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米統計改善を受けた金利上昇・ドル高でほぼ全面安
  • MRA商品市場レポート

2023年10月3日 第2556号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「米統計改善を受けた金利上昇・ドル高でほぼ全面安」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場はその他農産品や、自国通貨建て商品価格が上昇したが、エネルギーや非鉄金属、貴金属などの商品は軒並み売られる流れとなった。

そもそもFRBの利上げ観測を受けた長期金利の上昇がドル高を促し、広くドル建て商品価格の下落要因となったが、昨晩発表されたISM製造業指数が予想以上に改善(49.0、市場予想47.9、前月47.6)、米景気の先行指標である製造業の景況感悪化が、シクリカルに歯止めが掛かったとの見方がドル高を助長したことが背景。

足下の長期金利上昇は、米製造業の底入れやこれまで言われてきたノーランディングへの期待に、米金融政策がタカ派に傾いたことが影響している。

明らかに9月FOMCから温度感が変化したと言え、市場も想定以上の金利上昇に反応せざるを得なくなっている。

特に商品市場動向全体への影響が小さくない原油価格の7月以降の上昇は、投機主導の上昇だったため長期金利急上昇によるポジションアンワインドの圧力は小さくないようだ。

今後は、以下が商品市場動向を考える上で重要なテーマになりそうだが、いずれも当たり前といえば当たり前の材料である。

しかし、それがテーマになるということは、景況感の見通しが大きく変わる可能性があることを示唆しているとも言え、相場の急変のリスクは高まることになろう。

1.景気そのもの(製造業底入れと非製造業減速)2.金融政策・政府財政政策を受けた長期金利(それに伴うドル指数)動向3.不動産問題先送りを決めた中国景気(中期的に景気循環>構造問題となるのか否か、構造要因の影響が勝るのか)4.ソブリン・低格付企業のデフォルト5.Q323の企業決算動向

【本日の見通し】

本日は、昨日のISM製造業指数の改善を受けたドル高、米当局がインフレ抑制のための金利高誘導を継続するとの見方を受けてやはり全体に下押し圧力が掛る展開が予想される。

本日の注目材料は以下の通り。原油価格やコアCPIに対する説明力が高い、米求人件数には特に注目している。

市場予想は前月から求人数が減少するとみているため、予想通りであればファンダメンタルズ面で原油価格の下落要因となるが、金融政策の過度なタカ派観測が緩和するため、ファイナンシャルな面では価格を下支えする見込み。

アトランタ連銀総裁の講演が予定されているが、長期金利上昇やそれに伴う原油下落は金融当局にとってはインフレ抑制のために「好ましい」事であり、株の下落を受けてタカ派的な発言を修正するとは考え難く、今の流れを変えるには至らないとみている。

・アトランタ連銀総裁講演

・豪中銀政策金利発表

・英30年債入札

・9月米自動車販売 市場予想 年率 1,540万台(前月 1,504万台)

・8月米求人件数 8,815千人(88,274千人)

【昨日のトピックス】

先月末に発表された9月の中国製造業PMIは50.2(市場予想 50.1、前月 49.7)と市場予想、前月を上回り数値としては4ヵ月連続の改善となった。中国政府による貸出金利引下げや9月から始まった不動産取得推進のための対策(頭金引下げなど)の影響が顕在化し始めていると考えられる。

統計の内訳を見ると、新規受注は50.5(50.2)と改善、輸出向け新規受注も47.8(46.7)と改善している。国内は政府の対策効果が徐々に表れているが、海外向けは閾値の50を下回っておりまだ回復したとはいえない。

中国製造業PMIは新規受注、生産、雇用、納期(調整項目)、在庫の主要5指標を元に算出されているが、前月からの変化による「寄与度」を見ると、生産の寄与度が+0.20(前月0.42)、新規受注+0.09(+0.21)、雇用+0.02(▲0.02)、在庫+0.01(+0.02)と、新規受注が回復し、生産も回復している。しかし改善ペースの鈍化は見られており、回復基調が鮮明になった、といえるほどではない。

需給状況の指標である新規受注在庫レシオは完成品が1.081(1.064)、原材料が1.041(1.037)と先月と新規受注の上昇がじわりと原料・製品需給をタイト化させている。

しかし、規模別に見ると大企業(50.8→51.6)、中堅企業(49.6→49.6)、中小企業(48.0→47.7)と改善傾向ではあるが、国営企業が多い大企業中心の回復になっている状況に変りは無い。

また、アンケート先に中小・輸出企業が多いとされる財新製造業PMI(50.6、市場予想51.2、前月51.0)、非製造業PMI(50.2、52.0、51.8)と製造業はむしろ悪化している。

