CONTENTSコンテンツ

CPIはサプライズなく総じて堅調
  • MRA商品市場レポート

2023年9月14日 第2543号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「CPIはサプライズなく総じて堅調」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は、ソフトコモディティや貴金属が軟調だったが、その他は総じて堅調な推移となった。

米CPIは予想通り物価上昇が確認されたが予想の範囲内という整理であり(詳しくは昨日のトピックスのコラムをご参照ください)、ドル高が一服して下落に転じる局面で買いが入る形となった。尚、米経済が良好であるため上昇しているエネルギーは、ドルと歩調を合わせて上昇している。

商品市場は現状、「凪」の状態に再び入っていると考えられる。昨年3月以降、市場のドライバーだったFRBの利上げが終盤に差し掛かっているためだ。

恐らく次は局面が転換し、景気が減速し始めた時の利下げを本当にできるのか、仮に2020年前に戻った場合に「そこまで強い相関性がなかった」米コアCPIと原油価格の連動性が担保されなかった場合、物価上昇率は低下しているのに、原油価格が上昇している場合に、追加で利上げを行えるのか(現状、原油価格が上昇した場合、産油国側が増産してこないので、需要を冷やす以外に有効な手段がない)、に映ることになるだろう(こちらも詳しくは、昨日のトピックスのコラムをご参照ください)。

なお、引き続き中国の不動産関連問題の当局対応動向は重要である。

【本日の見通し】

本日はECB会合が予定されているが、利上げの打ち止めやリセッションを意識させる発言が出ると予想され、ドル高・ユーロ安が見込まれることから軟調推移となる商品が目立つのではないか。

本日の注目材料は以下の通り。特に米国の雇用関連統計と小売売上高には注目したい。

・8月米小売売上高 市場予想 前月比+0.1%(前月+0.7%) 除く自動車 +0.4%(+1.0%) 除く自動車・ガソリン ▲0.1%(+1.0%) 除く自動車・建材 ▲0.1%(+1.0%)

・8月米PPI 前月比+0.4%(+0.3%)、前年比+1.3%(+0.8%) コアPPI 前月比+0.2%(+0.2%)、前年比+2.2%(+2.4%)

・米週間新規失業保険申請件数 225千件(前週 216千件) 失業保険継続受給者数 1,693千人(1,679千人)

【昨日のトピックス】

昨日発表され米CPIは総合CPIが前月比+0.6%(市場予想+0.6%、前月+0.2%)、前年比+3.7%(+3.6%、+3.2%)と伸びが加速、コアCPIも+0.3%(+0.2%、+0.2%)、前年比+4.3%(+4.3%、+4.7%)と市場予想を上回った。

指数上昇の要因は大半がエネルギー価格の上昇によるもの(前月比+0.1%→+5.6%)であり、その他の項目はまだ比較的落着いている印象である。

ただし、消費者物価っしううに対する寄与度が大きい住宅は前月比+0.4%(前月+0.5%)と減速しており、前年比でも+7.3%(+7.7%)と減速基調に大きな変化は出ていない。

直近の住宅賃料の指標であるジロー・レント指数は前年比+3.25%(前月+3.57%)、前月比+0.33%(+0.51%)と低下基調にある。

このCPIを受けて、市場は11月の利上げの可能性を小幅に引き下げた。恐らく当面は政策金利を高い水準に維持し、景気が減速する局面で利下げに転じる従来通りの政策になると予想される。利下げのタイミングは6月頃と市場は見ている。

なお、過去の例だと利上げが終了するとしばらくは凪の状態になるが、金利が高い水準に維持されることで徐々に景気が悪化することが多い(というよりはほとんど景気が後退している)。

しかし今回は製造業の景況感が底入れしており、米国についてはサービス業の景況感もISM非製造業指数が改善するなど明確な景気減速があるかどうか非常に不透明である。

結果、

1.原油価格が高騰しても物価上昇率が低下し、2020年以前の原油と物価の関係性に戻るのか(このときに原油価格を引き下げる方法は、産油国側が増産してこないため、需要を冷やすための金融引締めしか選択肢がない。この状態で本当に引締めができるのか)

2.原油価格高騰による波及効果が発生してコアCPIも再び上昇、利上げとまでは行かないまでも高金利政策が来年も長期にわたって継続するのか(2020年以前の原油とコアCPIの関係に戻らないケース)

3.物価上昇率の低下は労働市場の需給緩和が必要条件のため、需要が減速して石油製品需要も減少、物価低下と共に原油価格が下落するのか(より自然な、景気減速と原油価格の下落、物価低下が同時に起きるケース)

