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米統計まちまち エネルギーは上昇・金属は下落
  • MRA商品市場レポート

2023年9月1日 第2534号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「米統計まちまち エネルギーは上昇・金属は下落」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は、エネルギーセクターが総じて堅調な推移となったが、非鉄金属などの金属セクターは軟調な推移となった。

エネルギーに関しては最大消費国である米国の経済統計が、さほど悪くなかったことを受けて目先の需要減少観測が後退して上昇した。

米国の状況を簡単にまとめると、「雇用情勢はまだタイトであるがやや減速しており、インフレも減速しているが高い水準を維持、結局高金利政策は継続せざるを得ない。ただし景気が後退している訳ではないため、景気循環系商品価格にはプラスに作用」ということになる。

一方、金属セクターは最大消費国である中国の製造業PMIが底入れの兆しを見せたが、非製造業PMIが悪化、最終消費の弱さを意識させる内容だったことが背景。

中国の状況を簡単にまとめると、「雇用情勢は悪化しており、製造業や不動産業は余剰在庫を抱えている状態であり、政府は金利引下げなどの対応が必要になっているが、バランスシート不況下では政府の財政出動が必要であり、その財源が乏しいため様子を見ざるを得ない」となるだろうか。

また欧州はこれまでインフレに対処してきたが、その沈静化が道半ばであるものの景気が減速、スタグフレーションになりつつある。

日本に関しては、鉱工業生産の減速をみるにやはり製造業の景況感は悪化、サービス業もそろそろ鈍化の兆しが見え始めた、という感じだろうか。

【本日の見通し】

本日は、米雇用統計の発表を控えて、アジア~欧州時間は調整取引が主体となろう。エネルギーは(流動性の問題から投機対象となり難い発電燃料を除き)軟調、金属セクターは上昇、という形になるのではないか。

その後は雇用統計次第。弱い統計は金融引締め観測を後退させ株などのリスク資産価格の上昇を映じてファイナンシャルな面で商品価格を押し上げようが、景気循環系商品、特にエネルギーの需要減少観測を強めるため、上値も重い。

本日発表予定の統計やイベントで注目は以下の通り。特に雇用統計とISM製造業指数に注目している。

・アトランタ連銀総裁討論会に参加。

・クリーブランド連銀総裁講演。

・8月米雇用統計 非農業部門雇用者数 市場予想 前月比+17万人(前月+18.7万人) 失業率 3.5%(3.5%) 平均時給 前月比+0.3%(+0.4%)、前年比+4.3%(+4.4%) 労働参加率 62.6%(62.6%)

・8月米ISM製造業景況指数 47.0(46.4)

【昨日のトピックス】

昨日発表された8月の中国製造業PMIは49.7(市場予想 49.2、前月 49.3)と市場予想、前月を上回り数値としては3ヵ月連続の改善となった。中国政府による貸出金利引下げや経済対策実施への期待が、先行きの見通しを若干明るくしている。しかしそれでも閾値の50は下回っている。

統計の内訳を見ると、新規受注は50.2(49.5)と改善、輸出向け新規受注も46.7(46.3)と改善している。国内は政府の対策効果が徐々に表れているが、海外向けは閾値の50を下回っておりまだ回復したとはいえない。

中国製造業PMIは新規受注、生産、雇用、納期(調整項目)、在庫の主要5指標を元に算出されているが、前月からの変化による「寄与度」を見ると、生産の寄与度が+0.42(前月▲0.02)、新規受注+0.21(+0.27)、雇用▲0.02(▲0.04)、在庫+0.02(+0.08)と、新規受注が回復し、生産も回復している。緩やかに改善バイアスが掛っているものと考えられる。

需給状況の指標である新規受注在庫レシオは完成品が1.064(1.069)、原材料が1.037(1.027)と先月と生産の回復による完成品の積み上がりが最終消費の需給を緩和している。今後、このまま完成品在庫が積み上がる中で、新規受注の回復がなければ、再び在庫調整を余儀なくされるだろう。