恐らく、本確的な回復には不動産セクターの問題解消が必要条件になるが、建設業を含む非製造業PMIは51.7(市場予想51.6 前月 51.0)と市場予想、前月とも上回った。

内訳を見ると新規受注が改善(47.5→47.8)、輸出向け新規受注も改善(47.9→49.4)しているが閾値の50は上回っていない。本格的な回復にはまだ時間が掛ろう。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は下落した。米長期金利上昇観測を背景とするドル高が進行しているが、ISM製造業指数が改善したことでさらにドル高が加速したことが価格を押し下げた。

弊社は米国の利上げが11月がピークであり、そこからの下落があると考えていたが、市場はこれをかなり早く折り込み長期金利上昇とドル高が進行している。

前四半期(Q323)の原油価格上昇は、明確に投機の買いによるものだった。これは米景気が底堅いことによる需要増加、OPECプラスの減産期間延長で需給がタイト化することで、「ドル高・原油高」が同時に進行したことによる。

しかし今回のFOMCでは、米景気が強く、十分なインフレの沈静化がない中で原油価格が上昇を続け、インフレを助長しかねない製造業の景況感が底入れしたことを受けて、引締めバイアスを強める方針を示したことで、これまで買いを入れてきた投機の手仕舞いの動を強めたと言える。

結果、11月頃からの下落を想定していたものの、そのタイミングが早まる形となった。

弊社は10月時点の見通し変更で、来年前半に掛けて景気が減速・底入れし、その後上昇する」としているが、原油価格に影響が大きい米国の景気見通しについて、FRBは2024年後半に底入れしてその後緩やかに回復するとしている。

足下で原油価格動向の材料とされやすい中国の景気も、循環的な回復や財政出動による景気底入れが恐らく来年の春頃にみられると予想されるため、年後半の米景気減速による価格下落を抑制すると考える。

その結果、原油価格はFOMC前後での乱高下はありつつも、Q423~Q124に掛けて高止まりするが、Q324まで水準を切下げた後、Q424から上昇基調に転じるシナリオを10月時点の原油価格見通しのメインシナリオとした。

DOEの需給見通しを元にした回帰分析の結果は、2023年のBrent価格は84.0ドル、2024年が85.3ドル程度となる。

2024年もOPECプラスが減産を継続し、価格上昇にもかかわらず需要が減少しなければ、2023年は84.3ドル、2024年は89.9ドルとなる。内訳的には、H124の平均価格は92.3ドル、H224が87.5ドルが見込まれる。

このシナリオだと、2024年に再びインフレリスクに晒されることが予想されるが、年初の高金利維持で、年後半に掛けてそのリスクは低下することになるのではないか。

なお、11月にも翌年度見通し作成のために再度変更を行うため、直近のデータ(特に景気の先行き見通し)を反映して、シナリオは変更されることがある。

現在想定しているリスクシナリオは、引締め加速による景気減速が年内~年明けに発生して価格が下落、その後上昇する展開(9月末まで想定していたメインシナリオ)。

FRBの政策方向転換により、11月にリリース予定の2024年商品市場動向見通しでは、従来のメインシナリオに戻る可能性も有り得る。

ロシア情勢を踏まえた原油価格の「想定されるレンジ」は以下の通り。

現在は 3.のうち、「OPECプラスが減産」した状態。

<シナリオ別原油価格見通し>

1. ロシアの禁輸措置が厳格に守られ、戦闘も継続  産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)する
Brent 75-95ドル/80-110ドル

2.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しない
Brent 65-90ドル

3.2.の状態で産油国(非OPECプラス・OPECプラス)が増産/減産する
Brent 65-80ドル/80-100ドル

4.ロシアがウクライナから撤退・停戦上記見通しが各々▲5ドル程度低下

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

5. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)
Brent 60-90ドル

6. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)
Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

Q323 需要の伸び横這い・生産調整継続(→高値維持)グローバル・リセッション、危機顕在化の場合(↓↓)
Q423~Q124 欧米の景気減速による需要鈍化・生産調整継続(→高値維持)
Q224~Q324 実質金利プラス維持による景気の減速(サービス業)製造業の循環的な回復が下支え(↓↓)OPECプラス減産維持の場合(↓)Q424以降 需要回復・中国の正常化進捗(↑)OPECプラス減産維持の場合(↑↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

