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エネルギーは下落 その他は円高・ドル安で堅調
  • MRA商品市場レポート

2023年10月31日 第2576号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「エネルギーは下落 その他は円高・ドル安で堅調」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は、エネルギーやその他農産品が下落したが、その他の商品は総じて堅調な推移となった。

昨日はイスラエル軍のガザ地区への展開が「想定よりも手控えられている」との解釈を受けていったん売りが入った。しかし、中東情勢不安は継続しているため、「上昇した翌日は売られ、売られた翌日は買われ、結局現状のレベルでのもみ合い」が継続しているとも言えるため、取り立てて大きな変化ではなかったと考えられる。

一方、その他の商品が上昇したのはドル指数の下落の影響が大きかったとみる。背景には、欧州景況感指数がやや市場予想よりも強かったことがあるが、それ以上に日銀の金融政策変更観測が強まったことが影響したと考えられる。

日本の10年金利は日銀が「上限の目処」とする1%に近づき(と言っても、昨日の段階では、1%までまだ10bp以上あった。現在は0.95%まで上昇)、日銀が政策を変更せざるを得ないのでは、との見方が強まったため。

YCCは基本的には解除の方針であるが、日銀のこれまでのコメントを見るに、来年の春闘を見てから変更したいというのがメインシナリオだった。コストプッシュインフレでは有るが、2%の物価上昇率が視野に入る中でこの機を逃したくない、という考えがあるのだろう。

今回、政策を変更すれば、それは政府側の意向が強かったのではないかと考えられる。介入は持続可能ではなく、米国債の売却で米長期金利が上昇、効果が相殺されるとみたのではないだろうか。

【本日の見通し】

本日も、引き続き中東情勢に注目が集まり、総じて不安定な推移となりやすい。中東情勢に影響がある、という意味では政治家同士の会談の影響が小さくないと考える。

本日の注目材料は以下の通り。中国PMIは発表済みだが、市場予想を下回っており、同国の景況感が悪化していることを示唆(詳細な評価は明日)。

この中では国内物価以上に、ドル指数動向を通じて商品価格に影響を及ぼすため、日銀政策会合の結果に注目している。

昨日の日経の報道(恐らく何らかのリークがあったと思われるが)を受けても、1円しか円高にシフトしていない。このことはこの10年間の異次元の緩和が異次元であり、その間にやる予定だった構造改革が進まなかったことのツケとも言える。

・米副大統領訪英

・サウジアラビア国防相 ワシントン往訪

・国連総会 パレスチナ問題を巡る緊急特別会合(ニューヨーク)

・Q323米雇用コスト指数

・10月米消費者信頼感指数

・Q323ユーロ圏GDP 市場予想 前期比±0.0%(速報 +0.2%、前期±0.0%)) 前年比 市場予想 +0.2%(速報 +0.5%、前期 +1.2%)

・10月ユーロ圏CPI 市場予想 前年比+3.1%(前月+4.3%) 前月比 +0.3%(+0.3%)、コア前年比 +4.2%(+4.5%)

・10月中国製造業PMI 実績 49.5(市場予想 50.2、前月 50.2) サービス業 実績 50.6(52.0、51.7)

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

昨日の原油価格は下落した。中東情勢は日替わりで売り材料・買い材料となっているが、総じて「大幅に上昇した翌日は売られ、売られた翌日は買われる」という非常に大きなレンジワークになっているとの印象。

イスラエル ネタニヤフ首相は、「戦闘は第二段階に入った」としており、一部の報道では既にガザ地区に地上軍が侵攻して、軍事車両以外の民間車両も攻撃しているといった報道も流れている。

イランもイスラエル軍のガザ地区侵攻を阻止するため、米軍施設を攻撃、それに対して米軍も反撃するなど、醸成は非常にきな臭い。ただ、米国・イランとも直接戦うことは全く想定していないし、なった場合には大事である。

イスラエル国防軍は、「イスラエルに付くか、テロリストに付くか」といったプロパガンダもネット上に流し始めている。この構図が強調されると、局地的な戦闘で終結しなくなるため、世界的に大きなリスクとなる。

