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冴えないISM製造業指数を受けてエネルギー下落その他は堅調
  • MRA商品市場レポート

2023年12月4日 第2600号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「冴えないISM製造業指数を受けてエネルギー下落その他は堅調」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は、非鉄金属や工業金属、貴金属などが上昇し、液体系エネルギー価格が下落した。

OPECプラスは結局協調減産で合意できず、自主減産に止まり、実際に減産が実行されるか否かに関しては「Wait and See」モードに市場がなっている中、昨日発表された米ISM製造業指数が予想に反して前月から横這いだったことで、景況感の改善期待が後退、需要観測が後退したことが原油価格を押し下げた(OPECプラスの評価に関しては、本日のMRA's Eyeをご参照ください)。

また、米統計が冴えない内容だったことから米景気の先行きへの懸念が強まったことでドル安が進行したため、中国が最大消費国である工業金属価格は、ファイナンシャルな面で押し上げられる形となった。

【本日の見通し】

週明け月曜日は目立った手掛かり材料に乏しく、米景気の減速観測を受けたドル安で、米国が主戦場ではない商品価格が上昇し、エネルギー価格は軟調な推移になると予想される。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油・石油製品

昨日の原油価格は下落した。改善が見込まれていたISM製造業指数が前月比横這いとなり、7月以降の数値回復が一時的なものであり低迷が続く、との見方が需要回復期待を阻害したことが背景。

仮に遵守できたとしても▲90万バレルの追加減産実施は年明け以降であり、年内の原油価格は弱含みやすい地合となった(詳しくは本日のMRA's Eyeをご参照ください)。

OPECプラスの信頼が回復されない状況であれば、▲90万バレルの追加減産があってもQ124のBrent価格は80ドル程度、信頼が回復して減産が遵守されれば85ドル程度が想定される。ただし、ISM製造業指数次第であるため、引き続き同指数動向には注目する必要がある。

ロシア情勢・中東情勢を踏まえた原油供給状況は大きく変化していないため、原油価格の「想定されるレンジ」は以下の通り。

現在は 3.の状態。今のところこの問題がイランにまで波及する展開は、確度の低いリスクシナリオの位置づけになりつつある。

こうなると市場の注目は再び減速した米ISM製造業・非製造業指数を受けた米景気の減速動向に集まることになろう。

<シナリオ別原油価格見通し>

1. 中東問題がイランにまで波及し、OPEC諸国も対立国ヘの供給を絞る(オイルショック状態)、イランに対する制裁強化など
Brent 120-150ドル

2.中東問題がイランにまで波及するが、OPEC諸国が増産する
Brent 90-120ドル

3.中東問題がイランに波及せず、OPEC諸国が増産しない
Brent 75-95ドル

4.中東問題がイランに波及せず、OPEC諸国が増産する
Brent 55-75ドル

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

5. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)
Brent 60-90ドル

6. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)
Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

Q423 需要の伸び横這い・中東情勢不安による供給制限懸念(→高値維持)グローバル・リセッション、危機顕在化の場合(↓↓)OPECプラスの結束崩壊・増産合戦開始(↓↓↓)
Q124 欧米の景気後退局面入りによる需要鈍化・生産調整継続(↓高値維持も下落開始)
Q224~Q324 実質金利プラス維持による景気幻想継続 製造業の循環的な回復が下支え(↓)OPECプラス減産維持の場合(→)
Q324以降 景気の循環的な回復・中国の正常化(↑)OPECプラス減産維持の場合(↑↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

11月28日時点のWTIの投機筋ポジションは、ロングが+1,597枚、ショートが+25,750枚と新たにショートが積増しされた。これは先々の買い戻し圧力となる。

Brentはロングが+6,767枚、ショートが▲4,863枚と、こちらは強気に転じている。OPECプラスの減産を期待してのものと考えられるが、今回の決定を受けてロングの解消が原油価格を下押ししよう。

週明け月曜日は、週末の下げが大きかったことから短期的に買い戻しが入ると考える。しかし、ISM製造業指数の低迷と、OPECプラスの決定が実質合意していない、との市場の判断から低水準での推移に。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は上昇した。寒波襲来による気温低下とこれまでの価格修正による割安感からの買い戻しが材料。

