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中東情勢やや沈静化で原油・金安い
  • MRA商品市場レポート

2023年10月24日 第2571号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「中東情勢やや沈静化で原油・金安い」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は、その他農産品などの非景気循環系商品や、非鉄金属価格が上昇、エネルギーセクターや貴金属は総じて軟調な推移となった。

中東情勢不安に関し米国がイスラエルに対して、人質解放や人道支援物資の搬入と交渉の時間を稼ぐための軍事侵攻見合わせを要請していることを受けて、いったん中東情勢の緊張が和らいでいることが、エネルギーや安全資産で物色されていた貴金属価格を押し下げる動きとなった。

ハマスやヒズボラを支援しているイランも、直接、イランに影響が及ぶ形は望んでおらず(これはある意味想定どおり)、交渉のための時間稼ぎで各国とも少し頭が冷えてきた可能性がある。

今回の攻撃でハマスは罰を受けるべきであり、イスラエルはこれを機にパレスチナの地位に関してもう一度真剣に考える必要があるが、まだそこまで事態が沈静化している訳ではなく、日本を除くG7はイスラエルの自衛権を認めている。地上軍の侵攻がある可能性は高い。

ガザ地区にイスラエル軍が侵攻し、さらにパレスチナの民間人が殺害された場合、再び反イスラエルの動きが強まることになるため、まだ事態が沈静化したと考えるのは早計である。

しかし、当事者以外が、事態が悪化することを望んでいるとは、到底考えられない。

【本日の見通し】

本日も、引き続き中東情勢に注目が集まることになるが、一時的に事態の悪化が止まっていることから、改めてマクロ経済動向に注目が集まると予想される。

その意味で、日米欧のPMIに注目が集まる。本当に循環的に製造業の景況感が底入れしたのか、再び悪化するのかが重要になるが、朝方発表の豪州のPMIは悪化、日本は製造業が横這い、サービス業が悪化している。

注目材料は以下の通り。

・10月日本製造業PMI 実績 48.5(前月 48.5) サービス業 51.1(53.8)、総合 49.9(52.1)

・10月独製造業PMI 市場予想 40.1(前月 39.6) サービス業 50.0(50.3)、総合 46.6(46.4)

・10月ユーロ圏製造業PMI 43.7(43.4) サービス業 48.6(48.7)、47.4(47.2)

・10月米製造業PMI 49.5(49.8) サービス業 49.9(50.1)、総合 50.0(50.2)

・仏大統領イスラエル訪問

・トルコ外相UAE訪問

・IEA2023年世界エネルギー見通し

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

昨日の原油価格は下落した。イスラエルの地上侵攻が米国などの圧力で遅れる中、目先の戦闘激化観測がやや後退したことが材料となった。

昨日はドル指数と原油価格がほぼ同じ動きとなっており、原油安・ドル安が同時に発生している。米景気の先行きへの懸念が強まっているためと考えられる。

イスラエル・反イスラエルの動きに分裂すると懸念されたが、ガザ地区の病院爆破(イスラム聖戦の誤爆の可能性が高い)を受けて風向きが変わり、バイデン大統領もネタニヤフ首相に対して「怒りにまかせて行動をしないこと」「人道支援や人質解放の交渉時間を設けること」を要求しており、やや落ち着きを取り戻しつつある。

また、イランも自国の存在意義である「イスラエル抹消」の旗印を下ろす訳にもいかないため、ハマスやヒズボラ、イスラム聖戦、フーシ派などを肯定せざるを得ない。

しかし、恐らくイスラエルとの全面戦争を中東諸国も望んでいないため、この数日、イスラエルの攻撃を非難しつつも「イランが攻撃されなければ、イスラエルに攻撃はしない」というスタンスに変わってきている。

ヒジャブ問題などでイラン指導者に対する批判が高まっている中、さらに経済を混乱させたくないとの思いが滲む。

この状況だとネタニヤフ首相が暴走しない限り、事態は沈静化に向かうと期待されるが、自身が汚職疑惑を逃れるために法改正を行い、超極右政党と連立を組んだことが、今回の事態の遠因にあるともいえるため、この問題に対する国民の不満を逸らすため、米国の牽制があったとしても大規模な軍事侵攻を行う可能性は排除できない。

