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米統計減速のドル安で堅調 エネルギ-は下落
  • MRA商品市場レポート

2023年8月24日 第2528号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「米統計減速のドル安で堅調 エネルギ-は下落」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は、エネルギー価格が総じて下落したが、その他の商品価格は上昇した。

米国のPMIは製造業の低迷が続くが、サービス業PMIも減速が確認され、米国の金融引締めの影響が顕在化しつつあると判断され、金利低下と共にドル安が進行したことが背景。

現在の米国の景気を占う上では、このコラムでも主張している様にWTIとドル指数動向をオーバーラップして見ていく必要がある。7月以降、経済統計の改善を受けてドル高と原油高が同時に発生していた。

しかし、昨日に関してはドル安と原油安が同時に発生している。このことは米国の景気が減速している、と「昨日に関しては」市場が判断したと考えられる。

ただし、明日はジャクソンホール経済シンポジウムでパウエル議長の講演が予定されており、これまでの議長のスタンスだと「かなりタカ派」と判断されたFOMCの影響を和らげるため、ややハト派なコメントをする可能性がある。

この場合、景況感以上に金融要因が意識されて多くのドル建て商品価格が上昇することになる。逆にタカ派のスタンスを維持すれば、景気の減速の予兆が見られているだけに、軟調な推移となろう。

【本日の見通し】

本日は、昨日の各国PMIの減速を受けて、景気循環系商品を中心に下押し圧力が強まるが、明日はジャクソンホール経済シンポジウム講演を控えて、基本的には様子見気分が強まると予想される。

しかし、昨日の米統計の減速感を背景に金利が低下、ドル安が進行する可能性があることで、テクニカルに上昇余地を試す商品は多いのではないか。

本日の注目材料は以下の通り。

・フィラデルフィア連銀総裁インタビュー

・ボストン連銀総裁インタビュー

・トルコ中銀政策金利発表

・韓国中銀政策金利発表

・インドネシア中銀政策金利発表

・米週間新規失業保険申請件数 市場予想 24万件(前週23.9万件)

・7月米耐久財受注 前月比▲4.0%(前月+4.56%) コア資本財受注 +0.1%(+0.1%)

【昨日のトピックス】

昨日発表された各国のPMIは、独製造業PMIが39.1(市場予想 38.8、前月38.8)、サービス業が47.3(51.5、52.3)ユーロ圏製造業PMIが43.7(42.7、42.7)、サービス業が48.3(50.5、50.9)と景気の遅行指標であるサービス業が軒並み視位置の50を下回った。

足下の統計が良く、景気底入れ期待が高まっている米国は製造業PMIが47.0(49.0、49.0)と市場予想と裏腹に悪化。金利上昇に伴うドル高進行が影響したとみられる。

一方、サービス業は51.0(52.2、52.3)と閾値の50を上回っているが減速が確認された。やはり、実質金利の上昇や原油価格の上昇、教育ローンの返済免除終了がじわりと消費に影響を与えているようだ。

昨日の「昨日のトピックス」でもコメントした通り、これまで米国が行ってきた金融引締めの効果で景気減速が確認されるならこれでよいのだが、「金融引締め終了観測」を先取りして金利が低下、株価が上昇してリスク資産価格が上昇に再び転じる、という可能性は否定できない。

結局、コロナ発生時に財政を拡大しすぎた国がインフレで苦しんでいる状況であり、恐らく政策金利上げ以上にQTの進捗ペースが今後重要になるだろう。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は下落。昨日発表された各国のPMIが製造業・サービス業とも総じて減速を確認する内容だったことが背景。