宗教・民族対立を前面に押し出すと、民衆が蜂起する可能性があり、こうなると「政治家同士の交渉」でどうにかなる話ではなくなる。アラブの春がまさにこれだ。

こうなると、イスラエル・パレスチナから離れたところで戦闘が勃発するリスクが高まることになる。

ロシア情勢を踏まえた原油供給状況は大きく変化していないため、中東情勢の影響を考慮した原油価格の「想定されるレンジ」は以下の通り。

現在は 3.の状態。この状況でもOPECからは価格維持に向けた取組みを継続する、といった発言が出ている。

<シナリオ別原油価格見通し>

1. 中東問題がイランにまで波及し、OPEC諸国も対立国ヘの供給を絞る(オイルショック状態)、イランに対する制裁強化など
Brent 120-150ドル

2.中東問題がイランにまで波及するが、OPEC諸国が増産する
Brent 90-120ドル

3.中東問題がイランに波及せず、OPEC諸国が増産しない
Brent 75-95ドル

4.中東問題がイランに波及せず、OPEC諸国が増産する
Brent 70-90ドル

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

5. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)
Brent 60-90ドル

6. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)
Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

Q423 需要の伸び横這い・中東情勢不安による供給制限懸念(→高値維持)グローバル・リセッション、危機顕在化の場合(↓↓)
Q124 欧米の景気後退局面入りによる需要鈍化・生産調整継続(↓高値維持も下落開始)
Q224~Q324 実質金利プラス維持による景気後退(サービス業)製造業の循環的な回復が下支え(↓↓)OPECプラス減産維持の場合(↓)
Q324以降 需要回復・中国の正常化進捗(↑)OPECプラス減産維持の場合(↑↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

10月24日時点のWTIの投機筋ポジションは、ロングが+7,687枚、ショートが+13,310枚と弱気ポジションに転じている。原油価格高騰による景気への懸念が、供給不安の懸念よりも勝ったようだ。

Brentはロングが▲1,117枚、ショートが+9,649枚と、こちらも供給不安というよりも景気そのものへの懸念が強まったように見られる。

本日も、中東問題が解決した訳ではないことが原油価格を高値に維持すると考える。

さらに価格が上昇するとすれば、イスラエル・ハマス問題がその他の地域に波及し、米国が物理的に関与せざるを得なくなった場合だが、イスラエル軍のガザ地区侵攻で民衆レベルまで暴動が広がるリスクは無視できなくなってきた。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は小動き。中東情勢不安と景気減速、在庫水準の高さが相殺しあう形となった。

欧州の在庫水準の高さを考えると、今冬に関しては数量ベースで調達が不充分、というリスクはさほど高くないと見ている(ただし供給途絶が発生すれば、価格には上昇圧力が掛かるが、ウクライナ危機発生時のような暴騰にはならないだろう)。

欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続

2.LNGターミナル・ガス田・船舶の不慮の停止

3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)

4.景気減速(価格下落要因)

5.季節要因・気象状況

1.はロシアのLNGカーゴはまだ取引されており、スポットカーゴ価格の上昇要因にはならなくなってきた。ロジカルには西側諸国が脱ロシアを完全に完了するまでは、気温の変化や政治的なイベントによって季節的に価格が高騰するリスクは残る。

弊社のシミュレーションでは、今冬の欧州のガス調達は、ロシアが仮にガス輸出を完全に停止したとしても凌げる見通し。

ただし、在庫が減少すれば翌年以降の調達に影響が出る(数量確保の問題と、価格上昇の問題両面)ため、脱ロシアの完全完了までは上昇リスクは無視できない。

弊社の試算では欧州が完全にロシア産ガスを排除(第三国経由でもロシア産のLNGを購入しない状態になる)できるのは2027年頃。ロシア産のLNGの輸出が阻害されなければ2025年頃。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

今のところロシア産ガスの供給は実質的に制限されておらず、LNGの形で欧州諸国も購入を続けている。ガスがLNGに置き換わっただけとも言える。

しかし、脱ロシアが完了した場合、ロシアがこれまで供給してきた西側諸国向けのガスが「浮く」ことになる。2022年、欧州向けにロシアが削減したパイプライン輸出量は708億立方メートルで、総輸出量9,685億立方メートルの7.3%に及ぶ。