欧州の在庫水準の高さを考えると、今冬に関しては数量ベースで調達が不充分、というリスクはかなり低下したと見ている。

しかし、弊社のシミュレーションの結果では、来年夏以降にガス調達が不足するリスクはまだ残存しているため、むしろ来年以降が重要になろう。結局のところ需要動向が需給を左右すると考えられる(詳細は有料のマンスリーレポート12月号で解説)。

欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続

2.LNGターミナル・ガス田・船舶の不慮の停止

3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)

4.景気減速(価格下落要因)

5.季節要因・気象状況

1.は弊社の試算では欧州が完全にロシア産ガスを排除(第三国経由でもロシア産のLNGを購入しない状態になる)できるのは2027年頃。ロシア産のLNGの輸出が阻害されなければ2025年頃と予想される。

今のところロシア産ガスの供給は実質的に制限されていないが、仮に脱ロシアが完了した場合、ロシアがこれまで供給してきた西側諸国向けのガスが「浮く」ことになる。

2022年、欧州向けにロシアが削減したパイプライン輸出量は708億立方メートルで、総輸出量9,685億立方メートルの7.3%に及ぶ。

これを他地域の需要増加で補うことは恐らく不可能であり、FID済みのプロジェクトも見直しせざるを得なくなると予想される。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

2.は、異常気象の影響による干ばつでパナマ運河の水位が低下しており、LNG輸送に障害が発生、米国産のLNGは喜望峰周りでの輸送にシフトしており、スポット価格の上昇要因に。

3.は既にロシアからの供給削減は現時点ででき得る限界まで行われているため、目先は材料になり難い。

4.は顕在化しているが、足下、欧州の統計が改善しており来年以降の需要回復が価格の押し上げ要因となる可能性が出てきた。

5.は2.とも関係するが、エルニーニョ現象中は暖冬になりやすく価格上昇方向のバイアスは強まらないと予想される。ただ、エルニーニョ現象発生後のラニーニャ現象発生はリスクとなる(2024年夏以降か)。

米メキシコ湾発のLNGのタンカーレートは、日本向け・欧州向けとも低下している。

11月20-26日の週のLNGトレードは、761万トン(前週883万トン)と減少、主に日中台韓の調達が一巡して減少、欧州向けのデリバリーも総じて減少したことが影響した。

輸送中のLNG在庫は前月比前年比▲1%の420万トン。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米天然ガス価格はほぼ変わらず。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物市場はTTFの上昇もあり、水準を切り上げた。

9月のJLCの水準は11.53ドルであり、現在のスポット価格はこの水準を上回っている。

その他のアジアの国の長期契約ベースの価格は恐らくJLCと大差がないと考えられ、今年の冬場の需要期の価格はほぼJLCの水準で推移している。

今年は回避されているが、豪州は国内供給が充分でない場合、通常7月1日まで、遅くとも10月1日までにガス不足の懸念を通知し、実際に国内供給が不充分と判断された場合、次の1年間は輸出が制限される(ADGSM)。

この条項が発動された場合、スポット価格の上昇リスクとなるため、意識はしておきたい。

また、サハリン2の生産能力の低下、供給の減少はかなり前から指摘されているが、今のところ顕在化していない。多くの必要な部材は中国などを経由してロシアにもたらされている可能性があり、実は長期の供給リスクは懸念ほどではないかもしれない。

10月の中国の天然ガス生産は+4.3%の1,411万8,000トン(前月+11.6%の1,345万6,000トン)と同じ時期の過去5年の最高水準を上回っている。

10月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比+15.5%の879万トン(前月±0.0%の1,015万トン)と前年比ベースでは回復したが、昨年9月の輸入水準が高かったことによる前年比ベースでの上昇であり、総じて減少基調にある。季節的な需要減少。

10月のパイプラインベースの輸入は前年比+1.1%の362万トン(前月+4.9%の446万トン)と過去5年の最高水準(358万トン)を上回っているが、増加幅は急速に縮小した。

10月のLNG輸入は前年比+28.2%の516万9,000トン(前月▲3.5%の568万7,000トン)と減少し、過去5年平均に近接。

国内生産の増加と、固定インフラであるパイプラインからの供給が優先される中で、調整弁的に用いられるLNG調達需要が低下している。

ただし合計の「ガス顕在需要」は前年比+8.4%の2,290万5,000トン、年初来累計は+7.3%の2億3,632万4,000トン(前月+6.3%の2,360万3,000トン、年初来累計+7.2%の2億1,341万7,000トン)と着実に増加している。

