が増産する
Brent 90-120ドル

3.中東問題がイランに波及せず、OPEC諸国が増産しない
Brent 75-95ドル

4.中東問題がイランに波及せず、OPEC諸国が増産する
Brent 70-90ドル

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

5. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)
Brent 60-90ドル

6. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)
Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

Q423 需要の伸び横這い・中東情勢不安による供給制限懸念(→高値維持)グローバル・リセッション、危機顕在化の場合(↓↓)Q124 欧米の景気後退局面入りによる需要鈍化・生産調整継続(↓高値維持も下落開始)Q224~Q324 実質金利プラス維持による景気後退(サービス業)製造業の循環的な回復が下支え(↓↓)OPECプラス減産維持の場合(↓)Q324以降 需要回復・中国の正常化進捗(↑)OPECプラス減産維持の場合(↑↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

10月31日時点のWTIの投機筋ポジションは、ロングが▲12,748枚、ショートが+25,759枚と弱気ポジションに転じている。原油価格高騰による景気への懸念が、供給不安の懸念よりも勝っている状況。

Brentはロングが▲10,120枚、ショートが+6,293枚と、こちらも供給不安というよりも景気そのものへの懸念が強まっている状況。

週明け月曜日は、この数日同じ動きだが、中東情勢不安が解消しない中、下落した翌日は上昇(上昇した翌日は下落)となる展開が多いため、いったん買い戻しが入ると考える。

また、最大消費国である米国の雇用関連統計の減速を受けて下押し圧力が強まるものの、中東情勢不安が解消していないことを受けた供給面での懸念がニューショートを取り難くする状況が続くと考えられ、結局はレンジワークになるのではないか。

原油価格が中東情勢を背景に上昇するとすれば、イスラエル・ハマス問題がその他の地域に波及し、米国が物理的に関与せざるを得なくなった場合だが、イスラエル軍のガザ地区侵攻で民衆レベルまで暴動が広がるリスクは無視できなくなってきた。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格はほぼ変わらず。中東情勢不安が引き続きガス価格を高値に維持する状態が続いている。

エジプトがイスラエルからのガス供給停止で計画停電に入っていると報じられていたが、昨日の報道では、リバイアサンからの迂回輸出で流入は再開したという。ただし数量は少なく、需要を満たすレベルではない。

むしろ、エジプトはLNGを輸入しているというトラッキングデータも出始めている状況。

欧州の在庫水準の高さを考えると、今冬に関しては数量ベースで調達が不充分、というリスクはさほど高くないと見ている(ただし供給途絶が発生すれば、価格には上昇圧力が掛かるが、ウクライナ危機発生時のような暴騰にはならないだろう)。

欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続

2.LNGターミナル・ガス田・船舶の不慮の停止

3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)

4.景気減速(価格下落要因)

5.季節要因・気象状況

1.はロシアのLNGカーゴはまだ取引されており、スポットカーゴ価格の上昇要因にはならなくなってきた。ロジカルには西側諸国が脱ロシアを完全に完了するまでは、気温の変化や政治的なイベントによって季節的に価格が高騰するリスクは残る。

弊社のシミュレーションでは、今冬の欧州のガス調達は、ロシアが仮にガス輸出を完全に停止したとしても凌げる見通し。

ただし、在庫が減少すれば翌年以降の調達に影響が出る(数量確保の問題と、価格上昇の問題両面)ため、脱ロシアの完全完了までは上昇リスクは無視できない。

弊社の試算では欧州が完全にロシア産ガスを排除(第三国経由でもロシア産のLNGを購入しない状態になる)できるのは2027年頃。ロシア産のLNGの輸出が阻害されなければ2025年頃。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

今のところロシア産ガスの供給は実質的に制限されておらず、LNGの形で欧州諸国も購入を続けている。ガスがLNGに置き換わっただけとも言える。

しかし、脱ロシアが完了した場合、ロシアがこれまで供給してきた西側諸国向けのガスが「浮く」ことになる。2022年、欧州向けにロシアが削減したパイプライン輸出量は708億立方メートルで、総輸出量9,685億立方メートルの7.3%に及ぶ。

これを他地域の需要増加で補うことは恐らく不可能であり、FID済みのプロジェクトも見直しせざるを得なくなる可能性がある。

2.は、Chevronがイスラエル沖のTamarガス田での生産をイスラエル・ハマスの戦闘による情勢不安を理由に停止している。

今回の戦闘が長期化するのか否か、現在では不透明であり、戦闘行為の中でパイプラインが破壊される可能性も否定できない(恐らく米国の空母打撃群がイスラエル沖に展開しているため、そのリスクは低いと考えられるが)