これを他地域の需要増加で補うことは恐らく不可能であり、FID済みのプロジェクトも見直しせざるを得なくなる可能性がある。

2.は、Chevronがイスラエル沖のTamarガス田での生産をイスラエル・ハマスの戦闘による情勢不安を理由に停止している。

今回の戦闘が長期化するのか否か、現在では不透明であり、戦闘行為の中でパイプラインが破壊される可能性も否定できない(恐らく米国の空母打撃群がイスラエル沖に展開しているため、そのリスクは低いと考えられるが)

また、フィンランドとエストニアを結ぶパイプラインが、何らかの工作で破壊されたと報じられていることも、供給懸念を高めている(当然、ロシアは関与を否定)。

この他、異常気象発生時にはインフラに障害が出る可能性が高まる。米海洋大気庁の見通しでは、大西洋でのハリケーンの発生頻度は例年を上回る見通し。

通常、エルニーニョ現象が発生したときは大西洋の海水温が低下してハリケーンの発生・勢力が弱まるが今年は例外的な見通しとなっており、北米→欧州のLNG輸送や輸出ファシリティへの影響は無視できないリスクに。

また、異常気象の影響による干ばつでパナマ運河の水位が低下しており、LNG輸送に障害が発生、スポット価格が上昇する可能性が出てきた。

3.4.は顕在化している。しかし3.に関しては、ロシアもこれ以上ガス供給を削減することは難しい。

ロシア・ウクライナ戦争は越冬して来年に持ち越される可能性が高まる中、この冬にロシアがなりふり構わない対応をしてくる可能性は否定できない。

それでもガス在庫の水準は高く、仮にロシアが輸出を完全に止めても今冬の調達には問題がなさそうな状況(ただしこの場合、供給が足りていても価格は上昇する)

5.は2.とも関係するが、今年の冬はエルニーニョ現象が見込まれ、通常であれば暖冬となりやすいため、価格上昇方向のバイアスは強まらないと予想される。

米メキシコ湾発のLNGのタンカーレートは日本向け・欧州向けとも小幅に上昇している。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米天然ガス価格は下落。北米の気温上昇見通しを受けて。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物市場は小動き。新規材料に乏しく。

現在のJLCの水準は11.95ドルであり、現在のスポット価格はこの水準を上回っている。

その他のアジアの国の長期契約ベースの価格は恐らくJLCと大差がないと考えられ、今年の冬場の需要期の価格はほぼJLCの水準で推移している。

今年は回避されているが、豪州は国内供給が充分でない場合、通常7月1日まで、遅くとも10月1日までにガス不足の懸念を通知し、実際に国内供給が不充分と判断された場合、次の1年間は輸出が制限される(ADGSM)。

この条項が発動された場合、スポット価格の上昇リスクとなるため、意識はしておきたい。

また、サハリン2の生産能力の低下、供給の減少はかなり前から指摘されているが、今のところ顕在化していない。多くの必要な部材は中国などを経由してロシアにもたらされている可能性があり、実は長期の供給リスクは懸念ほどではないかもしれない。

9月の中国の天然ガス生産は+6.5%の1,330万9,000トン(前月+8.2%の1,360万3,000トン)と同じ時期の過去5年の最高水準を上回っている。

9月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比±0.0%の1,015万トン(前月+22.7%の1,086万トン)と急減速した。

9月のパイプラインベースの輸入は前年比+4.9%の446万トン(前月+10.4%の456万トン)と過去5年の最高水準(425万トン)を上回っている。

9月のLNG輸入は前年比▲3.5%の568万7,000トン(前月+33.4%の629万8,000トン)と減少し、過去5年平均に近接した。

国内生産の増加と、固定インフラであるパイプラインからの供給が優先される中で、調整弁的に用いられるLNG調達需要が低下したとみられる。

ただし合計の「ガス顕在需要」は前年比+6.3%の2,360万3,000トン、年初来累計は+7.2%の2億1,341万7,000トンと着実に増加している。

※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

10月22日時点の日本の大手発電業者のLNG在庫は223万トン(過去5年平均259万8,600トン、大手発電業者在庫の過去5年平均は201万トン)と、先週から大幅に増加したが、いずれの集計でも過去5年平均を下回った状態が続いている。

