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エネルギー・貴金属セクター堅調 パ議長発言新味なしとの評価
  • MRA商品市場レポート

2023年8月28日 第2530号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「エネルギー・貴金属セクター堅調 パ議長発言新味なしとの評価」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場はエネルギーや発電燃料、その他農産品、貴金属セクターの一角が上昇したが、工業金属セクターは軟調な推移となった。

結局、昨日のジャクソンホール経済シンポジウムでのパウエル議長発言の解釈と、中国情勢の評価が市場動向のキーとなったが、パウエル議長の発言は、市場参加者からすれば「新味なし」と判断され、利上げがあってもあと1回程度だろうとの見方を強めたことが、リスク資産の買い安心感を誘った。

今のところFed Watchでみると11月FOMC時点での25bpの利上げ確率は46.7%(前日42.2%)と上昇したが、まだ据え置きと五分五分の状態である。

実際、コアインフレ率の高さ、中立金利の見直しに関して言及を回避したことを考慮すると、さらに利上げがあってもおかしくない。

しかし同時にこれから利上げの効果を確認するステージに入っていくと予想されるため、10年長期実質金利が2%に上昇していることを考えると、通常であれば景気が減速してもおかしくないし、そのような形になってインフレが沈静化することが望ましい。

しかし、米国の景気が明確に減速していない中でOPECプラスが大幅な減産を継続していることが、必要以上に原油価格を押し上げている。

今のところ市場は来年の利下げは見送られる可能性を高く見ている(と言っても3割程度だが)。しかし仮に米国の景気がリセッションなく底入れすれば原油価格の高騰がインフレを助長するため、来年は利下げよりも再度の利上げリスクを考慮する必要が出てくる。

【本日の見通し】

週明け月曜日は、パウエル議長が強いタカ派ではないが、今まで通りのスタンスであるため利上げ観測を織り込んで長期金利が上昇、ドル高進行で軟調な推移になる商品が目立つのではないか。

月曜日の注目材料は以下の通り。

・8月ダラス連銀製造業活動 市場予想 ▲19.0(前月▲20.0)

【昨日のトピックス】

昨日、注目のジャクソンホール経済シンポジウムでのパウエル議長講演が行われた。

市場では中立金利ついての発言が注目されていた。中立金利とは、経済活動に加速も減速も与えず、インフレも発生しない金利水準のことを指す。

ここで言う中立金利は通常、名目中立金利であり経済に対して中立な実質金利(自然利子率=実質中立金利≒潜在成長率)と期待インフレ率の合計、と解釈される。自然利率を2%として期待インフレ率を2%とすれば4%が名目中立金利となる。

自然利子率(実質中立金利)は生産性の向上(AIなどの活用)や、脱炭素系ビジネスの勃興などによって上昇した可能性があり、それが中立金利を押し上げ、長期金利の上昇に繋がったのではないかという議論が出てきた。

しかし今回の講演では以前からパウエル議長が主張しているように、「自信を持って中立金利の水準を特定することはできない」と発言するに止め、長期金利がいったん急落する局面があった。

しかし、2%のインフレ率に収れんさせるために利上げを行う用意と発言しており、年内利上げの可能性は高まった。しかし市場は「これで終り」と判断してむしろ公演後はリスク資産価格が軒並み水準を切り上げる展開となった。

これまで、市場が織り込んで来たFOMCのスタンスはほぼ外れており、FRBは市場が想定している以上にタカ派のスタンスを貫いている。

いわゆる著名識者の中でFRBの政策スタンスを比較的的確に言い当ててきた、ローレンス・サマーズ元財務長官は、「少なくともあと1回か、それ以上の利上げの可能性」を示唆している。

市場は年内景気底入れリセッションなしを想定しているが、米サービス業関連統計にも若干の減速の兆しが見られ、銀行の格付引下げが検討され、この場合にその他の事業法人の格下げのリスクも意識され、場合によると融資などのコベナンツ条項のトリガーを引く可能性も有り得る。

昨日の講演は、「思った様にインフレが沈静化しないこと」に伴う「市場が想定していない相場の上昇・下振れリスク」が高まっていることを確認する講演だったとまとめるのが妥当ではないか。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は下落後上昇した。ジャクソンホールでのパウエル議長の講演がタカ派になるとの見方からドル高が進行し、原油価格も水準を切下げていたが、講演の内容を市場は「あと1回の利上げで終り」と判断し、ドル安が進行したことで急速に値を切り上げ、前日比プラスで引けた。