9月26日時点のWTIの投機筋ポジションは、ロングが+26,763枚、ショートが+5,134枚と、強気ポジションを維持。

Brentはロングが▲7,160枚、ショートが+14,829枚と、こちらも強気ポジションを維持。

本日は、この数日の下落が大きいため買い戻しが入ると考えられる。また、夜間発表のJOLT求人統計は若干の悪化が見込まれており、過度な金融引締め加速観測を緩和するため、ファイナンシャルな面でも価格は支えられよう。

しかし、先月後半からの動きは(もっと言えば7月以降の動きは)テクニカル要因の影響が大きいと考えられる為、Brentは88.30ドルの50日移動平均線を試す動きになりやすく、この水準を維持するか否かが重要になるだろう。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は下落した。在庫積み上がりと今秋が温暖であり暖房需要が減少していることが材料。

今年の冬に関しては、今のところ、大きなLNGの輸出ファシリティが大きな障害を受けなければ調達には問題がなさそうな状況になっている。

欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続2.LNGターミナル・ガス田・船舶の不慮の停止3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.季節要因・気象状況

1.はロシアのLNGカーゴはまだ取引されており、スポットカーゴ価格の上昇要因にはならなくなってきた。ロジカルには西側諸国が脱ロシアを完全に完了するまでは、気温の変化や政治的なイベントによって季節的に価格が高騰するリスクは残る。

弊社のシミュレーションでは、今冬の欧州のガス調達は、ロシアが仮にガス輸出を完全に停止したとしても凌げる見通し。

ただし、在庫が減少すれば翌年以降の調達に影響が出る(数量確保の問題と、価格上昇の問題両面)ため、脱ロシアの完全完了までは上昇リスクは無視できない。

弊社の試算では欧州が完全にロシア産ガスを排除(第三国経由でもロシア産のLNGを購入しない状態になる)できるのは2027年頃。ロシア産のLNGの輸出が阻害されなければ2025年頃。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

今のところロシア産ガスの供給は実質的に制限されておらず、LNGの形で欧州諸国も購入を続けている。ガスがLNGに置き換わっただけとも言える。

しかし、脱ロシアが完了した場合、ロシアがこれまで供給してきた西側諸国向けのガスが「浮く」ことになる。2022年、欧州向けにロシアが削減したパイプライン輸出量は708億立方メートルで、総輸出量9,685億立方メートルの7.3%に及ぶ。

これを他地域の需要増加で補うことは恐らく不可能であり、FID済みのプロジェクトも見直しせざるを得なくなる可能性がある。

2.は、異常気象発生時にはインフラに障害が出る可能性が高まる。米海洋大気庁の見通しでは、大西洋でのハリケーンの発生頻度は例年を上回る見通し。

通常、エルニーニョ現象が発生したときは大西洋の海水温が低下してハリケーンの発生・勢力が弱まるが今年は例外的な見通しとなっており、北米→欧州のLNG輸送や輸出ファシリティへの影響は無視できないリスクに。

また、異常気象の影響による干ばつでパナマ運河の水位が低下しており、LNG輸送に障害が発生、スポット価格が上昇する可能性が出てきた。

3.4.は顕在化している。しかし3.に関しては、ロシアもこれ以上ガス供給を削減することは難しい。

ロシア・ウクライナ戦争は越冬して来年に持ち越される可能性が高まる中、この冬にロシアがなりふり構わない対応をしてくる可能性は否定できない。

それでもガス在庫の水準は高く、仮にロシアが輸出を完全に止めても今冬の調達には問題がなさそうな状況(ただしこの場合、供給が足りていても価格は上昇する)

5.は2.とも関係するが、今年の冬はエルニーニョ現象が見込まれ、通常であれば暖冬となりやすいため、価格上昇方向のバイアスは強まらないと予想される。

米メキシコ湾発のLNGのタンカーレートは日本向け・欧州向けとも上昇している。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米天然ガス価格は小幅に下落。南部・東部の温暖な気候が材料となった。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物市場は小幅に下落。TTFの下落が材料に。

現在のJLCの水準は12.05ドルであり、現在のスポット価格はこの水準を上回っている。

その他のアジアの国の長期契約ベースの価格は恐らくJLCと大差がないと考えられ、今年の冬場の需要期の価格はほぼJLCの水準で推移している。

今年は回避されているが、豪州は国内供給が充分でない場合、通常7月1日まで、遅くとも10月1日までにガス不足の懸念を通知し、実際に国内供給が不充分と判断された場合、次の1年間は輸出が制限される(ADGSM)。