しかし、石油統計でWTIに対して影響力が大きいクッシングの在庫が▲3.1MB(前週▲0.8MB)と大幅に減少したことで下げ幅を削った。

弊社は年後半に掛けての景気減速で原油価格が下落するとみていたが、米国の製造業は低迷したが、サービス業の景況感は減速はしているがまだ好況を維持している。

7月からの上昇は、好況下での減産が重なったものであり、米景気見通しを見誤ったことが足下の弊社予想と実際の価格の乖離を生んでいる。

しかし、このまま米10年実質金利2%まで上昇してこれが常態化、景気が減速すれば弊社の見通し通り、原油価格は年末に向けて調整することになろう。

逆に「金利上昇の達成感」がでて米長期金利が低下すれば、このまま原油価格が上昇する可能性はある。

この場合は2024年に再びインフレリスクに晒されることが予想されるが、どうなるかは逐次発表されるデータを見ながら判断せざるを得ない。

OPECプラスは2024年も減産継続、サウジアラビアが自主的に▲100万バレルの追加減産を行うことで合意、ロシアも自主的に▲50万バレルの輸出削減を決定した(詳細は以下の通り)。

しかし、景気が減速する局面では減産による価格押し上げ効果は限定され、「価格下支え効果をもたらす」と整理した方が正確だろう。

問題は早ければ今年の年末、遅くとも来年6月頃からの価格上昇が、この減産の影響によってかなり顕著になる可能性がある点だ。

 OPEC23ヵ国 昨年11月から▲200万バレル
 サウジなど8ヵ国 5月から▲116万バレルの自主減産
 ロシア ▲50万バレルを3月から自主減産
→合計▲366万バレルの減産を2024年一杯実施

 サウジ 9月も▲100万バレルの追加減産

サウジアラビアの財政均衡価格は81ドル、OPECバスケット価格のここまでの平均が80ドル程度であるため、やや予算を下回っていることから多少の減産で価格が上昇するなら、減産はありと判断していると考えられる。

一方、ロシアは2023年度のウラル原油前提価格を70.1ドルに設定しているとみられるが、今年のウラルの平均価格は50ドル台であり、想定を大きく下回っている。

8月15日時点のWTIの投機筋ポジションは、ロングが▲7,819枚、ショートが+6,001枚と、弱気ポジションに転じた。

Brentはロングが+15,834枚、ショートが▲3,914枚と、こちらは強気ポジションに。ウクライナによるロシア艦船の攻撃リスクが意識されたとみられる。

今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。

現在は 3.のうち、「OPECプラスが減産」した状態。

<シナリオ別原油価格見通し>

1. ロシアの禁輸措置が厳格に守られ、戦闘も継続  産油国(非OPECプラス)が増産/減産する(OPECプラス)する
Brent 70-95ドル/75-100ドル

2.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しない
Brent 65-90ドル

3.2.の状態で産油国(非OPECプラス・OPECプラス)が増産/減産する
Brent 60-80ドル/70-90ドル

4.ロシアがウクライナから撤退・停戦上記見通しが各々▲5ドル程度低下

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

5. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)
Brent 60-90ドル

6. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)
Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

Q323~Q423 需要の伸び減速・生産調整(→)グローバル・リセッション、危機顕在化の場合(↓)
Q124~Q224 需要減速底入れ・需要回復期(↑)OPECプラス減産維持の場合(↑↑)
Q324以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産)(↑)OPECプラス減産維持の場合(↑↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

本日は、明日のジャクソンホール経済シンポジウムでのパウエル議長発言を控えて様子見気分が強いが、サービス業PMIの減速で需要面の減速が意識されていることから軟調推移を予想。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は下落。豪州のストライキを意識して上昇してきたが、ウッドサイド社が労使交渉後もストライキはない、と表明していることが売り材料となった。なお、まだ労使交渉は継続しており、ストライキの可能性は排除されていない。

豪州は先進国でのストライキであり、新興国とは異なり大規模な暴動に繋がって生産・輸出設備が毀損するという事態にはなり難く結局最終的には下落に転じると予想される。

弊社の直近のガス在庫動向シミュレーションでは、ロシアの輸出がキャパシティの20%を維持できれば、ガス供給は需要が仮に+5%増加しても足りるとの結果であるが、2025年以降、契約が継続しない場合、最悪20%の稼働がさらに低下し、トルコ向けのパイプラインのみ稼働することが予想される。