しかし、当局の方針と市場の解釈の乖離が発生する中で、再び年後半に掛けての下振れリスクが大きくなったともいえる(詳しくは昨日のトピックスをご参照ください)。

サービス業にもやや減速の兆しが見られる中、原油価格の上昇が続けば、景気減速時の価格上昇が続くならばいわゆるレーショニングが発生することも、需要の減速が価格を押し下げることになるとみている。

仮に市場の見方が正しいとして、年後半に景気がリセッションなく本当に底入れするならば、原油価格はさらに上昇する可能性がある。

実際、サウジアラビアが減産を来年まで延長することがあれば、需給バランスは2023年が▲15万バレル、2024年は▲80万バレルの供給不足になる。

これは脱炭素の影響でその他の地域の増産が期待通りではないことが影響している。

この場合は2024年に再びインフレリスクに晒されることが予想されるが、どうなるかは逐次発表されるデータを見ながら判断せざるを得ない。

OPECプラスは2024年も減産継続、サウジアラビアが自主的に▲100万バレルの追加減産を行うことで合意、ロシアも自主的に▲50万バレルの輸出削減を決定した(詳細は以下の通り)。

しかし、景気が減速する局面では減産による価格押し上げ効果は限定され、「価格下支え効果をもたらす」と整理した方が正確だろう。

問題は早ければ今年の年末、遅くとも来年6月頃からの価格上昇が、この減産の影響によってかなり顕著になる可能性がある点だ。

 OPEC23ヵ国 昨年11月から▲200万バレル
 サウジなど8ヵ国 5月から▲116万バレルの自主減産
 ロシア ▲50万バレルを3月から自主減産
→合計▲366万バレルの減産を2024年一杯実施

 サウジ 9月も▲100万バレルの追加減産

8月22日時点のWTIの投機筋ポジションは、ロングが▲8,684枚、ショートが▲947枚と、弱気ポジションを維持。

Brentはロングが▲11,141枚、ショートが+1,823枚と、弱気ポジションに転じた。

今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。

現在は 3.のうち、「OPECプラスが減産」した状態。

<シナリオ別原油価格見通し>

1. ロシアの禁輸措置が厳格に守られ、戦闘も継続  産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)する
Brent 70-95ドル/75-100ドル

2.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しない
Brent 65-90ドル

3.2.の状態で産油国(非OPECプラス・OPECプラス)が増産/減産する
Brent 60-80ドル/70-90ドル

4.ロシアがウクライナから撤退・停戦上記見通しが各々▲5ドル程度低下

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

5. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)
Brent 60-90ドル

6. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)
Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

Q323~Q423 需要の伸び減速・生産調整(→)グローバル・リセッション、危機顕在化の場合(↓)
Q124~Q224 需要減速底入れ・需要回復期(↑)OPECプラス減産維持の場合(↑↑)
Q324以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産)(↑)OPECプラス減産維持の場合(↑↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

週明け月曜日は、ジャクソンホール公演後急落した米金利が再び上昇しており、ドル高バイアスがかかると予想されるため、軟調推移を予想。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は上昇。ウッドサイドの労使交渉の1件は落着したが、シェブロンのストライキ実施の可能性が高まったことや、ノルウェーのメンテナンスの影響が供給面のリスクを意識させているため。

先進国である豪州での問題であり、仮にストライキが行われても新興国のような大規模な暴動に繋がって生産・輸出設備が毀損するという事態にはなり難く結局最終的には下落に転じると予想される。

弊社の直近のガス在庫動向シミュレーションでは、ロシアの輸出がキャパシティの20%を維持できれば、ガス供給は需要が仮に+5%増加しても足りるとの結果であるが、2025年以降、契約が継続しない場合、最悪20%の稼働がさらに低下し、トルコ向けのパイプラインのみ稼働することが予想される。

また、ロシアのガス供給が全て停止したとしても需要を過去5年平均の水準から▲5%以上削減すれば足りることになる。今のところEUは来年3月まで▲15%の削減を努力目標としているため、達成の可能性は高い。

ただし、上記のリスクシナリオ(在庫減少)が顕在化すれば、TTF価格は上昇し、延いてはJKM価格の上昇要因となる(供給が足りても在庫減少で価格は上がる)。

また、在庫が減少すれば翌年以降の調達に影響が出る(価格が上昇する)ため、脱ロシアの完全完了までは上昇リスクは無視できない。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田・船舶の不慮の停止3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.季節要因・気象状況