を見極める必要があるが判断材料はまだ十分に出そろっていない。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は上昇後下落した。米景気を楽観し、ドル高・原油高が同時に進行しているが、米石油統計が想定以上に弱気な内容だったことから水準を切下げる動きとなった。

米石油統計は原油・石油製品共に在庫が増加した。製油製品生産はむしろ減少していたが、輸出や国内出荷の減少が在庫増加に寄与したとみられる。ただ、ハリケーンの影響で出荷が停滞した影響も考えられるため、この在庫増加が持続的なものかどうかは、来週の石油統計を待つ必要がある。

現在、Brentは弊社の想定を大きく超える90ドルオーバーの水準で推移している。OPECやDOEの月報では10年振りの需給タイト化の見通しが示された。

10年前の2013年の頃の原油価格はBrentで100ドルを超えていた。

ただ、このときは、1.リビアの情勢不安(その後、内戦状態となり生産量が▲100万バレル超減少した)、2.シリア危機、3.イラン核開発を巡る西側諸国の圧力強化、4.QEの影響、といった材料が重なり、さらには世界景気が回復局面にあったことが価格を押し上げていた。

しかしその後、2014年には景気がピークアウトする中で、OPECが米シェールオイルの増産を牽制する意味でも、価格下落局面で増産を行うという過去に例のない対応をしたことで(ムハンマド皇太子が主導)急落している。

現在は景気が本当に底入れして回復、価格がさらに上昇するのか、金融引締め後に過去、ほぼ100%の頻度で発生している景気後退で価格が下落するのか、まだ答えは出ていない。

通常通りであれば、これまでの利上げの影響で個人消費にも影響がでてファンダメンタルズの弱さ>金融引締め終了期待、となり原油価格は調整する。実際、人手不足は解消の方向に向かっており、恐らく需要も鈍化するだろう。

そしてその後、景気減速による悪いドル安が発生、その後緩和効果などで景気が底入れ、価格は上昇という展開になると予想される。

ただそれが米財務省やFRBが言うように、極めて短期のリセッション、ないしはリセッションすらしなかった場合、原油価格は高値を維持する事になろう。

仮にサウジアラビアが減産を来年まで延長することがあれば、需給バランスは2023年が▲23万バレル、2024年は▲110万バレルの供給不足になる。これは脱炭素の影響でその他の地域の増産が期待通りではないことが影響している。

9月のDOE月報を元に原油価格を推定すると、2023年のBrent原油は84.1ドル、2024年は86.3ドルが想定される。価格上昇にもかかわらず需要の減速がなく(景気の減速がなく)、減産を2024年一杯継続した場合、2024年のBrent価格は90.9ドルとなる。

ただ、DOEは米国の人口動態を見直しした結果、退職人口の増加から米国の需要は年後半に掛けて減少すると見込んでおり、それを元にすると年後半に掛けて原油価格は水準を切下げる展開が予想されH124の平均価格は93.3ドル、H224が88.5ドルが見込まれる。

なお、上記はDOEの需給見通しを元にした予想値であり、10月・11月にリリースされる見通しは、上記分析を基準にするが同じ結果にはならない可能性がある。

この場合は2024年に再びインフレリスクに晒されることが予想されるが、2020年のコロナ前の様に「2%の物価上昇率に戻るが、原油価格の取り得る範囲は20ドル~120ドル」の世界の戻るのか、原油価格の上昇が物価上昇に繋がる2020年以降の世界のままなのかは、逐次発表されるデータを見ながら判断せざるを得ない。

9月5日時点のWTIの投機筋ポジションは、ロングが+41,273枚、ショートが▲17,144枚と、強気ポジションに転じた。

Brentはロングが+17,683枚、ショートが▲7,737枚と、こちらも結果的に強気ポジションを維持。

今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。

現在は 3.のうち、「OPECプラスが減産」した状態。

<シナリオ別原油価格見通し>

1. ロシアの禁輸措置が厳格に守られ、戦闘も継続  産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)する
Brent 70-95ドル/75-100ドル

2.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しない
Brent 65-90ドル

3.2.の状態で産油国(非OPECプラス・OPECプラス)が増産/減産する
Brent 60-80ドル/70-90ドル

4.ロシアがウクライナから撤退・停戦上記見通しが各々▲5ドル程度低下

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

5. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)
Brent 60-90ドル

6. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)
Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

Q323~Q423 需要の伸び減速・生産調整(→)グローバル・リセッション、危機顕在化の場合(↓)
Q124~Q224 需要減速底入れ・需要回復期(↑)OPECプラス減産維持の場合(↑↑)
Q324以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産)(↑)OPECプラス減産維持の場合(↑↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

