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米国統計を受けた投機手仕舞いで下落
  • MRA商品市場レポート

2023年10月5日 第2558号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「米国統計を受けた投機手仕舞いで下落」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は、投機筋動向の影響を受け難い発電燃料の一角であるガス価格が上昇したが、その他の商品は軒並み水準を切下げる動きとなった。

注目の米ISM非製造業指数、雇用統計の前哨戦であるADP雇用統計の減速が確認されたことで、需給ファンダメンタルズの悪化観測が強まったことが背景。同時にドル安が進行しているが、いわゆる「悪いドル安」であり、積極的な買い戻しの材料にはならなかった。

また、昨日の米石油統計ではガソリン在庫の大幅な増加が確認されてRBOBが急落、クラック・スプレッドは過去5年の最低水準を下回った。ガソリン出荷は今年の7月の価格上昇以降、急速に減速している。価格上昇が需要を減じたこともあるが、米国の個人消費が減速している可能性を示唆するものだ。

引き続き今後の材料を整理するが、1.に関して非製造業が通常通り、製造業に時間差を以てやや減速する傾向が確認され、労働市場需給が緩和を始めていることも確認されつつある(JOLT求人を見るとまだ確定ではない)。

1.景気そのもの(製造業底入れと非製造業減速)2.金融政策・政府財政政策を受けた長期金利(それに伴うドル指数)動向3.不動産問題先送りを決めた中国景気(中期的に景気循環>構造問題となるのか否か、構造要因の影響が勝るのか)4.ソブリン・低格付企業のデフォルト5.Q323の企業決算動向

【本日の見通し】

本日は、昨日の弱めの米統計を受けた長期金利低下やドル安圧力を受けて、これまで売られてきたリスク資産に調整の買い戻し圧力が強まる展開が予想される。

ただ、景気減速、インフレ沈静化は中央銀行の第一目標であるため、インフレ沈静化が確認できるまでは、リセッションの可能性を意識しつつもタカ派のスタンスが維持されると考えられ、しばらくはリスク資産(特に景気循環系商品)価格は調整圧力に晒される展開が想定される。

その意味で、本日複数予定されている米連銀総裁講演は注目だろう。

・クリーブランド連銀総裁シンポジウムに参加

・ミネアポリス連銀総裁講演会で司会

・リッチモンド連銀総裁講演

・サンフランシスコ連銀総裁講演

・ルーマニア中銀政策金利発表

・ペルー中銀政策金利発表

・米週間新規失業保険申請 市場予想 210千件(前週 204千件)

・9月米チャレンジャー社人員削減数 前月 前年比+266.9%

【昨日のトピックス】

昨日発表された米雇用統計の前哨戦であるADP雇用統計は、全ての市場予想を下回り、米国の労働需給が緩和していることを確認する内容となった。

雇用者数の増減を企業の規模別に見ると、大企業が▲83千人、中堅企業が+72千人、中小企業が+95千人となっており、景気動向・労働市場動向で先行して人員削減を行いやすい大企業の雇用が減少を始めていることが確認されている。

また、転職者、求職者とも賃金上昇率の前年比上昇率は低下傾向が持続しており、この統計を見る限り労働市場の需給は緩和していると考えられる。

昨日のJOLT求人統計では求人数の増加が確認されており、この整合性は取れていないが、JOLT求人統計自体はアンケートの回収件数が多くなくぶれが多いとの指摘もあり、しばらく推移を見る必要がある。

同時に発表されたISM非製造業指数も53.6(市場予想 53.5、前月 54.5)と大幅に減速しており、その内数である雇用指数も53.4(前月54.7)と減速、需要の指標である新規受注も51.8(57.5)と大幅に減少している。

通常、需要の増加に合わせて雇用が増えることになるため、この統計を見てもこれまで好調だったサービス業の景況感が減速、雇用市場にもマイナスの影響を及ぼす可能性が高まっていることが確認されたと言える。

とはいえ、雇用関連統計は月々のぶれが大きいこともまた事実であり、日々発表される統計の内容を吟味する必要がある。ただ、遅ればせながらサービス業の景況感の減速がやや強まってきたと言えるのではないか。

明日発表の雇用統計の重用性はより高まることになるだろう(特に失業率・失業者数)。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は大幅に下落した。7月以降の投機主導の買いで価格が上昇する中、前日の統計改善を受けた金融引締め観測、それに伴う株の調整で投機の手仕舞い売りが入ったことが影響、サポートされると見られた50日移動平均線のサポートラインをあっさりと下抜け、一目均衡表の「雲」の上限でサポートされて引けた。