規模別に見ると大企業(50.3→50.8)、中堅企業(49.0→49.6)、中小企業(47.4→47.7)といずれも改善傾向にあり、対策の効果が顕在化しているようだ。しかし大企業以外は好況に至っていない。

製造業の場合、余剰在庫を海外に販売するという選択肢があるため、人民元安誘導を行っていた(先月変更)こともあって在庫の解消が進んでいるようだ。

恐らく、本確的な回復には不動産セクターの問題解消が必要条件になるが、建設業を含む非製造業PMIは51.0(市場予想 51.2 前月 51.5)と市場予想、前月とも下回った。

内訳を見ると新規受注が減速(48.1→47.5)、輸出向け新規受注は小幅に改善(47.7→47.9)しているが閾値の50は上回っていない。本格的な回復にはまだ時間が掛ろう。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は上昇した。欧州の統計悪化でドル高が進行したものの、米統計は雇用関連統計が再び息を吹き返したこと、物価が高いながらも落着いていることから「まだ景気後退していない」として物色される流れとなった。

通常通りであれば、これまでの利上げの影響で個人消費にも影響がでてファンダメンタルズの弱さ>金融引締め終了期待、となり原油価格は調整、景気減速による悪いドル安が発生、その後緩和効果などで景気が底入れ、価格は上昇という展開になると予想される。

しかし、仮に市場の期待しているように年後半に景気がリセッションせず、本当に底入れするならば、原油価格はさらに上昇する可能性がある。

実際、サウジアラビアが減産を来年まで延長することがあれば、需給バランスは2023年が▲15万バレル、2024年は▲80万バレルの供給不足になる。

これは脱炭素の影響でその他の地域の増産が期待通りではないことが影響している。

この場合は2024年に再びインフレリスクに晒されることが予想されるが、どうなるかは逐次発表されるデータを見ながら判断せざるを得ない。

OPECプラスは2024年も減産継続、サウジアラビアが自主的に▲100万バレルの追加減産を行うことで合意、ロシアも自主的に▲50万バレルの輸出削減を決定した(詳細は以下の通り)。

しかし、景気が減速する局面では減産による価格押し上げ効果は限定され、「価格下支え効果をもたらす」と整理した方が正確だろう。

問題は早ければ今年の年末、遅くとも来年6月頃からの価格上昇が、この減産の影響によってかなり顕著になる可能性がある点だ。

 OPEC23ヵ国 昨年11月から▲200万バレル
 サウジなど8ヵ国 5月から▲116万バレルの自主減産
 ロシア ▲50万バレルを3月から自主減産
→合計▲366万バレルの減産を2024年一杯実施

 サウジ 9月も▲100万バレルの追加減産

8月22日時点のWTIの投機筋ポジションは、ロングが▲8,684枚、ショートが▲947枚と、弱気ポジションを維持。

Brentはロングが▲11,141枚、ショートが+1,823枚と、弱気ポジションに転じた。

今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。

現在は 3.のうち、「OPECプラスが減産」した状態。

<シナリオ別原油価格見通し>

1. ロシアの禁輸措置が厳格に守られ、戦闘も継続  産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)する
Brent 70-95ドル/75-100ドル

2.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しない
Brent 65-90ドル

3.2.の状態で産油国(非OPECプラス・OPECプラス)が増産/減産する
Brent 60-80ドル/70-90ドル

4.ロシアがウクライナから撤退・停戦上記見通しが各々▲5ドル程度低下

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

5. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)
Brent 60-90ドル

6. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)
Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

Q323~Q423 需要の伸び減速・生産調整(→)グローバル・リセッション、危機顕在化の場合(↓)
Q124~Q224 需要減速底入れ・需要回復期(↑)OPECプラス減産維持の場合(↑↑)
Q324以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産)(↑)OPECプラス減産維持の場合(↑↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