1.はロシアのLNGカーゴはまだ取引されており、スポットカーゴ価格の上昇要因にはならなくなってきた。ロジカルには西側諸国が脱ロシアを完全に完了するまでは、気温の変化や政治的なイベントによって季節的に価格が高騰するリスクは残る。

弊社の試算では欧州が完全にロシア産ガスを排除(第三国経由でもロシア産のLNGを購入しない状態になる)できるのは2027年頃。ロシア産のLNGの輸出が阻害されなければ2025年頃。

今のところロシア産ガスの供給は実質的に制限されていない。しかし2024年いっぱいで、ウクライナ経由の欧州向けガス輸出の契約は、更新されない可能性が高まっている。

そのため、2025年までに脱ロシアを完了することは難しく、やはり2026年~2027年頃に脱ロシア完了はずれ込むと考えるのが妥当だろう。

しかし、脱ロシアが完了した場合、ガス価格は(脱炭素によるガス田投資動向や、価格低下による採算性の悪化から予定通りになるかどうかは分らないが)水準を切下げる可能性が高いことを示唆している。

2.は、異常気象発生時にはインフラに障害が出る可能性が高まる。米海洋大気庁の見通しでは、大西洋でのハリケーンの発生頻度は例年を上回る見通しが示された。

通常、エルニーニョ現象が発生したときは大西洋の海水温が低下してハリケーンの発生・勢力が弱まるが今年は例外的な見通しとなっており、北米→欧州のLNG輸送や輸出ファシリティへの影響は無視できないリスクに。

現在懸念されているのは豪州生産者のストライキで、欧州は豪州産LNGはほとんど購入していないが、カーゴ市場の需給はタイト化するため価格の上昇要因になっている。

3.4.は顕在化している。特に3.に関しては恐らく今年がロシア・ウクライナ戦争の山場である可能性が高く、ロシアがなりふり構わない対応をしてくる可能性は否定できない。

5.は2.とも関係するが、夏場の気温が例年よりも欧州は高く、基本は冷夏の傾向が強まる北アジアの気温も上昇しており、スポットのガス調達圧力は強い。

今年の冬はエルニーニョ現象、ラニーニャ現象、どちらの発生も有り得るが仮に厳冬となった場合の冬場の価格上昇リスクは小さくはない。

米メキシコ湾発のLNGのタンカーレートは日本向け・欧州向けとも上昇している。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米天然ガス市場は小幅に上昇。米国の気温見通しはまちまち。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物市場は上昇。豪シェブロンの労使交渉の先行き不透明感が強まったことで買い戻しが入った。

ストライキは多くの場合時間経過とともに終了すること(特に先進国では暴動にまで発展せず、数日で収束することが多い)から、長期の価格押し上げ要因にはならないとみている。

現在のJLCの水準は12.04ドルであり、現在のスポット価格はこの水準を上回っている。

その他のアジアの国の長期契約ベースの価格は恐らくJLCと大差がないと考えられ、今年の冬場の需要期の価格はほぼJLCの水準で推移している。

今年は回避されているが、豪州は国内供給が充分でない場合、通常7月1日まで、遅くとも10月1日までにガス不足の懸念を通知し、実際に国内供給が不充分と判断された場合、次の1年間は輸出が制限される(ADGSM)。

この条項が発動された場合、スポット価格の上昇リスクとなるため、意識はしておきたい。

また、サハリン2の生産能力の低下、供給の減少はかなり前から指摘されているが、今のところ顕在化していない。多くの必要な部材は中国などを経由してロシアにもたらされている可能性があり、実は長期の供給リスクは懸念ほどではないかもしれない。

7月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比+18.5%の1,031万トン(前月+19.2%の1,039万トン)と先月同様、同じ時期の過去5年の最高水準を上回っている。

7月のパイプラインベースの輸入は前年比+12.4%の445万トン(前月+13.6%の443万トン)と過去5年の最高水準(396万トン)を大きく上回った。

7月のLNG輸入は前年比+23.7%の585万9,000トン(前月+23.5%の595万8,000トン)と前月から伸びが加速、過去5年の最高水準(567万2,000トン)を大きく上回った。

7月の中国の天然ガス生産は+8.2%の1,360万3,000トン(前月+5.8%の1,338万2,000トン)と同じ時期の過去5年の最高水準を上回っている。

※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

8月20日時点の日本の大手発電業者のLNG在庫は181万トン(過去5年平均249万1,900トン、大手発電業者在庫の過去5年平均は200万トン)と、いずれの集計でも過去5年平均を下回った。