また、フィンランドとエストニアを結ぶパイプラインが、何らかの工作で破壊されたと報じられていることも、供給懸念を高めている(当然、ロシアは関与を否定)。

この他、異常気象発生時にはインフラに障害が出る可能性が高まる。米海洋大気庁の見通しでは、大西洋でのハリケーンの発生頻度は例年を上回る見通し。

通常、エルニーニョ現象が発生したときは大西洋の海水温が低下してハリケーンの発生・勢力が弱まるが今年は例外的な見通しとなっており、北米→欧州のLNG輸送や輸出ファシリティへの影響は無視できないリスクに。

また、異常気象の影響による干ばつでパナマ運河の水位が低下しており、LNG輸送に障害が発生、スポット価格が上昇する可能性が出てきた。

3.4.は顕在化している。しかし3.に関しては、ロシアもこれ以上ガス供給を削減することは難しい。

ロシア・ウクライナ戦争は越冬して来年に持ち越される可能性が高まる中、この冬にロシアがなりふり構わない対応をしてくる可能性は否定できない。

それでもガス在庫の水準は高く、仮にロシアが輸出を完全に止めても今冬の調達には問題がなさそうな状況(ただしこの場合、供給が足りていても価格は上昇する)

5.は2.とも関係するが、今年の冬はエルニーニョ現象が見込まれ、通常であれば暖冬となりやすいため、価格上昇方向のバイアスは強まらないと予想される。

米メキシコ湾発のLNGのタンカーレートは日本向け・欧州向けとも小幅に上昇している。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米天然ガス価格は上昇。日替わりで気温上昇/低下観測が価格を左右しているが、昨日は南部の気温低下予想が価格を押し上げた。

基本的に米国のガス供給は十分であり、気温動向だけが足下の価格を形成していると言っても言い過ぎではない。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物市場はほぼ変わらず。中東情勢不安を受けてTTFが高止まりしている影響を受けている。

現在のJLCの水準は11.95ドルであり、現在のスポット価格はこの水準を上回っている。

その他のアジアの国の長期契約ベースの価格は恐らくJLCと大差がないと考えられ、今年の冬場の需要期の価格はほぼJLCの水準で推移している。

今年は回避されているが、豪州は国内供給が充分でない場合、通常7月1日まで、遅くとも10月1日までにガス不足の懸念を通知し、実際に国内供給が不充分と判断された場合、次の1年間は輸出が制限される(ADGSM)。

この条項が発動された場合、スポット価格の上昇リスクとなるため、意識はしておきたい。

また、サハリン2の生産能力の低下、供給の減少はかなり前から指摘されているが、今のところ顕在化していない。多くの必要な部材は中国などを経由してロシアにもたらされている可能性があり、実は長期の供給リスクは懸念ほどではないかもしれない。

9月の中国の天然ガス生産は+6.5%の1,330万9,000トン(前月+8.2%の1,360万3,000トン)と同じ時期の過去5年の最高水準を上回っている。

9月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比±0.0%の1,015万トン(前月+22.7%の1,086万トン)と急減速した。

9月のパイプラインベースの輸入は前年比+4.9%の446万トン(前月+10.4%の456万トン)と過去5年の最高水準(425万トン)を上回っている。

9月のLNG輸入は前年比▲3.5%の568万7,000トン(前月+33.4%の629万8,000トン)と減少し、過去5年平均に近接した。

国内生産の増加と、固定インフラであるパイプラインからの供給が優先される中で、調整弁的に用いられるLNG調達需要が低下したとみられる。

ただし合計の「ガス顕在需要」は前年比+6.3%の2,360万3,000トン、年初来累計は+7.2%の2億1,341万7,000トンと着実に増加している。

※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

10月22日時点の日本の大手発電業者のLNG在庫は223万トン(過去5年平均259万8,600トン、大手発電業者在庫の過去5年平均は201万トン)と、先週から大幅に増加したが、いずれの集計でも過去5年平均を下回った状態が続いている。

速報性がない、大手電力以外のLNG在庫を含めた過去5年の水準と比較すると、過去5年の最低水準(235万2,800トン)も下回っている。

夏が例年よりも暑い猛暑で電力需要が増加したことに加え、原子力発電所の再稼働、大手発電業者のLNG調達は、自社の顧客を対象にした数量しか行われない。これは新電力の顧客の需要データが開示されないため、他社分まで調達することができないため。