本日は、雇用統計、ISM製造業指数を控えていったん利益確定の売りに押されると考える。弱めの統計が出てもしばらくは金融要因>需給ファンダメンタルズ要因で堅調、強い統計の場合は下落すると考えられる。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は上昇。シェブロンのストライキの影響が不透明であるものの、域内の景気減速観測が価格を押し下げた。

先進国である豪州での問題であり、仮にストライキが行われても新興国のような大規模な暴動に繋がって生産・輸出設備が毀損するという事態にはなり難く結局最終的には下落に転じると予想される。

弊社の直近のガス在庫動向シミュレーションでは、ロシアの輸出がキャパシティの20%を維持できれば、ガス供給は需要が仮に+5%増加しても足りるとの結果であるが、2025年以降、契約が継続しない場合、最悪20%の稼働がさらに低下し、トルコ向けのパイプラインのみ稼働することが予想される。

また、ロシアのガス供給が全て停止したとしても需要を過去5年平均の水準から▲5%以上削減すれば足りることになる。今のところEUは来年3月まで▲15%の削減を努力目標としているため、達成の可能性は高い。

ただし、上記のリスクシナリオ(在庫減少)が顕在化すれば、TTF価格は上昇し、延いてはJKM価格の上昇要因となる(供給が足りても在庫減少で価格は上がる)。

また、在庫が減少すれば翌年以降の調達に影響が出る(価格が上昇する)ため、脱ロシアの完全完了までは上昇リスクは無視できない。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続2.LNGターミナル・ガス田・船舶の不慮の停止3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.季節要因・気象状況

1.はロシアのLNGカーゴはまだ取引されており、スポットカーゴ価格の上昇要因にはならなくなってきた。ロジカルには西側諸国が脱ロシアを完全に完了するまでは、気温の変化や政治的なイベントによって季節的に価格が高騰するリスクは残る。

弊社の試算では欧州が完全にロシア産ガスを排除(第三国経由でもロシア産のLNGを購入しない状態になる)できるのは2027年頃。ロシア産のLNGの輸出が阻害されなければ2025年頃。

今のところロシア産ガスの供給は実質的に制限されていない。しかし2024年いっぱいで、ウクライナ経由の欧州向けガス輸出の契約は、更新されない可能性が高まっている。

そのため、2025年までに脱ロシアを完了することは難しく、やはり2026年~2027年頃に脱ロシア完了はずれ込むと考えるのが妥当だろう。

しかし、脱ロシアが完了した場合、ガス価格は(脱炭素によるガス田投資動向や、価格低下による採算性の悪化から予定通りになるかどうかは分らないが)水準を切下げる可能性が高いことを示唆している。

2.は、異常気象発生時にはインフラに障害が出る可能性が高まる。米海洋大気庁の見通しでは、大西洋でのハリケーンの発生頻度は例年を上回る見通しが示された。

通常、エルニーニョ現象が発生したときは大西洋の海水温が低下してハリケーンの発生・勢力が弱まるが今年は例外的な見通しとなっており、北米→欧州のLNG輸送や輸出ファシリティへの影響は無視できないリスクに。

また、異常気象の影響による干ばつでパナマ運河の水位が低下しており、LNG輸送に障害が発生、スポット価格が上昇する可能性が出てきた。

現在懸念されているのは豪州生産者のストライキで、欧州は豪州産LNGはほとんど購入していないが、カーゴ市場の需給はタイト化するため価格の上昇要因になっている。

3.4.は顕在化している。特に3.に関しては恐らく今年がロシア・ウクライナ戦争の山場である可能性が高く、ロシアがなりふり構わない対応をしてくる可能性は否定できない。