※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

11月26日時点の日本の大手発電業者のLNG在庫は233万トン(過去5年平均264万6,300トン、大手発電業者在庫の過去5年平均は212万トン)と、先週から増加している。

まだ在庫の水準は低く、仮に冬場が寒くなった場合、再びガスや石炭不足となり価格が上昇する可能性は残る。通常過不足はスポット(JKMベース)で行い、電力のスポット価格はJKMの影響を受けるため、再び冬場の電力価格が上昇するリスクは無視できない。

本日は、ピークシーズンでも有るため高値を維持の公算。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP・東京ガス提示の数値を使用している。 LNG1トン=2.19立方メートル(液体)=1,360立方メートル(気体)= 46MMBtu LNG船1隻 147,000立方メートル=67,000トン 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル=7,757トン 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップは続伸。ガス価格の上昇に連れる形となった。

現在のガス価格(JKM)との関係性を元に回帰分析を行うとNEWC価格は175ドル、±1標準偏差で105~245ドル程度までが統計的に説明可能なレベル。

期先の価格は現在の生産コストに近いことを考慮すると、期先の価格が125~135ドル程度まで再び上昇しているため、125~245ドルが説明可能なレンジであり、現在のスポット価格は価格想定レンジの下限。

ロシア問題が継続する以上、欧州が完全に脱ロシアを達成することが期待される2027年(早ければ2025年、現実的には2026年)までは、ピークシーズン中の価格上昇リスクはつきまとう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

10月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比+23.3%の3,599万2,000トン(前月+27.5%の4,214万トン)と過去5年レンジを大幅に上回る水準を維持した。

国別では9月は米国・モンゴル以外の地域では輸入量が概ね減少しているが引き続きロシアのシェアが35.7%(前月35.8%)と高い。次いでインドネシアが27.6%(25.5%)、豪州24.7%(30.3%)となっている。

10月の中国の石炭生産は、前年比+4.7%の3億8,707万トン、1,248万トン/日(前月+1.3%の3億9,131万トン、1,304万トン/日)と伸びが鈍化したが、生産量は過去最高水準を上回っている。

10月の中国の電力消費量は前年比+8.6%の7,419億kwh(前月+10.1%の7,811億kwh)と伸びが鈍化した。構造的な需要増加継続と、季節性による需要減少による。

本日は、ピークシーズンであるため一定の需要はあり高値維持の公算。

◆LME非鉄金属

LME非鉄金属市場は上昇した。需給ファンダメンタルズ面に大きな変化はないが、昨日、米統計が低迷していることを受けた米金利が低下し、それに伴うドル安進行が非鉄金属価格の押し上げ要因となった。

パウエル議長のタカ派的な発言はほとんど材料視されなかった。

中国の不動産問題は解決していないことが需要の下押し要因となっているが、中国政府が1兆元の予算を前倒ししてインフラ投資を行うなどの対策を行っていること、脱炭素の動きにともなう投資はペースが減速するものの継続が予想されること、脱中国に伴う他地区での設備投資は継続が予想されることから、期待需要も含めて、需給ファンダメンタルズはやや供給過剰~中立と見ている

そのため、中国とは直接関係ないところでのドル安進行で、非鉄金属価格は当面、現状水準で横這い推移が予想される。

中国が不動産危機を乗り切ることに失敗し、中国政府が想定以上にこれまで積み上がった余剰生産能力の解消に手間取った場合、景気は長期低迷、いわゆる「日本化」が10年単位で起きる可能性が高い。

さらに労働人口がピークアウトし、かつ、西側諸国の制裁によって先端分野の発展が阻害され生産性が低下、将来的にはインフレをもたらしソ連型の国家崩壊、というシナリオも長期的には有り得る話。

就任以降の習近平国家主席の政策は、決して成功しているとは言えない。

10月の中国の貿易統計では、ベンチマークである銅地金・製品輸入は前年比+23.7%の50万168トン(前月▲5.8%の48万426トン)と過去5年平均を回復した。