仮に冬場が寒くなった場合、再びガスや石炭不足となり価格が上昇する可能性はある。通常過不足はスポット(JKMベース)で行い、電力のスポット価格はJKMの影響を受けるため、再び冬場の電力価格が上昇するリスクは無視できない。

また、今年はエルニーニョ現象の影響で太平洋側は台風の発生頻度・勢力が強まる可能性がある。この場合、輸送に影響が出ることも考えられるため、エルニーニョ現象が発生しているものの在庫水準の低さを考えると、冬場の価格上昇リスクも無視できない。

JEPXベースで調達して大手電力会社の価格で電気を販売している業者、JEPXベースで電気を調達している消費者はこのJKMのリスクを抱えることになる。

週明け月曜日は、中東情勢不安が解消していないことや、エジプトのLNG輸出停止などがTTF価格を高止まりさせるため、JKMも高止まりの公算。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP・東京ガス提示の数値を使用している。 LNG1トン=2.19立方メートル(液体)=1,360立方メートル(気体)= 46MMBtu LNG船1隻 147,000立方メートル=67,000トン 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル=7,757トン 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップ先物は期先、特に2024-2025年冬場の価格が低下した。中国の景気回復の遅れを受けて、冬場の電力需要が後退するとの見方が強まったことが価格を下押ししたと考えられる。

現在のガス価格(JKM)との関係性を元に回帰分析を行うとNEWC価格は170ドル、±1標準偏差で100~240ドル程度までが統計的に説明可能なレベル。

期先の価格は現在の生産コストに近いことを考慮すると、期先の価格が130~150ドル程度まで再び上昇しているため、130~220ドルが説明可能なレンジであり、現在のスポット価格はやや安く、足下の需給が緩和していることを示唆。

なお、昨年対比で今年の冬が寒くなる(昨年は記録的な暖冬)可能性が後退、北半球はアジアを含めて暖冬見通しであることは、石炭価格を押し下げよう。

ロシア問題が継続する以上、欧州が完全に脱ロシアを達成することが期待される2027年(早ければ2025年、現実的には2026年)までは、ピークシーズン中の価格上昇リスクはつきまとう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

9月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比+50.5%の4,433万3,000トン(前月+66.9%の3,926万トン)と過去5年レンジを大幅に上回る水準を維持した。

ガスも同様であるが、中国の記録的な気温上昇の影響で、発電燃料需要が引き続き増加しているためと考えられる。2000年以降、エルニーニョ現象が発生しているときは発電燃料の価格は下がる傾向が強いが、異常気象が発生しやすい気象状態であることは意識しなければならない。

国別では7月は豪州からの輸入が増加している。これにより、豪州の輸入シェアは29.5%(前月23.1%)と上昇した。しかし直近12ヵ月の累計シェアはロシアが1位で0.6%、ついでインドネシア(36.2%)、豪州(13.0%)となった。

9月の中国の石炭生産は、前年比+1.3%の3億9,131万トン、1,304万トン/日(前月+3.0%の3億7,902万トン、1,222万6,000トン/日)と伸びが鈍化したが、過去最高水準は上回っている。

9月の中国の電力消費量は前年比+10.1%の7,811億kwh(前月+4.0%の8,861億kwh)と伸びが加速した。構造的な需要増加の影響とみられる。

週明け月曜日も、中東情勢不安が継続していることに変りは無くガス価格が高値を維持することで石炭価格も高止まりの見込み。

ただし、2024-2025年の価格下落はやや気になる動きであり、さらに下落して全ゾーンコンタンゴ化する可能性も否定できず。

◆LME非鉄金属

LME非鉄金属市場は上昇した。最大消費国である中国の景況感は改善していないが、米雇用統計で失業者数が増加したことを受けたドル安進行を受けて、これまで調整を続けてきた非鉄金属価格を押し上げた。

これまで需給ファンダメンタルズが強く意識されてきたが、昨日の上昇はファイナンシャルな要因によるものと考えられる、

中国政府は景気刺激のためのインフラ投資前倒しを決定しており、恐らくこの流れであれば年末開催される中央経済工作会議でも、財政赤字を拡大させつつ景気刺激を行う方針が確認されると考えられる。

また、これに加えて脱炭素の動きにともなう投資や、脱中国に伴う他地区での設備投資は継続が予想されることも価格を下支えするとみている。

ただし、循環的な景気の回復への期待があったが、国内外とも(米国を除き)指標が減速を始めているため、政策要因が価格を下支えするが、基調としては年内は弱気と考えられる。

