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ドル円相場の高値波乱続く
  • MRA外国為替レポート

2023年9月11日号

◆先週の市場総括


先週は為替市場では円が安値を伺う展開となったが、日本の通貨当局から円安けん制発言が続き、円が買い戻される場面もあり荒れ相場。

ドル円相場は148円に迫る一方で146円台半ばに下落したが、結果的に円は売られて148円手前で引け。ドルは堅調でドルインデックスは105ポイントを回復して引けた。

ISM非製造業景気指数が予想外に強く、景気堅調持続、景気後退回避との見方が強まり、金融引き締め長期化観測が強まった。米2年債は5%を伺い、10年債は4.2%台後半で高止まり。

ただ地区連銀経済報告ではインフレ鈍化や雇用緩和、消費の減退リスクが指摘された。

米国株は中国懸念や米中対立、金利高止まり観測が重石となって上値が重かった。日経平均は円安や特別清算指数算出を材料に買われ33,000円の大台を回復したが週末にかけて失速し32,600円台で引けた。

月曜日の東京市場では日経平均は6営業日続伸。TOPIX指数はバブル後最高値を連日更新した。米国で週末の雇用統計を受けて追加利上げ観測が後退し、ハイテク中心に米国株が堅調。

一方、ドル高円安で戻ってきたことは輸出関連の支えに。アジア株も堅調で投資家心理が改善した。引けは前週末比+228円高の32,939円。

為替市場は月曜日の米国市場が休場のため小動き。ドル円相場は146円20銭で始まり朝方146円ちょうど近辺に下落したがその後は戻して20銭中心にもみ合い横ばい。

ユーロ円相場は157円50銭台で始まり夕刻にかけてじり高となり157円70銭。ユーロドル相場は1.0770台から1.0800台にじり高。

欧州市場に入るとユーロ高円安が進み、連れてドル円相場も上昇。あらためて日欧金融政策格差が意識された。

ユーロ円相場は158円20銭に上昇し158円ちょうど~20銭で上下動。その後は米国市場が休場のなか158円10銭近辺でもみ合い引け。ドル円相場は146円40銭~50銭に上昇してもみ合い50銭近辺で引け。ユーロドル相場は1.08中心に上下して引けは1.0790台。

ECBラガルド総裁は、行動は言葉より雄弁、と述べ来週9月14日の理事会での利上げ有無について明言を避けた。

火曜日の東京市場では日経平均が7営業日続伸。TOPIX指数は1990年7月以来の33年振り高値を連日で更新。円安で輸出関連銘柄に買い。海外短期筋とみられる買いに引け際にかけて上昇。前週末比+97円高の33,036円で引けた。

ドル円相場は上昇。146円50銭近辺で始まり夕刻にかけて右肩上がり。さらに欧米市場でも続伸。米長期金利上昇に連れてドルが全面高となり147円80銭まで上昇してNY引けは147円70銭。今年の最高値を更新した。

この日、原油価格が上昇。サウジアラビアとロシアが減産を年末まで延長することで合意。WTI先物は一時88ドルまで上昇、引けは86.69ドル。インフレ再燃懸念から米長期金利が上昇。10年債利回りは4.263%へ、2年債は4.961%へ。

ユーロドル相場は東京市場では1.0790近辺で推移。米国市場朝方にかけて1.0720に下落して1.07台前半で上下。米国市場では一時1.07ちょうどに迫り引けは1.0720。

ユーロ円相場は概ね横ばい、若干の円安。東京市場では158円10銭で始まりじり高。夕刻は158円40銭。欧州市場では157円80銭に下落したが、その後は持ち直し158円台半ばを回復して158円40銭で引けた。

米国株は長期金利上昇を嫌気して軟調。NYダウは前週末比▲195ドル安の34,641ドル。ナスダックは▲10ドル安の14,020ドル。

発表された中国の財新サービス業PMI(8月)は前月54.1から51.8へ悪化。ユーロ圏サービス業PMI(8月)改定値は速報48.3から47.9へ下方修正。同生産者物価指数(7月)は前年同月比▲7.6%の下落で前月▲3.4%から下落幅が拡大した。

水曜日の東京市場では日経平均が8営業日続伸。円安が追い風となり輸出関連銘柄が業績改善期待で買われた。米国景気がなお堅調との見方も支え。

SQ(特別清算指数)算出を週末に控え思惑的な買いも入った。引けは前日比+204円高の33,241円。

ドル円相場は147円70銭で始まり上値の重い展開。神田財務官が円安を牽制する発言をしたことで介入警戒感が強まった。

夕刻には147円ちょうど近辺に下落。ユーロ円相場も158円40銭で始まり10銭~40銭で上下。夕刻には157円80銭に下落した。ユーロドル相場は1.0720~40で方向感なく推移。