50日移動平均線のサポートラインを下回ったため、次の下限はBrentで83ドル程度(ほぼ雲の下限)となる。ここを下抜けすると7月前の下限であり、投機の買いが入り始めた6月末の水準である75ドルが意識されることになるが、新規材料待ちの状態。なお、上値はこれまでのサポートラインだた88.5ドルに。

また、発表された米石油統計では原油在庫が大幅な減少となり、中間留分供給不足で需給がまだタイトあディスティレートの在庫も減少したが、個人消費主体のガソリン出荷は低迷し、在庫が+6.5MBと記録的な増加となった。

7月以降の投機的な買いで原油・ガソリン価格が上昇する中でいわゆる「レーショニング」が発生、米国の個人消費の下押し要因となったようだ。

今回の在庫増加でガソリン在庫は一気に過去5年平均を回復、在庫日数に至っては、過去5年の最高水準を上回った。明らかに米国のガソリン需要は減速(=個人消費減速=景気減速)しているといえる。

なお、ガソリンのクラック・スプレッドが大きく潰れたため、今後ガソリンの増産は手控えられ、マージンがまだ厚い中間留分の生産が得率の変更で増加するとみられる(限度があるが)。結果、中間留分の価格も下落が予想される。

OPECプラスは想定通り何もできず。現状、サウジアラビアの原油輸出収益は、現在辛うじて過去5年平均を維持している状態だが、これ以上減産した場合、それ以上に価格が上昇する必要が出てくるが、景気減速下では難しいだろう。

しかし、一昨日の求人統計は改善、昨日のADP雇用統計は減速と、雇用関連統計は強弱が安定しておらず、まだ確定的なことは言えない状況。

弊社は米国の利上げが11月がピークであり、そこからの下落があると考えていたが、市場はこれをかなり早く折り込み長期金利上昇とドル高が進行している。

前四半期(Q323)の原油価格上昇は、明確に投機の買いによるものだった。これは米景気が底堅いことによる需要増加、OPECプラスの減産期間延長で需給がタイト化することで、「ドル高・原油高」が同時に進行したことによる。

しかし今回のFOMCでは、米景気が強く、十分なインフレの沈静化がない中で原油価格が上昇を続け、インフレを助長しかねない製造業の景況感が底入れしたことを受けて、引締めバイアスを強める方針を示したことで、これまで買いを入れてきた投機の手仕舞いの動を強めたと言える。

結果、11月頃からの下落を想定していたものの、そのタイミングが早まる形となった。

10月時点の価格見通し変更で、来年前半に掛けて景気が減速・底入れし、その後上昇する」としているが、原油価格に影響が大きい米国の景気見通しについて、FRBは2024年後半に底入れしてその後緩やかに回復するとしており、市場コンセンサスもQ324の景気底入れを想定し始めている。

足下で原油価格動向の材料とされやすい中国の景気も、循環的な回復や財政出動による景気底入れが恐らく来年の春頃にみられると予想されるため、年後半の米景気減速による価格下落を抑制すると考える。

その結果、原油価格はFOMC前後での乱高下はありつつも、Q423~Q124に掛けて高止まりするが、Q324まで水準を切下げた後、Q424から上昇基調に転じるシナリオを10月時点の原油価格見通しのメインシナリオとした。

DOEの需給見通しを元にした回帰分析の結果は、2023年のBrent価格は84.0ドル、2024年が85.3ドル程度となる。

2024年もOPECプラスが減産を継続し、価格上昇にもかかわらず需要が減少しなければ、2023年は84.3ドル、2024年は89.9ドルとなる。内訳的には、H124の平均価格は92.3ドル、H224が87.5ドルが見込まれる。

このシナリオだと、2024年に再びインフレリスクに晒されることが予想されるが、年初の高金利維持で、年後半に掛けてそのリスクは低下することになるのではないか。

なお、11月にも翌年度見通し作成のために再度変更を行うため、直近のデータ(特に景気の先行き見通し)を反映して、シナリオは変更されることがある。

現在想定しているリスクシナリオは、引締め加速による景気減速が年内~年明けに発生して価格が下落、その後上昇する展開(9月末まで想定していたメインシナリオ)。

FRBの政策方向転換により、11月にリリース予定の2024年商品市場動向見通しでは、従来のメインシナリオに戻る可能性も有り得る。

ロシア情勢を踏まえた原油価格の「想定されるレンジ」は以下の通り。

現在は 3.のうち、「OPECプラスが減産」した状態。

<シナリオ別原油価格見通し>

1. ロシアの禁輸措置が厳格に守られ、戦闘も継続  産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)する
Brent 75-95ドル/80-110ドル