速報性のある大手電力以外の在庫も含めた水準と比較すると、過去5年の最低水準(195万8,400トン)をやや上回る程度。

大手発電業者のLNG調達は、自社の顧客を対象にした数量しか行われない。これは新電力の顧客の需要データが開示されないため、他社分まで調達することができないため。

仮に冬場が寒くなった場合、再びガスや石炭不足となり価格が上昇する可能性はある。通常過不足はスポット(JKMベース)で行い、電力のスポット価格はJKMの影響を受けるため、再び冬場の電力価格が上昇するリスクは無視できない。

また、今年はエルニーニョ現象の影響で太平洋側は台風の発生頻度・勢力が強まる可能性がある。この場合、輸送に影響が出ることも考えられるため、エルニーニョ現象が発生しているものの在庫水準の低さを考えると、冬場の価格上昇リスクも無視できない。

JEPXベースで調達して大手電力会社の価格で電気を販売している業者、JEPXベースで電気を調達している消費者はこのJKMのリスクを抱えることになる。

週明け月曜日は、引き続き豪州のLNG輸出業者の労使交渉動向を睨みつつ、神経質な展開になると予想される。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP・東京ガス提示の数値を使用している。 LNG1トン=2.19立方メートル(液体)=1,360立方メートル(気体)= 46MMBtu LNG船1隻 147,000立方メートル=67,000トン 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル=7,757トン 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップ先物は大幅に上昇した。豪州のLNG輸出業者の労使交渉の難航を受けて、「影響を受けない」石炭調達需要が増加したことが背景。

現在のガス価格(JKM)との関係性を元に回帰分析を行うとNEWC価格は135ドル、±1標準偏差で65~205ドル程度までが統計的に説明可能なレベル。

期先の価格は現在の生産コストに近いことを考慮すると、期先の価格が150~160ドル程度まで再び上昇しているため、150~205ドルが説明可能なレンジであり、現在のスポット価格はやや安く、足下の需給が緩和していることを示唆。

2023年~2024年は例年と例年並みの冬だとした場合、記録的な暖冬だった昨冬と比較して今冬は昨冬よりも寒い見通しであることを考えると、年後半に向けての価格上昇リスクは排除できず、実際、冬場の期先の価格は高い。

ロシア問題が継続する以上、欧州が完全に脱ロシアを達成することが期待される2027年(早ければ2025年、現実的には2026年)までは、ピークシーズン中の価格上昇リスクはつきまとう。

今年のアジアの夏は例年よりも暑い夏になる見通しであり、北半球の夏場の冷房需要向けの日中の石炭需要で再び上昇基調に転じるだろう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

7月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比+66.9%の3,926万トン(前月+110.0%の3,987万1,000トン)と過去5年レンジを大幅に上回る水準を維持した。

ガスも同様であるが、中国の記録的な気温上昇の影響で、発電燃料需要が引き続き増加しているためと考えられる。2000年以降、エルニーニョ現象が発生しているときは発電燃料の価格は下がる傾向が強いが、異常気象が発生しやすい気象状態であることは意識しなければならない。

国別では7月は豪州からの輸入が大幅に増加し、ロシアからの輸入が減少した。石炭価格の下落に加え、品質や地理的な問題から豪州炭が選好されたようだ。

直近のシェアはロシアが1位で35.5%(前月42.1%)、ついで豪州で29.5%(23.1%)、インドネシアが22.6%(24.2%)となっている。

戦争で苦境に陥っているロシアの救済は続いているが、中国国内の景気の悪化からより価格面で有利な石炭を選好しやすい地合にあり、品質面・輸送面なども考慮して、ロシア炭から豪州炭にシフトしたと考えられる。

7月の中国の石炭生産は、前年比+0.9%の3億7,128万トン、1,197万7,000トン/日(前月+2.5%の3億8,863万トン、1,295万4,000トン/日)と伸びが減速した。

7月の中国の電力消費量は前年比+6.8%の8,888億kwh(前月+4.0%の7,751億kwh)と伸びが加速、気温上昇による需要増加があったとみられる。

今後、輸入需要の増加があるかは発電需要に依拠するが、季節的な気温の上昇がそろそろピークアウトし始めること、南部の降雨による水力発電の回復や、経済活動の回復ペースの鈍さから高水準の輸入ペースは鈍化の可能性がある。

週明け月曜日も、豪州のガス生産者の労使交渉を睨みつつ、神経質な推移が予想される。

◆LME非鉄金属

LME非鉄金属市場は下落した。中国政府が住宅取得に関する規制緩和(借り入れをして住宅を取得し、完済したものも「第一次取得者としても良い」とする方針を示したこと)が価格の上昇要因となった。