なお、不動産問題が解消した訳ではなく、むしろ問題を先送りしたためいずれかのタイミングで大きなリスクとなる見込みだ。

中国が不動産危機を乗り切ることに失敗し、中国政府が想定以上にこれまで積み上がった余剰生産能力の解消に手間取った場合、景気は長期低迷、いわゆる「日本化」が10年単位で起きる可能性が高い。

さらに労働人口がピークアウトし、かつ、西側諸国の制裁によって先端分野の発展が阻害され生産性が低下、将来的にはインフレをもたらしソ連型の国家崩壊、というシナリオも長期的には有り得る話だ。

就任以降の習近平国家主席の政策は、決して成功しているとは言えない。

9月の中国の貿易統計では、ベンチマークである銅地金・製品輸入は前年比▲5.8%の48万426トン(前月▲5.0%の47万3,330トン)と過去5年平均を下回る状態が続いている。

9月の銅鉱石・コンセントレートの輸入は前年比▲1.3%の224万1,135トン(前月+18.8%の269万7,104トン)と過去5年の最高水準を下回った。

9月の中国の精錬銅生産は+20.7%の114万1,000トン(前月+18.4%の108万5,000トン)と過去5年の最高水準を大きく上回っている。

9月の銅スクラップの輸入は前年比+2.0%の17万283トン(前月+0.9%の15万6,077トン)と過去5年平均を維持している。

精錬銅輸入の減少はまだLME価格の方が上海価格よりも高いことが影響しているとみられるが、精錬銅生産は増加しており中国の銅顕在需要は増加している(ネット輸入+国内生産)。

本日は、米国の金融引締め終了やそれに伴うドル安進行が、ファイナンシャルな面で価格を押し上げるが、中国のPMI悪化など、需給ファンダメンタルズ面は価格を下押しするため、両者相殺されて現状維持と見る。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、大連は上昇、豪州原料炭スワップ先物は変わらず、大連原料炭価格は上昇、上海鉄筋先物は上昇した。

鉄鋼製品在庫水準の低下(ほぼ季節性通り)を受け、鉄鉱石は在庫の水準の低さから上昇、原料炭も連れた。

10月の中国鉄鋼業PMIは総合指数が45.6(前月45.8)と悪化した。新規受注が45.0(44.5)と政府の不動産セクターテコ入れ策で小幅に回復が続いているが、輸出受注は45.7(48.1)と悪化継続、生産も43.4(45.0)と低下しており、鉄鋼業を巡る環境は厳しさを増している。

一時的に回復していた建設業PMIも53.5(前月56.2)と減速した。ただしまだ閾値の50は上回った状況であり、建設業の景況感はまだそこまで悪化していないという評価になる。

結局。バランスシート不況にあると考えられる中国がどの程度財政出動を行い、民需の不足をカバーできるかが景気回復のタイミングを図る上で重要になるが、恐らく年末の中央経済工作会議まで待つ必要があると考えられる

週間の鉄鋼製品港湾在庫統計は、鉄鋼製品在庫は▲52万8,000トンの1,105万3,000トン(過去5年平均 1,154万8,000トン)と過去5年平均を下回っているが、かなり水準は過去5年平均に近づいており、鉄鋼製品価格の下押し要因となっている。

鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比+210万トンの1億700万トン(過去5年平均 1億3,531万トン)、在庫日数は23.3日(▲0.3日、過去5年平均 29.8日)。

鉄鉱石は在庫は日数ベースでも、数量ベースでも過去5年平均を下回っており、鉄鉱石の需給はタイトで一定の在庫積み増し需要が存在する。

主要原料炭の輸入港である京唐港の原料炭在庫は+10万トンの204万トン(過去5年平均 125万8,000トン)、在庫日数は+0.1日の8.3日(過去5年平均 5.2日)と、原料炭の需給は緩和している。

週明け月曜日は、中国の対策期待はあるものの、製造業や建設業、鉄鋼業の景況感の悪化で上昇余地も限定。現状維持の公算。

◆貴金属

昨日の金銀価格は上昇した。米雇用統計を受けた実質金利の低下が基準価格を押し上げた。ただし、金融引締め終了期待を受けた信用不安の後退が、リスク・プレミアムを押し下げたため、上昇余地は限定。PGMは株価の上昇を受けて水準を切り上げている。

足下、金価格の構成要素のうち、リスク・プレミアムの占める比率が高まっている。金リスク・プレミアムの上昇要因の主なところは、

1.米利上げによる信用不安の高まり(低格付企業・新興国)