また、ロシアのガス供給が全て停止したとしても需要を過去5年平均の水準から▲5%以上削減すれば足りることになる。今のところEUは来年3月まで▲15%の削減を努力目標としているため、達成の可能性は高い。

ただし、上記のリスクシナリオ(在庫減少)が顕在化すれば、TTF価格は上昇し、延いてはJKM価格の上昇要因となる(供給が足りても在庫減少で価格は上がる)。

また、在庫が減少すれば翌年以降の調達に影響が出る(価格が上昇する)ため、脱ロシアの完全完了までは上昇リスクは無視できない。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.LNGターミナル・ガス田・船舶の不慮の停止3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)4.景気減速(価格下落要因)5.季節要因・気象状況

1.はロシアのLNGカーゴはまだ取引されており、スポットカーゴ価格の上昇要因にはならなくなってきた。ロジカルには西側諸国が脱ロシアを完全に完了するまでは、気温の変化や政治的なイベントによって季節的に価格が高騰するリスクは残る。

弊社の試算では欧州が完全にロシア産ガスを排除(第三国経由でもロシア産のLNGを購入しない状態になる)できるのは2027年頃。ロシア産のLNGの輸出が阻害されなければ2025年頃。

今のところロシア産ガスの供給は実質的に制限されていない。しかし2024年いっぱいで、ウクライナ経由の欧州向けガス輸出の契約は、更新されない可能性が高まっている。

そのため、2025年までに脱ロシアを完了することは難しく、やはり2026年~2027年頃に脱ロシア完了はずれ込むと考えるのが妥当だろう。

しかし、脱ロシアが完了した場合、ガス価格は(脱炭素によるガス田投資動向や、価格低下による採算性の悪化から予定通りになるかどうかは分らないが)水準を切下げる可能性が高いことを示唆している。

2.は、異常気象発生時にはインフラに障害が出る可能性が高まる。今年はエルニーニョ現象、冬はスーパーエルニーニョ、ないしは再びラニーニャ現象の発生が懸念されており、そのリスクは無視できない。

また、ウクライナがロシア船籍を攻撃するなど、これまで安定してきたLNG船の輸送にも影響が出る可能性が出てきた。

現在懸念されているのは豪州生産者のストライキで、欧州は豪州産LNGはほとんど購入していないが、カーゴ市場の需給はタイト化するため価格の上昇要因になっている。

3.4.は顕在化している。特に3.に関しては恐らく今年がロシア・ウクライナ戦争の山場である可能性が高く、ロシアがなりふり構わない対応をしてくる可能性は否定できない。

5.は2.とも関係するが、夏場の気温が例年よりも欧州は高く、基本は冷夏の傾向が強まる北アジアの気温も上昇しており、スポットのガス調達圧力は強い。

今年の冬はエルニーニョ現象、ラニーニャ現象、どちらの発生も有り得るが仮に厳冬となった場合の冬場の価格上昇リスクは小さくはない。

米メキシコ湾発のLNGのタンカーレートは日本向け・欧州向けとも上昇している。今後、ウクライナとロシアの対立が海上輸送に大きな影響をもたらす可能性があり、需要動向とは別議論でタンカーレートの水準が切り上がる展開は否定できない。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米天然ガス市場は続落。米北東部・西部の気温低下予想が需要見通しを下方修正させたため。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物市場は下落。豪州LNG輸出業者のストライキ見通しへの楽観から。

ストライキは多くの場合時間経過とともに終了すること(特に先進国では暴動にまで発展せず、数日で収束することが多い)から、長期の価格押し上げ要因にはならないとみている。

現在のJLCの水準は12.04ドルであり、現在のスポット価格はこの水準を上回っている。

その他のアジアの国の長期契約ベースの価格は恐らくJLCと大差がないと考えられ、今年の冬場の需要期の価格はほぼJLCの水準で推移している。

今年は回避されているが、豪州は国内供給が充分でない場合、通常7月1日まで、遅くとも10月1日までにガス不足の懸念を通知し、実際に国内供給が不充分と判断された場合、次の1年間は輸出が制限される(ADGSM)。