本日は、米CPIを受けてもFRBの政策見通しに大きな変化がないとみられる中、米景気良好、供給制限継続で上昇余地を探る動きに。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は上昇。シェブロンのストライキは当局が介入する方針だが解決の目処は立っておらず、ノルウェーのメンテナンスの影響で供給面で価格を押し上げているものの、欧州景気の減速懸念が価格を押し下げる形となった。

ただし、先進国である豪州での問題であり、仮にストライキが行われても新興国のような大規模な暴動に繋がって生産・輸出設備が毀損するという事態にはなり難く結局最終的には下落に転じると予想される。

弊社の直近のガス在庫動向シミュレーションでは、ロシアの輸出がキャパシティの20%を維持できれば、ガス供給は需要が仮に+5%増加しても足りるとの結果であるが、2025年以降、契約が継続しない場合、最悪20%の稼働がさらに低下し、トルコ向けのパイプラインのみ稼働することが予想される。

また、ロシアのガス供給が全て停止したとしても需要を過去5年平均の水準から▲5%以上削減すれば足りることになる。今のところEUは来年3月まで▲15%の削減を努力目標としているため、達成の可能性は高い。

ただし、上記のリスクシナリオ(在庫減少)が顕在化すれば、TTF価格は上昇し、延いてはJKM価格の上昇要因となる(供給が足りても在庫減少で価格は上がる)。

また、在庫が減少すれば翌年以降の調達に影響が出る(価格が上昇する)ため、脱ロシアの完全完了までは上昇リスクは無視できない。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続2.LNGターミナル・ガス田・船舶の不慮の停止3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.季節要因・気象状況

1.はロシアのLNGカーゴはまだ取引されており、スポットカーゴ価格の上昇要因にはならなくなってきた。ロジカルには西側諸国が脱ロシアを完全に完了するまでは、気温の変化や政治的なイベントによって季節的に価格が高騰するリスクは残る。

弊社の試算では欧州が完全にロシア産ガスを排除(第三国経由でもロシア産のLNGを購入しない状態になる)できるのは2027年頃。ロシア産のLNGの輸出が阻害されなければ2025年頃。

今のところロシア産ガスの供給は実質的に制限されていない。しかし2024年いっぱいで、ウクライナ経由の欧州向けガス輸出の契約は、更新されない可能性が高まっている。

そのため、2025年までに脱ロシアを完了することは難しく、やはり2026年~2027年頃に脱ロシア完了はずれ込むと考えるのが妥当だろう。

しかし、脱ロシアが完了した場合、ロシアがこれまで供給してきた西側諸国向けのガスが「浮く」ことになる。2022年、欧州向けにロシアが削減したパイプライン輸出量は708億立方メートルで、総輸出量9,685億立方メートルの7.3%に及ぶ。

これを他地域の需要増加で補うことは恐らく不可能であり、FID済みのプロジェクトも見直しせざるを得なくなる可能性がある。

2.は、異常気象発生時にはインフラに障害が出る可能性が高まる。米海洋大気庁の見通しでは、大西洋でのハリケーンの発生頻度は例年を上回る見通しが示された。

通常、エルニーニョ現象が発生したときは大西洋の海水温が低下してハリケーンの発生・勢力が弱まるが今年は例外的な見通しとなっており、北米→欧州のLNG輸送や輸出ファシリティへの影響は無視できないリスクに。

また、異常気象の影響による干ばつでパナマ運河の水位が低下しており、LNG輸送に障害が発生、スポット価格が上昇する可能性が出てきた。

現在懸念されているのは豪州生産者のストライキで、欧州は豪州産LNGはほとんど購入していないが、カーゴ市場の需給はタイト化するため価格の上昇要因になっている。

3.4.は顕在化している。特に3.に関しては恐らく今年がロシア・ウクライナ戦争の山場である可能性が高く、ロシアがなりふり構わない対応をしてくる可能性は否定できない。

5.は2.とも関係するが、夏場の気温が例年よりも欧州は高く、基本は冷夏の傾向が強まる北アジアの気温も上昇しており、スポットのガス調達圧力は強い。

今年の冬はエルニーニョ現象、ラニーニャ現象、どちらの発生も有り得るが仮に厳冬となった場合の冬場の価格上昇リスクは小さくはない。

米メキシコ湾発のLNGのタンカーレートは日本向け・欧州向けとも大幅に上昇している。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米天然ガス市場は気温低下見通しが材料視され、水準を切り下げた。ただ、気温というよりも例年と異なり、ガス在庫の増加ペースが遅いことがやや懸念される。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物市場は高値を維持。豪シェブロンの労働組合のストライキの可能性が高まっていることが背景。