速報性がない、大手電力以外のLNG在庫を含めた過去5年の水準と比較すると、過去5年の最低水準(235万2,800トン)も下回っている。

夏が例年よりも暑い猛暑で電力需要が増加したことに加え、原子力発電所の再稼働、大手発電業者のLNG調達は、自社の顧客を対象にした数量しか行われない。これは新電力の顧客の需要データが開示されないため、他社分まで調達することができないため。

仮に冬場が寒くなった場合、再びガスや石炭不足となり価格が上昇する可能性はある。通常過不足はスポット(JKMベース)で行い、電力のスポット価格はJKMの影響を受けるため、再び冬場の電力価格が上昇するリスクは無視できない。

また、今年はエルニーニョ現象の影響で太平洋側は台風の発生頻度・勢力が強まる可能性がある。この場合、輸送に影響が出ることも考えられるため、エルニーニョ現象が発生しているものの在庫水準の低さを考えると、冬場の価格上昇リスクも無視できない。

JEPXベースで調達して大手電力会社の価格で電気を販売している業者、JEPXベースで電気を調達している消費者はこのJKMのリスクを抱えることになる。

本日は、中東情勢不安が解消していないことがTTF価格を高止まりさせるため、総じて高値維持の公算。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP・東京ガス提示の数値を使用している。 LNG1トン=2.19立方メートル(液体)=1,360立方メートル(気体)= 46MMBtu LNG船1隻 147,000立方メートル=67,000トン 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル=7,757トン 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップ先物は下落した。中国の在庫水準の高さや、ガス価格の上昇一服が材料となった。

現在のガス価格(JKM)との関係性を元に回帰分析を行うとNEWC価格は170ドル、±1標準偏差で100~240ドル程度までが統計的に説明可能なレベル。

期先の価格は現在の生産コストに近いことを考慮すると、期先の価格が130~150ドル程度まで再び上昇しているため、130~220ドルが説明可能なレンジであり、現在のスポット価格はやや安く、足下の需給が緩和していることを示唆。

なお、昨年対比で今年の冬が寒くなる(昨年は記録的な暖冬)可能性が後退、北半球はアジアを含めて暖冬見通しであることは、石炭価格を押し下げよう。

ロシア問題が継続する以上、欧州が完全に脱ロシアを達成することが期待される2027年(早ければ2025年、現実的には2026年)までは、ピークシーズン中の価格上昇リスクはつきまとう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

9月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比+50.5%の4,433万3,000トン(前月+66.9%の3,926万トン)と過去5年レンジを大幅に上回る水準を維持した。

ガスも同様であるが、中国の記録的な気温上昇の影響で、発電燃料需要が引き続き増加しているためと考えられる。2000年以降、エルニーニョ現象が発生しているときは発電燃料の価格は下がる傾向が強いが、異常気象が発生しやすい気象状態であることは意識しなければならない。

国別では7月は豪州からの輸入が増加している。これにより、豪州の輸入シェアは29.5%(前月23.1%)と上昇した。しかし直近12ヵ月の累計シェアはロシアが1位で0.6%、ついでインドネシア(36.2%)、豪州(13.0%)となった。

9月の中国の石炭生産は、前年比+1.3%の3億9,131万トン、1,304万トン/日(前月+3.0%の3億7,902万トン、1,222万6,000トン/日)と伸びが鈍化したが、過去最高水準は上回っている。

9月の中国の電力消費量は前年比+10.1%の7,811億kwh(前月+4.0%の8,861億kwh)と伸びが加速した。構造的な需要増加の影響とみられる。

本日も、中東情勢不安が継続していることに変りは無いためガス価格が高値を維持する可能性が高く、石炭価格も高値維持の公算。

◆LME非鉄金属

LME非鉄金属市場は上昇した。日銀の政策変更観測の強まりを受けた円高・ドル安進行が材料になった。

中国政府は景気刺激のためのインフラ投資前倒しを決定しており、恐らくこの流れであれば年末開催される中央経済工作会議でも、財政赤字を拡大させつつ景気刺激を行う方針が確認されると考えられ、循環的な回復を確認する統計が出始めていることと合わせ、非鉄金属価格を下支えすると考える。