この条項が発動された場合、スポット価格の上昇リスクとなるため、意識はしておきたい。

また、サハリン2の生産能力の低下、供給の減少はかなり前から指摘されているが、今のところ顕在化していない。多くの必要な部材は中国などを経由してロシアにもたらされている可能性があり、実は長期の供給リスクは懸念ほどではないかもしれない。

7月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比+18.5%の1,031万トン(前月+19.2%の1,039万トン)と先月同様、同じ時期の過去5年の最高水準を上回っている。

7月のパイプラインベースの輸入は前年比+12.4%の445万トン(前月+13.6%の443万トン)と過去5年の最高水準(396万トン)を大きく上回った。

7月のLNG輸入は前年比+23.7%の585万9,000トン(前月+23.5%の595万8,000トン)と前月から伸びが加速、過去5年の最高水準(567万2,000トン)を大きく上回った。

7月の中国の天然ガス生産は+8.2%の1,360万3,000トン(前月+5.8%の1,338万2,000トン)と同じ時期の過去5年の最高水準を上回っている。

※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

8月20日時点の日本の大手発電業者のLNG在庫は181万トン(過去5年平均249万1,900トン、大手発電業者在庫の過去5年平均は200万トン)と、いずれの集計でも過去5年平均を下回った。

速報性のある大手電力以外の在庫も含めた水準と比較すると、過去5年の最低水準(195万8,400トン)をやや上回る程度。

大手発電業者のLNG調達は、自社の顧客を対象にした数量しか行われない。これは新電力の顧客の需要データが開示されないため、他社分まで調達することができないため。

仮に冬場が寒くなった場合、再びガスや石炭不足となり価格が上昇する可能性はある。通常過不足はスポット(JKMベース)で行い、電力のスポット価格はJKMの影響を受けるため、再び冬場の電力価格が上昇するリスクは無視できない。

JEPXベースで調達して大手電力会社の価格で電気を販売している業者、JEPXベースで電気を調達している消費者はこのJKMのリスクを抱えることになる。

本日は、引き続き供給面のリスクが排除仕切れない中、北半球の気温上昇がまだ夏場で続いていることから高値を維持すると見る。

ただし、ストライキが回避されれば水準は切り下がると考えられ、その可能性は高い。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP・東京ガス提示の数値を使用している。 LNG1トン=2.19立方メートル(液体)=1,360立方メートル(気体)= 46MMBtu LNG船1隻 147,000立方メートル=67,000トン 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル=7,757トン 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップ先物はガス価格の下落を受けて全ゾーン、大幅に下落した。API2石炭価格もパラレルに低下。

現在のガス価格(JKM)との関係性を元に回帰分析を行うとNEWC価格は135ドル、±1標準偏差で65~205ドル程度までが統計的に説明可能なレベル。

期先の価格は現在の生産コストに近いことを考慮すると、期先の価格が150~160ドル程度まで再び上昇しているため、150~205ドルが説明可能なレンジであり、現在のスポット価格はやや安く、足下の需給が緩和していることを示唆。

2023年~2024年は例年と例年並みの冬だとした場合、記録的な暖冬だった昨冬と比較して今冬は昨冬よりも寒い見通しであることを考えると、年後半に向けての価格上昇リスクは排除できず、実際、冬場の期先の価格は高い。

ロシア問題が継続する以上、欧州が完全に脱ロシアを達成することが期待される2027年(早ければ2025年、現実的には2026年)までは、ピークシーズン中の価格上昇リスクはつきまとう。

今年のアジアの夏は例年よりも暑い夏になる見通しであり、北半球の夏場の冷房需要向けの日中の石炭需要で再び上昇基調に転じるだろう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

7月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比+66.9%の3,926万トン(前月+110.0%の3,987万1,000トン)と過去5年レンジを大幅に上回る水準を維持した。

ガスも同様であるが、中国の記録的な気温上昇の影響で、発電燃料需要が引き続き増加しているためと考えられる。2000年以降、エルニーニョ現象が発生しているときは発電燃料の価格は下がる傾向が強いが、異常気象が発生しやすい気象状態であることは意識しなければならない。