2.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しない
Brent 65-90ドル

3.2.の状態で産油国(非OPECプラス・OPECプラス)が増産/減産する
Brent 65-80ドル/80-100ドル

4.ロシアがウクライナから撤退・停戦上記見通しが各々▲5ドル程度低下

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

5. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)
Brent 60-90ドル

6. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)
Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

Q323 需要の伸び横這い・生産調整継続(→高値維持)グローバル・リセッション、危機顕在化の場合(↓↓)
Q423~Q124 欧米の景気減速による需要鈍化・生産調整継続(→高値維持)
Q224~Q324 実質金利プラス維持による景気の減速(サービス業)製造業の循環的な回復が下支え(↓↓)OPECプラス減産維持の場合(↓)Q424以降 需要回復・中国の正常化進捗(↑)OPECプラス減産維持の場合(↑↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

9月26日時点のWTIの投機筋ポジションは、ロングが+26,763枚、ショートが+5,134枚と、強気ポジションを維持。

Brentはロングが▲7,160枚、ショートが+14,829枚と、こちらも強気ポジションを維持。

本日は、これまで▲10ドル以上下落してきたこと、米金融引締め加速観測がやや後退したことから、いったん買い戻しが入る展開が想定される。

足下、原油価格に対する説明力が高苦なっている米週間新規失業保険申請は増加が見込まれており、価格上昇を抑制の公算。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は上昇した。温暖な気候を材料に下落してきたが、今月後半に気温が例年を下回る見通しが示されていることが買い戻しを誘った。

ガス供給には恐らく大きな問題はないものの、価格のリスクは残る状況。これからは気温がガス価格を決める上での重要なファクターとなる。

今年の冬に関しては、今のところ、大きなLNGの輸出ファシリティが大きな障害を受けなければ調達には問題がなさそうな状況になっている。

欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続2.LNGターミナル・ガス田・船舶の不慮の停止3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.季節要因・気象状況

1.はロシアのLNGカーゴはまだ取引されており、スポットカーゴ価格の上昇要因にはならなくなってきた。ロジカルには西側諸国が脱ロシアを完全に完了するまでは、気温の変化や政治的なイベントによって季節的に価格が高騰するリスクは残る。

弊社のシミュレーションでは、今冬の欧州のガス調達は、ロシアが仮にガス輸出を完全に停止したとしても凌げる見通し。

ただし、在庫が減少すれば翌年以降の調達に影響が出る(数量確保の問題と、価格上昇の問題両面)ため、脱ロシアの完全完了までは上昇リスクは無視できない。

弊社の試算では欧州が完全にロシア産ガスを排除(第三国経由でもロシア産のLNGを購入しない状態になる)できるのは2027年頃。ロシア産のLNGの輸出が阻害されなければ2025年頃。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

今のところロシア産ガスの供給は実質的に制限されておらず、LNGの形で欧州諸国も購入を続けている。ガスがLNGに置き換わっただけとも言える。

しかし、脱ロシアが完了した場合、ロシアがこれまで供給してきた西側諸国向けのガスが「浮く」ことになる。2022年、欧州向けにロシアが削減したパイプライン輸出量は708億立方メートルで、総輸出量9,685億立方メートルの7.3%に及ぶ。

これを他地域の需要増加で補うことは恐らく不可能であり、FID済みのプロジェクトも見直しせざるを得なくなる可能性がある。

2.は、異常気象発生時にはインフラに障害が出る可能性が高まる。米海洋大気庁の見通しでは、大西洋でのハリケーンの発生頻度は例年を上回る見通し。

通常、エルニーニョ現象が発生したときは大西洋の海水温が低下してハリケーンの発生・勢力が弱まるが今年は例外的な見通しとなっており、北米→欧州のLNG輸送や輸出ファシリティへの影響は無視できないリスクに。

また、異常気象の影響による干ばつでパナマ運河の水位が低下しており、LNG輸送に障害が発生、スポット価格が上昇する可能性が出てきた。

3.4.は顕在化している。しかし3.に関しては、ロシアもこれ以上ガス供給を削減することは難しい。

ロシア・ウクライナ戦争は越冬して来年に持ち越される可能性が高まる中、この冬にロシアがなりふり構わない対応をしてくる可能性は否定できない。

それでもガス在庫の水準は高く、仮にロシアが輸出を完全に止めても今冬の調達には問題がなさそうな状況(ただしこの場合、供給が足りていても価格は上昇する)