しかし欧州市場に入ると円高は一服、円安方向に揺り戻し。米国市場朝方にかけてドル円相場は147円台前半で上下。ユーロ円相場は158円20銭~40銭。

米国市場に入ると強い米経済指標を受けてドルが上昇した。ドル円相場は147円70銭台に上昇して147円台後半で上下し引けは147円60銭。

ユーロドル相場は1.07ちょうど近辺に下落し引けは1.0720台。ユーロ円相場は158円ちょうどに反落したあと158円台前半で上下し引けは30銭。

発表された米国のISM非製造業景気指数(8月)は前月52.7から52.5への小幅悪化予想に反して54.5へ改善。雇用指数は50.7から54.7へ、新規受注指数は55.0から57.5へ、価格指数は56.8から58.9へ、いずれも改善した。

一方、サービス業PMI(8月)改定値は速報51.0から50.5へ下方修正された。

原油価格がこの日も減産延長を受けて上昇。インフレ懸念も再燃し金融引き締め観測から米長期金利が上昇した。10年債は一時4.3%をつけ引けは4.29%。2年債は5.02%台で引け。

一方、公表されたベージュブック(米地区連銀経済報告)では、経済活動は緩慢、全米で雇用の伸びは抑制された、旅行関連の消費は予想以上に強かったがその他の支出は鈍化、一部で家計は貯蓄を使い果たし借入に依存し始めている、ほとんどの地区は物価の伸びが鈍化、と報告された。

これを受けて長期金利の上昇は一服。米国株は下落。長期金利上昇でハイテク中心に売られた。ナスダックは前日比▲148ドル安の13,872ドル。NYダウは前日比▲198ドル安の34,443ドル。原油価格WTI先物は87.54ドルに続伸。

木曜日の東京市場では日経平均が9営業日ぶりに反落。米ハイテク株安で上値を抑えられ、朝方は円安を受けて輸出関連が買われたものの連日の上昇のあと利益確定売りが優勢となった。引けは▲249円安の32,991円。

中国の貿易統計(8月)は、収支が684億ドルと前月806億ドルから黒字が縮小。輸出は前年同月比▲8.8%、輸入は▲7.3%と、いずれも二桁だった前月のマイナス幅から縮小したものの、なお大きく減少したまま。景気懸念が広がった。

ドル円相場は147円60銭で始まり90銭手前まで上昇した。しかしその後、夕刻から欧州市場にかけてじり安。147円20銭台まで下落した。

ユーロ円相場の軟調が際立ち、158円30銭で始まり米国市場朝方にかけて157円40銭まで下落した。

ユーロドル相場は東京市場では1.0720台で始まり緩やかに下落して米国市場朝方は1.0690近辺へ。

発表されたユーロ圏のGDP4-6月期改定値は速報から下方修正。前期比は+0.3%から+0.1%へ。ドイツの鉱工業生産(7月)は前年同月比▲2.2%に減少。

一方、米国の週次の失業保険申請件数が予想より少なく労働市場の堅調さを示し金利高止まり観測が強まった。

ドル円相場は147円60銭に上昇。しかしその後は反落して147円ちょうど近辺へ。引けは147円30銭。ユーロドル相場はやや持ち直して1.07ちょうど近辺で引け。

ユーロ円相場は157円40銭~60銭で上下し引けは60銭。

米国株は金利高止まり観測でハイテクが軟調。中国政府がアップルi-phoneの使用を禁止したとの報道で同社株が大幅安となったことも嫌気された。ナスダックは▲123ドル安の13,748ドル。

一方、NYダウは+57ドル高の34,500ドルで引け。

NY連銀総裁は、失業率は4%強まで上昇する見通し、ただ景気後退はしない、再利上げが必要かは未解決、と述べた。米10年債利回りは4.248%へ、2年債は4.957%へ低下。ドルインデックスは105ポイント台を回復して引けた。

金曜日の東京市場では日経平均は大幅続落。アップル使用禁止で米中対立、中国景気懸念で中国関連株が軟調。前日までにSQ睨みの短期筋の買いが入って上昇していたあとで、手仕舞い売りが嵩んだ。引けは▲384円安の32,606円。

発表された日本のGDP(4-6月期改定値)は速報から下方修正されたが前期比年率+4.8%。

国際収支(7月)は経常収支が前月1兆5,090億円から2兆7,720億円に。景気ウォッチャー調査(8月)は現状判断DIが前月54.4から53.6に悪化、先行き判断DIも54.1から51.4に悪化した。