国別では7月は豪州からの輸入が大幅に増加し、ロシアからの輸入が減少した。石炭価格の下落に加え、品質や地理的な問題から豪州炭が選好されたようだ。

直近のシェアはロシアが1位で35.5%(前月42.1%)、ついで豪州で29.5%(23.1%)、インドネシアが22.6%(24.2%)となっている。

戦争で苦境に陥っているロシアの救済は続いているが、中国国内の景気の悪化からより価格面で有利な石炭を選好しやすい地合にあり、品質面・輸送面なども考慮して、ロシア炭から豪州炭にシフトしたと考えられる。

7月の中国の石炭生産は、前年比+0.9%の3億7,128万トン、1,197万7,000トン/日(前月+2.5%の3億8,863万トン、1,295万4,000トン/日)と伸びが減速した。

7月の中国の電力消費量は前年比+6.8%の8,888億kwh(前月+4.0%の7,751億kwh)と伸びが加速、気温上昇による需要増加があったとみられる。

今後、輸入需要の増加があるかは発電需要に依拠するが、季節的な気温の上昇がそろそろピークアウトし始めること、南部の降雨による水力発電の回復や、経済活動の回復ペースの鈍さから高水準の輸入ペースは鈍化の可能性がある。

本日は、豪州ガス生産者のストライキ懸念がガス価格を高止まりさせているため、高値維持の公算。

ただし豪州のストライキは早晩終了するとみられ、中期的には下落すると見る。

◆LME非鉄金属

LME非鉄金属市場は続伸した。中国政府の対策期待、というよりは昨日のPMIの減速を受けたドル安進行が材料になった。

今後、中国政府が不動産セクターの過剰在庫や不良在庫の処理、国内製造業や生産者の過剰生産能力問題にどのように取り組んで行くかに中期的な非鉄金属価格は影響を受けることになるが、今のところ、財政出動を伴う対策実施が困難であるため、当面政策金利の調整で凌ごうとする可能性が高い。

ただし問題は余剰在庫の解消であるため、金利操作だけでは状況を好転させるのには不充分である。しかし同時に時間を掛けて不良債権や在庫処理を行う必要もある。

数量ベースでの把握が困難だが、金額ベースの中国製造業の在庫循環図は調整局面の初期にあり、まだ在庫の調整が必要な状況。

通常のサイクルであれば、在庫の調整には1年程度掛るが、恐らく共産党支配が強い国であり、強制的な在庫調整も有り得るためそこまで時間は掛らないと考えられる。

中国政府が何の対策もしない、ということは考え難いが常識的に考えれば、

1.在庫が積み上がっているこのタイミングで経済活動を刺激すれば、さらなる在庫の積増しになってしまう可能性があること

2.予算的な問題

を考えるとある程度在庫の調整が進み、かつ、予算措置が終了してからと考えるのが妥当ではないか。

この危機を乗り切ることができれば、長期的には脱炭素、脱ロシア、中国・インドのW人口ボーナス期(中国は近代化仕上げの10年)、東西の緩やかな分裂に伴うサプライチェーン再構築のためのインフラ投資継続、といった材料を考えると、鉱物資源需要は増加して価格には構造的な上昇圧力が掛かると考えるのが妥当だろう。

恐らく、危機を乗り切るための予算的な措置が具体化するのは、秋の三中全会、12月に予定されている中央経済工作会議前後と考えるのが自然である。よって(早ければ)Q423の後半、遅くともQ224の前半には上昇に転じるとみる。

なお、規模や対象は限定されるが、仮に中国が経済対策を行えばそのタイミングで、「デジタルに」需要が発生するため、在庫の絶対水準の低さと相まって比較的大きな上昇になる可能性があるため、上昇リスクには常に備える必要がある。

ただし、この危機を乗り切ることに失敗し、中国政府が想定以上にこれまで積み上がった余剰生産能力の解消に手間取った場合景気は長期低迷、いわゆる「日本化」が10年単位で起きる可能性が高い。