5.は2.とも関係するが、今年の冬はエルニーニョ現象が見込まれ、通常であれば暖冬となりやすいため、価格上昇方向のバイアスは強まらないと予想される。

米メキシコ湾発のLNGのタンカーレートは日本向け・欧州向けとも上昇している。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米天然ガス価格はほぼ変わらず。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物市場は小幅に上昇。TTFの上昇が材料に。

現在のJLCの水準は12.05ドルであり、現在のスポット価格はこの水準を上回っている。

その他のアジアの国の長期契約ベースの価格は恐らくJLCと大差がないと考えられ、今年の冬場の需要期の価格はほぼJLCの水準で推移している。

今年は回避されているが、豪州は国内供給が充分でない場合、通常7月1日まで、遅くとも10月1日までにガス不足の懸念を通知し、実際に国内供給が不充分と判断された場合、次の1年間は輸出が制限される(ADGSM)。

この条項が発動された場合、スポット価格の上昇リスクとなるため、意識はしておきたい。

また、サハリン2の生産能力の低下、供給の減少はかなり前から指摘されているが、今のところ顕在化していない。多くの必要な部材は中国などを経由してロシアにもたらされている可能性があり、実は長期の供給リスクは懸念ほどではないかもしれない。

8月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比+22.7%の1,086万トン(前月+18.5%の1,031万トン)と先月同様、同じ時期の過去5年の最高水準を上回っている。

まだ統計が発表されていないが、国内天然ガス生産の減少や、気温上昇による発電向けの需要増加が輸入を高水準に維持している可能性がある。

8月のパイプラインベースの輸入は前年比+10.4%の456万トン(前月+12.4%の445万トン)と過去5年の最高水準(413万トン)を大きく上回っている。

8月のLNG輸入は前年比+33.4%の629万8,000トン(前月+23.7%の585万9,000トン)と前月から伸びが加速し、同じ時期の過去5年の最高水準(665万2,000トン)に迫った。

8月の中国の天然ガス生産は+6.5%の1,330万9,000トン(前月+8.2%の1,360万3,000トン)と同じ時期の過去5年の最高水準を上回っている。

※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

9月24日時点の日本の大手発電業者のLNG在庫は156万トン(過去5年平均249万2,700トン、大手発電業者在庫の過去5年平均は206万トン)と、いずれの集計でも過去5年平均を下回った。

速報性のある大手電力以外の在庫も含めた水準と比較すると、過去5年の最低水準(184万7,200トン)も下回っている。

夏が例年よりも暑い猛暑で電力需要が増加したことに加え、原子力発電所の再稼働、大手発電業者のLNG調達は、自社の顧客を対象にした数量しか行われない。これは新電力の顧客の需要データが開示されないため、他社分まで調達することができないため。

仮に冬場が寒くなった場合、再びガスや石炭不足となり価格が上昇する可能性はある。通常過不足はスポット(JKMベース)で行い、電力のスポット価格はJKMの影響を受けるため、再び冬場の電力価格が上昇するリスクは無視できない。

また、今年はエルニーニョ現象の影響で太平洋側は台風の発生頻度・勢力が強まる可能性がある。この場合、輸送に影響が出ることも考えられるため、エルニーニョ現象が発生しているものの在庫水準の低さを考えると、冬場の価格上昇リスクも無視できない。

JEPXベースで調達して大手電力会社の価格で電気を販売している業者、JEPXベースで電気を調達している消費者はこのJKMのリスクを抱えることになる。

本日は、欧州の気象見通し変更に伴う需要の増加が価格を押し上げる見込み。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP・東京ガス提示の数値を使用している。 LNG1トン=2.19立方メートル(液体)=1,360立方メートル(気体)= 46MMBtu LNG船1隻 147,000立方メートル=67,000トン 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル=7,757トン 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップ先物は大幅に続落。主要輸入国の中国が国慶節入して海上輸送市場での重要な買い手が不在となった影響が継続している。

現在のガス価格(JKM)との関係性を元に回帰分析を行うとNEWC価格は150ドル、±1標準偏差で80~220ドル程度までが統計的に説明可能なレベル。

期先の価格は現在の生産コストに近いことを考慮すると、期先の価格が155~165ドル程度まで再び上昇しているため、155~220ドルが説明可能なレンジであり、現在のスポット価格はやや安く、足下の需給が緩和していることを示唆。