為替市場では鈴木財務相の円安牽制発言で朝方円高に振れた。ドル円相場は147円30銭で始まり146円60銭へ、ユーロ円相場は157円60銭から157円ちょうどへ。

財務相は、為替動向を高い緊張感をもって注視、過度な変動にはあらゆる選択肢を排除せず適切に対応する、と述べた。

ただその後は円安に戻しドル円相場は147円30銭へ、午後は147円10銭。欧州から米国市場にかけては内外金融政策格差を材料に円安が進み米国市場では147円80銭~90銭。

ユーロ円相場も欧州市場で158円ちょうどに上昇。その後157円60銭に下落したが戻して158円20銭~40銭で推移した。

ユーロドル相場は東京市場では1.07ちょうど近辺で始まり1.0720に小幅上昇したあとじり安で1.07ちょうど近辺。米国市場の引けも同水準。米長期金利は小幅上昇。10年債は4.267%へ、2年債は4.989%へ。

米国株は小幅高。原油価格上昇、インフレ懸念、金融引き締め長期化観測は上値を抑制したが、ハイテク株が連日の下げのあとで反発した。NYダウは+75ドル高の34,576ドル、ナスダックは+12ドル高の13,761ドル。

◆今週の3つの注目ポイント


1.米国の経済指標

今週はとくに物価関連統計が注目される。

水曜日 消費者物価指数(CPI、8月、総合指数、前年同月比、予想+3.6%、前月+3.2%、コア指数、予想+4.3%、前月+4.7%)

木曜日 生産者物価指数(PPI、同、総合指数、予想+1.3%、前月+0.8%、コア指数、予想+2.2%、前月+2.4%) 小売売上高(8月、前月比、予想+0.2%、前月+0.7%、除く自動車、予想+0.4%、前月+1.0%) 米週間新規失業保険申請件数

金曜日 NY連銀製造業景気指数(9月、予想▲10.7、前月▲19.0) 輸入物価指数(8月、前月比、予想+0.3%、前月+0.4%) 鉱工業生産(8月、前月比、予想+0.2%、前月+1.0%) 設備稼働率(同、前月79.3%) ミシガン大学消費者信頼感指数(9月速報、予想69.5、前月69.5、期待インフレ率、1年、前月+3.5%、5年、前月+3.0%)

2.ECB理事会、ラガルド総裁会見

木曜日にECB理事会が開催される。終了後にラガルド総裁が定例会見を行う。今回の会合では利上げの可能性は五分五分とみられている。

インフレ鈍化は捗々しくなく、なおも5%台で政策金利を上回っている。一方でインフレは消費を圧迫し、中国景気懸念が景気見通しを悪化させている。

ECB内ではインフレ抑止のため引き締め継続、景気を過度に悪化させるリスクから利上げ停止、双方で意見が割れているようだ。

総裁がどのようにまとめるか。また中長期的な政策判断にヒントがあるか。日欧間の金融政策格差があらためて意識され円安の原動力となるか、逆に円安の原動力が弱まるか。

3.中国の経済指標

依然として中国景気への不安感は根強くリスク選好を抑制する要因となっている。今週は金曜日に8月の主要経済指標が発表される。

小売、生産、は前月からやや好転する予想だが、安心感をもたらすか。小売売上高は前年同月比、予想+2.9%、前月+2.5%。鉱工業生産は予想+3.9%、前月+3.7%。

一方、住宅市況の悪化もあり都市部固定資産投資は予想+3.3%、前月+3.4%と伸び率が悪化するとみられている。失業率は前月5.3%から上昇するか。ただ若年失業率の発表は停止されたままで真の雇用悪化は不明なままだ。

◆今週のMRA's Eye


ドル円相場の高値波乱続く

先週は米国景気見通しに強気な見方が強まりドルが堅調に推移。ドルインデックスは105ポイントを回復した。一方、日本の通貨当局からは円安牽制発言が相次ぎ、円が買い戻される場面も。ドル円相場は147円台を中心に高値圏で乱高下した。

米国経済の見通しについて、このところ「ノーランディング」、すなわち、景気後退には陥らないのではないか、との見方が強まっている。

製造業の景況感は悪化が一服。サービス業についてはなお底固さをみせている。雇用情勢は緩和基調にあり、失業率は4%台に上昇すると見込まれているが、その程度の雇用悪化では景気後退には陥らないとみられる。

また大幅に政策金利を引き上げていることから、利下げの余地もまた大きい。政策の柔軟性が確保されていることも、景気見通しに楽観的になりうる根拠だろう。

一方、先週発表された米地区連銀経済報告(ベージュブック)では、足元の景気物価動向が政策当局の見方に沿っていることを示唆したが、先行き景気のダウンサイドリスクも伺えた。