さらに労働人口がピークアウトし、かつ、米国の制裁によって先端分野の発展が阻害され生産性が低下、将来的にはインフレをもたらしソ連型の国家崩壊、というシナリオも長期的には有り得る話だ。

本日は、中国の経済対策実施が様子見(というよりは効果的なタイミングを待つ)の中、為替の価格に対する影響が大きいため、ジャクソンホール経済シンポジウムでのパウエル議長の講演を明日に控え、いったん短期的な利益確定売りの動きが診られると考えられる。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇 、大連は上昇、豪州原料炭スワップ先物は横這い、大連原料炭価格は上昇、上海鉄筋先物は上昇した。

中国政府の具体的な対策実施は金利下げ程度であるが、9月・10月の鉄鋼製品需要期ヘの期待が高まっていることが、鉄鋼製品価格と鉄鋼原料価格を押し上げた。

とはいえ、不動産セクターの過剰在庫の解消が進まなければ、さらに上昇余地を試すのは難しいのではないか。

現在、疑似鉄鋼原料価格(鉄鉱石:原料炭=1.6:0.9で加重平均したもの)と鉄鋼製品との関係性は回復している。ただ、鉄鋼原料調達は最終消費動向に左右されるため、当面、鉄鋼製品価格動向が重要になってくる。

ロシア問題の一巡、原料炭もロシア・モンゴルからの輸入が増加しており(特にモンゴル)、鉄鋼原料の供給問題はそれほど意識されていない。

結果、鉄鋼製品価格が鉄鋼原料価格変動のカギを握るが、少なくとも鉄鋼製品の最終需要は強くないため、最終需要が増加するような経済対策の実施がなければ、総じて下押し圧力が掛りやすい。

週間の鉄鋼製品港湾在庫統計は、鉄鋼製品在庫は▲13万6,000トンの1,315万1,000トン(過去5年平均 1,357万8,000トン)と過去5年平均を下回っているが、かなり水準は過去5年平均に近づいており、鉄鋼製品価格の下押し要因となっている。

鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比+400万トンの1億1,669万トン(過去5年平均 1億3,172万トン)、在庫日数は23.7日(+0.1日、過去5年平均28.6日)。在庫は日数ベースでも、数量ベースでも鉄鉱石在庫の水準は過去5年平均を下回っており、鉄鉱石の需給はタイトで一定の在庫積み増し需要が存在する。

主要原料炭の輸入港である京唐港の原料炭在庫は▲12万トンの171万トン(過去5年平均 187万4,000トン)、在庫日数は▲0.5日の6.5日(過去5年平均 7.6日)とこちらも需給はタイトになってきた。

7月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲14.2%の67万7,960トン(前月▲22.8%の61万トン)と低迷が続き、同じ時期の過去5年の最低水準を下回る状態が続いている。

7月の中国の鉄鋼製品の輸出は前年比+9.6%の730万8,400トン(▲0.7%の750万8,100トン)と過去5年の最高水準を上回った。同時に鉄鋼製品輸出額は前年比▲40.9%の63.4億ドル(▲42.7%の67.0億ドル)と低下しており、引き続き中国が安売りで余剰在庫の解消に努めていることを示唆するもの。