この条項が発動された場合、スポット価格の上昇リスクとなるため、意識はしておきたい。

また、サハリン2の生産能力の低下、供給の減少はかなり前から指摘されているが、今のところ顕在化していない。多くの必要な部材は中国などを経由してロシアにもたらされている可能性があり、実は長期の供給リスクは懸念ほどではないかもしれない。

8月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比+22.7%の1,086万トン(前月+18.5%の1,031万トン)と先月同様、同じ時期の過去5年の最高水準を上回っている。

まだ統計が発表されていないが、国内天然ガス生産の減少や、気温上昇による発電向けの需要増加が輸入を高水準に維持している可能性がある。

8月のパイプラインベースの輸入は前年比+10.4%の456万トン(前月+12.4%の445万トン)と過去5年の最高水準(413万トン)を大きく上回っている。

8月のLNG輸入は前年比+33.4%の629万8,000トン(前月+23.7%の585万9,000トン)と前月から伸びが加速し、同じ時期の過去5年の最高水準(665万2,000トン)に迫った。

8月の中国の天然ガス生産は+6.5%の1,330万9,000トン(前月+8.2%の1,360万3,000トン)と同じ時期の過去5年の最高水準を上回っている。

※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

9月24日時点の日本の大手発電業者のLNG在庫は156万トン(過去5年平均249万2,700トン、大手発電業者在庫の過去5年平均は206万トン)と、いずれの集計でも過去5年平均を下回った。

速報性のある大手電力以外の在庫も含めた水準と比較すると、過去5年の最低水準(184万7,200トン)も下回っている。

夏が例年よりも暑い猛暑で電力需要が増加したことに加え、原子力発電所の再稼働、大手発電業者のLNG調達は、自社の顧客を対象にした数量しか行われない。これは新電力の顧客の需要データが開示されないため、他社分まで調達することができないため。

仮に冬場が寒くなった場合、再びガスや石炭不足となり価格が上昇する可能性はある。通常過不足はスポット(JKMベース)で行い、電力のスポット価格はJKMの影響を受けるため、再び冬場の電力価格が上昇するリスクは無視できない。

また、今年はエルニーニョ現象の影響で太平洋側は台風の発生頻度・勢力が強まる可能性がある。この場合、輸送に影響が出ることも考えられるため、エルニーニョ現象が発生しているものの在庫水準の低さを考えると、冬場の価格上昇リスクも無視できない。

JEPXベースで調達して大手電力会社の価格で電気を販売している業者、JEPXベースで電気を調達している消費者はこのJKMのリスクを抱えることになる。

本日は、欧州の需要見通しの減速や、ノルウェーのメンテナンス進捗もありやや軟調な推移か。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP・東京ガス提示の数値を使用している。 LNG1トン=2.19立方メートル(液体)=1,360立方メートル(気体)= 46MMBtu LNG船1隻 147,000立方メートル=67,000トン 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル=7,757トン 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップ先物は大幅に下落。ガス価格が軟調な推移となったが他、中国が国慶節入して海上輸送市場での重要な買い手が不在となった影響が大きかったと考えられる。

現在のガス価格(JKM)との関係性を元に回帰分析を行うとNEWC価格は150ドル、±1標準偏差で80~220ドル程度までが統計的に説明可能なレベル。

期先の価格は現在の生産コストに近いことを考慮すると、期先の価格が155~165ドル程度まで再び上昇しているため、155~220ドルが説明可能なレンジであり、現在のスポット価格はやや安く、足下の需給が緩和していることを示唆。

2023年~2024年は例年と例年並みの冬だとした場合、記録的な暖冬だった昨冬と比較して今冬は昨冬よりも寒い見通しであることを考えると、年後半に向けての価格上昇リスクは排除できず、実際、冬場の期先の価格は高い。

ロシア問題が継続する以上、欧州が完全に脱ロシアを達成することが期待される2027年(早ければ2025年、現実的には2026年)までは、ピークシーズン中の価格上昇リスクはつきまとう。

今年のアジアの夏は例年よりも暑い夏になる見通しであり、北半球の夏場の冷房需要向けの日中の石炭需要で再び上昇基調に転じるだろう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

8月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比+50.5%の4,433万3,000トン(前月+66.9%の3,926万トン)と過去5年レンジを大幅に上回る水準を維持した。

ガスも同様であるが、中国の記録的な気温上昇の影響で、発電燃料需要が引き続き増加しているためと考えられる。2000年以降、エルニーニョ現象が発生しているときは発電燃料の価格は下がる傾向が強いが、異常気象が発生しやすい気象状態であることは意識しなければならない。