このコラムで指摘している通りの展開だが、実施するかしないかは地方政府の裁量に委ねるとしたことで「現状大きな変化はない」として買い材料としては長く続かなかった。

また、ジャクソンホールでのパウエル議長の講演で一時ドル安になったものの、やはり利上げがあるとしてドル高となったことが価格を下押しした。

今後、中国政府が不動産セクターの過剰在庫や不良在庫の処理、国内製造業や生産者の過剰生産能力問題にどのように取り組んで行くかに中期的な非鉄金属価格は影響を受けることになるが、今のところ、財政出動を伴う対策実施が困難であるため、当面政策金利の調整で凌ごうとする可能性が高い。

ただし問題は余剰在庫の解消であるため、金利操作だけでは状況を好転させるのには不充分である。しかし同時に時間を掛けて不良債権や在庫処理を行う必要もある。

数量ベースでの把握が困難だが、金額ベースの中国製造業の在庫循環図は調整局面の初期にあり、まだ在庫の調整が必要な状況。

通常のサイクルであれば、在庫の調整には1年程度掛るが、恐らく共産党支配が強い国であり、強制的な在庫調整も有り得るためそこまで時間は掛らないと考えられる。

中国政府が何の対策もしない、ということは考え難いが常識的に考えれば、

1.在庫が積み上がっているこのタイミングで経済活動を刺激すれば、さらなる在庫の積増しになってしまう可能性があること

2.予算的な問題

を考えるとある程度在庫の調整が進み、かつ、予算措置が終了してからと考えるのが妥当ではないか。

この危機を乗り切ることができれば、長期的には脱炭素、脱ロシア、中国・インドのW人口ボーナス期(中国は近代化仕上げの10年)、東西の緩やかな分裂に伴うサプライチェーン再構築のためのインフラ投資継続、といった材料を考えると、鉱物資源需要は増加して価格には構造的な上昇圧力が掛かると考えるのが妥当だろう。

恐らく、危機を乗り切るための予算的な措置が具体化するのは、秋の三中全会、12月に予定されている中央経済工作会議前後と考えるのが自然である。よって(早ければ)Q423の後半、遅くともQ224の前半には上昇に転じるとみる。

なお、規模や対象は限定されるが、仮に中国が経済対策を行えばそのタイミングで、「デジタルに」需要が発生するため、在庫の絶対水準の低さと相まって比較的大きな上昇になる可能性があるため、上昇リスクには常に備える必要がある。

ただし、この危機を乗り切ることに失敗し、中国政府が想定以上にこれまで積み上がった余剰生産能力の解消に手間取った場合景気は長期低迷、いわゆる「日本化」が10年単位で起きる可能性が高い。

さらに労働人口がピークアウトし、かつ、米国の制裁によって先端分野の発展が阻害され生産性が低下、将来的にはインフレをもたらしソ連型の国家崩壊、というシナリオも長期的には有り得る話だ。

週明け月曜日は、中国政府の対策への期待が後退する中、ジャクソンホール講演を受けたドル高圧力の高まりを受けて、軟調推移を予想。

とはいえ、経済対策ヘの期待は根強いため、下値も限定されると考える。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇 、大連は上昇、豪州原料炭スワップ先物は横這い、大連原料炭価格は下落、上海鉄筋先物は下落した。

中国政府が住宅取得に関する規制を一部緩和する方針を示したが、実施するか否かは地方政府次第としたことで状況に変化がないと見られ、鉄鋼製品価格は下落。

鉄鋼原料は鉄鉱石は需要対比での在庫水準の低さから一定の在庫積増し需要が存在し、上昇。原料炭は在庫水準が潤沢とみられ、大連価格は下落。

現在、疑似鉄鋼原料価格(鉄鉱石:原料炭=1.6:0.9で加重平均したもの)と鉄鋼製品との関係性は回復している。ただ、鉄鋼原料調達は最終消費動向に左右されるため、当面、鉄鋼製品価格動向が重要になってくる。

ロシア問題の一巡、原料炭もロシア・モンゴルからの輸入が増加しており(特にモンゴル)、鉄鋼原料の供給問題はそれほど意識されていない。

結果、鉄鋼製品価格が鉄鋼原料価格変動のカギを握るが、少なくとも鉄鋼製品の最終需要は強くないため、最終需要が増加するような経済対策の実施がなければ、総じて下押し圧力が掛りやすい。