7月の中国粗鋼生産は前年比+11.5%の9,080万トン(前月+0.4%の9,111万トン)と前年から大幅に増加し、過去5年平均も上回った。

これまで値引きを行って輸出を促進してきたが、それでも在庫解消に時間が掛っているため生産調整が進むかと思われたが、前年・前月よりも生産は回復している。

中国政府の需要刺激策で具体的なものが打ち出されていないこと、製造業全体の在庫循環図は調整局面入りしていることを考えると、今後の生産は引き続き低迷が予想される。

鉄鋼原料価格が中期的にも世界的な景気減速局面入りを背景に、下落に転じるとの見方は、現時点で変更の必要はないと考える。

本日は、中国不動産セクターの経営環境の悪化とその連鎖、それに対する中国当局の対策期待を受けて高値を維持すると考える。

◆貴金属

昨日の金価格は小幅に上昇、銀も上昇、PGMも上昇した。

米サービス業PMIの減速を受けて、米利上げが打ち止めとなるのでは、との期待が長期金利を押し下げたことが実質金利を下押ししたため。

金リスク・プレミアムの上昇要因の主なところは、1.米利上げによる信用不安の高まり(低格付企業・新興国)、2.ロシアに対するドル決済禁止制裁を受けた、準備金におけるドルから金ヘのシフト、3.ロシアのウクライナ侵攻を切っ掛けとする有事発生ヘの備え、あたりだろう。

これらと同じ事象は、ニクソン・ショック~プラザ合意~アジア危機収束まで30年近く続き、金価格に占めるリスク・プレミアムのシェアが高止まりした。

2016年基準で算出した現在のリスク・プレミアムのシェアは65%と、ほぼ上記の期間と同様の状況になっており金利水準以上にその他の要因が金価格の形成に影響を与えていることが確認できる。

恐らく、米国が利下げに踏み切ればリスク・プレミアムは逆に低下すると考えられるが、当面は利下げの可能性が低いため、結果、金は高止まりすることになろう。

なお、直近1年間の説明力を相関係数で確認すると、最も金価格に対する説明力が高いのがFF金利で0.85、ついでリスク・プレミアム0.80程度、期待インフレ率(▲0.58)、実質金利(0.07)と、ほとんど実質金利は現在の価格形成に影響を与えていない。

また、FF金利の水準はリスク・プレミアムに対する説明力が高いため、やはり足下はリスク・プレミアムの変動要因(FF金利の変動を受けた信用リスク要因、有事の金、準備金としてのドルの代替需要動向)が重要になっていると言える。

金の価格を構成要素に分解することは、各要素が互いに影響を及ぼし合っているため余り意味がない。

しかし、現状を理解する手助けとなるため、あえて実質金利・信用リスク・その他、に分離した場合、実質金利部分が4割、信用リスク要因が2割、その他の要因が3割となる。

なお、新興国の金準備は「よほどのこと(戦争や制裁など)」がない限り売却はされない。そのため積まれた金準備による価格押し上げ効果は継続すると考えられる。

この5年間のデータを元にした分析では、FF金利±1%の変化で、実質金利は±0.5%変化、金価格は±50ドル変化し、リスク・プレミアムは±150ドル変化する。

年内利上げは、9月FOMC以降、あったとしてもあと1回と見られているため、金の基準価格は▲13ドル、リスク・プレミアムは+38ドルの上昇圧力となり、差し引き+25ドルの上昇となる。

市場予想では2024年は▲1.5%程度のFF金利引下げが見込まれているため、金の基準価格は+75ドル程度の押し上げ要因となり、リスク・プレミアムは、▲225ドルの低下要因となるため、仕上がりで▲150ドルの価格低下となる。

現在の金価格は1,900ドルまで低下しているため、これを基準とすると1,750ドル程度までの下落があると見ている。

銀価格は、投機的な動きに価格が左右されやすくテクニカル分析が比較的有効に機能する。

月次の金銀レシオはボリンジャーバンドの上限を目指す動きになっている。

仮にボリンジャーバンドの下限だと75倍、上限ならば90倍程度が目処になるが、金を1,900ドル程度とすると21.1~25.33ドルが現在取り得る範囲といえる。

本日は、明日のジャクソンホール経済シンポジウムでのパウエル議長講演を控え、ポジション調整の売戻しが入り下落すると考える。ただし余地は限定。

◆穀物

シカゴ穀物市場は、ドル安の進行を受けて上昇した。

2000年以降はエルニーニョ現象が発生した時はむしろ豊作で価格は下がっていることも多く、過去の傾向からすれば、エルニーニョ現象の影響は小さいと考えられる。

しかし、異常気象をもたらす気象状況であるため油断は禁物で、不作になるリスクも常に意識しておく必要がある。

本日は、明日のジャクソンホール経済シンポジウムでのパウエル議長発言を控え、ポジ象徴性的に売られると考える。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・米国債の格下げリスク(残るMoody'sの格下げリスク)、米国債格下げの動きが連鎖して、金融機関の格下げが加速、信用不安に繋がる場合。