国別では7月は豪州からの輸入が増加している。これにより、豪州の輸入シェアは29.5%(前月23.1%)と上昇した。しかし直近12ヵ月の累計シェアはロシアが1位で0.6%、ついでインドネシア(36.2%)、豪州(13.0%)となった。

8月の中国の石炭生産は、前年比+3.0%の3億7,902万トン、1,222万6,000トン/日(前月+0.9%の3億7,128万トン、1,197万7,000トン/日)と伸びが加速した。

8月の中国の電力消費量は前年比+4.0%の8,861億kwh(前月+6.8%の8,888億kwh)と伸びが鈍化した。気温上昇が一巡したことによる、季節的な減少。

今後、輸入需要の増加があるかは発電需要に依拠するが、夏場が終了に向かっていることから徐々にフェードアウトすると考えられる。

本日も、最大の買い手が不在の中、ガス価格も欧州主導で軟調に推移しているため、同様に軟調な推移を予想。

◆LME非鉄金属

LME非鉄金属市場は大幅に下落した。米長期金利の上昇を受けたドル高が断続的に進行したことを受け、最大の買い手である中国が国慶節で不在の中、大幅な下落となった。

ここに来て、価格の動きが乖離していた原油価格と非鉄金属価格の動きが同じになってきた。しかしこれは、ドル高が想定以上に進んでいるため、これまで「需給ファンダメンタルズ>金融要因」だった原油が「需給ファンダメンタルズ<金融要因」となったことによるものであり、米中対立によるデカップリングの影響が解消されたわけではない。

非鉄金属はドル高進行が同様に価格を下押しするものの、2024年に中国の経済対策の実施や循環的な回復、脱炭素の動き継続で上昇に転じるとみている。

ただし、最大消費国である中国の景気回復ペースが、構造的に以前想定していたよりも緩やかになると予想されるため、上昇ペースはやや緩慢なものになると考えている。

原油は米景気が恐らく来年前半はまだ好調だが、年後半に掛けて減速するため原油は上昇後下落、2024年後半から再び上昇という展開が軸となるが、金融政策の影響が大きくなれば、従来の見通し(原油価格は年末~来年初に掛けて調整、その後上昇)、に修正される可能性がある。

弊社は2024年見通し作成のために11月にも見通しを修正するが、特に各国のマクロ経済見通し如何では、価格パスは変更される可能性がある(FRBと同様、引き続き追加のデータを精査していく必要があるため)。

中国政府は住宅取得頭金の引下げや、既存住宅ローン借り入れ客の金利引下げも容認するなどの対策を実施しており、市場では一定の評価を得た。

財政上のゆとりがないことから当面、政策金利の調整で凌ごうとする可能性が高いが、問題は余剰在庫の解消であるため、金利操作だけでは状況を好転させるのには不充分である。しかし同時に時間を掛けて不良債権や在庫処理を行う必要もある。

数量ベースでの把握が困難だが、金額ベースの中国製造業の在庫循環図は調整局面の初期にあり、まだ在庫の調整が必要な状況。

通常のサイクルであれば、在庫の調整には1年程度掛るが、共産党に支配されている国であり、強制的な在庫調整も有り得るためそこまで時間は掛らないと考えられる。

中国政府が何の対策もしない、ということは考え難いが常識的に考えれば、

・在庫が積み上がっているこのタイミングで経済活動を刺激すれば、さらなる在庫の積増しになってしまう可能性があること

・予算的な問題

を考えるとある程度在庫の調整が進み、かつ、予算措置が終了してからと考えるのが妥当ではないか。

現在、不動産の余剰在庫を解消するため、住宅取得の制限を緩和しているが、その実施も地方政府の裁量に委ねられているため、急速に状況が改善するには至っていない。

この危機を乗り切ることができれば、長期的には脱炭素、脱ロシア、中国・インドのW人口ボーナス期(中国は近代化仕上げの10年)、東西の緩やかな分裂に伴うサプライチェーン再構築のためのインフラ投資継続、といった材料を考えると、鉱物資源需要は増加して価格には構造的な上昇圧力が掛かると考えるのが妥当だろう。

ただし、この危機を乗り切ることに失敗し、中国政府が想定以上にこれまで積み上がった余剰生産能力の解消に手間取った場合、景気は長期低迷、いわゆる「日本化」が10年単位で起きる可能性が高い。

さらに労働人口がピークアウトし、かつ、米国の制裁によって先端分野の発展が阻害され生産性が低下、将来的にはインフレをもたらしソ連型の国家崩壊、というシナリオも長期的には有り得る話だ。