5.は2.とも関係するが、夏場の気温が例年よりも欧州は高く、基本は冷夏の傾向が強まる北アジアの気温も上昇しており、スポットのガス調達圧力は強い。

今年の冬はエルニーニョ現象、ラニーニャ現象、どちらの発生も有り得るが仮に厳冬となった場合の冬場の価格上昇リスクは小さくはない。

米メキシコ湾発のLNGのタンカーレートは日本向け・欧州向けとも上昇している。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米天然ガス市場は小幅に上昇。気温の動向がまちまちであり、方向感が出難い。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物市場は低下。豪シェブロンの労働組合のストライキの影響が不透明なことが価格を高止まりさせているが、TTFの下落や中国の景気への懸念と夏の終わりが意識されつつある。

豪州のストライキは、先進国でのストライキであり、新興国のように暴動にまで発展せず、数日で収束することが多いことから、長期の価格押し上げ要因にはならないとみている。

現在のJLCの水準は12.04ドルであり、現在のスポット価格はこの水準を上回っている。

その他のアジアの国の長期契約ベースの価格は恐らくJLCと大差がないと考えられ、今年の冬場の需要期の価格はほぼJLCの水準で推移している。

今年は回避されているが、豪州は国内供給が充分でない場合、通常7月1日まで、遅くとも10月1日までにガス不足の懸念を通知し、実際に国内供給が不充分と判断された場合、次の1年間は輸出が制限される(ADGSM)。

この条項が発動された場合、スポット価格の上昇リスクとなるため、意識はしておきたい。

また、サハリン2の生産能力の低下、供給の減少はかなり前から指摘されているが、今のところ顕在化していない。多くの必要な部材は中国などを経由してロシアにもたらされている可能性があり、実は長期の供給リスクは懸念ほどではないかもしれない。

7月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比+18.5%の1,031万トン(前月+19.2%の1,039万トン)と先月同様、同じ時期の過去5年の最高水準を上回っている。

7月のパイプラインベースの輸入は前年比+12.4%の445万トン(前月+13.6%の443万トン)と過去5年の最高水準(396万トン)を大きく上回った。

7月のLNG輸入は前年比+23.7%の585万9,000トン(前月+23.5%の595万8,000トン)と前月から伸びが加速、過去5年の最高水準(567万2,000トン)を大きく上回った。

7月の中国の天然ガス生産は+8.2%の1,360万3,000トン(前月+5.8%の1,338万2,000トン)と同じ時期の過去5年の最高水準を上回っている。

※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

8月20日時点の日本の大手発電業者のLNG在庫は181万トン(過去5年平均249万1,900トン、大手発電業者在庫の過去5年平均は200万トン)と、いずれの集計でも過去5年平均を下回った。

速報性のある大手電力以外の在庫も含めた水準と比較すると、過去5年の最低水準(195万8,400トン)をやや上回る程度。

大手発電業者のLNG調達は、自社の顧客を対象にした数量しか行われない。これは新電力の顧客の需要データが開示されないため、他社分まで調達することができないため。

仮に冬場が寒くなった場合、再びガスや石炭不足となり価格が上昇する可能性はある。通常過不足はスポット(JKMベース)で行い、電力のスポット価格はJKMの影響を受けるため、再び冬場の電力価格が上昇するリスクは無視できない。

また、今年はエルニーニョ現象の影響で太平洋側は台風の発生頻度・勢力が強まる可能性がある。この場合、輸送に影響が出ることも考えられるため、エルニーニョ現象が発生しているものの在庫水準の低さを考えると、冬場の価格上昇リスクも無視できない。

JEPXベースで調達して大手電力会社の価格で電気を販売している業者、JEPXベースで電気を調達している消費者はこのJKMのリスクを抱えることになる。

本日は、豪生産者のストライキヘの懸念が価格を高止まりさせるため現状水準を維持するとみる。

ただし、先進国でのストライキであり早晩収束するため、長期にわたる買い材料にはならない見込み。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP・東京ガス提示の数値を使用している。 LNG1トン=2.19立方メートル(液体)=1,360立方メートル(気体)= 46MMBtu LNG船1隻 147,000立方メートル=67,000トン 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル=7,757トン 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップ先物は全ゾーンパラレルに上昇。豪州のLNGファシリティでのストライキ懸念がガス価格を高止まりさせており、石炭は一昨日の下落の反動で再び買いが入った。