2.ロシアに対するドル決済禁止制裁を受けた、準備金におけるドルから金ヘのシフト

3.ロシアのウクライナ侵攻

4.イスラエルとパレスチナの戦争開始による中東情勢不安並びに、テロ組織の大規模攻撃であるため、各地にテロが拡散するリスク

あたりだろう。これらと同じ事象は、ニクソン・ショック~プラザ合意~アジア危機収束まで30年近く続き、金価格に占めるリスク・プレミアムのシェアが高止まりした。

2019年基準で算出した現在のリスク・プレミアムのシェアは55%と、ほぼ上記の期間と同様の状況になっており金利水準以上にその他の要因が金価格の形成に影響を与えていることが確認できる。

現状を理解する手助けとなるため、あえて実質金利・信用リスク・その他、に分離した場合、実質金利部分が45%、信用リスク要因が20%、その他の要因が35%となった(2019年データを元にした分析結果に変更)。

直近1年間の説明力を相関係数で確認すると、最も金価格に対する説明力が高いのがドル指数で▲0.87、次いでFF金利で0.80、リスク・プレミアムが0.69程度、期待インフレ率(▲0.59)、実質金利(▲0.18)と、実質金利は現在の価格形成に大きな影響を与えていない。

ドル指数はFF金利の影響が大きいため、今後の金価格を占う上ではやはりFF金利動向が重用になる。

この5年間のデータを元にした分析では、FF金利±1%の変化で、実質金利は±0.5%変化、金価格は±50ドル変化し、リスク・プレミアムは±150ドル変化する。

年内利上げの可能性は後退しているが、11月にあったとして金の基準価格は▲13ドル、リスク・プレミアムは+38ドルの上昇圧力となり、差し引き+25ドルの上昇となる。

市場予想では2024年は▲0.5%程度のFF金利引下げが見込まれているため、金の基準価格は+25ドル程度の押し上げ要因となり、リスク・プレミアムは、▲75ドルの低下要因となるため、仕上がりで▲50ドルの価格低下となる。

現在の金価格は2,000ドル近辺まで上昇しているが、1,950程度までの下落余地があることになる。しかし中東情勢次第だろう。

銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。

月次のボリンジャーバンドの分析は有効に機能しているが、仮にボリンジャーバンドの下限だと75倍、上限ならば90倍程度が目処になるが、金を1,900ドル程度とすると21.1~25.33ドルが現在取り得る範囲といえる。

また、中国の鉱工業生産を元にすると、現在の金銀レシオは90倍程度が上限とみられる。

週明け月曜日は、米景気減速観測が実質金利を押し下げ、金の基準価格を押し上げるが、同時に引締め観測の後退がリスク・プレミアムを押し下げるため、現状維持。

PGMは金融引締め観測後退を受けた長期金利の低下が株価を押し上げており、投機的な買いで上昇すると予想。

◆穀物

シカゴ穀物市場は上昇した。固有の材料に乏しい中、米雇用統計を受けたドル安進行が価格を押し上げた。

当面は、ハーベスト・プレッシャーによる季節的な売りと、戦争を意識した食品物色の流れが相殺しあう形が予想される。

長期的な話だが、今年地中海を襲ったハリケーン(ストーム・ダニエルと命名)の影響で中東北アフリカ地域に降雨がもたらされたことは、先々の穀物供給に影響を及ぼす、サバクトビバッタの越冬を可能にし、来年以降の供給減少のリスクを高めることが懸念される。

尚、Locust Watchでは中東・北アフリカ地域でのバッタの大量発生は確認されていない。

本日は、ドルが米景気の先行き懸念で調整的に売られる中、燃料向けの需要減少とドル安が相殺し合う形で現状維持とみる。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

◆信用リスク・マクロ経済のリスク

・米国債の格下げリスク(残るMoody'sの格下げリスク)、米国債格下げの動きが連鎖して、金融機関の格下げが加速、信用不安に繋がる場合。

・日本政府の財政規律の欠如、成長期待への失望から円が暴落するリスク。

・景気が想定よりも早く底入れしてインフレが再燃、あるいは景気を刺激する目的で早期の利下げが行われ資源価格が高騰、各国中銀の金融政策が再びタカ派の状態になった場合(リスク資産価格の上昇→下落リスク これは顕在化している可能性)

新興国の財政破綻、先進国も含めた債券の格下げによる金融機関・ファンドの突発的な損失拡大による信用収縮、低格付企業の破綻や、市場変動性の高まりによるファンド破綻などもリスクに(米銀格下げ検討は始まっている)。