中国の精錬銅輸入は年末にかけて増加する傾向があるが、昨年は10月に輸入が減少していたが、今年は3月頃からの輸入量の回復トレンドが継続している。

10月の銅鉱石・コンセントレートの輸入は前年比+23.5%の230万9,738トン(前月▲1.3%の224万1,135トン)と過去5年の最高水準を再び上回った。

10月の中国の精錬銅生産は+23.8%の114万3,000トン(前月+20.7%の114万1,000トン)と過去5年の最高水準を大きく上回っている。

10月の銅スクラップの輸入は前年比+37.7%の15万5,359トン(前月+2.0%の17万283トン)と過去5年平均を維持しているが水準は低下。国慶節の季節性の影響もある。

精錬銅輸入の増加と銅鉱石輸入の増加は、製造業PMIの悪化、10月中は上海取引所在庫が減少していることを合わせて考えると、統計に反映されない企業在庫として取得された可能性があると見ている。

週明け月曜日は、重要な手掛かり材料に乏しく、ドル安基調が価格を押し上げると考える。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは小幅に上昇、大連は上昇、豪州原料炭スワップ先物は上昇、大連原料炭価格は上昇、上海鉄筋先物は上昇した。

11月の中国鉄鋼業PMIは総合指数が48.2(前月45.6)と改善した。新規受注が49.7(45.0)と政府の不動産セクターテコ入れ策で回復が続いているが、輸出受注は44.3(45.7)と景況感の悪化が続いており、全体でまだ閾値の50を上回っていない状況。

生産も48.0(43.4)と回復しているが、貿易統計で鉄鋼製品輸出が増加していることを考えると、まだ国内需要が完全に回復していると言うわけではなさそうだ。ただ、悪化していた建設業PMIも政策効果で55.0(53.5)と回復しており、徐々に政策効果が顕在化していることも事実だろう。

結局、バランスシート不況にあると考えられる中国がどの程度財政出動を行い、民需の不足をカバーできるかが景気回復のタイミングを図る上で重要になるが、恐らく年末の中央経済工作会議まで待つ必要があると考えられる

週間の鉄鋼製品港湾在庫統計は、鉄鋼製品在庫は▲12万6,000トンの975万2,000トン(過去5年平均 954万9,000トン)と過去5年平均を上回った。

鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比+220万トンの1億1,070万トン(過去5年平均1億3,7294万トン)、在庫日数は25.8日(+1.3日、過去5年平均 30.8日)。

鉄鉱石は在庫は日数ベースでも、数量ベースでも過去5年平均を下回っており、鉄鉱石の需給はタイトで一定の在庫積み増し需要が存在する。

主要原料炭の輸入港である京唐港の原料炭在庫は+3万トンの257万トン(過去5年平均 178万6,000トン)、在庫日数は+0.5日の11.2日(過去5年平均 7.6日)と、原料炭の需給は緩和している。

週明け月曜日は、特段材料はないものの、鉄鉱石は在庫水準の低さと年初以降の在庫積増しの動きに備えて在庫の積増しが継続するとみられ、高値を維持、原料炭は在庫水準の高さから低迷するとみる。

◆貴金属

昨日の金は上昇下。利上げ打ち止め期待を背景とした実質金利の低下が金の基準価格を押し上げる一方、利下げが始まっている訳ではなく、「政策金利の高値維持」をしている期間は、信用リスクイベントが発生しやすいことから、リスク・プレミアムが高止まりしていることが背景。

銀は金価格の上昇を受けて上昇、プラチナは株高で上昇、パラジウムは前日の反動で小幅に下落した。

足下、金価格の構成要素のうち、リスク・プレミアムの占める比率が高止まりしている。

金リスク・プレミアムの上昇要因の主なところは、

1.米利上げによる信用不安の高まり(低格付企業・新興国)

2.ロシアに対するドル決済禁止制裁を受けた、準備金におけるドルから金ヘのシフト

3.ロシアのウクライナ侵攻

4.イスラエルとパレスチナの戦争開始による中東情勢不安並びに、テロ組織の大規模攻撃であるため、各地にテロが拡散するリスク

あたりだろう。これらと同じ事象は、ニクソン・ショック~プラザ合意~アジア危機収束まで30年近く続き、金価格に占めるリスク・プレミアムのシェアが高止まりした。

2019年基準で算出した現在のリスク・プレミアムのシェアは55%と、ほぼ上記の期間と同様の状況になっており金利水準以上にその他の要因が金価格の形成に影響を与えていることが確認できる。

現状を理解する手助けとなるため、あえて実質金利・信用リスク・その他、に分離した場合、実質金利部分が45%、信用リスク要因が20%、その他の要因が35%となった(2019年データを元にした分析結果に変更)。