本日は、昨日の下落が大きかったことからいったん買い戻しが入ると見る。

また、夜発表の米求人統計がやや弱めになる見通しであり、過度な金融引締め観測が後退してファイナンシャルな面が価格を下支えするのではないか。

ただし、最大の買い手である中国勢が不在のため、上値も重かろう。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落 、大連は休場、豪州原料炭スワップ先物は上昇、大連原料炭価格は休場、上海鉄筋先物は休場だった。

9月の中国鉄鋼業PMIは総合指数が45.8(前月45.2)と回復した。新規受注が44.5(42.9)と政府の不動産セクターテコ入れ策で回復したことが影響したが、輸出受注は48.1(60.1)と急減速、生産も45.0(46.1)と低下しており、決して鉄鋼業を巡る環境が改善したとは言い難い。

10月は鉄鋼需要の最盛期であり、中国政府の対策を受けて需要の上振れ余地はある。中国政府の対策で不動産セクターに動きがみられ、建設業PMIも56.2(53.8)と回復がみられる。

しかし、中堅企業以下の回復状況は製造業PMIをみるに緩慢であり、回復は緩慢な物になると予想される。

ただ、今年の太平洋地域はエルニーニョ現象の影響で台風の発生頻度が高く、勢力も強いとされること、不動産の不良在庫・余剰在庫の解消が進まなければ本格的に回復するのは難しいことから、やはり回復には時間が掛かるだろう。

結局。バランスシート不況にあると考えられる中国がどの程度財政出動を行い、民需の不足をカバーできるかが景気回復のタイミングを図る上で重要になるが、恐らく年末の中央経済工作会議まで待つ必要があると考えられる

週間の鉄鋼製品港湾在庫統計は、鉄鋼製品在庫は▲31万5,000トンの1,253万3,000トン(過去5年平均 1,292万8,000トン)と過去5年平均を下回っているが、かなり水準は過去5年平均に近づいており、鉄鋼製品価格の下押し要因となっている。

鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比▲295万トンの1億1,065万トン(過去5年平均 1億3,238万トン)、在庫日数は21.8日(▲0.6日、過去5年平均27.7日)。鉄鉱石は在庫は日数ベースでも、数量ベースでも過去5年平均を下回っており、鉄鉱石の需給はタイトで一定の在庫積み増し需要が存在する。

主要原料炭の輸入港である京唐港の原料炭在庫は+12万トンの180万トン(過去5年平均 147万4,000トン)、在庫日数は+0.4日の6.6日(過去5年平均 5.8日)と、原料炭の需給は再び緩和している。

8月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲28.1%の63万9,770トン(▲13.9%の68万トン)と低迷が続き、同じ時期の過去5年の最低水準を下回る状態が続いている。

8月の中国の鉄鋼製品の輸出は前年比+34.7%の828万1,800トン(前月+9.6%の730万8,400トン)と過去5年の最高水準を大きく上回った。同時に鉄鋼製品輸出額は前年比▲30.6%の67.1億ドル(前月▲40.9%の63.4億ドル)と金額は前月から増加している。

しかし、輸出数量の増加によるものであり、トン当り単価は810ドル(前月867ドル)と下落が続いている。引き続き中国が安売りで余剰在庫の解消に努めていることを示唆するもの。

7月の中国粗鋼生産は前年比+11.5%の9,080万トン(前月+0.4%の9,111万トン)と増加し、過去5年平均を上回った。

これまで値引きを行って輸出を促進してきたが、それでも在庫解消に時間が掛っているため生産調整が進むかと思われたが、前年・前月よりも生産は回復している。

中国政府の需要刺激策ヘの期待と、過去5年平均を下回っている鉄鋼製品在庫の水準を受けて、9月・10月の需要期に備えた在庫積増しが行われていると考えられる。

本日も、最大の買い手である中国勢不在の中、小幅に水準を切下げる展開か。

◆貴金属

昨日の金価格は続落した。FOMCでの利上げ加速観測と・長期金利の上昇で、実質金利が上昇したことが背景。

実質金利で説明可能な基準価格は▲28ドルの836ドルとなったが、金利上昇に伴うクレジットリスクの高まりがリスク・プレミアムを押し上げ(+7ドルの990ドル)たため、下落幅を削る展開。

尚、2016年データを用いて回帰を行ってきたが、この間のイベントリスク発生や、現状との乖離が大きいため、コロナ・ショック発生前の2019年データにデータ参照期間を変更した。

金が下落しているため、銀・PGMとも水準を切下げた。

足下、金価格の構成要素のうち、リスク・プレミアムの占める比率が高まっている。金リスク・プレミアムの上昇要因の主なところは、

1.米利上げによる信用不安の高まり(低格付企業・新興国)