しかし不動産問題が解消した訳ではなく、むしろ問題を先送りしたためいずれかのタイミングで大きなリスクとなる見込みだ。

今後は「インフラ投資とフロー需要は価格を押し上げるが、これまで需要をけん引してきた新規の不動産開発投資が行われないことから、回復ペースはこれまでの想定よりも弱い」という状態と整理できる。

また、これに加えて脱炭素の動きにともなう投資や、脱中国に伴う他地区での設備投資は継続が予想されることも価格上昇に寄与するとみている。

この危機を乗り切ることができれば、長期的には脱炭素、脱ロシア、中国・インドのW人口ボーナス期(中国は近代化仕上げの10年)、東西の緩やかな分裂に伴うサプライチェーン再構築のためのインフラ投資継続、といった材料を考えると、鉱物資源需要は増加して価格には構造的な上昇圧力が掛かると見る。

ただし、この危機を乗り切ることに失敗し、中国政府が想定以上にこれまで積み上がった余剰生産能力の解消に手間取った場合、景気は長期低迷、いわゆる「日本化」が10年単位で起きる可能性が高い。

さらに労働人口がピークアウトし、かつ、西側諸国の制裁によって先端分野の発展が阻害され生産性が低下、将来的にはインフレをもたらしソ連型の国家崩壊、というシナリオも長期的には有り得る話だ。

9月の中国の貿易統計では、ベンチマークである銅地金・製品輸入は前年比▲5.8%の48万426トン(前月▲5.0%の47万3,330トン)と過去5年平均を下回る状態が続いている。

9月の銅鉱石・コンセントレートの輸入は前年比▲1.3%の224万1,135トン(前月+18.8%の269万7,104トン)と過去5年の最高水準を下回った。

9月の中国の精錬銅生産は+20.7%の114万1,000トン(前月+18.4%の108万5,000トン)と過去5年の最高水準を大きく上回っている。

9月の銅スクラップの輸入は前年比+2.0%の17万283トン(前月+0.9%の15万6,077トン)と過去5年平均を維持している。

精錬銅輸入の減少はまだLME価格の方が上海価格よりも高いことが影響しているとみられるが、精錬銅生産は増加しており中国の銅顕在需要は増加している(ネット輸入+国内生産)。

本日は、先ほど発表された中国PMIが製造業・非製造業とも悪化したため、軟調推移を予想。

なお、日銀の政策動向を受けたドル指数変化が昨日の価格上昇をもたらしているため、何らかの政策変更を伴うならばドル安進行でさらに上昇、やはり現状維持であれば、再びドル高が進行し、水準を切下げへ。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇 、大連は上昇、豪州原料炭スワップ先物は下落、大連原料炭価格は上昇、上海鉄筋先物は上昇した。

特段材料が無い中、採算改善のための鉄鋼製品価格値上げ観測が鉄鋼製品価格を押し上げ、鉄鋼原料価格も押し上げた。

9月の中国粗鋼生産は前年比▲5.6%の8,211万トン(前月+3.0%の8,641万トン)と減速し、過去5年平均を下回った。

一方、9月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲28.0%の64万470トン(前月▲28.1%の64万トン)と低迷が続き、同じ時期の過去5年の最低水準を下回る状態が続いている。

9月の中国の鉄鋼製品の輸出は前年比+61.9%の806万3,100トン(前月+34.6%の828万トン)と過去5年の最高水準を大きく上回る状態が続いている。同時に鉄鋼製品輸出額は前年比▲6.0%の65.6億ドル(前月▲30.6%の67.1億ドル)と金額は前月から減速したが、前年比下落率は上昇した。

輸出額を数量で割ったトン当り単価は814ドル(前月810ドル)と下落に歯止めが掛かった感がある。これは、中国の国内在庫の解消が進んだ可能性があることを示唆している。