ハマスか民間人かは分らないが、既に5,000人を超えるパレスチナ人が殺害されている状況。

原油消費国からすれば、反イスラエルの動きが強まって、50年前のオイルショックと同様のことが発生することがリスクであるが、現時点でそのシナリオは、産油国にとってもメリットが無いため可能性はかなり低いリスクと考えられる。

しかし、上述の通り既に無辜の生命が失われている状況下、皆が冷静な判断ができなくなる恐れはあろう。

今後の原油価格見通しは、中東情勢以上に景気動向が価格を左右するため、現在想定している世界景気のメインシナリオは、引締め加速による景気減速が年明けに発生して価格が下落、Q324頃に底入れして上昇する展開になるとみている。

ロシア情勢を踏まえた原油供給状況は大きく変化していないため、中東情勢の影響を考慮した原油価格の「想定されるレンジ」は以下の通り。

現在は 3.の状態。この状況でもOPECからは価格維持に向けた取組みを継続する、といった発言が出ている。

<シナリオ別原油価格見通し>

1. 中東問題がイランにまで波及し、OPEC諸国も対立国ヘの供給を絞る(オイルショック状態)、イランに対する制裁強化など
Brent 120-150ドル

2.中東問題がイランにまで波及するが、OPEC諸国が増産する
Brent 90-120ドル

3.中東問題がイランに波及せず、OPEC諸国が増産しない
Brent 75-95ドル

4.中東問題がイランに波及せず、OPEC諸国が増産する
Brent 70-90ドル

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

5. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)
Brent 60-90ドル

6. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)
Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

Q423 需要の伸び横這い・中東情勢不安による供給制限懸念(→高値維持)グローバル・リセッション、危機顕在化の場合(↓↓)
Q124 欧米の景気後退局面入りによる需要鈍化・生産調整継続(↓高値維持も下落開始)
Q224~Q324 実質金利プラス維持による景気後退(サービス業)製造業の循環的な回復が下支え(↓↓)OPECプラス減産維持の場合(↓)
Q324以降 需要回復・中国の正常化進捗(↑)OPECプラス減産維持の場合(↑↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

10月10日時点のWTIの投機筋ポジションは、ロングが▲48,383枚、ショートが▲20,797枚と、どちらかの方向にBetしているというよりも、ポジション解消の動きに見える。

Brentはロングが▲52,563枚、ショートが+12,598枚と、こちらも弱気ポジションに。ただ来週のCFTC調査で、中東情勢不安でこのショートが一気に解消されている可能性は高い。

本日も、中東問題が解決しない中、高値維持が予想される。昨日の大幅下落を受けた買い戻しでいったん上昇余地を探る動きに。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は小動き。中東情勢不安が引き続きガス価格を高値に維持している状況。

欧州の在庫水準の高さを考えると、今冬に関しては数量ベースで調達が不充分、というリスクはさほど高くないと見ている(ただし供給途絶が発生すれば、価格には上昇圧力が掛かるが、ウクライナ危機発生時のような暴騰にはならないだろう)。

欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続

2.LNGターミナル・ガス田・船舶の不慮の停止

3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)

4.景気減速(価格下落要因)

5.季節要因・気象状況

1.はロシアのLNGカーゴはまだ取引されており、スポットカーゴ価格の上昇要因にはならなくなってきた。ロジカルには西側諸国が脱ロシアを完全に完了するまでは、気温の変化や政治的なイベントによって季節的に価格が高騰するリスクは残る。

弊社のシミュレーションでは、今冬の欧州のガス調達は、ロシアが仮にガス輸出を完全に停止したとしても凌げる見通し。

ただし、在庫が減少すれば翌年以降の調達に影響が出る(数量確保の問題と、価格上昇の問題両面)ため、脱ロシアの完全完了までは上昇リスクは無視できない。

弊社の試算では欧州が完全にロシア産ガスを排除(第三国経由でもロシア産のLNGを購入しない状態になる)できるのは2027年頃。ロシア産のLNGの輸出が阻害されなければ2025年頃。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