現在のガス価格(JKM)との関係性を元に回帰分析を行うとNEWC価格は139ドル、±1標準偏差で70~210ドル程度までが統計的に説明可能なレベル。

期先の価格は現在の生産コストに近いことを考慮すると、期先の価格が150~160ドル程度まで再び上昇しているため、150~210ドルが説明可能なレンジであり、現在のスポット価格はやや安く、足下の需給が緩和していることを示唆。

2023年~2024年は例年と例年並みの冬だとした場合、記録的な暖冬だった昨冬と比較して今冬は昨冬よりも寒い見通しであることを考えると、年後半に向けての価格上昇リスクは排除できず、実際、冬場の期先の価格は高い。

ロシア問題が継続する以上、欧州が完全に脱ロシアを達成することが期待される2027年(早ければ2025年、現実的には2026年)までは、ピークシーズン中の価格上昇リスクはつきまとう。

今年のアジアの夏は例年よりも暑い夏になる見通しであり、北半球の夏場の冷房需要向けの日中の石炭需要で再び上昇基調に転じるだろう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

7月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比+66.9%の3,926万トン(前月+110.0%の3,987万1,000トン)と過去5年レンジを大幅に上回る水準を維持した。

ガスも同様であるが、中国の記録的な気温上昇の影響で、発電燃料需要が引き続き増加しているためと考えられる。2000年以降、エルニーニョ現象が発生しているときは発電燃料の価格は下がる傾向が強いが、異常気象が発生しやすい気象状態であることは意識しなければならない。

国別では7月は豪州からの輸入が大幅に増加し、ロシアからの輸入が減少した。石炭価格の下落に加え、品質や地理的な問題から豪州炭が選好されたようだ。

直近のシェアはロシアが1位で35.5%(前月42.1%)、ついで豪州で29.5%(23.1%)、インドネシアが22.6%(24.2%)となっている。

戦争で苦境に陥っているロシアの救済は続いているが、中国国内の景気の悪化からより価格面で有利な石炭を選好しやすい地合にあり、品質面・輸送面なども考慮して、ロシア炭から豪州炭にシフトしたと考えられる。

7月の中国の石炭生産は、前年比+0.9%の3億7,128万トン、1,197万7,000トン/日(前月+2.5%の3億8,863万トン、1,295万4,000トン/日)と伸びが減速した。

7月の中国の電力消費量は前年比+6.8%の8,888億kwh(前月+4.0%の7,751億kwh)と伸びが加速、気温上昇による需要増加があったとみられる。

今後、輸入需要の増加があるかは発電需要に依拠するが、季節的な気温の上昇がそろそろピークアウトし始めること、南部の降雨による水力発電の回復や、経済活動の回復ペースの鈍さから高水準の輸入ペースは鈍化の可能性がある。

本日は、豪州のガス生産者のストライキを受けてガス価格が高値を維持する見込みであることから、同様に高値圏での推移になると考える。

尚、先進国でのストライキであり早晩収束が期待されることから、長期にわたる上昇要因にはならない見込み。

◆LME非鉄金属

LME非鉄金属市場は下落。中国製造業PMIがやや改善したものの、非製造業PMIが減速したことで、同国の最終消費の弱さが意識されたことが背景。

やはり価格に対しては現物の需給ファンダメンタルズが重要であり、今後、中国政府が不動産セクターの過剰在庫や不良在庫の処理、国内製造業や生産者の過剰生産能力問題にどのように取り組んで行くかに中期的な非鉄金属価格は影響を受けることになる。