豪州のストライキは、先進国でのストライキであり、新興国のように暴動にまで発展せず、数日で収束することが多いことから、長期の価格押し上げ要因にはならないとみている。

現在のJLCの水準は12.04ドルであり、現在のスポット価格はこの水準を上回っている。

その他のアジアの国の長期契約ベースの価格は恐らくJLCと大差がないと考えられ、今年の冬場の需要期の価格はほぼJLCの水準で推移している。

今年は回避されているが、豪州は国内供給が充分でない場合、通常7月1日まで、遅くとも10月1日までにガス不足の懸念を通知し、実際に国内供給が不充分と判断された場合、次の1年間は輸出が制限される(ADGSM)。

この条項が発動された場合、スポット価格の上昇リスクとなるため、意識はしておきたい。

また、サハリン2の生産能力の低下、供給の減少はかなり前から指摘されているが、今のところ顕在化していない。多くの必要な部材は中国などを経由してロシアにもたらされている可能性があり、実は長期の供給リスクは懸念ほどではないかもしれない。

8月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比+22.7%の1,086万トン(前月+18.5%の1,031万トン)と先月同様、同じ時期の過去5年の最高水準を上回っている。

まだ統計が発表されていないが、国内天然ガス生産の減少や、気温上昇による発電向けの需要増加が輸入を高水準に維持している可能性がある。

7月のパイプラインベースの輸入は前年比+12.4%の445万トン(前月+13.6%の443万トン)と過去5年の最高水準(396万トン)を上回った。

7月のLNG輸入は前年比+23.7%の585万9,000トン(前月+23.5%の595万8,000トン)と前月から伸びが加速し、同じ時期の過去5年の最高水準(567万2,000トン)を上回った。

7月の中国の天然ガス生産は+8.2%の1,360万3,000トン(前月+5.8%の1,338万2,000トン)と同じ時期の過去5年の最高水準を上回っている。

※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

9月3日時点の日本の大手発電業者のLNG在庫は173万トン(過去5年平均249万2,700トン、大手発電業者在庫の過去5年平均は206万トン)と、いずれの集計でも過去5年平均を下回った。

速報性のある大手電力以外の在庫も含めた水準と比較すると、過去5年の最低水準(184万7,200トン)も下回っている。

大手発電業者のLNG調達は、自社の顧客を対象にした数量しか行われない。これは新電力の顧客の需要データが開示されないため、他社分まで調達することができないため。

仮に冬場が寒くなった場合、再びガスや石炭不足となり価格が上昇する可能性はある。通常過不足はスポット(JKMベース)で行い、電力のスポット価格はJKMの影響を受けるため、再び冬場の電力価格が上昇するリスクは無視できない。

また、今年はエルニーニョ現象の影響で太平洋側は台風の発生頻度・勢力が強まる可能性がある。この場合、輸送に影響が出ることも考えられるため、エルニーニョ現象が発生しているものの在庫水準の低さを考えると、冬場の価格上昇リスクも無視できない。

JEPXベースで調達して大手電力会社の価格で電気を販売している業者、JEPXベースで電気を調達している消費者はこのJKMのリスクを抱えることになる。

本日も、豪生産者のストライキヘの懸念が価格を高止まりさせるため現状水準を維持するとみる。

ただし、先進国でのストライキであり早晩収束するため、長期にわたる買い材料にはならない見込み。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP・東京ガス提示の数値を使用している。 LNG1トン=2.19立方メートル(液体)=1,360立方メートル(気体)= 46MMBtu LNG船1隻 147,000立方メートル=67,000トン 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル=7,757トン 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップ先物は上昇。ガス価格高止まりの中で買い戻しが続いている。

現在のガス価格(JKM)との関係性を元に回帰分析を行うとNEWC価格は139ドル、±1標準偏差で70~210ドル程度までが統計的に説明可能なレベル。

期先の価格は現在の生産コストに近いことを考慮すると、期先の価格が155~165ドル程度まで再び上昇しているため、155~210ドルが説明可能なレンジであり、現在のスポット価格はやや安く、足下の需給が緩和していることを示唆。

2023年~2024年は例年と例年並みの冬だとした場合、記録的な暖冬だった昨冬と比較して今冬は昨冬よりも寒い見通しであることを考えると、年後半に向けての価格上昇リスクは排除できず、実際、冬場の期先の価格は高い。