今のところロシア産ガスの供給は実質的に制限されておらず、LNGの形で欧州諸国も購入を続けている。ガスがLNGに置き換わっただけとも言える。

しかし、脱ロシアが完了した場合、ロシアがこれまで供給してきた西側諸国向けのガスが「浮く」ことになる。2022年、欧州向けにロシアが削減したパイプライン輸出量は708億立方メートルで、総輸出量9,685億立方メートルの7.3%に及ぶ。

これを他地域の需要増加で補うことは恐らく不可能であり、FID済みのプロジェクトも見直しせざるを得なくなる可能性がある。

2.は、Chevronがイスラエル沖のTamarガス田での生産をイスラエル・ハマスの戦闘による情勢不安を理由に停止している。

今回の戦闘が長期化するのか否か、現在では不透明であり、戦闘行為の中でパイプラインが破壊される可能性も否定できない(恐らく米国の空母打撃群がイスラエル沖に展開しているため、そのリスクは低いと考えられるが)

また、フィンランドとエストニアを結ぶパイプラインが、何らかの工作で破壊されたと報じられていることも、供給懸念を高めている(当然、ロシアは関与を否定)。

この他、異常気象発生時にはインフラに障害が出る可能性が高まる。米海洋大気庁の見通しでは、大西洋でのハリケーンの発生頻度は例年を上回る見通し。

通常、エルニーニョ現象が発生したときは大西洋の海水温が低下してハリケーンの発生・勢力が弱まるが今年は例外的な見通しとなっており、北米→欧州のLNG輸送や輸出ファシリティへの影響は無視できないリスクに。

また、異常気象の影響による干ばつでパナマ運河の水位が低下しており、LNG輸送に障害が発生、スポット価格が上昇する可能性が出てきた。

3.4.は顕在化している。しかし3.に関しては、ロシアもこれ以上ガス供給を削減することは難しい。

ロシア・ウクライナ戦争は越冬して来年に持ち越される可能性が高まる中、この冬にロシアがなりふり構わない対応をしてくる可能性は否定できない。

それでもガス在庫の水準は高く、仮にロシアが輸出を完全に止めても今冬の調達には問題がなさそうな状況(ただしこの場合、供給が足りていても価格は上昇する)

5.は2.とも関係するが、今年の冬はエルニーニョ現象が見込まれ、通常であれば暖冬となりやすいため、価格上昇方向のバイアスは強まらないと予想される。

米メキシコ湾発のLNGのタンカーレートは日本向け・欧州向けとも低下している。欧州は在庫水準の高さが影響しているとみられるが、TTFは高騰している。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米天然ガス価格は小動きで小幅に上昇。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物市場は小幅に上昇。新規の材料に乏しく、若干の改善はあったが中東情勢不安は継続しており高値を維持している。

現在のJLCの水準は11.95ドルであり、現在のスポット価格はこの水準を上回っている。

その他のアジアの国の長期契約ベースの価格は恐らくJLCと大差がないと考えられ、今年の冬場の需要期の価格はほぼJLCの水準で推移している。

今年は回避されているが、豪州は国内供給が充分でない場合、通常7月1日まで、遅くとも10月1日までにガス不足の懸念を通知し、実際に国内供給が不充分と判断された場合、次の1年間は輸出が制限される(ADGSM)。

この条項が発動された場合、スポット価格の上昇リスクとなるため、意識はしておきたい。

また、サハリン2の生産能力の低下、供給の減少はかなり前から指摘されているが、今のところ顕在化していない。多くの必要な部材は中国などを経由してロシアにもたらされている可能性があり、実は長期の供給リスクは懸念ほどではないかもしれない。

9月の中国の天然ガス生産は+6.5%の1,330万9,000トン(前月+8.2%の1,360万3,000トン)と同じ時期の過去5年の最高水準を上回っている。

9月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比±0.0%の1,015万トン(前月+22.7%の1,086万トン)と急減速した。