今のところ、財政出動を伴う対策実施が困難であるため、当面政策金利の調整で凌ごうとする可能性が高い。

ただし問題は余剰在庫の解消であるため、金利操作だけでは状況を好転させるのには不充分である。しかし同時に時間を掛けて不良債権や在庫処理を行う必要もある。

数量ベースでの把握が困難だが、金額ベースの中国製造業の在庫循環図は調整局面の初期にあり、まだ在庫の調整が必要な状況。

通常のサイクルであれば、在庫の調整には1年程度掛るが、恐らく共産党支配が強い国であり、強制的な在庫調整も有り得るためそこまで時間は掛らないと考えられる。

中国政府が何の対策もしない、ということは考え難いが常識的に考えれば、

1.在庫が積み上がっているこのタイミングで経済活動を刺激すれば、さらなる在庫の積増しになってしまう可能性があること

2.予算的な問題

を考えるとある程度在庫の調整が進み、かつ、予算措置が終了してからと考えるのが妥当ではないか。現在、不動産の余剰在庫を解消するため、住宅取得の制限を緩和しているが、その実施も地方政府の裁量に委ねられているため、急速に状況が改善するには至っていない。

この危機を乗り切ることができれば、長期的には脱炭素、脱ロシア、中国・インドのW人口ボーナス期(中国は近代化仕上げの10年)、東西の緩やかな分裂に伴うサプライチェーン再構築のためのインフラ投資継続、といった材料を考えると、鉱物資源需要は増加して価格には構造的な上昇圧力が掛かると考えるのが妥当だろう。

恐らく、危機を乗り切るための予算的な措置が具体化するのは、秋の三中全会、12月に予定されている中央経済工作会議前後と考えるのが自然である。よって(早ければ)Q423の後半、遅くともQ224の前半には上昇に転じるとみる。

なお、規模や対象は限定されるが、仮に中国が経済対策を行えばそのタイミングで、「デジタルに」需要が発生するため、在庫の絶対水準の低さと相まって比較的大きな上昇になる可能性があるため、上昇リスクには常に備える必要がある。

ただし、この危機を乗り切ることに失敗し、中国政府が想定以上にこれまで積み上がった余剰生産能力の解消に手間取った場合景気は長期低迷、いわゆる「日本化」が10年単位で起きる可能性が高い。

さらに労働人口がピークアウトし、かつ、米国の制裁によって先端分野の発展が阻害され生産性が低下、将来的にはインフレをもたらしソ連型の国家崩壊、というシナリオも長期的には有り得る話だ。

本日は、引き続き、中国経済の低迷によるファンダメンタルズの弱さとドル安が拮抗し、やや軟調地合の中、現状水準でもみ合うと考える。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは小幅に上昇 、大連は上昇、豪州原料炭スワップ先物は下落、大連原料炭価格は上昇、上海鉄筋先物は上昇した。

ファンダメンタルズ面で特段市場に大きな変化はないが、建設業PMIがやや改善したことが需要期を控えた鉄鋼製品価格を押し上げた。鉄鉱石・原料炭には需要期を控えた買いが入った。

週間の鉄鋼製品港湾在庫統計は、鉄鋼製品在庫は▲10万4,000トンの1,304万7,000トン(過去5年平均 1,348万2,000トン)と過去5年平均を下回っているが、かなり水準は過去5年平均に近づいており、鉄鋼製品価格の下押し要因となっている。

鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比+170万トンの1億1,860万トン(過去5年平均 1億3,211万トン)、在庫日数は24.1日(+0.4日、過去5年平均28.6日)。在庫は日数ベースでも、数量ベースでも鉄鉱石在庫の水準は過去5年平均を下回っており、鉄鉱石の需給はタイトで一定の在庫積み増し需要が存在する。

主要原料炭の輸入港である京唐港の原料炭在庫は+12万トンの195万トン(過去5年平均 178万6,000トン)、在庫日数は+0.5日の7.4日(過去5年平均 7.1日)とこちらは在庫水準は高い。