ロシア問題が継続する以上、欧州が完全に脱ロシアを達成することが期待される2027年(早ければ2025年、現実的には2026年)までは、ピークシーズン中の価格上昇リスクはつきまとう。

今年のアジアの夏は例年よりも暑い夏になる見通しであり、北半球の夏場の冷房需要向けの日中の石炭需要で再び上昇基調に転じるだろう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

8月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比+50.5%の4,433万3,000トン(前月+66.9%の3,926万トン)と過去5年レンジを大幅に上回る水準を維持した。

ガスも同様であるが、中国の記録的な気温上昇の影響で、発電燃料需要が引き続き増加しているためと考えられる。2000年以降、エルニーニョ現象が発生しているときは発電燃料の価格は下がる傾向が強いが、異常気象が発生しやすい気象状態であることは意識しなければならない。

国別では7月は豪州からの輸入が増加している。これにより、豪州の輸入シェアは29.5%(前月23.1%)と上昇した。しかし直近12ヵ月の累計シェアはロシアが1位で0.6%、ついでインドネシア(36.2%)、豪州(13.0%)となった。

7月の中国の石炭生産は、前年比+0.9%の3億7,128万トン、1,197万7,000トン/日(前月+2.5%の3億8,863万トン、1,295万4,000トン/日)と伸びが減速した。

7月の中国の電力消費量は前年比+6.8%の8,888億kwh(前月+4.0%の7,751億kwh)と伸びが加速した。気温上昇が続いたことが影響した。

今後、輸入需要の増加があるかは発電需要に依拠するが、夏場が終了に向かっていることから徐々にフェードアウトすると考えられる。

本日も、豪州のガス生産者のストライキ問題を受けたガス価格の上昇を受けて、高値圏での推移になると考える。

尚、先進国でのストライキであり早晩収束が期待されることから、長期にわたる上昇要因にはならない見込み。

◆LME非鉄金属

LME非鉄金属市場は上昇した。米CPIは予想通り上昇したものの、米利上げがあったとしてもあと1回程度との見方を確認する内容であり、ドル指数の下落を受けて水準を切上げる動きとなった。

8月の中国の貿易統計では、ベンチマークである銅地金・製品輸入は前年比▲5.0%の47万3,330トン(前月▲2.7%の45万1,159トン)と過去5年平均を下回る状態が続いた。

一方、銅鉱石・コンセントレートの輸入は前年比+18.8%の269万7,104トン(前月+3.7%の197万トン)と過去5年の最高水準を上回った。精錬銅の取得が困難になっていることに加え、電力供給の回復が影響したとみられる。

7月の中国の精錬銅生産は+17.7%の102万3,000トン(前月+17.5%の109万6,000トン)と過去5年の最高水準を大きく上回っている。海外の在庫水準の低さ、足下の電力供給環境の改善を受けて、鉱石を輸入し、自国内での生産を増加させている状況。

7月の銅スクラップの輸入は前年比▲3.9%の14万9,170トン(前月+2.8%の16万9,754トン)と過去5年平均を維持している。

中国政府は住宅取得頭金の引下げや、既存住宅ローン借り入れ客の金利引下げも容認するなどの対策を実施しており、市場では一定の評価を得た。

財政上のゆとりがないことから当面、政策金利の調整で凌ごうとする可能性が高いが、問題は余剰在庫の解消であるため、金利操作だけでは状況を好転させるのには不充分である。しかし同時に時間を掛けて不良債権や在庫処理を行う必要もある。

数量ベースでの把握が困難だが、金額ベースの中国製造業の在庫循環図は調整局面の初期にあり、まだ在庫の調整が必要な状況。

通常のサイクルであれば、在庫の調整には1年程度掛るが、恐らく共産党支配が強い国であり、強制的な在庫調整も有り得るためそこまで時間は掛らないと考えられる。

中国政府が何の対策もしない、ということは考え難いが常識的に考えれば、

・在庫が積み上がっているこのタイミングで経済活動を刺激すれば、さらなる在庫の積増しになってしまう可能性があること

・予算的な問題

を考えるとある程度在庫の調整が進み、かつ、予算措置が終了してからと考えるのが妥当ではないか。

現在、不動産の余剰在庫を解消するため、住宅取得の制限を緩和しているが、その実施も地方政府の裁量に委ねられているため、急速に状況が改善するには至っていない。

この危機を乗り切ることができれば、長期的には脱炭素、脱ロシア、中国・インドのW人口ボーナス期(中国は近代化仕上げの10年)、東西の緩やかな分裂に伴うサプライチェーン再構築のためのインフラ投資継続、といった材料を考えると、鉱物資源需要は増加して価格には構造的な上昇圧力が掛かると考えるのが妥当だろう。