直近1年間の説明力を相関係数で確認すると、最も金価格に対する説明力が高いのがFF金利で0.68、次いでドル指数で▲0.64、リスク・プレミアムが0.59程度、期待インフレ率(▲0.30)、実質金利(▲0.01)と、実質金利は現在の価格形成に大きな影響を与えていない。

この5年間のデータを元にした分析では、FF金利±1%の変化で、実質金利は±0.5%変化、金価格は±20ドル変化し、リスク・プレミアムは±150ドル変化する。

市場予想では2024年は▲0.5%程度のFF金利引下げが見込まれているため、金の基準価格は+10ドル程度の押し上げ要因となり、リスク・プレミアムは、▲75ドルの低下要因となるため、仕上がりで▲65ドルの価格低下となる。

現在の金価格は2,000ドル近辺であるが、1,950程度までの下落余地があることになる。しかしその水準が切り上がっている。

更なる上昇があるか否かは、中東問題の広がり具合によるだろう。

銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。

月次のボリンジャーバンドの分析は有効に機能しているが、仮にボリンジャーバンドの下限だと75倍、上限ならば90倍程度が目処になるが、金が2,000ドルを固めた結果、を1,900ドル程度とすると22.20~26.65ドルが現在取り得る範囲といえる。

また、中国の鉱工業生産を元にすると、現在の金銀レシオは90倍程度が上限とみられる。

週明け月曜日は、米景気減速を受けたドル安進行や実質金利の低下で高値を維持すると考える。

◆穀物

シカゴ穀物市場はトウモロコシと小麦が上昇、ドル安進行が材料になった。大豆は主要生産地での降雨や米国でのクラッシュ・マージンの低下が材料視された。

長期的な話だが、今年地中海を襲ったハリケーン(ストーム・ダニエルと命名)の影響で中東北アフリカ地域に降雨がもたらされたことは、先々の穀物供給に影響を及ぼす、サバクトビバッタの越冬を可能にし、来年以降の供給減少のリスクを高めることが懸念される。

尚、Locust Watchでは中東・北アフリカ地域でのバッタの大量発生は確認されていない。

週明け月曜日は、米ドル安基調を受けて小麦、トウモロコシは堅調、大豆は需給緩和観測から軟調推移を予想。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

◆信用リスク・マクロ経済のリスク

・米国債の格下げリスク(残るMoody'sもネガティブウォッチに)、米国債格下げの動きが連鎖して、金融機関の格下げが加速、信用不安に繋がる場合。

・日本政府の財政規律の欠如、成長期待への失望から円が暴落するリスク。

・景気が想定よりも早く底入れしてインフレが再燃、あるいは景気を刺激する目的で早期の利下げが行われ資源価格が高騰、各国中銀の金融政策が再びタカ派の状態になった場合(リスク資産価格の上昇→下落リスク これは顕在化している可能性)

新興国の財政破綻、先進国も含めた債券の格下げによる金融機関・ファンドの突発的な損失拡大による信用収縮、低格付企業の破綻や、市場変動性の高まりによるファンド破綻などもリスクに(米銀格下げ検討は始まっている)。

・中国の構造的成長が終了、過剰債務や不動産問題を抱え、中国が「日本化」するリスク(この場合長期低迷で工業金属やエネルギーなどの景気循環系商品価格の下押し要因となる可能性)

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、モディ支持率の低下による近代化投資の遅れ、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

◆地政学的リスク

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。

・中東情勢不安が拡大し、先進国でテロが発生(景気の下振れリスク)、産油国でテロが発生して原油価格が高騰(インフレ発生で景気下振れリスク)するリスク。

中東問題が、「反イスラエル・親イスラエル」の対立となり、世界に拡散する場合(可能性の低い顕著な景気下振れリスク)

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。暴動激化で中国が分裂するリスク(極めて可能性の低いリスク)。

・西アフリカ・北アフリカで、フランスが旧宗主国である国の反仏感情が高まり、武力衝突が発生して域内治安が悪化する場合。

欧州に難民が流入するほか、地域によっては(リビア、アルジェリア、ナイジェリアなど)原油・ガス供給に影響が及ぶ恐れ。

◆その他のリスク

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。

また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。

◆本日のMRA's Eye


「より運営が困難になるOPECプラス」

11月30日に開催されたOPECプラスは、事前にニュースで流れていた観測報道の▲100万バレル超の協調減産合意ではなく、2024年1月から3月まで有志国合計で▲220万バレルの自主減産を実施することになった。報じられているように、ナイジェリアやアンゴラが協調減産に強硬に反対したことによる。