9月のパイプラインベースの輸入は前年比+4.9%の446万トン(前月+10.4%の456万トン)と過去5年の最高水準(425万トン)を上回っている。

9月のLNG輸入は前年比▲3.5%の568万7,000トン(前月+33.4%の629万8,000トン)と減少し、過去5年平均に近接した。

国内生産の増加と、固定インフラであるパイプラインからの供給が優先される中で、調整弁的に用いられるLNG調達需要が低下したとみられる。

ただし合計の「ガス顕在需要」は前年比+6.3%の2,360万3,000トン、年初来累計は+7.2%の2億1,341万7,000トンと着実に増加している。

※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

10月15日時点の日本の大手発電業者のLNG在庫は216万トン(過去5年平均259万8,600トン、大手発電業者在庫の過去5年平均は201万トン)と、先週から大幅に増加したが、いずれの集計でも過去5年平均を下回った状態が続いている。

速報性がない、大手電力以外のLNG在庫を含めた過去5年の水準と比較すると、過去5年の最低水準(235万2,800トン)も下回っている。

夏が例年よりも暑い猛暑で電力需要が増加したことに加え、原子力発電所の再稼働、大手発電業者のLNG調達は、自社の顧客を対象にした数量しか行われない。これは新電力の顧客の需要データが開示されないため、他社分まで調達することができないため。

仮に冬場が寒くなった場合、再びガスや石炭不足となり価格が上昇する可能性はある。通常過不足はスポット(JKMベース)で行い、電力のスポット価格はJKMの影響を受けるため、再び冬場の電力価格が上昇するリスクは無視できない。

また、今年はエルニーニョ現象の影響で太平洋側は台風の発生頻度・勢力が強まる可能性がある。この場合、輸送に影響が出ることも考えられるため、エルニーニョ現象が発生しているものの在庫水準の低さを考えると、冬場の価格上昇リスクも無視できない。

JEPXベースで調達して大手電力会社の価格で電気を販売している業者、JEPXベースで電気を調達している消費者はこのJKMのリスクを抱えることになる。

本日も、中東情勢不安を受けたガス供給の減少リスクを受けて高値維持の公算。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP・東京ガス提示の数値を使用している。 LNG1トン=2.19立方メートル(液体)=1,360立方メートル(気体)= 46MMBtu LNG船1隻 147,000立方メートル=67,000トン 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル=7,757トン 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップ先物は下落した。中東情勢不安がいったん棚上げとなるなかで流動性の低い期先が比較的大きな下げとなった。

現在のガス価格(JKM)との関係性を元に回帰分析を行うとNEWC価格は150ドル、±1標準偏差で80~220ドル程度までが統計的に説明可能なレベル。

期先の価格は現在の生産コストに近いことを考慮すると、期先の価格が150~160ドル程度まで再び上昇しているため、150~220ドルが説明可能なレンジであり、現在のスポット価格はやや安く、足下の需給が緩和していることを示唆。

2023年~2024年は例年と例年並みの冬だとした場合、記録的な暖冬だった昨冬と比較して今冬は昨冬よりも寒い見通しであることを考えると、年後半に向けての価格上昇リスクは排除できず、実際、冬場の期先の価格は高い。

ロシア問題が継続する以上、欧州が完全に脱ロシアを達成することが期待される2027年(早ければ2025年、現実的には2026年)までは、ピークシーズン中の価格上昇リスクはつきまとう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

9月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比+50.5%の4,433万3,000トン(前月+66.9%の3,926万トン)と過去5年レンジを大幅に上回る水準を維持した。

ガスも同様であるが、中国の記録的な気温上昇の影響で、発電燃料需要が引き続き増加しているためと考えられる。2000年以降、エルニーニョ現象が発生しているときは発電燃料の価格は下がる傾向が強いが、異常気象が発生しやすい気象状態であることは意識しなければならない。

国別では7月は豪州からの輸入が増加している。これにより、豪州の輸入シェアは29.5%(前月23.1%)と上昇した。しかし直近12ヵ月の累計シェアはロシアが1位で0.6%、ついでインドネシア(36.2%)、豪州(13.0%)となった。