2.ロシアに対するドル決済禁止制裁を受けた、準備金におけるドルから金ヘのシフト

3.ロシアのウクライナ侵攻を切っ掛けとする有事発生ヘの備え

あたりだろう。これらと同じ事象は、ニクソン・ショック~プラザ合意~アジア危機収束まで30年近く続き、金価格に占めるリスク・プレミアムのシェアが高止まりした。

2016年基準で算出した現在のリスク・プレミアムのシェアは65%と、ほぼ上記の期間と同様の状況になっており金利水準以上にその他の要因が金価格の形成に影響を与えていることが確認できる。

恐らく、米国が利下げに踏み切ればリスク・プレミアムは逆に低下すると考えられるが、当面は利下げの可能性が低いため、結果、金は高止まりすることになろう。

なお、直近1年間の説明力を相関係数で確認すると、最も金価格に対する説明力が高いのがドル指数で▲0.91、次いでFF金利で0.87、リスク・プレミアム0.82程度、期待インフレ率(▲0.53)、実質金利(▲0.11)と、ほとんど実質金利は現在の価格形成に影響を与えていない。

ドル指数はFF金利の影響が大きいため、今後の金価格を占う上ではやはりFF金利動向が重用になる。

FF金利の水準はリスク・プレミアムに対する説明力が高いため、リスク・プレミアムの変動要因(FF金利の変動を受けた信用リスク要因、有事の金、準備金としてのドルの代替需要動向)が重要になっていると言える。

金の価格を構成要素に分解することは、各要素が互いに影響を及ぼし合っているため余り意味がない。

しかし、現状を理解する手助けとなるため、あえて実質金利・信用リスク・その他、に分離した場合、実質金利部分が40%、信用リスク要因が30%、その他の要因が40%となった(2019年データを元にした分析結果に変更)。

なお、新興国の金準備は「よほどのこと(戦争や制裁など)」がない限り売却はされない。そのため積まれた金準備による価格押し上げ効果は継続すると考えられる。

この5年間のデータを元にした分析では、FF金利±1%の変化で、実質金利は±0.5%変化、金価格は±50ドル変化し、リスク・プレミアムは±150ドル変化する。

年内利上げは、年内、あったとしてもあと1回と見られているため、金の基準価格は▲13ドル、リスク・プレミアムは+38ドルの上昇圧力となり、差し引き+25ドルの上昇となる。

市場予想では2024年は▲1.5%程度のFF金利引下げが見込まれているため、金の基準価格は+75ドル程度の押し上げ要因となり、リスク・プレミアムは、▲225ドルの低下要因となるため、仕上がりで▲150ドルの価格低下となる。

現在の金価格は1,900ドルまで低下しているため、これを基準とすると1,750ドル程度までの下落があると見ている。

銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。

月次の金銀レシオはボリンジャーバンドの中心でもみ合っている。足下の米統計の減速を考えると景況悪化の可能性はあり、再び上限を目指す展開になるのではないか。

仮にボリンジャーバンドの下限だと75倍、上限ならば90倍程度が目処になるが、金を1,900ドル程度とすると21.1~25.33ドルが現在取り得る範囲といえる。

本日は、昨日の下落でいったん買い戻しが入るが、金融引締め観測を受けた実質金利の上昇が基準価格を押し下げるため、頭重い推移に。

PGMは株の下落もあり、水準を切下げる展開。

◆穀物

シカゴ穀物市場は上昇した。ドル高や原油安など、周辺材料は価格を下押しするものが多かったが、米農務省の需給報告を控え、割安感からの買い戻しとポジション調整による買い戻しが入ったためとみられる。

足下、ハーベスト・プレッシャーと、エルニーニョ現象が発生している時の価格下落、ドルが再び修正高となっていることを織り込む形で下落しているが、価格下落による割安感からの買いに支えられている状況。

ただ、ウクライナ産のトウモロコシ輸出に支障が出ると、米国の生産は過去5年で2番目に水準が低い年になる見通しであり、ブラジル・アルゼンチンなどの南米の生産状況に供給が左右されやすい。そのため、南米の生産・輸出動向は今後重要になってくる。

なお長期的な話だが、今回地中海を襲ったハリケーン(ストーム・ダニエルと命名)の影響で中東北アフリカ地域に降雨がもたらされたことは、先々の穀物供給に影響を及ぼす、サバクトビバッタの越冬を可能にし、来年以降の供給減少のリスクを高めることが懸念される。