2023年~2024年は例年と例年並みの冬だとした場合、記録的な暖冬だった昨冬と比較して今冬は昨冬よりも寒い見通しであることを考えると、年後半に向けての価格上昇リスクは排除できず、実際、冬場の期先の価格は高い。

ロシア問題が継続する以上、欧州が完全に脱ロシアを達成することが期待される2027年(早ければ2025年、現実的には2026年)までは、ピークシーズン中の価格上昇リスクはつきまとう。

今年のアジアの夏は例年よりも暑い夏になる見通しであり、北半球の夏場の冷房需要向けの日中の石炭需要で再び上昇基調に転じるだろう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

8月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比+50.5%の4,433万3,000トン(前月+66.9%の3,926万トン)と過去5年レンジを大幅に上回る水準を維持した。

ガスも同様であるが、中国の記録的な気温上昇の影響で、発電燃料需要が引き続き増加しているためと考えられる。2000年以降、エルニーニョ現象が発生しているときは発電燃料の価格は下がる傾向が強いが、異常気象が発生しやすい気象状態であることは意識しなければならない。

国別では7月は豪州からの輸入が増加している。これにより、豪州の輸入シェアは29.5%(前月23.1%)と上昇した。しかし直近12ヵ月の累計シェアはロシアが1位で0.6%、ついでインドネシア(36.2%)、豪州(13.0%)となった。

8月の中国の石炭生産は、前年比+3.0%の3億7,902万トン、1,222万6,000トン/日(前月+0.9%の3億7,128万トン、1,197万7,000トン/日)と伸びが加速した。

8月の中国の電力消費量は前年比+4.0%の8,861億kwh(前月+6.8%の8,888億kwh)と伸びが鈍化した。気温上昇が一巡したことによる、季節的な減少。

今後、輸入需要の増加があるかは発電需要に依拠するが、夏場が終了に向かっていることから徐々にフェードアウトすると考えられる。

本日も、最大の買い手が不在の中、軟調な推移を予想。

◆LME非鉄金属

LME非鉄金属市場は続落した。米統計が悪化したことでドル安が進行したが、最大の買い手である中国勢が不在の中、水準を切下げる動きが続いている。

ここに来て、価格の動きが乖離していた原油価格と非鉄金属価格の動きが同じになってきた。

しかしこれは、ドル高が想定以上に進んでいるため、これまで「需給ファンダメンタルズ>金融要因」だった原油が「需給ファンダメンタルズ<金融要因」となったことによるものであり、米中対立によるデカップリングの影響が解消されたわけではない。

非鉄金属はドル高進行が同様に価格を下押しするものの、2024年に中国の経済対策の実施や循環的な回復、脱炭素の動き継続で上昇に転じるとみている。

ただし、最大消費国である中国の景気回復ペースが、構造的に以前想定していたよりも緩やかになると予想されるため、上昇ペースはやや緩慢なものになると考えている。

原油は米景気が恐らく来年前半はまだ好調だが、年後半に掛けて減速するため原油は上昇後下落、2024年後半から再び上昇という展開が軸となるが、金融政策の影響が大きくなれば、従来の見通し(原油価格は年末~来年初に掛けて調整、その後上昇)、に修正される可能性がある。

弊社は2024年見通し作成のために11月にも見通しを修正するが、特に各国のマクロ経済見通し如何では、価格パスは変更される可能性がある(FRBと同様、引き続き追加のデータを精査していく必要があるため)。

中国政府は住宅取得頭金の引下げや、既存住宅ローン借り入れ客の金利引下げも容認するなどの対策を実施しており、市場では一定の評価を得た。

財政上のゆとりがないことから当面、政策金利の調整で凌ごうとする可能性が高いが、問題は余剰在庫の解消であるため、金利操作だけでは状況を好転させるのには不充分である。しかし同時に時間を掛けて不良債権や在庫処理を行う必要もある。

数量ベースでの把握が困難だが、金額ベースの中国製造業の在庫循環図は調整局面の初期にあり、まだ在庫の調整が必要な状況。

通常のサイクルであれば、在庫の調整には1年程度掛るが、共産党に支配されている国であり、強制的な在庫調整も有り得るためそこまで時間は掛らないと考えられる。

中国政府が何の対策もしない、ということは考え難いが常識的に考えれば、

・在庫が積み上がっているこのタイミングで経済活動を刺激すれば、さらなる在庫の積増しになってしまう可能性があること

・予算的な問題

を考えるとある程度在庫の調整が進み、かつ、予算措置が終了してからと考えるのが妥当ではないか。

現在、不動産の余剰在庫を解消するため、住宅取得の制限を緩和しているが、その実施も地方政府の裁量に委ねられているため、急速に状況が改善するには至っていない。

この危機を乗り切ることができれば、長期的には脱炭素、脱ロシア、中国・インドのW人口ボーナス期(中国は近代化仕上げの10年)、東西の緩やかな分裂に伴うサプライチェーン再構築のためのインフラ投資継続、といった材料を考えると、鉱物資源需要は増加して価格には構造的な上昇圧力が掛かると考えるのが妥当だろう。