週間の鉄鋼製品港湾在庫統計は、鉄鋼製品在庫は▲10万4,000トンの1,304万7,000トン(過去5年平均 1,348万2,000トン)と過去5年平均を下回っているが、かなり水準は過去5年平均に近づいており、鉄鋼製品価格の下押し要因となっている。

鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比+170万トンの1億1,860万トン(過去5年平均 1億3,211万トン)、在庫日数は24.1日(+0.4日、過去5年平均28.6日)。在庫は日数ベースでも、数量ベースでも鉄鉱石在庫の水準は過去5年平均を下回っており、鉄鉱石の需給はタイトで一定の在庫積み増し需要が存在する。

主要原料炭の輸入港である京唐港の原料炭在庫は+12万トンの195万トン(過去5年平均 178万6,000トン)、在庫日数は+0.5日の7.4日(過去5年平均 7.1日)とこちらは在庫水準は高い。

7月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲14.2%の67万7,960トン(前月▲22.8%の61万トン)と低迷が続き、同じ時期の過去5年の最低水準を下回る状態が続いている。

7月の中国の鉄鋼製品の輸出は前年比+9.6%の730万8,400トン(▲0.7%の750万8,100トン)と過去5年の最高水準を上回った。同時に鉄鋼製品輸出額は前年比▲40.9%の63.4億ドル(▲42.7%の67.0億ドル)と低下しており、引き続き中国が安売りで余剰在庫の解消に努めていることを示唆するもの。

7月の中国粗鋼生産は前年比+11.5%の9,080万トン(前月+0.4%の9,111万トン)と前年から大幅に増加し、過去5年平均も上回った。

これまで値引きを行って輸出を促進してきたが、それでも在庫解消に時間が掛っているため生産調整が進むかと思われたが、前年・前月よりも生産は回復している。

中国政府の需要刺激策で具体的なものが打ち出されていないこと、製造業全体の在庫循環図は調整局面入りしていることを考えると、今後の生産は引き続き低迷が予想される。

鉄鋼原料価格が中期的にも世界的な景気減速局面入りを背景に、下落に転じるとの見方は、現時点で変更の必要はないと考える。

週明け月曜日も、中国政府の対策期待が価格を左右するが、対策は明らかに遅れている一方で9月10月は需要期であるため鉄鋼製品価格が上昇しやすく、在庫水準の低い鉄鉱石は上昇、在庫の潤沢な原料炭は軟調、という感じになるのではないか。

◆貴金属

昨日の貴金属は、いずれも小動きだった。ジャクソンホールでのパウエル議長の発言はタカ派だったが、市場参加者は「新味なし」として、結果的にほとんど材料にならなかった。

引き続き、月次のCPIやPCE価格指数を睨みつつ、神経質が続くことになるだろう。

金リスク・プレミアムの上昇要因の主なところは、1.米利上げによる信用不安の高まり(低格付企業・新興国)、2.ロシアに対するドル決済禁止制裁を受けた、準備金におけるドルから金ヘのシフト、3.ロシアのウクライナ侵攻を切っ掛けとする有事発生ヘの備え、あたりだろう。

これらと同じ事象は、ニクソン・ショック~プラザ合意~アジア危機収束まで30年近く続き、金価格に占めるリスク・プレミアムのシェアが高止まりした。

2016年基準で算出した現在のリスク・プレミアムのシェアは65%と、ほぼ上記の期間と同様の状況になっており金利水準以上にその他の要因が金価格の形成に影響を与えていることが確認できる。

恐らく、米国が利下げに踏み切ればリスク・プレミアムは逆に低下すると考えられるが、当面は利下げの可能性が低いため、結果、金は高止まりすることになろう。

なお、直近1年間の説明力を相関係数で確認すると、最も金価格に対する説明力が高いのがFF金利で0.85、ついでリスク・プレミアム0.80程度、期待インフレ率(▲0.58)、実質金利(0.07)と、ほとんど実質金利は現在の価格形成に影響を与えていない。

また、FF金利の水準はリスク・プレミアムに対する説明力が高いため、やはり足下はリスク・プレミアムの変動要因(FF金利の変動を受けた信用リスク要因、有事の金、準備金としてのドルの代替需要動向)が重要になっていると言える。