恐らく、危機を乗り切るための予算的な措置が具体化するのは、秋の三中全会、12月に予定されている中央経済工作会議前後と考えるのが自然である。よって(早ければ)Q423の後半、遅くともQ224の前半には上昇に転じるとみる。

なお、規模や対象は限定されるが、仮に中国が経済対策を行えばそのタイミングで、「デジタルに」需要が発生するため、在庫の絶対水準の低さと相まって比較的大きな上昇になる可能性があるため、上昇リスクには常に備える必要がある。

ただし、この危機を乗り切ることに失敗し、中国政府が想定以上にこれまで積み上がった余剰生産能力の解消に手間取った場合景気は長期低迷、いわゆる「日本化」が10年単位で起きる可能性が高い。

さらに労働人口がピークアウトし、かつ、米国の制裁によって先端分野の発展が阻害され生産性が低下、将来的にはインフレをもたらしソ連型の国家崩壊、というシナリオも長期的には有り得る話だ。

本日は、ECB会合で恐らく利上げは見送られ、しばらく様子見を確認するとみられることからドル高進行で、軟調な推移を予想。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇 、大連は上昇、豪州原料炭スワップ先物は上昇、大連原料炭価格は下落、上海鉄筋先物は小幅に下落した。

鉄鋼製品価格は、建設ピーク時の需要で上昇していたが、中国の不動産セクターが回復(新規の建設が行われる)にはまだ至っていないと考えられ、小幅に調整的に売られた。

鉄鉱石の港湾在庫の水準は過去5年の最低であり、原料炭在庫も減少傾向にあることから、鉄鋼原料は引き続き高い。

週間の鉄鋼製品港湾在庫統計は、鉄鋼製品在庫は+4万トンの1,306万5,000トン(過去5年平均 1,324万3,000トン)と過去5年平均を下回っているが、かなり水準は過去5年平均に近づいており、鉄鋼製品価格の下押し要因となっている。

鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比▲290万トンの1億1,590万トン(過去5年平均 1億3,371万トン)、在庫日数は22.8日(▲0.6日、過去5年平均28.0日)。鉄鉱石は在庫は日数ベースでも、数量ベースでも過去5年平均を下回っており、鉄鉱石の需給はタイトで一定の在庫積み増し需要が存在する。

主要原料炭の輸入港である京唐港の原料炭在庫は▲3万トンの162万トン(過去5年平均 147万2,000トン)、在庫日数は▲0.1日の5.9日(過去5年平均 5.7日)と、原料炭の需給は過去5年平均と比べれば緩和している状況。

8月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲28.1%の63万9,770トン(▲13.9%の68万トン)と低迷が続き、同じ時期の過去5年の最低水準を下回る状態が続いている。

8月の中国の鉄鋼製品の輸出は前年比+34.7%の828万1,800トン(前月+9.6%の730万8,400トン)と過去5年の最高水準を大きく上回った。同時に鉄鋼製品輸出額は前年比▲30.6%の67.1億ドル(前月▲40.9%の63.4億ドル)と金額は前月から増加している。

しかし、輸出数量の増加によるものであり、トン当り単価は810ドル(前月867ドル)と下落が続いている。引き続き中国が安売りで余剰在庫の解消に努めていることを示唆するもの。

7月の中国粗鋼生産は前年比+11.5%の9,080万トン(前月+0.4%の9,111万トン)と増加し、過去5年平均を上回った。

これまで値引きを行って輸出を促進してきたが、それでも在庫解消に時間が掛っているため生産調整が進むかと思われたが、前年・前月よりも生産は回復している。

中国政府の需要刺激策ヘの期待と、過去5年平均を下回っている鉄鋼製品在庫の水準を受けて、9月・10月の需要期に備えた在庫積増しが行われていると考えられる。

本日も、中国政府の対策効果と、9月・10月の需要期を控えて鉄鋼製品価格が上昇する可能性が高いため、鉄鋼原料価格も高値維持の公算。

◆貴金属

昨日の金価格は小幅に下落した。金利低下を受けた実質金利の低下が金基準価格を押し上げたが、ドル高進行がリスク・プレミアムを押し下げた。銀も連れ安。

プラチナはテクニカルに買われていたが下落、パラジウムは節目の1,200ドルで反発したことからテクニカルな買いで上昇した。

貴金属はいずれも方向感が出難く、レンジワークを継続している。

足下、金価格の構成要素のうち、リスク・プレミアムの占める比率が高まっている。金リスク・プレミアムの上昇要因の主なところは、

1.米利上げによる信用不安の高まり(低格付企業・新興国)