尚、Locust Watchでは中東・北アフリカ地域でのバッタの大量発生は確認されていない。

本日は、ハーベスト・プレッシャーと割安感からの買いで現状水準でのもみ合いを予想。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・米国債の格下げリスク(残るMoody'sの格下げリスク)、米国債格下げの動きが連鎖して、金融機関の格下げが加速、信用不安に繋がる場合。

・日本政府の財政規律の欠如、成長期待への失望から円が暴落するリスク。

・景気が想定よりも早く底入れしてインフレが再燃、あるいは景気を刺激する目的で早期の利下げが行われ資源価格が高騰、各国中銀の金融政策が再びタカ派の状態になった場合(リスク資産価格の上昇→下落リスク これは顕在化している可能性)

新興国の財政破綻、先進国も含めた債券の格下げによる金融機関・ファンドの突発的な損失拡大による信用収縮、低格付企業の破綻や、市場変動性の高まりによるファンド破綻などもリスクに(米銀格下げ検討は始まっている)。

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。暴動激化で中国が分裂するリスク(極めて可能性の低いリスク)。

中国の構造的成長が終了、過剰債務や不動産問題を抱え、中国が「日本化」するリスク(この場合長期低迷で工業金属やエネルギーなどの景気循環系商品価格の下押し要因となる可能性)

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。

また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、モディ支持率の低下による近代化投資の遅れ、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

・西アフリカ・北アフリカで、フランスが旧宗主国である国の反仏感情が高まり、武力衝突が発生して域内治安が悪化する場合。

欧州に難民が流入するほか、地域によっては(リビア、アルジェリア、ナイジェリアなど)原油・ガス供給に影響が及ぶ恐れ。

◆本日のMRA's Eye


「悲喜こもごもの日銀短観」

10月2日に発表された日銀短観は大企業製造業が9(前期5)と2期連続の改善となった。裾野の広い自動車の回復がけん引したが、海外情勢の悪化で生産用機械や半導体セクターの減速から電気機械などが悪化した。

規模別では中小企業も▲5で横這いとなった。各国製造業PMIが2年ほどの周期を経て底入れしていることを反映してのものとなった。

製造業の売上高の見通しは「上薄・下厚」となっており、海外の減速とは関係なく、下期の方が景況感が改善するとみている。ただし、非製造業(サービス業)の減速はこれからが本番となる可能性が高い。

2023年度の想定為替レートは135.75円/ドル(前回調査132.43円/ドル)と現在の水準から10円以上円高を想定している。輸出企業にとってはプラスだが、輸入・内需型の企業にとっては経営を大きく圧迫する水準。

また、今回の日銀短観でも、雇用判断DIと営業・生産用設備判断DIの悪化(人員不足、供給不足)を確認する内容となった。

かねてから指摘されるように若年層の減少や、円安進行に伴う自国通貨建ての賃金減少により、外国人労働者が確保できなくなっていることが深刻な問題になっていると考えられる。

営業・生産用設備判断DIと雇用判断DIは連動しており、両者とも景気の影響を受け、好況の時には供給能力が不足するが、現在の不足は景気というよりは上述の構造問題(これまでの政府当局の対応の不充分さ、10年にわたる円安政策の影響)の影響が大きい。

この結果、人員不足は企業の規模によらず深刻な問題となっており、1990年代の不動産バブルの頃の水準に近づいている。

直ちに労働力を確保できないことを考えると、工場の無人化やロボットの導入が進められる可能性が高く、省力化投資が日本の製造業活動を支えると考えられる。

実際、2023年度の設備投資は、大企業製造業が前年比+20.0%(修正率+0.5%)と増加、中小企業製造業も▲3.0%(+0.1%)と上方修正された。中堅企業は+16.2%(▲2.7%)と下方修正されたが、総じて企業の設備投資意欲は旺盛である。

これに加えて「脱中国」の動きが日本への工場シフトを促す可能性もあるため、海外よりも(やや後ろ向きでは有るが)設備投資が日本の景気を下支えするのではないか。

一方、景気循環の影響を受けやすい在庫状況は積み上がり傾向が顕著であり、足下の需給が緩和傾向にあることを示唆している。仕入価格判断DIと販売価格判断DIも低下傾向を持続しており、足下の景気は弱含みしていることを示唆している。

しかし、上述の雇用・生業・生産設備の不足から、これまで低下傾向にあった需給判断DIの悪化に歯止めが掛かっており、さらに雇用者の不足が賃金を押し上げ、インフレが定着する可能性があることから、米国の利上げの失敗や中国の下振れといったクライシスがなければ、仕入価格・販売価格の下落は比較的限定される可能性がある。


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