金の価格を構成要素に分解することは、各要素が互いに影響を及ぼし合っているため余り意味がない。

しかし、現状を理解する手助けとなるため、あえて実質金利・信用リスク・その他、に分離した場合、実質金利部分が4割、信用リスク要因が2割、その他の要因が3割となる。

なお、新興国の金準備は「よほどのこと(戦争や制裁など)」がない限り売却はされない。そのため積まれた金準備による価格押し上げ効果は継続すると考えられる。

この5年間のデータを元にした分析では、FF金利±1%の変化で、実質金利は±0.5%変化、金価格は±50ドル変化し、リスク・プレミアムは±150ドル変化する。

年内利上げは、9月FOMC以降、あったとしてもあと1回と見られているため、金の基準価格は▲13ドル、リスク・プレミアムは+38ドルの上昇圧力となり、差し引き+25ドルの上昇となる。

市場予想では2024年は▲1.5%程度のFF金利引下げが見込まれているため、金の基準価格は+75ドル程度の押し上げ要因となり、リスク・プレミアムは、▲225ドルの低下要因となるため、仕上がりで▲150ドルの価格低下となる。

現在の金価格は1,900ドルまで低下しているため、これを基準とすると1,750ドル程度までの下落があると見ている。

銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。

月次の金銀レシオはボリンジャーバンドの上限を目指す動きになっている。

仮にボリンジャーバンドの下限だと75倍、上限ならば90倍程度が目処になるが、金を1,900ドル程度とすると21.1~25.33ドルが現在取り得る範囲といえる。

週明け月曜日は、ジャクソンホールで目立った発言がなかったが、利上げはあと1回程度は行われる見通しであり、リスク・プレミアムを高止まりさせる一方、で実質金利で説明可能な水準が下落するため、高値維持の公算。銀も金に連れて高い水準を維持。

PGMは、株式市場が「もう利上げは終わり」と楽観しているため、上昇余地を探る動きか。

◆穀物

シカゴ穀物市場は、トウモロコシと小麦が下落、大豆は上昇した。トウモロコシは、プロファーマ社のクロップツアーで単収が例年を上回っていることが売り材料となり、大豆は逆。

小麦に関しては黒海の問題解消に関するニュースに乏しかったが、トウモロコシ安もあって水準を切下げた。

プロファーマ社のクロップツアーが行われいてるが、サマリー(単収)は以下の通り。

トウモロコシサウスダコタ 157.4(前年118.5、3年平均 149.7)オハイオ 183.9(174.2、175.6)ネブラスカ 167.2(158.5、172.0)インディアナ 180.9(177.9、183.7)イリノイ 193.7(190.7、192.1)西アイオワ北部 182.5(181.1、182.1)西アイオワ中部 168.7(180.8、184.8)西アイオワ南部 184.8(173.7、183.6)ミネソタ 181.3(190.4、187.6)アイオワ(全土) 182.8(183.8、184.1)

大豆サウスダコタ 1,013.0(前年871.4、3年平均 1,039.7)オハイオ 1,252.9(1,131.6、1,160.9)ネブラスカ 1,160.0(1,063.7、1,196.0)インディアナ 1,310.0(1,166.0、1,228.9)イリノイ 1,270.6(1,249.7、1,259.0)西アイオワ北部 1,137.2(1,089.7、1,064.1)西アイオワ中部 1,120.3(1,258.9、1,220.5)西アイオワ南部 1,170.3(1,223.9、1,251.8)ミネソタ 984.1(1,100.8、1,071.3)アイオワ(全土) 1,190.4(1,174.4、1,179.5

2000年以降はエルニーニョ現象が発生した時はむしろ豊作で価格は下がっていることも多く、過去の傾向からすれば、エルニーニョ現象の影響は小さいと考えられる。

しかし、異常気象をもたらす気象状況であるため油断は禁物で、不作になるリスクも常に意識しておく必要がある。

週明け月曜日は、新規材料に乏しい中で、単収見通しを背景に高安まちまちとなろう。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・米国債の格下げリスク(残るMoody'sの格下げリスク)、米国債格下げの動きが連鎖して、金融機関の格下げが加速、信用不安に繋がる場合。

・日本政府の財政規律の欠如、成長期待への失望から円が暴落するリスク。

・景気が想定よりも早く底入れしてインフレが再燃、あるいは景気を刺激する目的で早期の利下げが行われ資源価格が高騰、各国中銀の金融政策が再びタカ派の状態になった場合(リスク資産価格の上昇→下落リスク これは顕在化している可能性)

新興国の破綻、先進国も含めた債券の格下げによる金融機関・ファンドの突発的な損失拡大による信用収縮、低格付企業の破綻や、市場変動性の高まりによるファンド破綻などもリスクに(米銀格下げ検討は始まっている)。

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。

そこに至らないまでも、NATO加盟国に対する攻撃に対して報復の経済制裁、それに対するカウンター報復が発生した場合(景気の下押し要因)。

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。暴動激化で中国が分裂するリスク(極めて可能性の低いリスク)。