9月の中国の石炭生産は、前年比+1.3%の3億9,131万トン、1,304万トン/日(前月+3.0%の3億7,902万トン、1,222万6,000トン/日)と伸びが鈍化したが、過去最高水準は上回っている。

9月の中国の電力消費量は前年比+10.1%の7,811億kwh(前月+4.0%の8,861億kwh)と伸びが加速した。構造的な需要増加の影響とみられる。

本日も、中東情勢不安の広がりを受けてガス価格が高値を維持していることから、石炭価格も高値維持の公算。

◆LME非鉄金属

LME非鉄金属市場はドル指数の上昇・下落を受けて下落後上昇した金属が目立った。ニッケルはLM指定倉庫在庫の増加を受けて下落、錫も下落した。

最大消費国の中国も循環的な回復を確認する統計が出始めたが、不動産問題は解消しておらず、「フローは価格を押し上げ、ストックは価格を押し下げ、合わせて中立」という状態と整理できる。

この状況下で、中東情勢の緊迫化が有事のドル買いを誘う一方、米利上げ終了観測を受けた金利低下圧力がドル安バイアスを強めるため、ドル指数は日替わりで非鉄金属価格の強弱材料となり、方向性が出難い。

中国政府は2024年以降も中国の経済対策(住宅セクターのテコ入れ、というよりは必要な、近代化に向けたインフラ投資)の実施が見込まれること、脱炭素の動きにともなう投資は継続することから、再び上昇に転じるとみている。

しかし、中国の不動産セクター問題がことのほか重荷になっており、そして恐らく即時に解決をすると言うよりも、時間を掛けて処理する方向(損失を確定させない方向)に舵を切ったと考えられることから、需要増加による価格押し上げペースは、ゼロコロナ終了後に予想していたよりも(年初想定よりも)鈍化するとみている。

この危機を乗り切ることができれば、長期的には脱炭素、脱ロシア、中国・インドのW人口ボーナス期(中国は近代化仕上げの10年)、東西の緩やかな分裂に伴うサプライチェーン再構築のためのインフラ投資継続、といった材料を考えると、鉱物資源需要は増加して価格には構造的な上昇圧力が掛かると見る。

ただし、この危機を乗り切ることに失敗し、中国政府が想定以上にこれまで積み上がった余剰生産能力の解消に手間取った場合、景気は長期低迷、いわゆる「日本化」が10年単位で起きる可能性が高い。

さらに労働人口がピークアウトし、かつ、西側諸国の制裁によって先端分野の発展が阻害され生産性が低下、将来的にはインフレをもたらしソ連型の国家崩壊、というシナリオも長期的には有り得る話だ。

9月の中国の貿易統計では、ベンチマークである銅地金・製品輸入は前年比▲5.8%の48万426トン(前月▲5.0%の47万3,330トン)と過去5年平均を下回る状態が続いている。

9月の銅鉱石・コンセントレートの輸入は前年比▲1.3%の224万1,135トン(前月+18.8%の269万7,104トン)と過去5年の最高水準を下回った。

9月の中国の精錬銅生産は+20.7%の114万1,000トン(前月+18.4%の108万5,000トン)と過去5年の最高水準を大きく上回っている。

9月の銅スクラップの輸入は前年比+2.0%の17万283トン(前月+0.9%の15万6,077トン)と過去5年平均を維持している。

精錬銅輸入の減少はまだLME価格の方が上海価格よりも高いことが影響しているとみられるが、精錬銅生産は増加しており中国の銅顕在需要は増加している(ネット輸入+国内生産)。

本日は、中国経済の循環的な回復を受けた需要増加期待、ドル安進行を受けて上昇すると見るが、中国の不動産セクター問題が重石となるため、情緒余地も限定。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落 、大連は上昇、豪州原料炭スワップ先物は横這い、大連原料炭価格は下落、上海鉄筋先物は下落。

鉄鋼製品需要の低迷を受けて鉄鋼原料価格も頭重い推移となっている。

9月の中国粗鋼生産は前年比▲5.6%の8,211万トン(前月+3.0%の8,641万トン)と減速し、過去5年平均を下回った。

一方、9月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲28.0%の64万470トン(前月▲28.1%の64万トン)と低迷が続き、同じ時期の過去5年の最低水準を下回る状態が続いている。