ただし、この危機を乗り切ることに失敗し、中国政府が想定以上にこれまで積み上がった余剰生産能力の解消に手間取った場合、景気は長期低迷、いわゆる「日本化」が10年単位で起きる可能性が高い。

さらに労働人口がピークアウトし、かつ、米国の制裁によって先端分野の発展が阻害され生産性が低下、将来的にはインフレをもたらしソ連型の国家崩壊、というシナリオも長期的には有り得る話だ。

本日は、目立った手掛かり材料に乏しく、ドルがやや調整的に売られるものの、買い手不在の中で現状水準で軟調ながらもみ合うと考える。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落 、大連は休場、豪州原料炭スワップ先物は上昇、大連原料炭価格は休場、上海鉄筋先物は休場だった。

9月の中国鉄鋼業PMIは総合指数が45.8(前月45.2)と回復した。新規受注が44.5(42.9)と政府の不動産セクターテコ入れ策で回復したことが影響したが、輸出受注は48.1(60.1)と急減速、生産も45.0(46.1)と低下しており、決して鉄鋼業を巡る環境が改善したとは言い難い。

10月は鉄鋼需要の最盛期であり、中国政府の対策を受けて需要の上振れ余地はある。中国政府の対策で不動産セクターに動きがみられ、建設業PMIも56.2(53.8)と回復がみられる。

しかし、中堅企業以下の回復状況は製造業PMIをみるに緩慢であり、回復は緩慢な物になると予想される。

ただ、今年の太平洋地域はエルニーニョ現象の影響で台風の発生頻度が高く、勢力も強いとされること、不動産の不良在庫・余剰在庫の解消が進まなければ本格的に回復するのは難しいことから、やはり回復には時間が掛かるだろう。

結局。バランスシート不況にあると考えられる中国がどの程度財政出動を行い、民需の不足をカバーできるかが景気回復のタイミングを図る上で重要になるが、恐らく年末の中央経済工作会議まで待つ必要があると考えられる

週間の鉄鋼製品港湾在庫統計は、鉄鋼製品在庫は▲31万5,000トンの1,253万3,000トン(過去5年平均 1,292万8,000トン)と過去5年平均を下回っているが、かなり水準は過去5年平均に近づいており、鉄鋼製品価格の下押し要因となっている。

鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比▲295万トンの1億1,065万トン(過去5年平均 1億3,238万トン)、在庫日数は21.8日(▲0.6日、過去5年平均27.7日)。鉄鉱石は在庫は日数ベースでも、数量ベースでも過去5年平均を下回っており、鉄鉱石の需給はタイトで一定の在庫積み増し需要が存在する。

主要原料炭の輸入港である京唐港の原料炭在庫は+12万トンの180万トン(過去5年平均 147万4,000トン)、在庫日数は+0.4日の6.6日(過去5年平均 5.8日)と、原料炭の需給は再び緩和している。

8月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲28.1%の63万9,770トン(▲13.9%の68万トン)と低迷が続き、同じ時期の過去5年の最低水準を下回る状態が続いている。

8月の中国の鉄鋼製品の輸出は前年比+34.7%の828万1,800トン(前月+9.6%の730万8,400トン)と過去5年の最高水準を大きく上回った。同時に鉄鋼製品輸出額は前年比▲30.6%の67.1億ドル(前月▲40.9%の63.4億ドル)と金額は前月から増加している。

しかし、輸出数量の増加によるものであり、トン当り単価は810ドル(前月867ドル)と下落が続いている。引き続き中国が安売りで余剰在庫の解消に努めていることを示唆するもの。

7月の中国粗鋼生産は前年比+11.5%の9,080万トン(前月+0.4%の9,111万トン)と増加し、過去5年平均を上回った。

これまで値引きを行って輸出を促進してきたが、それでも在庫解消に時間が掛っているため生産調整が進むかと思われたが、前年・前月よりも生産は回復している。

中国政府の需要刺激策ヘの期待と、過去5年平均を下回っている鉄鋼製品在庫の水準を受けて、9月・10月の需要期に備えた在庫積増しが行われていると考えられる。

本日も、最大の買い手である中国勢不在の中、水準を切下げる展開。

◆貴金属

昨日の金価格はほぼ変わらず。米統計の減速を受けた過剰な金融引締め観測の後退が実質金利を押し下げたことが価格を押し上げたが、利益確定の動きがリスク・プレミアムを押し下げたため。銀、PGMも軟調地合を持続した。