中国不動産問題は先送りし、「それがいつどのタイミングで噴出するかは分らないものの、それに目をつぶれば」最悪期は脱し、循環的な回復局面に入ったと言える。

しかし、週次の鉄鋼製品在庫を見ると過去5年平均に迫っており、在庫の積み上がり傾向が確認できる。このことは、まだ中国の在庫調整には時間が掛かる可能性があることを示唆している。引き続き、輸出単価には注目する必要があるだろう。

週間の鉄鋼製品港湾在庫統計は、鉄鋼製品在庫は▲57万2,000トンの1,211万1,000トン(過去5年平均 1,257万2,000トン)と過去5年平均を下回っているが、かなり水準は過去5年平均に近づいており、鉄鋼製品価格の下押し要因となっている。

鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比▲25万トンの1億490万トン(過去5年平均 1億3,543万トン)、在庫日数は23.6日(▲0.1日、過去5年平均30.2日)。

鉄鉱石は在庫は日数ベースでも、数量ベースでも過去5年平均を下回っており、鉄鉱石の需給はタイトで一定の在庫積み増し需要が存在する。

主要原料炭の輸入港である京唐港の原料炭在庫は+13万トンの186万トン(過去5年平均 118万2,000トン)、在庫日数は+0.5日の7.8日(過去5年平均 4.8日)と、原料炭の需給は再び緩和している。

本日は、先ほど発表された中国PMIが製造業・非製造業とも悪化したため、鉄鋼製品価格の下落で軟調だが、中国政府が景気てこ入れに舵を切ったことが価格を下支え。

◆貴金属

昨日の金銀価格は高値でもみ合った結果、前日比マイナスで引けた。米長期金利の上昇と原油価格の下落が実質金利を押し上げ、金の基準価格を押し下げたが、中東情勢不安は継続しており、安全資産需要がこれを支えた。

銀価格は上昇、プラチナ、パラジウムも上昇した。株価上昇で興行金属的な色彩が強い金属は物色された。

足下、金価格の構成要素のうち、リスク・プレミアムの占める比率が高まっている。金リスク・プレミアムの上昇要因の主なところは、

1.米利上げによる信用不安の高まり(低格付企業・新興国)

2.ロシアに対するドル決済禁止制裁を受けた、準備金におけるドルから金ヘのシフト

3.ロシアのウクライナ侵攻

4.イスラエルとパレスチナの戦争開始による中東情勢不安並びに、テロ組織の大規模攻撃であるため、各地にテロが拡散するリスク

あたりだろう。これらと同じ事象は、ニクソン・ショック~プラザ合意~アジア危機収束まで30年近く続き、金価格に占めるリスク・プレミアムのシェアが高止まりした。

2019年基準で算出した現在のリスク・プレミアムのシェアは55%と、ほぼ上記の期間と同様の状況になっており金利水準以上にその他の要因が金価格の形成に影響を与えていることが確認できる。

現状を理解する手助けとなるため、あえて実質金利・信用リスク・その他、に分離した場合、実質金利部分が45%、信用リスク要因が20%、その他の要因が35%となった(2019年データを元にした分析結果に変更)。

直近1年間の説明力を相関係数で確認すると、最も金価格に対する説明力が高いのがドル指数で▲0.87、次いでFF金利で0.80、リスク・プレミアムが0.69程度、期待インフレ率(▲0.59)、実質金利(▲0.18)と、実質金利は現在の価格形成に大きな影響を与えていない。

ドル指数はFF金利の影響が大きいため、今後の金価格を占う上ではやはりFF金利動向が重用になる。

この5年間のデータを元にした分析では、FF金利±1%の変化で、実質金利は±0.5%変化、金価格は±50ドル変化し、リスク・プレミアムは±150ドル変化する。

年内利上げの可能性は後退しているが、11月にあったとして金の基準価格は▲13ドル、リスク・プレミアムは+38ドルの上昇圧力となり、差し引き+25ドルの上昇となる。

市場予想では2024年は▲0.5%程度のFF金利引下げが見込まれているため、金の基準価格は+25ドル程度の押し上げ要因となり、リスク・プレミアムは、▲75ドルの低下要因となるため、仕上がりで▲50ドルの価格低下となる。