・日本政府の財政規律の欠如、成長期待への失望から円が暴落するリスク。

・景気が想定よりも早く底入れしてインフレが再燃、あるいは景気を刺激する目的で早期の利下げが行われ資源価格が高騰、各国中銀の金融政策が再びタカ派の状態になった場合(リスク資産価格の上昇→下落リスク これは顕在化している可能性)

新興国の破綻、先進国も含めた債券の格下げによる金融機関・ファンドの突発的な損失拡大による信用収縮、低格付企業の破綻や、市場変動性の高まりによるファンド破綻などもリスクに(米銀格下げ検討は始まっている)。

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。

そこに至らないまでも、NATO加盟国に対する攻撃に対して報復の経済制裁、それに対するカウンター報復が発生した場合(景気の下押し要因)。

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。暴動激化で中国が分裂するリスク(極めて可能性の低いリスク)。

中国の構造的成長が終了、過剰債務や不動産問題を抱え、中国が「日本化」するリスク(この場合長期低迷で工業金属やエネルギーなどの景気循環系商品価格の下押し要因となる可能性)

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化を受けたブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(既にメインシナリオ)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。

また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、モディ支持率の低下による近代化投資の遅れ、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

◆本日のMRA's Eye


「高まる中国国民の不満とそのリスク」

2010年の人口動態ピークアウトと海外景気の減速、中国株ショックで中国国民の不満が爆発、中国各地でデモが発生した。2015年、2016年は米国との経済戦争勃発の影響で景況感が悪化したため、デモ・ストライキの発生件数はデータ取得がかのうな2011年以降で最高水準に達した。

その後、景気の回復と共にデモは沈静化したが、再びストライキの回数は増加しており、「これまでのペース」を維持すると、中国国内のデモ・ストライキの発生件数はこの5年で最高水準に達する可能性がある。

中国のデモ・ストライキの発生件数と製造業景況感指数の間には相関性が確認されており、景況感の悪化はデモ・ストライキの発生件数の増加に繋がる。

2023年8月9日、中国政府が日本向けの団体旅行の解禁を発表したのは、場合によると「中国国民の不満のガス抜き」が目的だった可能性がある。

実際、中国ヘのマーケティング支援を行う「ENJOY JAPAN」による中国在住の中国人の行きたい国アンケートで、全体の76%が行きたい国1位に日本を挙げ、2位のシンガポール(41%)を大きく引き離した。

昨年、2022年のデモ・ストライキの発生状況を確認すると、2022年は建設業のストライキが最も多く、次いで、ゼロコロナの影響で人やモノの移動が制限されていた事もあり、運輸業、サービス業で、内陸部でのストライキの発生が多かった。

2023年は引き続き建設業のストライキの比率が高いが、次に発生が多いのが製造業戸なっている。

やはり「世界の工場」としてゼロコロナ後の立ち直りが上手くいっていないことを示唆している。

ストライキの発生場所も沿岸部に移っており、今回のストライキ発生の増加は、「景気」に起因するものと推察され、共産党政権が何らかの経済対策を打ち出す必要性を示唆(国民の不満を逸らすため、地史学的リスクを意図的に高める可能性も)している。

しかし、中国政府(特に地方政府)にそこまでの財政的なゆとりがないため、しばらくは「どこに対策を打つのが効果的か」を探りながらの対処療法にならざるを得ないと考えられる。

また、非常に気になるのが、国民の不満を国内から海外に向けるために、旅行解禁ではなく、地政学的な方向に舵を切る可能性がゼロではない点だ。

先日、台湾の近くで軍事演習が行われたが(これは日米韓の首脳会談の結果に対する不満表明の色彩が強いが)、より具体的な行動にでる可能性があることは同様にリスクとして排除できないと考えられる。


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