・中国の構造的成長が終了、過剰債務や不動産問題を抱え、中国が「日本化」するリスク(この場合長期低迷で工業金属やエネルギーなどの景気循環系商品価格の下押し要因となる可能性)

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、モディ支持率の低下による近代化投資の遅れ、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

◆地政学的リスク

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。

・中東情勢不安が拡大し、先進国でテロが発生(景気の下振れリスク)、産油国でテロが発生して原油価格が高騰(インフレ発生で景気下振れリスク)するリスク。

中東問題が、「反イスラエル・親イスラエル」の対立となり、世界に拡散する場合(可能性の低い顕著な景気下振れリスク)

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。暴動激化で中国が分裂するリスク(極めて可能性の低いリスク)。

・西アフリカ・北アフリカで、フランスが旧宗主国である国の反仏感情が高まり、武力衝突が発生して域内治安が悪化する場合。

欧州に難民が流入するほか、地域によっては(リビア、アルジェリア、ナイジェリアなど)原油・ガス供給に影響が及ぶ恐れ。

◆その他のリスク

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。

また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。

◆本日のMRA's Eye


「大豆ミール価格上昇」

大豆を圧搾して作る大豆ミール価格が上昇している。大豆を圧搾すると、大豆油と大豆ミールを取得でき、大豆油は食用ないしは近年ではバイオ燃料に用いられるようになった。大豆ミールは主に豚や鶏などの飼料に用いられる。2023年の大豆油と大豆ミール価格は夏頃から上昇していたが、10月以降は大豆ミール価格が上昇、大豆油価格は下落に転じている。

大豆ミール価格の上昇の背景には、最大輸出国であるアルゼンチンからの供給不足がある。大豆ミール輸出市場では大豆の一大生産国であるアルゼンチンとブラジルが主要な輸出国でありアルゼンチンは長らく輸出シェアがトップだった(2021年10月-2022年9月穀物年度の輸出シェアは39.8%)。しかし、異常気象による干ばつの影響で2022-2023穀物年度のアルゼンチンの大豆生産は前年比▲43.1%の2,500万トンと前年からほぼ半分に減少、大豆ミールの生産量も前年比▲22.1%の2,360万トンと大幅に減少し、輸出市場におけるシェアも31.4%と、これまで2位だったブラジルが32.2%と上回った。しかし、世界的に総じて大豆ミールの供給が減少したため、大豆ミール価格に対する説明力が高い在庫率も4.3%(前年5.3%)に低下、需給率(総需要÷総供給)も95.9%(前年94.9%)に上昇している。

米農務省の需給報告では2023-2024穀物年度の世界の大豆ミール需給は緩和が見込まれている。最大生産者であるアルゼンチンの大豆生産の回復(2,500万トン→4,800万トン)により、大豆ミール生産も2,691万トン(前年2,360万トン)に増加が見込まれることに加え、バイオ燃料向けの大豆油需要の増加が予想される米国の大豆ミール生産も、4,915万トン(前年4,769万トン)に増加が見込まれ、輸出量も1,388万トン(前年1,320万トン)に増加すると見られる。とはいえ、在庫率は4.8%、需給率も95.5%と2年前と比べて需給がタイトな状態が続くことを示唆しており、下落すると言っても余地は限定されるだろう。また、アルゼンチンの大豆圧搾は、大豆の収穫が終了する来年4月以降に増加すると予想されることから、2024年前半は需給がタイトな状態が続き、年後半に掛けて水準を切下げる動きになると予想される。年初の飼料価格の上昇は、家畜の飼育コストの上昇に繋がり、肉類価格の上昇要因となるが、余りに高騰した場合、ランニングコストの上昇によってと畜が進み、肉類価格の下押し圧力となる。しかし、その後に改めて飼育頭数を増やす必要が出てくるため、この間の肉類の供給が減少するため、肉類価格の上昇要因となり得る。

なお、大豆ミールと同時に大豆圧搾時に生産される大豆油は、2022-2023穀物年度の生産は同様に5,890万トン(前年5,927万トン)と減少しているが、在庫率は7.1%(前年6.8%)に上昇、需給率も93.3%(前年93.6%)に低下しており、2023-2024穀物年度も7.2%、93.3%と緩和した状態が続く見通しである。このことは、飼料向け需要が堅調である一方、食用油・バイオ燃料向けの需要がそれほど強くないことを示唆している。


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