現在の金価格は2,000ドル近辺まで上昇しているが、1,950程度までの下落余地があることになる。しかし中東情勢次第だろう。

銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。

月次のボリンジャーバンドの分析は有効に機能しているが、仮にボリンジャーバンドの下限だと75倍、上限ならば90倍程度が目処になるが、金を1,900ドル程度とすると21.1~25.33ドルが現在取り得る範囲といえる。

また、中国の鉱工業生産を元にすると、現在の金銀レシオは90倍程度が上限とみられる。

本日は、中東情勢不安が金価格を高止まりさせるため、銀も高止まり。工業金属の色彩が強いPGMは株に買い戻しが入っていることから底堅い推移に。

◆穀物

シカゴ穀物市場は総じて軟調。ハーベスト・プレッシャーが掛かりやすい時期にある中で原油価格が下落したことが価格を下押しした。

当面は、ハーベスト・プレッシャーによる季節的な売りと、戦争を意識した食品物色の流れが相殺しあう形が予想される。

長期的な話だが、今年地中海を襲ったハリケーン(ストーム・ダニエルと命名)の影響で中東北アフリカ地域に降雨がもたらされたことは、先々の穀物供給に影響を及ぼす、サバクトビバッタの越冬を可能にし、来年以降の供給減少のリスクを高めることが懸念される。

尚、Locust Watchでは中東・北アフリカ地域でのバッタの大量発生は確認されていない。

本日は、トウモロコシ・大豆とも米国収穫が例年よりも早いペースで進んでいることがハーベスト・プレッシャーを強め軟調、小麦も米国の作付が順調であり軟調推移に。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

◆信用リスク・マクロ経済のリスク

・米国債の格下げリスク(残るMoody'sの格下げリスク)、米国債格下げの動きが連鎖して、金融機関の格下げが加速、信用不安に繋がる場合。

・日本政府の財政規律の欠如、成長期待への失望から円が暴落するリスク。

・景気が想定よりも早く底入れしてインフレが再燃、あるいは景気を刺激する目的で早期の利下げが行われ資源価格が高騰、各国中銀の金融政策が再びタカ派の状態になった場合(リスク資産価格の上昇→下落リスク これは顕在化している可能性)

新興国の財政破綻、先進国も含めた債券の格下げによる金融機関・ファンドの突発的な損失拡大による信用収縮、低格付企業の破綻や、市場変動性の高まりによるファンド破綻などもリスクに(米銀格下げ検討は始まっている)。

・中国の構造的成長が終了、過剰債務や不動産問題を抱え、中国が「日本化」するリスク(この場合長期低迷で工業金属やエネルギーなどの景気循環系商品価格の下押し要因となる可能性)

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、モディ支持率の低下による近代化投資の遅れ、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

◆地政学的リスク

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。

・中東情勢不安が拡大し、先進国でテロが発生(景気の下振れリスク)、産油国でテロが発生して原油価格が高騰(インフレ発生で景気下振れリスク)するリスク。

中東問題が、「反イスラエル・親イスラエル」の対立となり、世界に拡散する場合(可能性の低い顕著な景気下振れリスク)

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。暴動激化で中国が分裂するリスク(極めて可能性の低いリスク)。

・西アフリカ・北アフリカで、フランスが旧宗主国である国の反仏感情が高まり、武力衝突が発生して域内治安が悪化する場合。

欧州に難民が流入するほか、地域によっては(リビア、アルジェリア、ナイジェリアなど)原油・ガス供給に影響が及ぶ恐れ。

◆その他のリスク

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。

また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。

◆本日のMRA's Eye


「2024年銅価格見通し」

2023年、大幅に上昇して始まった銅価格だが、上昇は1月でほぼ終了し、その後年末に掛けて水準を切下げる動きになっている。ゼロコロナ解除後の経済活動回復への期待が高まったが、後述する不動産セクター問題や、「ゼロコロナ後の世界のペントアップ需要は、中国がゼロコロナ政策を継続している間に終った」ことが重石となった。