2.ロシアに対するドル決済禁止制裁を受けた、準備金におけるドルから金ヘのシフト

3.ロシアのウクライナ侵攻を切っ掛けとする有事発生ヘの備え

あたりだろう。これらと同じ事象は、ニクソン・ショック~プラザ合意~アジア危機収束まで30年近く続き、金価格に占めるリスク・プレミアムのシェアが高止まりした。

2016年基準で算出した現在のリスク・プレミアムのシェアは65%と、ほぼ上記の期間と同様の状況になっており金利水準以上にその他の要因が金価格の形成に影響を与えていることが確認できる。

恐らく、米国が利下げに踏み切ればリスク・プレミアムは逆に低下すると考えられるが、当面は利下げの可能性が低いため、結果、金は高止まりすることになろう。

なお、直近1年間の説明力を相関係数で確認すると、最も金価格に対する説明力が高いのがドル指数で▲0.91、次いでFF金利で0.87、リスク・プレミアム0.80程度、期待インフレ率(▲0.53)、実質金利(▲0.11)と、ほとんど実質金利は現在の価格形成に影響を与えていない。

ドル指数はFF金利の影響が大きいため、今後の金価格を占う上ではやはりFF金利動向が重用になる。

FF金利の水準はリスク・プレミアムに対する説明力が高いため、リスク・プレミアムの変動要因(FF金利の変動を受けた信用リスク要因、有事の金、準備金としてのドルの代替需要動向)が重要になっていると言える。

金の価格を構成要素に分解することは、各要素が互いに影響を及ぼし合っているため余り意味がない。

しかし、現状を理解する手助けとなるため、あえて実質金利・信用リスク・その他、に分離した場合、実質金利部分が4割、信用リスク要因が2割、その他の要因が3割となる。

なお、新興国の金準備は「よほどのこと(戦争や制裁など)」がない限り売却はされない。そのため積まれた金準備による価格押し上げ効果は継続すると考えられる。

この5年間のデータを元にした分析では、FF金利±1%の変化で、実質金利は±0.5%変化、金価格は±50ドル変化し、リスク・プレミアムは±150ドル変化する。

年内利上げは、年内、あったとしてもあと1回と見られているため、金の基準価格は▲13ドル、リスク・プレミアムは+38ドルの上昇圧力となり、差し引き+25ドルの上昇となる。

市場予想では2024年は▲1.5%程度のFF金利引下げが見込まれているため、金の基準価格は+75ドル程度の押し上げ要因となり、リスク・プレミアムは、▲225ドルの低下要因となるため、仕上がりで▲150ドルの価格低下となる。

現在の金価格は1,900ドルまで低下しているため、これを基準とすると1,750ドル程度までの下落があると見ている。

銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。

月次の金銀レシオはボリンジャーバンドの中心でもみ合っている。足下の米統計の減速を考えると景況悪化の可能性はあり、再び上限を目指す展開になるのではないか。

仮にボリンジャーバンドの下限だと75倍、上限ならば90倍程度が目処になるが、金を1,900ドル程度とすると21.1~25.33ドルが現在取り得る範囲といえる。

本日は、ECB会合で利上げ打ち止め、様子見が確認されユーロ安・ドル高が見込まれることから軟調推移を予想。

◆穀物

シカゴ穀物市場は上昇した。特段材料があったというよりも、ラニーニャ現象終了後の下落で水準が低下したため、原油価格上昇などを切っ掛けに割安感からの買いが入ったと考えられる。

足下、エルニーニョ現象が発生している時の価格下落を織り込む形で下落していると考えられ、総じて軟調である。しかし、異常気象をもたらす気象状況であるため油断は禁物で、不作になるリスクも常に意識しておく必要がある。

ただ、ウクライナ産のトウモロコシ輸出に支障が出ると、そうはいっても米国の生産は過去5年で2番目に水準が低い年になる見通しであり、ブラジル・アルゼンチンなどの南米の生産状況に供給が左右されやすい。

そのため、南米の生産・輸出動向は今後重要になってくるだろう。

本日は、ECB会合で金利引き上げは見送られ、むしろリセッションへの懸念が意識されることからユーロ安・ドル高が見込まれるため、軟調推移を予想。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・米国債の格下げリスク(残るMoody'sの格下げリスク)、米国債格下げの動きが連鎖して、金融機関の格下げが加速、信用不安に繋がる場合。