リーマンショック後のOPECはそのあり方について迷走していた。OPECは原油市場においてはスイング・サプライヤー(最後の出し手)のポジションにあり、供給量を調整することで価格を安定させる役割を担っていた。

しかし、リーマンショックの2~3年前頃から米国で本格的にシェールオイルの開発が始まり、「地政学的リスクのない地域で、低コストでの原油生産が可能」になった。現時点でこのシェールオイルの大規模生産が可能なのは米国だけである。

そしてこのシェール革命で重要なのは、地政学的リスクを考慮することなく経済合理性があれば原油を増産できるようになった点である。

これにより、OPECがかつてのように減産して価格を上昇させるとシェールオイル生産者が速やかに増産してしまい(と言っても6ヵ月程度は掛かったのだが)、減産効果が相殺されてしまうようになった。

この動きを覆したのが2014年「OPECショック」である。このときのOPEC総会は、原油価格下落を阻止するためにOPECが減産をするのではと見られていた。

しかし、蓋を開けてみればOPECの需要予測を100万バレル上回る3,000万バレルの生産枠を維持すると発表、原油価格が急落した。狙いはシェールオイル生産者の増産を防ぐことが目的だったと見られる。

その後、OPECも価格防衛能力が低下していることに対応する必要性を感じたため、ロシアを中心とする「非OPEC諸国」をOPECメンバーに迎え入れ、OPECプラスの体制が構築された。

これにより生産シェアが6割に上昇したため(2022年時点では54.9%)、価格支配力は格段に増すことになった。

また2020年のコロナショック以降、直接的にコロナと関係無いのだが脱炭素の動きが加速、非OPEC諸国、特に欧米の原油上流部門投資が減少し、結果的にOPECプラスのシェアはさらに上昇。この後、2021年に世界を襲った異常気象、2022年のロシアのウクライナへの軍事侵攻、ガザ紛争勃発によってさらに原油価格は上昇した。

しかし、原油価格を決定するのは結局需要動向であり、景気動向である。原油価格高騰もその遠因であるが世界的にインフレが深刻になったため、各国中銀がインフレ抑制のための高金利政策を採用、2023年12月現在、世界の景気には下向きの圧力が掛かっている状況であり、原油価格には下押し圧力が掛かっている。

この状況でOPECプラスが減産に踏み切るかどうかに注目が集まっていたわけだが、上述の通り協調減産では合意できなかった。

そして過去にもみられた事であるが、景気が減速して原油価格が下落すると原油販売による収入を確保するため、むしろ増産バイアスが掛かりやすくなる。

これを抑制するために協調減産の形を取りたかった訳だが、今回は有志国しか減産を追加で行わない。そのため、「実質合意していないのと同じ」と見做された可能性が高い。

今回ブラジルも新しくOPECプラスに加盟することになる見通しだが、参加国が増加することはそのまま合意に至るのがより困難になることを意味する。

シェアが大きくなると減産で合意できれば価格押し上げ圧力がシェアが低い時よりも強まるが、逆に合意できなければシェアが大きいが故に価格下押し圧力がより強まることになる。

言葉を換えると、合意しやすいのはむしろ景気が良好で価格が上がりそうな局面、合意し難いのは景気が減速して価格が下落しそうな局面、とも言えるだろうか。

原油価格は最大消費国である米国の景況感の影響を受けやすく、ISM製造業指数の原油価格に対する説明力は高いが、グラフの通りISM製造業指数から原油価格は乖離している。

これはコロナショック以降の景気回復と、OPECプラスの減産が守られていたことと、脱炭素による非OPECプラスの増産が限定されていたことによるものだ。

しかし、上述の通り、今後、OPECプラスが減産を遵守できるのか不透明である。今後の原油価格は特に米国の景況感に左右されるが、仮にISM製造業指数の改善が続けば減産の影響で価格は上昇するリスクが高まり、ISM製造業指数が減速すればOPECプラスの結束が逆に乱れ、水準を切下げるリスクが高まると言えるだろう。

このとき、ISM製造業指数と原油価格の乖離が大きいため、大幅な下落となるリスクは無視できない。


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