9月の中国の鉄鋼製品の輸出は前年比+61.9%の806万3,100トン(前月+34.6%の828万トン)と過去5年の最高水準を大きく上回る状態が続いている。同時に鉄鋼製品輸出額は前年比▲6.0%の65.6億ドル(前月▲30.6%の67.1億ドル)と金額は前月から減速したが、前年比下落率は上昇した。

輸出額を数量で割ったトン当り単価は814ドル(前月810ドル)と下落に歯止めが掛かった感がある。これは、中国の国内在庫の解消が進んだ可能性があることを示唆している。

中国不動産問題は先送りし、「それがいつどのタイミングで噴出するかは分らないものの、それに目をつぶれば」最悪期は脱し、循環的な回復局面に入ったと言える。

しかし、週次の鉄鋼製品在庫を見ると過去5年平均に迫っており、在庫の積み上がり傾向が確認できる。このことは、まだ中国の在庫調整には時間が掛かる可能性があることを示唆している。引き続き、輸出単価には注目する必要があるだろう。

週間の鉄鋼製品港湾在庫統計は、鉄鋼製品在庫は▲57万2,000トンの1,211万1,000トン(過去5年平均 1,257万2,000トン)と過去5年平均を下回っているが、かなり水準は過去5年平均に近づいており、鉄鋼製品価格の下押し要因となっている。

鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比▲5万トンの1億515万トン(過去5年平均 1億3,390万トン)、在庫日数は22.5日(±0.0日、過去5年平均29.8日)。

鉄鉱石は在庫は日数ベースでも、数量ベースでも過去5年平均を下回っており、鉄鉱石の需給はタイトで一定の在庫積み増し需要が存在する。

主要原料炭の輸入港である京唐港の原料炭在庫は+13万トンの186万トン(過去5年平均 118万2,000トン)、在庫日数は+0.5日の7.4日(過去5年平均 4.8日)と、原料炭の需給は再び緩和している。

本日も新規材料に乏しく、現状維持の公算。

◆貴金属

昨日の金銀価格は下落した。実質金利の低下が基準価格を押し上げたものの、イスラエルの地上軍侵攻が見合わされる中で、いったん安全資産需要が後退したことが背景。パラジウムは割安感から買われたが、銀、プラチナは下落した。

足下、金価格の構成要素のうち、リスク・プレミアムの占める比率が高まっている。金リスク・プレミアムの上昇要因の主なところは、

1.米利上げによる信用不安の高まり(低格付企業・新興国)

2.ロシアに対するドル決済禁止制裁を受けた、準備金におけるドルから金ヘのシフト

3.ロシアのウクライナ侵攻

4.イスラエルとパレスチナの戦争開始による中東情勢不安並びに、テロ組織の大規模攻撃であるため、各地にテロが拡散するリスク

あたりだろう。これらと同じ事象は、ニクソン・ショック~プラザ合意~アジア危機収束まで30年近く続き、金価格に占めるリスク・プレミアムのシェアが高止まりした。

2019年基準で算出した現在のリスク・プレミアムのシェアは55%と、ほぼ上記の期間と同様の状況になっており金利水準以上にその他の要因が金価格の形成に影響を与えていることが確認できる。

現状を理解する手助けとなるため、あえて実質金利・信用リスク・その他、に分離した場合、実質金利部分が45%、信用リスク要因が20%、その他の要因が35%となった(2019年データを元にした分析結果に変更)。

直近1年間の説明力を相関係数で確認すると、最も金価格に対する説明力が高いのがドル指数で▲0.87、次いでFF金利で0.80、リスク・プレミアムが0.69程度、期待インフレ率(▲0.59)、実質金利(▲0.18)と、実質金利は現在の価格形成に大きな影響を与えていない。