足下、金価格の構成要素のうち、リスク・プレミアムの占める比率が高まっている。金リスク・プレミアムの上昇要因の主なところは、

1.米利上げによる信用不安の高まり(低格付企業・新興国)

2.ロシアに対するドル決済禁止制裁を受けた、準備金におけるドルから金ヘのシフト

3.ロシアのウクライナ侵攻を切っ掛けとする有事発生ヘの備え

あたりだろう。これらと同じ事象は、ニクソン・ショック~プラザ合意~アジア危機収束まで30年近く続き、金価格に占めるリスク・プレミアムのシェアが高止まりした。

2019年基準で算出した現在のリスク・プレミアムのシェアは55%と、ほぼ上記の期間と同様の状況になっており金利水準以上にその他の要因が金価格の形成に影響を与えていることが確認できる。

現状を理解する手助けとなるため、あえて実質金利・信用リスク・その他、に分離した場合、実質金利部分が45%、信用リスク要因が20%、その他の要因が35%となった(2019年データを元にした分析結果に変更)。

直近1年間の説明力を相関係数で確認すると、最も金価格に対する説明力が高いのがドル指数で▲0.89、次いでFF金利で0.84、リスク・プレミアムが0.77程度、期待インフレ率(▲0.49)、実質金利(▲0.18)と、実質金利は現在の価格形成に影響を与えていない。

ドル指数はFF金利の影響が大きいため、今後の金価格を占う上ではやはりFF金利動向が重用になる。

この5年間のデータを元にした分析では、FF金利±1%の変化で、実質金利は±0.5%変化、金価格は±50ドル変化し、リスク・プレミアムは±150ドル変化する。

年内利上げは、年内、あったとしてもあと1回と見られているため、金の基準価格は▲13ドル、リスク・プレミアムは+38ドルの上昇圧力となり、差し引き+25ドルの上昇となる。

市場予想では2024年は▲0.5%程度のFF金利引下げが見込まれているため、金の基準価格は+25ドル程度の押し上げ要因となり、リスク・プレミアムは、▲75ドルの低下要因となるため、仕上がりで▲50ドルの価格低下となる。

現在の金価格は1,820ドルまで低下しているため、これを基準とすると1,775ドル程度までの下落があると見ている。

しかし、直近3ヵ月にデータ期間を限ると、最も説明力が高いのが実質金利で▲0.84、次いでドル指数で▲0.76、FF金利▲0.55、期待インフレ率▲0.25となり、従来の実質金利が金価格を決定する状態に戻っていることがわかる。

当面、実質金利動向は注視する必要があろう。

銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。

月次の金銀レシオはボリンジャーバンドの中心でもみ合っている。足下の米統計の減速を考えると景況悪化の可能性はあり、再び上限を目指す展開になるのではないか。

仮にボリンジャーバンドの下限だと75倍、上限ならば90倍程度が目処になるが、金を1,900ドル程度とすると21.1~25.33ドルが現在取り得る範囲といえる。

本日は、明日の米雇用統計の発表を控えて様子見気分強く、現状水準を維持すると考える。

◆穀物

シカゴ穀物市場はまちまち。トウモロコシは原油の下落に押され、小麦はウクライナからの輸出再開報道を受けて下落。大豆はドル安がこれらの影響を相殺して小幅高となった。

足下、ハーベスト・プレッシャーと、エルニーニョ現象が発生している時の価格下落、ドルが再び修正高となっていることを織り込む形で下落しているが、価格下落による割安感からの買いに支えられている状況。

長期的な話だが、今回地中海を襲ったハリケーン(ストーム・ダニエルと命名)の影響で中東北アフリカ地域に降雨がもたらされたことは、先々の穀物供給に影響を及ぼす、サバクトビバッタの越冬を可能にし、来年以降の供給減少のリスクを高めることが懸念される。

尚、Locust Watchでは中東・北アフリカ地域でのバッタの大量発生は確認されていない。

本日も、ハーベスト・プレッシャーとドル高、割安感からの買いで現状水準でのもみ合いを予想。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・米国債の格下げリスク(残るMoody'sの格下げリスク)、米国債格下げの動きが連鎖して、金融機関の格下げが加速、信用不安に繋がる場合。