多くの地区でインフレ鈍化、雇用情勢の緩和が指摘されたことは安心材料。ただ家計は貯蓄を使い果たし、借入に頼り始めている、との報告があった。

旅行関連の支出は堅調だったが、その他の個人消費は抑制されており、その旅行関連支出も峠を越えたとの見方が示された。

雇用緩和、賃金上昇率鈍化、貯蓄減少、借入増加、のなか、インフレ鈍化で実質金利が上昇すれば景気急減速のリスクも排除はできない。

実質金利上昇を抑制するために、景気浮揚ではなく過度な景気悪化を回避するため、インフレ鈍化に応じた調整利下げはありうる。その見極めはなお10-12月期になり、11月、12月の利上げ見送り、利上げ打ち止めを確認し、来年のどの時点で調整するのか、というところか。

欧州では今週木曜日にECB理事会が開催される。ラガルド総裁はなお利上げ実施か見送りか明言を避けている。ドイツでは景気悪化が顕著になっているが、インフレ率が高止まりしているため、伝統的にタカ派のドイツ連銀からは利上げ継続を支持する発言が続く。

一方、南欧の中銀からは景気を過度に悪化させるリスクに懸念が強まっている。

インフレ率は5%台前半、政策金利は4.25%、両者にはなお1%の乖離がある。実質金利はマイナスで景気抑制的ではないが、景気悪化が続く。

米国では逆に政策金利がインフレ率を1%上回り実質金利はプラス1%に。FRBの政策調整余地が大きいのに比べ、欧州はスタグフレーションリスク、景気悪化とインフレの併存リスクが強まっておりECBの舵取りは難しい。

来週の会合では利上げ見送りとの見方がやや優勢。ラガルド総裁が会見でいかなる方向性を示すかは重要だ。ECB内で利上げ慎重派が多数となれば、少なくともユーロ円相場での円安は抑制される。ドル円相場はドル独歩高がどこまで支えとなるか次第となる。

日本の通貨当局からは円安けん制発言が続いている。国内では円安、仕入価格上昇による経営破綻や廃業が散見され、また物価高により消費者の生活防衛から消費が低迷。このところ円安の悪影響が顕在化している。

こうしたなか、少なくとも投機的な円売りを抑制しようという当局の姿勢が明確となってきた。

市場では口先介入に反応して円を買い戻すなどの動きがみられ一時的に円高に振れるものの効果は限定的。介入を催促するように円安がじりじりと進んでいる。

150円を抑止の目途とするなら147円、148円、から介入するか、150円で達成感が生じた直後に実施し、連続して介入を実施して押し下げるか。水準としてはいつ介入が実施されても不思議ではない。

介入が実施された場合の効果は相応にありそうだ。昨年は9兆円超の円買い介入を実施した。このときは貿易収支が月額で2兆円を超える赤字となっており、それを吸収するのに手いっぱいだった。

それでも米長期金利の低下の援軍もあり、ドル円相場はドル高円安に転じた。

現状では、貿易収支は収支トントン。この面で需給は均衡している。それでも円安が進んだ背景は投機の円売りによるところが大きい。

ここで介入を実施すれば、ベースラインの円売り圧力が弱いなかだけに、投機の手仕舞いによる円高への修正は大きくなる可能性がある。

あとは材料がドル安円高方向についてくるか。米国の弱い経済指標、景気悪化、インフレ鈍化、などとともに米長期金利のピークアウト、低下がみえれば、介入は効きやすい。ドル円相場は自律反落する可能性が高いが、さらにその背中を押せば介入の効果はより少額で大きくなるだろう。

足元のドル高円安は主として米国景気見通しの改善、金利高止まり長期化観測、それによる長期金利の上昇。まずはここに変化があるか。変化がないとして、口先介入だけで凌ぐのか、実弾を投入するか。

昨年のように米国サイドの状況変化の機をみて実弾で追い討ちをかけるのか。市場にはドル円相場の高値警戒感も強まっており、経済指標や口先介入に敏感に反応している。なおも高値波乱が続きそうだ。

ただやや長めにみれば、欧州経済の不調、米国景気・インフレの鈍化、などでドル円相場のリスクはドル安円高サイドに傾きそうだ。

一方、ドル高円安が継続ないし、さらに上振れるリスクとしては、中国景気の悪化、原油価格の上昇高止まりを受けた日本の対外収支の悪化。再び貿易赤字が1兆円を超えていくようなら円先安感が強まる可能性があるので留意を要する。


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