ドル指数はFF金利の影響が大きいため、今後の金価格を占う上ではやはりFF金利動向が重用になる。

この5年間のデータを元にした分析では、FF金利±1%の変化で、実質金利は±0.5%変化、金価格は±50ドル変化し、リスク・プレミアムは±150ドル変化する。

年内利上げの可能性は後退しているが、11月にあったとして金の基準価格は▲13ドル、リスク・プレミアムは+38ドルの上昇圧力となり、差し引き+25ドルの上昇となる。

市場予想では2024年は▲0.5%程度のFF金利引下げが見込まれているため、金の基準価格は+25ドル程度の押し上げ要因となり、リスク・プレミアムは、▲75ドルの低下要因となるため、仕上がりで▲50ドルの価格低下となる。

現在の金価格は1,900ドルまで低下しているため、これを基準とすると1,850ドル程度までの下落があると見ている。ただし現在の金価格は有事のプレミアムを含むため、その状況次第ではより大きな下落となろう。

銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。

月次のボリンジャーバンドの分析は有効に機能しているが、仮にボリンジャーバンドの下限だと75倍、上限ならば90倍程度が目処になるが、金を1,900ドル程度とすると21.1~25.33ドルが現在取り得る範囲といえる。

また、中国の鉱工業生産を元にすると、現在の金銀レシオは90倍程度が上限とみられる。

本日は、引き続き中東情勢が材料となる。今のところ、イスラエルの地上軍侵攻が見合わされていることから安全資産需要が若干減少するため、価格は下押しされると予想。

PGMは景気の先行き懸念を受けた株下落を受けてさらに水準を切下げるか。

◆穀物

シカゴ穀物市場は下落した。トウモロコシ・大豆とも原油価格の下落に伴う期待インフレ率の低下が価格を下押しした。小麦は割安感からの買い戻しで上昇。

原油ほど明確ではないが、穀物も1970年代の中東情勢不安時には、インフレ進行も相まって大幅な上昇になっている。図らずも、今回も同じ相場展開になっている。

当面は、ハーベスト・プレッシャーによる季節的な売りと、戦争を意識した食品物色の流れが相殺しあう形が予想される。

長期的な話だが、今年地中海を襲ったハリケーン(ストーム・ダニエルと命名)の影響で中東北アフリカ地域に降雨がもたらされたことは、先々の穀物供給に影響を及ぼす、サバクトビバッタの越冬を可能にし、来年以降の供給減少のリスクを高めることが懸念される。

尚、Locust Watchでは中東・北アフリカ地域でのバッタの大量発生は確認されていない。

本日は、中東情勢が仮初めの安定を見せていることから軟調な推移を予想。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

◆信用リスク・マクロ経済のリスク

・米国債の格下げリスク(残るMoody'sの格下げリスク)、米国債格下げの動きが連鎖して、金融機関の格下げが加速、信用不安に繋がる場合。

・日本政府の財政規律の欠如、成長期待への失望から円が暴落するリスク。

・景気が想定よりも早く底入れしてインフレが再燃、あるいは景気を刺激する目的で早期の利下げが行われ資源価格が高騰、各国中銀の金融政策が再びタカ派の状態になった場合(リスク資産価格の上昇→下落リスク これは顕在化している可能性)

新興国の財政破綻、先進国も含めた債券の格下げによる金融機関・ファンドの突発的な損失拡大による信用収縮、低格付企業の破綻や、市場変動性の高まりによるファンド破綻などもリスクに(米銀格下げ検討は始まっている)。

・中国の構造的成長が終了、過剰債務や不動産問題を抱え、中国が「日本化」するリスク(この場合長期低迷で工業金属やエネルギーなどの景気循環系商品価格の下押し要因となる可能性)

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、モディ支持率の低下による近代化投資の遅れ、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

◆地政学的リスク

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。

・中東情勢不安が拡大し、先進国でテロが発生(景気の下振れリスク)、産油国でテロが発生して原油価格が高騰(インフレ発生で景気下振れリスク)するリスク。

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。暴動激化で中国が分裂するリスク(極めて可能性の低いリスク)。