・日本政府の財政規律の欠如、成長期待への失望から円が暴落するリスク。

・景気が想定よりも早く底入れしてインフレが再燃、あるいは景気を刺激する目的で早期の利下げが行われ資源価格が高騰、各国中銀の金融政策が再びタカ派の状態になった場合(リスク資産価格の上昇→下落リスク これは顕在化している可能性)

新興国の財政破綻、先進国も含めた債券の格下げによる金融機関・ファンドの突発的な損失拡大による信用収縮、低格付企業の破綻や、市場変動性の高まりによるファンド破綻などもリスクに(米銀格下げ検討は始まっている)。

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。暴動激化で中国が分裂するリスク(極めて可能性の低いリスク)。

中国の構造的成長が終了、過剰債務や不動産問題を抱え、中国が「日本化」するリスク(この場合長期低迷で工業金属やエネルギーなどの景気循環系商品価格の下押し要因となる可能性)

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。

また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、モディ支持率の低下による近代化投資の遅れ、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

・西アフリカ・北アフリカで、フランスが旧宗主国である国の反仏感情が高まり、武力衝突が発生して域内治安が悪化する場合。

欧州に難民が流入するほか、地域によっては(リビア、アルジェリア、ナイジェリアなど)原油・ガス供給に影響が及ぶ恐れ。

◆本日のMRA's Eye


「金価格 信用リスクの高まりが支えも実質金利・株要因が下押し」

高値を維持してきた金価格だが、ここに来て急落している。9月FOMCでかなり強気な見通しをFOMCメンバーが示したこと、2024年の政策金利見通しを引き上げたことが、金価格に対する説明力が高い(高かった)実質金利が上昇したことが影響したと考えられる。

金価格との説明力が高かった実質金利の説明力は低下し、実質金利で説明可能な水準を大きく上回って推移している。

あえて金価格を1.実質金利、2.低格付企業CDS、3.その他、の3つの要因に分解すると、して影響度合いを考察した。

その結果、米国の利上げが開始された2022年3月末と直近を比較した場合、実質金利要因のシェアは▲45.2%の低下、低格付企業要因は+12.9%の上昇、その他の要因は+32.4%の上昇となった。

今年6月末との比較では、実質金利のシェアが▲10.3%、低格付企業要因が+6.7%の上昇、その他の要因のシェアは+3.7%の上昇だった。

これは、9月FOMC以降、この流れにやや変化が見られ、実質金利の上昇が基準価格を押し下げる一方、金利上げを背景とするクレジット・リスク要因が価格を押し上げ、その他の要因は価格を押し下げている。

金利上昇によるクレジット・リスクの高まりに備える動きと、株価の下落の損失を埋める動きが同時に発生しているとみられる。

ただし、政府・中央銀行保有の金は

1.有事が発生して金を売却しなければならない2.金価格の下落が進み、外貨準備の損失発生を回避しなければならない

といった状態にならなければ売却は積極的に起きないと考えられ、価格を最終的には下支えされると考えられる。

今年最も金準備を積み増したのは中国(+103.0トン)で、米中対立からドル回避の動きが強まったとみられる。

次いで国際都市であるシンガポール(+71.6トン)で、やはりドルの評価減を意識したと考えられる。

3位はポーランド(+48.4トン)、4位はインド(+10.1トン)と、いずれもロシア・ウクライナの戦争を受けた有事の備えとみられる。

最も金準備が減少したのがトルコ(▲102.0トン)で、トルコリラ下落を防衛するため、トルコリラ買い・金売りの取引が行われた模様。

次いでカザフスタン(▲38.1トン)となったが、ロシアの軍事侵攻の影響による財政状況の悪化を補う為とみられる。

弊社は9月下旬に10月見通しとして金価格の見通しを変更したが、FRBの利上げがほぼなく、来年の利下げは5月ころから発生、利下げが信用不安の低下、ソブリンリスク発生の可能性を低下させると想定していた。

そのため、2024年は実質金利が低下して金の基準価格を押し上げるものの、リスク・プレミアムの剥落の影響がこれを上回るため、Q324からの金価格下落を想定していたがそれよりも遙かに早いタイミングでの下落となっている。

現在の価格水準は7月に想定していた変更前の価格見通しにほぼ近く(Q423が1,900ドル、Q124が1,880ドル)この状態だと11月リリースの2024年度見通しで再度、水準を変更せざるを得ないかもしれない。


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