2023年の銅需給は▲6万2,000トンの供給不足(前年▲42万8,000トンの供給不足)と供給不足幅が縮小する見込み。精錬銅生産が前年比+116万2,000トンの2,680万3,000トンと増加、需要は中国の経済活動再開で前年比+79万6,000トンの2,686万5,000トンと生産の増加を下回るため。

2024年は生産が+109万6,000トンの2,790万トン、需要が+75万5,000トンの2,762万トンとなる見込みであり、需給バランスは+7万1,000トンと、9年振りの供給過剰に転じる見込みだ。

中国の不動産問題を背景とした需要回復の遅れが需給を緩和させる見込みであり、需給ファンダメンタルズは価格の押し下げ要因となろう。

中国の不動産販売は、1.住宅第一次取得者と第二次取得者の頭金負担を軽減したこと、2.銀行の預金準備率引下げによる貸出促進、3.不動産関連のローン組成者に対する金利引下げの認可、といった対策の実施で回復感が強まっており、年初来の販売額累計は前年比+0.7%とプラス圏で推移している。

しかしこれは2022年の販売が極めて低調な中で、リオープンを期待した買いがQ123に大量に入ったことによる上昇であり、前年比プラス幅は縮小している。

また、不動産販売が進捗しなければ不動産開発投資は増加せず、その他の産業への波及(自動車や鉄鋼など)による景気押し上げも期待できないため、当面中国の需給ファンダメンタルズは緩和した状態が続くと予想される(早くても三中全会、中央経済工作会議前後になる可能性)。

掛る状況下、結果的に米国の金融政策動向を受けたドル指数動向に価格が左右されやすくなる。

弊社はQ323も米景気の減速を見込んでいたが、実際は7月頃から米景気は循環的に回復を始めており、減速が予想された米ISM非製造業指数もむしろ回復しているため、当面米金融政策はタカ派なスタンスが維持され、ドル高が進行、投機の影響を受けやすい銅価格は頭重い推移になりやすい。

2024年の銅価格は、最大消費国である中国の不動産問題は、恐らく中国政府は不動産問題を長期的課題に位置づけ即時の解決が見込めない状況。

その中で不動産とは直接関係ない近代化のためのインフラ整備の実施(既に2024年度の予算を1兆元分前倒し執行することを決定)、製造業の景気循環による回復、脱炭素向けの需要増加、中国外では脱中国の設備投資需要が銅需要をけん引するとみられる。

一方で、世界的な景気の減速はQ324頃まで続くとみられること、精錬銅の需給バランスは2024年は2023年から緩和の見通しであることがこれを相殺するため、2024年後半からの上昇を予想する。

ただし、足下の中国の景況感悪化を受けて2024年の平均価格は8,400ドル(10月予想比▲75ドル)と見通しは前回から下方修正した。

この見通しのリスクは、需要面の価格上昇リスクは米国を初めとする各国中央銀行が、早期に金融緩和に動き金融面で価格が押し上げられる場合、中国政府が大規模な経済対策を行った場合だろう。

供給面の上昇リスクは、脱炭素の流れに乗って資源国で資源ナショナリズムの動きが加速する場合(南米・東南アジア・アフリカ)、異常気象による猛暑や渇水、中東情勢不安を背景にエネルギー価格が高騰して生産コストが押し上げられた場合などが考えられる。

需要面の下落リスクは、各国金融引締めの影響で経済がオーバーキルになってしまう場合、米金融引締めの影響で需要の牽引役である新興国も金融引締めを余儀なくされ、新興国の需要減少・デフォルトが発生した場合、中国の不動産セクターの回復に目処が立たず、中国政府が取り組んでいる秩序ある不動産セクターの調整が上手くいかなかった場合、景気減速の中で脱炭素のスケジュールが持続困難として見直される場合、などが考えられる。

なお、LME指定倉庫在庫の直近1年間の水準を元に±2標準偏差で価格レンジを推定すると、7,180ドル~9,347ドルが想定レンジとなる。仮に、過去5年で最も在庫が多かった33万8,000トンまで積み上がった場合、の下値は同様に2標準偏差で6,210ドル、最も在庫が少なかった51,175トンのときは9,347ドル(上記と同じ)となる。


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