・西アフリカ・北アフリカで、フランスが旧宗主国である国の反仏感情が高まり、武力衝突が発生して域内治安が悪化する場合。

欧州に難民が流入するほか、地域によっては(リビア、アルジェリア、ナイジェリアなど)原油・ガス供給に影響が及ぶ恐れ。

◆その他のリスク

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。

また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。

◆本日のMRA's Eye


「金価格高騰のリスク」

金価格が中東問題を材料に高騰している。結論から先に言えば、仮に今回の戦闘がイスラエルとハマスの対立によるものであり、その他の地域や国は全く関与しない、という形で収束することが可能であれば金価格は水準を切下げるだろう。

ただし、米政策金利引き上げによる金の基準価格の低下以上に、その他のリスクの押し上げ効果が大きいため、逆説的であるが米国が利下げに転じ、信用不安などが解消するまでは高値を維持する展開が予想される。

しかし、今回の対立がイスラエルとハマスの問題ではなく、イスラエルとパレスチナの問題、もっと言えばイスラエルとアラブ諸国(+イラン)、親イスラエル国と反イスラエル国、という対立の構図になってしまった場合、さらに安全資産需要が高まるため、金価格は高止まりすることが想定される。

昨年2月のロシアのウクライナに対する軍事侵攻や今回のイスラエルとハマスの問題は、50年前に起きた一連の中東情勢不安と状況が似ている。

50年前は、1971年のニクソン・ショック以降の市場混乱。戦後、欧州復興のマーシャル・プランの下、欧州は米国向けの輸出を増加させてドル流通量が増えた結果、金とドルの固定相場での交換性を終了せざるを得なくなり、各国通貨が上昇して経済が混乱、さらに中東では戦争が勃発して資源インフレが発生、安全資産需要が高まる形となった。

そしてその後は中東で戦争が相次ぎ金が物色され、さらにはこれまで売られていたドルが買い戻される中、今後は「協調してドルを下げる目的のプラザ合意が成立、ドルが大幅に下落して再び金が物色される流れとなった。

有事発生の時に金価格が上昇することは過去にも見られたが、日次データが確認可能な1975年以降のデータを対象に日次の価格変化が大きい日をピックアップしてみると、今回のイスラエルとハマスの対立発生時の金価格上昇率は+3.4%と、1,251データ中(本稿執筆時点で取得可能なデータ数)255位と、かなり上昇率では上位に分類されるものの、そこまでの上昇ではなかった。

2000年以降では、リーマン・ショック発生後の9月17日の+11.2%の方が遙かに大きい(なお、リーマン・ショック発生時、金価格はほとんど反応していない。そして反射的に物色された後、FRBによるQE実施によって市場の機能不全が解消、下落に転じている)。

あとは1999年9月にECBと欧州各国中央銀行14行が共同声明の形で発表した第一次ワシントン協定(金の年間売却を今後5年間、協調プログラムの下で行い、年間売却量を400トン、合計2,000トンを超えないこと、とした協定)が発表された後の1999年9月28日の+9.9%を除けば、価格上昇率が高い日のほとんどが1980年代だ。

この時期はイラン革命後のイランと米国の対立、イラン・イラク戦争、ソ連のアフガニスタン侵攻があった頃だ。その頃との比較感では、足下の金価格の動きはまだ落着いていると言える。

価格の「上昇幅(額)」で見て見ると、上位はやはり1980年代が多く、最も上昇したのが1980年1月18日の85ドル、2位はリーマン・ショックで84ドル、3位はコロナ・ショックで株が暴落した2020年3月24日となった。

そして少し順位が飛んで、6位がシリコンバレー銀行が破綻した2023年3月17日で70ドル、今回のイスラエル・ハマスの衝突はこれに次ぐ7位の上昇幅で64ドルだった。

つまり、現時点においてはシリコンバレー銀行破綻による信用リスクの方が、市場では大きなリスクと捉えられているということである。

しかし、50年前と比較すると戦争(紛争)が相次いで発生し、ドルの価値もコロナ前後の金融政策動向で乱高下する中、ロシアに対するドル決済禁止の制裁が新興諸国や米国と対立擦る国で強まっていることを勘案すると、今回の紛争が一時的・局地的なものに止まらない可能性は残念ながら意識せざるを得ないリスクと言える。


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