8月の中国鉄鋼業PMIは総合指数が45.2(前月49.9)と減速した。新規受注が42.9(49.8)と急減速したが、輸出受注は60.1(51.8)と回復した。国内が厳しい状態にあるが、鉄鋼製品を海外に販売する(安売り)して在庫の解消が進んでいるとみられる。

8月か不需要期であることに加え、雨と高温の影響で建設向けの需要が低迷、引き続き鉄鋼製品の需要は回復下と意感じではない。結果、鉄鋼生産者の採算性は悪化しており、生産が回復する感じではない(52.5→46.1)。

9月は季節的に鉄鋼需要が回復する(黄金の9月、銀の10月)と言われているため、鉄鋼製品需要は回復すると予想される。また、政府部門もマクロ政策の強化を進める見込みであり、2023年の地方政府特別債発行枠を9月末までに完了することを目指している。

そのため、資金的にはゆとりが出ることから公共投資(インフラ投資)への期待は高まる。こうした対策を期待してか中国の建設業PMIも53.8(前月51.2)と回復しており、短期的に需要が改善する可能性はある。

ただ、今年の太平洋地域はエルニーニョ現象の影響で台風の発生頻度が高く、勢力も強いとされること、不動産の不良在庫・余剰在庫の解消が進まなければ本格的に回復するのは難しいことから、やはり回復には時間が掛かるだろう。

結局。バランスシート不況にあると考えられる中国がどの程度財政出動を行い、民需の不足をカバーできるかが景気回復のタイミングを図る上で重要になるが、恐らく年末の中央経済工作会議まで待つ必要があると考えられる

本日も、中国政府の対策期待が価格を左右するが、対策は明らかに遅れている一方で、9月・10月は需要期であるため鉄鋼製品価格が上昇しやすく、在庫水準の低い鉄鉱石は上昇、在庫の潤沢な原料炭は軟調な展開を予想。

◆貴金属

昨日の貴金属は昨日の米統計が強弱まちまちな内容だったこともあり方向感が出難く、金銀は小幅な下落で引けた。PGMも株価動向がまちまちであり小幅な下落に止まった。

金リスク・プレミアムの上昇要因の主なところは、1.米利上げによる信用不安の高まり(低格付企業・新興国)、2.ロシアに対するドル決済禁止制裁を受けた、準備金におけるドルから金ヘのシフト、3.ロシアのウクライナ侵攻を切っ掛けとする有事発生ヘの備え、あたりだろう。

これらと同じ事象は、ニクソン・ショック~プラザ合意~アジア危機収束まで30年近く続き、金価格に占めるリスク・プレミアムのシェアが高止まりした。

2016年基準で算出した現在のリスク・プレミアムのシェアは65%と、ほぼ上記の期間と同様の状況になっており金利水準以上にその他の要因が金価格の形成に影響を与えていることが確認できる。

恐らく、米国が利下げに踏み切ればリスク・プレミアムは逆に低下すると考えられるが、当面は利下げの可能性が低いため、結果、金は高止まりすることになろう。

なお、直近1年間の説明力を相関係数で確認すると、最も金価格に対する説明力が高いのがFF金利で0.85、ついでリスク・プレミアム0.80程度、期待インフレ率(▲0.58)、実質金利(0.07)と、ほとんど実質金利は現在の価格形成に影響を与えていない。

また、FF金利の水準はリスク・プレミアムに対する説明力が高いため、やはり足下はリスク・プレミアムの変動要因(FF金利の変動を受けた信用リスク要因、有事の金、準備金としてのドルの代替需要動向)が重要になっていると言える。