・日本政府の財政規律の欠如、成長期待への失望から円が暴落するリスク。

・景気が想定よりも早く底入れしてインフレが再燃、あるいは景気を刺激する目的で早期の利下げが行われ資源価格が高騰、各国中銀の金融政策が再びタカ派の状態になった場合(リスク資産価格の上昇→下落リスク これは顕在化している可能性)

新興国の財政破綻、先進国も含めた債券の格下げによる金融機関・ファンドの突発的な損失拡大による信用収縮、低格付企業の破綻や、市場変動性の高まりによるファンド破綻などもリスクに(米銀格下げ検討は始まっている)。

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。暴動激化で中国が分裂するリスク(極めて可能性の低いリスク)。

中国の構造的成長が終了、過剰債務や不動産問題を抱え、中国が「日本化」するリスク(この場合長期低迷で工業金属やエネルギーなどの景気循環系商品価格の下押し要因となる可能性)

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。

また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、モディ支持率の低下による近代化投資の遅れ、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

・西アフリカ・北アフリカで、フランスが旧宗主国である国の反仏感情が高まり、武力衝突が発生して域内治安が悪化する場合。

欧州に難民が流入するほか、地域によっては(リビア、アルジェリア、ナイジェリアなど)原油・ガス供給に影響が及ぶ恐れ。

◆本日のMRA's Eye


「低ボラティリティ後のリスクと異常気象のリスク」

いわゆる「●●ショック」が発生するときは、信用リスクや地政学リスクが顕在化したときに発生することが多い。

過去の例を見ると、「ボラティリティが低下している局面の後」は信用リスク系のショックが顕在化していることが多く、ボラティリティが上昇している時に発生しているリスクは、地政学系のリスクであることが多い。

地政学的リスクの発生は、過去にこのコラムでも観てきたように、ラニーニャ現象が発生している時に起こりやすい。解釈として、ラニーニャ現象が発生している時は特に2000年以降は穀物価格が上昇することが多く、域内で暴動が発生し、さらに大きな暴動に繋がる。

直近のラニーニャ現象発生時に穀物価格は上昇したが、このとき弊社は中東・北アフリカ地域で暴動が起きると考えていたが、ラニーニャ現象発生による穀物価格の上昇やガスなどの発電燃料の供給不足を見越して、ロシアのプーチン大統領が今回の戦争を仕掛けた可能性は十分に有り得る。

なお、今のところ大きな暴動にはなっていないが、長い間、旧宗主国のフランスに対する不満を持ち続けてきた北アフリカ西部の国々(マリやニジェール、ガボンなど)がフランスに反旗を翻し、ロシアの傭兵部隊であるワグネルを呼び込む動きもみられている。

赤道近辺の国々はエルニーニョ現象の際にも気温が上昇したり、降雨が少なくなったりして不作になることがあるが、仮に今年の収穫が期待通りでなかった場合、「不満の種」は撒かれている状況であるため秋~冬にかけての暴動発生のリスク、それに伴う石油・LNGの需給ひっ迫リスクはない話ではない。

信用リスクの発生の多くは、金融引締めを緩やかに行う中(まだ景気が悪くなっていない)で緩やかに株価が上昇し、その後、「利上げの最後の1押し」がトリガーとなり、ある程度の時間差を以て景気が減速、危機が顕在化しているケースが多い。

アジア通貨危機、ロシア財政危機、パリバ・ショック、リーマン・ショック、VIXショックはこれに当たる。

信用リスクの場合融資のコベナンツ条項をヒットするなど、「デジタルに」企業の資金調達などのハード・リミットをヒットする(例:投資適格だった企業が投資不適格となり資金調達ができなくなる、格付が低下することによって供与される与信枠が削減され、取引解消の動きが強まる)ことから、相場が急落しやすい。

2022年のロシアのウクライナ軍事侵攻以降、実は株のボラティリティは低下しており、この30年で見たときの最低水準まで低下。このことは「最後の1押し」となる利上げの後、何らかの「信用リスクトリガー」を引いて株が急落、リスク資産価格が急落するリスクが小さくないことを示唆している。

現在はFRBを始め各国中央銀行(特にコロナ発生時に財政出動を大規模に行った国)が金融引締めを強化している。恐らく利上げの最後の1押しは年内と考えられるため、過去の法則と同じであるならば、むしろ来年の下振れのリスクは小さくない。

引き続き市場コンセンサスは年内ショートターム・リセッション→回復だが、市場の筋書き通りにならないリスクは意識しておく必要があろう。


主要ニュース/エネルギー・メタル関連ニュース/主要商品騰落率/主要指数/市場の詳細データPDFは、有料版「MRA商品市場レポート」にてご確認いただけます。
【MRA商品市場レポート】について