中国の構造的成長が終了、過剰債務や不動産問題を抱え、中国が「日本化」するリスク(この場合長期低迷で工業金属やエネルギーなどの景気循環系商品価格の下押し要因となる可能性)

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化を受けたブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(既にメインシナリオ)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。

また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、モディ支持率の低下による近代化投資の遅れ、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

◆本日のMRA's Eye


「中国鉄鋼セクターは厳しい状況続く」

7月の中国鉄鋼業PMIは総合指数が49.9(前月49.9)と横這いだった。新規受注が49.8(51.5)と落ち込んだが、輸出向け新規受注が51.8(49.7)と改善、生産も52.5(49.9)と改善したことが新規受注の落ち込みを相殺。

生産が増加しているが完成品在庫が減少しているということは、7月は基本的には不需要期であり、かつ、豪雨の影響がさらに需要を下押しするとみられたが、政策効果がこれを相殺している模様。

中国の棒鋼先物価格は7月末時点で前年比▲8.5%(前月末▲16.8%、前月々末▲26.7%、前々月末▲29.4%)とマイナス幅を縮小してはいるが、依然として過去5年レンジの最低水準であり、8月に入ってからはこの水準も下回っている。

台風の影響による洪水で北京に緊急事態宣言が発令されるなど、混乱が見られており恐らく周辺地域も洪水の影響を当面受けることが予想され8月の鉄鋼業PMIの下押し要因となろう。

中国の建設業PMIも51.2(55.72)と減速傾向にあり、短期的に鉄鋼原料や鉄鋼製品価格が上昇したとしても、最終消費のシェアが大きい不動産販売・投資が回復しなければ鉄鋼業の回復も持続的なものにならないと考えられる。

中国不動産問題は、11年前に習近平が国家主席になって以降、都合3回発生している住宅バブルの結果起きているものであり、解決が非常に難しい。

中国財務省によると、地方政府の債務残高は2022年末で普通債と特別目的債を合計すると35兆元だった。これに、地方政府資金調達ビークル(LGFV)の残高が65兆元程度あるとされ、合計すると100兆元に達する。これはGDP対比で80%に相当する規模だ(出所、日経新聞)。

また、IMFの試算では2022年末の中央政府債務は94兆人民元に達しているとみられる。これはGDPの77%に相当する。中央・地方を合計するとGDP対比で160%近くになる(しかし、日本の中央政府債務もGDP対比で160%に達しているため、他国のことは言えるような立場ではないが)。

バランスシート不況にあると考えられる中国がどの程度財政出動を行い、民需の不足をカバーできるかが景気回復のタイミングを図る上で重要になるが、今のところかけ声は大きいが、中国地方政府の不動産使用権収入は大幅に落ち込んでおり、対策余地がかなり制限される状況で、大規模な経済対策を打ち出せるほど中国の財布は大きくない。

場合によると中央政府予算で対策が行われる可能性があるが、恐らく2024年度予算での実施の可能性が高く、今年秋に予定されている三中全会、12月に開催が予定されている中央経済工作会議前後までは具体的な対策は打ち出されず、金融緩和などの対策が対処療法的に行われる可能性が高いと考える。

不動産問題を解消しようとした場合、余剰不動産をどこかに売却することが先決となる。この際、価格は二束三文になる可能性があるため、不動産会社の経営状態の悪化、破綻のリスクが出てくる。

この場合、失業も増え景気悪化が不可避となるため、恐らく中国はこれらの企業を優良な大企業に合併させ、公的資金を投入すると予想される。またその際に銀行の健全性も低下するため、日本でそうしたように銀行にも資本注入を行うのではないか。

そして、中国の不動産を海外投資家に売却することは事実上困難(仮に買えたとしても、中国政府の都合で摂取されてしまう可能性もあり、恐らく積極的に投資を行う投資家はいないものと考えられる)で有るため、国内で販売するしかない。

となると、「家は住むためのもの」と習近平国家主席は強調していたが、恐らく複数保有を認める動きにならざるを得ないと考えられる(これは昨日、住宅ローンを組み完済した人を一次取得者と見做すことを認めていなかったルールの撤廃に動いている。撤廃するか否かは地方政府の判断に委ねられる)。

いずれの場合も西側の理屈で処理した場合であるが、共産党の一党独裁であり、共産党の存続のためには手段は選ばないため、驚くような手法が採られる可能性はあるが、常識的に考えれば上記の対応になるのではないだろうか。


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