金の価格を構成要素に分解することは、各要素が互いに影響を及ぼし合っているため余り意味がない。

しかし、現状を理解する手助けとなるため、あえて実質金利・信用リスク・その他、に分離した場合、実質金利部分が4割、信用リスク要因が2割、その他の要因が3割となる。

なお、新興国の金準備は「よほどのこと(戦争や制裁など)」がない限り売却はされない。そのため積まれた金準備による価格押し上げ効果は継続すると考えられる。

この5年間のデータを元にした分析では、FF金利±1%の変化で、実質金利は±0.5%変化、金価格は±50ドル変化し、リスク・プレミアムは±150ドル変化する。

年内利上げは、9月FOMC以降、あったとしてもあと1回と見られているため、金の基準価格は▲13ドル、リスク・プレミアムは+38ドルの上昇圧力となり、差し引き+25ドルの上昇となる。

市場予想では2024年は▲1.5%程度のFF金利引下げが見込まれているため、金の基準価格は+75ドル程度の押し上げ要因となり、リスク・プレミアムは、▲225ドルの低下要因となるため、仕上がりで▲150ドルの価格低下となる。

現在の金価格は1,900ドルまで低下しているため、これを基準とすると1,750ドル程度までの下落があると見ている。

銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。

月次の金銀レシオはボリンジャーバンドの下限を目指す動きになっている。米国の景気がこのままリセッション入りしないのでは、との見方が影響しているとみられる。

しかし、足下の米統計の減速を考えると景況悪化の可能性はあり、再び上限を目指す展開になるのではないか。

仮にボリンジャーバンドの下限だと75倍、上限ならば90倍程度が目処になるが、金を1,900ドル程度とすると21.1~25.33ドルが現在取り得る範囲といえる。

本日は、米雇用統計の発表を控えて、アジア~欧州は方向感が出難い。今のところ減速が見込まれており、ドル安進行などが価格を押し上げる可能性。

◆穀物

シカゴ穀物市場は軟調な推移となった。米生産地での降雨期待や、大豆に関しては米週間輸出が大幅に減少したことが影響した。小麦は黒海合意ヘの期待が価格を押し下げている。

しかし、目先はエルニーニョ現象が発生している時の価格下落を織り込む形で下落していると考えられ、総じて軟調である。しかし、異常気象をもたらす気象状況であるため油断は禁物で、不作になるリスクも常に意識しておく必要がある。

ただ、ウクライナ産のトウモロコシ輸出に支障が出ると、そうはいっても米国の生産は過去5年で2番目に水準が低い年になる見通しであり、ブラジル・アルゼンチンなどの南米の生産状況に供給が左右されやすい。

そのため、南米の生産・輸出動向は今後重要になってくるだろう。

本日は、手掛かり材料に乏しい中、現状水準でもみ合うものと考える。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・米国債の格下げリスク(残るMoody'sの格下げリスク)、米国債格下げの動きが連鎖して、金融機関の格下げが加速、信用不安に繋がる場合。

・日本政府の財政規律の欠如、成長期待への失望から円が暴落するリスク。

・景気が想定よりも早く底入れしてインフレが再燃、あるいは景気を刺激する目的で早期の利下げが行われ資源価格が高騰、各国中銀の金融政策が再びタカ派の状態になった場合(リスク資産価格の上昇→下落リスク これは顕在化している可能性)

新興国の破綻、先進国も含めた債券の格下げによる金融機関・ファンドの突発的な損失拡大による信用収縮、低格付企業の破綻や、市場変動性の高まりによるファンド破綻などもリスクに(米銀格下げ検討は始まっている)。

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。

そこに至らないまでも、NATO加盟国に対する攻撃に対して報復の経済制裁、それに対するカウンター報復が発生した場合(景気の下押し要因)。

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。暴動激化で中国が分裂するリスク(極めて可能性の低いリスク)。

中国の構造的成長が終了、過剰債務や不動産問題を抱え、中国が「日本化」するリスク(この場合長期低迷で工業金属やエネルギーなどの景気循環系商品価格の下押し要因となる可能性)

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化を受けたブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(既にメインシナリオ)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。

また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、モディ支持率の低下による近代化投資の遅れ、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。


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